説明

丸抜き装置

【課題】自動化と効率化を実現すると同時に、円形シートの切り口精度や品質をも向上することを実現する丸抜き装置を提供すること。
【解決手段】紙類又は合成樹脂製シートから成る四角形のシート(4−A)を円形状に打ち抜く丸抜き装置において、前記四角形のシート(4−A)をクランプするクランプ機構(4−C上、4−C下)と、前記四角形のシート(4−A)を断裁する上下動可能な円弧状刃物(4−E)と、断裁されたシートを一定角度回転させる回転機構(4−F)とを備えて構成するとともに、前記回転機構による回転ごとに前記四角形のシート(4−A)を前記円弧状刃物(4−E)で断裁するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙・板紙・フィルム・プラスチックシートなど包装材又は保護材を、四角形のシートから円形に打ち抜く装置に関する。さらに限定すれば、ロール状の製品を包装するときの小口に挿入又は接着する丸い包装紙や保護シートを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これらロール状の紙製品は、直径が様々存在し、その包装のためには直径に合わせた円形の包装紙を準備する必要がある。紙パルプ業界では、最近のオフセット輪転印刷機の普及に伴い、輪転印刷用の紙製品をロール状に加工して印刷工場に納入するケースが増加している。また、その印刷効率の向上を追及するため、ロール紙の直径は徐々に大きくなる傾向がある。その結果、従来主流であった直径1m前後のロール紙から、最近は直径1.5mと大径のものにもなり、その直径の種類も多種存在するようになってきた。そのため、小口に当てる包装紙や保護シートも多種準備する必要に迫られている。
【0003】
円形の紙を裁断する方法としては、枚葉の裁断する紙を固定して、裁断するカッタを円運動させながら順次このカッタを繰り下げることによって真円を得る方法が挙げられる(例えば、特許文献1を参照。)。また、上下の回転刃を用い、枚葉の紙を保持装置によって回転させながら裁断する方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−208596号公報
【特許文献2】特開平9−109091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、これらロールの小口に挿入・接着する円形の包装資材は、あらかじめ四角形に断裁された枚葉シートを円形に打ち抜くことで製造されてきた。その技術的現状は、次の二つの方法が普及しており、いずれも非効率的作業であるために、改善が期待されている。
【0006】
例えば、特許文献1で開示された方法は、図1に示すように、あらかじめ準備した四角形の枚葉シートの中心をクランプ装置(1−A)にてクランプし、ここから伸びている旋回アーム(1−B)の中心から所定の距離で離間した位置に取り付けられているカッターナイフ(1−C)を、クランプ装置上部に装備された旋回アーム駆動モータ(1−D)を用いて回転させることによって円形に切り抜く構造となっている。このタイプの装置は、構造がシンプルであるので、装置の設置コストを低く抑えることができる利点とともに、少量を打ち抜くのに便利であり、かなりの台数が設置稼動している。
【0007】
しかし、回転するカッターナイフは、容易に磨耗し、一度に打ち抜ける枚数も限られている。ナイフ切り口も毛羽立つことが多く、精度や品位を要求される用途には向かない。さらに、一度に断裁できる四角形枚葉シートの枚数は、その単位重量にもよるが、10から50枚が限度であり、生産性が低いことは容易に判定できる。また、特許文献2で開示された方法は、四角形の枚葉シートを回転させながら上下一組の回転刃によって裁断し、円形の被切断材を得るものである。同様に、一度に断裁できる四角形枚葉シートの枚数に制限がある。
【0008】
もう一つの方法は、図2に示すように、あらかじめ準備した円形の刃(2−A)を油圧シリンダ(2−B)によってシート上にプレスし、打ち抜く構造である。この方法は、円形の強固な刃物をあらかじめ準備しておくことができるため、比較的大量の枚数を一度に抜くことができる。また、押し切るタイプのため、切断面も比較的きれいに打ち抜けることが知られている。しかし、円形の刃を油圧プレスにて上下させるため、小径の打ち抜きには適しているが、本発明で最も注目している直径1m以上のものについては、必要とされるプレス圧を得るために重厚長大なプレス装置を必要とする。
【0009】
また、前述したように円形シートは、ロール状の被包装物の小口径が多様なことによって、数多くの径の円形刃を準備しておく必要がある。それゆえ断裁シートの直径が変わるたびに、円形の刃を交換する必要があり、少量を多寸法にわたって打ち抜く場合は、大きな効率低下となる。また、円形刃は、特殊刃であるために、その研磨にも特殊な機構の砥石を必要とし、前記の重厚長大なプレス装置のコストとともに、この打ち抜き作業の単価を上昇させる一因となっている。
【0010】
また、一度に打ち抜ける枚数も先に述べた「アーム回転式丸抜き装置」よりは多いものの、50枚程度が限度であり、断裁作業効率は低い。また、前記例のような強固な刃物を準備するコストや手間を嫌って、一般にビク抜きと称される紙器やダンボールの型抜きを行う技術を応用して、抜き刃を使い捨てで使用することも知られている。この場合の刃の交換時間は、前記の強固な刃を使用する場合に比較して大幅に短縮されるものの、刃の剛性等の制約によって、一度に抜ける枚数は数枚程度に減少することが知られている。
【0011】
そこで、本発明で注目したのは、この用途に使用される円形の紙、板紙、フィルム、プラスチックシートなどの包装資材は、必ずしも真円である必要はないという点である。さらに詳しく説明すれば、本発明の対象となる包装資材は一般的に図3に示すような構成で使用される。この図3は、輪転印刷機用に製造されたロール状に巻き取られた紙(巻取)の包装を示している。これらの包装は、一般に製紙業界でワンプと称されるポリエチレンラミネート紙とライナーと呼ばれるボードとを組み合わせて行われる。
【0012】
この図の内当紙(3−D)は、坪量80g/m程度のワンプが使用され、包装される巻取製品の直径より200mm程度大きなものが巻取の小口に挿入され、その後の工程で巻取の胴に巻かれた巻取包装ワンプ(3−A)とともにヒダを形成されるように折り込まれるため、擬似円形シート、すなわち、円形に近い形のシートであれば多少角ばった形状でもその機能を満たすことができる。したがって、8角形や16角形の形状でも用途上問題とはならない。外当紙(3−G)は、坪量170g/m程度のライナーが使用され、ロール状巻取製品の包装工程の最後に接着されるため、真円である必要はないが、円に近く違和感を覚えない程度の円であることが求められる。
【0013】
本発明は、これらの点に着目し、自動化と効率化を実現すると同時に、円形シートの切り口精度や品質をも向上することを実現する丸抜き装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、紙類又は合成樹脂製シートから成る四角形のシートを円形状に打ち抜く丸抜き装置において、前記四角形のシートをクランプするクランプ機構と、前記四角形のシートを断裁する上下動可能な円弧状刃物と、断裁されたシートを一定角度回転させる回転機構とを備えて構成するとともに、前記回転機構による回転ごとに前記四角形のシートを前記円弧状刃物で断裁するよう構成したことによって、擬似円形シートを打ち抜き成形する構造としたものである。ここで、「紙類」とは紙、板紙などをいい、「合成樹脂製シート」とはフィルム、プラスチックシートなどをいう。
【0015】
本発明に係る丸抜き装置は、前記クランプ機構をエアーシリンダとし、前記回転機構をギヤードモータとしたものが好ましい。これによって、作業効率が向上する。
【0016】
本発明に係る丸抜き装置は、前記円弧状刃物を上下させる機構を、油圧シリンダ、エアーシリンダ、クランク構造のいずれかによって構成したものも含む。
【0017】
本発明に係る丸抜き装置は、円弧状刃物が直線形状の刃物ピースであること、又は直線形状の刃をプレスなどで円弧状に曲げて作成した刃物ピースであるものも含む。これによって、特殊な機構の砥石を必要とせずに、摩耗した刃物ピースの研磨の作業効率が向上する。
【0018】
本発明に係る丸抜き装置は、5〜500mm幅の直線状の、又は円弧状に曲げて作成した刃物ピースを円弧状に複数接合することによって形成した円弧状刃物を使用することが好ましい。これによって、重厚長大なプレス装置や特殊な機構の砥石を必要とせずに、摩耗した刃物ピースの研磨の作業効率が向上し、コストも低減する。
【0019】
本発明に係る丸抜き装置は、前記四角形シートの角を断裁した断裁屑を掻き出し装置で搬送ベルトコンベアに載せ、装置外へ搬送する機構を設けたものが好ましい。これによって、作業効率が向上する。
【0020】
本発明に係る丸抜き装置は、断裁前の前記四角形シートの機内への搬入、位置決め、クランプ、断裁、回転、断裁、クランプ開放及び打ち抜いた円形シート搬出の一連の動作がコンピュータ制御によって自動進行されることも含む。これによって、作業効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る丸抜き装置によれば、自動化と効率化を実現すると同時に、円形シートの切り口精度や品質をも向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の回転式丸抜き装置を示す平面図及び側面図である。
【図2】従来のプレス式丸抜き装置を示す平面図及び側面図である。
【図3】巻取包装形態の一例を示す図である。
【図4】本発明による丸抜き装置の平面図及び側面図である。
【図5】円弧状刃物の形状を示す図である。
【図6】本発明に係る丸抜き装置によって断裁された擬似円形シートの一例を示す図である。
【図7】本発明に係る丸抜き装置によって断裁された擬似円形シートの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0024】
本実施形態に係る丸抜き装置を、図4を用いて詳細に説明する。本装置は、前記の内当紙及び外当紙を既知の従来技術に比較して効率よく加工するために開発したものである。円弧状刃物(4−E)は、本発明の要所とも言える部分で円弧状の刃物であり、プレス装置(4−H)の機構によって、一定のストロークで上下する。プレス装置(4−H)は、一般にギロチンと呼ばれる紙やフィルムを断裁する機械や、金属のプレス成形に使用されるプレスの公知技術を適用することができる。
【0025】
エアーテーブル(4−B)上に保持された被断裁物(4−A)、すなわち、四角形の枚葉シートは、あらかじめ必要とされる円形打ち抜き製品の直径に相当する四角形に加工され、断裁可能な枚数に積み重ねられた状態で供給される。四角形への加工は、抄紙機によって抄造されるロール状の紙をプッシュ式シンクロカッター又はロータリーカッターで枚葉状に断裁することによって得られ、これらの工程は、技術的にも発達・確立されており、製紙業界では極一般的技術の適応ができ、加工効率も満足のいくものである。断裁可能な枚数に積み重ねられて供給された四角形の枚葉シート(4−A)は、クランプ装置(上)(4−C上)とクランプ装置(下)(4−C下)の上下2枚の円盤状の構造物である一組のクランプ装置によってクランプ保持される。
【0026】
クランプ機構は、エアーシリンダ(4−D)によって行われるが、場合によっては、その他の一般的に公知なクランプ機構が採用できる。クランプ装置(下)(4−C下)のクランプ円盤は、減速機・ブレーキ付モータ(4−F)、すなわち、ギヤードモータによって、あらかじめプログラミングされたステップで一定角度回転するようになっている。一般的には、この一定角度を90度にして四角形の四隅を円弧状に4回プレスして落とすが、場合によっては、45度の回転を一部に挟んで、更に4回プレスして飛び出た部分を落とすこと(すなわち、8回裁断)によって、より円形に近いシートを製造することも可能である。
【0027】
円弧状刃物(4−E)について、更に詳細に説明するため、詳細図を図5に示す。この図では、一例として直径1350mmの90度分の長さの円弧状刃を示した。この図は、一例であり、断裁する擬似円形シートの大きさによって、各種直径や長さの刃物を成形して使用することができる。円弧状刃物(4−E)は、直線状の刃物ピース(5−A)を、各ピースの接合部分を精度よく仕上げた上で組み合わせ、刃物取付ボルト(5−B)によって刃物取付ブラケット(5−C)を介して、プレス機構で上下する断裁機本体に取り付けられる。刃物ピース(5−A)の大きさは、成形する刃物の大きさや、得るべき擬似円形シートの要求品質によって任意に選択して作成することができる。この刃物ピースの幅が小さければ小さいほど、より円形に近い擬似円形シートを得ることができる。
【0028】
刃物ピースの幅は、5〜500mmが使用可能であるが、直径1m前後の擬似円形を切り出すには、一般的に25〜250mmが、より好ましくは50〜100mmが推奨される。
【0029】
前述したように、この刃物ピースは使用後分解して、一般の研磨機で通常の直線状の刃物と同様に特殊な研磨冶具を使用することなく平刃として研磨することが可能である。この直線状の刃物ピースを組み合わせて円弧状にした刃物を使用することは、本発明の根幹を構成する要素の一つではあるが、この円弧状刃を直線状の刃物ピースをもって成形せず、当初から円弧状に曲げて製造した刃物を使用して、断裁機に供しても本発明の要件を損なうものではない。
【0030】
本発明による丸抜き装置に係るクランプ機構一式は、断裁される円形シートの直径に応じて、クランプ装置の中心と円弧状刃物(4−E)との距離を決定できるようにスライド機構を装備している。また、円弧状刃物(4−E)で打ち抜かれた、四角形シートの四隅の断裁屑は断裁屑掻き出し装置(4−G)によって、又は円弧状刃物(4−E)の刃先角によって押し出されて、搬送ベルトコンベア(4−I)に乗せられ断裁屑箱(4−J)に溜められる。
【0031】
一般的に本発明による丸抜き装置を使用した断裁作業は、次の手順にて進行する。作業者は、打ち抜く円形シートの直径によって、手動ハンドルにて上部のクランプ装置(4−C上)とエアーシリンダ(4−D)が一体となった上部クランプユニットをスライドさせる。このときに、円弧状刃物(4−E)の刃先とクランプ装置(4−C上)の中心との距離は、打ち抜く円形シートの半径と一致させる。次に、同様に手動ハンドルにて下部のクランプ装置(4−C下)と減速機・ブレーキ付モータ(4−F)が一体となった下部クランプユニットをスライドさせる。上下のクランプ装置の中心は、一致している必要がある。これを一致させるための位置決めは、公知のハンドルによる回転をスライドする距離に換算して表示する装置、又は位置検出センサによって、精度よく行うことが可能である。次に断裁可能枚数に積み重ねた四角形の枚葉シートである被断裁物(4−A)を、エアーテーブルを滑らせるように本発明の丸抜き装置へ導入する。
【0032】
位置決めを補助するために必要によって設けられた、位置決め板に突き当てるように前記四角形の枚葉シート(4−A)(以下、「被断裁シート」又は「被断裁物」と記載することもある。)を正しいクランプの中心にセットする。断裁スタートボタンを押せば、クランプ装置によって被断裁シートがクランプされた後、円弧状刃物(4−E)が下降し、四角形の一つの角が、円弧状に断裁される。そのときに切り取られた断裁屑は、後方の搬送ベルトコンベア(4−I)を介し、断裁屑箱(4−J)へ排出される。次に、円弧状刃物が上昇した後に回転機構が作動し、被断裁シートは90度回転する。四角形の新たな角が円弧状刃物の下へセットされるので、円弧状刃物が下降して二つ目の角が円弧状に落とされる。さらに、2回の回転と円弧状刃物の下降によって、四隅を断裁された擬似円形シートが得られる。作業者は、出来上がった擬似円形シートを取り出せば一連の作業が完了する。
【0033】
前記手順は、最も基本的な半自動断裁装置での手順を示したが、必要に応じてクランプユニットの位置決めをNC(Numerical Control)によって自動セット可能にすることや、四角形の被断裁シートの導入や、出来上がった擬似円形シートの搬出を自動的にコンピュータ制御で自動進行させることは、公知のギロチン断裁自動化技術の応用によって可能である。
【0034】
さらに、例を示しながら本発明の利点を説明する。図6に本発明による装置で断裁された擬似円形シートを示す。この例は、750×750mmの四角形シートを直径1350mmの90度分の円弧状刃物にて4回断裁して得られるシート形状を示している。このように、直径1350mmの円弧状刃物を装備することによって、刃を交換することなく、直径1350mmの円形シートを打ち抜くことはもちろん、円弧状刃物と回転中心との距離設定を変えて、四角形の被断裁シートの大きさを変えるだけで直径750mmの円形シートをも断裁することが可能である。図に示されるように、打ち抜かれたシートは真円に比較して、高さ19mmのなだらかな山が円周の8箇所に生ずるだけであり、この程度のふくらみは、この用途上は何ら障害になることはない。このように、刃の交換をしないで各種直径の擬似円形シートを断裁できることは、従来にない大きな技術進歩といえ、本発明の特徴である。
【0035】
さらに、図7を用いて本発明の利点を説明する。この図7に示すケースは、前記例と同様に直径1350mm相当の円弧状刃物を使用して、900mm×900mmの四角形のシートから直径750mmの擬似円形シートを抜き出す例を示している。このケースでは、真円の軌跡に比較して高さ約53mmの山型の出っ張りが4箇所に生ずる。この約53mmの出っ張りが使用するときに障害となる場合は、断裁終了後の擬似円形シートを取り出さず、45度回転させてセットしなおして、もう一度断裁サイクルを起動させ出っ張りを断裁すれば、ほぼ真円に近い擬似円形シートを得ることができる。もちろん、本例ではシートの面積ロスも大きく、作業も煩雑であるため頻繁に行うものではないが、従来技術ではできなかった応用作業も可能であることは、本発明の適用範囲の広さを示す好例といえる。
【実施例】
【0036】
本発明によって設計製造された、図4に示し[0024]以下の項で詳細を解説した丸抜き装置を用いて、1m×1mの四角形のライナーを擬似円形に打ち抜く作業を行った。ライナーは、170g/mの坪量で、巻取包装の外当紙に使用されるものを用いた。円弧状刃物は、紙などを上下運動で断裁する一般的にギロチンと呼ばれる装置で使用される断裁刃を幅50mmのピースに切ったもの(刃物ピース)を精度よく円弧状に接合して使用した。円弧状刃物の曲率は、直径1050mm相当であり、長さを90度相当の円弧とした。これは、断裁する円よりわずかに大きな円弧状刃物を使用することによって、断裁屑が切り離され断裁の抵抗にならないようにするためと、断裁屑が容易に系外へ排出されることを達成するためである。比較例と条件を合わすため、自動給紙装置を使用せず、人手で四角形被断裁シートを供給し、位置決めなども作業者が行い、取り出し作業も人手にて実施した。
【0037】
断裁作業は、順調に進行し、四角形シートの角を3回の90度回転と4回の円弧状刃物下降の組み合わせで断裁し、ほぼ円形のシートを得ることができた。断裁屑が刃先の傾斜に押される形で後方に逃げ、刃先の抵抗が軽減されるため、1回当たりの被断裁物の積み重ね枚数は100枚まで、何ら問題なく実施することができた。また、断裁屑は、後方に押し出され、屑を排出する搬送ベルトコンベアに乗って断裁屑箱まで搬出された。1時間経過した時点での処理枚数は、約12000枚となった。
【比較例1】
【0038】
比較例として一般的に広く普及している、図1に示した「アーム回転式丸抜き装置」を使用した場合の作業効率を示す。実施例と同じく1m×1mの170g/mのライナーを使用した。作業は、作業員一人で行い、給紙、円形に断裁した後の周りの断裁屑を取り除き、丸く抜いた紙の取り出しを繰り返した。1回当たりの被断裁物の積み重ね枚数は、10〜20枚であった。10枚を断裁する場合のアームの回転は、5回必要であり、この装置での丸抜き作業の律速となり、1時間の作業で1600枚の処理がやっとの結果となった。
【比較例2】
【0039】
次に図2に示した「プレス式丸抜き装置」を使用する比較例を示す。この円形刃は、一般的に段ボールや紙器を打ち抜く時に使用する、ビク抜きと呼ばれる装置の「抜き刃」の技術を応用したものである。抜き刃は、比較的軽量に設計してあり、抜く紙器の形状に合わせて、断裁したり曲げたりができるようになっている。この抜き刃(2−A)を円周の長さに断裁したものを円筒状にし、油圧シリンダによって上下するプレート平面の溝に円形に埋め込み使用した。この抜き刃を下降させることによって円形のシートを一気に抜くことができる。実施例と同様に1m×1mで170g/mの四角形のライナーを用いて作業を行った。給紙や取り出しは、比較例1と同様に作業員一人とした。抜き刃が軽量設計のため、1回当たりの被断裁物の積み重ね枚数は10枚が限度であった。抜く動作自体は早く、1時間で約1200枚の処理ができた。
【比較例3】
【0040】
比較例2と同じ「プレス式丸抜き装置」でビク抜きの「抜き刃」の代わりに、あらかじめ焼き入れして製造した円形の強固な刃物を装着して実施した例を示す。円形刃物は、円形に成形した後刃付け・焼き入れを施した特殊刃で、特殊冶具を使用して研磨したものを使用した。比較例2と同様に作業を進めたところ、刃物が強固であるため、1回当たりの被断裁物の積み重ね枚数は50枚まで可能であった。断裁スピードは、比較例2と同じであり、1時間当たりの抜き枚数は6000枚可能であった。しかし、このケースは、刃の交換が作業員二人で約1時間を要し、総合的には効率を低下させることとなった。
【0041】
実施例と比較例1、2及び3の作業効率をまとめたものを表1に示した。ここで示されるように、1回当たりの被断裁物の積み重ね枚数と1時間当たりの抜き枚数のいずれも、本発明が際立って優れていることがわかる。さらに、本発明では、断裁屑が自動的に搬送ベルトコンベアを経て系外へ搬出されるため、作業員の疲労度合いにも大きな違いが生ずる。また、総合的にも効率が向上し、経済性にも優れていた。
【0042】
【表1】

【符号の説明】
【0043】
1−A クランプ装置
1−B 旋回アーム
1−C カッターナイフ
1−D 旋回アーム駆動モータ
1−E テーブル
1−F 操作スイッチ
1−G 奥側スイッチ
1−H 側面ガイド
1−I 制御盤
2−A 円形の刃
2−B 油圧シリンダ
2−C テーブル
2−D プレス装置
2−E 安全センサ
2−F 円形刃の取付溝
2−G プレス装置制御盤
3−A 巻取包装ワンプ
3−B 巻取製品
3−C 胴面ワンプ包装状態
3−D 内当紙(ワンプ)
3−E 挿入された内当紙
3−F 耳折されたワンプ
3−G 外当紙(ライナー)
3−H 製品包装完成品
4−A 被断裁物
4−B エアーテーブル
4−C上 クランプ装置(上)
4−C下 クランプ装置(下)
4−D エアーシリンダ
4−E 円弧状刃物
4−F 減速機・ブレーキ付モータ
4−G 断裁屑掻き出し装置
4−H プレス装置
4−I 搬送ベルトコンベア
4−J 断裁屑箱
4−K 安全センサ
5−A 刃物ピース
5−B 刃物取付ボルト
5−C 刃物取付ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙類又は合成樹脂製シートから成る四角形のシートを円形状に打ち抜く丸抜き装置において、
前記四角形のシートをクランプするクランプ機構と、
前記四角形のシートを断裁する上下動可能な円弧状刃物と、
断裁されたシートを一定角度回転させる回転機構と
を備えて構成するとともに、前記回転機構による回転ごとに前記四角形のシートを前記円弧状刃物で断裁するよう構成したことを特徴とする丸抜き装置。
【請求項2】
前記クランプ機構をエアーシリンダとし、前記回転機構をギヤードモータとしたことを特徴とする請求項1記載の丸抜き装置。
【請求項3】
前記円弧状刃物を上下させる機構を、油圧シリンダ、エアーシリンダ、クランク構造のいずれかによって構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の丸抜き装置。
【請求項4】
前記円弧状刃物を、5〜500mm幅の直線状の、又は円弧状に曲げて作成した刃物ピースを円弧状に複数接合することによって形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の丸抜き装置。
【請求項5】
前記四角形シートの角を断裁した断裁屑を掻き出し装置で搬送ベルトコンベアに載せ、装置外へ搬送する機構を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の丸抜き装置。
【請求項6】
断裁前の前記四角形シートの機内への搬入、位置決め、クランプ、断裁、回転、断裁、クランプ開放及び打ち抜いた円形シート搬出の一連の動作がコンピュータ制御によって自動進行するよう構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の丸抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−221388(P2010−221388A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74641(P2009−74641)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【出願人】(503311737)北越紙精選株式会社 (2)
【出願人】(509084529)伊藤鉄工株式会社 (1)