説明

中空管、中空管接続構造及び中空管接続方法

【課題】中空管を接続するときに、特殊な部材を使用することなく、接続部の気密性を確保することができる、中空管、中空管接続構造及び中空管接続方法を提供する。
【解決手段】第1の中空管には、端部から他の端部に向かって外径が大きくなる凸型テーパ部を備える。第2の中空管には、端部から他の端部に向かって内径が小さくなり、凸型テーパ部と嵌合する凹型テーパ部を備える。テーパ部の中空部を貫通する所定の中心軸に垂直な平面で切ったときの、凸型テーパ部の断面の外周、及び凹型テーパ部の断面の内周は曲線を含む。これにより、2つのテーパ部の断面の曲線部が変形し、確実な気密性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空管、中空管の接続構造及び接続方法に関し、特に、他の中空管と密着性の高い接続が可能な中空管、中空管接続構造及び中空管接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部が中空である中空管は、種々の流体の移動や電磁波の伝播等の用途に使用されている。中空管は、中空部を通過する物体や電磁波を、リークさせることなく、目的地まで移動あるいは伝播させる必要がある。そのため、中空管の接続部の気密性が非常に重要である。
【0003】
このような中空管の一種に、電磁波を伝播させるために用いられる導波管がある。従来の導波管の一般的な接続構造は、導波管の端部に設けたフランジ(鍔)を用いて導波管を接続するものである(例えば、特許文献1参照。)。図21は従来の導波管の一般的な接続構造で、図21(a)は斜視図、図21(b)は断面図である。このように、従来の接続構造では、接続するそれぞれの導波管の端部にフランジ20を設け、フランジ20をボルト18、ナット21、ワッシャ22を用いてネジ留めしている。
【0004】
異なる形態の接続構造として、接続するそれぞれの導波管の端部にテーパを設け、テーパ同士を嵌合させることにより接続作業を容易にし、信頼性を向上させる技術がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−70702号公報 (第2−3頁、第5図)
【特許文献2】特開昭62−268201号公報 (第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の各公知技術にはそれぞれ問題がある。
【0007】
図22(a)、(b)に示す、特許文献1等、従来の一般的な接続構造では、導波管を接続するために、導波管から突出する形でフランジ20を設けている。フランジ20は、接続部の電波のリークを抑え、かつVSWR(Voltage Standing Wave Ratio。電圧定在波比)を良くするには、均一に締め付けることが必要である。また、接続する2本の導波管の中心を正確に一致させることも必要である。
【0008】
ところが、例えば、無線機を格納した筐体を導波管を用いてアンテナに接続するようなときに、デザインの都合によりフランジから遠い箇所でネジ留めせざるを得ない場合がある。このような場合には、フランジを均一に締め付けることが困難である。
【0009】
さらに、最適なフランジの大きさは、導波管内部を伝播する電波の周波数に依存しており、ネジ留めが可能な範囲で最小限の大きさにすることはできない。このように、フランジの大きさの制約が、無線機を小型化する上での設計上の障害になっている。
【0010】
特許文献2の接続構造は、テーパを用いての接続を容易にし、信頼性の向上を図るものであるが、「テーパ部が嵌合した時、僅かなギャップが生じることがある」との記載があるように、テーパ部の接触が確実ではない。例えば、矩形導波管を接続する場合に問題が生じる。一般的に、テーパ部を含め、導波管の各部の寸法には誤差が存在する。導波管を接続する際、接続部にテーパを備えることにより、若干の寸法の誤差は許容されるが、矩形導波管の断面の縦横の寸法比の誤差の許容範囲は狭い。すなわち、テーパ部の縦横の寸法比に誤差が存在すると、導波管を接続した際の、テーパ部の縦の面の接触圧力(以降、圧接力という。)と横の面の圧接力は完全には一致せず、必ず一方が大きく、他方が小さくなる。従って、圧接力が小さい方のテーパ部の面の接触が不完全となり、完全な気密が得られず、上記のような問題が生じる。ここでの「気密」とは、導波管内部を流れるものが電磁波なので、中空管の全周囲に亘り接触面が電気的に完全に接触し、電気的に密閉されている状態を意味する。
【0011】
特許文献2の接続構造では、電気的接触を完全にするために、導電性ガスケットを用いて隙間を埋めている。一般的な導電性ガスケットは、ガスケットの基材の周囲を導電性素材で覆っており、合成ゴム等の弾性樹脂のみから成る、通常の絶縁性ガスケットに比べて構造が複雑である。そのため、一般に、導電性ガスケットは、常の絶縁性ガスケットに比べて高価である。このように、特許文献2の接続構造には、テーパ部の不完全接触による問題を防止するために、高価なガスケットを使用しなければならないという問題がある。
【0012】
このように、従来の技術には、中空管の接続部の気密性が不完全なため、例えば導波管の場合には、接続部から電波がリークしたり、VSWRが悪化するという問題がある。そして、電気的な密閉性を確保するためには、高価なガスケットを使用しなければならないという問題がある。
(発明の目的)
本発明は上記のような技術的課題に鑑みて行われたもので、中空管を接続するときに、特殊な部材を使用することなく、接続部の気密性を完全にすることができる、中空管、中空管接続構造及び中空管接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の中空管接続構造は、第1の中空管の第1の端部と第2の中空管の第2の端部を接続する中空管接続構造であって、第1の中空管は第1の端部から他の端部に向かって外径が大きくなる凸型テーパ部を備え、第2の中空管は第2の端部から他の端部に向かって内径が小さくなり、凸型テーパ部と嵌合する凹型テーパ部を備え、凸型テーパ部を凸型テーパ部の中空部を貫通する所定の第1の中心軸に垂直な平面で切った断面の外周、及び凹型テーパ部を凹型テーパ部の中空部を貫通する所定の第2の中心軸に垂直な平面で切った断面の内周は曲線を含むことを特徴とする。
【0014】
第1の中空管及び第2の中空管は、導電性材料を含んでもよい。そして、第1の中空管及び第2の中空管は、楕円形導波管、あるいは、矩形導波管であってもよい。
【0015】
さらに本発明の中空管接続構造は、凸型テーパ部と凹型テーパ部が嵌合したとき、第1の中心軸及び第2の中心軸が一致し、凸型テーパ部及び凹型テーパ部が、第1の中心軸及び第2の中心軸と成す角度であるテーパ角が一定であってもよい。
【0016】
また、本発明の中空管接続構造は、弾性材料からなる環状の封止部材を備えてもよい。そして、第1の中空管は、第1の中心軸に平行な、封止部材と接触する第1の側面を備え、第2の中空管は、第2の中心軸に平行な、封止部材と接触する第2の側面を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中空管、中空管接続構造及び中空管接続方法は、中空管を接続する端部に、断面の一部に曲線部を含むようなテーパ部を設け、テーパ部同士を嵌合することにより中空管を接続する。そのため、中空管を接続するときの接続部の気密を完全にすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本最良の形態では、中空管の例として導波管を用いる。図1は、本発明の最良の形態の導波管の斜視図である。図2は、本発明の最良の形態の導波管の側面図で、図2(a)は中心軸に直角な方向から見た側面図、図2(b)は端部から導波管内部を中心軸方向に見た側面図である。図3は、最良の形態の導波管接続構造の斜視図である。図4は、本発明の最良の形態の導波管接続構造の側面図である。図5は、図4の導波管接続構造をA−A’で切断したときの断面図である。
【0019】
本実施の形態及び以降の実施例における導波管の構造は、テーパ部を除き、従来から使用されているものと同様であり、当業者には周知のものである。そして、導波管の構造は、テーパ部を除き、本発明の趣旨には直接関係しない。そのため、導波管自体の一般的な説明は省略する。また、本最良の形態及び以降の実施例において接続される2本の導波管の、中空部分の内径はすべて等しいものとする。
【0020】
まず、図1、図2を用いて、最良の形態の第1の導波管1、第2の導波管2の各々の構造について説明する。第1の導波管1及び第2の導波管2は、それぞれ凸型テーパ部3、凹型テーパ部4を備える。本発明での「テーパ部」とは、所定の基準線や基準面に対して傾斜している面をいうものとする。凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が嵌合することにより、第1の導波管1と第2の導波管2は接続される。
【0021】
凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4は、第1の導波管1は中心軸5と、第2の導波管2は中心軸6と一定の角度θ(以降、テーパ角という。)を成す。従って、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4は、頂角が2θである円錐の側面の一部であり、同じ形状の面の表と裏になっている。テーパ角θは、0と90°の間で任意に設定することができる。
【0022】
次に、図3、図4、図5を用いて、最良の形態の導波管の接続構造について説明する。凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4は同じ形状の面の表と裏なので、図3、図4に矢印で示した、第1の導波管1と第2の導波管2を押し付けあう力f1、f2が加わると嵌合し、第1の導波管1と第2の導波管2は接続される。このとき、図5のように、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4は密着する。ただし、厳密には、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4の寸法に誤差があるため、f1、f2が十分大きくなければ密着しない。凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が密着するメカニズムについては後述する。
【0023】
f1、f2を発生させる方法は、特に限定されない。f1、f2を発生させる方法には、例えば、ボルトによる締め付けがあるが、これについては第4の実施例で示す。
【0024】
第1の導波管1及び第2の導波管2が、接続のためにそれぞれ凸型テーパ部3、凹型テーパ部4を備えることにより、通常のフランジを用いた場合より、少ない圧接力で電気的な接触が行える。なぜなら、凸型テーパ部が「くさび」のように凹型テーパ部4に押し込まれるからである。
【0025】
本実施形態では、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の全側面についてテーパ角θは一定である。そのため、嵌合したときの圧接力が凸型テーパ部3、凹型テーパ部4の全側面で一定となり、均一な接触を得ることができる。
【0026】
さらに、テーパ角θが一定である場合には、凸型テーパ部及び凹型テーパ部4が圧接されるときにセルフアライメント効果が発生する。そのため、第1の導波管1の中心軸5と第2の導波管2の中心軸6が一致するような力が加わり、中心軸が一致した正確な嵌合を行うことができる。
【0027】
フランジを用いる従来の導波管接続構造では、多数のボルトを使用し圧接力を強め、ボルトの締め付け力を調整することにより、平面の凹凸による不完全な接触を均一化して電気的な接触を確保している。ところが、本発明では、テーパを用いることにより、圧接力増加効果とセルフアライメント効果を利用し、電気的接触を確保している。
【0028】
ところで、第1の導波管1及び第2の導波管2の製造精度には限界があるため、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の寸法やテーパ角θには誤差が存在する。従って、嵌合時に互いに接触する凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の面の形状は完全には同一ではない。また、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の断面も完全な円ではない。そのため、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4の嵌合時、f1、f2が十分に大きくないときは、互いに接触する面の全体が完全に接触することはない。凸型テーパ部3と凹型テーパ部4を嵌合させるとき、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が接触した瞬間は、両者間には隙間が存在する。
【0029】
しかし、強固に嵌合させるために大きなf1、f2が加わり、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4に十分な圧接力が加わると、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4は中心軸5と中心軸6が一致する方向に移動し、さらに接触面からの反力により変形する。そして、隙間がなくなった位置で静止し、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が全周囲にわかり電気的に接触した接続構造が完成する。
【0030】
図6(a)は、第1の導波管2の断面が正確な円形ではなく、やや偏平な形状(楕円形)に変形しているときの、第1の導波管1と第2の導波管2の接続時の上面図で、図6(b)はその側面図である。図7は、図6のA−A’で切断したときの断面図である。
【0031】
このように、圧接力が小さいときは、図6(b)、図7のように、凸型テーパ部3の外側と凹型テーパ部4の内側に隙間が存在する。ここで、図6(b)で矢印で示したように第1の導波管1と第2の導波管2に圧接力が加えられると、図7のように凸型テーパ部3の外側と凹型テーパ部4の接触部が圧接される。そして、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4は変形し、周囲が完全に接触した状態で静止する。このとき、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4の接触点が連続することにより、円錐の側面の一部を切り取ったような、閉じた帯状の接触面が形成される。
【0032】
ここで、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4の製造精度は、変形により完全な電気的接触が得られる程度以内である必要があることは言うまでもない。
(最良の実施形態の効果)
最良の実施形態では、接続する円形導波管が接続部にテーパ部を備えることにより、通常のフランジを用いた場合より、小さい圧接力で電気的接触を行うことができるという効果がある。また、接続する円形導波管はテーパ部が変形することにより、確実な電気的接触を得ることができる。
【0033】
テーパ角θが一定なので、圧接力が均一になり、テーパ部の周囲全体に確実な電気的接触を得ることができる。テーパ角θが一定なので、テーパ部のセルフアライメント効果も得ることができ、接続される2本の導波管の中心が一致する方向に力が加わるため、中心軸が一致した正確な嵌合を行うことができるという効果もある。
【0034】
このように、接続部に確実な電気的接触が得られるので、接続部からの電波のリークやVWSRの悪化等の問題の発生を防止することができる。
【実施例1】
【0035】
導波管は、円形導波管、楕円導波管、矩形導波管など種々の形状のものが実用化されている。これらの導波管はそれぞれ異なる特徴を持つため、場面に応じて使い分けられている。最良の実施形態では、第1の導波管1及び第2の導波管2が円形導波管であるときの接続構造について説明したが、第1の導波管1及び第2の導波管2は楕円導波管であってもよい。
【0036】
図8は、本発明の第1の実施例の楕円導波管の斜視図で、図9(a)は上面図、図9(b)は中心軸に直角な方向から見た側面図、図9(c)は端部から導波管内部を中心軸方向に見た側面図である。
【0037】
実施例1でも、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4のテーパ角θは一定としている。テーパ角θが一定で、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の断面が楕円のため、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の側面は円錐の側面の一部とはならない。
【0038】
くさびのような形状を持つテーパ自体の効果による強力な圧接力の発生及びセルフアライメント効果については、最良の実施形態の円形導波管の場合と同じなので、説明は省略する。
【0039】
テーパ角θが一定のため、中心軸5及び中心軸6に沿って加えられる圧接力と、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の面の角度は一定である。従って、嵌合したときの凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4に垂直な方向に加わる圧接力は一定となる。そのため、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の周囲の全体について、一定の電気的接触が得られる。
【0040】
また、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の寸法、テーパ角θに誤差があるときでも、圧接力により凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4が変形することによる、圧接力の均一化の効果が得やすい。
【0041】
なお、最良の実施の形態及び実施例1ではテーパ角θを一定とすることで、圧接力の均一化、セルフアライメント効果という特別な効果を得ている。しかし、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4が互いに嵌合可能なテーパ形状である限り気密性の確保は可能であり、本発明の効果は発揮される。従って、本発明においては、テーパ角θが一定であることは必ずしも必須ではない。
(実施例1の効果)
実施例1では、接続する楕円導波管に一定のテーパ角を持つテーパ部を備えることにより、接続時の圧接力を一定とし、確実な電気的接触が得ることができるという効果がある。そのため、接続部からの電波のリークやVWSRの悪化等の問題の発生を防止することができる。
【実施例2】
【0042】
本発明の導波管は、凸型テーパ部3、凹型テーパ部4を備え、それらの断面が曲線を含んでいればよいので、円形、楕円形以外の形状の導波管の接続にも適用することができる。例えば、矩形導波管の接続にも適用することができる。
【0043】
図10は、本発明の第2の実施例の導波管の斜視図である。図11は、本発明の第2の実施例の導波管の側面図で、図11(a)は、導波管の上面図、図11(b)は中心軸に直角な方向から見た側面図、図11(c)は端部から中心軸方向を見た側面図である。
【0044】
図10、図11を用いて、実施例2の第1の導波管1、第2の導波管2の各々の構造について説明する。第1の導波管1は凸型テーパ部3、第2の導波管2は凹型テーパ部4を備える。凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が嵌合することにより、第1の導波管1と第2の導波管2は接続される。
【0045】
最良の実施形態及び実施例1と異なり、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4は、平面部と曲面部とから成る。凸型テーパ部3は平面部7及び曲面部8を、凹型テーパ部4は平面部9及び曲面部10とから成る。局面部8は、点Xを通り中心軸5と平行な中心軸11と一定のテーパ角θを成す。曲面部10は、点Yを通り中心軸6と平行な中心軸12と一定のテーパ角θを成す。従って、局面部8及び曲面部10は、それぞれ頂点がX、Yで、頂角が2θである円錐の側面の4分の1の曲面である。テーパ角θは、0と90°の間で任意に設定することができる。凸型テーパ部3の長さL1及び凹型テーパ部4の長さL2は、テーパ部が完全に嵌合するために、L1>L2としておく必要がある。
【0046】
図12は、本発明の第2の実施例の導波管接続構造の斜視図である。図13は、本発明の第2の実施例の導波管接続構造の側面図で、図13(a)は上面図、図13(b)は中心軸に直角な方向から見た側面図、図13(c)はA−A’で切った断面図である。このように、接触面が同形状でそれぞれ凸型、凹型形状を成す、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4が嵌合することにより、第1の導波管1と第2の導波管2は接続される。
【0047】
テーパ角θが一定であることによる圧接力の均一化、くさびのような形状を持つテーパ自体の効果による強力な圧接力の発生及びセルフアライメント効果については最良の実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
次に、凸型テーパ部3、凹型テーパ部4が確実に接触する原理について説明する。
【0049】
図14(a)は、第1の導波管1と第2の導波管2の接続時の上面図、図14(b)は側面図である。図14(a)、(b)では、第1の導波管2の断面の、底辺の長さに対する高さの比(以降、縦横比という。)が、第2の導波管1の断面の縦横比よりも大きい。図15は、図14のA−A’で切断したときの断面図である。
【0050】
図14(a)、図15のように、第1の導波管2の断面の縦横比が、第2の導波管1の断面の縦横比よりも大きいため、圧接力が小さいときは、凸型テーパ部3の外側と凹型テーパ部4の内部に隙間が生じる。ここで、図14(a)、(b)で矢印f1、f2で示した第1の導波管1と第2の導波管2を押し付け合う力が加えられると、図15のように凸型テーパ部3の外側と凹型テーパ部4の接触部が圧接される。そして、凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の、特に図15の円で示したコーナー部が変形し、周囲が完全に接触した状態で静止する。そして、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4の接触点が連続することにより、平面部7及び曲面部8から成る閉じた帯状の面と平面部9及び曲面部10から成る閉じた帯状面が完全に接触した接触面が形成される。
【0051】
図14、図15では、寸法の誤差を極端に大きく図示しているが、寸法の誤差は凸型テーパ部3、凹型テーパ部4の変形量以下であることを前提としている。
【0052】
矩形導波管同士の接続の場合、従来のような平面のみからなるテーパ部を備えたものでは、上記のようなテーパ部の変形の効果は得られない。図16に、矩形導波管が、平面のみから成るテーパ部を備えたときの接続構造の断面図を示す。図16の平面のみから成る矩形導波管のテーパ部は、特に円で示したコーナー部が対向するテーパ部と接触しにくい。テーパ部が平面を直角に接合した形状のため、コーナー部の曲率が非常に高く、テーパ部に寸法誤差があったときに、対向のテーパ部と密着するように、コーナー部が柔軟に変形しないためである。
【0053】
なお、本実施形態における第1の導波管1、第2の導波管2は、断面の各辺が直線である一般的な矩形導波管であり、断面の長方形の縦横の長さ及び長さの比については特に限定されないことは言うまでもない。
(実施例2の効果)
以上のように、本実施形態によれば、矩形導波管はテーパ部を備え、テーパ部の断面の一部が曲線になっているため、接続される2本の矩形導波管のテーパ部の寸法の誤差を吸収し、確実な接触を得ることができる。そのため、接続部からの電波のリークやVWSRの悪化等の問題の発生を防止することができる。
【実施例3】
【0054】
アンテナ及び無線機は、屋外で使用されることも多い。屋外で使用に備えるために、本発明の第3の実施例の導波管接続構造では、導波管の嵌合部にガスケットを備える。図17は、本発明の第3の実施例の導波管を、導波管の中心軸を含む平面で切断したときの断面図である。図18(a)は第1の導波管1と第2の導波管2との接続時の側面図、図18(b)は、図18(a)のA−A’で切断したときの断面図である。
【0055】
図17のように、第1の導波管1はガスケット13を保持するための環状溝14を備える。第2の導波管2はガスケットと接触するための内壁部15を備える。第1の導波管1の外径は、内壁部15の内径よりも細い。また、ガスケット13の外径は、内壁部15の内径よりもわずかに大きい。各部の径をこのように適切に設定することにより、第1の導波管1と第2の導波管2が接続されたとき、ガスケット13は環状溝14と内壁15の間に挟みこまれ、適度な圧縮を受ける。すなわち、第1の導波管1と第2の導波管2が接続されると、ガスケット13は、図18(a)、(b)のように、第1の導波管1と第2の導波管2の間に挟みこまれる。これにより、ガスケット13は、凸型テーパ部3と凹型テーパ部4との接触による電磁波のリーク防止効果に追加する形で気密性を補強し、防水効果を発揮する。
【0056】
ガスケット13には、通常、合成ゴムなどの絶縁体が使われる。このため、電気的な接触に影響のない位置に装着することが望ましい。第3の実施例では、ガスケット13は、電気的な接触を主目的とするテーパ部とは接していない、環状溝14及び内壁部15と接触させることにより、電気的接触に影響がないようにしている。
【0057】
なお、実施例3では、導波管は円形導波管としたが、導波管の断面形状に適用できるガスケットを使用することで、他の形状の導波管にも対応することができる。
(実施例3の効果)
以上のように、実施例3の導波管接続構造は、導波管にテーパ部と弾力性及び絶縁性のあるガスケットを備える。そのため、テーパ部による確実な電気的接触の効果に加え、接続部の気密が確保できるため防水効果がある。従って、本導波管接続構造を用いた装置は屋外での使用も可能という効果がある。
【実施例4】
【0058】
図19、図20は、本発明の第4の実施例の、導波管接続構造を備えた無線機及びパラボラアンテナの接続方法を示す図で、図19は側面図、図20は斜視図である。
【0059】
無線機16は、凸型テーパ部3を持つ第1の導波管1を備える。アンテナ17は、凹型テーパ部4を持つ第2の導波管2を備える。そして、無線機16とアンテナ17を接続するときは、第1の導波管1と第2の導波管2を嵌合させ、無線機16の端部とアンテナ17の端部にある締結用穴18をボルト19で固定する。
【0060】
このとき、第1の導波管1と第2の導波管2は凸型テーパ部3及び凹型テーパ部4の効果により、確実な電気的接触が確保される。また、第1の導波管1はガスケット13を備えるので、第1の導波管1と第2の導波管2の接続部は防水される。従って、無線機16とアンテナ17を接続し、屋外での使用に対応することができる。
【0061】
なお、第4の実施例で使用する導波管は円形導波管に限らず、楕円、矩形の導波管等、他の形状の導波管であってもよいことは言うまでもない。
(実施例4の効果)
実施例4の導波管接続方法では、ボルトを使ってアンテナに無線機を固定することで、導波管の接続も同時に行う。そのため、保守のための無線機の交換等が容易であるという効果がある。また、構造が簡単で複雑な機構部品がないため、故障が少なく、信頼性の高い無線システムを構成できる効果もある。また、導波管の接続部にガスケットを備えるので、屋外での使用に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の最良の形態の導波管の斜視図である。
【図2】本発明の最良の形態の導波管の側面図である。
【図3】本発明の最良の形態の導波管接続構造の斜視図である。
【図4】本発明の最良の形態の導波管接続構造の側面図である。
【図5】本発明の最良の形態の導波管接続構造の断面図である。
【図6】変形した円形導波管の接続構造の側面図である。
【図7】変形した円形導波管の接続構造の断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例の楕円導波管の斜視図である。
【図9】本発明の第1の実施例の楕円導波管の上面図及び側面図である。
【図10】本発明の第2の実施例の導波管の斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施例の導波管の上面図及び側面図である。
【図12】本発明の第2の実施例の導波管接続構造の斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施例の導波管接続構造の上面図、側面図及び断面図である。
【図14】本発明の第2の実施例の寸法誤差のある導波管の接続構造の上面図及び側面図である。
【図15】本発明の第2の実施例の寸法誤差のある導波管の接続構造の断面図である。
【図16】本発明の第2の実施例の、平面のみからなるテーパ部を備え、寸法誤差のある導波管の接続構造の断面図である。
【図17】本発明の最良の形態の導波管接続構造の接続部を導波管の中心軸に垂直な平面で切断した断面図である。
【図18】本発明の第3の実施例の導波管接続構造の側面図及び断面図である。
【図19】本発明の第4の実施例の導波管接続構造を備える、無線機及びパラボラアンテナの接続方法を示す側面図である。
【図20】本発明の第4の実施例の導波管接続構造を備える、無線機及びパラボラアンテナの接続方法を示す斜視図である。
【図21】従来の導波管接続構造の斜視図及び断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 第1の導波管
2 第2の導波管
3 凸型テーパ部
4 凹型テーパ部
5 第1の中心軸
6 第2の中心軸
7、9 平面部
8、10 曲面部
11、12 中心軸
13 ガスケット
14 環状溝
15 内壁部
16 無線機
17 アンテナ
18 穴
19 ボルト
20 フランジ
21 ナット
22 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の中空管の第1の端部と第2の中空管の第2の端部を接続する中空管接続構造であって、
前記第1の中空管は、前記第1の端部から他の端部に向かって外径が大きくなる凸型テーパ部を備え、
前記第2の中空管は、前記第2の端部から他の端部に向かって内径が小さくなり、前記凸型テーパ部と嵌合する凹型テーパ部を備え、
前記凸型テーパ部を前記凸型テーパ部の中空部を貫通する所定の第1の中心軸に垂直な平面で切った断面の外周、及び前記凹型テーパ部を前記凹型テーパ部の中空部を貫通する所定の第2の中心軸に垂直な平面で切った断面の内周は曲線を含む
ことを特徴とする中空管接続構造。
【請求項2】
前記第1の中空管及び前記第2の中空管は、導電性材料を含む
ことを特徴とする、請求項1記載の中空管接続構造。
【請求項3】
前記第1の中空管及び前記第2の中空管は、楕円形導波管である
ことを特徴とする、請求項2記載の中空管接続構造。
【請求項4】
前記第1の中空管及び前記第2の中空管は、矩形導波管である
ことを特徴とする、請求項2記載の中空管接続構造。
【請求項5】
前記凸型テーパ部と前記凹型テーパ部が嵌合したとき、前記第1の中心軸及び前記第2の中心軸は一致し、
前記凸型テーパ部及び前記凹型テーパ部が、前記第1の中心軸及び前記第2の中心軸と成す角度であるテーパ角が一定である
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の中空管接続構造。
【請求項6】
弾性材料からなる環状の封止部材を備える
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の中空管接続構造。
【請求項7】
前記第1の中空管は、前記第1の中心軸に平行な、前記封止部材と接触する第1の側面を備え、
前記第2の中空管は、前記第2の中心軸に平行な、前記封止部材と接触する第2の側面を備える
ことを特徴とする、請求項6記載の中空管接続構造。
【請求項8】
他の中空管と接続可能な接続部を備える中空管であって、
前記接続部は、一方の端部から他方の端部に向かって外径が大きくなる凸型テーパ部を備え、所定の凹型テーパ部と嵌合し、
前記凸型テーパ部を前記凸型テーパ部の中空部を貫通する所定の中心軸に垂直な平面で切った断面の外周は曲線を含む
ことを特徴とする中空管。
【請求項9】
前記凸型テーパ部が、前記中心軸と成す角度であるテーパ角が一定である
ことを特徴とする、請求項8記載の中空管接続構造。
【請求項10】
他の中空管と接続可能な接続部を備える中空管であって、
前記接続部は、一方の端部から他方の端部に向かって内径が小さくなる凹型テーパ部を備え、所定の凸型テーパ部と嵌合し、
前記凹型テーパ部を前記凹型テーパ部の中空部を貫通する所定の中心軸に垂直な平面で切った断面の内周は曲線を含む
ことを特徴とする中空管。
【請求項11】
前記凹型テーパ部は、前記中心軸と成す角度であるテーパ角が一定である
ことを特徴とする、請求項10記載の中空管接続構造。
【請求項12】
請求項10又は11のいずれかに記載の中空管と接続可能である
ことを特徴とする、請求項8又は9のいずれかに記載の中空管。
【請求項13】
請求項8又は9のいずれかに記載の中空管と接続可能である
ことを特徴とする、請求項10又は11のいずれかに記載の中空管。
【請求項14】
前記中空管は導電性材料から成る
ことを特徴とする、請求項8乃至13のいずれかに記載の中空管。
【請求項15】
前記中空管は楕円形導波管である
ことを特徴とする、請求項8乃至14のいずれかに記載の中空管。
【請求項16】
前記中空管は矩形導波管である
ことを特徴とする、請求項8乃至14のいずれかに記載の中空管。
【請求項17】
弾性材料からなる環状の封止部材と接触する側面を備える
ことを特徴とする、請求項8乃至16のいずれかに記載の中空管接続構造。
【請求項18】
前記側面は、前記中心軸に平行である
ことを特徴とする、請求項17記載の中空管接続構造。
【請求項19】
第1の中空管の第1の端部と第2の中空管の第2の端部を接続する中空管接続方法であって、
前記第1の端部から他の端部に向かって外径が大きくなる凸型テーパ部であって、前記凸型テーパ部の中空部を貫通する所定の第1の中心軸に垂直な平面で切った断面の外周が曲線を含む凸型テーパ部と、前記第2の端部から他の端部に向かって内径が小さくなる凹型テーパ部であって、前記凹型テーパ部の中空部を貫通する所定の第2の中心軸に垂直な平面で切った断面の内周が曲線を含む凹型テーパ部を嵌合させる工程
を備えることを特徴とする中空管接続方法。
【請求項20】
前記第1の中心軸と成す角度であるテーパ角が一定である前記凸型テーパ部と、前記第2の中心軸となす角度が前記テーパ角に等しい前記凹型テーパ部を、前記第1の中心軸及び前記第2の中心軸が一致するように、嵌合させる工程
を備えることを特徴とする、請求項19記載の中空管接続方法。
【請求項21】
前記第1の中空管の所定の第1の側面及び前記第2の中空管の所定の第2の側面に、弾性材料からなる環状の封止部材と接触させる工程
を備えることを特徴とする、請求項19又は20のいずれかに記載の中空管接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−25785(P2008−25785A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201719(P2006−201719)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】