説明

中間板型液体注出用ノズル

【課題】液体提供部である液体注出用ノズル内において、液体の提供終了時に発生するノズル内残液の長期的な残留を防止することにより、ノズル内の衛生状態及び清潔状態を高める。
【解決手段】液体を提供する容器の液体注出用ノズル1に、中間開口5を有する中間板4を筒状のノズル本体の根元開口3と先端開口7の間に配置する。根元開口3の直径A、中間開口5の直径B及び先端開口7の直径Cが、主として第1条件(C/A≧1.40)、補助的に第2条件(C/B≧1.85)及び/又は第3条件(B/A≦0.73)を満足する場合、ノズル内残液が不安定となり、残液が前記ノズルから落下し易くなり、従って残液のノズル内における残留が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用又は工業用液体を提供する為の液体供給機に関し、更に詳細には、この液体供給機における液体提供部であるノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水ボトル等の容器に収容された飲料水等の液体を提供するために、ノズル及び開閉制御弁を有するキャップを前記容器に嵌合し、前記開閉制御弁を開状態にすることにより前記液体を注出することが広く行われている。ここにおけるキャップの開閉制御弁を閉状態にすることにより、前記液体の流出を任意に止めることができるので、前記キャップは前記液体を使用時において提供するのに便利である。
【0003】
特開2006−117248号公報(特許文献1)には、液体を注出させて提供する為の弁付キャップが開示されている。図12はこの弁付キャップが嵌合された容器の側面断面図である。この弁付キャップ30には、椀状に形成された弾性弁31及び筒状のノズル本体10を有する液体注出用ノズル101が配置され、(12B)に示されるように、前記弾性弁31は前記ノズル本体10の根元開口3を閉鎖する。使用時において、(12A)に示されるように、前記弾性弁31を撓ませることにより、前記根元開口3の閉鎖を解除して、容器20内の貯蔵液90を注出させて提供する。提供終了時において、前記弾性弁31の撓みを解除することにより、前記根元開口3を再閉鎖して、前記注出を封止させる。
【0004】
この弁付キャップは構造が簡単で、しかも材質として可撓性プラスチックを用いることにより、前記弾性弁を一体形成することができるので、大量生産に向く。しかも前記弾性弁の開閉作動が確実であり、貯蔵液の漏出などの不具合が起こらないので、飲料水の提供の為に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−117248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の弁付キャップは重大な欠点を有する。それは、弾性弁を閉鎖する際に、液体がノズル101内に残液91として残留するということである。図12の(12B)に示されるように、弾性弁31が閉状態に戻された時点で液体注出用ノズル101内に存在する液体は、落下せずに残液91として残留する。この残液91は、液体の表面張力及び毛細管効果によりノズル101内に粘着するので、長時間に亘ってノズル101内に残留することになる。この残留期間は、前記液体の次回提供時又は前記残液における揮発性成分の完全蒸発時まで及ぶことがある。
【0007】
ここにおける液体が飲料水及びジュースなどの飲料物である場合は、残液91及び/又は残液91の不揮発性残留物に細菌及び埃などが吸着され、不衛生状態となる。又、ここにおける液体が洗浄液などの工業用液体である場合は、残液91及び/又は残液91の不揮発性残留物に吸着される不純物が被洗浄体などに付着して、故障及び破損などの不具合をもたらす。
【0008】
本発明者は、この様なノズル内の残液残留を防止する為に、長期に亘って実験を積み重ねてきた。これらの実験により、本発明者は前記残液残留の防止手段を発見した。本発明はこの発見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、開口を有する中間板をノズル内に配置した場合に、残液が落下して前記ノズル内に残留しないことを実験的に検証したことにより得られたものである。詳細には、液体を提供する容器の液体注出用ノズルに、中間開口を有する中間板を筒状のノズル本体の根元開口と先端開口の間に配置することにより、前記液体の提供終了時に発生するノズル内の残液を不安定化させて落下させ、前記残液のノズル内における残留を防止する。
【0010】
従って、本発明の第1の形態は、液体を収容する容器の液体注出部付近にノズル本体を配置し、前記ノズル本体の根元部に液体流入用の根元開口が形成され、前記ノズル本体の先端部に液体流出用の先端開口が形成された液体注出用ノズルにおいて、前記根元開口と前記先端開口の中間位置に中間板が配置され、前記中間板に中間開口が形成される中間板型液体注出用ノズルである。
【0011】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記根元開口の直径A(mm)と前記先端開口の直径C(mm)がC/A≧1.40の条件を有する中間板型液体注出用ノズルである。
【0012】
本発明の第3の形態は、第2の形態において、前記中間開口の直径をB(mm)とし、前記先端開口の直径をC(mm)としたとき、C/B≧1.85の条件を有する中間板型液体注出用ノズルである。
【0013】
本発明の第4の形態は、第2又は第3の形態において、前記根元開口の直径をA(mm)、前記中間開口の直径をB(mm)としたとき、B/A≦0.73の条件を有する中間板型液体注出用ノズルである。
【0014】
本発明の第5の形態は、第2〜4の形態のいずれかにおいて、前記先端開口の直径Cが5.0mm≦C≦15.0mmの条件を有する中間板型液体注出用ノズルである。
【0015】
本発明の第6の形態は、第1〜5の形態のいずれかにおいて、前記液体注出部に開閉可能な弁機構を有する弁付接続部を介して前記ノズル本体を配置する中間板型液体注出用ノズルである。
【0016】
本発明の第7の形態は、第6の形態において、前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起と着脱可能に形成されている中間板型液体注出用ノズルである。
【0017】
本発明の第8の形態は、第7の形態において、前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起との嵌合によりに着脱可能な弁付キャップである中間板型液体注出用ノズルである。
【0018】
本発明の第9の形態は、第8の形態において、前記弁付接続部に外径が前記ノズル本体の根元部の内径以下であるノズル接続管が突設され、前記ノズル接続管が前記根元部に内嵌され、前記ノズル接続管の内直径が前記根元開口の直径となる中間板型液体注出用ノズルである。
【0019】
本発明の第10の形態は、第8の形態において、前記弁付接続部に内径が前記ノズル本体の根元部の外径以上であるノズル接続管が突設され、前記ノズル接続管が前記根元部に外嵌される中間板型液体注出用ノズルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の形態によれば、本発明の液体注出用ノズルにおいて、根元開口と先端開口の中間位置に中間開口が形成されるので、ノズル内の残液が中間開口の上下に分断されて不安定化し、液体注出停止時の衝撃などで残液が簡単に落下するようになり、前記残液の長期的な残留が防止されるので、前記ノズル内の衛生状態及び清潔状態を良好に保つことができる。
【0021】
本発明の液体注出用ノズルにおける中間板及び中間開口の作用原理は、憶測の域を出ないが、ノズル内の残液が前記中間開口により複数の小さな液滴に分裂され易くなると仮定することにより説明できる。即ち、前記中間開口と前記先端開口の間に存在する残液(下方残液と呼ぶ)が、前記根元開口と前記中間開口の間に存在する残液(上方残液と呼ぶ)から分離され、中間開口を介してのみ下方残液と上方残液が分子間力により接合するから、その接合力は中間開口が無い場合と比べて小さくなり、注出停止時の衝撃により前記下方残液が上方残液から分裂して落下し易くなる。
【0022】
この分裂落下後において前記根元開口と前記中間開口に残留する上方残液は、形状的に不安定となる。理由としては、前記根元開口と前記中間開口の間隔が短い(1〜4mm)ため、前記上方残液の体積が非常に小さくなり、前記残液の形状保持力が極めて小さくなる。従って、前記下方残液が分裂落下する際に、下方残液が中間開口を介して上方残液を分子間力により下方に引張り、この引張力により上方残液も中間開口を介して落下するものと考えられる。つまり、まず中間開口の分離作用により下方残液が分裂落下し、続いて上方残液が前記引張力により落下するものと考えられる。この2段階の残液落下により、前記残液の残留が防止される。
【0023】
本発明の液体注出用ノズルは、弁付接続部又は容器と一体形成されても良いし、別個に製造されて前記弁付接続部又は前記容器などに配置されても良い。ここにおける配置手段としては、接着、融着、溶接、螺子部による締結及び嵌合部による嵌合などが使用できる。又、既製された液体注出用ノズルに、中間開口を有する中間板を挿入しても、本発明の液体注出用ノズルの効果が現れる。本発明の液体注出用ノズルの材質としては、プラスチック、金属、セラミックス及びそれらの組み合わせ等が使用でき、注出する液体への耐性及び製造の容易性などにより選択することができる。
【0024】
本発明の第2の形態によれば、前記根元開口の直径A(mm)と前記先端開口の直径C(mm)がC/A≧1.40の条件を有するので、前記残液の落下及び本発明の液体注出用ノズルにおける衛生状態及び清潔状態の保持が確実となる。
【0025】
本形態における条件は、実験的に求められたものである。前記先端開口の直径Cが大きくなると、前記残液が落下し易くなることは明白である。この明白性を自重と抵抗力の観点から説明する。即ち、大きな先端開口では、中間開口と先端開口の間の残液(下方残液)の自重が、下方残液を保持しようとする周壁による摩擦力より大きくなり、前記下方残液は自然に落下する傾向にある。しかも中間開口が存在することによって、中間開口と根元開口の間の残液(上方残液)と前記下方残液の結合力を分断させるため、上方残液と下方残液が相互に分裂し、下方残液の落下を促進する。特に、本形態では、前記根元開口の直径A(mm)と前記先端開口の直径C(mm)がC/A≧1.40の条件を有する場合に、下方残液の落下により、上方残液の形態保持性が低下し、下方残液と共に上方残液も落下することが実験的に実証された。この性質は、前記根元開口の直径Aが小さいほど大きくなり、下方残液の落下が上方残液の落下を誘導することが分かった。直径Cの大径効果と直径Aの小径効果は、その比率C/Aをパラメータとして統一的に表現できる。本発明者の実験により、C/A≧1.40の条件においては、液体の注出停止の衝撃により、上方残液と下方残液が不安定化し、まず下方残液が落下し、それにより上方残液の落下が誘導され、ノズル内の残液が全て自然に排出されることが分かった。従って、この条件下では、液体注出用ノズルにおける衛生状態及び清潔状態の保持が確実となる。
【0026】
本発明の第3の形態によれば、前記中間開口の直径Bと前記先端開口の直径CがC/B≧1.85の条件を有するので、前記残液の落下が容易になり、本発明の液体注出用ノズルにおける衛生状態及び清潔状態の保持がより確実となる。
【0027】
本形態における条件は、実験的に求められたものである。前記先端開口の直径Cが大きくなると、前記残液が落下し易くなることは上述した通りである。その一方、前記中間開口の直径Bが小さくなることにより残液が残留しなくなることは、既に第1及び第2の形態において説明した通り、中間開口が小さくなるほど、上方残液と下方残液の接合力が小さくなり、下方残液が上方残液から分裂落下する。しかも落下する下方残液が中間開口を介して上方残液を下方に引張り、この引張力により上方残液の落下が誘導される。第2形態のC/A≧1.40の条件だけでも残液の落下は達成されるが、これに加えて、本第3形態のC/B≧1.85の条件が成立した場合には、上方残液と下方残液が確実に自然落下することが実証された。
【0028】
本発明の第4の形態によれば、前記中間開口の直径Bと前記根元開口の直径AがB/A≦0.73の条件を有する場合には、前記残液の落下が更に容易になり、本発明の液体注出用ノズルにおける衛生状態及び清潔状態の保持が更に確実となる。
【0029】
本形態における条件は、実験的に求められたものである。前記中間開口の直径Bが小さくなることにより残液が残留しなくなることは、第1〜3の形態の説明において記述した通り、中間開口が小さくなるほど、下方残液が上方残液から分裂落下し易くなる。他方、前記根元開口の直径Aが大きくなると上方残液の形態保持性が増大するが、これ以上に中間開口直径Bの減少が残液落下には強力に作用し、B/Aが小さいほど残液の落下効果が高くなることが実験的に検証されたのである。つまり、C/A≧1.40の条件だけでも残液の落下は達成されるが、これに加えて、C/B≧1.85の条件、更にB/A≦0.73の条件の両者が満足されると、上方残液と下方残液がほぼ完全に自然落下することが実証された。
【0030】
本発明の第5の形態によれば、前記先端開口の直径Cが5.0mm≦C≦15.0mmの条件を有するので、前記残液の落下が確実になる程度に大きい直径Cを使用することができ、更に実用に差し支えのない程度に小さい直径Cを使用することができる。
【0031】
本発明の第6の形態によれば、液体を収容する容器の液体注出部に、開閉可能な弁機構を有する弁付接続部を介して前記ノズル本体を配置するので、前記液体の注出を前記弁機構により制御でき、従って本発明の液体注出用ノズルの有用性を高めることができる。ここにおける弁機構としては、メンブレンバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ及びニードルバルブ等の数々の種類の弁が使用できる。又、前記弁機構及び前記弁付接続部の材質としては、金属、プラスチック、セラミック等、又はそれらの組み合わせが使用でき、要求される耐性に応じて材質を選択することができる。
【0032】
本発明の第7の形態によれば、前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起と着脱可能に形成された中間板型液体注出用ノズルであるから、必要なときに接続し、不要なときに分離することが可能になり、機能性の向上を図ることができる。
【0033】
本発明の第8の形態によれば、前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起との嵌合により自在に着脱可能なので、着脱操作が簡単でワンタッチ着脱性に優れている。例えば、前記弁付接続部として弁付キャップを用いれば、飲料水ボトルの使用時に多用される弁付キャップに本発明の液体注出用ノズルを応用でき、この液体注出用ノズルによりノズル本体内の残液残留を防止することができる。従って、前記ノズル本体内の衛生状態及び清潔状態を高く保持することができる。
【0034】
ここにおける弁付キャップは、製造の容易性及び低価格を保つため、可撓性プラスチックを材質として弁機構と共に一体形成されることが好ましい。ここにおける液体注出用ノズルは、弁付キャップと一体形成された後に中間開口を有する中間板が挿入されることにより形成されても良いし、弁付キャップとは別個に、中間板を組み込んだ形で形成された後に、弁付キャップに配置されても良い。
【0035】
本発明の第9の形態によれば、前記弁付接続部に突設されたノズル接続管が、前記ノズル本体の根元部に内嵌されるので、既製された弁付接続部に、別体として製造された本発明の液体注出用ノズルを差し込むことにより、簡単に配置させることができる。更に、前記液体注出用ノズルを簡単に前記弁付接続部から取り外すことができるので、前記液体注出用ノズルの洗浄が簡単になる。尚、ここにおいては、前記ノズル接続管が前記ノズル本体の根元部に入り込むので、前記ノズル接続管の内直径が、前記根元開口の直径Aとなる。
【0036】
本発明の第10の形態によれば、前記弁付接続部に突設されたノズル接続管が、前記ノズル本体の根元部に外嵌されるので、既製された弁付接続部に、別体として製造された本発明の液体注出用ノズルを差し込むことにより、簡単に配置させることができる。更に、前記液体注出用ノズルを簡単に前記弁付接続部から取り外すことができるので、前記液体注出用ノズルの洗浄が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の液体注出用ノズルが配置された弁付キャップの側面断面図である。
【図2】図1の弁付キャップが嵌合された容器の側面断面図である。
【図3】本発明の液体注出用ノズルが弁付接続部を介して配置された容器の側面断面図である。
【図4】ノズル接続管と本発明の液体注出用ノズルの嵌合状態を示す断面図である。
【図5】本発明の液体注出用ノズルにおける根元開口の直径A、中間開口の直径B、先端開口の直径C及び残液の有無を示す概念断面図である。
【図6】先端開口の直径Cと根元開口の直径Aの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。
【図7】先端開口の直径Cと中間開口の直径Bの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。
【図8】根元開口の直径Aと中間開口の直径Bの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。
【図9】C/A≧1.40の条件だけを満足した本発明の第2実施例の液体注出時の断面図である。
【図10】C/A≧1.40の条件だけを満足した第2実施例の液体注出停止時の断面図である。
【図11】前記第2実施例において、注出弁41と液体抽出用ノズル1の組立て状態の斜視図である。
【図12】従来の液体注出用ノズルが配置された容器において前記ノズル内に残液が発生する過程を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明の液体注出用ノズル1が配置された弁付キャップ30の側面断面図である。液体注出用ノズル1は、壁部である筒状のノズル本体10を有し、このノズル本体10の根元部には根元開口3を有する根元板2が配置され、また根元開口3とノズル本体の先端部に形成される先端開口7の中間部には、中間開口5を有する中間板4が配置される。根元開口3の直径A、中間開口5の直径B及び先端開口の直径Cを適切に選択することにより、液体注出用ノズル1内の残液91残留を防止することができる。前記直径A、B及びCの適切な比率は実験的に決定されている。この実験は図5〜8の説明において詳細に記述する。
【0039】
ノズル本体10の根元部は、根元開口3を介して弁付キャップ30に接続される。弁付キャップの内部には、可撓性プラスチックまたはゴムの薄板から製造されたメンブレンバルブである弾性弁31が配置され、(1A)においては弾性弁31により根元開口3が閉鎖されている。この弾性弁31には環状の係止具32が形成され、(1B)に示されるように、この係止具32を図1の左方へ引っ張ることにより、弾性弁31を撓ませることができる。この撓みにより、弾性弁31による根元開口3の閉鎖が解除される。係止具32を弁付キャップ30に形成された係止部33に係止することにより、前記撓みを維持することができる。
【0040】
図2は、図1の弁付キャップ30が嵌合された容器20の側面断面図である。容器20の内部には貯蔵液90が収容される。又、容器20の壁部には孔部である液体注出部22が形成され、この液体注出部22の周辺には、容器20の外部へ突出する環状突起21が形成される。図1の弁付キャップ30はこの環状突起21に嵌合して固定され、弁付キャップ30と環状突起21の接触部が封鎖される。
【0041】
(2A)に示されるように、弾性弁31を撓ませて根元開口3の閉鎖を解除することにより、貯蔵液90が液体注出部22及び弁付キャップ30を介して液体注出用ノズル1へ到達し、更に液体注出用ノズル1を介して注出液92として提供される。(2B)に示されるように、弾性弁31の撓みを解除することにより、液体注出用ノズル1の根元開口3が弾性弁31により閉鎖される。従って、貯蔵液90が液体注出用ノズル1に供給されなくなり、従って注出液92の注出が封止される。この封止の際、液体注出用ノズル1の内部に存在する液体が、残液91として残留せずに、全て流出される。
【0042】
図3は、本発明の注出用ノズル1が弁付接続部40を介して配置された容器20の側面断面図である。ここにおける弁付接続部40は、容器20の孔部である液体注出部22に接続される。この弁付接続部40は注出弁41及びノズル接続管42を有し、ノズル接続管42に本発明の液体注出用ノズル1を嵌合することにより配置される。従って、(3A)に示されるように、注出弁41が開状態の場合は、容器20内の液体は、液体注出部22、注出弁41及びノズル接続管42を介して液体注出用ノズル1に供給され、更に液体注出用ノズル1を介して注出液92として提供される。注出弁41が閉状態にされた際には、液体注出用ノズル1内に存在する液体が完全に流出されるので、残液91としてノズル1内に残留しない。
【0043】
図3における弁付接続部40を使用することにより、図1及び2における弁付キャップ30が受ける制約を回避することができる。即ち、図1及び図2における弁付キャップ30の弾性弁31は、可撓性を得る為に、可撓性プラスチック又はゴムから製造されるので、耐熱性が弱く、従って加熱された液体を提供することには使用できないという弱点がある。又、前記プラスチック又はゴムを腐食する有機溶媒の提供にも使用できないという弱点もある。図3における弁付接続部40及び容器20が耐熱性を有する場合は、加熱された液体の提供の為に本発明の液体注出用ノズル1を使用できる。又、前記弁付接続部40及び容器20が前記有機溶媒への耐腐食性を有する場合は、前記有機溶媒の提供の為に本発明の液体注出用ノズル1を使用できる。勿論、ここにおいては、前記液体注出用ノズル1の材質が耐熱性及び耐腐食性を有することを前提とする。
【0044】
注出弁41としては、メンブレンバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ボールバルブ、バタフライバルブ及びニードルバルブ等の数々の種類のバルブが使用できる。又、注出弁41の材質としては、金属、プラスチック、セラミック等、又はそれらの組み合わせが使用でき、要求される耐性に応じて材質を選択することができる。
【0045】
図4は、ノズル接続管42と本発明の液体注出用ノズル1の嵌合状態を示す断面図である。(4A)においては、ノズル接続管42の外径が液体注出用ノズル1のノズル本体10の内径以下であり、従って前記ノズル接続管42が前記根元部に内嵌されて嵌合する。(4A)においては、根元開口3の直径Aはノズル接続管42の内径となる。従って、液体注出用ノズル1の設計時において中間開口5の口径B及び先端開口7の口径Cを選択する場合、根元開口3直径Aとしてノズル接続管42の内径を考慮する必要がある。(4A)における形態は、液体注出用ノズル1が嵌合される際に中間板4がノズル接続管42の先端部に掛るので、ノズル1が一定位置で停止されるという長所を有する。
【0046】
図4の(4B)においては、ノズル接続管42の内径がノズル本体10の外径以上であり、従って前記ノズル接続管42が前記根元部に外嵌されて嵌合する。根元開口3と中間開口5の間隔は、根元板2と中間板4の間における残液91の発生を防止する為に、第1の形態の説明において記述した通り、1〜4mmに設定することが好ましい。(4B)における形態を使用することにより、前記間隔を精密に設定することができ、前記残液91残留の防止をより確実にできる。
【0047】
図5は、本発明の液体注出用ノズル1における根元開口3の直径A、中間開口5の直径B、先端開口7の直径C及び残液91の有無を示す概念断面図である。(5A)はノズル1内に残液91が残留しない状態であり、本発明において目標とされる状態を示す。(5B)はノズル1内に残液91が残留する状態であり、本発明において回避されるべき状態を示す。
【0048】
この残液91の有無は、直径A、B及びCの比率により決まる。表1は実験的に検証された直径A、B及びCの変化による残液の有無であり、図6〜8の解説において、前記目標を達する為の直径A、B及びCの比率を、表1に示される実施例1と比較例1及び2を用いて記述する。後述するように、第1実施例では、第1条件C/A≧1.40、第2条件C/B≧1.85及び第3条件B/A≦0.73の3条件が満足されている。尚、表1に示される実験においては、根元開口3と中間開口5の間隔は2mmである。
【0049】
【表1】

【0050】
図6は、先端開口の直径Cと根元開口の直径Aの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。残液91がノズル1内に残留しない実験例である実施例1においては、直径比C/Aは1.46である。その一方、残液91が残留する実験例である比較例1においては、直径比C/Aは1.31であり、比較例2においては1.32である。
【0051】
これらの実験例は、ノズル1内の残液91発生を防止する為には、ノズル1内の直径比C/Aがある程度(約1.40)以上であることの必要性を示す。直径比C/Aが小さければ、(6A)に示されるように残液91が残留し、直径比C/Aが大きければ、(6B)に示されるように残液91が残留しない。
【0052】
この様に直径比C/Aを大きくすることにより残液91が残留しなくなる理由としては、次の通りに推測できる。まず、先端開口7の直径Cを大きくすれば、残液91が流出され易くなる事は、明白である。即ち、大きな先端開口7では、中間開口5と先端開口7の間の下方残液の自重が、下方残液を保持しようとする周壁による摩擦力より大きくなり、前記残液は自然に落下する傾向にある。しかも中間開口が存在することによって、中間開口と根元開口の間の上方残液と前記下方残液の結合力を分断させるため、上方残液と下方残液が相互に分裂し、下方残液の落下を促進する。特に、第1実施例の様に、前記根元開口の直径A(mm)と前記先端開口の直径C(mm)がC/A≧1.40の条件を有する場合に、下方残液の落下により、上方残液の形態保持性が低下し、下方残液と共に上方残液も落下することが実証された。この性質は、前記根元開口の直径Aが小さいほど大きくなり、下方残液の落下が上方残液の落下を誘導することが分かった。直径Cの大径効果と直径Aの小径効果は、その比率C/Aをパラメータとして統一的に表現でき、本実験により、C/A≧1.40の条件においては、液体の注出停止の衝撃により、上方残液と下方残液が不安定化し、まず下方残液が落下し、それにより上方残液の落下が誘導され、ノズル内の残液が全て自然に排出されることが確認された。従って、この条件下では、液体注出用ノズルにおける衛生状態及び清潔状態の保持が確実となる。
【0053】
図7は、先端開口の直径Cと中間開口の直径Bの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。残液91がノズル1内に残留しない実験例である実施例1においては、直径比C/Bは2.07である。その一方、残液91が残留する実験例である比較例1においては、直径比C/Bは1.58であり、比較例2においては1.74である。
【0054】
これらの実験例は、ノズル1内の残液91発生を防止する為には、必要な直径比C/Bがある程度(約1.85)以上にする必要があることを示す。直径比C/Bが小さければ、(7A)に示されるように残液91が残留し、直径比C/Bが大きければ、(7B)に示されるように残液91が残留しない。
【0055】
この様に直径比C/Bを大きくすることにより残液91が残留しなくなる理由としては、次の通りに推測できる。まず、先端開口7の直径Cを大きくすれば、残液91が流出され易くなる事は、上述した通り明白である。その一方、中間開口5の直径Bを小さくすれば、ノズル1内の残液が中間開口5の面を境として分裂し易くなるので、この分裂により前記残液が流出すると考えられる。
【0056】
図8は、根元開口の直径Aと中間開口の直径Bの比率の変化による残液の有無を示す概念断面図である。残液91がノズル1内に残留しない実験例である実施例1においては、直径比B/Aは0.71である。その一方、残液91が残留する実験例である比較例1においては、直径比B/Aは0.83であり、比較例2においては0.76である。
【0057】
これらの実験例は、ノズル1内の残液91発生を防止する為には、必要な直径比B/Aがある程度(約0.73)以下であることの必要性を示す。直径比B/Aが大きければ、(8A)に示されるように残液91が残留し、直径比B/Aが小さければ、(8B)に示されるように残液91が残留しない。
【0058】
この様に直径比B/Aを小さくすることにより残液91が残留しなくなる理由としては、次の通りに推測できる。まず、図7の説明において記述した通り、中間開口5の直径Bを小さくすれば、ノズル1内の残液が中間開口5の面を境として分裂し易くなるので、この分裂により前記残液が流出すると考えられる。その一方、基端開口3の直径Aを大きくすれば、基端開口3と中間開口5の間に残留する残液の表面張力が大きくなり、前記残液が不安定となると考えられる。
【0059】
図9は、C/A≧1.40の条件だけを満足した本発明の第2実施例の液体注出時の断面図である。貯蔵液体90が内蔵された容器20の液体注出部22には環状突起21が形成されており、この環状突起21の先端に液体抽出用ノズル1が配置されている。前記液体抽出用ノズル1にはノズル接続管42が内挿され、両者は密着して液密構造となっている。ノズル接続管42の上部には、回動レバー45が設けられ、またノズル接続管42の側面には根元開口3が略楕円状に開口形成されている。根元開口3の周縁部が根元板2に対応している。ノズル接続管42と回動レバー45と根元開口3と液体抽出用ノズル1の組合わせにより注出弁41が構成されている。液体抽出用ノズル1の内部途中には中間板4が環状突起状に形成され、液体抽出用ノズル1の先端に先端開口7が設けられている。回動レバー45を回動して根元開口3を液体抽出用ノズル1の途中開口に合致させることにより、液体注出部から貯蔵液体90が吐出され、先端開口7から注出液92が吐出される。
【0060】
図10は、C/A≧1.40の条件だけを満足した第2実施例の液体注出停止時の断面図である。回動レバー45を回動させて、根元開口3を液体抽出用ノズル1の途中開口から外すと、前記途中開口がノズル接続管42の周壁面で遮蔽され、液体の注出が停止される。つまり、液体注出及び注出停止は回動レバー45の回動だけで容易に達成される。
【0061】
図11は、第2実施例において、注出弁41と液体抽出用ノズル1の組立状態の斜視図である。液体抽出用ノズル1の上部は切り欠かれて表示されている。注出弁41のノズル接続管42の周面に根元開口3が楕円状に開口され、楕円の長径に対応する大直径A1及び短径に対応する小直径A2は、A1=8(mm)、A2=6(mm)である。直径Aとしては大きな値が選択されるから、根元開口3の直径A=8(mm)となる。また、液体抽出用ノズル1の先端開口7の直径C=12(mm)であり、中間開口5の直径B=10(mm)に設定されている。従って、この第2実施例では、C/A=12/8=1.5、C/B=12/10=1.2、B/A=10/8=1.25となる。第1条件はC/A≧1.40、第2条件はC/B≧1.85及び第3条件はB/A≦0.73であるから、第2実施例では、第1条件C/A≧1.40だけが満足され、第2条件及び第3条件は満足されていないことが分かる。
【0062】
しかしながら、第2実施例を何回も実験したところ、ノズル内に残液現象は無いことが実証された。従って、残液させないための基本条件は第1条件(C/A≧1.40)であることが明らかになった。第1実施例で説明した第2条件(C/B≧1.85)及び第3条件(B/A≦0.73)は残液の分離落下に関する補助条件であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の液体注出用ノズルを使用することにより、液体提供終了時において発生するノズル内残液の残留を防止することができ、従ってこのノズル内の衛生状態及び清潔状態を保つことができる。提供する液体が飲料物である場合は、細菌の繁殖が防止されることにより衛生度が高められ、この液体が工業用液体である場合は、不純物による品質の劣化が防止されることにより工業性が高められる。
【符号の説明】
【0064】
1 液体注出用ノズル
2 根元板
3 根元開口
4 中間板
5 中間開口
7 先端開口
10 ノズル本体
20 容器
21 環状突起
22 液体注出部
30 弁付キャップ
31 弾性弁
32 係止具
33 係止部
40 弁付接続部
41 注出弁
42 ノズル接続管
45 回動レバー
90 貯蔵液
91 残液
92 注出液
101 従来の液体注出用ノズル
A 根元開口の直径
A1 根元開口の大直径
A2 根元開口の小直径
B 中間開口の直径
C 先端開口の直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器の液体注出部付近にノズル本体を配置し、前記ノズル本体の根元部に液体流入用の根元開口が形成され、前記ノズル本体の先端部に液体流出用の先端開口が形成された液体注出用ノズルにおいて、前記根元開口と前記先端開口の中間位置に中間板が配置され、前記中間板に中間開口が形成されることを特徴とする中間板型液体注出用ノズル。
【請求項2】
前記根元開口の直径A(mm)と前記先端開口の直径C(mm)がC/A≧1.40の条件を有する請求項1に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項3】
前記中間開口の直径をB(mm)とし、前記先端開口の直径をC(mm)としたとき、C/B≧1.85の条件を有する請求項2に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項4】
前記根元開口の直径をA(mm)、前記中間開口の直径をB(mm)としたとき、B/A≦0.73の条件を有する請求項2又は3に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項5】
前記先端開口の直径Cが5.0mm≦C≦15.0mmの条件を有する請求項2〜4のいずれかに記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項6】
前記液体注出部に開閉可能な弁機構を有する弁付接続部を介して前記ノズル本体を配置する請求項1〜5のいずれかに記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項7】
前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起と着脱可能に形成されている請求項6に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項8】
前記弁付接続部が前記液体注出部に形成された環状突起との嵌合によりに着脱可能な弁付キャップである請求項7に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項9】
前記弁付接続部に外径が前記ノズル本体の根元部の内径以下であるノズル接続管が突設され、前記ノズル接続管が前記根元部に内嵌され、前記ノズル接続管の内直径が前記根元開口の直径となる請求項8に記載の中間板型液体注出用ノズル。
【請求項10】
前記弁付接続部に内径が前記ノズル本体の根元部の外径以上であるノズル接続管が突設され、前記ノズル接続管が前記根元部に外嵌される請求項8に記載の中間板型液体注出用ノズル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−42405(P2011−42405A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26529(P2010−26529)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】