説明

乗客コンベアの情報表示装置

【課題】乗客コンベアの異常状態発生時に、この異常状態に対応するために必要な情報を迅速かつ簡易に提示することができる乗客コンベアの情報表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態に係る乗客コンベアの情報表示装置は、無端状に連結された踏段が周回移動するよう動作する乗客コンベアに設けられ、乗客コンベアの異常状態が発生した時に、異常状態に対応するために必要な情報を二次元コードで表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータなどの乗客コンベアにおいて、進行方向を示す矢印や進入禁止を示すマークなどの図形情報を表示し、乗客に運転状況を提示することができる情報表示装置を備えたものがある。
【0003】
乗客コンベアの動作箇所に異物が挟まれるなどの異常状態が発生した場合には、異常状態の原因や異常状態から復旧させるための対応策など、異常状態に対応するために必要な情報を乗客コンベアの管理者に迅速に提供できることが望ましい。そこで、従来の乗客コンベアの情報表示装置では、乗客コンベアの異常状態発生時には、当該異常状態に関する情報を表示できるものがある。
【0004】
なお、エレベータ分野においては、QRコード(登録商標)などの二次元コードやLEDなどの光信号を介して、該当エレベータに関する情報を管理者に提供する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−95357号公報
【特許文献2】特開2006−244889号公報
【特許文献3】特開2009−23736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の乗客コンベアの情報表示装置は、主に通常運転時に進行方向を示す矢印や進入禁止を示すマークなどの図形情報を表示することを目的とされるものであるので、表示画面が小さく、提供可能な情報量に制約があった。このため、従来は、例えば情報量の少ない文字列のみを情報表示装置に表示させ、乗客コンベアの管理者がこの表示された文字列に対応付けられた故障原因の内容を調べる手法などがとられていた。この場合、必要な情報が乗客コンベアの管理者に提示されるまでに、管理者自身が手順を踏む必要があり、時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、乗客コンベアの異常状態発生時に、この異常状態に対応するために必要な情報を迅速かつ簡易に提示することができる乗客コンベアの情報表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係る乗客コンベアの情報表示装置は、無端状に連結された踏段が周回移動するよう動作する乗客コンベアに設けられ、乗客コンベアの異常状態発生時に、異常状態に対応するために必要な情報を二次元コードで表示することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)を備えるエスカレータ(乗客コンベア)の概略構成を示す図である。
【図2】図1のエスカレータの異常停止に関する情報を提示する異常停止提示システムの概略構成を示す図である。
【図3】エスカレータの異常停止時における、図1,2中の運行表示器の表示画面内容の一例を示す図である。
【図4】図2中の携帯端末が二次元コードを読み取った後に、二次元コードに基づく情報が表示された携帯端末の表示画面の一例を示す図である。
【図5】実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)を含む異常停止提示システムにおける停止情報提示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、実施形態に係る乗客コンベアの情報表示装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
本実施形態では、無端状に連結された踏段が周回移動するよう動作する乗客コンベアの一例としてエスカレータを挙げて説明する。
【0012】
まずは、図1を参照して本実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)3を備えるエスカレータ1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)3を備えるエスカレータ1の概略構成を示す図である。
【0013】
図1に示すエスカレータ1は、複数の踏段2と、一対の欄干パネル4と、手摺りベルト6とを有して構成されている。このうち、踏段2は、エスカレータ1の利用対象である利用者が乗るものであり、トラス(図示省略)により設定された傾斜角度を有して支持されており、駆動装置(図示省略)により、上下方向の両端に位置する乗降口10の間を循環移動する。その際に、踏段2は、外部に面する状態、即ち、外部から視認できる状態では、大部分が階段状の乗り台の形態となって移動することにより、利用者が乗ることが可能になっている。このように設けられる踏段2は、例えばアルミダイカストにより形成されている。
【0014】
欄干パネル4は、外部に面している踏段2の移動方向に直交する方向を左右方向とする場合における踏段2の左右両側に、複数の踏段2を挟んで対向して設置されている。この欄干パネル4は、例えば透明のガラスやアクリルなどによって形成されている。また、手摺りベルト6は、利用者が手をかけるものであり、欄干パネル4のそれぞれ周縁部に移動可能に巻き付けられ、駆動装置により各踏段2の移動(移動方向も含む)に同期して移動する。この手摺りベルト6は、ゴムなどによって形成されている。このように設けられるエスカレータ1は、制御盤(図示省略)に設けられる制御装置20によって動作を制御可能になっており、制御盤は、乗降口10の下方に設けられる機械室に設置されている。
【0015】
また、エスカレータ1には、作動中の安全性を確保するために、作動しているエスカレータ1を停止させることができる安全回路14が設けられている。エスカレータ1には、複数の箇所に、作動時における安全度が低減する状態を、その場所に応じた手法で検出する装置である安全装置12が設けられており、安全回路14は、この安全装置12に接続されている。安全回路14は、安全装置12により安全度の低減に係る事象が検出された場合には、制御装置20に対して制御信号を送信することにより、制御装置20を介してエスカレータ1を停止させることができるよう構成されている。「安全度の低減に係る事象」とは、例えばエスカレータ1の踏段2の間や、踏段2とデッキ5との間などのエスカレータ1の動作箇所において異物が挟まるなどの異常が発生したことなどが挙げられる。本実施形態では、このようなエスカレータ1の運転中に何らかの異常が検知されるのに応じてエスカレータ1を停止させる処理を「異常停止」とよぶ。
【0016】
異常停止制御の具体的な例を挙げると、例えば、欄干パネル4の周縁部に沿って移動する手摺りベルト6の引込み口であるベルト引込口8には、ベルト引込口8に利用者の手や異物が挟まった場合に、これらを検出する安全装置12であるベルト引込口安全装置(図示省略)が設けられており、安全回路14は、このベルト引込口安全装置にも接続されている。ベルト引込口安全装置に接続されている安全回路14は、ベルト引込口8に異物等が挟まったことをベルト引込口安全装置で検出した場合には、制御装置20に対して制御信号を送信することにより、制御装置20を介して異常停止制御を実行する。
【0017】
エスカレータ1の乗降口10には、エスカレータ1に乗り込む利用者が認識できる位置に運行表示器3(情報表示装置)が設けられている。図1に示す例では、運行表示器3は、ベルト引込口8の下方のデッキ5上に埋設されている。
【0018】
運行表示器3は、通常運転時には、乗り口ではエスカレータ1の運転方向の矢印マークを表示し、降り口では逆進入を防止するための進入禁止マークを表示し、利用者にエスカレータ1の運転状況を提示するよう構成される。
【0019】
そして、特に本実施形態では、エスカレータ1は、異常停止制御が実施された際に、復旧のために必要な異常停止に関する情報を、二次元コードを用いて管理者に提示することができるよう構成されている。次に図2〜4を参照して、エスカレータ1の異常停止時に当該異常停止に関する必要な情報をエスカレータ1の管理者に提示するための異常停止提示システム50の構成について説明する。図2は、図1のエスカレータ1の異常停止に関する情報を提示する異常停止提示システム50の概略構成を示す図であり、図3は、エスカレータ1の異常停止時における、図1,2中の運行表示器3の表示画面内容の一例を示す図であり、図4は、図2中の携帯端末30が二次元コード3aを読み取った後に、二次元コード3aに基づく情報が表示された携帯端末30の表示画面31の一例を示す図である。
【0020】
図2に示すように、異常停止提示システム50は、上記のエスカレータ1と、このエスカレータ1の管理者が携帯する携帯端末30と、このエスカレータ1の保守会社の保守会社サーバ40とを備えて構成される。
【0021】
エスカレータ1における異常停止提示システム50に関連する構成要素としては、図2に示すように、上記の安全装置12、安全回路14、運行表示器3及び制御装置20が挙げられる。
【0022】
本実施形態では、制御装置20は、エスカレータ1が異常停止した場合に、当該異常停止の原因や復旧方法など、異常停止に対応するために必要な情報を集約して、二次元コード3aに変換する機能を備えている。このような機能に関し、異常停止制御部22と、停止状態格納部24と、二次元コード変換部26とを備えて構成される。
【0023】
異常停止制御部22は、上述のようにエスカレータ1内の複数の安全装置12のいずれかによるエスカレータ1の安全度の低減に係る事象の検出に基づき、安全回路14から制御信号を受信するのに応じて、駆動装置(図示省略)を制御してエスカレータ1を停止させる異常停止制御を実行する。また、異常停止制御部22は、異常停止制御の実施に伴い、当該異常停止の原因を示す「停止原因情報」の種類を選択決定し、二次元コード変換部26に送信する。
【0024】
ここで、停止原因情報は、例えばエスカレータ1内で異常発生が検知された箇所や構成部品ごとに予め複数種を設定することができる。具体的な内容は、例えば図4に示すように、「上部手すりベルト引込口異常」などと設定することができる。異常停止制御部22は、例えばエスカレータ1内のどの安全装置12が異常を検知したか、どの安全回路14が異常停止制御の制御信号を送信したか、などの判断基準に基づいて、今回の異常停止に関する停止原因情報を選択決定することができる。
【0025】
停止状態格納部24は、上述の停止原因情報と、エスカレータ1の異常停止から復旧するための対応策を示す「復旧情報」とを関連付けて記憶している。復旧情報は、複数の停止原因情報のそれぞれの異常停止の原因ごとに個別に予め設定されている。
【0026】
ここで、復旧情報は、エスカレータ1の管理者が異常停止発生時に、現場で当該異常停止が簡単に解決できるものか否かを即時に判断できる程度の情報量とすることができる。例えば、図4に示すように、「上部手すりベルト引込口異常」という異常停止の原因に対しては、「上部手すりベルト引込口の異物を除去し、エスカレータを再起動してください」との内容を設定することができる。
【0027】
また、停止状態格納部24は、さらに、エスカレータ1の保守会社のサーバ40に保持されている、異常停止から復旧するためのより詳細な対応策を示す「詳細対応情報」を、インターネット経由で取得するためのアクセス先のURL(Uniform Resource Locators)を示す「URL情報」も併せて記憶している。詳細対応情報は、復旧情報と同様に停止原因情報ごとに予め個別に設定されるものであり、したがって、各詳細対応情報を保守会社サーバ40から取得するためのURL情報も、停止原因情報ごとに個別に設定されている。すなわち、停止状態格納部24には、停止原因情報、復旧情報、及びURL情報を一組として、複数組が記憶されている。
【0028】
二次元コード変換部26は、異常停止制御部22により異常停止制御が実施されたときに、今回の異常停止の原因を示す停止原因情報に基づいて、この停止原因情報に関連付けられる復旧情報及びURL情報を停止状態格納部24から取得し、これらの情報を集約して二次元コード3aに変換する。
【0029】
ここで、「二次元コード」とは、横方向にしか情報を持たない一次元コード(バーコード)に対し、水平方向と垂直方向に情報を持つ表示方式のコードのことを意味するものである。二次元コードは、バーコードに比べ、より多くの情報をコード化でき、また印字面積を小さくできる。二次元コードの形式としては、例えば、小さな正方形を上下左右に配列させたマトリックス式(例えばQRコード(登録商標)、SPコード、ベリコード、マキシコード、CPコード、DataMatrix、Code1、AztecCode、インタクタコード、カードe)や、1次元バーコードを上下に複数重ねたスタック式(例えばPDF417、Code49、Code16K、Codablock、SuperCode、Ultra Code、RSS Composite、AztecMesa)がある。
【0030】
運行表示器3は、図2,3に示すように、エスカレータ1が異常停止した場合に、当該異常停止の原因や復旧方法など、異常停止に対応するために必要な情報を二次元コード3aで表示するよう構成されている。ここで、本実施形態における「異常停止に対応するために必要な情報」とは、エスカレータ1の管理者が自身で即座に復旧作業を行うことが可能か否か、または異常停止の原因が保守会社へ連絡すべき状態か否かを判断するのに充分な情報を意味するものであり、上記の停止原因情報、復旧情報、及びURL情報を含むものとする。図3は、エスカレータ1の異常停止時における運行表示器3の表示画面内容の一例であるが、制御装置20の二次元コード変換部26が変換して作成された、停止原因情報、復旧情報、及びURL情報を含む二次元コード3aは、図3に示すように運行表示器3の表示画面の一部に表示される。また、運行表示器3は、図3に示すように、エスカレータ1の異常停止時に、二次元コード3aの他に、記号化され停止原因に関連付けられた文字列情報3bや図形情報を併せて表示してもよい。
【0031】
携帯端末30は、エスカレータ1の管理者により携帯される端末装置であり、カメラ機能などを利用して二次元コード3aを読み取ることが可能な二次元コード読取機能を備えるものである。携帯端末30は、図2に示すように運行表示器3の表示画面に表示される二次元コード3aを読み取ると、この読み取った二次元コード3aを文字情報に再変換して表示画面31に表示する。
【0032】
図4は、二次元コード読取時の携帯端末30の表示画面31の一例であるが、停止原因情報に基づく「停止状況詳細(上部手すりベルト引込口異常)」、復旧情報に基づく「復旧方法(上部手すりベルト引込口の異物を除去し、エスカレータを再起動してください)」、及びURL情報に基づく「詳細情報(http://保守会社情報アドレス)」の項目が表示されている。
【0033】
また、携帯端末30は、インターネット網Nを利用した通信機能を備えている。携帯端末30は、この通信機能を利用して、エスカレータ1から取得した上記のURL情報に基づき、インターネット網Nを介して保守会社サーバ40と通信接続し、保守会社サーバ40の対応情報格納部42から「詳細対応情報」を取得できるよう構成されている。なお、携帯端末30は、上記の二次元コード読取機能及び通信機能を備える携帯電話、PHS、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータなどを含むものである。
【0034】
保守会社サーバ40は、エスカレータ1の保守会社に設置されるサーバであり、上記の「詳細対応情報」を記憶した対応情報格納部42を備えている。保守会社サーバ40は、インターネット網Nを介して携帯端末30に対応情報格納部42に記憶される詳細対応情報を提供する。
【0035】
なお、エスカレータ1の制御装置20及び保守会社サーバ40は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータである。上述した制御装置20及び保守会社サーバ40の各機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0036】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)3を含む異常停止提示システム50の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)3を含む異常停止提示システム50における停止情報提示処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートに示す処理は、エスカレータ1に異常が検知されたときに実施される。
【0037】
まず、エスカレータ1において、制御装置20の異常停止制御部22により、エスカレータ1内のいずれかの安全回路14からの制御信号に応じて、エスカレータ1が異常停止され(S101)、今回の異常停止の原因を示す停止原因情報が選択決定され(S102)、二次元コード変換部26に送信される。
【0038】
次に、制御装置20の二次元コード変換部26により、異常停止制御部22から受信した停止原因情報を用いて、この停止原因情報と関連付けられている復旧情報及びURL情報が停止状態格納部24から読み出され(S103)、停止原因情報、復旧情報、URL情報を合わせて二次元コード3aに変換される(S104)。二次元コード変換部26は作成した二次元コード3aの情報を運行表示器3に送信する。
【0039】
そして、運行表示器3により、例えば図3に示すように、二次元コード3aが表示画面上に表示される(S105)。
【0040】
一方、携帯端末30により、運行表示器3に表示された二次元コード3aが、この携帯端末30を所持するエスカレータ1の管理者の操作によって自機内に読み取られたか否かが確認される(S106)。二次元コード3aが読み取られたことが確認されると、この二次元コード3aが文字情報に再変換され、例えば図4に示すように、表示画面31上に停止原因情報、復旧情報、URL情報に基づく情報が表示される(S107)。
【0041】
さらに、携帯端末30により、この携帯端末30を所持するエスカレータ1の管理者の操作によって、表示画面31上のURL情報が選択され、このURL情報に基づき保守会社サーバ40にアクセスする処理が実施されたか否かが確認される(S108)。アクセス処理が実施された場合には、保守会社サーバ40の対応情報格納部42から、停止原因情報に関連付けられている詳細対応情報が取得され、詳細対応情報の内容が携帯端末30の表示画面31に表示される(S109)。アクセス処理が実施されてない場合には、そのまま処理を終了する。
【0042】
このような処理の結果、携帯端末30の表示画面31上には、異常停止から復旧するために必要な情報(停止原因情報、復旧情報、URL情報、または詳細対応情報)が集約して提示されている状況となる。携帯端末30を所持するエスカレータ1の管理者は、これらの情報を参照して、管理者自身でエスカレータ1の復旧が可能か否か、または、自身での復旧は無理であり保守会社へ技術員の派遣を依頼する必要があるか否かを判断することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る運行表示器(情報表示装置)3の効果について説明する。
【0044】
運行表示器3は、無端状に連結された踏段2が周回移動するよう動作するエスカレータ1に設けられ、主として通常運転時に進行方向を示す矢印マークや進入禁止マークなどの図形情報や、簡単な文字情報を表示することを目的とするものである。また、運行表示器3は、エスカレータ1の乗降口10において、エスカレータ1に乗り込む利用者が認識できる位置に設置されるが、設置スペースの都合上サイズが限定される場合がある。このため、運行表示器3の表示画面は、上記の図形情報や文字情報を表示できる程度の小さいサイズに留められ、一度に提示できる情報量に制約がある。
【0045】
そこで、本実施形態に係る運行表示器3は、エスカレータ1の異常停止時に、異常停止に対応するために必要な情報を二次元コード3aで表示するよう構成されている。
【0046】
二次元コード3aは、文字情報をコード化して、小さい印字面積に表現することができるので、本実施形態の上記構成により、表示画面が小さく制約のある運行表示器3でも、文字情報に比べて多くの情報を伝達することが可能となる。エスカレータ1の管理者は、二次元コード3aの読取機能を備える携帯端末30などを利用すれば、運行表示器3に表示されている二次元コード3aを読み取る操作を行うだけで、自動的に二次元コード3aが文字情報に再変換されて携帯端末30の表示画面31に表示されるので、エスカレータ1の異常停止に対応するために必要な情報を簡易に取得することが可能となる。
【0047】
このように、本実施形態に係る運行表示器3によれば、エスカレータ1の異常停止時に、運行表示器3の表示画面のサイズの制約を考慮する必要なく、異常停止に対応するために必要な情報を迅速かつ簡易に提示することが可能となる。これにより、エスカレータ1の管理者は、この情報を参照して、管理者自身でエスカレータ1の復旧が可能か否か、または、自身での復旧は無理であり保守会社へ技術員の派遣を依頼する必要があるか否かを判断することが可能となり、この結果、復旧作業を効率よく実施でき、復旧までの時間の短縮が図れる。
【0048】
また、本実施形態に係る運行表示器3によれば、二次元コード3aに含まれる「異常停止に対応するために必要な情報」とは、エスカレータ1内(停止状態格納部24)に保持されている、異常停止の原因を示す「停止原因情報」と、異常停止から復旧するための対応策を示す「復旧情報」とを含む。
【0049】
この構成により、二次元コード3aの読取機能を備える携帯端末30を用いれば、エスカレータ1の異常停止の原因と、その対応策とをエスカレータ1の管理者に直接提示できるので、復旧作業の期間短縮を図れる。
【0050】
また、本実施形態に係る運行表示器3によれば、二次元コード3aに含まれる「異常停止に対応するために必要な情報」とは、エスカレータ1の保守会社のサーバ40に保持されている、異常停止から復旧するためのより詳細な対応策を示す「詳細対応情報」をインターネット経由で取得するための保守会社サーバ40への「URL情報」を含む。
【0051】
この構成により、上記の「復旧情報」の内容だけでは、復旧方法が明確とはならない状況でも、より詳細な対応策を示す詳細対応情報を提示できるので、エスカレータ1の異常停止に対する対応をより的確なものにできる。
【0052】
また、本実施形態に係る運行表示器3によれば、二次元コード3aは、異常停止に対応するために必要な情報と関連付けられた文字列情報3b(または図形情報)と共に運行表示器3の表示画面に表示される。
【0053】
この構成により、エスカレータ1の管理者は、二次元コード3aの代わりに、これらの文字列情報3b(または図形情報)に基づき、マニュアルを参照したり、保守会社へ問い合わせるなどの手順を踏むことで、関連付けられた異常停止に対応するために必要な情報を取得できるので、二次元コード3aの読取機能を備える携帯端末30を用いなくても異常停止に対応するために必要な情報を提示することができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、二次元コード3aとして表示される「異常停止に対応するために必要な情報」とは、停止原因情報、復旧情報、及びURL情報を含んで構成されていたが、この他に、過去の保守点検作業時に測定された測定情報を含んでもよい。このような測定情報は、例えば、エスカレータ1のブレーキスリップ測定時のスリップ距離等の測定データが挙げられる。また、携帯端末30が、二次元コード3aを読み取ってこの測定情報を取得した場合には、この測定情報を保守会社サーバ40に自動的に送信して保存する構成としてもよいし、この測定情報を基に定期保守点検の報告書を自動で作成する構成としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、二次元コード3aとして表示される「異常停止に対応するために必要な情報」とは、エスカレータ1が異常停止した際に、この最後の異常停止のみに関する情報を含むものであったが、当該エスカレータ1の過去の異常停止の履歴に関する情報も含む構成としてもよい。
【0056】
また、エスカレータ1の制御装置20の二次元コード変換部26が、二次元コード3aを暗号化して生成し、携帯端末30が、この暗号化された二次元コード3aを解読可能な暗号解読キーを保持する構成としてもよい。この構成により、暗号解読キーを持たない第三者が、運行表示器3に表示された二次元コード3aを読み取ることを防止することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、エスカレータ1が運行表示器3を備え、エスカレータ1の異常停止時に、異常停止に対応するために必要な情報を含む二次元コード3aを運行表示器3に表示させていたが、本実施形態の情報表示装置は、運行表示器3を備えないエスカレータにも適用することができる。この場合、二次元コード3aを表示するための情報表示装置を別途設置すればよい。
【0058】
また、上記実施形態では、制御装置20の異常停止制御部22がエスカレータ1を異常停止するのに応じて、今回の異常停止に対応するための情報を二次元コード3aで運行表示器3に表示していたが、二次元コード3aを表示する処理はエスカレータ1の異常停止時に限られない。例えば、エスカレータ1に何らかの異常が検知された場合に、エスカレータ1を運転可能ではあるが、異常検知された箇所の点検や交換などの作業が必要な状態となったときにも、このような状態の発生に応じて、この状態に対応するために必要な情報を二次元コード3aで運行表示器3に表示するよう構成することができる。なお、このような状態や、上記実施形態の異常停止状態を含めて、本発明では「異常状態」とよぶ。
【0059】
また、上記実施形態では、無端状に連結された踏段が周回移動するよう動作する乗客コンベアの一例としてエスカレータ1を挙げて説明したが、本実施形態に係る運行表示器3(情報表示装置)は、エスカレータ1に限らず、動く歩道など他のタイプの乗客コンベアにも同様に適用することができる。
【0060】
本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 エスカレータ(乗客コンベア)
2 踏段
3 運行表示器(情報表示装置)
3a 二次元コード
3b 文字列情報
30 携帯端末
40 保守会社サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結された踏段が周回移動するよう動作する乗客コンベアに設けられ、前記乗客コンベアの異常状態発生時に、異常状態に対応するために必要な情報を二次元コードで表示することを特徴とする乗客コンベアの情報表示装置。
【請求項2】
前記異常状態に対応するために必要な情報とは、前記乗客コンベア内に保持されている、前記異常状態の原因を示す情報と、前記異常状態から復旧するための対応策を示す情報とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の乗客コンベアの情報表示装置。
【請求項3】
前記異常状態に対応するために必要な情報とは、前記乗客コンベアの保守会社のサーバに保持されている、前記異常状態から復旧するためのより詳細な対応策を示す情報をインターネット経由で取得するための前記サーバのURL情報を含むことを特徴とする、請求項2に記載の乗客コンベアの情報表示装置。
【請求項4】
前記異常状態に対応するために必要な情報とは、過去の保守点検作業時に測定された情報を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乗客コンベアの情報表示装置。
【請求項5】
前記二次元コードは暗号化して生成され、暗号解読キーを保持し、かつ前記二次元コードの読取機能を備える携帯端末により解読可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの情報表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49571(P2013−49571A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189944(P2011−189944)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】