説明

中空流込み成形された構成部材

【課題】 中空流込み成形される構成部材を製造する際に所望の大きさの中子支持体に基づいて形成される中子開口を確実に閉鎖することのできる構成部材を提供する。
【解決手段】 製造上必然的に形成された閉鎖する必要のある中子開口13を有する中空流込み成形された構成部材において、外側から接近可能な少なくとも1つの切欠15が設けられていて、切欠15が閉鎖する必要のある中子開口13に対して直交する方向で、内部にかつ/または閉じられた中空室12を制限している内部の表面に配置されており、切欠15が、閉鎖する必要のある中子開口13と交差し、中子開口13を少なくとも部分的に覆っており、閉鎖部材14が切欠15内に配置されていて、閉鎖する必要のある中子開口13が、閉鎖部材14によって閉鎖されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製造上必然的に形成された閉鎖する必要のある中子開口を有する中空流込み成形された構成部材に関する。
【0002】
【従来の技術】高精度の流込み成形部分を製造する場合には、場合によって存在する中子をできるだけ安定的に流込み成形型内に支持することが必要である。したがって製造精度に対する要求とともに一般的には中子支持体に必要な寸法もまた大きくなる。
【0003】流込み成形の際に、この中子支持体に基づいて、構成部材壁部には開口が設けられる。多くの場合、これらの開口は構成部材の機能にとって必要でないか、または存在する大きさ程には必要ではない。逆に過剰な程に大きい多数のこのような開口は大抵所望されない。なぜならばこれらの開口は一方では構成部材の機械的な強度を低下させ、他方では不都合な漏れ箇所を形成するからである。
【0004】ここでは冷却されたガスタービンベーンを例とする。当該ガスタービンベーンの内部には、複雑に形成された冷却空気通路が加工されている。そのようなベーンの内部構造を製造するためには、中子は流込み成形型内に極めて正確にかつ安定的に固定されなければならない。したがって、ほぼベーン長手方向に向けられた中子を両側で、つまりベーン脚部側およびベーン頭部側で、大きな寸法を有する中子支持体を用いて固定することが望ましい。さらに、大きく形成された中子開口は、中空流込み成形されたベーンからの中子の取り外しを容易にする。その上中空室の検査を容易に行うことができる。
【0005】しかし形成された流込み成形部材は、整然と機能するためには望ましくない開口を有している。上記の冷却されたガスタービンベーンの例では、冷却空気をベーン内部にまたは再びベーン外部に搬送するためには、比較的大きな寸法を有する開口がベーン脚部において所望されている。製造技術的に所望されるかまたは必要とされるが構造的には設けられない、特にベーン頭部における開口は、不都合な冷却空気の漏れを生ぜしめる。
【0006】したがってこれまでは、いずれにしろ開口が設けられていないところで、中子支持体の寸法をできるだけ小さくすることが所望されてきた。もちろんこれらの手段によっては流込み成形誤差が拡大される。極めて小さい孔は後続処理されないのに対し、比較的大きな孔の場合には閉鎖部材が孔の上に溶接されるかまたはろう接される。後者は、構成部材がガスタービンの高熱ガス部内で使用される場合は特に問題がある。すなわち、閉鎖部材および接続箇所は高熱ガスに直接さらされる。さらにガスタービンベーンに使用されているような耐高熱性の合金は大抵溶接しにくい。つまり、装着された閉鎖部材が構成部材から解離し、閉鎖されていた開口が再び開放されるという潜在的な危険性が生じる。閉鎖部材が回転ベーン頭部に装着されている場合には特に、閉鎖部材の解離の危険性が大きい。なぜならばこのような場合には付加的な遠心力の負荷が加えられるからである。同様に閉鎖部材は、回転ベーンがケーシングに、またはガイドベーンが回転部材に接触した際にも解離され得る。
【0007】このような閉鎖機能の欠落によって、上述したガスタービンの例では冷却空気の熱勘定のずれが生ぜしめられ、その結果、過熱による構成部材の致命的な故障が生じ得る。
【0008】他方、著しく拡大された流込み成形誤差を甘受することなしにはかつ中空室を形成する際に、ひいては構成部材の冷却部を構成する際に構成者の自由が著しく限定されることなしには、上述したように中子開口を廃止できない。
【0009】つまり一方では製造技術的な配慮からできるだけ大きな中子支持体が使用されることが望ましく、他方では結果として形成された中子開口が確実に閉鎖されなくてはならない。関連文献によって公知となった閉鎖構造は、熱的に高く負荷されるタービンベーンに使用する際に問題が生じる。DE−3936171号明細書では、中子開口は積層溶接(Auftragsschweiss)によって閉鎖されている。これによって生じる問題は上述した通りである。US−2821323号明細書およびDE−4434139号明細書では、中子開口が軸線方向に打ち込まれた閉鎖栓(Verschlusspropfen )によって閉鎖されている。これもまた、熱的な膨張差および遠心力によって常に使用できるわけではない。
【0010】これまでの従来技術には、中空流込み成形される構成部材を製造する際に、所望の大きさの中子支持体に基づいて形成される中子開口を確実に閉鎖するための、全般にわたって要求の満たされる可能性は存在していない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】故に本発明の課題は、中空流込み成形される構成部材を製造する際に所望の大きさの中子支持体に基づいて形成される中子開口を確実に閉鎖することのできる構成部材を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために、製造上必然的に形成された閉鎖する必要のある中子開口を有する中空流込み成形された構成部材において、外側から接近可能な少なくとも1つの切欠が設けられていて、該切欠が閉鎖する必要のある中子開口に対して直交する方向で、内部にかつ/または閉じられた中空室を制限している内部の表面に配置されており、前記切欠が、閉鎖する必要のある中子開口と交差し、該中子開口を少なくとも部分的に覆っており、閉鎖部材が前記切欠内に配置されていて、該閉鎖部材によって、閉鎖する必要のある中子開口が閉鎖されるようにした。
【0013】
【発明の効果】つまり本発明の本質は、流込み成形部材の内部に閉鎖部材を装着することである。この閉鎖部材は閉鎖部材を2つの空間軸線方向で形状接続で取り囲む切欠内に位置している。したがって付加的な固定は、1つの運動軸線方向に行われるだけで十分である。この閉鎖部材が、流込み成形構成部材を技術的な機構に使用した場合に差圧または遠心力を受容しなければならない場合には、閉鎖部材を付加的に固定する必要がある方向が、主として発生する力成分に対してできるだけ垂直であるように、前記切欠が構成部材内に形成されることが有利である。この閉鎖部材は切欠内で滑り動くことだけを防止すればよい。この構成に基づき閉鎖部材の固定の負荷は、従来技術に相応する解決手段に基づく固定よりも著しく軽減されることになる。すでにこのような事実に基づき中子開口の閉鎖機能の確実性は著しく高められる。
【0014】熱せられた媒体に外側からさらされかつ中空室に冷却空気が供給される中空流込み成形された構成部材では、閉鎖部材と、場合によって存在する接続箇所とが、高熱ガスにさらされる程度が、従来技術に基づくものよりも少なくなる。
【0015】切欠内に挿入されている閉鎖部材は、中子開口を気密に密閉することができるか、または規定された流れ横断面を中空室と中子開口との間に残すことができ、例えば冷却するために有利に構成することができる。前記のように流れ横断面を残すことは、閉鎖部材が開口を完全に覆わないようにするか、規定された開口が閉鎖部材に加工されていることによって達成することができる。
【0016】閉鎖部材または切欠を設ける位置は、流込み成形部材に形成された中空室から中子開口への移行部の近傍であると有利である。この切欠および閉鎖部材は、ほぼ任意の形状を有することができる。閉鎖部材のジオメトリは当然対応する切欠のジオメトリに適合されなければならない。したがって切欠は、流込み成形部材内に流込み成形されたまたは切削加工によって流込み成形部材に製造されたスリットであってよい。このスリットは中子開口に直交する方向に向けられており、かつ該スリット内には平らな小板が閉鎖部材として挿入される。同様にピンがシリンダ状の孔または円錐形状の孔内に挿入されていてもよい。
【0017】本発明による中空部材を製造する場合には、まず中間製品が公知の形式で流込み成形される。この際に生じる中子開口をあとで確実に閉鎖できる可能性に基づいて、中子支持体には大きな寸法を与え、流込み成形プロセスにおける製造精度は著しく改善される。切欠はすでに中間製品に設けられていてよく、これにより、続く後加工段階は容易になるか、もしくは省略できる。エンドミルまたはドリルを用いた切削加工によって、切欠を寸法維持を目的として後加工することができる。中間製品に切欠が存在していない場合は、後で切欠が形成されなくてならない。この加工は、当然別の方法、例えば浸食加工によっても行うことができる。なお加工方法の選択は本発明において重要ではない。切欠内にはあとで閉鎖部材が挿入されてそこに固定される。上述したように閉鎖部材は切欠のジオメトリに適合されていなくてはならない。機械的および熱的な負荷ならびに加工の可能性に応じて、閉鎖部材は種々異なる形式で固定されることができる。さらに閉鎖部材の固定は溶接またはろう接することによっても可能である。この場合には、上述した接続箇所の負荷は著しく軽減されている。同様に閉鎖部材が過剰寸法で構成されて温度差でもって流込み成形部材の切欠内にプレス嵌めされるか、または弾性的な拡開ピンが設けられ、これにより摩擦接続的な結合が達成されることができる。また、閉鎖部材がねじ山を備えた円形ピンとしてねじ込まれていているか、または閉鎖部材が流込み成形部材にかしめ固定されていてもよく、これにより形状接続的な結合、つまり嵌合に基づく結合が達成される。最後に固定方法は具体的には、予期される温度、材料、用いられる製造方法および工具に関連して選択されている。
【0018】さらに、流込み成形された構成部材の周りを流動媒体が運転中に流れる場合には、閉鎖部材の組込み後に構成部材の外面をできるだけ平滑に形成することが重要である。このことは、組込み後に閉鎖部材が構成部材表面を越えて突出し、閉鎖部材がこの構成部材表面に整合するように平らに削られるような寸法が閉鎖部材に与えられていることにより、簡単な形式で行うことができる。
【0019】上述した方法は特に、冷却されたガスタービンベーンを製造するために適している。このベーンの内部には複数の中空室が位置しており、これらの中空室はほぼベーン脚部からベーン頭部にまで延びていて、運転中には冷却空気がこれらの中空室内を貫流する。これらの冷却通路はよく考えられた複雑なジオメトリを有しており、このジオメトリは流込み成形の際、高い精度で製造されなければならない。この高い精度を得るためには、流込み成形中子を、位置安定的に両側で支持することが必要である。したがって、寸法の大きな中子支持体がベーン頭部およびベーン脚部に必要となる。つまり中間製品のベーン頭部とベーン脚部とには中子開口が位置しており、これらの中子開口を通って流出する冷却空気の損失を防止するために、これらの中子開口の少なくとも一部が閉鎖されなければならない。従来技術に基づき公知である、中子開口を閉鎖するための方法では大きな問題が生じ得る。外側から装着された閉鎖部材の接続箇所は高い温度にさらされており、かつ回転ベーン頭部に装着された閉鎖部材は大きな遠心力で負荷される。このためにこのようなケースで使用されなければならない耐高熱性の合金の溶接性は悪い。これにより運転中の機械的ならびに熱的負荷の高い接続箇所が破損し、これにより冷却空気の分配が著しく阻害されるという潜在的な危険性が生じる。記載した本発明によって中子開口が本発明にしたがって閉鎖されることでこれに対処することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】次に図面に基づき本発明の実施の形態を詳説する。
【0021】本発明を図面に基づいて詳説するために、中空流込み成形された構成部材の例として、ガスタービンベーンの頭部領域が図1に示されている。なお本発明における流込み成形は材料を限定するものではない。このガスタービンベーンの内部には複数の中空室12が位置しており、これらの中空室12はウェブ17によって互いに分割され、流込み成形部材の壁部11によって外側に向かって制限されている。図1に示した流込み成形部材の内部構造は、代表的なものとみなされるべきではなく、また本発明の対象でもない。このようなガスタービンベーンを流込み成形する場合、中空室12を製造するために中子を流込み成形型内に支持し、かつ流込み成形型から取り出す必要があった。中子を安定的に支持するため、ひいては流込み成形精度を高めるためには、中子がベーン頭部で2つの中子支持体によって支持されていた。これらの中子支持体によって中子開口13が流込み成形部材に残され、これらの中子開口13は閉鎖されなければならない。このために、流込み成形部材内に切欠15が設けられており、これらの切欠15はそれぞれ1つの中子開口13を覆っている。切欠15は完全に流込み成形部材内に加工されていて、その結果、切欠15の構成部材貫通面16と構成部材表面とが、閉鎖された線を形成している。切欠15に適合する閉鎖部材14は、わずかな遊びをもって、または過剰寸法で形成されて、矢印で示したように切欠15内に挿入され、この切欠15内に、適当な形式で固定される。
【0022】閉鎖部材14は、1つの運動方向、つまり組込み方向にだけ、位置のずれが防止されればよい。この組込み方向は、負荷が最も小さい方向であるように選択され得る。図示したタービンベーンが例えば回転ベーンである場合には、主として、図面でみて上方に向かって作用する遠心力が閉鎖部材14に作用する。しかし、閉鎖部材14は遠心力に対してほぼ垂直方向に組み込まれているので、固定部はこの遠心力を負う必要なく、遠心力は流込み成形材に直接支持される。したがって、閉鎖部材14が流込み部材内に固定されている接続箇所には、わずかな機械的な負荷しか作用しない。
【0023】閉鎖部材14としては、小板およびピンが示してある。ピンのための切欠15は著しく簡単に孔によって製造され得る一方で、小板のための切欠15は、複雑な加工が必要である。その他に、ピンのための切欠15は比較的大きく形成されなければならず、このような形式で流込み成形構造部材の構造を比較的に大きく弱体化させる。この解決策は大きな中子開口13のためにはほとんど実用的ではない。
【0024】ピンは例えば雄ねじ山を有していてよい。このピンは雌ねじ山を備えた切欠15にねじ込まれ、これにより閉鎖部材14を流込み成形部材内に固定する、極めて簡単な手段が提供される。
【0025】図示した実施例は、請求項に記載した特徴を有する本発明を理解するために概略化されたものであり、本発明をこれに限定するものではない。図示した実施例以外に、説明した範疇を越えた別の多数の変化実施例も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】中子開口が本発明の手段によって閉鎖される、冷却された中空流込み成形されたガスタービンベーンの頭部領域を示した概略図である。
【符号の説明】
11 構成部材壁部、 12 中空室、 13 中子開口、 14 閉鎖部材、 15 切欠、 16 構成部材貫通面、 17 ウェブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 製造上必然的に形成された閉鎖する必要のある中子開口(13)を有する中空流込み成形された構成部材において、外側から接近可能な少なくとも1つの切欠(15)が設けられていて、該切欠(15)が閉鎖する必要のある中子開口(13)に対して直交する方向で、内部にかつ/または閉じられた中空室(12)を制限している内部の表面に配置されており、前記切欠(15)が、閉鎖する必要のある中子開口(13)と交差し、中子開口(13)を少なくとも部分的に覆っており、閉鎖部材(14)が前記切欠(15)内に配置されていて、該閉鎖部材(14)によって、閉鎖する必要のある中子開口(13)が閉鎖されるようになっていることを特徴とする、中空流込み成形された構成部材。
【請求項2】 閉鎖部材(14)によって中子開口(13)が気密に密閉されている、請求項1記載の中空流込み成形された構成部材。
【請求項3】 閉鎖部材(14)によって、中空室(12)と中子開口(13)との間に、規定された流れ横断面が残されている、請求項1記載の中空流込み成形された構成部材。
【請求項4】 構成部材がタービンベーンとして形成されており、少なくとも1つの中空室(12)がタービンベーンの内部に冷却通路として形成されており、それぞれ少なくとも1つの中子開口(13)が、ベーン頭部およびベーン脚部の領域に配置されていてかつベーン高さの方向に方向付けられており、ベーン頭部の領域に配置された少なくとも1つの中子開口(13)が、閉鎖部材(14)によって閉鎖されており、少なくとも1つの切欠(15)が、前記閉鎖部材(14)を受容するために、ベーン吸入側および/またはベーン圧送側から接近可能であるように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の中空流込み成形された構成部材。
【請求項5】 流込み成形プロセスの間、流込み成形中子を用いて少なくとも1つの中空室を形成し、該中子を流込み成形の間、中子支持体を用いて流込み成形型内に固定し、かつ流込み成形後に、中子支持体に基づき形成された中子開口を通して取り外し、中子を取り外した後に少なくとも1つの中子開口を閉鎖部材を用いて閉鎖する、中空流込み成形された構成部材を製造する方法において、閉鎖部材を受容するために少なくとも1つの切欠が、閉鎖する必要のある中子開口に対して直交する方向で構成部材内に設けられ、閉鎖する必要のある中子開口を前記切欠が覆っており、閉鎖部材がわずかな遊びをもってまたは過剰寸法で外側から前記切欠に適合させられて挿入され、前記閉鎖部材が前記切欠内に固定されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の構成部材を製造する方法。
【請求項6】 閉鎖部材を材料接続で、流込み成形部材内に固定する、請求項5記載の方法。
【請求項7】 閉鎖部材を接着で流込み成形部材内に固定する、請求項5記載の方法。
【請求項8】 閉鎖部材を流込み成形部材内にプレス嵌めする、請求項5記載の方法。
【請求項9】 閉鎖部材を形状接続で、流込み成形部材内に固定する、請求項5記載の方法。
【請求項10】 閉鎖部材が組付け後に流込み成形部材表面を越えて突出させられており、該閉鎖部材の固定後に閉鎖部材が流込み成形部材外面に整合するように研削する、請求項5から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2000−246395(P2000−246395A)
【公開日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−35980(P2000−35980)
【出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(599168073)エービービー アルストム パワー (シュヴァイツ) アクチエンゲゼルシャフト (1)