説明

中央式給湯装置

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は中央式給湯装置に関するものである。
(従来の技術)
例えばホテル、総合病院等の大、中規模の各種建物で、全館への給湯を行う場合には、中央式給湯装置が用いられている。従来の中央式給湯装置は、例えば第2図に示すように、多数の給湯個所a1,a2,a3,………を通る給湯往き管bと給湯還り管cとから成る循環式配管dと、ボイラーe並びに貯湯タンクf及び循環ポンプg等から構成している。そして少なくともボイラーeや貯湯タンクfは定期点検や故障発生時に於いても給湯が中断されないようにするため、2組を並列に設け、一方側をバックアップ側として切替動作可能に構成している。また夫々の給湯能力は、使用中に能力不足が発生しないようにするために余裕を持った設計としている。
(発明が解決しようとする課題)
このような従来の中央式給湯装置では、重量やスペースが嵩み、荷重や施工上の困難性等の理由から、建物の空きスペースである屋上に設置するのが困難であり、貴重なスペースである1階や地階に設置することが多い。また、能力に余裕を持った設計をしているとはいっても、業務拡張等のように大幅な能力増が必要な場合には対応することができず、また増設も困難であった。更に、このような構成では、大量生産に適しておらず、コスト高であると共に、運搬や施工が比較的面倒であった。また2組のボイラー等は、通常はバックアップ側でない方を連続的に使用することになるので、一方側の耐久性に問題があった。
本発明はこれらの課題を解決することを目的とするものである。
(課題を解決するための手段)
上述の課題を解決するために、本発明の中央式給湯装置は、給湯個所を通る給湯往き管及び給湯還り管とから成る循環式配管と複数の瞬間湯沸器とから構成し、該複数の瞬間湯沸器は、夫々の湯出力側を前記給湯往き管に、水入力側を前記給湯還り管に接続して並列に構成すると共に、該水入力側から湯出力側に至る湯沸経路には流量センサと湯温センサ及び遠隔操作バルブを設け、該センサに基づいたバーナの燃焼制御と遠隔操作バルブの開閉制御を行う個別制御手段を設けると共に、夫々の個別制御手段を集中的に管理する中央制御手段を設け、該中央制御手段には各個別制御手段の異常発生検出手段を設けて、該個別制御手段の異常発生時に前記遠隔操作バルブの閉指令信号を発生させる構成としたものである。
また上記に構成に於いて、中央制御手段と個別制御手段の制御に於ける通信は、所定時間毎の中央制御手段からの問い合わせと、個別制御手段からの肯定応答を伴う構成とし、異常発生検出手段は、所定時間内に於ける前記肯定応答の無により個別制御手段の異常発生を検出したり、個別制御手段からの異常信号により個別制御手段の異常発生を検出する構成とすることができる。
(作用)
給湯に際して中央制御手段は、動作させるべき瞬間湯沸器に対応する個別制御手段に指令を送り、遠隔操作バルブを開とする。こうして遠隔操作バルブが開となった瞬間湯沸器では、水または戻り湯が給湯還り管から分岐して水入力側から湯沸経路に流入し、この湯沸経路を流れる。個別制御手段は、この流れを流量センサにより検出し、バーナの燃料を開始する。
従って、前記湯沸経路を流れる上水または戻り湯はバーナの燃焼ガスにより加熱される熱交換器を経て加熱された後、湯出力側から給湯往き管に合流する。合流した湯は給湯往き管を流れて給湯個所に至り、その一部が使用される。そして残りは給湯還り管を還流し、適所に於いて補給された上水と合流して再び上述したように遠隔操作バルブが開の瞬間湯沸器の湯沸経路を通る循環に供される。
しかして、上述のように遠隔操作バルブを開として動作させる瞬間湯沸器の数を増減すれば、給湯能力を給湯負荷に応じて容易に変更することができる。また業務の拡大等の理由により既設の瞬間湯沸器の全てを同時に動作させても、所要の給湯能力が得られなくなった場合には、既設の装置に、適数の瞬間湯沸器を増設して、既設のものと同様にそれらの湯出力側を前記給湯往き管、水入力側を前記給湯還り管に接続すれば、最大給湯能力を容易に増大することができる。
以上の動作に於いて、個別制御手段の異常が発生して、その異常を中央制御手段の異常発生検出手段が検出すると、中央制御手段は、その個別制御手段に遠隔操作バルブの閉指令を発する。この閉指令信号を受け、個別制御手段は遠隔操作バルブを閉とするので、湯沸経路の流水が停止し、従ってバーナの燃料も停止する。そして、このように故障が発生した瞬間湯沸器の動作を停止させた後は、給湯負荷に応じて、停止中の瞬間湯沸器を動作させることにより、適切な能力の給湯運転を継続することができる。
このように、いずれかの瞬間湯沸器、そして個別制御手段に異常が発生した場合に於いては、対応する瞬間湯沸器の湯沸経路に戻り湯または上水を強制的に遮断して動作を停止させるので、異常動作の継続を防止すると共に、給湯への影響を防止することができる。
(実施例)
次に本発明の実施例を図について説明する。
第1図は本発明の中央式給湯装置の実施例を系統図として表したものである。この図に於いて、符号1(1a,1b,1c,…)は瞬間湯沸器であり、図に於いては3台を示しているが、これらの瞬間湯沸器1の数は適宜に設定することができる。これらの瞬間湯沸器1には、熱交換器2とそれを加熱するためのバーナ3を設けている。また、その水入力側iから湯出力側oに至る湯沸経路4には流量センサ5と湯温センサ6及び遠隔操作バルブ7を設け、該センサ5,6に基づいたバーナ3の燃焼制御と遠隔制御バルブ7の開閉制御を行う個別制御手段8を設けている。なお、遠隔操作バルブ7は例えば電動バルブで構成することができる。前記個別制御手段8によるバーナ3の燃焼の制御は、前述した流量センサ5により、水入力側から湯出力側に至る湯沸経路4の所定量以上の流水を検出してバーナ3の燃焼を開始する動作と共に、前記湯温センサ6により熱交換器2の下流側の湯温を、予め個別制御手段8に設定した温度とするように制御するフィードバック制御や、湯温センサ6に加えて熱交換器2の上流側の戻り湯または水温を検出する水温センサ(図示省略)を設けて行うフィードフォワード制御またはこれらを組み合わせた制御等、通常の個別使用の瞬間湯沸器に於いて使用されている適宜の制御方法を適用することができる。尚、瞬間湯沸器1の実際の動作に必要な他の構成要素、例えばファンモータ、点火プラグ、フレームロッド等のバーナ安全装置、電磁弁、比例制御弁、風圧スイッチ、空焚防止スイッチ等の構成要素は図示を省略している。
符号9は夫々の前記個別制御手段8を集中的に管理する中央制御手段であり、該中央制御手段9には各個別制御手段8の異常発生検出手段10を設けて、個別制御手段8の異常発生時に前記遠隔操作バルブ7の閉指令信号を発生させる構成としている。前記中央制御手段9と個別制御手段8の制御に於ける通信は、所定時間毎の中央制御手段9からの問い合わせと、個別制御手段8からの肯定応答を伴う構成とし、異常発生検出手段10は、所定時間内に於ける前記肯定応答の無により個別制御手段8の異常発生を検出する構成とすることができる。この他、異常発生検出手段10は個別制御手段8からの異常信号により個別制御手段8の異常発生を検出する構成とすることができる。具体的な異常信号としては、例えば、温度ヒューズや空焚スイッチ等の過熱防止手段の作動信号、湯温センサを構成するサーミスタ等の断線による信号、燃料ガス供給制御用電磁弁またはその駆動回路の故障信号、ファンモータの回転不検出信号、バーナ燃焼時に於けるフレームロッドの火炎不検出信号またはバーナ3消化時に於ける火炎検出信号、個別制御手段8自体の故障による異常信号等の直接的な異常信号の他、湯温、流量や燃料ガス等の信号を正常に中央制御手段9に送信している場合に於いて、これらの関係が異常である場合の、これらの信号等がある。以上の制御のための通信は適宜の伝送制御手順を適用することができ、また異常発生検出手段10の具体的構成も適宜である。
符号11は多数の給湯個所12a,12b,12c,……を通る循環式配管であり、この循環式配管11は給湯往き管13と給湯還り管14とから構成しており、この循環式配管11の適所、例えば図に示すように給湯還り管14に循環ポンプ15を設けている。またこの給湯還り管14には給水管16を接続している。給水管16はバルブ17や大気解放タンク(図示省略)を介して上水道に接続する構成とする他、場合によっては逆止弁等を介して直接に上水道に接続することもできる。
しかして前記瞬間湯沸器1は、夫々の湯沸経路4の湯出力側oを前記給湯往き管13、水入力側iを前記給湯還り管14に接続して並列に構成している。これらの湯出力側oと給湯往き管13及び水入力側iと給湯還り管14は、手動等のバルブ18,19を介して接続している。尚、図示の構成に於いて符号20は燃料ガス供給管である。
以上の構成に於いて、給湯に際して中央制御手段9は、動作させるべき瞬間湯沸器1の個別制御手段8に指令を送り、遠隔操作バルブ7を開とする。このように開の指令を送る瞬間湯沸器1の数は、給湯負荷に応じて設定する。例えば給湯負荷は、後術するように例えば給湯往き管13を流れる湯温により検出することができる。
しかして循環ポンプ15により給湯還り管14を流れている戻り湯は、給水管16から補給された上水と合流して、該給湯還り管14の下流側に流れる。そして遠隔操作バルブ7が開の瞬間湯沸器1に於いて、給湯還り管14から分岐して、水入力側iから湯沸経路4に流入する。かかる戻りまたは上水の流入を流量センサ5が検出するので、個別制御手段8によりバーナ3が燃焼を開始し、予め設定された制御条件に基ついて制御される。
こうして遠隔操作バルブ7が開の瞬間湯沸器1の湯沸経路4に流入した戻り湯または上水は、熱交換器2を通過する際に加熱されて湯出力側oに至り、給湯往き管13に合流する。そして合流した湯は該給湯往き管13を流れて各給湯個所12a,12b,12c,……に至り、その一部が使用される。そして残りは給湯還り管14を還流し、湯の使用量に応じて前記給水管16から補給された上水と合流して下流側に流れ、再び前述の動作の循環が行われる。
しかして以上の動作に於いて、湯の使用量が増え、即ち給湯負荷が大きくなると、給湯往き管13を流れる湯の温度が低下するので、中央制御手段9は、かかる湯温の低下を適宜の湯温センサ(図示省略)で検出した場合には、この温度の低下程度等に応じて、更に加えて動作させる瞬間湯沸器1の数を導出し、この導出した数に基づき、現在遠隔操作バルブ7が閉で運転停止中の瞬間湯沸基1を選択して、選択した瞬間湯沸器1の個別制御手段8に指令を送り、その遠隔操作バルブ7を開とする。しかして、以上の指令によって遠隔操作バルブ7が開となった瞬間湯沸器1が上述と同様な動作を開始し、それまでに動作中の瞬間湯沸器1と同時に動作するので、全体としての給湯能力が増大し、前述した負荷の増大に対処することができる。
次に、湯の使用量が減り、給湯負荷が小さくなると、中央制御手段9は湯温の上昇の程度等に応じて、燃焼を停止させる瞬間湯沸器1の数を導出し、この導出した数に基づき、現在遠隔操作バルブ7が開で運転中の瞬間湯沸器1を選択して、選択した瞬間湯沸器1の個別制御手段8に指令を送り、その遠隔操作バルブ7を開とする。こうして、動作状態の瞬間湯沸器1の数が減ることにより、給湯負荷の減少に対応することができる。
以上の動作に於いて、例えば業務拡張等に伴い必要給湯量が大幅に増大し、全部の瞬間湯沸器1を動作させても対応できない場合には、既設の装置に、適数の他の瞬間湯沸器1を増設し、それらの湯出力側を前記給湯往き管13、水入力側を前記給湯還り管14に接続して、既設の瞬間湯沸器1と並列に接続して同時に動作させれば、最大給湯能力を容易に増大することができる。
以上の使用に際して、いずれかの瞬間湯沸器に前述したような異常が発生して、正常時には所定時間毎に中央制御手段9から発生する問い合わせに対しての個別制御手段8からの肯定応答がない場合や、個別制御手段8からの異常信号が発せられた場合には、異常発生検出手段10が検出信号を発するので、中央制御手段9はこの検出信号を受け、その個別制御手段8に遠隔操作バルブ7の閉指令を発する。この閉指令信号を受け、個別制御手段8は遠隔操作バルブ7を閉とするので、湯沸経路4の流水が停止し、従ってバーナ3の燃焼も停止する。そして、中央制御手段9は、このように故障が発生した瞬間湯沸器1の動作を停止させた後は、給湯負荷に応じて、停止中の故障していない瞬間湯沸器1を動作させることにより、適切な能力の給湯運転を継続することができる。このように故障した瞬間湯沸器1は、それだれを修理または取替えるだけで良く、前述した通り、瞬間湯沸器1の湯出力側oと給湯往き管13及び水入力側iと給湯還り管14を、バルブ18,19を介して接続しておけば、このバルブ18,19を閉とすることで、他の瞬間湯沸器1の動作状態、即ち給湯をしている状態での修理または取替えを容易に行うことができる。以上のように、いずれかの瞬間湯沸器、そして個別制御手段8に異常が発生した場合に於いては、対応する瞬間湯沸器の湯沸経路に戻り湯または上水を強制的に遮断して動作を停止させるので、異常動作の継続を防止すると共に、給湯への影響を防止することができる。尚、中央制御手段9には、異常が発生した個別制御手段8に対しての遠隔操作バルブ7の閉指令を発した後、該遠隔操作バルブ7の閉状態を確認する信号を個別制御手段8に要求し、確認信号がない場合には警報を発する警報手段(図示省略)を設けることもでき、かかる警報手段は、遠隔操作バルブ7を閉とすることができなくなる個別制御手段8の異常発生に対しても対処することができる。
(発明の効果)
本発明の中央式給湯装置は以上の通り、給湯個所を通る循環式配管と複数の瞬間湯沸器とから構成し、これらの複数の瞬間湯沸器の動作を制御することにより負荷の変動に対応させる構成としたので、従来の中央給湯装置に於いて必要であった貯湯タンクは不要となり、また複数の瞬間湯沸器のいずれかが故障した場合でも、それだけを修理または取替えるだけで良く、故障に対しても即座に対応することができ、給湯の中断を防止することができるので、切替動作可能な2組を予め設置しておく必要がなく、また業務拡張等に伴い必要給湯量が大幅に増大する場合には、既設の装置に、適数の他の瞬間湯沸器を増設すれば良いので、将来を見越して給湯能力を予め余裕をもった設計とする必要はない。従って本発明では、重量及び所要スペースを大幅に低減することができ、また複数の時間湯沸器を夫々ユニットとして運搬可能であること等により施工が容易となるので、建物の空きスペースである屋上への設置が可能であり、従来の中央式給湯装置に占有されていた1階や地階のスペースを有効に利用することができるという効果がある。また本発明では、複数の瞬間湯沸器の夫々を多量生産することができるので、一品生産的であった従来の装置と比較して、コストを大幅に低減することができるという効果がある。更に本発明では、遠隔操作バルブの開閉操作により、容易に中央制御手段により給湯能力を調節することができ、負荷の変動に効率的に対処することができるとういう効果がある。また本発明では、いずれかの瞬間湯沸器、そして個別制御手段に異常が発生した場合に於いては、対応する瞬間湯沸器の湯沸経路に戻り湯または上水を強制的に遮断して動作を停止させるので、異常動作の継続を防止すると共に、給湯への影響を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例を表した系統説明図、第2図は従来例を表した系統説明図である。
符号1(1a,1b,1c,…)……瞬間湯沸器、2……熱交換器、3……バーナ、4……湯沸経路、5……流量センサ、6……湯温センサ、7……遠隔操作バルブ、8……個別制御手段、9……中央制御手段、10……異常発生検出手段、11……循環式配管、12a,12b,12c……給湯個所、13……給湯往き管、14……給湯還り管、15……循環ポンプ、16……給水管、17、18、19……バルブ、20……燃焼ガス供給管、o……湯出力側、i……水入力側。

【特許請求の範囲】
【請求項1】給湯個所を通る給湯往き管及び給湯還り管とから成る循環式配管と複数の瞬間湯沸器とから構成し、該複数の瞬間湯沸器は、夫々の湯出力側を前記給湯往き管に、水入力側を前記給湯還り管に接続して並列に構成すると共に、該水入力側から湯出力側に至る湯沸経路には流量センサと湯温センサ及び遠隔操作バルブを設け、該センサに基づいたバーナの燃焼制御と遠隔操作バルブの開閉制御を行う個別制御手段を設けると共に、夫々の個別制御手段を集中的に管理する中央制御手段を設け、前記中央制御手段には各個別制御手段の異常発生検出手段を設けて、該個別制御手段の異常発生時に前記遠隔操作バルブの閉指令信号を発生させる構成としたことを特徴とする中央式給湯装置
【請求項2】請求項1の中央制御手段と個別制御手段の制御に於ける通信は、所定時間毎の中央制御手段からの問い合わせと、個別制御手段からの肯定応答を伴う構成とし、異常発生検出手段は、所定時間内に於ける前記肯定応答の無により個別制御手段の異常発生を検出することを特徴とする中央式給湯装置
【請求項3】請求項1の異常発生検出手段は、個別制御手段からの異常信号により個別制御手段の異常発生を検出することを特徴とする中央式給湯装置

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2786521号
【登録日】平成10年(1998)5月29日
【発行日】平成10年(1998)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−145005
【出願日】平成2年(1990)6月2日
【公開番号】特開平4−39539
【公開日】平成4年(1992)2月10日
【審査請求日】平成8年(1996)10月2日
【出願人】(999999999)東京瓦斯株式会社
【出願人】(999999999)高木産業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭51−31947(JP,A)
【文献】特開 昭58−72840(JP,A)
【文献】特開 昭64−14524(JP,A)
【文献】特開 平3−195859(JP,A)
【文献】特開 昭59−21939(JP,A)
【文献】実開 平4−78462(JP,U)
【文献】実開 昭51−9344(JP,U)