説明

中通し釣竿

【課題】糸通し具が挿通しやすく、釣糸の竿管内への挿通抵抗の少ない中通し釣竿を提供することである。
【解決手段】大径竿管12の一側に釣糸導入孔12cを形成した釣糸導入部24を有する中通し釣竿10であって、釣糸導入孔12cの先側から後側に延設され、大径竿管12の一側から外側に離隔した位置にガイドリング40を保持するリング保持部37bを形成した釣糸ガイド36を備え、このガイドリング40は、大径竿管12との近位点42dが、釣糸導入孔12cを通りかつ先側のリング部材34aと後側のリング部材34bとに接する共通接線44と、穂先側竿管20の栓体開口端の釣糸挿通孔26aに対向する部位から延びて後側のリング部材34bの外側に接する後側接線46とが形成する角度の範囲内に配置され、大径竿管12から最も離隔した遠位点42cが、大径竿管との間に20mm〜30mmの距離を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、特に、竿管の一側に貫通形成した釣糸導入孔を通して、竿管の外部から内部に釣糸を導入する釣糸導入部を有する中通し釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸が竿管の内部を穂先まで案内される中通し釣竿の場合にあっては、魚釣用リールが取付けられる元竿に釣糸導入孔を形成し、魚釣用リールから繰出された釣糸を、この釣糸導入孔から竿管の内部に案内する釣糸導入部が設けられている。このような釣糸導入部を有する中通し釣竿は、魚釣用リールから放出される釣糸の収束性を担保し、釣糸に対する抵抗を低減して糸絡みが発生しないようにする必要がある。
【0003】
このような中通し釣竿には、道糸を竿管の内部に導くガイドフレームを釣竿の外周部に装着し、このガイドフレームの先側に長円形のガイドリングを嵌め込んだものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−9842
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような中通し釣竿では、長円形のガイドリングを有するものであっても、竿管内に後方に向けて傾斜しつつ突入する管状の道糸導入体まで案内するものであり、この道糸導入体の内端部にも小径のガイドリングが設けられている。このガイドリングは開口面積が大きく形成されるとしても、魚釣用リールから繰出される釣糸の収束性をよくするものではなく、釣糸の導入抵抗を低減するものでもない。更に、釣糸を糸通しするためには、この長円形のガイドリングから管状の道糸導入体を介する複雑な経路に沿って挿通するために、屈曲性のあるワイヤ構造を持つ糸通し具が必要となる。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、糸通し具が挿通しやすく、釣糸の竿管内への挿通抵抗の少ない中通し釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の中通し釣竿は、穂先側竿管を振出し継合する大径竿管の一側に釣糸導入孔を形成し、この釣糸導入孔の先側と後側との縁部を硬質のリング部材で覆い、この釣糸導入孔を通して、大径竿管の外側から内側に釣糸を導入する釣糸導入部を有し、この釣糸導入部から前記穂先側竿管の尻栓に形成した釣糸挿通孔から釣糸を穂先側に挿通する中通し釣竿であって、この釣糸導入部には、前記釣糸導入孔の先側から釣糸導入孔を超えて後側に延設され、釣糸導入孔の後側かつこの大径竿管の前記一側から外側に離隔した位置に、釣糸用ガイドリングを保持するリング保持部を形成した釣糸ガイドが配置され、このリング保持部で保持されるガイドリングは、大径竿管に最も近接する内面が、先側のリング部材内側に接しかつ後側のリング部材外側に接する共通接線と、前記穂先側竿管の尻栓開口端の釣糸挿通孔に対向する部位から延びて後側のリング部材の外側に接する後側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置され、大径竿管から最も離隔した内面が、大径竿管との間に20mm〜30mmの距離を形成する範囲に配置されることを特徴とする。
【0007】
前記大径竿管から最も離隔した内面は、前記後側接線と、前記穂先側竿管の尻栓開口端の釣糸導入孔に対向する部位から延びて先側のリング部材の内側に接する前側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置されることが好ましい。
【0008】
また、前記ガイドリングは、その全周にわたってリング保持部から後方に突出させて保持されることが好ましい。
【0009】
前記ガイドリングは、大径竿管の軸線と交差する方向に延びる長軸を有する長円形に形成されることが好ましく、更に、長軸の長さが短軸の長さの2倍以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の中通し釣竿によると、ガイドリングの大径竿管に最も近接する内面が、先側のリング部材内側に接しかつ後側のリング部材外側に接する共通接線と、穂先側竿管の尻栓開口端の釣糸挿通孔に対向する部位から延びて後側のリング部材の外側に接する後側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置されることにより、このガイドリングから釣糸を糸通しする際に、直線的で屈曲部がないため、糸通し具が挿通抵抗をほとんど受けることがなく、挿通しやすい。
【0011】
大径竿管から最も離隔した内面が、後側接線と前側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置されることにより、これらの前側あるいは後側のリング部材と、ガイドリングとの2つの点で糸通し具を支持し、案内しつつ滑らかに挿通することができる。
【0012】
また、ガイドリングが全周にわたってリング保持部から後方に突出する場合には、釣糸がリング保持部に当接することなく、直接ガイドリングに当接しつつ滑らかに導かれる。
【0013】
このガイドリングが長円形形状を有する場合には、大径竿管に最も近接するガイドリングの内面を竿管に近づけつつ、反対側端部では竿管から離隔させることにより、糸通し具の挿通性を向上すると共に、釣糸に作用する抵抗を小さく出来、釣糸の収束性も向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1から図3は、本発明の好ましい実施形態による中通し釣竿10を示す。
【0015】
図1にその全体の概略を示すように、本実施形態の中通し釣竿10は、竿尻側に握り部12aと尻栓12bとを設けた元竿管である大径竿管12を有し、穂先側にトップガイド14aを取付けた第1竿管である穂先竿管14を有し、この穂先竿管14から竿尻側に順に第2竿管である穂持竿管16と第3竿管である中竿管18と第4竿管である元前竿管20とを継合わせて形成してある。これらの第1〜第4竿管14,16,18,20は、基端外周面と先端内周面との各継合部P1〜P4で継合される振り出し構造であって、大径竿管12内に収納される。これらの各竿管は、強化繊維に合成樹脂を含浸させた繊維強化プリプレグ(FRP)を芯金に巻回した後、硬化、脱芯等の通常の工程を経て形成される。
【0016】
大径竿管12と穂先竿管14との間の竿管の数については上述の3本に限定されることはない。また、例えば第2,第3竿管を省略して、第2竿管16を大径竿管12に継合させてもよく、大径竿管12と第4竿管20とを並継ぎにする等、部分的に並継ぎ構造を採用してもよい。また、大径竿管12に形成される握り部12a等の形態も図示のものに限定されることはない。更に、大径竿管12の後方に、元竿管を設けることも可能である。
【0017】
本実施形態の大径竿管12には、各種の魚釣用リール(図示しない)を固定するリールシート22が設けられ、この穂先側には、リールから延びる釣糸を側面から竿管の内側に導入する釣糸導入部24が設けられている。
【0018】
図2は、第4竿管20を大径竿管12から振出し、継合部P4で継合させて係止した状態を示す。この第4竿管20内には第1竿管14から第3竿管18が順に収納されており、第4竿管20の後端に取付けられた、例えばABSやポリアセタール等の好適材料で形成された栓体26で支えられ、先端に取付けられた釣竿保護カバー28で抜け止めされている。この釣竿保護カバー28には、端壁28aを貫通して延びる挿入管30が固定されており、第2〜第4竿管16〜20の先端を端壁28aに緩衝材29を介して当接させたときに、この挿入管30が第2竿管16内に挿入され、第1竿管14のトップガイド14aに当接する。第1竿管14は、この挿入管30により、第2竿管16から抜出るのを防止される。符合32は、釣竿保護カバー28を大径竿管12あるいは第4竿管20の先端側に固定するための、例えばベルト部材である固定具を示す。
【0019】
このように、大径竿管12の先側に穂先側竿管である第4竿管20を振出し状態で継合させると、釣糸導入部24に形成した釣糸導入孔12cが開かれ、大径竿管12の内側の空間が外側に開放される。この釣糸導入部24に形成した釣糸導入孔12cは、大径竿管12の側壁を貫通して形成され、大径竿管12の軸線13方向に沿って長軸が配置される長円形状を有している。この釣糸導入孔12cの周縁部には、先側のリング部材34aおよび後側のリング部材34bで示すように、硬質のリング部材34a,34bが配置されている。この釣糸導入孔12cの先側で、釣糸ガイド36が固定されている。
【0020】
この釣糸ガイド36は、例えばステンレス鋼等の金属板製のガイドフレーム36aと合成樹脂製の案内部材36bとを重ね合せた構造を有し、先側の固定部37aが、本実施形態では大径竿管12の内面に抜け止め固定された固定ブロック38aに、固定ネジ38bを螺合することにより、釣糸導入孔12cの先側に固定されている。この釣糸ガイド36はガイドフレーム36aおよび案内部材36bを、固定部37aから釣糸導入孔12cを超えて大径竿管12の後側かつこの大径竿管12から離隔する方向に延設し、後側端部にリング保持部37bを一体的に形成してある。
【0021】
この釣糸ガイド36は、固定部37aにより、大径竿管12に対して片持ち状に保持される。ガイドリング40を釣糸導入孔12cの後側で保持するリング保持部37bは、大径竿管12から離間させて配置される。このリング保持部37bと大径竿管12との間に適宜の間隙Sを形成してもよい。このような間隙Sを設ける場合には、大径竿管12に荷重が作用したときに、この釣糸ガイド36の特にリング保持部37bと干渉するのを防止し、これにより、大径竿管12の釣糸導入部24に大きな応力が形成されるのを防止することができる。なお、このような間隙Sを形成する場合は、後方に向けて次第に拡大させ、内部に入り込んだ釣糸がこの間隙S内で係止されないように形成することが好ましい。また、例えば柔軟な弾性材料等の好適材料をこの間隙Sに充填し、釣糸がこのような間隙Sに入り込まないようにしてもよい。
【0022】
図2および図3に示すように、このリング保持部37bに保持されるガイドリング40は、例えばセラミック等の耐磨耗性の硬質材料で形成される。このガイドリング40は、全体的に長円形に形成され、内孔42を形成する内面は滑らかな曲面で形成され、外周部にはリング保持部37bを形成するガイドフレーム36aあるいは案内部材36bの一部の突条あるいは縁部(図示しない)が嵌合する周溝が形成されている。この内孔42のこの長円形の長軸42aは大径竿管12の軸線13と交差する方向に延び、このガイドリング40の長軸と釣糸導入孔12cの長軸とが同一の平面内に配置される。また、このガイドリング40を保持するリング保持部37bは、大径竿管12の後方に向けてこの大径竿管12から離間する方向で、魚釣用リールからの釣糸放出方向に向いている。
【0023】
このガイドリング40は、その全周にわたって釣糸ガイド36のリング保持部37bよりも後方に突出した状態で保持される。これにより、魚釣用リールから繰出された釣糸は、摺動抵抗の小さな長円形のガイドリング40で案内され、釣糸ガイド36の案内部材36bから釣糸導入孔12cを介して大径竿管12内に導かれる。このため、釣糸の導入抵抗が極めて小さく、糸絡みが生じ難い。
【0024】
本実施形態のガイドリング40は、釣糸ガイド36の取付部の外径が16mm〜21mmの大径竿管12に対して、内孔42の短軸42bの長さが約7mm、長軸42aの長さが約15mm程度の大きさに形成し、大径竿管12の外径とバランスをよくし、糸通しをスムーズに行うために、短軸42bの長さに対して長軸42aの長さが2倍以上とすることが好ましい。また、このガイドリング40は、釣糸ガイド36のリング保持部37bに取付けたときに、長軸42a上で大径竿管12から最も離隔した内孔42の内面と交差する遠位点42cは大径竿管12の表面との間の距離が20mm〜30mmの範囲に形成されている。このように内孔42の遠位点の位置を大径竿管12から離隔させることにより、魚釣用リールから繰出される釣糸が竿管の外面に当たり難くなり、竿管との接触による抵抗を低減することができる。
【0025】
この長円形のガイドリング40は、長軸42aが大径竿管12に最も近接した位置で内孔42の内面と交差する近位点42dが、先側のリング部材34aの内側に接しかつ後側のリング部材34bの外側に接する共通接線44と、元前竿管である第4竿管20の栓体26の開口端の釣糸導入孔12cに対向する部位から釣糸導入孔12cを通して大径竿管12の外側に延びて後側のリング部材34bに接する後側接線46とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置される。これにより、ガイドリング40の近位点42dと後側リング部材34bとに接するガイド側接線50は、共通接線44と後側接線46との間に配置され、大径竿管12の軸線13に対して極めて小さな角度を形成する。
【0026】
一方、ガイドリング40の遠位点42cは、後側接線46と、栓体26の開口端の釣糸導入孔12cに対向する部位から釣糸導入孔12cを通して大径竿管12の外側に延びて先側のリング部材34aに接する前側接線48とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置される。
【0027】
このようにガイドリング40が配置されることにより、後述する糸通し具を挿通する際、ガイドリング40の遠位点42cと先側リング部材34aとの2点に接触させた状態、およびガイドリング40の近位点42dと後側リング部材34bとの2点で接触させた状態の範囲内であれば、この糸通し具の先端を大径竿管12の内面に接触させることなく、栓体26の開口端に直接挿入することができる。
【0028】
本実施形態では、釣糸導入孔12cの軸方向長さ(具体的にはリング部材34a,34b間の長さ)を35mm〜40mmに形成し、第4竿管20が図2に示すように継合部P4で係止されたときの釣糸導入孔12cから40〜80mmの位置に栓体26を配置し、この栓体26の開口端の径を10mm〜14mmに形成してある。これにより、大径竿管12の軸線13に対し、共通接線44は約4°の角度α1を形成し、後側接線46は約13°の角度を形成し、前側接線48は、約19°の角度α3を形成する。ガイド側接線50は、4°〜13°の範囲に配置されるのが好ましく、ガイドリング40の内孔42は、4°〜19°の範囲に配置される。近位点42dの位置が角度α1とα2とで形成される範囲からずれた位置に配置されると、糸通し具を挿通するための挿通路が屈曲した状態となる。この場合は、糸通し具に挿入抵抗が作用する。
【0029】
図4は、この釣糸導入部24から挿入してこの中通し釣竿10に糸通しを行うのに適した種々の糸通し具を示す。
【0030】
図4の(A)に示す糸通し具60は、先細状の先端部62を一体的に形成した細長い棒状の本体部64を有し、後端には、ループ状の糸掛け部66を金属管68を介して固定してある。この糸通し具60は、一般には5〜8%で、3%以上の伸び率を有する超弾性合金等の金属材料で形成される。すなわち、長手方向に負荷を加えたときに約3%以上の伸び率で変形し、その負荷を取り去ったときに約90%以上の復元率で回復する材料で形成することが好ましい。例えばNi−Ti系の合金、Ni−Ti−Fe系の合金、Ni−Ti−Cu系合金、Ni−Ti−Cr系の合金で形成することができる。
【0031】
この糸通し具60は、直径が約1.6mm、長さが450mm、重量が5g以上とすることが好ましい。
【0032】
図4の(B)に示す糸通し具60Aは、本体部64Aを密巻状コイルバネで形成してあり、糸掛け部66をこの本体部64Aと同じ線材で一体に形成してある。また、図4の(C)に示す糸通し具60Bは、糸掛け部66Aが後端側に向けて鋭角状の尖端を有し、自動ハリス止めのような形態に形成してある。
【0033】
糸通し具60,60A,60Bのいずれも本体部64,64A,64Bの外径を、釣竿保護カバー28の挿入管30の内径よりも大きく形成してある。これとは逆に、挿入管30の内径を糸通し具60,60A,60Bの外径よりも大きく形成してもよい。
【0034】
図5は、このような糸通し具を用いて中通し釣竿10に糸通しする状態を示す。
【0035】
先ず、この中通し釣竿10を上下反転させ、釣糸ガイド36を上側に配置する。次いで、魚釣用リールから繰出した釣糸の先端を、例えば糸通し具60の糸掛け部66に取付け、ガイドリング40の近位点42dと後側リング部材34bとに当接させ、先端部62を釣糸導入孔12c内に挿入する。この状態で、糸通し具60は中間部を屈曲させることなく、先端部62を第4竿管20の栓体26の開口端に当接させることができる。
【0036】
この栓体26の開口端は、大径竿管12の内面とほぼ同径の後端部から釣糸挿通孔26aに向けて縮径するすり鉢状形状を有するため、糸通し具60を栓体26の開口端に当接させた状態で、中通し釣竿10の穂先側を下方に向けると、糸通し具60が第1竿管14内を穂先に向けて自重で落下する。なお、自重で落下しない場合は、上下に振ったり、遠心力で先側に移動させることができる。
【0037】
挿入管30の内径が本体部64の外径よりも小さい場合には、糸通し具60は先端部62が釣竿保護カバー28の挿入管30に嵌合する。これとは逆に、この挿入管30の内径が糸通し具60の外径よりも大きい場合には、この挿入管30を抜けて釣竿保護カバー28の先端から外部に突出する。いずれの場合も、釣竿保護カバー28を取外して挿入管30から糸通し具60を取り外し、あるいはこの釣竿保護カバー28から抜出た糸通し具60を引張って、魚釣用リールから繰出された釣糸を第1竿管14のトップガイド14aから引出す。釣糸ガイド36で保持されるガイドリング40がこのリング保持部37bから後方に突出しているため、糸通し具60を滑らかにスライドさせることができ、更に、釣糸に対する挿通抵抗も小さい。
【0038】
このような糸通しは、図4の(B)および(C)に示す糸通し具60A,60Bを用いる場合も同様であるが、これらの糸通し具60A,60Bは本体部64A,64Bが変形し易くかつ弾力があることにより、釣糸ガイド36内から細径の第1竿管14内に挿入した後に、滑らかに屈曲できるため、これらの挿通路の角度変化に追従させて容易に挿通させることができる。
【0039】
このように形成された中通し釣竿10は、ガイドリング40の大径竿管12に最も近接する内面の近位点42dが、先側のリング部材34aの内側に接しかつ後側のリング部材34bの外側に接する共通接線44と、穂先側の第4竿管20の栓体26の開口端の釣糸挿通孔26aに対向する部位から延びて後側のリング部材34bの外側に接する後側接線46とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置されることにより、このガイドリング40から釣糸を糸通しする際に、ガイドリング40と釣糸挿通孔26aとの間が直線的で屈曲部がないため、挿通抵抗をほとんど受けることがなく、糸通し具60,60A,60Bの挿通がきわめて容易に行うことができる。
【0040】
大径竿管12から最も離隔した内面の遠位点42cが、後側接線46と前側接線48とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内で大径竿管12の外面から20mm〜30mmの位置に配置されることにより、これらの先側あるいは後側のリング部材34a,34bと、ガイドリング40との2つの点で糸通し具60,60A,60Bを案内しつつ滑らかに挿通することができる。この遠位点42cが20mmよりも大径竿管12近くに位置すると、釣糸の収束性が悪く、かつ釣糸挿通抵抗が増大し、30mmよりも遠くに位置すると、バランスが悪く、重量も重くなる。
【0041】
また、ガイドリング40が全周にわたってリング保持部37bから後方に突出することにより、糸通し中、および実釣中のいずれの場合でも、釣糸がリング保持部37bに当接することなく、直接ガイドリング40に当接しつつ滑らかに導かれる。
【0042】
更に、ガイドリング40が長円形形状を有することにより、大径竿管12に最も近接するガイドリング40の内面における近位点42dを大径竿管12に近づけつつ、反対側の遠位点42cを大径竿管12から離隔させることにより、糸通し具の挿通性を向上すると共に、釣糸に作用する抵抗を小さくすることができる。すなわち、ガイドリング40の近位点42dが大径竿管12の外面から離隔した位置に配置されると、糸通しの際に、ガイドリング40と栓体26との間に形成される挿通路が屈曲した状態となる。したがって、糸通し具60は抵抗となって第1竿管14内までスムーズに挿入されないことになる。
【0043】
上述の中通し釣竿10における釣糸導入部24は、ガイドリング40を長円形に形成することにより、ガイドリングの近位点42dをできる限り大径竿管12に近づけて大径竿管12に対する傾斜角度を小さくし、糸通し具60の挿通性を良好にすると共に、ガイドリング40の遠位点42cをできる限り大径竿管12から離隔させて魚釣用リールから繰出される釣糸に与える抵抗を小さくしたもので、糸通しを容易とすることと、釣糸抵抗を小さくすることとの互いに相反する要求を満たすものである。しかも、ガイドリング40を大径化した場合のような、幅広構造で大型化することによる突出量の増大および重量の増大といった不都合を生じることもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好ましい実施形態による釣竿の全体の説明。
【図2】図1に示す釣竿の釣糸導入部の内部構造を示す拡大断面図。
【図3】図2のIII−III線に沿う説明図。
【図4】糸通し具の種々の形態を示す説明図。
【図5】図4の(A)に示す糸通し具を用いて糸通しする状態の説明図。
【符号の説明】
【0045】
10…中通し釣竿、12…大径竿管、12c…釣糸導入孔、20…第4竿管(穂先側竿管)、24…釣糸導入部、26…栓体、34a…先側リング部材、34b…後側リング部材、36…釣糸ガイド、37b…リング保持部、40…ガイドリング、44…共通接線、46…後側接線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先側竿管を振出し継合する大径竿管の一側に釣糸導入孔を形成し、この釣糸導入孔の先側と後側との縁部を硬質のリング部材で覆い、この釣糸導入孔を通して、大径竿管の外側から内側に釣糸を導入する釣糸導入部を有し、この釣糸導入部から前記穂先側竿管の尻栓に形成した釣糸挿通孔から釣糸を穂先側に挿通する中通し釣竿であって、この釣糸導入部には、前記釣糸導入孔の先側から釣糸導入孔を超えて後側に延設され、釣糸導入孔の後側かつこの大径竿管の前記一側から外側に離隔した位置に、釣糸用ガイドリングを保持するリング保持部を形成した釣糸ガイドが配置され、このリング保持部で保持されるガイドリングは、大径竿管に最も近接する内面が、先側のリング部材内側に接しかつ後側のリング部材外側に接する共通接線と、前記穂先側竿管の尻栓開口端の釣糸挿通孔に対向する部位から延びて後側のリング部材の外側に接する後側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置され、大径竿管から最も離隔した内面が、大径竿管との間に20mm〜30mmの距離を形成する範囲に配置されることを特徴とする中通し釣竿。
【請求項2】
前記大径竿管から最も離隔した内面は、前記後側接線と、前記穂先側竿管の尻栓開口端の釣糸導入孔に対向する部位から延びて先側のリング部材の内側に接する前側接線とのそれぞれの延長線が形成する角度の範囲内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の中通し釣竿。
【請求項3】
前記ガイドリングは、その全周にわたってリング保持部から後方に突出させて保持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の中通し釣竿。
【請求項4】
前記ガイドリングは、大径竿管の軸線と交差する方向に延びる長軸を有する長円形に形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の中通し釣竿。
【請求項5】
前記ガイドリングは、長軸の長さが短軸の長さの2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の中通し釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−228830(P2007−228830A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52230(P2006−52230)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】