説明

中間および高グレードの非ホジキンリンパ腫の抗−CD20抗体による治療

【課題】中間および高グレードの非ホジキンリンパ腫、および高レベルの骨髄波及に関連したリンパ腫の治療方法の提供。
【解決手段】抗−CD20抗体若しくは他のリンパ腫細胞除去性抗体、例えば抗−CD19抗体および抗−CD22抗体、或いはそれらの治療上有効なフラグメントを投与する。また、移植受容者の生存率を改善するために、抗−CD20抗体または他のリンパ腫細胞除去性抗体を移植レジメ(regimen)(自家骨髄移植または同種間骨髄移植或いは末梢血液幹細胞移植)の一部として投与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、中間および高グレードの非ホジキンリンパ腫、および高レベルの骨髄波及に関連したリンパ腫を、抗−CD20モノクローナル抗体およびそれらのフラグメントにより治療する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
非ホジキンリンパ腫はBリンパ球の悪性増殖を特徴とするものである。アメリカン・キャンサー・ソサイティー(American Cancer Society)によれば、新しい推定患者数は54,000人であると分析され、その65%が中間または高グレードのリンパ腫と分類されている。中グレードリンパ腫を持つと診断された患者の平均生存率は2〜5年であり、また高グレードリンパ腫を持つと診断された患者は診断後平均6ヶ月〜2年を生き延びる。
【0003】
中間および高グレードリンパ腫は、診断時点において、進行性が、患者が普通の治療法で平均5〜7年を生き延びる可能性のある低グレードリンパ腫よりもはるかに高い。中間および高グレードリンパ腫は、しばしば、結節外嵩高腫瘍(extranodal bulky tumors)が大きく、かつ患者の骨髄を浸潤することが多い流血中癌細胞が非常に多数であることが特徴である。
【0004】
通常の治療法として、自家骨髄または幹細胞移植か、または適切なドナーが得られれば、また骨髄が採取時に含む腫瘍細胞数が多過ぎるならば、同種間での骨髄または幹細胞移植のいずれかを多分伴う化学療法および放射線療法が挙げられている。患者は通常の治療法に好ましい反応を示すことが多いが、彼らは通常数ヶ月以内に再び悪化する。
【0005】
非ホジキンリンパ腫の比較的新しい治療法は、患者を癌性B細胞の表面にある蛋白質に向けられるモノクローナル抗体で治療するものであった。この抗体は、これをトキシンまたは放射線同位体標識物質に対して複合させることができ、それによって結合後に細胞死に影響を及ぼすことができる。或いはまた、ある抗体は、抗体結合が生ずることによって、細胞のアポプトーシスまたは死をもたらすヒトの抗体エフェクター機構を発生させるようにヒトの不変領域を用いて設計、加工する(engineered)ことができる。
【0006】
中間および高グレードリンパ腫の治療に目下調べられている1つの抗体は、オンコリム(登録商標)(Oncolym(登録商標))(131I−Lym−1)(テクニクローン社[Techniclone Corp.])で、これはリンパ腫細胞の80%を越える表面に存在するHLA−Dr10蛋白質を認識するネズミのIgG2aモノクローナル抗体である。正常B細胞(非癌性)の内の2%しかHLA−Dr10分子を発現しない。オンコリム(登録商標)は、数ミリメートルの距離にわたってベータ線を放射するヨウ素の放射性同位体であるヨウ素−[131](131I)に対して複合され、それによってそれは腫瘍の外縁を標的とし、そして嵩高病態(bulky disease)の発現を終わらせる効果的な方法であると考えられるものである。
【0007】
しかし、オンコリム(登録商標)を非ホジキンリンパ腫の進行した諸形態において使用する場合の潜在的な欠点は、このようなリンパ腫は骨髄波及(bone marrow involvement)が特徴であることが多いということである。従って、そのような患者に対する放射性同位体標識付き抗体の投与は、所望とされない骨髄抑止(myelosuppression)および健康な前駆細胞に対する損傷をもたらすことが多い。
【0008】
中間および高グレードリンパ腫を持つ患者に、現行治療法に関連した欠点の一部を回避し、そして再発頻度を低下させる代替療法および他のモノクローナル抗体を投与することができるならば有利であろう。
【0009】
(発明の概要)
本発明は、中間および高グレードのリンパ腫、特に骨髄波及および嵩高病態が特徴であるリンパ腫の治療に対する抗−CD20抗体の使用に関する。特に、本発明者は、驚くべきことに、低グレードの瀘胞性非ホジキンリンパ腫の治療に既に承認されているキメラ抗−CD20抗体であるリツキシマブ(登録商標)(Rituximab(登録商標))がより進行性のリンパ腫の治療にも有効であることを見いだした。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、中間または高グレードの非ホジキンリンパ腫、または高度の骨髄波及に関連した他のリンパ腫の症状を治療または緩和する方法であって、患者に、治療上有効な量の、抗−CD20抗体若しくは他のリンパ腫細胞除去性抗体、例えば抗−CD19抗体および抗−CD22抗体、或いはそれらの治療上有効なフラグメントを投与することを含む上記の方法に関する。本発明は、また、移植受容者の生存率を改善するために、抗−CD20抗体または他のリンパ腫細胞除去性抗体を移植レジメ(regimen)(自家骨髄移植または同種間骨髄移植或いは末梢血液幹細胞移植)の一部として投与することを含む。
【0011】
治療上有効な抗体“フラグメント”とは、中間または高グレードの非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者に投与するとき、または移植レジメの一部として使用するとき、完全抗体と実質的に同じ治療効果を与えることができる抗体の何らかの部分または誘導体を意味する。
【0012】
リンパ腫についての理解が進み、そして新しい病理組織学的変異が診断されるにつれて、リンパ腫の異なるタイプについて新しい分類体系が出てきた。一般に、本明細書で説明される方法の目的には、中間および高グレードリンパ腫は、1982年に刊行された「ワーキング・フォーミュレーション(Working Formulation)」で指定されたリンパ腫と定義されているものである。この分類体系は、中間グレードリンパ腫として瀘胞大細胞性(FL)リンパ腫、びまん性切れ込み小細胞性(DSC)リンパ腫、びまん性混合小および大細胞性(DM)リンパ腫、およびびまん性切れ込みまたは非切れ込み大細胞性(DL)リンパ腫を含んでいる。この分類体系は、免疫芽細胞性・大細胞性(IBL)リンパ腫、リンパ芽球回旋状(convoluted)または非回旋状(nonconvoluted)(LL)リンパ腫、非切れ込み小細胞性バーキットまたは非バーキット(SNC)リンパ腫を高グレードリンパ腫と認めている。
【0013】
上記の提案されたワーキング・フォーミュレーション以後も幾つかの分類体系が出ている。例えば、欧州および米国の病理学者によって提案された最近の分類体系は、リバイスド・ユーロッピアン・アメリカン・リンフォーマ(REAL)・クラシフィケーション(Revised European American Lymphoma (REAL) Classification)と呼ばれている。この分類体系は「中間グレード(intermediate-grade)」および「高グレード(high-grade)」NHLという用語を用いていないけれども、この技術分野の当業者であれば、リンパ腫は、典型的には、「中間グレード」および「高グレード」として特徴付けられることは了解されるだろう。例えば、REAL分類体系で定義される「マントル細胞性リンパ腫」は無痛性(indolent)およびより進行性(aggressive)の両形態として現れることがあり、そしてその深刻さに応じて中間または高グレードのリンパ腫と分類されることがある。
【0014】
例えば、U.S.ナショナル・キャンサー・インスティテュート(NCI)(U.S. National Cancer Institute (NCI))もまた、REALの分類の一部を臨床上より有用な「無痛性」または「進行性」リンパ腫の名称に分類している。「進行性」リンパ腫として、びまん性混合大細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫/びまん性非切れ込み小細胞性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞性リンパ腫およびエイズ関連リンパ腫が挙げられる。これらのリンパ腫は、このために、少なくとも「中間グレード」または「高グレード」と考えられ、またそのために本発明の治療法から利益を受けると思われる。
【0015】
一部リンパ腫の厳密な分類は困難であることがあるが、本発明により治療できるリンパ腫は、一般に、非常に多数の流血中B細胞、起こり得る骨髄波及、嵩高病態、またはリンパ管外の器官または部位の併発を特徴とするものである。
【0016】
開示されている治療法から最も利益を受ける患者は、しばしば、他のタイプの治療に対して抗療性であるそれら患者、または化学療法若しくは放射線療法のような他のタイプの治療を受けた後に再発したそれら患者である。しかし、本発明に開示されるモノクローナル抗体治療は新しく診断された患者にも有益であり、そしてそれには、他の通常の治療法と共に投与されるならば、再発の可能性を減らすに当たって相乗効果があるだろう。
【0017】
例えば、本発明の方法に、CD20に対する両モノクローナル抗体(またはそのフラグメント)を化学療法レジメと共に投与することを含む方法がある。その化学療法は、個々の患者に依存して、同時にかまたは逐次的かのいずれかの順序で施すことができる。「同時に」とは、治療剤の循環性半減期(circulating half-life)が一部重なり合うように同時かまたは同じ期間中のいずれか一方を意味する。
【0018】
本発明の抗体治療と組み合わせることができる化学療法レジメとして、CHOP、ICE、ミトザントロン(Mitozantrone)、シタラビン、DVP、ATRA、イダルビシン(Idarubicin)、ホエルザー(hoelzer)化学療法レジメ、La La化学療法レジメ、ABVD、CEOP、2−CdA、FLAG & IDA(後続のG−CSF治療を伴うかまたは伴わない)、VAD、M & P、C−ウィークリー(C-Weekly)、ABCM、MOPPおよびDHAPが挙げられる。最も好ましい化学療法レジメはCHOPである。
【0019】
本発明の主たる抗−CD20抗体は、ヒトの抗体、または抗体がヒトエフェクター機能を刺激することができるように、ヒトの不変領域ドメインを用いて設計、加工されているキメラ若しくはヒト化(humanized)抗体であるのが好ましい。本発明の方法で用いられるのが好ましい抗体は、リツキシマブ(登録商標)(IDECファーマシューティカルス社[IDEC Pharmaceuticals, Inc.])である。
【0020】
リツキシマブ(登録商標)は、短い半減期、ヒトエフェクター機能を刺激する限られた能力および免疫抗原性を含めてネズミの抗体で遭遇する諸制限を克服するために開発された新世代のモノクローナル抗体の1つである。リツキシマブ(登録商標)は、ネズミの軽鎖および重鎖可変領域並びにヒトのガンマI重鎖およびカッパ軽鎖不変領域を用いて一般に設計、加工されたモノクローナル抗体である。そのキメラ抗体はアミノ酸451個の2本の重鎖とアミノ酸213個の2本の軽鎖から構成され、おおよその分子量として145kDを有する。
【0021】
リツキシマブ(登録商標)は、その親であるネズミよりも補体の結合およびADCCの仲介に際して有効であり、そしてそれはヒトの補体の存在下でCDCを仲介する。この抗体はB−細胞系統FL−18、ラモス(Ramos)およびえい類(Raji)での細胞増殖を抑制し、化学療法抵抗性ヒトリンパ腫細胞系統をジフテリア毒素、リシン、CDDP、ドキソルビシンおよびエトポシド(etoposide)に対して感作性となし、そしてDHL−4ヒトB−細胞リンパ腫系統において容量依存様式でアポプトーシスを誘発する。ヒトでは、この抗体の半減期は最初の注入後で約60時間であり、そして第四注入後に各容量により174時間まで長くなる。この抗体の免疫抗原性は低い;7件の臨床研究における患者355人の内、検出可能な抗−キメラ抗体(HACA)反応があったのは3人(<1%)だけだった。
【0022】
本発明の方法は、癌性B細胞の表面にある蛋白質に結合する放射性同位体標識付き抗体の投与を含むことができる。このような放射性同位体標識付き抗体は、骨髄中の癌性B細胞の量を減少させ、そして骨髄中の腫瘍細胞に結合している抗体に起因する、所望とされない骨髄切除性抑止(myeloablative suppression)の可能性を小さくするヒトのキメラまたはヒト化抗体の投与に続いて投与されるのが好ましい。さらに、CD20は本発明の免疫療法の理想的標的であるが、他のB細胞の表面抗原に向けられる放射性同位体標識付き抗体も、本発明の方法で用いることが可能である。特に好ましい態様においては、この放射性同位体標識付き抗体は無標識付き抗体と共に使用される。
【0023】
非ホジキンリンパ腫の約80%はB−細胞の悪性腫瘍であって、これらの>95%はその細胞表面上でCD20抗原を発現する。この抗原は、全くB細胞上だけに見いだされ、造血幹細胞、プロ−B細胞、正常な形質細胞または他の正常組織には見いだされないので、免疫療法の魅力的な標的である。それは細胞表面から取れず、また抗体が結合することによって変調しない。
【0024】
本発明の放射性同位体標識付き抗体は、アルファ線またはベータ線を放射する任意の放射性同位体で標識されていることができる。しかし、好ましい同位体は90Yであり、また好ましい抗体はY2B8である。Y2B8はリツキシマブ(登録商標)と同じネズミの抗体2B8から設計、加工されたものである。その2B8抗体も診断および治療目的のために異なる放射性同位体標識物質に対して複合されている。この目的のために、ここで参照することにより全体が本明細書に含められる出願中の米国特許出願第08/475,813号、同第08/475,815号および同第08/478,967号明細書は、治療用抗体の投与前にB細胞リンパ腫の診断「撮像」用の放射性同位体標識付き抗−CD20複合体を開示している。例えば、「In2B8」複合体は、インジウム[111](111In)に二官能性キレート化剤、即ち1−イソチオシアナトベンジル−3−メチル−DTPAと1−メチル−3−イソチオシアナトベンジル−DTPAとの1:1混合物から成るMX−DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)を介してインジウム[111](111In)に結合されたネズミのモノクローナル抗体2B8から成る。インジウム−[111]はガンマ線を放射し、従来から撮像剤としての用法が見いだされているので、診断用放射性核種として選ばれている。
【0025】
キレート化剤およびキレート化剤複合体に関する特許は、この技術分野で知られている。例えば、ギャンソウ(Gansow)の米国特許第4,831,175号明細書は、多置換ジエチレントリアミン五酢酸キレート化剤および同キレート化剤を含んでいる蛋白質複合体、並びにそれらの製造方法に向けられている。ギャンソウの米国特許第5,099,069号、同第5,246,692号、同第5,286,850号および同第5,124,471号明細書も、多置換DTPAキレート類に関する。これら特許はそれらの全体が本明細書に含まれる。
【0026】
上記米国特許出願第08/475,813号、同第08/475,815号および同第08/478,967号明細書におけるキレート化を容易にするために使用される特定の二官能性キレート化剤は、このキレート化剤が三価金属に対して高い親和性を有し、かつ高い腫瘍−対−非腫瘍比、低い骨摂取率、および標的部位、即ちB−細胞リンパ腫腫瘍部位における放射性核種のより大きい生体内保持率を与えるので選ばれた。しかし、他の二官能性キレート化剤がこの技術分野で知られており、それらも腫瘍の治療に有益である可能性がある。
【0027】
上記米国特許出願第08/475,813号、同第08/475,815号および同第08/478,967号明細書には、B細胞リンパ腫細胞および腫瘍細胞を標的とし、破壊する放射性同位体標識付き治療用抗体も開示されている。特に、上記Y2B8複合体は、同じ二官能性キレート化剤を介してイットリウム−[90](90Y)に結合されている同じ抗−ヒトCD20ネズミモノクローナル抗体2B8を含んでいる。この放射性核種は幾つかの理由から治療に選ばれた。90Yの64時間という半減期は、腫瘍が抗体を蓄積できるようにするのに十分に長く、しかもそれは、例えば131Iとは違って、100〜1000の細胞直径範囲を持つ、崩壊の際にガンマ線照射を全く伴わない、高エネルギーの純粋なベータ線放射体である。外来患者には最小限の透過放射線量での90Y標識付き抗体の投与が可能になる。さらに、細胞致死には標識付き抗体の内部移行は必要とされず、従ってイオン化性放射線の局所放射は標的抗原を欠く隣接腫瘍細胞にとっては致命的となろう。
【0028】
放射性核種の90Yは2B8抗体に同じ二官能性キレート化剤分子MX−DTPAを用いて結合されたから、Y2B8複合体は前記で議論した同じ利点、例えば標的部位(腫瘍)における増加した放射性核種保持率を有する。しかし、111Inとは違って、90Y放射性核種はそれに関連したガンマ放射線がないために撮像目的には使用することができない。かくして、111Inのような診断用の「撮像」用放射性核種は、本発明の組み合わせレジメにおいて治療用キメラ抗体または90Y標識付き抗体の投与前におよび/または投与を行った後に、腫瘍の位置およびその相対的な大きさを決めるために用いることができる。さらに、インジウム標識付き抗体は線量測定評価を行えるようにする。
【0029】
抗体の予定される用途、即ち診断薬または治療薬としての予定された用途に依存するが、他の放射性同位体標識物質がこの技術分野で知られ、類似の目的に使用されてきた。例えば、臨床診断で使用された放射性核種には、111Inのみならず131I、125I、123I、99Tc、67Gaがある。抗体類は、また、目標とされる免疫療法における可能性のある用途のために多種多様な放射性核種で標識されてきた(ペイラーズ[Peirersz]等(1987)の、癌の診断および治療のためのモノクローナル抗体複合体の使用[The use of monoclonal antibody conjugates for the diagnosis and treatment of cancer]、Immunol. Cell Biol.、65:111-125)。これらの放射性核種には、90Yのみならず188Reおよび186Reまたそれらより使用範囲は小さいが199Auおよび67Cuがある。米国特許第5,460,785号明細書にこのような放射性同位体のリストが与えられており、この特許はここで参照することにより本明細書に含まれる。
【0030】
出願中の米国特許出願第08/475,813号、同第08/475,815号および同第08/478,967号明細書中で報告されているように、放射性同位体標識付きY2B8複合体の投与でも、また非標識キメラ抗−CD20抗体(リツキシマブ(登録商標))の投与でも、B細胞リンパ芽球腫瘍を宿しているマウスで有意の腫瘍低下がもたらされた。さらに、上記特許出願明細書で報告されているヒトの臨床試験は、リツキシマブ(登録商標)が注入された低グレードNHLリンパ腫の患者において有意のB細胞の減少を示した。実際、リツキシマブ(登録商標)は、最近、国の第一号FDA承認抗癌モノクローナル抗体として布告された。
【0031】
加えて、ここで参照することにより本明細書に含められる米国特許出願第08/475,813号明細書は、低グレードNHLの治療に、インジウム標識付きまたはイットリウム標識付きの、ネズミのモノクローナル抗体のいずれか一方または両者を有するキメラ抗−CD20であるリツキサン(登録商標)(Rituxan(登録商標))の連続投与を開示している。これらの組み合わせ療法で使用された放射性同位体標識付き抗体はネズミの抗体であるけれども、キメラ抗−CD20による初期治療はHAMA反応を低下させるようにB細胞集団を十分に減少させ、それによって治療と診断との組み合わせレジメが容易になる。さらに、米国特許出願第08/475,813号明細書には、リツキシマブ(登録商標)の投与に続くイットリウム標識付き抗−CD20抗体の投与の治療上有効な投薬量は、(a)キメラ抗−CD20抗体では透明にならなかった残留末梢血液B細胞を全て透明にし;(b)リンパ節からB細胞の除去を始め;または(c)他の組織からB細胞の除去を始めるのに十分なものである。
【0032】
自家骨髄移植は、放射線療法または化学療法を受けている患者に免疫システムを回復させるのを助ける際に、骨髄切除療法に付随して行われる治療として好結果を与えることが多い。しかし、前記で議論したように、本明細書に開示される方法によって利益を受ける患者は、骨髄波及を伴ったリンパ腫を有していることが多い。このような患者の場合、自家移植を行うには、骨髄中の癌性細胞がしばしば多過ぎる。
【0033】
中間または高グレードリンパ腫を伴っている骨髄波及があるとき、このような患者は、骨髄または幹細胞プレパラート中の腫瘍細胞量を減少させるために、骨髄採取前にヒトのキメラまたはヒト化抗−CD20抗体による前治療を行うことによって利益を受けることができる。実際、リツキシマブ(登録商標)は、移植受容者の生存率を改善するために、誘導時点、生体内パージ時点、動員時点、調整時点、移植後自己輸血時点、および骨髄または幹細胞移植中における他の任意の時点に投与することができる。「誘導(induction)」とは、緩解誘導の達成を目指す初期治療を意味するものとされる。典型的には、誘導はある種の化学療法、即ちCHOPの投与を含む。
【0034】
熟語「生体内パージ(in vivo purging)」は、患者体内の骨髄から腫瘍細胞を一掃する方向に特に調整されている治療を意味するものとされるが、このような治療は確かに末梢血液中の腫瘍細胞に、また他の部位における腫瘍細胞にも有益であると思われる。このような工程は、骨髄中の腫瘍細胞の数を減少させる手段として骨髄採取の前に行うことができる。このことについては、リツキシマブ(登録商標)、その他のキメラリンパ腫細胞減少性抗体は、それらが健康な前駆細胞を損傷させずに癌性細胞の骨髄を一掃するために使用できるという点で、放射性同位体標識付き抗体を越える利点を提供する。
【0035】
「動員(mobilization)」は、幹細胞が骨髄を残すように集められ、そして循環系に入るプロセスを意味し、移植用幹細胞源として、自体、骨髄採取に対する代替法となる。動員は、典型的には、化学療法および/または成長因子を短時間のバーストで投与することによって達成される。成長因子G−CSFが普通使用されるが、他のものも当業者の知識に従って使用することができる。
【0036】
典型的には、動員中に、幹細胞は血液から分離され(その血液は次に患者に戻される)、その幹細胞は患者に自己輸血の用意が整うまで凍結される。次に、幹細胞プレパラート中の腫瘍細胞を減少させるために、リツキシマブ(登録商標)、またはこの技術分野でこの目的に有用であることが知られている他の抗体による生体外パージ(ex vivo purging)を用いることができる。
【0037】
「調整(conditioning)」は、患者が自家骨髄輸血または同種間移植を受ける準備をするプロセスを意味する。これは、典型的には、健康な細胞および腫瘍細胞の両者である全ての細胞を骨髄から減少させるために、非常に高容量での化学療法により成し遂げられる。患者の生命に危険を及ぼすことなく十分に高容量で与えることができる化学療法剤、例えばシクロホスファミドがこの技術分野で知られている。
【0038】
かくして、色々な移植段階におけるリツキシマブ(登録商標)治療により、骨髄は骨髄切除性放射線療法に先立って採取され、そしてこのような療法に続いて、その骨髄と共に当初採取された腫瘍細胞が再導入される心配を少なくして患者に再導入、戻される。患者は、勿論、維持(maintenance)レジメの一部としてのキメラ抗−CD20抗体による追加のまたは後続の治療によって、または再発の可能性をさらに低下させるためにY2B8のような放射性同位体標識付き抗体の投与によって利益を受けることができる。
【0039】
本発明の方法は、抗−CD20抗体またはそのフラグメントと共に少なくとも1種のサイトカインを投与することを含む組み合わせ療法も包含する。このようなサイトカインは、同時または逐次的の任意の順序で投与することができる。サイトカインは、特に、抗−CD20抗体の投与前に癌性B細胞の表面上でのCD20の発現を上方規制する(upregulating)際に有用であるだろう。この目的に有用なサイトカイン類として、IL−4、GM−CSFおよびTNF−アルファ、そして多分他のサイトカインが挙げられる。
【0040】
サイトカイン類は、また、治療用抗体により仲介されるある種特定のエフェクター機能を高めまたは制御するために、同時にまたは同じ時間枠内で投与することもできる。この目的に有用なサイトカイン類として、インターフェロンアルファ、G−CSFおよびGM−CSF、そして多分他のサイトカインが挙げられる。
【0041】
好ましい用法−用量および典型的態様を、ここで次のデータにより例証する。
【0042】
単一薬剤研究
欧州および豪州で行われた研究において、交代投与スケジュールを、再発したまたは抗療性の中間または高グレードNHL患者54人で評価した(コイフィアー B[Coiffier B]、ハリオウン C[Haioun C]、ケッタラー N[Ketterer N]、エンガート A[Engert A]、チリー H[Tilly H]、マ D[Ma D]、ジョンソン P[Johnson P]、リスター A[Lister A]、フューリング−バスク M[Feuring-Buske M]、ラドフォード JA[Radford JA]、キャプデビル R[Capdeville R]、ディール V[Diehl V]、レイス F[Reyes F]の、再発性または抗療性の進行性リンパ腫を持つ患者の治療のためのリツキシマブ(抗−CD20モノクローナル抗体):多中心フェーズH研究(Rituximab (anti-CD20 monoclonal antibody) for the treatment of patients with relapsing or refractory aggressive lymphoma: a multicenter phase H study)、Blood、1998、92:1927-1932)。
【0043】
リツキシマブ(登録商標)は、一週に、375mg/m2で8回、または1回は375mg/m2で、続いて500mg/m2で計7回注入された。そのORRは31%であった;(CR9%、PR22%)投与レジメ間で有意差は観察されなかった。びまん性・大細胞性リンパ腫を持つ患者(N=30)のORRは37%で、マントル細胞性リンパ腫を持つ患者(N=12)のORRは33%であった。
【0044】
嵩高病態の治療
抗体療法についての、微小転移性病態において有用なだけであるとの初期の仮定に反して、リツキシマブ(登録商標)は嵩の大きい病態において極めて活性である。別の研究において、再発したまたは抗療性の、嵩高な低グレードNHL(直径>10cmの単一病変部)を持つ患者31人が、週4回の注入として375mg/m2のリツキシマブの投与を受けた。評価可能な患者28人の内12人(43%)はCR(1.4%)またはPR(11.39%)を証明した(デービス T[Davis T]、ホワイト C[White C]、グリッロ−ロペッツ A[Grillo-Lopez]、ベラスケス W[Velasquez W]、リンク B[Link B]、マロネイ D[Maloney D]、ディルマン R[Dillman R]、ウィリアム M[Williams M]、モールバチャー A[Mohrbacher A]、ウィーバー R[Weaver R]、ドウデン S[Dowden S]、レビー R[Levy R]の、リツキシマブ:嵩高病態を持つNHL患者(pts)におけるフェーズII(PII)試験の第一報(Rituximab: First report of a Phase II (PII) trial in NHL patients (pts) with bulky disease)、Blood、1998;92(10 Suppl 1):414a)。
【0045】
これは、病態の大きさおよび流血中腫瘍細胞数に応じた適切な(即ち、上記の増加した投薬量のような)投薬量によれば、リツキシマブ(登録商標)療法は嵩高病態を伴うより進行性の中間または高グレードNHL類に対しても有用であることを示唆している。
【0046】
リツキシマブ(登録商標)とCHOP化学療法との併用
もう1つの研究において、中間または高グレードNHLを有する患者31人(女性19人、男性12人、中央値年齢49歳)は、1サイクル21日で6サイクルのCHOP各々の1日目にリツキシマブ(登録商標)の投与を受けた(リンク B[Link B]、グロスバード M[Grossbard M]、フィッシャー R[Fisher R]、チュッツマン M[Czuczman M]、ギルマン P[Gilman P]、ロウエ A[Lowe A]、ボース J[Vose J]の、前に治療を受けていないまたは高グレードのNHLを持つ患者におけるリツキシマブとCHOP化学療法との併用の安全性および効力のフェーズIIパイロット研究(Phase II pilot study of the safety and efficacy of rituximab in combination with CHOP chemotherapy in patients with previously untreated- or high-grade NHL)、Proceedings of the American Society of Clinical Oncology、1998;17:3a)。評価可能な患者30人の内、ORR96%の場合で、CRは19人(63%)、PRは10人(33%)いた。このレジメは十分に許容されると考えられたし、またリツキシマブ単独またはCHOP単独によるよりも高い反応率をもたらす可能性がある。
【0047】
NCIディビジョン・オブ・キャンサー・トリートメント・アンド・ダイアグノシス(NCI Division of Cancer Treatment and Diagnosis)は、IDECファーマシューティカルス社(IDEC Pharmaceuticals Corporation)と、他の適応症におけるリツキシマブ(登録商標)治療を調べる共同研究をしている。CHOP対CHOPとリツキシマブ(登録商標)のフェーズII試験が、びまん性混合大細胞性および免疫芽細胞性大細胞性組織NHLを持つ老齢患者(>60歳)(計画患者数N=630)においてECOG、CALGBおよびSWOGによって行われる予定である。この研究はリツキシマブ(登録商標)による維持対非維持に対する第二無作為化を含む。
【0048】
前に治療を受けていないマントル細胞性リンパ腫を持つ患者40人におけるリツキシマブ(登録商標)とCHOPとのフェーズIII試験も、ダナ・ファーバー・インスティチュート(Dana Farber Institute)で進行中である。リツキシマブ(登録商標)は一日目に投与され、またCHOPは21日毎に1−3日目に6サイクルにわたり与えられる。この研究の結果集積(accrual)は終わっている。SWOGにより行われた、新しく診断された瀘胞性リンパ腫におけるCHOPと、それに続くリツキシマブのフェーズII試験も完了している。これら2つの試験結果は分析される予定である。
【0049】
エイズ・マリグナンシー・コンソチウム(AIDS Malignacy Consortium)によって行われているHIV関連NHLにおけるCHOPとリツキシマブ対CHOP単独のフェーズII試験が進行中である;患者120人が計画されている。
【0050】
骨髄切除療法・再発後のリツキシマブ(登録商標)
リツキシマブ(登録商標)は、自家PBSCサポートによる高用量治療後に再発した中間グレードのNHLを持つ患者で有望な初期結果を示した。患者7人の内6人が反応し(CR1人およびPR5人)、そして1人は病態が安定していた;治療は十分に許容された(ツァイ D[Tsai D]、ムーア H[Moore H]、ポーター D[Porter D]、ボーン D[Vaughn D]、ルガー S[Luger S]、ロー R[Loh R]、シュスター S[Schuster S]、スタットモーアー E[Stadtmauer E]の、高用量治療および自家末梢幹細胞移植(PSCT)の後の進行性中間グレード非ホジキンリンパ腫はリツキシマブに対して高反応率を有する(Progressive intermediate grade non-Hodgkin's lymphoma after high dose therapy and autologous peripheral stem cell transplantation (PSCT))、Blood、1998;92:415a、#1713)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間または高グレードの非ホジキンリンパ腫の症状を治療または緩和する方法であって、患者に、治療上有効な量の、抗−CD20抗体またはその治療上有効なフラグメントを投与することを含む上記の方法。
【請求項2】
非ホジキンリンパ腫が、瀘胞大細胞性(FL)リンパ腫、びまん性切れ込み小細胞性(DSC)リンパ腫、びまん性混合小および大細胞性(DM)リンパ腫、びまん性切れ込み大細胞性(DL−C)リンパ腫、びまん性非切れ込み大細胞性(DL)リンパ腫、免疫芽細胞性・大細胞性(IBL)リンパ腫、リンパ芽球回旋状(LL−C)リンパ腫、リンパ芽球非回旋状(LL)リンパ腫、非切れ込み小細胞性−バーキット(SNC−B)リンパ腫、非切れ込み小細胞性−非バーキット(SNC)リンパ腫、マントル細胞性リンパ腫およびエイズ関連リンパ腫より成る分類群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
非ホジキンリンパ腫が嵩高の病態を伴っている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
患者が他の治療に対して抗療性である請求項1記載の方法。
【請求項5】
患者が化学療法または放射線療法に対して抗療性である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
患者が非ホジキンリンパ腫の以前の治療の後に再発している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
患者が化学療法または放射線療法を施した後に再発している、請求項6記載の方法。
【請求項8】
患者に化学療法レジメを施すことをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
化学療法が同時にかまたは逐次的のいずれかの順序で施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
化学療法レジメが、CHOP、ICE、ミトザントロン、シタラビン、DVP、ATRA、イダルビシン、ホエルザー化学療法レジメ、La La化学療法レジメ、ABVD、CEOP、2−CdA、FLAG & IDA(後続のG−CSF治療を伴いまたは伴わない)、VAD、M & P、C−ウィークリー、ABCM、MOPPおよびDHAPより成る群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
化学療法レジメがCHOPである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗体がキメラ抗体である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
キメラ抗体がリツキシマブ(登録商標)である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
癌性B細胞の表面にある蛋白質に結合する放射性同位体標識付き抗体の投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
放射性同位体標識付き抗体が抗−CD20抗体である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
抗体がY2B8である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
中間または高グレードリンパ腫が骨髄波及を伴っている、請求項1記載の方法。
【請求項18】
方法が骨髄または幹細胞の移植を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
骨髄または幹細胞移植が自家移植である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
患者を、骨髄または幹細胞の採取または移植に先立って、および/またはそれに続いてキメラ抗−CD20抗体で治療する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
抗体がキメラ抗−CD20抗体である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
キメラ抗−CD20抗体に続いて放射性同位体標識付き抗体の投与をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
抗体が抗−CD20抗体である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗体がY2B8である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種のサイトカインの投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
癌性B細胞の表面上におけるCD20の発現を上方規制するために、サイトカインを抗−CD20抗体に先だって投与する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
サイトカインがインターフェロンアルファ、G−CSFおよびGM−CSFより成る群から選択される、請求項25記載の方法。
【請求項28】
サイトカインがIL−4、GM−CSFおよびTNF−アルファより成る群から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
抗−CD20抗体を患者に骨髄または幹細胞移植レジメの誘導段階において投与する、請求項19記載の方法。
【請求項30】
抗−CD20抗体を患者に骨髄または幹細胞移植レジメの生体内パージ段階において投与する、請求項19記載の方法。
【請求項31】
抗−CD20抗体を患者に骨髄または幹細胞移植レジメの動員段階において投与する、請求項19記載の方法。
【請求項32】
抗−CD20抗体を患者に骨髄または幹細胞移植レジメの調整段階において投与する、請求項19記載の方法。
【請求項33】
抗−CD20抗体を患者に骨髄または幹細胞移植レジメの移植後自己輸血段階において投与する、請求項19記載の方法。
【請求項34】
抗−CD20抗体を患者に移植後維持レジメの一部として投与する、請求項19記載の方法。

【公開番号】特開2011−6449(P2011−6449A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186460(P2010−186460)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2001−514976(P2001−514976)の分割
【原出願日】平成12年8月2日(2000.8.2)
【出願人】(502440595)バイオジェン アイデック インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】