説明

中継転送制御システム

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、交換機システムや情報処理システム等、複数の中継装置を介して情報の中継転送を行なうシステムに係り、特に、システムの拡張等における活線挿入時の操作を効率良く行なうのに好適な中継転送制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】交換機システムや、情報処理システム等は、CPU(Central Processing Unit)とメモリを具備した情報処理装置や、IO(Input Output、入出力装置)などの装置をバスに接続して構成されているが、信頼性を向上させることを目的として装置を二重化したり、あるいは、複数の装置を接続するために中継装置を設けてバスを拡張している。このような装置の二重化やバスの拡張に伴う中継装置の活線挿入や供給電源の投入時やリセット時には、中継装置から通電状態を情報処理装置に通知し、この通知を受信した情報処理装置の処理により、装置の組込処理を行なう。この時、中継装置は、通電もしくはリセット後は直ちに情報の中継を行なうので、中継装置の故障あるいはアップグレードに伴う交換時には、二重化された中継装置を交換するときの活線挿入順序を考慮した保守手順が必要であった。
【0003】例えば、保守者が、基本バス側の中継装置と拡張側の中継装置を、同時に活線挿入した場合、活線挿入したタイミングによっては、拡張バス側の中継装置からの情報が、基本バス側の中継装置の情報よりも先に送出される場合がある。その場合、情報処理装置による拡張バス側の中継装置の組込処理が、基本バス側の中継装置の組込処理よりも先に実行されてしまう。しかし、この場合、基本バス側の中継装置の組込処理が完了していないため、拡張バス側の中継装置の組込処理が異常となり、制御矛盾が生じる。従来は、このような制御矛盾を回避するために、情報処理装置の処理を考慮して、「基本バス側の中継処理装置→拡張バス側の中継装置」の順に、各々の中継装置を活線挿入する保守手順が必要であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする問題点は、従来の技術では、二重化された中継装置の故障あるいはアップグレードに伴う交換時における活線挿入順序を自動的に制御することができない点である。本発明の目的は、これら従来技術の課題を解決し、中継装置を備えた交換機システムや情報処理システム等の保守性能の向上を可能とする中継転送制御システムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の中継転送制御システムは、(イ)基本バスと拡張バスとを各々中継する、基本バス側中継装置と拡張バス側中継装置とを有し、基本バス側中継装置の通電もしくはリセットを契機として状態通知情報を情報処理装置に送出し、この情報処理装置による自装置の組込処理を依頼すると共に、他装置からの状態通知情報を受信して、情報処理装置に中継転送する中継転送制御システムであって、自装置(基本バス側中継装置4)の状態通知情報の情報処理装置(6)への送出中、他装置(拡張バス側中継装置5)からの状態通知情報の受信を抑止する中継転送抑止部(中継転送制御部11a、通電検出/通知制御部12a、制御レジスタ13a)を設けることを特徴とする。また、(ロ)上記(イ)に記載の中継転送制御システムにおいて、中継転送抑止部は、他装置(拡張バス側中継装置5)からの状態通知情報を受信する中継転送制御部(11a)と、自装置(基本バス側中継装置4)の通電もしくはリセットを検出して状態通知情報を送出すると共に、中継転送制御部(11a)による他装置(拡張バス側中継装置5)からの状態通知情報の受信動作を抑止する通電検出/通知制御部(12a)とを少なくとも有することを特徴とする。また、(ハ)上記(ロ)に記載の中継転送制御システムにおいて、通電検出/通知制御部(12a)による自装置(基本バス側中継装置4)の通電もしくはリセット検出に基づきフラグを立てる制御レジスタ(13a)を設け、中継転送制御部(11a)は、制御レジスタ(13a)のフラグ状態に基づき、他装置(拡張バス側中継装置5)からの状態通知情報を受信するか否かを決定することを特徴とする。
【0006】
【作用】本発明においては、情報の中継転送を行なう中継装置は、自己の情報を送出し終えるまでは、他の装置からの情報を受信することを抑止することができる。このことにより、二重化された中継装置の故障あるいはアップグレードに伴う交換時等における活線挿入に係る情報処理装置の制御矛盾を回避することができ、中継装置の活線挿入順序を意識した保守手順が不要となる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図面により詳細に説明する。図1は、本発明の中継転送制御システムの本発明に係る構成の一実施例を示すブロック図である。本図において、1は基本シリアルバス、2は拡張シリアルバス、3は中継用信号線、4は本発明に係る中継転送制御を行なう基本バス側中継装置、5は拡張バス側中継装置、6は基本バス側中継装置4や拡張バス側中継装置5の組込処理等を行なう情報処理装置、7a、7bは本発明に係る中継転送制御機能を有する中継用バスインタフェース制御部(図中、中継用バスI/Fと記載)、8は情報処理装置6の基本シリアルバス1との接続制御を行なうバスインタフェース制御部(図中、I/Fと記載)、9a〜9cは基本バス側中継装置4および情報処理装置6の基本シリアルバス1を介しての情報の送受信制御、拡張バス側中継装置5の拡張シリアルバス2を介しての情報の送受信制御を行なう送受信制御部、10a〜10cは各装置内のデータ転送用内部バス、11a、11bは基本バス側中継装置4と拡張バス側中継装置5間での情報の送受信制御を行なうと共に本発明に係る中継転送制御を行なう中継転送制御部、12a、12bは本発明に係る通電検出/通知制御部、13a、13bは本発明に係る制御レジスタ、14a、14bは受信抑止制御信号線、15は基本バス側中継装置4や拡張バス側中継装置5等の組込処理を行なう装置組込処理制御部であり、バスインタフェース制御部8を介して情報処理装置6と中継装置4が接続され、中継用信号線3および基本バス側中継装置4、拡張バス側中継装置5により基本シリアルバス1と拡張シリアルバス2が接続された構成となっている。装置組込処理制御部15は、CPUおよびメモリからなる制御コアであり、このメモリに装置組込処理用のプログラムが格納されており、このプログラムに基づき、活線挿入通知受信順に、装置の組込処理を行なう。以下、このような構成による本発明の中継転送制御に係る各部の動作説明を行なう。
【0008】基本シリアルバス1に接続された基本バス側中継装置4を活線挿入した場合には、基本バス側中継装置4は、中継用バスインタフェース制御部7a内の通電検出/通知制御部12aにより、通電を検出する。この通電を検出した通電検出/通知制御部12aは、データ転送用内部バス10aを介して接続された制御レジスタ13aの受信抑止フラグを「1」に設定する。この受信抑止フラグは、受信抑止制御信号線14aを介して中継転送制御部11aにより参照され、受信抑止フラグが「1」の場合には、中継転送制御部11aは、中継用信号線からの情報入力を受け付けない。
【0009】通電検出/通知制御部12aは、この制御レジスタ13aの受信抑止フラグ「1」の設定と共に、データ転送用内部バス10aを介して、送受信制御部9aに活線挿入通知情報を送出する。送受信制御部9aは、この活線挿入通知情報を、基本シリアルバス1を介して情報処理装置6に送出する。基本バス側中継装置4からの活線挿入通知情報を受信した情報処理装置6は、バスインタフェース制御部8内の送受信制御部9cにより、この情報を、データ転送用内部バス10cを介して装置組込処理制御部15に送出する。活線挿入通知情報を受信した装置組込処理制御部15は、予めメモリに格納されたプログラムに基づき、基本バス側中継装置4に対する組込処理を行なう。
【0010】また、活線挿入通知情報を送出した基本バス側中継装置4は、送受信制御部9aにより、データ転送用内部バス10aを介して、通電検出/通知制御部12aに、活線挿入通知情報を送出したことを通知する。この通知を受信した通電検出/通知制御部12aは、データ転送用内部バス10aを介して、制御レジスタ13aの受信抑止フラグを「0」に設定し、受信抑止制御信号線14aを介して、中継転送制御部11aに抑止制御の解除を指示する。この指示に基づき、中継転送制御部11aは、抑止制御を解除し、以後、中継用信号線3から情報が入力された場合には、データ転送用内部バス10aを介して、送受信制御部9aに送出する。
【0011】また、拡張シリアルバス2に接続された拡張バス側中継装置5が活線挿入された場合には、拡張バス側中継装置5は、上述の基本バス側中継装置4の活線挿入時の処理動作を行ない、中継転送制御部11bから中継用信号線3を介して、基本バス側中継装置4に活線挿入通知情報を送出する。基本バス側中継装置4は、この拡張バス側中継装置5からの活線挿入通知情報を中継転送制御部11aで受信し、送受信制御部9aにより、基本シリアルバス1を介して情報処理装置6に転送する。基本バス側中継装置4で中継転送された拡張バス側中継装置5からの活線挿入通知情報を受信した情報処理装置6は、装置組込処理制御部15により、予めメモリに格納されたプログラムに基づき、拡張バス側中継装置5に対する組込処理を行なう。
【0012】このような拡張バス側中継装置5の活線挿入が、基本バス側中継装置4の活線挿入と同時に行なわれた場合にも、拡張バス側中継装置5からの活線挿入通知情報が、中継転送制御部11bおよび中継用信号線3を介して、基本バス側中継装置4の中継転送制御部11aに送出される。しかし、このような場合、制御レジスタ13aの受信抑止フラグが「1」となっているので、中継転送制御部11aは、中継用信号線3からの情報入力を受け付けない。その結果、拡張バス側中継装置5からの活線挿入通知情報は、情報処理装置6に転送されず、情報処理装置6での拡張バス側中継装置5に対する組込処理は行なわれない。このようにして、拡張バス側中継装置5の活線挿入が、基本バス側中継装置4の活線挿入と同時に行なわれた場合において従来発生していた情報処理装置6での制御矛盾を回避することができる。
【0013】以下、図2に基づき、基本バス側中継装置4の中継転送制御の動作説明を行なう。図2は、図1における基本バス側中継装置の本発明に係る処理動作例を示すフローチャートである。活線挿入時もしくは電源投入時(ステップ201)、図1の基本バス側中継装置4は、図1の通電検出/通知制御部12aにより、この通電を検出し、図1の制御レジスタ13aの受信抑止フラグを「1」に設定し(ステップ202)、自己の活線挿入通知を図1の情報処理装置6に送出する(ステップ203)。この活線挿入通知が完了した時点で(ステップ204)、図1の制御レジスタ13aの受信抑止フラグを「0」に戻し、図1の中継転送制御部11aによる中継用信号線3からの情報入力の抑止制御を解除する(ステップ205)。以後、図1の中継用信号線3から情報が入力された場合には(ステップ206)、図1の中継転送制御部11aにより中継用信号線3からの情報を受信し(ステップ207)、図1の基本シリアルバス1に送出する(ステップ208)。
【0014】以上、図1、および、図2を用いて説明したように、本実施例では、情報の中継転送を行なう中継装置(基本バス側中継装置4と拡張バス側中継装置5)は、自己の情報を送出し終えるまでは、他の装置からの情報を受信することを抑止することができる。このことにより、基本バス側中継装置4と拡張バス側中継装置5の各々が、同時に、自己の通電を検出した場合には、拡張バス側中継装置5の活線挿入通知は、基本バス側中継装置4の受信抑止動作により待ち合わせられ、基本バス側中継装置4の活線挿入通知後の受信抑止解除後に、拡張バス側中継装置5の活線挿入通知の情報処理装置6への送出が可能となる。この結果、二重化された中継装置の故障あるいはアップグレードに伴う交換時等における活線挿入に係る情報処理装置の制御矛盾を回避することができ、中継装置の活線挿入順序を意識した保守手順が不要となる。尚、本発明は、図1、図2を用いて説明した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、本実施例では、通電を契機とした動作説明を行なっているが、リセットを契機とすることも可能である。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、二重化された中継装置の故障あるいはアップグレードに伴う交換時等における活線挿入順序を自動的に制御することができ、交換機システムや情報処理装置システム等、中継装置を備えたシステムの保守性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中継転送制御システムの本発明に係る構成の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1における基本バス側中継装置の本発明に係る処理動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 基本シリアルバス
2 拡張シリアルバス
3 中継用信号線
4 基本バス側中継装置
5 拡張バス側中継装置
6 情報処理装置
7a、7b 中継用バスインタフェース制御部
8 バスインタフェース制御部
9a〜9c 送受信制御部
10a〜10c データ転送用内部バス
11a、11b 中継転送制御部
12a、12b 通電検出/通知制御部
13a、13b 制御レジスタ
14a、14b 受信抑止制御信号線
15 装置組込処理制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基本バスと拡張バスとを各々中継する、基本バス側中継装置と拡張バス側中継装置とを有し、上記基本バス側中継装置の通電もしくはリセットを契機として状態通知情報を情報処理装置に送出し、該情報処理装置による上記基本バス側中継装置の組込処理を依頼すると共に、上記拡張バス側中継装置からの状態通知情報を受信して、上記情報処理装置に中継転送する中継転送制御システムにおいて、上記基本バス側中継装置の状態通知情報の上記情報処理装置への送出中、上記拡張バス側中継装置からの状態通知情報の受信を抑止する中継転送抑止手段を設けることを特徴とする中継転送制御システム。
【請求項2】 請求項1に記載の中継転送制御システムにおいて、上記中継転送抑止手段は、上記拡張バス中継装置からの状態通知情報を受信する中継転送制御手段と、上記基本バス中継装置の通電もしくはリセットを検出して上記状態通知情報を送出すると共に、上記中継転送制御手段による上記拡張バス中継装置からの状態通知情報の受信動作を抑止する通電検出/通知制御手段とを少なくとも有することを特徴とする中継転送制御システム。
【請求項3】 請求項2に記載の中継転送制御システムにおいて、上記通電検出/通知制御手段による上記基本バス中継装置の通電もしくはリセット検出に基づきフラグを立てる手段を設け、上記中継転送制御手段は、上記フラグの状態に基づき、上記拡張バス中継装置からの状態通知情報を受信するか否かを決定することを特徴とする中継転送制御システム。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【特許番号】特許第3427951号(P3427951)
【登録日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【発行日】平成15年7月22日(2003.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−3716
【出願日】平成7年1月13日(1995.1.13)
【公開番号】特開平8−195774
【公開日】平成8年7月30日(1996.7.30)
【審査請求日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【参考文献】
【文献】特開 平5−11888(JP,A)