中継装置、車両情報記録システム、及び車両情報記録方法
【課題】ドライブレコーダが有する記録資源を有効に利用して車両の状況を再現可能とし、且つドライブレコーダの負荷を軽減させることを可能とする中継装置、該中継装置を含む車両情報記録システム及び車両情報記録方法を提供する。
【解決手段】夫々データベース61a,61b,61c,61dを備えて各ECU2a,2b,2c又はセンサ3a,3b,3dからデータを受信して記憶するゲートウェイ6a,6b,6c,6dの内、ハードディスクを備えるドライブレコーダ4に接続しているゲートウェイ6dが、データベース61dに記憶されている車両全体に配置されている車載機器から送信されるデータに基づき、ドライブレコーダ4に記録すべく適切な形式、例えば既定のステータス情報などを含む車両情報を再構築(生成)し、ドライブレコーダ4へ送信して記録させる。
【解決手段】夫々データベース61a,61b,61c,61dを備えて各ECU2a,2b,2c又はセンサ3a,3b,3dからデータを受信して記憶するゲートウェイ6a,6b,6c,6dの内、ハードディスクを備えるドライブレコーダ4に接続しているゲートウェイ6dが、データベース61dに記憶されている車両全体に配置されている車載機器から送信されるデータに基づき、ドライブレコーダ4に記録すべく適切な形式、例えば既定のステータス情報などを含む車両情報を再構築(生成)し、ドライブレコーダ4へ送信して記録させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダを含む複数の車載機器が通信可能に接続されている車載機器通信システムに関する。特に、ドライブレコーダに事故又は故障発生時における画像・音声データを記録させるのみならず、その時点での車両全体の状況を再現可能とする情報をドライブレコーダの記録用資源を有効に用いて記録させ、且つドライブレコーダにおける処理負荷を軽減させることができる中継装置、該中継装置を含む車両情報記録システム、及び車両情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故が発生した場合に、事故発生時点の前後における車両の前方を撮像した画像・音声データを記録しておき、事後的に事故原因の究明に役立てることができる記録装置、所謂ドライブレコーダを搭載した車両が提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、車両前方を撮像した画像・音声データのみでは状況が不明な場合もあることから、事故発生時における車両の走行状態を示すデータ、例えば位置データをも保存しておく記録装置が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、車両の事故又は故障が発生した場合、車両の検査を行なったとしても再現しないことが多いため、特定の診断対象部位におけるセンサにて得られた情報をダイアグ情報として記憶しておき、ダイアグ情報を外部から取得可能な構成とすることにより、事後的にこれらを解析して故障及び故障発生傾向を正確に把握することが可能な車両状況監視システムが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−297823号公報
【特許文献2】特開平8−235491号公報
【特許文献3】特開2005−146905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至3の技術によれば、事故発生時における画像・音声データ、事故発生時の走行状態、又は特定の診断対象部位におけるセンサにより得られるダイアグ情報を記録しておくことにより、事後的に事故又は故障発生の原因究明に役立てることができる。
【0007】
しかしながら、昨今の車両では、制動処理などをも含め各種運転支援を電気的制御にて実現する機能が増加しており、車両に搭載される制御対象である各種アクチュエータと、夫々を制御する制御装置(ECU:Electronic Control Unit)が多数搭載されている。
【0008】
事故又は故障が発生した場合、事後的に特定のセンサ又はアクチュエータにおける測定値、制御値等を記録しておいたとしても事故又は故障の再現ができず、原因を特定できない場合が多い。事故又は故障が発生した時点で、故障に直接的に関係する特定のセンサ又はアクチュエータにおける動作のみならず、正常に動作しているECUの挙動も含めて車両全体の状況を再現できることが望ましい。
【0009】
そこで、車両に搭載されている各センサ、アクチュエータ及びECUにおける測定値、制御値等を特定のものに限定せずに全て記録しておき、車両全体の状況を再現できるようにする構成が考え得る。この場合、データ量が多く、記録容量の大きな記録装置が必要となる。このとき、大容量の記録媒体を有する専用の記録装置を新たに搭載する構成とするよりも、交通事故の発生を抑制するために搭載されるドライブレコーダの記録用資源を有効に利用することがより効率的である。
【0010】
ドライブレコーダに、画像・音声データのみならず、車両に搭載されている各センサ、アクチュエータ及びECUにおける測定値、制御値等のデータを記録して事後的に参照可能とする場合、これらのデータは元々制御に用いられるデータであるから、そのまま蓄積保存するには適切でない。そこで、記録するデータをドライブレコーダで保存するための適切な形式へフォーマット変換が必要になるが、当該変換処理を特定のECU又はドライブレコーダが実行する構成とすると、当該特定のECU及びドライブレコーダの負荷が増加する。データを収集する処理及び変換処理が必要となるからである。また、当該特定のECU及びドライブレコーダが故障した場合に、記録されているべきデータが記録されない状況となる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ドライブレコーダの記録用資源を有効に利用して車両の状況を再現可能とし、且つドライブレコーダの負荷を軽減させることを可能とする中継装置、該中継装置を含む車両情報記録システム及び車両情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る中継装置は、車両に搭載される複数の車載機器からなる車載機器群に接続されており、車載機器と通信する手段と、前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースとを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データべースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより、車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置において、任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、該生成手段が生成した情報を、前記車載機器群の内の特定の車載機器へ送信するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る中継装置は、車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段を備え、前記生成手段は、前記検知手段が障害の発生を検知した時点で前記データベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る中継装置は、任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を、記憶領域に時系列に記憶する手段と、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、前記手段が時系列に記憶している複数の時点におけるデータを前記記憶領域とは異なる記憶領域に記憶する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る中継装置は、前記検知手段は、前記車載機器から所定の周期にて送信される任意の情報を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る中継装置は、前記検知手段は、車載機器から受信したデータの値、又は前記データの値の変化が異常か否かに基づき障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る中継装置は、他の中継装置と通信する手段を備え、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生通知を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る中継装置は、他の中継装置と通信する手段を備え、前記検知手段は、他の中継装置から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る車両情報記録システムは、車両に搭載される複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及び前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新させ、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにおいて、前記複数の車載機器群の内のいずれか1つの車載機器群に含まれる車載機器として、車両内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置を含み、該記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置は、自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、該生成手段が生成した車両情報を、前記記録装置へ送信するようにしてあり、前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された情報を受信して記録するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る車両情報記録システムは、各車載機器群に接続されている前記中継装置は夫々、相互に通信する通信手段と、車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段とを備え、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生を通知するようにしてあり、前記特定の中継装置の生成手段は、前記検知手段により障害の発生を検知した時点、又は他の中継装置から障害発生の通知を受けた時点におけるデータベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
第10発明に係る車両情報記録システムは、前記記録装置は、車両情報の送信要求を前記特定の中継装置へ所定の周期で送信する手段を備え、前記特定の中継装置の障害検知手段は、前記送信要求を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
第11発明に係る車両情報記録方法は、車両に搭載される複数の車載機器からなる複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及びデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにて、前記複数の車載機器群の内の1つの車載機器であり、車内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置が、車両の状況を示す車両情報を記録する方法であって、前記記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置が、自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む前記車両情報を所定の形式にて生成し、生成した情報を、前記記録装置へ送信し、前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された車両情報を受信して記録することを特徴とする。
【0023】
第1発明、第8発明及び第11発明では、制御対象機器、制御対象機器を制御する制御装置、制御に用いられる物理量を測定するセンサなどの車載機器群に接続され、各車載機器から送信されるデータをデータベースに記憶させて中継を行なう中継装置が、前記車載機器の内の特定の車載機器である車両情報を記録する記録装置、即ちドライブレコーダにてそのまま記録することが可能となるように、自身のデータベースに任意の時点で記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成し、記録装置へ送信する。
【0024】
複数の車載機器を含む車載機器通信システムでは、各車載機器は、制御対象の系統、例えば運転制御系、安全系、ボディ系、情報系などに分類され、系統別に通信線を介して接続されてデータを送受信し合って連携して制御を行なうように構成されている。そして、系統別に分けられた車載機器群が接続している通信線は中継装置(ゲートウェイ)に接続されて、中継装置により系統が異なる車載機器群の間でのデータの中継がなされる。このとき中継装置は、データが記憶されるデータベースを備え、車載機器から受信したデータを一旦データベースに記憶させてデータベースから車載機器(ECU)へデータを分配するシステムが提案されている(特開2008−022158号参照)。この場合、中継装置はデータを中継するために各車載機器から送信されるデータをデータベースに記憶して一元的に集約させているから、記録装置(ドライブレコーダ)で車両情報を記録させるために各車載機器から改めてデータを収集する処理は必要としない。記録装置でデータを収集する必要もなく、記録装置は送信された情報を記録すればよい。更に、車両の状況を再現するための車両情報を記録するための手段として、画像・音声データを記録すべく車両に搭載される記録装置の記録用資源を有効に利用することが可能になる。
【0025】
更に第8発明では、複数の車載機器群と、車載機器群毎に車載機器群に接続される中継装置とを含み、複数の中継装置が相互に接続されて自身のデータベースに記憶するデータを送受信し合いデータベースの内容を同期させ、同期後のデータベースからデータを自身に接続する車載機器群へ送信して中継を実現するシステムにて、複数の中継装置の内の、記録装置(ドライブレコーダ)が車載機器として接続している特定の中継装置が、同期後のデータベース即ち内容の同期が保障されており、且つ車両全体の状況を表すデータベースのデータを含む情報を生成する。
【0026】
これにより、記録装置で車両情報を生成する処理を行なわせることなしに、複数の車載機器群に亘る車両全体の状況を再現するために有用なデータを含む情報を、特定の車載機器である記録装置に記録させ、記録装置における記録用資源を有効に利用することが可能となる。
【0027】
第2発明及び第9発明では、車両の事故又は車載機器の故障などの障害の発生が検知された時点でデータベースに記憶されているデータ、即ち障害が発生した時点における車両の状況を示すデータを含む情報が生成され、記録装置へ送信される。故障の発生には、中継装置自身における障害、各車載機器との間の通信における断線などの障害発生も含む。これにより、障害が発生した時点における各車載機器の状況を示す情報が、記録装置にて生成処理などを行なわせることなく記録装置に記録される。
【0028】
第3発明では、中継装置は自身のデータベースに記憶されるデータの一部又は全部を時系列に記憶しておき、障害の発生が検知された時点及びその前後の複数の時点におけるデータべースのデータの一部又は全部を更に異なる記憶領域に保存すべく記憶する。保存の方法としては、データを時系列に記憶している記憶領域を保護して上書きしないようにするようにしてもよい。これにより、障害が発生した時点及びその前後の時点における各車載機器の状況を示すデータが中継装置で保存されるので、障害発生時に記録装置に記録ができない場合であっても、事後的に保存されてあるデータを参照して車両の状況を再現することが可能となる。
【0029】
第4発明及び第10発明では、中継装置は外部(車両情報を記録する記録装置又は他の中継装置)から定期的に送信されるべき正常通知(記録装置からの送信要求)を受信できない場合に、障害の発生を検知する。これにより、中継装置間での通信障害又は中継装置と記録装置との間における通信障害が発生した場合にこれを検知し、その時点で正常な動作を続行している他の車載機器における状況をも含むデータベースのデータから車両情報を生成して記録装置に記録させることが可能となる。また、記録装置との通信に障害が発生し、記録装置へ生成した車両情報を送信することができない場合も、各中継装置で複数の時点におけるデータベースのデータの一部又は全部が保存されるから、事後的に車両全体の状況を再現することが可能である。
【0030】
第5発明では、データベースに記憶されるデータの値が異常か否か、又は値の時間的変化が異常か否かによって、車両の事故又は車載機器若しくは中継装置における故障など障害の発生を検知する。中継装置は、車載機器群に接続されて中継を行なうために既に各車載機器からデータを逐次受信してデータベースに記憶しているから、データの値の異常性を、他のデータ又は時間的な変化に基づき総合的に判断することが可能である。
【0031】
第6発明では、中継装置は他の中継装置が存在する場合に相互に通信する手段を備え、自身が障害の発生を検知した場合に他の中継装置へ障害発生を通知し、他へ障害の発生を知らしめることが可能となる。
【0032】
第7発明では、中継装置は他の中継装置が存在する場合に相互に通信する手段を備え、中継装置は外部から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知したと認識する。これにより、中継装置自身は正常であって、自身に接続されている車載機器のいずれか、又は接続される他の中継装置にて故障が発生した場合であっても、障害と認識し、正常に動作している他の車載機器における状況をも含むデータベースのデータを記録装置へ送信して記録させるか、又は、中継装置自身にて保存する。中継装置自身に保存する場合は、自身に障害が発生していないときでも、記録装置との間の通信に障害が発生するなど記録装置には記録ができないときに、事後的に保存されてあるデータを参照して車両の状況を再現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による場合、車両の状況を示すデータを記録すべく搭載されているドライブレコーダを含む複数の車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置が、ドライブレコーダにて記録できるよう、任意の時点で各車載機器から送信されて中継装置自身にてデータベースに記憶している情報を所定の形式にて生成して送信する。これにより、ドライブレコーダでは、正常な動作をしている車載機器をも含む各車載機器からのデータを記録できる。ドライブレコーダが有する比較的大容量の記録用資源を有効に利用して車両の状況を再現可能とし、且つドライブレコーダでは各車載機器からデータを収集する処理であるとか、各車載機器からのデータから所定の形式に情報を生成するなどの処理を実行しないから、処理負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1における車載通信システムを構成するゲートウェイ及びドライブレコーダの内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるゲートウェイの制御部により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1におけるゲートウェイの制御部により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図6】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部が、データベースの内容を記憶する処理を模式的に示す説明図である。
【図7】実施の形態2におけるゲートウェイの記憶部にて、データベースの内容が保存される処理を模式的に示す説明図である。
【図8】実施の形態2におけるドライブレコーダ及びゲートウェイの間での送信要求及び車両情報の送受信処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部の監視部及び検知部の機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部の監視部及び検知部の機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下に示す実施の形態では、車両に搭載される各種アクチュエータ、センサ及びECUが複数接続され、ECU間におけるデータの送受信を中継装置によって中継する車載通信システムに、本発明に係る中継装置を適用した場合を例に説明する。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。車載通信システムは、車両の各種機能を実現するためのモータなど制御対象であるアクチュエータ(図1中、ACTで示す)1a,1b,1cと、アクチュエータ1a,1b,1cを制御するなどの処理を行なうECU2a,2b,2c,2dと、車内外における各種物理量を測定するセンサ3a,3b,3cと、車内外の情報を記録するドライブレコーダ4と、車載機器間を接続する通信線5a,5b,5c,5dと、異なる通信線5a,5b,5c,5d間におけるデータを中継するゲートウェイ6a,6b,6c,6dと、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間を接続する通信線7とを含む。
【0037】
実施の形態1における車載通信システムは、幹線である通信線7により接続されるゲートウェイ6a,6b,6c,6d夫々に、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3c及びドライブレコーダ4が通信線5a,5b,5c,5dを介して接続され、幹線型の車載ネットワークを構成している。以下、説明を明瞭とするため、通信線5a,5b,5c,5dを支線5a,5b,5c,5dと呼び、通信線7を幹線7と呼ぶ。
【0038】
アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d及びセンサ3a,3b,3cは、その機能により系統に分けられて系統別に群を形成している。例えば実施の形態1では、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aは、エンジン制御、ブレーキ制御などの運転制御系に携わる車載機器群であり、アクチュエータ1b、ECU2b,2b及びセンサ3bは、シートベルト又はエアバッグなどの安全系に携わる車載機器群である。アクチュエータ1c、ECU2c,2c及びセンサ3cは、ドア又はヘッドライトなどのボディ系の機能に携わる車載機器群である。また、ECU2d,2dは、インパネ(インストゥルメントパネル)におけるディスプレイ、オーディオ制御又はナビゲーションシステムなどの情報系の機能に携わる車載機器群である。
【0039】
情報系の車載機器群には、ドライブレコーダ4が含まれる。ドライブレコーダ4は図示しない車外を撮像するカメラと接続され、カメラから得られる画像データを記録する装置である。また、図示しない車内外の音声を集音するマイクロフォンと接続されて音声データをも記録するようにしてもよい。
【0040】
運転制御系の群に属する車載機器は、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aのみならず、更に複数のアクチュエータ、ECU及びセンサが含まれることは勿論であり、他の系統の車載機器群でも同様である。
【0041】
そして、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3c及びドライブレコーダ4は夫々、群毎に支線5a,5b,5c,5dに接続され、相互にデータを送受信することが可能に構成されている。支線5a,5b,5c,5dを介した通信のプロトコルはCAN(Controller Area Network)のプロトコルに準じてデータを送受信する。したがって、支線5a,5b,5c,5dを介して送受信されるデータは複数でまとめられ、そのデータに応じてメッセージIDが割り当てられている「メッセージ」として送受信される。なお、通信のプロトコルはLIN(Local Interconnect Network)、FlexRay(登録商標)でもよい。
【0042】
各群には夫々、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが接続されている。運転制御系の車載機器群(アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3a)が接続される支線5aにはゲートウェイ6aが接続されている。ゲートウェイ6aは、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aから送信されるデータをいずれも受信することが可能である。他の群に属するゲートウェイ6b,6c,6dも同様である。
【0043】
そして、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは幹線7を介して相互にデータを送受信することが可能に構成されている。図1では幹線7に対するゲートウェイの接続形態はバス型であるが、接続形態はスター型、ディジーチェーン型などでもよい。また、幹線7における通信プロトコルは特に限定されない。Ethernet(登録商標)を用いてもよいし、CANネットワークを利用してもよいし、その他のプロトコルを用いてもよい。
【0044】
このように各車載機器及びゲートウェイ6a,6b,6c,6dが接続される車載通信システムにおいて、ECU2a,2b,2c,2dは、車輪速センサ、操舵角センサなどのセンサ3a,3b,3cにより測定された測定値を取得する機能、取得した測定値に基づく計算値を算出する機能、測定値又は計算値に基づき制御値を決定する機能などを有する。ECU2a,2b,2c,2dは、アクチュエータ1a,1b,1cを制御するか、又は他のECU2a,2b,2c,2dでの制御に用いる計算値、制御値等を求める。例えば運転制御系に属するECU2aは、ABS(Antilock Brake System)として機能し、制動時に車輪速センサであるセンサ3aにて検知した車輪速の測定値に基づいてブレーキを制御する。
【0045】
ECU2a,2b,2c,2dは、測定値、計算値、又は制御値をデータとして、アクチュエータ1a,1b,1cへ制御のために送信するのみならず、支線5a,5b,5c,5dを介してゲートウェイ6a,6b,6c,6dへ送信する。センサ3a,3b,3cからも測定値などのデータを含むメッセージが、支線5a,5b,5c,5dを介してゲートウェイ6a,6b,6c,6dへ送信される。
【0046】
ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々記憶部を備え、記憶部における記憶領域をデータベース61a,61b,61c,61dとして使用する。ゲートウェイ6aは、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aから送信されるメッセージからデータを抽出してデータベース61aに記憶し、データベース61aに記憶されているデータからメッセージを構築してアクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aへ送信する。ゲートウェイ6b,6c,6dも夫々、自身に接続されている車載機器群から送信されるメッセージからデータを抽出してデータベース61b,61c,61dに記憶する。
【0047】
ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは相互に、データベース61a,61b,61c,61dのデータを10ミリ秒毎など定期的に送受信する同期通信を実行する。同期通信を行なってデータベース61a,61b,61c,61dの内容を同期させる。これにより、データベース61a,61b,61c,61dの内容が同一となり、即ち異なる群の車載機器から送信されるデータも含めて内容が同一となる。したがって、センサ3aから送信されたデータはゲートウェイ6aを介した同期通信により、ゲートウェイ6bのデータベース61bにも反映され、ゲートウェイ6bがデータベース61bから当該データを読み出してアクチュエータ1bへ送信することにより、データ内容の同一性及び同時性を担保したデータの中継が実現される。
【0048】
このように構成される車載通信システムにおいて、ドライブレコーダ4には、車内外における画像・音声データのみならず、事故又は故障が発生した場合に車両の状況を再現するため、ECU2a,2b,2c,2dの処理に関する計算値又は制御値、及びセンサ3a,3b,3cの測定値などの車両情報をも記録する。実施の形態1における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3cから送信されるデータを受信してデータベース61a,61b,61c,61dに記憶し、更にデータベース61a,61b,61c,61dのデータをゲートウェイ6a,6b,6c,6d間で送受信し合い内容を同期させている。したがって、データベース61a,61b,61c,61dのいずれかで記憶されているデータを、ドライブレコーダ4に記録できればよい。
【0049】
ただし、データベース61a,61b,61c,61dのいずれかに記憶されているデータを車両情報としてそのままドライブレコーダ4に記録させるのでなく、ドライブレコーダ4に適したフォーマットで記録されるようにする。ドライブレコーダ4に記録されるべき車両情報は、事後的に解析・分析のために使用されるデータであるから、どのようなデータが含まれているか、いつの時点におけるデータであるのかなどを分析することが可能な形式で記録されるべきである。なおこのとき、ドライブレコーダ4でどのような形式で車両情報が記録されるべきかが規定されていてもよい。データベース61a,61b,61c,61dに記憶されているデータは、制御に用いるために送受信されるデータであって、解析・分析対象である車両情報としてのデータではない。しかもゲートウェイ6a,6b,6c,6dは車載装置であるから、データベース61a,61b,61c,61dとして使用される記憶部の記憶容量は最小限とされるため、各データについてのインデックス情報は省略される場合がある。したがってデータベース61a,61b,61c,61dの内容をそのまま車両情報とする構成では、何のデータであるかが判別できない場合がある。
【0050】
そこで、ドライブレコーダ4が接続されている情報系に属するゲートウェイ6dが、データベース61dに任意の時点で記憶されているデータに基づき、ドライブレコーダ4において適切な形式、例えば各データの内容を示す情報、及び既定のステータス情報などを含む車両情報を再構築(生成)し、ドライブレコーダ4へ送信して記録させる。このときドライブレコーダ4では、時刻情報も共に記録されることが望ましい。
【0051】
図2は、実施の形態1における車載通信システムを構成するゲートウェイ6d及びドライブレコーダ4の内部構成を示すブロック図である。ゲートウェイ6a,6b及び6cの内部構成は、ゲートウェイ6dの内部構成と基本的に同様であるから、図示及び詳細な説明を省略する。
【0052】
ゲートウェイ6dは、各構成部の動作を制御する制御部60dと、制御部60dの処理により発生する情報を一時的に記憶する一時記憶部62dと、データベース61dに使用する記憶部63dと、支線5dに接続されている支線通信部64dと、幹線7に接続されている幹線通信部65dとを備える。
【0053】
制御部60dは、CPU(Central Processing Unit)を用いて構成される。制御部60dは、図示しない車両のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない内蔵メモリに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して、中継処理及び後述にて示す各種処理を実行するようにしてある。
【0054】
一時記憶部62dは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static RAM)などのRAMを用いて構成される。記憶部63dは、DRAM若しくはSRAMなどのRAM又はフラッシュメモリを用いて構成され、制御部60dがECU2d,2dから受信したデータ、及び他のゲートウェイ6a,6b,6cから受信したデータを記憶するデータベース61dのための記憶領域が確保されている。制御部60dは、ECU2d,2d又はゲートウェイ6a,6b,6cからデータを受信した場合、データの種類毎に対応する具体的な測定値、計算値、制御値を抽出してデータベース61dに記憶する。
【0055】
支線通信部64dは、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、支線5dを介して接続されているECU2d,2dとのメッセージの送受信を実現する。支線通信部64dは、支線5dを介してECU2d,2dのいずれかからメッセージが送信された場合、制御部60dへ通知する。実施の形態1では、支線5dにおける通信プロトコルはCANであるので、支線通信部64dとしてCANコントローラ及びCANトランシーバを用いる。制御部60d、一時記憶部62d、記憶部63d及び支線通信部64dは夫々、CAN対応のマイクロコンピュータの一部であってもよい。
【0056】
制御部60dは基本的に、支線通信部64dにより、ECU2d,2dからデータを含むメッセージを受信し、データベース61dに記憶されているデータの内、接続されているECU2d,2d及びドライブレコーダ4などの車載機器が必要とするデータを抽出してメッセージを送信する。
【0057】
幹線通信部65dは、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、幹線7を介して接続される他のゲートウェイ6a,6b,6cとの同期通信用のデータの送受信を実現する。
【0058】
制御部60dは、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cへデータベース61dから抽出したデータを送信し、他のゲートウェイ6a,6b,6cから送信されるデータを受信する。このとき制御部60dは幹線通信部65dにより複数のデータをまとめたフレームにて送受信するようにしてあり、同期通信フレームという。制御部60dは、一定期間が経過する都度、定期的にデータベース61dに記憶されているデータから同期通信フレームを生成して他のゲートウェイ6a,6b,6cへ送信する同期通信を実行する。
【0059】
ドライブレコーダ4は、各構成部の動作を制御する制御部40と、画像データ411、音声データ412及び後述の車両情報413を記録する記録部41と、支線5dに接続されている通信部42とを備える。
【0060】
制御部40は、CPUを用いて構成され、図示しない電力供給装置から電力の供給を受け、各構成部の動作を制御する。記録部41は、ハードディスクを用いて構成され、画像データ411、音声データ412及びゲートウェイ6dから送信される車両情報413を記録する。記録部41には、ハードディスクなどの比較的大容量のデータを記録するために適切な記録媒体を用いることが望ましいが、他に、フラッシュメモリ、SDメモリカードなど、ドライブレコーダ4から取り出すことが可能な記録媒体でもよい。
【0061】
通信部42は、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、支線5dを介して接続されているECU2d,2d及びゲートウェイ6dとのメッセージの送受信を実現する。制御部40は、通信部42によりゲートウェイ6dから送信される車両情報を含むメッセージを受信し、受信した車両情報を記録部41に記録する。なお、実施の形態1において通信部42はCANプロトコルに準ずる。
【0062】
次に、図2に示したハードウェア構成を有するゲートウェイ6dにおいて実現される更に詳細な機能について説明する。図3は、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実現される機能を示す機能ブロック図である。
【0063】
制御部60dは内蔵メモリから、コンピュータをゲートウェイ6dとして機能させるためのコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、支線通信部64d、幹線通信部65d及び記憶部63dと協働して、データベース処理部601d、及び車両情報生成部602dとして機能する。
【0064】
データベース処理部601dとしての機能により制御部60dは、データベース61dにおけるデータの読み書き、及び、データベース61dのデータに関する外部との通信を実現する。制御部60dはデータベース処理部601dの機能により、支線通信部64dにより受信したメッセージからデータを抽出して記憶部63dのデータベース61dに記憶する処理、データベース61dから抽出したデータからメッセージを生成して支線通信部64dによりECU2d,2d又はドライブレコーダ4へ送信する処理を実行する。
【0065】
また、制御部60dはデータベース処理部601dの機能により、幹線通信部65dにより受信したゲートウェイ6a,6b,6cからの同期通信フレームからデータを抽出してデータベース61dに記憶する処理、データベース61dからECU2d,2dにより送信されて記憶されるデータなど、ゲートウェイ6dにて更新されるデータを含む同期通信フレームを生成して幹線通信部65dにより送信する処理を実行する。
【0066】
車両情報生成部602dとしての機能により制御部60dは、データベース61dにおける同期通信周期、又はECU2d,2dから送信されるデータに基づく更新周期などに基づき、定期的にデータベース61dからドライブレコーダ4で記録するために適切な形式の車両情報を生成する。そして制御部60dは車両情報生成部602dにて生成した車両情報をCANに基づくメッセージに含めて支線通信部64dからドライブレコーダ4へ送信する。
【0067】
なお、ゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cも、データベース処理部として機能する。ただし、車両情報生成部602dの機能は少なくとも、ドライブレコーダ4が接続されているゲートウェイ6dにて実現されればよい。したがってゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cは、車両情報生成部602dの機能を有しなくてよい。
【0068】
次に、ゲートウェイ6dの制御部60dの機能を、フローチャートを参照して説明する。図4は、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。制御部60dは、電力供給装置から電力の供給を受けている間、基本的に以下に示す処理を継続して実行する。
【0069】
制御部60dは、車両情報を生成する周期が到来したか否かを判断する(ステップS1)。より具体的には、制御部60dは、図示しないタイマにより時間の経過を測定し、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間における同期通信の周期、又はデータベース61dにおけるデータの更新周期などが勘案された所定の周期が到来したか否かを判断する(S1)。
【0070】
制御部60dは、周期が到来していないと判断した場合(S1:NO)、処理をステップS1へ戻して周期が到来するまで待機する。制御部60dは、周期が到来したと判断した場合(S1:YES)、ゲートウェイ6a,6b,6cとの間の同期通信により内容が同期されているデータベース61dから、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS2)。
【0071】
制御部60dは、ステップS2にて生成した車両情報を支線通信部64dからドライブレコーダ4へ送信し(ステップS3)、処理を終了する。制御部60dは、再び図4のフローチャートに示した処理を実行し、周期が到来する都度、車両情報をデータベース61dから生成してドライブレコーダ4へ送信する処理を実行する。
【0072】
これによりドライブレコーダ4では、記録部41へそのまま記録することが可能な車両情報を受信することができる。ドライブレコーダ4は、定期的に車両情報をゲートウェイ6dから受信し、記録部41に記録する。即ちドライブレコーダ4の制御部40は、車両情報を受信する都度、記録部41に記録する。ただし、記録部41の記録容量には限界があるので、ドライブレコーダ4では受信した車両情報をすべて記録しておくことは不可能である。したがって、記録部41に記録してある記録情報の内、最も古い車両情報413は削除又は上書きが可能にしてある。ドライブレコーダ4にて、車両の事故の発生が検知された場合、画像・音声データ411,412をカメラ及びマイクロフォンから取り込んで記録すると共に、記録部41に記録してある複数の時点の車両情報413、及び事故の発生が検知されてから所定時間が経過するまでに記録部41に記録される車両情報413を保存しておく。具体的には、別途記録部41の別領域に保存用に記録するようにしてもよい。
【0073】
上述のようなゲートウェイ6d及びドライブレコーダ4の動作により、ドライブレコーダ4には、事故が発生した時点及びその前後において、正常に動作しているアクチュエータ1a,1b,1c又はECU2a,2b,2cにおけるデータをも含めた車両情報が記録される。これにより、車両情報を用いて事後的に車両の状況を再現することが可能である。
【0074】
なお、ドライブレコーダ4は、事故発生時の画像・音声データ411,412を記録するために大容量の記録媒体を用いた記録部41を備えている。したがって上述のように当該記録用の資源を有効に利用し、別途車両情報を記録するための専用の装置を新たに搭載する構成とするよりも効率的に、車両の状況を再現することが可能となる車両情報413を記録することができる。
【0075】
またドライブレコーダ4に車両情報413を記録させるために、ゲートウェイ6dがデータを再構築するなどして車両情報を生成し、ドライブレコーダ4へ送信する。ゲートウェイ6dは、データを中継するために各ECU2a,2b,2c、及びセンサ3a,3b,3cから送信される全データを一元的に集約して記憶するデータベース61dを有しており、更にゲートウェイ6a,6b,6cとの間でデータベース61a,61b,61c,61dの内容を同期するから、ゲートウェイ6dは、車両情報を生成するために改めてデータを収集する必要もない。更にゲートウェイ6dが、ドライブレコーダ4にて記録するために適した形式にて車両情報を生成する。したがって、ドライブレコーダ4では車両情報を生成するためにデータを収集する処理も、車両情報を生成(再構築)する処理自体も実行せずとも、ドライブレコーダ4にて車両の状況を再現することを可能とする情報を記録することができる。
【0076】
なお、実施の形態1では、図3の機能ブロック図における各機能は、ソフトウェア的に実現する構成としたが、各機能をチップ化するなどしてASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによりハードウェア的に実現する構成としてもよい。
【0077】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ドライブレコーダ4が接続されているゲートウェイ6dが周期的に、自身のデータベース61dのデータに基づき車両情報を生成し、ドライブレコーダ4へ送信し、ドライブレコーダ4にて事故の発生が検知されたときに記録されている車両情報を保存する構成とした。
【0078】
実施の形態2では、ドライブレコーダ4が車両情報の送信要求をゲートウェイ6dへ送信し、ゲートウェイ6dが送信要求に応じて車両情報を生成して送信する。更に実施の形態2では、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、事故又は故障などの障害の発生を検知する機能を有する構成とし、障害の発生を検知した場合にデータベース61a,61b,61c,61dの内容を保存し、且つゲートウェイ6dが車両情報を生成して送信する構成とする。
【0079】
実施の形態2における車載通信システムのハードウェア的な構成は、実施の形態1における構成と同様であるので、各装置及び構成部のハードウェアについて共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。以下に、相違点である障害を検知する検知機能、及びデータベース61a,61b,61c,61dの内容の保存機能について説明する。
【0080】
図5は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実現される機能を示す機能ブロック図である。なお、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにおける機能と共通する機能については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
制御部60dは、データベース処理部601d及び車両情報生成部602dとしての機能に加え、データベース61dに記憶するデータの値、又は値の変化を監視する監視部603d、及び自身又は他の装置における障害を検知する検知部604dとして機能する。
【0082】
監視部603dとしての機能により制御部60dは、データベース処理部601dの機能によりデータベース61dに記憶されるデータの具体的な数値情報を監視し、データの値が異常の基準となる閾値以上であるか否か、又はデータの値の変化が異常であるか否か、例えば10秒間に異常の基準となる所定割合以上増加したか否かなどを判断する。監視部603dとして機能する制御部60dは、データの値が閾値以上であると判断した場合、又はデータの値の変化が異常であると判断した場合、検知部604dへ障害発生を通知する。
【0083】
検知部604dとしての機能により制御部60dは、監視部603dからの障害発生の通知を検知した場合、障害が発生したと認識して車両情報生成部602dへ車両情報を生成すべく指示する。また、検知部604dとしての機能により制御部60dは、監視部603dからの障害発生の通知を検知した場合、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cへ障害発生の通知を送信する。
【0084】
更に検知部604dとしての機能により制御部60dは、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cのいずれかから事故の発生又は故障の発生などを含む障害発生の通知を受信した場合、障害が発生したと認識して車両情報生成部602dへ車両情報を生成すべく指示する。なお、事故の発生は、安全系のECU2b,2bのいずれかから衝突などを検知した場合にゲートウェイ6bへ通知されて、ゲートウェイ6bにて障害発生として検知される。
【0085】
また、制御部60dは、支線通信部64dにより、ドライブレコーダ4から定期的に送信される車両情報の送信要求を受信したことを検知し、受信した送信要求に応じて、車両情報生成部602dの機能により車両情報を生成して送信する。そして制御部60dは、検知部604dとしての機能により定期的に受信されるべき送信要求を実際に定期的に受信しているか否かを判断し、定期的に受信できていない場合には、ドライブレコーダ4との間の支線5dにおける通信に障害が発生したと検知する。制御部60dは、障害の発生を検知したと判断した場合、上述のように幹線通信部65dにより障害発生の通知を他のゲートウェイ6a,6b,6cへ送信する。
【0086】
また、実施の形態2におけるゲートウェイ6dでは、データベース処理部601dの機能により、任意の時点でデータベース61dに記憶されているデータを、記憶部63dにおけるデータベース61dとは異なる領域に時系列に記憶する。より具体的には、記憶部63dに、データベース61dの内容をリングバッファにて記憶するように記憶領域を確保し、一定時間毎に、最も古い領域に最新のデータベース61dの内容を記憶する。例えば、同期通信を実行する都度に記憶する。
【0087】
なお、データベース61dの構成を元々リングバッファの構成としてもよい。この場合、データベース処理部601dの機能により制御部60dは、支線通信部64dにより受信したメッセージからデータを抽出し、リングバッファにおける最新のデータを書き込むべきバッファに逐次データを記憶する。
【0088】
図6は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dが、データベース61dの内容を記憶する処理を模式的に示す説明図である。図6の各矩形は、各車載機器から送信される各データD1 ,D2 ,D3 ,…の具体的な数値情報が記憶される領域を示す。各列が各時点ti-2,ti-1,ti ,…におけるデータベース61dの内容を示す。制御部60dは、各列の記憶領域を左側から順に時系列的に用いてデータベース61dの内容を記憶する。
【0089】
なお、ゲートウェイ6dのみならず、各ゲートウェイ6a,6b,6cでも同様に、各自、データベース61a,61b,61cの内容を別途記憶部63a,63b,63cの記憶領域に時系列に記憶する。
【0090】
そして、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dは、検知部604dの機能により、障害の発生を検知した場合、図6に示したように時系列に記憶しているデータベース61dの内容を保存する。即ち、記憶部63dに確保したリングバッファに記憶している複数の時点夫々におけるデータベース61dの内容を別途、記憶部63dの別の記憶領域に記憶し、事後的に読み出すことが可能なように保持しておく。
【0091】
図7は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの記憶部63dにて、データベース61dの内容が保存される処理を模式的に示す説明図である。
【0092】
図7(a)には、データベース61dの内容が時系列に記憶されているリングバッファの内の、障害発生が検知された時点ti 及びその前後の時点ti-1,ti+1における内容を記憶していた領域がロックされて上書き禁止にされることで保存される様子が示されている。
【0093】
図7(b)には、同様にデータベース61dの内容が時系列に記憶されているリングバッファの内の、障害発生が検知された時点ti 及びその前後の時点ti-1,ti+1における内容を記憶していた領域が、別の記憶領域にコピーされることで保存される様子が示されている。
【0094】
図7に示したように、時系列に記憶されているデータベース61dの内容が、障害の発生が検知された場合に保存される処理は、ゲートウェイ6dのみならず、ゲートウェイ6a,6b,6cでも実行される。なお、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dのいずれか、例えばゲートウェイ6aで障害の発生が検知された場合、検知部604aの機能により、他のゲートウェイ6b,6c,6dへも障害発生の通知が送信され、他のゲートウェイ6b,6c,6dで通知を受信する。そしてこの場合、ゲートウェイ6b,6c,6dでは各々の検知部604b,604c,604dの機能により、障害発生の通知を他のゲートウェイ6aから受信して障害発生を検知したとき、同様に、時系列にデータベース61b,61c,61dの内容を保存する処理を実行する。したがって、いずれかで障害が検知された場合、各ゲートウェイ6a,6b,6c,6dにおいて、障害の発生が検知された時点及びその前後におけるデータベース61a,61b,61c,61dの内容が保存される。
【0095】
このように、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々、系統別に接続しているECU2a,2b,2c及びセンサ3a,3b,3cから送信されるデータを集約したデータベース61a,61b,61c,61dの内容を時系列に記憶し、且つ、障害の発生を検知した場合に時系列に記憶している複数時点におけるデータベース61a,61b,61c,61dの内容を保存する。これにより、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間の通信に障害が発生した場合、又は、ゲートウェイ6dとドライブレコーダ4との間の通信に障害が発生してドライブレコーダ4へ車両情報を送信することができない場合であっても、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dの記憶部63a,63b,63c,63dを事後的に参照することで、障害が発生した時点における車両の状況を再現する情報を得ることが可能となる点、効果を奏する。
【0096】
実施の形態2におけるドライブレコーダ4及びゲートウェイ6dにて実行される処理の詳細をフローチャートを参照して説明する。
【0097】
図8は、実施の形態2におけるドライブレコーダ4及びゲートウェイ6dの間での送信要求及び車両情報の送受信処理の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理がドライブレコーダ4及びゲートウェイ6d間で実行される。
【0098】
ドライブレコーダ4の制御部40は、通信部42により定期的に送信要求をゲートウェイ6dへ送信する(ステップS11)。なお定期的な送信要求の送信は、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間における通信の障害を検知するために有用である。
【0099】
ゲートウェイ6dでは、制御部60dが支線通信部64dにより、ドライブレコーダ4から送信要求を受信したか否かを判断する(ステップS12)。制御部60dは、送信要求を受信していないと判断した場合(S12:NO)、処理をステップS12へ戻し、送信要求を受信するまで待機する。このとき、制御部60dはドライブレコーダ4からの送信要求の送信周期を予め認識しており、送信周期を超える期間、送信要求を受信していない場合は通信の障害が発生したことを検知する。
【0100】
制御部60dは、ドライブレコーダ4から送信要求を受信したと判断した場合(S12:YES)、送信要求に応じてデータベース61dに記憶されているデータ、又は受信した時点におけるデータベース61dの内容を記憶部63dに記憶してあるリングバッファから読み出し、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS13)。そして制御部60dは、生成した車両情報を支線通信部64dによりドライブレコーダ4へ送信する(ステップS14)。
【0101】
送信要求を送信していたドライブレコーダ4の制御部40は、通信部42により車両情報をゲートウェイ6dから受信し(ステップS15)、受信した車両情報を記録部41に記録し(ステップS16)、処理を終了する。
【0102】
図8のフローチャートに示した処理により、ドライブレコーダ4からの定期的な要求に応じてゲートウェイ6dから正常な状態における車両情報が送信され、ドライブレコーダ4で記録することが可能となる。事後的に、障害が発生した時点における車両の状況を判断するに際し、正常な状態における車両情報をも記録されていることにより、判断の精度がより高くなる。また、ドライブレコーダ4で事故の発生又は故障の発生が検知された場合に直前の状況を示す車両情報も記録できるので、事故の原因又は故障の発生の原因の究明に有効である。
【0103】
次に、ゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cにおける検知部604a,604b,604cの機能による処理についてフローチャートを参照して説明する。図9は、実施の形態2におけるゲートウェイ6aの制御部60aの監視部603a及び検知部604aの機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。ゲートウェイ6aの制御部60aは、監視部603a及び検知部604aの機能により、同期通信を実行する都度、以下に示す処理を繰り返し実行する。なお、ゲートウェイ6b,6cの制御部60b,60cの検知部604b,604cの機能による処理も同様であるので詳細な説明を省略する。
【0104】
制御部60aは検知部604aの機能により、障害発生の有無を検知する。詳細には、制御部60aは、幹線通信部65aにより直近に同期通信が行なわれてから同期通信の周期の期間に基づく所定時間以上が経過したか否かを判断する(ステップS21)。同期通信が周期的に行なわれるようにしてある場合、直近に同期通信を実行してから所定時間を経過している場合、自身の幹線通信部65aにて障害が発生したか、又は当該同期通信用のデータの送信元との間の通信若しくは送信元のゲートウェイ6b,6c,6dのいずれかにて障害が発生したと推測できるからである。
【0105】
制御部60aは、ステップS21にて所定時間以上が経過したと判断した場合(S21:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他のゲートウェイ6b,6c,6dへ通知する(ステップS22)。そして制御部60aは、記憶部63aにおいて時系列に記憶してあるデータベース61aの内容を保存し(ステップS23)、処理を終了する。
【0106】
一方で制御部60aは、ステップS21にて同期通信が行なわれてから所定時間が経過していないと判断した場合(S21:NO)、データベース61aに記憶されているデータの内の所定のデータの値が、異常の基準である閾値以上であるか否かを判断する(ステップS24)。制御部60aは、閾値以上であると判断した場合(S24:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他へ通知し(S22)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0107】
制御部60aは、ステップS24にて所定のデータが閾値未満であると判断した場合(S24:NO)、時系列に記憶してあるデータベース61aに基づき、データベース61aに記憶されているデータの内の所定のデータの値の変化が異常を示しているか否かを判断する(ステップS25)。このとき、値の変化が異常を示すと判断する基準として所定のデータと、異常だと判断する条件とを記憶部63d又は図示しないROMに記憶しておき、当該条件に基づき異常であるか否かを判断すればよい。制御部60aは、所定のデータの値の変化が異常を示していると判断した場合(S25:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他へ通知し(S22)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0108】
制御部60aは、ステップS25にて値の変化も異常を示していないと判断した場合(S25:NO)、幹線通信部65aにより他のゲートウェイ6b,6c,6dから障害発生の通知を受信したか否かを判断する(ステップS26)。制御部60aは、他のゲートウェイ6b,6c,6dのいずれかから障害発生の通知を受信したと判断した場合(S26:YES)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0109】
制御部60aは、ステップS26にて障害発生の通知をも受信してないと判断した場合(S26:NO)、処理をステップS21へ戻す。
【0110】
一方、ドライブレコーダ4と通信するゲートウェイ6dの制御部60dにおける監視部603d及び検知部604dの機能による処理についてフローチャートを参照して説明する。図10は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dの監視部603d及び検知部604dの機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。ゲートウェイ6dの制御部60dは、監視部603d及び検知部604dの機能により、同期通信を実行する都度、以下に示す処理を繰り返し実行する。
【0111】
なお、図10のフローチャートに示した処理手順の内、図9のフローチャートに示したゲートウェイ6aにおける処理と同一の処理については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0112】
制御部60dは、外部から障害発生の通知を受信した場合以外で障害が発生したと検知した場合(S21:YES,S24:YES,S25:YES)、障害発生を他のゲートウェイ6a,6b,6cへ知らしめるべく、障害発生を幹線通信部65dにより送信し(S22)、ゲートウェイ61dの内容を保存する(S23)。その上、制御部60dは、データベース61dに記憶されているデータ、又は障害の発生を検知した時点におけるデータベース61dの内容を記憶部63dに確保してあるリングバッファから読み出し、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS27)。そして制御部60dは、生成した車両情報を支線通信部64dによりドライブレコーダ4へ送信し(ステップS28)、処理を終了する。
【0113】
そして、制御部60dはドライブレコーダ4と通信可能であるから、ステップS25にてデータベース61dのデータの内の所定のデータの値の変化が異常を示していないと判断した場合(S25:NO)、ドライブレコーダ4からの送信要求を受信しない期間が、前記定期期間以上である第2所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS29)。ドライブレコーダ4は、定期的に送信要求を送信するように構成されているから、当該送信要求の送信周期よりも間隔が空く場合、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間における通信に障害が発生している可能性があるからである。
【0114】
制御部60dは、ステップS29で、送信要求を第2所定時間以上受信していないと判断した場合(S29:YES)、障害が発生したと認識して処理をステップS22へ進め、ステップS23、S27及びS28の処理を実行して処理を終了する。
【0115】
制御部60dは、ステップS29で、ドライブレコーダ4からの送信要求を受信しない期間が第2所定時間未満であると判断した場合(S29:NO)、処理をステップS26
へ進め、自身にて障害の発生を検知しておらずとも他のゲートウェイ6a,6b,6cから障害発生の通知を受信したか否かを判断する(S26)。制御部60dはステップS26にて障害発生の通知を受信していないと判断した場合(S26:NO)、処理をステップS21へ戻す。そして障害発生の通知を受信したと判断した場合(S26:YES)、データべースを保存して(S23)、車両情報を生成し(S27)、ドライブレコーダ4へ送信して(S28)処理を終了する。
【0116】
このように、実施の形態2における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々、データベース61a,61b,61c,61dにおけるデータの値の監視、外部からの障害発生の通知、又は外部との通信可否に基づいて、車両の事故の発生又は故障の発生を含む障害の発生が検知され、障害の発生が検知された時点におけるデータベース61d(データベース61a,61b,61cと内容が同期されている)におけるデータが、そのままドライブレコーダ4にて記録される形式に再構築されて車両情報として生成されて送信される。これにより、障害が発生した時点における各車載機器(アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、及びセンサ3a,3b,3c)の状況、即ち車両全体の状況を示す車両情報がドライブレコーダ4に記録される。これにより、事後的に障害が発生した時点における車両の状況を再現することが可能となる。
【0117】
また、実施の形態2ではゲートウェイ6dは基本的に、ドライブレコーダ4から定期的に送信される送信要求に応じて車両情報を生成して送信し、ドライブレコーダ4に記録させる。これにより、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間の通信にて障害が発生した場合もこれを検知して、事後的に利用できるようにデータベース61dの内容の保存が可能である。
【0118】
実施の形態2における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間で障害発生を検知した場合に通知し合う構成とした。これにより、他の装置にて障害が検知された場合、又はゲートウェイ6a,6b,6c,6d間における通信に障害が発生した場合もこれを検知して、障害発生を事後的に再現できるように車両情報をドライブレコーダ4へ送信する。
【0119】
更に実施の形態2おける車載通信システムでは、各系統別に車載機器にいずれも接続されているゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、データベース61a,61b,61c,61dの内容を時系列に記憶しており、障害発生が検知された場合、その時点及び前後の複数の時点におけるデータベース61a,61b,61c,61dの履歴が各ゲートウェイ6a,6b,6c,6dで保存される。これによりドライブレコーダ4に障害発生時におけるデータベース61dに基づく車両全体の状況を示す情報が記録される上、更に詳細なデータそのものが保存されるので、より厳密に車両全体の状況を再現することができる。
【0120】
このように実施の形態2でも、ドライブレコーダ4が有する画像・音声データを記録するために用意されるハードディスクなどの大容量の記録媒体に車両全体の制御に係る情報が共に記録されるから、大容量の記録用資源を有効に利用して、新たに専用の記録装置などを車両に搭載することなしに、画像・音声データからは解析できないような車両における障害発生時における状況を再現し、原因を解明することが可能となるなど、優れた効果を奏する。
【0121】
なお、実施の形態1及び2では、車載機器群は系統別に分けられる構成としたが、これに限らず、物理的な位置が近いか否かによってグループに分けられて、グループ毎にゲートウェイが接続される構成としてもよい。
【0122】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
1a,1b,1c アクチュエータ(制御対象)
2a,2b,2c,2d ECU(制御装置)
3a,3b,3c センサ
4 ドライブレコーダ(記録装置)
5a,5b,5c,5d 通信線(支線)
6a,6b,6c,6d ゲートウェイ(中継装置)
602d 車両情報生成部(生成手段)
603d 監視部
604d 検知部(検知手段)
61a,61b,61c,61d データベース
7 通信線(幹線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブレコーダを含む複数の車載機器が通信可能に接続されている車載機器通信システムに関する。特に、ドライブレコーダに事故又は故障発生時における画像・音声データを記録させるのみならず、その時点での車両全体の状況を再現可能とする情報をドライブレコーダの記録用資源を有効に用いて記録させ、且つドライブレコーダにおける処理負荷を軽減させることができる中継装置、該中継装置を含む車両情報記録システム、及び車両情報記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故が発生した場合に、事故発生時点の前後における車両の前方を撮像した画像・音声データを記録しておき、事後的に事故原因の究明に役立てることができる記録装置、所謂ドライブレコーダを搭載した車両が提案されている(特許文献1)。
【0003】
一方、車両前方を撮像した画像・音声データのみでは状況が不明な場合もあることから、事故発生時における車両の走行状態を示すデータ、例えば位置データをも保存しておく記録装置が提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、車両の事故又は故障が発生した場合、車両の検査を行なったとしても再現しないことが多いため、特定の診断対象部位におけるセンサにて得られた情報をダイアグ情報として記憶しておき、ダイアグ情報を外部から取得可能な構成とすることにより、事後的にこれらを解析して故障及び故障発生傾向を正確に把握することが可能な車両状況監視システムが開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−297823号公報
【特許文献2】特開平8−235491号公報
【特許文献3】特開2005−146905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至3の技術によれば、事故発生時における画像・音声データ、事故発生時の走行状態、又は特定の診断対象部位におけるセンサにより得られるダイアグ情報を記録しておくことにより、事後的に事故又は故障発生の原因究明に役立てることができる。
【0007】
しかしながら、昨今の車両では、制動処理などをも含め各種運転支援を電気的制御にて実現する機能が増加しており、車両に搭載される制御対象である各種アクチュエータと、夫々を制御する制御装置(ECU:Electronic Control Unit)が多数搭載されている。
【0008】
事故又は故障が発生した場合、事後的に特定のセンサ又はアクチュエータにおける測定値、制御値等を記録しておいたとしても事故又は故障の再現ができず、原因を特定できない場合が多い。事故又は故障が発生した時点で、故障に直接的に関係する特定のセンサ又はアクチュエータにおける動作のみならず、正常に動作しているECUの挙動も含めて車両全体の状況を再現できることが望ましい。
【0009】
そこで、車両に搭載されている各センサ、アクチュエータ及びECUにおける測定値、制御値等を特定のものに限定せずに全て記録しておき、車両全体の状況を再現できるようにする構成が考え得る。この場合、データ量が多く、記録容量の大きな記録装置が必要となる。このとき、大容量の記録媒体を有する専用の記録装置を新たに搭載する構成とするよりも、交通事故の発生を抑制するために搭載されるドライブレコーダの記録用資源を有効に利用することがより効率的である。
【0010】
ドライブレコーダに、画像・音声データのみならず、車両に搭載されている各センサ、アクチュエータ及びECUにおける測定値、制御値等のデータを記録して事後的に参照可能とする場合、これらのデータは元々制御に用いられるデータであるから、そのまま蓄積保存するには適切でない。そこで、記録するデータをドライブレコーダで保存するための適切な形式へフォーマット変換が必要になるが、当該変換処理を特定のECU又はドライブレコーダが実行する構成とすると、当該特定のECU及びドライブレコーダの負荷が増加する。データを収集する処理及び変換処理が必要となるからである。また、当該特定のECU及びドライブレコーダが故障した場合に、記録されているべきデータが記録されない状況となる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ドライブレコーダの記録用資源を有効に利用して車両の状況を再現可能とし、且つドライブレコーダの負荷を軽減させることを可能とする中継装置、該中継装置を含む車両情報記録システム及び車両情報記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る中継装置は、車両に搭載される複数の車載機器からなる車載機器群に接続されており、車載機器と通信する手段と、前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースとを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データべースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより、車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置において、任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、該生成手段が生成した情報を、前記車載機器群の内の特定の車載機器へ送信するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第2発明に係る中継装置は、車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段を備え、前記生成手段は、前記検知手段が障害の発生を検知した時点で前記データベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0014】
第3発明に係る中継装置は、任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を、記憶領域に時系列に記憶する手段と、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、前記手段が時系列に記憶している複数の時点におけるデータを前記記憶領域とは異なる記憶領域に記憶する手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
第4発明に係る中継装置は、前記検知手段は、前記車載機器から所定の周期にて送信される任意の情報を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0016】
第5発明に係る中継装置は、前記検知手段は、車載機器から受信したデータの値、又は前記データの値の変化が異常か否かに基づき障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第6発明に係る中継装置は、他の中継装置と通信する手段を備え、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生通知を送信するようにしてあることを特徴とする。
【0018】
第7発明に係る中継装置は、他の中継装置と通信する手段を備え、前記検知手段は、他の中継装置から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
第8発明に係る車両情報記録システムは、車両に搭載される複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及び前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新させ、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにおいて、前記複数の車載機器群の内のいずれか1つの車載機器群に含まれる車載機器として、車両内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置を含み、該記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置は、自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、該生成手段が生成した車両情報を、前記記録装置へ送信するようにしてあり、前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された情報を受信して記録するようにしてあることを特徴とする。
【0020】
第9発明に係る車両情報記録システムは、各車載機器群に接続されている前記中継装置は夫々、相互に通信する通信手段と、車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段とを備え、前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生を通知するようにしてあり、前記特定の中継装置の生成手段は、前記検知手段により障害の発生を検知した時点、又は他の中継装置から障害発生の通知を受けた時点におけるデータベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
第10発明に係る車両情報記録システムは、前記記録装置は、車両情報の送信要求を前記特定の中継装置へ所定の周期で送信する手段を備え、前記特定の中継装置の障害検知手段は、前記送信要求を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあることを特徴とする。
【0022】
第11発明に係る車両情報記録方法は、車両に搭載される複数の車載機器からなる複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及びデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにて、前記複数の車載機器群の内の1つの車載機器であり、車内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置が、車両の状況を示す車両情報を記録する方法であって、前記記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置が、自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む前記車両情報を所定の形式にて生成し、生成した情報を、前記記録装置へ送信し、前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された車両情報を受信して記録することを特徴とする。
【0023】
第1発明、第8発明及び第11発明では、制御対象機器、制御対象機器を制御する制御装置、制御に用いられる物理量を測定するセンサなどの車載機器群に接続され、各車載機器から送信されるデータをデータベースに記憶させて中継を行なう中継装置が、前記車載機器の内の特定の車載機器である車両情報を記録する記録装置、即ちドライブレコーダにてそのまま記録することが可能となるように、自身のデータベースに任意の時点で記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成し、記録装置へ送信する。
【0024】
複数の車載機器を含む車載機器通信システムでは、各車載機器は、制御対象の系統、例えば運転制御系、安全系、ボディ系、情報系などに分類され、系統別に通信線を介して接続されてデータを送受信し合って連携して制御を行なうように構成されている。そして、系統別に分けられた車載機器群が接続している通信線は中継装置(ゲートウェイ)に接続されて、中継装置により系統が異なる車載機器群の間でのデータの中継がなされる。このとき中継装置は、データが記憶されるデータベースを備え、車載機器から受信したデータを一旦データベースに記憶させてデータベースから車載機器(ECU)へデータを分配するシステムが提案されている(特開2008−022158号参照)。この場合、中継装置はデータを中継するために各車載機器から送信されるデータをデータベースに記憶して一元的に集約させているから、記録装置(ドライブレコーダ)で車両情報を記録させるために各車載機器から改めてデータを収集する処理は必要としない。記録装置でデータを収集する必要もなく、記録装置は送信された情報を記録すればよい。更に、車両の状況を再現するための車両情報を記録するための手段として、画像・音声データを記録すべく車両に搭載される記録装置の記録用資源を有効に利用することが可能になる。
【0025】
更に第8発明では、複数の車載機器群と、車載機器群毎に車載機器群に接続される中継装置とを含み、複数の中継装置が相互に接続されて自身のデータベースに記憶するデータを送受信し合いデータベースの内容を同期させ、同期後のデータベースからデータを自身に接続する車載機器群へ送信して中継を実現するシステムにて、複数の中継装置の内の、記録装置(ドライブレコーダ)が車載機器として接続している特定の中継装置が、同期後のデータベース即ち内容の同期が保障されており、且つ車両全体の状況を表すデータベースのデータを含む情報を生成する。
【0026】
これにより、記録装置で車両情報を生成する処理を行なわせることなしに、複数の車載機器群に亘る車両全体の状況を再現するために有用なデータを含む情報を、特定の車載機器である記録装置に記録させ、記録装置における記録用資源を有効に利用することが可能となる。
【0027】
第2発明及び第9発明では、車両の事故又は車載機器の故障などの障害の発生が検知された時点でデータベースに記憶されているデータ、即ち障害が発生した時点における車両の状況を示すデータを含む情報が生成され、記録装置へ送信される。故障の発生には、中継装置自身における障害、各車載機器との間の通信における断線などの障害発生も含む。これにより、障害が発生した時点における各車載機器の状況を示す情報が、記録装置にて生成処理などを行なわせることなく記録装置に記録される。
【0028】
第3発明では、中継装置は自身のデータベースに記憶されるデータの一部又は全部を時系列に記憶しておき、障害の発生が検知された時点及びその前後の複数の時点におけるデータべースのデータの一部又は全部を更に異なる記憶領域に保存すべく記憶する。保存の方法としては、データを時系列に記憶している記憶領域を保護して上書きしないようにするようにしてもよい。これにより、障害が発生した時点及びその前後の時点における各車載機器の状況を示すデータが中継装置で保存されるので、障害発生時に記録装置に記録ができない場合であっても、事後的に保存されてあるデータを参照して車両の状況を再現することが可能となる。
【0029】
第4発明及び第10発明では、中継装置は外部(車両情報を記録する記録装置又は他の中継装置)から定期的に送信されるべき正常通知(記録装置からの送信要求)を受信できない場合に、障害の発生を検知する。これにより、中継装置間での通信障害又は中継装置と記録装置との間における通信障害が発生した場合にこれを検知し、その時点で正常な動作を続行している他の車載機器における状況をも含むデータベースのデータから車両情報を生成して記録装置に記録させることが可能となる。また、記録装置との通信に障害が発生し、記録装置へ生成した車両情報を送信することができない場合も、各中継装置で複数の時点におけるデータベースのデータの一部又は全部が保存されるから、事後的に車両全体の状況を再現することが可能である。
【0030】
第5発明では、データベースに記憶されるデータの値が異常か否か、又は値の時間的変化が異常か否かによって、車両の事故又は車載機器若しくは中継装置における故障など障害の発生を検知する。中継装置は、車載機器群に接続されて中継を行なうために既に各車載機器からデータを逐次受信してデータベースに記憶しているから、データの値の異常性を、他のデータ又は時間的な変化に基づき総合的に判断することが可能である。
【0031】
第6発明では、中継装置は他の中継装置が存在する場合に相互に通信する手段を備え、自身が障害の発生を検知した場合に他の中継装置へ障害発生を通知し、他へ障害の発生を知らしめることが可能となる。
【0032】
第7発明では、中継装置は他の中継装置が存在する場合に相互に通信する手段を備え、中継装置は外部から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知したと認識する。これにより、中継装置自身は正常であって、自身に接続されている車載機器のいずれか、又は接続される他の中継装置にて故障が発生した場合であっても、障害と認識し、正常に動作している他の車載機器における状況をも含むデータベースのデータを記録装置へ送信して記録させるか、又は、中継装置自身にて保存する。中継装置自身に保存する場合は、自身に障害が発生していないときでも、記録装置との間の通信に障害が発生するなど記録装置には記録ができないときに、事後的に保存されてあるデータを参照して車両の状況を再現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明による場合、車両の状況を示すデータを記録すべく搭載されているドライブレコーダを含む複数の車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置が、ドライブレコーダにて記録できるよう、任意の時点で各車載機器から送信されて中継装置自身にてデータベースに記憶している情報を所定の形式にて生成して送信する。これにより、ドライブレコーダでは、正常な動作をしている車載機器をも含む各車載機器からのデータを記録できる。ドライブレコーダが有する比較的大容量の記録用資源を有効に利用して車両の状況を再現可能とし、且つドライブレコーダでは各車載機器からデータを収集する処理であるとか、各車載機器からのデータから所定の形式に情報を生成するなどの処理を実行しないから、処理負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態1における車載通信システムを構成するゲートウェイ及びドライブレコーダの内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1におけるゲートウェイの制御部により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1におけるゲートウェイの制御部により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部により実現される機能を示す機能ブロック図である。
【図6】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部が、データベースの内容を記憶する処理を模式的に示す説明図である。
【図7】実施の形態2におけるゲートウェイの記憶部にて、データベースの内容が保存される処理を模式的に示す説明図である。
【図8】実施の形態2におけるドライブレコーダ及びゲートウェイの間での送信要求及び車両情報の送受信処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部の監視部及び検知部の機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態2におけるゲートウェイの制御部の監視部及び検知部の機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下に示す実施の形態では、車両に搭載される各種アクチュエータ、センサ及びECUが複数接続され、ECU間におけるデータの送受信を中継装置によって中継する車載通信システムに、本発明に係る中継装置を適用した場合を例に説明する。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における車載通信システムの構成を示す構成図である。車載通信システムは、車両の各種機能を実現するためのモータなど制御対象であるアクチュエータ(図1中、ACTで示す)1a,1b,1cと、アクチュエータ1a,1b,1cを制御するなどの処理を行なうECU2a,2b,2c,2dと、車内外における各種物理量を測定するセンサ3a,3b,3cと、車内外の情報を記録するドライブレコーダ4と、車載機器間を接続する通信線5a,5b,5c,5dと、異なる通信線5a,5b,5c,5d間におけるデータを中継するゲートウェイ6a,6b,6c,6dと、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間を接続する通信線7とを含む。
【0037】
実施の形態1における車載通信システムは、幹線である通信線7により接続されるゲートウェイ6a,6b,6c,6d夫々に、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3c及びドライブレコーダ4が通信線5a,5b,5c,5dを介して接続され、幹線型の車載ネットワークを構成している。以下、説明を明瞭とするため、通信線5a,5b,5c,5dを支線5a,5b,5c,5dと呼び、通信線7を幹線7と呼ぶ。
【0038】
アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d及びセンサ3a,3b,3cは、その機能により系統に分けられて系統別に群を形成している。例えば実施の形態1では、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aは、エンジン制御、ブレーキ制御などの運転制御系に携わる車載機器群であり、アクチュエータ1b、ECU2b,2b及びセンサ3bは、シートベルト又はエアバッグなどの安全系に携わる車載機器群である。アクチュエータ1c、ECU2c,2c及びセンサ3cは、ドア又はヘッドライトなどのボディ系の機能に携わる車載機器群である。また、ECU2d,2dは、インパネ(インストゥルメントパネル)におけるディスプレイ、オーディオ制御又はナビゲーションシステムなどの情報系の機能に携わる車載機器群である。
【0039】
情報系の車載機器群には、ドライブレコーダ4が含まれる。ドライブレコーダ4は図示しない車外を撮像するカメラと接続され、カメラから得られる画像データを記録する装置である。また、図示しない車内外の音声を集音するマイクロフォンと接続されて音声データをも記録するようにしてもよい。
【0040】
運転制御系の群に属する車載機器は、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aのみならず、更に複数のアクチュエータ、ECU及びセンサが含まれることは勿論であり、他の系統の車載機器群でも同様である。
【0041】
そして、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3c及びドライブレコーダ4は夫々、群毎に支線5a,5b,5c,5dに接続され、相互にデータを送受信することが可能に構成されている。支線5a,5b,5c,5dを介した通信のプロトコルはCAN(Controller Area Network)のプロトコルに準じてデータを送受信する。したがって、支線5a,5b,5c,5dを介して送受信されるデータは複数でまとめられ、そのデータに応じてメッセージIDが割り当てられている「メッセージ」として送受信される。なお、通信のプロトコルはLIN(Local Interconnect Network)、FlexRay(登録商標)でもよい。
【0042】
各群には夫々、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが接続されている。運転制御系の車載機器群(アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3a)が接続される支線5aにはゲートウェイ6aが接続されている。ゲートウェイ6aは、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aから送信されるデータをいずれも受信することが可能である。他の群に属するゲートウェイ6b,6c,6dも同様である。
【0043】
そして、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは幹線7を介して相互にデータを送受信することが可能に構成されている。図1では幹線7に対するゲートウェイの接続形態はバス型であるが、接続形態はスター型、ディジーチェーン型などでもよい。また、幹線7における通信プロトコルは特に限定されない。Ethernet(登録商標)を用いてもよいし、CANネットワークを利用してもよいし、その他のプロトコルを用いてもよい。
【0044】
このように各車載機器及びゲートウェイ6a,6b,6c,6dが接続される車載通信システムにおいて、ECU2a,2b,2c,2dは、車輪速センサ、操舵角センサなどのセンサ3a,3b,3cにより測定された測定値を取得する機能、取得した測定値に基づく計算値を算出する機能、測定値又は計算値に基づき制御値を決定する機能などを有する。ECU2a,2b,2c,2dは、アクチュエータ1a,1b,1cを制御するか、又は他のECU2a,2b,2c,2dでの制御に用いる計算値、制御値等を求める。例えば運転制御系に属するECU2aは、ABS(Antilock Brake System)として機能し、制動時に車輪速センサであるセンサ3aにて検知した車輪速の測定値に基づいてブレーキを制御する。
【0045】
ECU2a,2b,2c,2dは、測定値、計算値、又は制御値をデータとして、アクチュエータ1a,1b,1cへ制御のために送信するのみならず、支線5a,5b,5c,5dを介してゲートウェイ6a,6b,6c,6dへ送信する。センサ3a,3b,3cからも測定値などのデータを含むメッセージが、支線5a,5b,5c,5dを介してゲートウェイ6a,6b,6c,6dへ送信される。
【0046】
ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々記憶部を備え、記憶部における記憶領域をデータベース61a,61b,61c,61dとして使用する。ゲートウェイ6aは、アクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aから送信されるメッセージからデータを抽出してデータベース61aに記憶し、データベース61aに記憶されているデータからメッセージを構築してアクチュエータ1a、ECU2a,2a及びセンサ3aへ送信する。ゲートウェイ6b,6c,6dも夫々、自身に接続されている車載機器群から送信されるメッセージからデータを抽出してデータベース61b,61c,61dに記憶する。
【0047】
ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは相互に、データベース61a,61b,61c,61dのデータを10ミリ秒毎など定期的に送受信する同期通信を実行する。同期通信を行なってデータベース61a,61b,61c,61dの内容を同期させる。これにより、データベース61a,61b,61c,61dの内容が同一となり、即ち異なる群の車載機器から送信されるデータも含めて内容が同一となる。したがって、センサ3aから送信されたデータはゲートウェイ6aを介した同期通信により、ゲートウェイ6bのデータベース61bにも反映され、ゲートウェイ6bがデータベース61bから当該データを読み出してアクチュエータ1bへ送信することにより、データ内容の同一性及び同時性を担保したデータの中継が実現される。
【0048】
このように構成される車載通信システムにおいて、ドライブレコーダ4には、車内外における画像・音声データのみならず、事故又は故障が発生した場合に車両の状況を再現するため、ECU2a,2b,2c,2dの処理に関する計算値又は制御値、及びセンサ3a,3b,3cの測定値などの車両情報をも記録する。実施の形態1における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、センサ3a,3b,3cから送信されるデータを受信してデータベース61a,61b,61c,61dに記憶し、更にデータベース61a,61b,61c,61dのデータをゲートウェイ6a,6b,6c,6d間で送受信し合い内容を同期させている。したがって、データベース61a,61b,61c,61dのいずれかで記憶されているデータを、ドライブレコーダ4に記録できればよい。
【0049】
ただし、データベース61a,61b,61c,61dのいずれかに記憶されているデータを車両情報としてそのままドライブレコーダ4に記録させるのでなく、ドライブレコーダ4に適したフォーマットで記録されるようにする。ドライブレコーダ4に記録されるべき車両情報は、事後的に解析・分析のために使用されるデータであるから、どのようなデータが含まれているか、いつの時点におけるデータであるのかなどを分析することが可能な形式で記録されるべきである。なおこのとき、ドライブレコーダ4でどのような形式で車両情報が記録されるべきかが規定されていてもよい。データベース61a,61b,61c,61dに記憶されているデータは、制御に用いるために送受信されるデータであって、解析・分析対象である車両情報としてのデータではない。しかもゲートウェイ6a,6b,6c,6dは車載装置であるから、データベース61a,61b,61c,61dとして使用される記憶部の記憶容量は最小限とされるため、各データについてのインデックス情報は省略される場合がある。したがってデータベース61a,61b,61c,61dの内容をそのまま車両情報とする構成では、何のデータであるかが判別できない場合がある。
【0050】
そこで、ドライブレコーダ4が接続されている情報系に属するゲートウェイ6dが、データベース61dに任意の時点で記憶されているデータに基づき、ドライブレコーダ4において適切な形式、例えば各データの内容を示す情報、及び既定のステータス情報などを含む車両情報を再構築(生成)し、ドライブレコーダ4へ送信して記録させる。このときドライブレコーダ4では、時刻情報も共に記録されることが望ましい。
【0051】
図2は、実施の形態1における車載通信システムを構成するゲートウェイ6d及びドライブレコーダ4の内部構成を示すブロック図である。ゲートウェイ6a,6b及び6cの内部構成は、ゲートウェイ6dの内部構成と基本的に同様であるから、図示及び詳細な説明を省略する。
【0052】
ゲートウェイ6dは、各構成部の動作を制御する制御部60dと、制御部60dの処理により発生する情報を一時的に記憶する一時記憶部62dと、データベース61dに使用する記憶部63dと、支線5dに接続されている支線通信部64dと、幹線7に接続されている幹線通信部65dとを備える。
【0053】
制御部60dは、CPU(Central Processing Unit)を用いて構成される。制御部60dは、図示しない車両のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電力の供給を受け、図示しない内蔵メモリに記憶されているコンピュータプログラムを読み出して、中継処理及び後述にて示す各種処理を実行するようにしてある。
【0054】
一時記憶部62dは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static RAM)などのRAMを用いて構成される。記憶部63dは、DRAM若しくはSRAMなどのRAM又はフラッシュメモリを用いて構成され、制御部60dがECU2d,2dから受信したデータ、及び他のゲートウェイ6a,6b,6cから受信したデータを記憶するデータベース61dのための記憶領域が確保されている。制御部60dは、ECU2d,2d又はゲートウェイ6a,6b,6cからデータを受信した場合、データの種類毎に対応する具体的な測定値、計算値、制御値を抽出してデータベース61dに記憶する。
【0055】
支線通信部64dは、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、支線5dを介して接続されているECU2d,2dとのメッセージの送受信を実現する。支線通信部64dは、支線5dを介してECU2d,2dのいずれかからメッセージが送信された場合、制御部60dへ通知する。実施の形態1では、支線5dにおける通信プロトコルはCANであるので、支線通信部64dとしてCANコントローラ及びCANトランシーバを用いる。制御部60d、一時記憶部62d、記憶部63d及び支線通信部64dは夫々、CAN対応のマイクロコンピュータの一部であってもよい。
【0056】
制御部60dは基本的に、支線通信部64dにより、ECU2d,2dからデータを含むメッセージを受信し、データベース61dに記憶されているデータの内、接続されているECU2d,2d及びドライブレコーダ4などの車載機器が必要とするデータを抽出してメッセージを送信する。
【0057】
幹線通信部65dは、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、幹線7を介して接続される他のゲートウェイ6a,6b,6cとの同期通信用のデータの送受信を実現する。
【0058】
制御部60dは、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cへデータベース61dから抽出したデータを送信し、他のゲートウェイ6a,6b,6cから送信されるデータを受信する。このとき制御部60dは幹線通信部65dにより複数のデータをまとめたフレームにて送受信するようにしてあり、同期通信フレームという。制御部60dは、一定期間が経過する都度、定期的にデータベース61dに記憶されているデータから同期通信フレームを生成して他のゲートウェイ6a,6b,6cへ送信する同期通信を実行する。
【0059】
ドライブレコーダ4は、各構成部の動作を制御する制御部40と、画像データ411、音声データ412及び後述の車両情報413を記録する記録部41と、支線5dに接続されている通信部42とを備える。
【0060】
制御部40は、CPUを用いて構成され、図示しない電力供給装置から電力の供給を受け、各構成部の動作を制御する。記録部41は、ハードディスクを用いて構成され、画像データ411、音声データ412及びゲートウェイ6dから送信される車両情報413を記録する。記録部41には、ハードディスクなどの比較的大容量のデータを記録するために適切な記録媒体を用いることが望ましいが、他に、フラッシュメモリ、SDメモリカードなど、ドライブレコーダ4から取り出すことが可能な記録媒体でもよい。
【0061】
通信部42は、ネットワークコントローラ及びトランシーバを用いて構成され、支線5dを介して接続されているECU2d,2d及びゲートウェイ6dとのメッセージの送受信を実現する。制御部40は、通信部42によりゲートウェイ6dから送信される車両情報を含むメッセージを受信し、受信した車両情報を記録部41に記録する。なお、実施の形態1において通信部42はCANプロトコルに準ずる。
【0062】
次に、図2に示したハードウェア構成を有するゲートウェイ6dにおいて実現される更に詳細な機能について説明する。図3は、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実現される機能を示す機能ブロック図である。
【0063】
制御部60dは内蔵メモリから、コンピュータをゲートウェイ6dとして機能させるためのコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、支線通信部64d、幹線通信部65d及び記憶部63dと協働して、データベース処理部601d、及び車両情報生成部602dとして機能する。
【0064】
データベース処理部601dとしての機能により制御部60dは、データベース61dにおけるデータの読み書き、及び、データベース61dのデータに関する外部との通信を実現する。制御部60dはデータベース処理部601dの機能により、支線通信部64dにより受信したメッセージからデータを抽出して記憶部63dのデータベース61dに記憶する処理、データベース61dから抽出したデータからメッセージを生成して支線通信部64dによりECU2d,2d又はドライブレコーダ4へ送信する処理を実行する。
【0065】
また、制御部60dはデータベース処理部601dの機能により、幹線通信部65dにより受信したゲートウェイ6a,6b,6cからの同期通信フレームからデータを抽出してデータベース61dに記憶する処理、データベース61dからECU2d,2dにより送信されて記憶されるデータなど、ゲートウェイ6dにて更新されるデータを含む同期通信フレームを生成して幹線通信部65dにより送信する処理を実行する。
【0066】
車両情報生成部602dとしての機能により制御部60dは、データベース61dにおける同期通信周期、又はECU2d,2dから送信されるデータに基づく更新周期などに基づき、定期的にデータベース61dからドライブレコーダ4で記録するために適切な形式の車両情報を生成する。そして制御部60dは車両情報生成部602dにて生成した車両情報をCANに基づくメッセージに含めて支線通信部64dからドライブレコーダ4へ送信する。
【0067】
なお、ゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cも、データベース処理部として機能する。ただし、車両情報生成部602dの機能は少なくとも、ドライブレコーダ4が接続されているゲートウェイ6dにて実現されればよい。したがってゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cは、車両情報生成部602dの機能を有しなくてよい。
【0068】
次に、ゲートウェイ6dの制御部60dの機能を、フローチャートを参照して説明する。図4は、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実行される処理の一例を示すフローチャートである。制御部60dは、電力供給装置から電力の供給を受けている間、基本的に以下に示す処理を継続して実行する。
【0069】
制御部60dは、車両情報を生成する周期が到来したか否かを判断する(ステップS1)。より具体的には、制御部60dは、図示しないタイマにより時間の経過を測定し、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間における同期通信の周期、又はデータベース61dにおけるデータの更新周期などが勘案された所定の周期が到来したか否かを判断する(S1)。
【0070】
制御部60dは、周期が到来していないと判断した場合(S1:NO)、処理をステップS1へ戻して周期が到来するまで待機する。制御部60dは、周期が到来したと判断した場合(S1:YES)、ゲートウェイ6a,6b,6cとの間の同期通信により内容が同期されているデータベース61dから、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS2)。
【0071】
制御部60dは、ステップS2にて生成した車両情報を支線通信部64dからドライブレコーダ4へ送信し(ステップS3)、処理を終了する。制御部60dは、再び図4のフローチャートに示した処理を実行し、周期が到来する都度、車両情報をデータベース61dから生成してドライブレコーダ4へ送信する処理を実行する。
【0072】
これによりドライブレコーダ4では、記録部41へそのまま記録することが可能な車両情報を受信することができる。ドライブレコーダ4は、定期的に車両情報をゲートウェイ6dから受信し、記録部41に記録する。即ちドライブレコーダ4の制御部40は、車両情報を受信する都度、記録部41に記録する。ただし、記録部41の記録容量には限界があるので、ドライブレコーダ4では受信した車両情報をすべて記録しておくことは不可能である。したがって、記録部41に記録してある記録情報の内、最も古い車両情報413は削除又は上書きが可能にしてある。ドライブレコーダ4にて、車両の事故の発生が検知された場合、画像・音声データ411,412をカメラ及びマイクロフォンから取り込んで記録すると共に、記録部41に記録してある複数の時点の車両情報413、及び事故の発生が検知されてから所定時間が経過するまでに記録部41に記録される車両情報413を保存しておく。具体的には、別途記録部41の別領域に保存用に記録するようにしてもよい。
【0073】
上述のようなゲートウェイ6d及びドライブレコーダ4の動作により、ドライブレコーダ4には、事故が発生した時点及びその前後において、正常に動作しているアクチュエータ1a,1b,1c又はECU2a,2b,2cにおけるデータをも含めた車両情報が記録される。これにより、車両情報を用いて事後的に車両の状況を再現することが可能である。
【0074】
なお、ドライブレコーダ4は、事故発生時の画像・音声データ411,412を記録するために大容量の記録媒体を用いた記録部41を備えている。したがって上述のように当該記録用の資源を有効に利用し、別途車両情報を記録するための専用の装置を新たに搭載する構成とするよりも効率的に、車両の状況を再現することが可能となる車両情報413を記録することができる。
【0075】
またドライブレコーダ4に車両情報413を記録させるために、ゲートウェイ6dがデータを再構築するなどして車両情報を生成し、ドライブレコーダ4へ送信する。ゲートウェイ6dは、データを中継するために各ECU2a,2b,2c、及びセンサ3a,3b,3cから送信される全データを一元的に集約して記憶するデータベース61dを有しており、更にゲートウェイ6a,6b,6cとの間でデータベース61a,61b,61c,61dの内容を同期するから、ゲートウェイ6dは、車両情報を生成するために改めてデータを収集する必要もない。更にゲートウェイ6dが、ドライブレコーダ4にて記録するために適した形式にて車両情報を生成する。したがって、ドライブレコーダ4では車両情報を生成するためにデータを収集する処理も、車両情報を生成(再構築)する処理自体も実行せずとも、ドライブレコーダ4にて車両の状況を再現することを可能とする情報を記録することができる。
【0076】
なお、実施の形態1では、図3の機能ブロック図における各機能は、ソフトウェア的に実現する構成としたが、各機能をチップ化するなどしてASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによりハードウェア的に実現する構成としてもよい。
【0077】
(実施の形態2)
実施の形態1では、ドライブレコーダ4が接続されているゲートウェイ6dが周期的に、自身のデータベース61dのデータに基づき車両情報を生成し、ドライブレコーダ4へ送信し、ドライブレコーダ4にて事故の発生が検知されたときに記録されている車両情報を保存する構成とした。
【0078】
実施の形態2では、ドライブレコーダ4が車両情報の送信要求をゲートウェイ6dへ送信し、ゲートウェイ6dが送信要求に応じて車両情報を生成して送信する。更に実施の形態2では、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、事故又は故障などの障害の発生を検知する機能を有する構成とし、障害の発生を検知した場合にデータベース61a,61b,61c,61dの内容を保存し、且つゲートウェイ6dが車両情報を生成して送信する構成とする。
【0079】
実施の形態2における車載通信システムのハードウェア的な構成は、実施の形態1における構成と同様であるので、各装置及び構成部のハードウェアについて共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。以下に、相違点である障害を検知する検知機能、及びデータベース61a,61b,61c,61dの内容の保存機能について説明する。
【0080】
図5は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dにより実現される機能を示す機能ブロック図である。なお、実施の形態1におけるゲートウェイ6dの制御部60dにおける機能と共通する機能については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0081】
制御部60dは、データベース処理部601d及び車両情報生成部602dとしての機能に加え、データベース61dに記憶するデータの値、又は値の変化を監視する監視部603d、及び自身又は他の装置における障害を検知する検知部604dとして機能する。
【0082】
監視部603dとしての機能により制御部60dは、データベース処理部601dの機能によりデータベース61dに記憶されるデータの具体的な数値情報を監視し、データの値が異常の基準となる閾値以上であるか否か、又はデータの値の変化が異常であるか否か、例えば10秒間に異常の基準となる所定割合以上増加したか否かなどを判断する。監視部603dとして機能する制御部60dは、データの値が閾値以上であると判断した場合、又はデータの値の変化が異常であると判断した場合、検知部604dへ障害発生を通知する。
【0083】
検知部604dとしての機能により制御部60dは、監視部603dからの障害発生の通知を検知した場合、障害が発生したと認識して車両情報生成部602dへ車両情報を生成すべく指示する。また、検知部604dとしての機能により制御部60dは、監視部603dからの障害発生の通知を検知した場合、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cへ障害発生の通知を送信する。
【0084】
更に検知部604dとしての機能により制御部60dは、幹線通信部65dにより他のゲートウェイ6a,6b,6cのいずれかから事故の発生又は故障の発生などを含む障害発生の通知を受信した場合、障害が発生したと認識して車両情報生成部602dへ車両情報を生成すべく指示する。なお、事故の発生は、安全系のECU2b,2bのいずれかから衝突などを検知した場合にゲートウェイ6bへ通知されて、ゲートウェイ6bにて障害発生として検知される。
【0085】
また、制御部60dは、支線通信部64dにより、ドライブレコーダ4から定期的に送信される車両情報の送信要求を受信したことを検知し、受信した送信要求に応じて、車両情報生成部602dの機能により車両情報を生成して送信する。そして制御部60dは、検知部604dとしての機能により定期的に受信されるべき送信要求を実際に定期的に受信しているか否かを判断し、定期的に受信できていない場合には、ドライブレコーダ4との間の支線5dにおける通信に障害が発生したと検知する。制御部60dは、障害の発生を検知したと判断した場合、上述のように幹線通信部65dにより障害発生の通知を他のゲートウェイ6a,6b,6cへ送信する。
【0086】
また、実施の形態2におけるゲートウェイ6dでは、データベース処理部601dの機能により、任意の時点でデータベース61dに記憶されているデータを、記憶部63dにおけるデータベース61dとは異なる領域に時系列に記憶する。より具体的には、記憶部63dに、データベース61dの内容をリングバッファにて記憶するように記憶領域を確保し、一定時間毎に、最も古い領域に最新のデータベース61dの内容を記憶する。例えば、同期通信を実行する都度に記憶する。
【0087】
なお、データベース61dの構成を元々リングバッファの構成としてもよい。この場合、データベース処理部601dの機能により制御部60dは、支線通信部64dにより受信したメッセージからデータを抽出し、リングバッファにおける最新のデータを書き込むべきバッファに逐次データを記憶する。
【0088】
図6は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dが、データベース61dの内容を記憶する処理を模式的に示す説明図である。図6の各矩形は、各車載機器から送信される各データD1 ,D2 ,D3 ,…の具体的な数値情報が記憶される領域を示す。各列が各時点ti-2,ti-1,ti ,…におけるデータベース61dの内容を示す。制御部60dは、各列の記憶領域を左側から順に時系列的に用いてデータベース61dの内容を記憶する。
【0089】
なお、ゲートウェイ6dのみならず、各ゲートウェイ6a,6b,6cでも同様に、各自、データベース61a,61b,61cの内容を別途記憶部63a,63b,63cの記憶領域に時系列に記憶する。
【0090】
そして、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dは、検知部604dの機能により、障害の発生を検知した場合、図6に示したように時系列に記憶しているデータベース61dの内容を保存する。即ち、記憶部63dに確保したリングバッファに記憶している複数の時点夫々におけるデータベース61dの内容を別途、記憶部63dの別の記憶領域に記憶し、事後的に読み出すことが可能なように保持しておく。
【0091】
図7は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの記憶部63dにて、データベース61dの内容が保存される処理を模式的に示す説明図である。
【0092】
図7(a)には、データベース61dの内容が時系列に記憶されているリングバッファの内の、障害発生が検知された時点ti 及びその前後の時点ti-1,ti+1における内容を記憶していた領域がロックされて上書き禁止にされることで保存される様子が示されている。
【0093】
図7(b)には、同様にデータベース61dの内容が時系列に記憶されているリングバッファの内の、障害発生が検知された時点ti 及びその前後の時点ti-1,ti+1における内容を記憶していた領域が、別の記憶領域にコピーされることで保存される様子が示されている。
【0094】
図7に示したように、時系列に記憶されているデータベース61dの内容が、障害の発生が検知された場合に保存される処理は、ゲートウェイ6dのみならず、ゲートウェイ6a,6b,6cでも実行される。なお、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dのいずれか、例えばゲートウェイ6aで障害の発生が検知された場合、検知部604aの機能により、他のゲートウェイ6b,6c,6dへも障害発生の通知が送信され、他のゲートウェイ6b,6c,6dで通知を受信する。そしてこの場合、ゲートウェイ6b,6c,6dでは各々の検知部604b,604c,604dの機能により、障害発生の通知を他のゲートウェイ6aから受信して障害発生を検知したとき、同様に、時系列にデータベース61b,61c,61dの内容を保存する処理を実行する。したがって、いずれかで障害が検知された場合、各ゲートウェイ6a,6b,6c,6dにおいて、障害の発生が検知された時点及びその前後におけるデータベース61a,61b,61c,61dの内容が保存される。
【0095】
このように、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々、系統別に接続しているECU2a,2b,2c及びセンサ3a,3b,3cから送信されるデータを集約したデータベース61a,61b,61c,61dの内容を時系列に記憶し、且つ、障害の発生を検知した場合に時系列に記憶している複数時点におけるデータベース61a,61b,61c,61dの内容を保存する。これにより、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間の通信に障害が発生した場合、又は、ゲートウェイ6dとドライブレコーダ4との間の通信に障害が発生してドライブレコーダ4へ車両情報を送信することができない場合であっても、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dの記憶部63a,63b,63c,63dを事後的に参照することで、障害が発生した時点における車両の状況を再現する情報を得ることが可能となる点、効果を奏する。
【0096】
実施の形態2におけるドライブレコーダ4及びゲートウェイ6dにて実行される処理の詳細をフローチャートを参照して説明する。
【0097】
図8は、実施の形態2におけるドライブレコーダ4及びゲートウェイ6dの間での送信要求及び車両情報の送受信処理の一例を示すフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理がドライブレコーダ4及びゲートウェイ6d間で実行される。
【0098】
ドライブレコーダ4の制御部40は、通信部42により定期的に送信要求をゲートウェイ6dへ送信する(ステップS11)。なお定期的な送信要求の送信は、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間における通信の障害を検知するために有用である。
【0099】
ゲートウェイ6dでは、制御部60dが支線通信部64dにより、ドライブレコーダ4から送信要求を受信したか否かを判断する(ステップS12)。制御部60dは、送信要求を受信していないと判断した場合(S12:NO)、処理をステップS12へ戻し、送信要求を受信するまで待機する。このとき、制御部60dはドライブレコーダ4からの送信要求の送信周期を予め認識しており、送信周期を超える期間、送信要求を受信していない場合は通信の障害が発生したことを検知する。
【0100】
制御部60dは、ドライブレコーダ4から送信要求を受信したと判断した場合(S12:YES)、送信要求に応じてデータベース61dに記憶されているデータ、又は受信した時点におけるデータベース61dの内容を記憶部63dに記憶してあるリングバッファから読み出し、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS13)。そして制御部60dは、生成した車両情報を支線通信部64dによりドライブレコーダ4へ送信する(ステップS14)。
【0101】
送信要求を送信していたドライブレコーダ4の制御部40は、通信部42により車両情報をゲートウェイ6dから受信し(ステップS15)、受信した車両情報を記録部41に記録し(ステップS16)、処理を終了する。
【0102】
図8のフローチャートに示した処理により、ドライブレコーダ4からの定期的な要求に応じてゲートウェイ6dから正常な状態における車両情報が送信され、ドライブレコーダ4で記録することが可能となる。事後的に、障害が発生した時点における車両の状況を判断するに際し、正常な状態における車両情報をも記録されていることにより、判断の精度がより高くなる。また、ドライブレコーダ4で事故の発生又は故障の発生が検知された場合に直前の状況を示す車両情報も記録できるので、事故の原因又は故障の発生の原因の究明に有効である。
【0103】
次に、ゲートウェイ6a,6b,6cの制御部60a,60b,60cにおける検知部604a,604b,604cの機能による処理についてフローチャートを参照して説明する。図9は、実施の形態2におけるゲートウェイ6aの制御部60aの監視部603a及び検知部604aの機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。ゲートウェイ6aの制御部60aは、監視部603a及び検知部604aの機能により、同期通信を実行する都度、以下に示す処理を繰り返し実行する。なお、ゲートウェイ6b,6cの制御部60b,60cの検知部604b,604cの機能による処理も同様であるので詳細な説明を省略する。
【0104】
制御部60aは検知部604aの機能により、障害発生の有無を検知する。詳細には、制御部60aは、幹線通信部65aにより直近に同期通信が行なわれてから同期通信の周期の期間に基づく所定時間以上が経過したか否かを判断する(ステップS21)。同期通信が周期的に行なわれるようにしてある場合、直近に同期通信を実行してから所定時間を経過している場合、自身の幹線通信部65aにて障害が発生したか、又は当該同期通信用のデータの送信元との間の通信若しくは送信元のゲートウェイ6b,6c,6dのいずれかにて障害が発生したと推測できるからである。
【0105】
制御部60aは、ステップS21にて所定時間以上が経過したと判断した場合(S21:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他のゲートウェイ6b,6c,6dへ通知する(ステップS22)。そして制御部60aは、記憶部63aにおいて時系列に記憶してあるデータベース61aの内容を保存し(ステップS23)、処理を終了する。
【0106】
一方で制御部60aは、ステップS21にて同期通信が行なわれてから所定時間が経過していないと判断した場合(S21:NO)、データベース61aに記憶されているデータの内の所定のデータの値が、異常の基準である閾値以上であるか否かを判断する(ステップS24)。制御部60aは、閾値以上であると判断した場合(S24:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他へ通知し(S22)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0107】
制御部60aは、ステップS24にて所定のデータが閾値未満であると判断した場合(S24:NO)、時系列に記憶してあるデータベース61aに基づき、データベース61aに記憶されているデータの内の所定のデータの値の変化が異常を示しているか否かを判断する(ステップS25)。このとき、値の変化が異常を示すと判断する基準として所定のデータと、異常だと判断する条件とを記憶部63d又は図示しないROMに記憶しておき、当該条件に基づき異常であるか否かを判断すればよい。制御部60aは、所定のデータの値の変化が異常を示していると判断した場合(S25:YES)、障害が発生したと認識して障害発生を他へ通知し(S22)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0108】
制御部60aは、ステップS25にて値の変化も異常を示していないと判断した場合(S25:NO)、幹線通信部65aにより他のゲートウェイ6b,6c,6dから障害発生の通知を受信したか否かを判断する(ステップS26)。制御部60aは、他のゲートウェイ6b,6c,6dのいずれかから障害発生の通知を受信したと判断した場合(S26:YES)、データベース61aの内容を保存し(S23)、処理を終了する。
【0109】
制御部60aは、ステップS26にて障害発生の通知をも受信してないと判断した場合(S26:NO)、処理をステップS21へ戻す。
【0110】
一方、ドライブレコーダ4と通信するゲートウェイ6dの制御部60dにおける監視部603d及び検知部604dの機能による処理についてフローチャートを参照して説明する。図10は、実施の形態2におけるゲートウェイ6dの制御部60dの監視部603d及び検知部604dの機能により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。ゲートウェイ6dの制御部60dは、監視部603d及び検知部604dの機能により、同期通信を実行する都度、以下に示す処理を繰り返し実行する。
【0111】
なお、図10のフローチャートに示した処理手順の内、図9のフローチャートに示したゲートウェイ6aにおける処理と同一の処理については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
【0112】
制御部60dは、外部から障害発生の通知を受信した場合以外で障害が発生したと検知した場合(S21:YES,S24:YES,S25:YES)、障害発生を他のゲートウェイ6a,6b,6cへ知らしめるべく、障害発生を幹線通信部65dにより送信し(S22)、ゲートウェイ61dの内容を保存する(S23)。その上、制御部60dは、データベース61dに記憶されているデータ、又は障害の発生を検知した時点におけるデータベース61dの内容を記憶部63dに確保してあるリングバッファから読み出し、ドライブレコーダ4にて記録されるべきデータを再構築して車両情報を生成する(ステップS27)。そして制御部60dは、生成した車両情報を支線通信部64dによりドライブレコーダ4へ送信し(ステップS28)、処理を終了する。
【0113】
そして、制御部60dはドライブレコーダ4と通信可能であるから、ステップS25にてデータベース61dのデータの内の所定のデータの値の変化が異常を示していないと判断した場合(S25:NO)、ドライブレコーダ4からの送信要求を受信しない期間が、前記定期期間以上である第2所定時間以上であるか否かを判断する(ステップS29)。ドライブレコーダ4は、定期的に送信要求を送信するように構成されているから、当該送信要求の送信周期よりも間隔が空く場合、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間における通信に障害が発生している可能性があるからである。
【0114】
制御部60dは、ステップS29で、送信要求を第2所定時間以上受信していないと判断した場合(S29:YES)、障害が発生したと認識して処理をステップS22へ進め、ステップS23、S27及びS28の処理を実行して処理を終了する。
【0115】
制御部60dは、ステップS29で、ドライブレコーダ4からの送信要求を受信しない期間が第2所定時間未満であると判断した場合(S29:NO)、処理をステップS26
へ進め、自身にて障害の発生を検知しておらずとも他のゲートウェイ6a,6b,6cから障害発生の通知を受信したか否かを判断する(S26)。制御部60dはステップS26にて障害発生の通知を受信していないと判断した場合(S26:NO)、処理をステップS21へ戻す。そして障害発生の通知を受信したと判断した場合(S26:YES)、データべースを保存して(S23)、車両情報を生成し(S27)、ドライブレコーダ4へ送信して(S28)処理を終了する。
【0116】
このように、実施の形態2における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6dは夫々、データベース61a,61b,61c,61dにおけるデータの値の監視、外部からの障害発生の通知、又は外部との通信可否に基づいて、車両の事故の発生又は故障の発生を含む障害の発生が検知され、障害の発生が検知された時点におけるデータベース61d(データベース61a,61b,61cと内容が同期されている)におけるデータが、そのままドライブレコーダ4にて記録される形式に再構築されて車両情報として生成されて送信される。これにより、障害が発生した時点における各車載機器(アクチュエータ1a,1b,1c、ECU2a,2b,2c,2d、及びセンサ3a,3b,3c)の状況、即ち車両全体の状況を示す車両情報がドライブレコーダ4に記録される。これにより、事後的に障害が発生した時点における車両の状況を再現することが可能となる。
【0117】
また、実施の形態2ではゲートウェイ6dは基本的に、ドライブレコーダ4から定期的に送信される送信要求に応じて車両情報を生成して送信し、ドライブレコーダ4に記録させる。これにより、ドライブレコーダ4とゲートウェイ6dとの間の通信にて障害が発生した場合もこれを検知して、事後的に利用できるようにデータベース61dの内容の保存が可能である。
【0118】
実施の形態2における車載通信システムでは、ゲートウェイ6a,6b,6c,6d間で障害発生を検知した場合に通知し合う構成とした。これにより、他の装置にて障害が検知された場合、又はゲートウェイ6a,6b,6c,6d間における通信に障害が発生した場合もこれを検知して、障害発生を事後的に再現できるように車両情報をドライブレコーダ4へ送信する。
【0119】
更に実施の形態2おける車載通信システムでは、各系統別に車載機器にいずれも接続されているゲートウェイ6a,6b,6c,6dが夫々、データベース61a,61b,61c,61dの内容を時系列に記憶しており、障害発生が検知された場合、その時点及び前後の複数の時点におけるデータベース61a,61b,61c,61dの履歴が各ゲートウェイ6a,6b,6c,6dで保存される。これによりドライブレコーダ4に障害発生時におけるデータベース61dに基づく車両全体の状況を示す情報が記録される上、更に詳細なデータそのものが保存されるので、より厳密に車両全体の状況を再現することができる。
【0120】
このように実施の形態2でも、ドライブレコーダ4が有する画像・音声データを記録するために用意されるハードディスクなどの大容量の記録媒体に車両全体の制御に係る情報が共に記録されるから、大容量の記録用資源を有効に利用して、新たに専用の記録装置などを車両に搭載することなしに、画像・音声データからは解析できないような車両における障害発生時における状況を再現し、原因を解明することが可能となるなど、優れた効果を奏する。
【0121】
なお、実施の形態1及び2では、車載機器群は系統別に分けられる構成としたが、これに限らず、物理的な位置が近いか否かによってグループに分けられて、グループ毎にゲートウェイが接続される構成としてもよい。
【0122】
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
1a,1b,1c アクチュエータ(制御対象)
2a,2b,2c,2d ECU(制御装置)
3a,3b,3c センサ
4 ドライブレコーダ(記録装置)
5a,5b,5c,5d 通信線(支線)
6a,6b,6c,6d ゲートウェイ(中継装置)
602d 車両情報生成部(生成手段)
603d 監視部
604d 検知部(検知手段)
61a,61b,61c,61d データベース
7 通信線(幹線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数の車載機器からなる車載機器群に接続されており、車載機器と通信する手段と、前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースとを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データべースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより、車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置において、
任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、
該生成手段が生成した情報を、前記車載機器群の内の特定の車載機器へ送信するようにしてあること
を特徴とする中継装置。
【請求項2】
車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段を備え、
前記生成手段は、前記検知手段が障害の発生を検知した時点で前記データベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を、記憶領域に時系列に記憶する手段と、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、前記手段が時系列に記憶している複数の時点におけるデータを前記記憶領域とは異なる記憶領域に記憶する手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記車載機器から所定の周期にて送信される任意の情報を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記検知手段は、車載機器から受信したデータの値、又は前記データの値の変化が異常か否かに基づき障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項6】
他の中継装置と通信する手段を備え、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生通知を送信するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項7】
他の中継装置と通信する手段を備え、
前記検知手段は、他の中継装置から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項8】
車両に搭載される複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及び前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新させ、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにおいて、
前記複数の車載機器群の内のいずれか1つの車載機器群に含まれる車載機器として、車両内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置を含み、
該記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置は、
自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、
該生成手段が生成した車両情報を、前記記録装置へ送信するようにしてあり、
前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された情報を受信して記録するようにしてあること
を特徴とする車両情報記録システム。
【請求項9】
各車載機器群に接続されている前記中継装置は夫々、
相互に通信する通信手段と、
車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段と
を備え、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生を通知するようにしてあり、
前記特定の中継装置の生成手段は、
前記検知手段により障害の発生を検知した時点、又は他の中継装置から障害発生の通知を受けた時点におけるデータベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあること
を特徴とする請求項8に記載の車両情報記録システム。
【請求項10】
前記記録装置は、車両情報の送信要求を前記特定の中継装置へ所定の周期で送信する手段を備え、
前記特定の中継装置の障害検知手段は、
前記送信要求を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項9に記載の車両情報記録システム。
【請求項11】
車両に搭載される複数の車載機器からなる複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及びデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにて、前記複数の車載機器群の内の1つの車載機器であり、車内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置が、車両の状況を示す車両情報を記録する方法であって、
前記記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置が、
自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む前記車両情報を所定の形式にて生成し、
生成した情報を、前記記録装置へ送信し、
前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された車両情報を受信して記録する
ことを特徴とする車両情報記録方法。
【請求項1】
車両に搭載される複数の車載機器からなる車載機器群に接続されており、車載機器と通信する手段と、前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースとを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データべースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより、車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置において、
任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、
該生成手段が生成した情報を、前記車載機器群の内の特定の車載機器へ送信するようにしてあること
を特徴とする中継装置。
【請求項2】
車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段を備え、
前記生成手段は、前記検知手段が障害の発生を検知した時点で前記データベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
任意の時点で前記データベースに記憶されているデータの内の一部又は全部を、記憶領域に時系列に記憶する手段と、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、前記手段が時系列に記憶している複数の時点におけるデータを前記記憶領域とは異なる記憶領域に記憶する手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記車載機器から所定の周期にて送信される任意の情報を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記検知手段は、車載機器から受信したデータの値、又は前記データの値の変化が異常か否かに基づき障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項6】
他の中継装置と通信する手段を備え、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生通知を送信するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項7】
他の中継装置と通信する手段を備え、
前記検知手段は、他の中継装置から障害発生通知を受信した場合に障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の中継装置。
【請求項8】
車両に搭載される複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及び前記車載機器から送信されるデータを記憶するデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新させ、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにおいて、
前記複数の車載機器群の内のいずれか1つの車載機器群に含まれる車載機器として、車両内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置を含み、
該記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置は、
自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む情報を所定の形式にて生成する生成手段を備え、
該生成手段が生成した車両情報を、前記記録装置へ送信するようにしてあり、
前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された情報を受信して記録するようにしてあること
を特徴とする車両情報記録システム。
【請求項9】
各車載機器群に接続されている前記中継装置は夫々、
相互に通信する通信手段と、
車両の事故又は車載機器の故障を含む障害の発生を検知する検知手段と
を備え、
前記検知手段が障害の発生を検知した場合、他の中継装置へ障害発生を通知するようにしてあり、
前記特定の中継装置の生成手段は、
前記検知手段により障害の発生を検知した時点、又は他の中継装置から障害発生の通知を受けた時点におけるデータベースに記憶されているデータの一部又は全部を含む情報を生成するようにしてあること
を特徴とする請求項8に記載の車両情報記録システム。
【請求項10】
前記記録装置は、車両情報の送信要求を前記特定の中継装置へ所定の周期で送信する手段を備え、
前記特定の中継装置の障害検知手段は、
前記送信要求を、前記所定の周期よりも長い時間受信しない場合、障害の発生を検知するようにしてあること
を特徴とする請求項9に記載の車両情報記録システム。
【請求項11】
車両に搭載される複数の車載機器からなる複数の車載機器群と、車載機器群毎に夫々、通信線を介して前記車載機器群に接続されており、車載機器と通信する通信手段及びデータベースを備え、各車載機器から受信したデータによって前記データベースを更新し、前記データベースに記憶されているデータを各車載機器へ送信することにより車載機器間のデータの送受信を中継する中継装置とを含むシステムにて、前記複数の車載機器群の内の1つの車載機器であり、車内外の画像又は音声のデータを記録する記録装置が、車両の状況を示す車両情報を記録する方法であって、
前記記録装置を含む車載機器群に接続されている特定の中継装置が、
自身が備えるデータベースに任意の時点で記憶されているデータの内の一部又は全部を含む前記車両情報を所定の形式にて生成し、
生成した情報を、前記記録装置へ送信し、
前記記録装置は、前記特定の中継装置から送信された車両情報を受信して記録する
ことを特徴とする車両情報記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−167834(P2010−167834A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10307(P2009−10307)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
[ Back to top ]