説明

乗員の焦点距離調整支援装置

【課題】高度・高価なシステムを用いることを回避でき、乗員の焦点距離調整を迅速に支援をすることができ、且つ乗員の視界部分の妨げを最小限に止めることを可能にする。
【解決手段】車両10を運転する際に、乗員の焦点位置を適正位置に確保するために設けられる乗員の焦点距離調整支援装置20において、乗員の前方視界内で且つ車両10に水平に、乗員の両眼28,29の瞳孔距離L1と略同一距離で少なくとも二つの目印25,26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中に乗員(ドライバ)の焦点距離が適正な値に保てるように、乗員に焦点距離の調整を促すことができる乗員の焦点距離調整支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗員(ドライバ)は走行中に、前方の走行環境に焦点を合わせ安全走行を保つとともに、車内でのナビゲーションシステム画面やバックミラーなどの運転情報取得等のために高頻度での視線の移動と焦点の調整が要求されている。これはドライバにとって負担を要求する作業である。
【0003】
特に、これらの作業は焦点調節が遅い、且つ焦点調節のために努力を要する高齢者ドライバにとってはなおさら困難な作業となる。
また、近年増加傾向にあるインストルメントパネル回りのデバイス確認・操作によって、視線移動・焦点調整の要求はさらに頻度を増している。
【0004】
乗員の視線移動・焦点調整を支援する装置(以下、「従来技術1」と記載する)の中には、例えば、視線計測デバイスでドライバの視線を検知し、システムのアルゴリズムが問題ありと判断した場合に警報でドライバに知らせるシステムが知られている。
また、乗員の視線移動・焦点調整を支援する装置(以下、「従来技術2」と記載する)として、例えば、視線移動を軽減するためのインストルメントパネル回りにデバイスを配置するときに、ヘッドアップディスプレイのように人間工学を重視したデバイスが採用されることもある。
【0005】
このような乗員の視線移動・焦点調整を支援する装置として、模様によって乗員(ドライバ)の焦点位置を車両進行方向に誘導するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−36179公報
【0006】
特許文献1の技術を説明する。
図11は従来の乗員の視界調整装置の基本構成を説明する図である。
従来の乗員の視界調整装置100は、フロントウインドガラス101の下端部に運転者の前方視界を調整する視界調整部分102を設けたものであり、視界調整部分102は、運転者の対向位置P1と車両中心位置C1との間で、且つ運転者から距離S1だけオフセットした位置に頂点T1が配置され、この頂点T1から車幅方向両側に向けて一様に下降傾斜する左右稜線L1,L2が設定されるとともに、視界調整部分102の車室内側表面に頂点T1付近で最も密度が大きくなり、且つ細かくなる模様を付与され、視界調整部分102の模様によって乗員(運転者)の焦点位置を車両進行方向に誘導するようにしたものであった。
【0007】
しかし、先に説明した従来技術1では、高度・高価なエレクトロニクス技術が要求される。
また、従来技術2では、人の視線移動を軽減するという効果はあるものの、焦点距離を調整するような機能を持ち合わせたものはない。
さらに、従来の乗員の視界調整装置100では、フロントウインドガラス101の下端部に配置される視界調整部分102の面積が広く必要であり、フロントウインドガラス101が煩雑となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高度・高価なシステムを用いることを回避でき、乗員の焦点距離調整を迅速に支援をすることができ、且つ乗員の視界部分の妨げを最小限に止めることができる乗員の焦点距離調整支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車両を運転する際に、乗員の焦点位置を適正位置に確保するために設けられる乗員の焦点距離調整支援装置において、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離で少なくとも二つの目印を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、目印が、乗員の視線の上又は下に設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、目印が、車両のフロントウインドウに設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、目印が、半透明且つ着色された半透明色彩フィルタで形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離で少なくとも二つの目印を設け、車両を運転する際に、乗員の焦点位置を適正位置に確保するようにした。
人間の眼は、左眼と右眼とが統計的に65mm離れて配置されている。従って、物体を見るときに、眼球が物体の方向を向くために左眼と右眼とでは眼球の角度が異なり、物体から見て左眼と右眼とのなす角度は輻輳角と呼ばれる。
人間の眼の特性として、例えば、遠くに視点を置くときには、左眼と右眼の視線が限りなく平行に近づくので、輻輳角は限りなくゼロに近づく。また、近くに視点を置くときは、輻輳角は大きくなる。すなわち、近くの物体に視点を置くに連れて輻輳角はさらに大きくなり、左眼と右眼とでは別の像が認識され、あまりに眼に近い場合は両眼の像を結像することができずに、二重になって見えるようになる。
【0014】
人間の眼は上記特性があるので、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離で少なくとも二つの目印、一例として二つの目印を設定するときに、乗員の視線が遠方に設定されている場合は、左眼と右眼の視線が限りなく平行になるので、左眼では一方の目印が視界内に映り込み、右眼では他方の目印が視界内に映り込む状態となる。この結果、二つの目印の間に、ひとつに合わさった像が映り込むとともに、この像は、二つの目印が合わさることで二つの目印よりも色の濃い像として映り込む。
また、乗員の視線が目印の位置に設定されたときには、目印に焦点が合うので目印そのままが認識される。さらに、乗員の視線が目印の手前に設定されたときには、二つの目印は二重に若しくは四つの像として視界内に映り込む。
【0015】
これにより、二つの目印がそのまま視認されたり、二つの目印が二重に若しくは四つの像として視界内に映り込んでいる状態であるときは、視点距離が不適切であり、二つの目印の間に、ひとつに合わさった濃い目印が映り込むときには、視点距離が適切であると判断できる。
【0016】
すなわち、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離に少なくとも二つの目印が設けられたので、視線を平行にするのが容易となる。
例えば、二つの目印の間に、ひとつに合わさった色の濃い像の映り込みがあるときは、乗員の視線が遠方に向いていることが確認でき、近傍を見る傾向のある乗員には焦点を遠方に向けるように促すことができる。
この結果、高度・高価なシステムを用いることを回避できるとともに、乗員の焦点距離調整の支援を迅速に行うことができ、走行時の前方対象物に対する視覚認識速度を向上することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、目印が、乗員の視線の上又は下に(周辺に)設けられたので、運転の妨げにならない。すなわち、乗員の視界の妨げを最小限に止めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、目印が、車両のフロントウインドウに設けられるので、すなわち、フロントウインドウに目印を付けるだけでいいので、簡単に設けることができる。この結果、装置の簡素化を図ることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、目印が、半透明且つ着色された半透明色彩フィルタで形成されたので、遠方に焦点があるときに映り込む像の半透明色彩フィルタの色が重なり、色が濃くなるので識別されやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1(a),(b)は本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置を採用した車両の平面図である。(b)は(a)のb部拡大図を示す。
乗員の焦点距離調整支援装置20は、車両10の車室11内前方に設けられるフロントウインドウ22と、このフロントウインドウ22に設けられ、ステアリング23越しに視認される二つの(左右の)目印25,26とから構成される。
【0021】
左右の目印25,26は、円形の半透明色彩フィルタであるとともに、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼28,29の瞳孔距離と略同一距離でフロントウインドウ22に配置される。
さらに、左右の目印25,26は、乗員の視線の下に(周辺に)位置するように設けられる。また、左右の目印25,26は、乗員の両眼28,29の瞳孔距離L1と略同一距離に配置される。
次に、人間(乗員)の眼28,29の特性について簡単に述べる。
【0022】
図2(a)〜(e)は人間の眼の特性を示す説明図である。
(a)において、人間(乗員)の左右の眼28,29は、所定の距離(瞳孔距離)を確保されて配置されたものなので、両眼視差(左眼と右眼とで見える像の差異のこと)があり、両眼28,29で物体M1を認識するときに、本来、物体M1の距離に依存して、右眼28・左眼29の像は異なって見えている。これらの異なって見える像を脳の働きで一致させ、ひとつの像として認識する。また、人間は、両眼視差から奥行きを知覚することができる。
なお、人間の左右の眼28,29の瞳孔距離は、統計的に65mmとされる。
【0023】
(b)において、近くの物体M1を見る場合の眼球28a,29aの動きが示され、(c)において、遠くの物体M1を見る場合の眼球の動きが示される。
近くの物体M1を見る場合の左右の眼球が矢印b1,b2の如く回転運動をしてそれぞれ物体の方向へ指向する。この単一像を得るための眼球の回転運動が、輻輳(ふくそう)と呼ばれ、物体M1から見て左眼28と右眼29とのなす角度が輻輳角θ1と呼ばれる。
【0024】
すなわち、近くに視点を置くとき(近くの物体M1を見る場合)は、輻輳角θ1は大きくなる。また、近くの物体M1に視点を置くに連れて、左眼28と右眼29とでは別の像が認識され、あまりに眼に近い場合は両眼28,29の像を結像することができずに、二重になって見える。
遠くの物体を見る場合の輻輳角θ1は、限りなくゼロに近づく。例えば、焦点距離10m以上では、カメラでいう焦点距離無限大のように輻輳角θ1は設定されない。
【0025】
(d)及び(e)では片側の眼28のみが示され、(d)において、近くの物体M1を見る場合の水晶体28bの動きが示され、(e)において、遠くの物体M1を見る場合の水晶体28bの動きが示される。ここで、水晶体28bとは、カメラでいうレンズの働きをなす部分であり、近くの物体を見る場合は水晶体28bが厚く変化し、遠くの物体を見る場合は水晶体28bが薄く変化して、物体M1までの焦点距離を合わせる働きをなす。 このように、輻輳角θ1の調整と水晶体28bの調整とは互いに強く関連しあって働いている。
【0026】
図3(a)〜(c)は図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の焦点距離を遠くに設定したときの作用説明図である。
(a)において、前方遠くに(10m以上に)焦点が設定された場合が示され、輻輳角θ1は限りなくゼロに設定され、両眼28,29の視線はほぼ平行に設定される。
【0027】
このときに、(b)において、左眼28には左右の目印像25a,26aが映り込み、右眼29にも左右の目印像25a,26aが映り込んでいる。
【0028】
(c)において、左右の眼28,29の像が結合された両眼結合像では、人間の瞳孔距離に設定された左右の目印(二つの半透明色彩フィルタ)25,26が結合され、左右の目印像25b,26bの他に、(b)に示される左右の目印像25a,26aが合成されるとともに、色調が強調された目印像27bが映り込んでいることが認識される。
【0029】
図4(a)〜(c)は図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置に焦点を合わせたときの作用説明図である。
(a)において、乗員の焦点距離調整支援装置20に対して焦点が設定された場合が示され、所定の輻輳角θ1が設定される。
【0030】
このときに、(b)において、左眼28には左右の目印像25a,26aが認識され、右眼29にも左右の目印像25a,26aが認識される。
【0031】
(c)において、乗員の焦点距離調整支援装置20に対して焦点が合っているので、左右の眼28,29の像が結合された両眼結合像では、人間の瞳孔距離に設定された左右の目印像(二つの半透明色彩フィルタ)25b,26bが認識される。
【0032】
図5(a)〜(c)は図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の焦点距離を近くに設定したときの作用説明図である。
(a)において、前方近くに焦点が設定された場合が示され、図4(a)に示された輻輳角θ1よりも大きく設定される。
【0033】
このときに、(b)において、左眼28には左右の目印像25a,26aが映り込み、右眼29にも左右の目印像25a,26aが映り込んでいる。
【0034】
(c)において、人間の眼の特性としてあまりに物品に眼を近づける場合は両眼の像を結像することができないので、左右の眼28,29の像が結合された両眼結合像では、左右の眼28,29で見たままの像として映り込む。すなわち、四つの目印25b,25b,26b,26bが映り込んでいる。
【0035】
図6(a)〜(c)は図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の運転中の認識のされ方の説明図である。
(a)において、10m以上先に焦点が合っている場合の見え方を示し、二つの半透明色彩フィルタ25,26が結合された目印像27bの映り込みが認識されているので、前方視界の焦点距離は適正であると判断できる。
【0036】
(b)において、フロントウインドウ22に焦点が合っている場合の見え方を示し、二つの半透明色彩フィルタ25,26がそのままの状態で認識され、例えば、視線はワイパ(不図示)やフロントウインドウ22に焦点があっている。すなわち、運転者(乗員)が、二つの半透明色彩フィルタ25,26をそのままの状態で認識するときには、前方視界をもっと遠方に移すべきであるという意識を常々持つようにすれば、自然と視線の遠方移動ができる。
【0037】
(c)において、フロントウインドウ22の手前にあるインストルメントパネル(不図示)などに焦点が合っている場合の見え方を示し、物品にあまりに近い距離では両眼の像を結像することができないことにより、四つの半透明色彩フィルタ像25b,25b,26b,26bが映り込んでいることが認識される。この場合にも運転者が、四つの半透明色彩フィルタ像25b,25b,26b,26bが映り込んでいることが認識されるときには、前方視界をもっと遠方に移すべきであるという意識を常々持つようにすれば、自然と視線の遠方移動ができる。
【0038】
すなわち、図1に示されたように、乗員の焦点距離調整支援装置20では、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼28,29の瞳孔距離L1と略同一距離で少なくとも二つの目印(半透明色彩フィルタ)25,26を設け、車両を運転する際に、乗員の焦点位置を適正位置に確保するようにしたものといえる。
【0039】
これにより、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼28,29の瞳孔距離L1と略同一距離に少なくとも二つの目印(半透明色彩フィルタ)25,26が設けられたので、視線を平行にするのが容易となる。
【0040】
例えば、二つの目印(半透明色彩フィルタ)25,26の間に、ひとつに合わさった色の濃い半透明色彩フィルタ像27b(図3(c)参照)の映り込みがあるときは、乗員の視線が遠方に向いていることが確認でき、近傍を見る傾向のある乗員には焦点を遠方に向けるように促すことができる。
【0041】
この結果、高度・高価なシステムを用いることを回避できるとともに、乗員の焦点距離調整の支援を迅速に行うことができ、走行時の前方対象物に対する視覚認識速度を向上することができる。
【0042】
また、目印(半透明色彩フィルタ)25,26は、乗員の視線の上又は下に(周辺に)設けられたので、運転の妨げにならない。すなわち、乗員の視界の妨げを最小限に止めることができる。
【0043】
目印(半透明色彩フィルタ)25,26は、車両10のフロントウインドウ22に設けられる。すなわち、フロントウインドウ22に目印25,26を付けるだけでいいので、簡単に設けることができる。この結果、装置の簡素化を図ることができる。
【0044】
目印25,26は、半透明且つ着色された半透明色彩フィルタで形成されたので、遠方に焦点があるときに映り込む像が、半透明色彩フィルタ25,26の色が重なり、色が濃くなるので識別されやすい。
【0045】
図7は本発明に係る第2実施例の乗員の焦点距離調整支援装置の正面図である。
乗員の焦点距離調整支援装置30は、車両の車室内前方に設けられるフロントウインドウ32と、このフロントウインドウ32に設けられた複数の目印34〜39とから構成される。
【0046】
複数の目印34〜39は、半透明色彩フィルタで形成されるとともに、乗員の前方視界内で且つ車両に水平に、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離でフロントウインドウ32に配置される。さらに、乗員の視線の下に(周辺に)位置するように設けられる。
また、複数の目印34〜39は、乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離に配置されるものなので、統計的な人間の瞳孔距離L1である65mm前後の距離を選択する。
【0047】
図8は本発明に係る第3実施例の乗員の焦点距離調整支援装置の正面図である。図9は図8に示される乗員の焦点距離調整支援装置の作用説明図である。
図8に示されたように、乗員の焦点距離調整支援装置40は、車両の車室内前方に設けられるフロントウインドウ42と、このフロントウインドウ42に設けられた二つの目印(第1・第2の目印)45,46とから構成される。
【0048】
また、二つの目印45,46は、乗員の両眼28,29(図1参照)の瞳孔距離L1と略同一距離に配置されるものなので、統計的な人間の瞳孔距離である65mm前後の距離を選択する。
【0049】
二つの目印45,46(第1・第2の目印)は矩形状に罫線を描いたものであり、第1の目印45は、罫線が水平に配置され、第2の目印46は罫線が傾けて配置される。
図9に示されたように、視点を遠方に向けたときには、第1・第2の目印45,46の結合像47bが映り込む。
【0050】
図10は本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置の参考図であり、3Dステレオグラムを示す。
ステレオグラムとは、目の焦点を意図的に前後にずらして合わせることで、立体的に見ることが出来る画像のことである。また、3Dとは、立体視を意味し、ステレオグラムの二次元の画像を三次元に見る方法をいう。
【0051】
人間は、片眼では焦点距離、物体の大きさ、重なり、明瞭さ、移動速度、両眼では、両眼視差、輻輳などの情報を総合的に利用して立体を認識している。ステレオグラムは両眼視差を利用して画像を立体として認識させる。現実の立体を見るときには、両眼の位置の差から右眼と左眼では異なった像が写っている。この見え方の違いが両眼視差である。この二つの画像の差異を利用して脳は空間の再構築を行う。逆に、平面上の画像でも両眼に視差が生じるように映像を写すことで、脳に立体として認識させることができる。
【0052】
図10に示される3Dステレオグラム50は、下方に配置した二つの点51,52が重なって認識できるときに、3Dステレオグラム50から立体画像が認識される。
すなわち、両眼の輻輳角が合えば水晶体の焦点調整が自動的に行われ、3Dステレオグラム50が立体的に認識されるものであり、本願発明の乗員の焦点距離調整支援装置20(図1参照)は、機能的に、図10に示される3Dステレオグラム50自体がフロントウインドウ22(図1参照)に例えられ、3Dステレオグラム50の立体画像を見るための二つの点51,52が半透明色彩フィルタ25,26に例えることができる。
【0053】
尚、本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置は、図1に示すように、フロントウインドウ22に目印25,26を設けたが、これに限るものではなく、乗員の前方視界内に設けたものであればよい。
【0054】
本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置は、図1に示すように、目印25,26は円形であり、図8に示すように、目印45,46は矩形状に罫線を描いたものであったが、これに限るものではなく、目印の形状は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置を採用した車両の平面図である。
【図2】人間の眼の特性を示す説明図である。
【図3】図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の焦点距離を遠くに設定したときの作用説明図である。
【図4】図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置に焦点を合わせたときの作用説明図である。
【図5】図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の焦点距離を近くに設定したときの作用説明図である。
【図6】図1に示された乗員の焦点距離調整支援装置の運転中の認識のされ方の説明図である。
【図7】本発明に係る第2実施例の乗員の焦点距離調整支援装置の正面図である。
【図8】本発明に係る第3実施例の乗員の焦点距離調整支援装置の正面図である。
【図9】図8に示される乗員の焦点距離調整支援装置の作用説明図である。
【図10】本発明に係る乗員の焦点距離調整支援装置の参考図である。
【図11】従来の乗員の視界調整装置の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
10…車両、11…車室、22…フロントウインドウ、25,26…目印(半透明色彩フィルタ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転する際に、乗員の焦点位置を適正位置に確保するために設けられる乗員の焦点距離調整支援装置において、
前記乗員の前方視界内で且つ前記車両に水平に、前記乗員の両眼の瞳孔距離と略同一距離で少なくとも二つの目印を設けたことを特徴とする乗員の焦点距離調整支援装置。
【請求項2】
前記目印は、前記乗員の視線の上又は下に設けられたことを特徴とする請求項1記載の乗員の焦点距離調整支援装置。
【請求項3】
前記目印は、前記車両のフロントウインドウに設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗員の焦点距離調整支援装置。
【請求項4】
前記目印は、半透明且つ着色された半透明色彩フィルタで形成されることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の乗員の焦点距離調整支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−126462(P2009−126462A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306284(P2007−306284)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)