説明

乗客コンベアの音声案内システム

【課題】隣接する複数台の乗客コンベアに各々設置された音声案内装置から出力される音声案内を聞き取りやすくし、且つ、いずれかの乗客コンベアが起動していれば、他の乗客コンベアが停止していても常に音声案内を行うことができる乗客コンベアの音声案内システムを提供する。
【解決手段】複数台の乗客コンベア1に各々設置された複数の音声案内装置10のうち、最初に起動した音声案内装置10がマスタとなり、その後に起動した音声案内装置10はスレーブとなるようにする。そして、マスタとなる音声案内装置10からスレーブとなる音声案内装置10に対して音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送信し、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10から送信された同期信号に基づいて音声案内の出力タイミングを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアの音声案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道等の乗客コンベアは、例えば、ショッピングセンターや、駅、空港等の公共交通機関など、様々な場所に設置されている。このような乗客コンベアでは、利用者がより安全に利用できるように音声による注意放送を行ったり、また、平成14年に策定された「旅客施設における音による移動支援方策ガイドライン」に基づき、公共交通機関向けでは、音声による行き先案内放送を行ったりするなど、音声案内を出力するための音声案内装置を設けるものが多くなってきている。
【0003】
この種の音声案内装置は、一般的に、乗客コンベアと連動して起動して音声案内を開始し、乗客コンベアの停止と共に音声案内を停止させるようになっている。音声案内の内容は、例えば、4〜5秒程度の音声メッセージを2〜3秒程度の間隔を空けて繰り返し出力するというものであり、4,5種類の音声メッセージを順次出力するものも多い。
【0004】
ところで、近年、乗客コンベアは1台単独で設置されることが少なくなり、駅等では上り用、下り用の乗客コンベア2台が並列に設置され、また、ショッピングセンター等では、複数階を乗り継いで移動できるように、上り用、下り用の乗客コンベアが襷がけで交差するように設置されることが一般的である。このように、複数台の乗客コンベアを隣接設置する場合、各乗客コンベアで上述した音声案内を行えるようにするために、乗客コンベアごとに音声案内装置が設置される。しかしながら、乗客コンベアは1台ごとに起動させるため、乗客コンベアの起動タイミングのずれにより、各乗客コンベアに各々設けた音声案内装置により出力される音声案内にずれが生じ、聞き取りづらくなってしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を改善するため、例えば特許文献1においては、複数の音声案内装置のうちのいずれかを主装置(マスタ)、他のものを副装置(スレーブ)に設定し、マスタは自己の音声案内の出力タイミングに合わせた同期信号をスレーブに対して出力し、スレーブはマスタからの同期信号に同期して音声案内を出力するようにすることが提案されている。
【特許文献1】特開平9−240979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スイッチ等の切換手段の外部設定により複数の音声案内装置のうちのいずれかをマスタに設定する方式のため、外部から切換手段の再設定が行われない限り、マスタは常に固定された状態となる。このため、マスタとして設定された音声案内装置が搭載された乗客コンベアが起動されない間は、他の乗客コンベアでは音声案内装置が設けられているにも拘わらず音声案内が行えないという問題がある。また、マスタに設定されている音声案内装置が何らかの要因で機能できなくなった場合、マスタを再設定するための外部入力を行わない限り、他の音声案内装置が正常であっても音声案内が途絶えてしまうという問題がある。また、近年、利用者の有無に応じて起動、停止を自動制御する自動運転機能を備えた乗客コンベアが増加傾向にあり、マスタに設定している音声案内装置を搭載している乗客コンベアが自動運転により停止すると、他の乗客コンベアが運転している状況でも、音声案内が途絶えてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、以上のような従来の実情に鑑みて創案されたものであって、隣接する複数台の乗客コンベアに各々設置された音声案内装置から出力される音声案内を聞き取りやすくし、且つ、いずれかの乗客コンベアが起動していれば、他の乗客コンベアが停止していても常に音声案内を行うことができる乗客コンベアの音声案内システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る乗客コンベアの音声案内システムは、所定の音声案内を出力する音声案内装置を複数台の乗客コンベアごとに各々設置して、これら複数の音声案内装置を相互に通信可能に接続してなるものであり、これら複数の音声案内装置のうち、最初に起動した音声案内装置をマスタとし、その後起動した音声案内装置をスレーブとして、マスタとなる音声案内装置からスレーブとなる音声案内装置に対して音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送信し、スレーブとなる音声案内装置は、マスタとなる音声案内装置から送信された同期信号に基づいて音声案内の出力タイミングを制御するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る乗客コンベアの音声案内システムによれば、複数台の乗客コンベアに各々設置された音声案内装置から出力する音声案内を、マスタからスレーブに送信する同期信号によって同期させるようにしているので、音声案内を聞き取りやすくすることができるとともに、複数の音声案内装置のうちで最初に起動した音声案内装置がマスタとして機能するようにしているので、外部入力などによらず常にいずれかの音声案内装置をマスタとして機能させることができ、いずれかの乗客コンベアが起動していれば、他の乗客コンベアが停止していても常に音声案内を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の音声案内システムは、隣接設置された複数台の乗客コンベアのそれぞれに所定の音声案内を出力する音声案内装置を設置し、これら各乗客コンベアごとに設置された複数の音声案内装置を相互に通信可能に接続してなるものである。なお、乗客コンベアとしては、多数のステップが連続して階段状に上下に移動することで乗客を上下階に亘って搬送するエスカレータや、多数のステップが連続して水平に移動することで乗客を搬送する動く歩道(オートロード)が挙げられるが、本発明の音声案内システムは、複数台のエスカレータが隣接設置された環境であっても、複数台のオートロードが隣接設置された環境であっても、さらにはエスカレータとオートロードとが混在して設置された環境であっても有効に適用可能である。
【0012】
図1は、本発明を適用した第1の実施形態の音声案内システムを示すシステム構成図である。1号機1a、2号機1b、・・・、n号機1cの複数台の乗客コンベア(以下、これらを総称する場合は単に乗客コンベア1という。)は、それぞれ、モータ2の駆動により動作するものであり、モータ2への給電を制御する乗客コンベア制御部3によって、起動や停止が制御される。各乗客コンベア1には、所定の音声案内を出力するための音声案内装置10a,10b,10c(以下、これらを総称する場合は単に音声案内装置10という。)がそれぞれ設置されており、これら各音声案内装置10からの音声信号が音声信号増幅器4により増幅されて、各乗客コンベア1の欄干などに設けられたスピーカ5から音声案内として出力されるようになっている。
【0013】
各音声案内装置10には、乗客コンベア1の起動・停止を示す起動信号が乗客コンベア制御部3から制御線6を介して供給されており、乗客コンベア1と連動して、各音声案内装置10が起動・停止する構成となっている。また、これら複数の音声案内装置10は、通信線7を介して相互に通信可能に接続されており、各音声案内装置10による音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送受信することが可能とされている。そして、特に本発明を適用した音声案内システムにおいては、これら複数の音声案内装置10のうち、最初に起動した音声案内装置10が主装置(マスタ)となり、その後起動した音声案内装置10は副装置(スレーブ)となるようにして、マスタとなる音声案内装置10からスレーブとなる音声案内装置10に対して音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送信し、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10から送信された同期信号に基づいて音声案内の出力タイミングを制御するようにしている。
【0014】
各乗客コンベア1に各々設置された音声案内装置10は、互いに共通の構成とされており、マイクロコンピュータなどからなる制御部11を中心に、制御線6や通信線7を介した信号の入出力を司る入出力インターフェース部12、各種設定情報を記憶する設定情報記憶部13、音声案内のメッセージデータを記憶する音声データ記憶部14、制御部11の制御のもとで音声案内を個別の音声メッセージごとに音声信号として出力する音声信号出力部15、設定情報記憶部13に記憶されている設定情報を外部入力により変更するための設定入力部16を備えて構成される。
【0015】
音声案内装置10は、乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が起動したことを示す起動信号が供給されると、この乗客コンベア制御部3からの起動信号を入出力インターフェース部12を介して入力し、乗客コンベア1と連動して起動して、制御部11による制御動作を開始する。制御部11は、例えば、CPUなどの演算装置により所定の制御プログラムに従って以下のような各種の処理を実行する。すなわち、制御部11は、制御動作を開始すると、まず、自装置がマスタであるのか、或いはスレーブであるのかを判定する処理を行う(判定手段)。具体的には、制御部11は、起動後の所定時間の間、他の音声案内装置10からの同期信号を受信するか否かを監視して、起動後の所定時間の間に他の音声案内装置10からの同期信号を受信しない場合は、自装置がマスタであると判定する。一方、制御部11は、起動後の所定時間の間に他の音声案内装置10からの同期信号を受信した場合は、自装置がスレーブであると判定する。
【0016】
そして、制御部11は、自装置がマスタであると判定した場合は、自装置で設定したタイミングで音声案内の出力制御を行うとともに、この音声案内の出力タイミングに応じた同期信号を他の音声案内装置10に対して送信する制御を行い、自装置がスレーブであると判定した場合は、他の音声案内装置10から送信される同期信号に基づいて、自装置での音声案内の出力制御を行う(音声出力制御手段)。
【0017】
すなわち、制御部11は、自装置がマスタであると判定した場合は、設定情報記憶部13に記憶されているインターバル時間や音声メッセージのメッセージ番号などの各種設定情報に基づいて、音声データ記憶部14に記憶されている音声メッセージの音声信号がメッセージ番号順に所定のインターバル時間をおいて音声信号出力部15から順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。また、制御部11は、自装置がマスタであると判定した場合は、自装置で制御している音声案内の出力タイミングに合わせた同期信号を生成し、この生成した同期信号を入出力インターフェース部12から通信線7を介して他の音声案内装置10に対して送信する。
【0018】
同期信号は、例えば、複数の音声メッセージを所定のインターバル時間をおいてメッセージ番号順に順次出力させる出力指令情報を含む信号とされる。具体的には、例えば、音声メッセージの開始タイミングでLoレベルからHiレベルに変化し、音声メッセージの終了タイミングでHiレベルからLoレベルに変化してインターバル時間ではLoレベルを維持し、次の音声メッセージの開始タイミングで再度LoレベルからHiレベルに変化するといった電圧変化をベースとし、個々の音声メッセージごとにそのメッセージ番号を識別できる情報を重畳して変調した信号とされる。なお、音声メッセージの種類が1種類の場合は、メッセージ番号を識別する情報は重畳されず、単純に電圧レベルが変化する信号とされる。
【0019】
一方、制御部11は、自装置がスレーブであると判定した場合には、他の音声案内装置10から通信線7経由で送信されて入出力インターフェース部12を介して入力された同期信号に基づいて、音声データ記憶部14に記憶されている音声メッセージの音声信号が、マスタとなる音声案内装置10と同期したタイミングで音声信号出力部15から順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。これにより、複数の乗客コンベア1に設置された全ての音声案内装置10において、音声案内を互いに同期させながら出力することが可能となる。なお、同期信号の生成及び送受信の処理に伴う遅延により、厳密にはマスタとなる音声案内装置10とスレーブとなる音声案内装置10とで音声案内の出力タイミングに若干のずれが生じるが、このずれは一般に数msec程度の微小なずれであり、十分に許容される範囲である。
【0020】
また、制御部11は、自装置がスレーブであると判定した場合には、上述したスレーブとしての動作制御を行っている間、他の音声案内装置10からの同期信号の途絶を監視する(同期信号途絶監視手段)。そして、自装置の優先順位に応じた監視時間の間、他の音声案内装置10からの同期信号が途絶していると判定すると、自装置がスレーブからマスタに切り換わったと判定して(判定手段)、その後は、上述したマスタとしての動作制御を行う。したがって、マスタとして機能していた音声案内装置10が何らかの要因で機能を停止させた場合でも、他の音声案内装置10がマスタに切り換わることでマスタの動作制御が継続されるので、音声案内を途切れさせずに継続させることができる。
【0021】
ここで、各音声案内装置10の優先順位は、各音声案内装置10ごとに予め設定されて設定情報記憶部13に記憶されていてもよいが、マスタとなる音声案内装置10からの順位情報に基づいて、各音声案内装置10において自動設定することも可能である。優先順位を自動設定する場合には、まず、最初に起動してマスタとなった音声案内装置10が、その後の他の音声案内装置10の起動を監視して、起動順に応じた順位情報を、起動した他の音声案内装置10に対してそれぞれ送信する。そして、スレーブとなる他の音声案内装置10は、最初に起動してマスタとなった音声案内装置10から送信された順位情報を受信して、この順位情報に基づいて自装置の優先順位を認識し、その優先順位を設定情報記憶部13に記憶するようにすればよい(優先順位設定手段)。
【0022】
なお、設定情報記憶部13に記憶されているインターバル時間や音声メッセージのメッセージ番号などの設定情報は、音声案内の出力形態を決定する情報であるので、音声案内の出力形態を自由にカスタマイズできるようにするために、例えば乗客コンベア設置現場の管理者などの入力操作でこれらの情報を適宜変更できるようにすることが望まれる。そのため、各音声案内装置10には設定入力部16が設けられており、この設定入力部16を用いて乗客コンベア設置現場の管理者などが外部入力を行えば、設定情報記憶部13に記憶されているインターバル時間や音声メッセージのメッセージ番号などの設定情報が書き換えられるようにしている(設定変更手段)。
【0023】
図2は、音声案内装置10の制御部11による処理手順を示すフローチャートである。この図2のフローチャートで示す制御部11の処理は、乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が起動したことを示す起動信号が供給され、音声案内装置10が乗客コンベア1と連動して起動することで開始される。
【0024】
音声案内装置10が起動すると、制御部11は、まず、起動後の所定時間T1の間、他の音声案内装置10からの同期信号を入出力インターフェース部12で受信しているか否かを監視する(ステップS1、ステップS2)。ここで、同期信号を上述したように音声メッセージの出力期間でHiレベル、インターバル時間でLoレベルとなる信号とした場合、所定時間T1をインターバル時間よりも長い時間に設定しておき、所定時間T1の間にHiレベルを検知したときに同期信号の受信有りと判定し、Hiレベルを検知することなく所定時間T1が経過した場合は同期信号の受信無しと判定すればよい。
【0025】
制御部11は、起動後の所定時間T1の間に他の音声案内装置10からの同期信号を受信しない場合(ステップS2でYESの判定)は、ステップS3において自装置をマスタであると認識し、ステップS4において、設定情報記憶部13に記憶されているインターバル時間や音声メッセージのメッセージ番号などの各種設定情報に基づいて、音声データ記憶部14に記憶されている音声メッセージの音声信号がメッセージ番号順に所定のインターバル時間をおいて音声信号出力部15から順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。また、制御部11は、自装置で制御している音声案内の出力タイミングに合わせた同期信号を生成し、この生成した同期信号を入出力インターフェース部12から通信線7を介して他の音声案内装置10に対して随時送信する。
【0026】
そして、制御部11は、乗客コンベア1が停止して乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されるまで、ステップS4の処理を継続し、乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されると(ステップS5でYESの判定)、一連の処理を終了する。
【0027】
一方、制御部11は、起動後の所定時間T1の間に他の音声案内装置10からの同期信号を受信した場合(ステップS1でYESの判定)は、ステップS6において自装置をスレーブであると認識し、ステップS7において、マスタとして機能している他の音声案内装置10から送信された同期信号に基づいて、音声データ記憶部14に記憶されている音声メッセージの音声信号が、他の音声案内装置10と同期したタイミングで音声信号出力部15から順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。また、制御部11は、ステップS8において、マスタとして機能している他の音声案内装置10からの同期信号の途絶を監視し、自装置の優先順位に応じて決定された所定の監視時間T2に亘って他の音声案内装置10からの同期信号が途絶していることを検知した場合(ステップS8でYESの判定)、ステップS3に進んで自装置がスレーブからマスタに切り換わったと判定し、その後は、ステップS4のマスタとしての処理動作を行う。
【0028】
マスタとして機能している他の音声案内装置10からの同期信号が途絶していない場合は、制御部11は、乗客コンベア1が停止して乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されるまで、ステップS7及びステップS8の処理を継続し、乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されると(ステップS9でYESの判定)、一連の処理を終了する。
【0029】
次に、図1に示した音声案内システムにおいて、1号機1aに設置された音声案内装置10aが最初に起動し、その後、2号機1bに設置された音声案内装置10bが起動し、最後に、n号機1cに設置された音声案内装置10cが起動した場合を例に挙げ、音声案内システム全体の動作概要を、図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは全ての音声案内装置10a〜10cで同じ内容の音声案内を出力することを前提としている。
【0030】
まず、1号機1aの起動に連動して音声案内装置10aが起動する。このとき、音声案内装置10bや音声案内装置10cは未だ起動しておらず、音声案内装置10aが起動してから所定時間T1の間に音声案内装置10bや音声案内装置10cから同期信号が送信されることはないので、音声案内装置10aがマスタとなる。
【0031】
マスタとなった音声案内装置10aは、自装置に記憶されているインターバル時間やメッセージ番号などの設定情報に基づいて、個々の音声メッセージが所定のインターバル時間をおいて順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御するとともに、自装置の音声案内の出力タイミングに応じた同期信号、すなわち、個々の音声メッセージを所定のインターバル時間をおいて順次出力させる出力指令情報を含む同期信号を、音声案内装置10bや音声案内装置10cに対して送信する。
【0032】
その後、2号機1bの起動に連動して音声案内装置10bが起動すると、すでに音声案内装置10aが起動していて同期信号を送信しているので、音声案内装置10bは、起動後の所定時間T1の間に音声案内装置10aから送信されている同期信号を受信してスレーブとなる。スレーブとなった音声案内装置10bは、音声案内装置10aからの同期信号に基づいて、複数の音声メッセージが所定のインターバル時間をおいて順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。これにより、音声案内装置10bによる音声案内が音声案内装置10aによる音声案内と同期して出力されることになる。
【0033】
その後、さらにn号機1cの起動に連動して音声案内装置10cが起動すると、すでに音声案内装置10aが起動していて同期信号を送信しているので、音声案内装置10cも起動後の所定時間T1の間に音声案内装置10aから送信されている同期信号を受信してスレーブとなる。スレーブとなった音声案内装置10cは、音声案内装置10bと同様に、音声案内装置10aからの同期信号に基づいて、複数の音声メッセージが所定のインターバル時間をおいて順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。これにより、音声案内装置10cによる音声案内が、音声案内装置10aや音声案内装置10bによる音声案内と同期して出力されることになる。
【0034】
次に、最初に起動してマスタとなった音声案内装置10aが停止した場合の動作概要を、図4のタイミングチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは音声案内装置10bの優先順位が音声案内装置10cよりも高いものとして説明する。
【0035】
最初に起動してマスタとなった音声案内装置10aが停止すると、この音声案内装置10aからの音声案内が終了するとともに、この音声案内装置10aからの同期信号の送信も停止する。この音声案内装置10aからの同期信号の途絶は、スレーブとなった音声案内装置10b及び音声案内装置10cにより監視されており、音声案内装置10b及び音声案内装置10cは、それぞれの優先順位に応じた監視時間T2に亘って同期信号が途絶しているかを判定する。ここで、監視時間T2は優先順位が高いほど短い時間に設定され、音声案内装置10bの監視時間T2aの方が、音声案内装置10cの監視時間T2bよりも短い時間に設定されている。
【0036】
音声案内装置10bは、監視時間T2aに亘って同期信号が途絶していることを検知すると、スレーブからマスタに切り換わって、自装置に記憶されているインターバル時間やメッセージ番号などの設定情報に基づいて、個々の音声メッセージが所定のインターバル時間をおいて順次出力されるように音声案内の出力タイミングを制御するとともに、自装置の音声案内の出力タイミングに応じた同期信号を送信する。これにより、最初に起動してマスタとなった音声案内装置10aが停止した後も、音声案内装置10bからの音声案内の出力が継続されることになる。
【0037】
音声案内装置10cは、音声案内装置10aからの同期信号の送信が停止した後、監視時間T2bが経過する前に音声案内装置10bからの同期信号を受信するので、スレーブのままとなる。音声案内装置10bからの同期信号を受信した音声案内装置10cは、その後は、この音声案内装置10bからの同期信号に基づいて、複数の音声メッセージが所定のインターバル時間をおいて順次出力されるように、音声案内の出力タイミングを制御する。これにより、音声案内装置10aが停止した後は、音声案内装置10cによる音声案内の出力が、音声案内装置10bによる音声案内と同期して継続されることになる。
【0038】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の音声案内システムは、複数台の乗客コンベア1(1a、1b、・・・1c)に各々設置された複数の音声案内装置10(10a、10b・・・10c)のうち、最初に起動した音声案内装置10がマスタとなり、その後に起動した音声案内装置10はスレーブとなるようにしている。そして、マスタとなる音声案内装置10からスレーブとなる音声案内装置10に対して音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送信し、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10から送信された同期信号に基づいて音声案内の出力タイミングを制御するようにしている。したがって、本実施形態の音声案内システムによれば、各乗客コンベア1に各々設置された複数の音声案内装置10からの音声案内の出力タイミングを同期させて、音声案内を聞き取りやすくすることができるとともに、外部入力などでマスタとなる音声案内装置10を予め設定した場合の問題、すなわち、マスタとして設定した音声案内装置10が起動しない限り他の音声案内装置10での音声案内を行えないといった問題を有効に解消することができる。
【0039】
また、本実施形態の音声案内システムによれば、最初に起動してマスタとなった音声案内装置10が動作を停止した場合には、他の音声案内装置10が自動的にスレーブからマスタに切り換わって、その後はこの音声案内装置10から同期信号が送信されるようにしているので、外部入力などによる設定によらず、常にいずれかの音声案内装置10をマスタとして機能させることができ、いずれかの乗客コンベア1が起動していれば、他の乗客コンベア1が停止していても常に音声案内を継続して行うことができる。
【0040】
また、本実施形態の音声案内システムによれば、音声案内装置10が各乗客コンベア1ごとに設置されており、複数の乗客コンベア1間の渡り配線は通信線7のみとなるため、設計、製造、据付時における煩雑な手数を低減する効果が期待できる。
【0041】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の音声案内システムは、複数の音声案内装置10間で音声案内として出力する音声メッセージの内容が異なる場合の例である。音声案内システム全体の構成や各音声案内装置10の基本構成は上述した第1の実施形態と同様であるが、本実施形態では、音声案内装置10の制御部11による制御内容が、第1の実施形態とは若干異なっている。
【0042】
本実施形態の音声案内システムでは、各音声案内装置10が、自装置で出力する音声メッセージに付与されたメッセージ番号だけでなく、自装置では出力しないが他の音声案内装置10が出力する音声メッセージに付与されたメッセージ番号についても、設定情報として設定情報記憶部13に記憶している。なお、各音声メッセージのメッセージ番号のうちで、自装置で出力する音声メッセージのメッセージ番号は識別できるように記憶している。
【0043】
また、各音声案内装置10の制御部11は、自装置がマスタであると判定した場合は、自装置が出力しない音声メッセージも含めて全ての音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を生成して、この同期信号を他の音声案内装置10に対して送信するようにしている。また、自装置がスレーブであると判定した場合は、マスタとして機能する他の音声案内装置10からの同期信号に基づいて、自装置で出力すべき音声メッセージのメッセージ番号が指定されているタイミングで当該音声メッセージを出力させるとともに、個々の音声メッセージの出力中に当該音声メッセージを出力していることを示す音声メッセージ出力中信号を、マスタとして機能している他の音声案内装置10に対して送信するようにしている。なお、自装置がマスタであるかスレーブであるかの判定手法は、上述した第1の実施形態と同様であり、最初に起動した音声案内装置10がマスタとなるようにしている。
【0044】
図5は、自装置がマスタであると判定した場合における音声案内装置10の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、ここではメッセージ番号(1)〜(3)の音声メッセージを順次出力させるものとする。
【0045】
音声案内装置10の制御部11は、自装置がマスタであると判定すると、まず、ステップS11において、メッセージ番号(1)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を生成して、他の音声案内装置10に対して送信する。また、これと同時に、メッセージ番号(1)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断し(ステップS12)、メッセージ番号(1)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS13において、当該音声メッセージを出力させる。
【0046】
その後、制御部11は、他の音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号を入出力インターフェース部12で受信しているか否かを監視し(ステップS14)、音声メッセージ出力中信号の受信が途切れてから所定のインターバル時間が経過した後、すなわち他の全ての音声案内装置10においてメッセージ番号(1)の音声メッセージの出力が終了してから所定のインターバル時間が経過した段階(ステップS15でYESの判定)で、ステップS16に移行する。
【0047】
次に、制御部11は、ステップS16において、メッセージ番号(2)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を生成して、他の音声案内装置10に対して送信する。また、これと同時に、メッセージ番号(2)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断し(ステップS17)、メッセージ番号(2)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS18において、当該音声メッセージを出力させる。
【0048】
その後、制御部11は、他の音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号を入出力インターフェース部12で受信しているか否かを監視し(ステップS19)、音声メッセージ出力中信号の受信が途切れてから所定のインターバル時間が経過した後、すなわち他の全ての音声案内装置10においてメッセージ番号(2)の音声メッセージの出力が終了してから所定のインターバル時間が経過した段階(ステップS20でYESの判定)で、ステップS21に移行する。
【0049】
次に、制御部11は、ステップS21において、メッセージ番号(3)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を生成して、他の音声案内装置10に対して送信する。また、これと同時に、メッセージ番号(3)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断し(ステップS22)、メッセージ番号(3)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS23において、当該音声メッセージを出力させる。
【0050】
その後、制御部11は、他の音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号を入出力インターフェース部12で受信しているか否かを監視し(ステップS24)、音声メッセージ出力中信号の受信が途切れてから所定のインターバル時間が経過した後、すなわち他の全ての音声案内装置10においてメッセージ番号(3)の音声メッセージの出力が終了してから所定のインターバル時間が経過した段階(ステップS25でYESの判定)で、ステップS11にリターンする。
【0051】
制御部11は、自装置がマスタであると判定した場合、乗客コンベア1が停止して乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されるまで、以上のステップS11からステップS25の処理を繰り返し、乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されると、一連の処理を終了する。
【0052】
図6は、自装置がスレーブであると判定した場合における音声案内装置10の制御部11による処理手順の一例を示すフローチャートであり、図5のフローチャートに対応するものである。
【0053】
音声案内装置10の制御部11は、自装置がスレーブであると判定すると、まず、ステップS31において、メッセージ番号(1)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、ステップS32において、メッセージ番号(1)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断する。そして、メッセージ番号(1)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS33において、当該音声メッセージを出力させるとともに、音声メッセージを出力中であることを示す音声メッセージ出力中信号を、マスタとなる音声案内装置10に対して送信する。そして、メッセージ番号(1)の音声メッセージの出力が終了すると(ステップS34でYESの判定)、音声メッセージ出力中信号の送信を停止する。
【0054】
次に、制御部11は、ステップS35において、メッセージ番号(2)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、ステップS36において、メッセージ番号(2)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断する。そして、メッセージ番号(2)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS37において、当該音声メッセージを出力させるとともに、音声メッセージを出力中であることを示す音声メッセージ出力中信号を、マスタとなる音声案内装置10に対して送信する。そして、メッセージ番号(2)の音声メッセージの出力が終了すると(ステップS38でYESの判定)、音声メッセージ出力中信号の送信を停止する。
【0055】
次に、制御部11は、ステップS39において、メッセージ番号(3)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、ステップS40において、メッセージ番号(3)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージかどうかを判断する。そして、メッセージ番号(3)の音声メッセージが自装置で出力する音声メッセージであれば、ステップS41において、当該音声メッセージを出力させるとともに、音声メッセージを出力中であることを示す音声メッセージ出力中信号を、マスタとなる音声案内装置10に対して送信する。そして、メッセージ番号(3)の音声メッセージの出力が終了すると(ステップS42でYESの判定)、音声メッセージ出力中信号の送信を停止して、ステップS31にリターンする。
【0056】
制御部11は、自装置がスレーブであると判定した場合、乗客コンベア1が停止して乗客コンベア制御部3から乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されるまで、以上のステップS31からステップS42の処理を繰り返し、乗客コンベア1が停止したことを示す起動信号が供給されると、一連の処理を終了する。
【0057】
ここで、音声案内として出力する音声メッセージとして、メッセージ番号(1)〜(4)の4種類の音声メッセージがあり、マスタとなる音声案内装置10ではメッセージ番号(1)、(2)、(4)の音声メッセージを出力し、スレーブとなる音声案内装置10ではメッセージ番号(1)、(3)、(4)の音声メッセージを出力する場合を例に挙げて、本実施形態の音声案内システムにおいて特徴的な音声案内装置10の動作の一例について、図7のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0058】
マスタとなる音声案内装置10は、まず、メッセージ番号(1)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を送信するとともに、自装置がメッセージ番号(1)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、メッセージ番号(1)の音声メッセージを出力する。一方、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10からのメッセージ番号(1)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、自装置がメッセージ番号(1)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、同期信号に合わせてメッセージ番号(1)の音声メッセージを出力するとともに、メッセージ番号(1)の音声メッセージの出力が終了するまで、音声メッセージ出力中信号を送信する。
【0059】
次に、マスタとなる音声案内装置10は、スレーブとなる音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号の送信が停止した後、所定のインターバル時間が経過したタイミングで、メッセージ番号(2)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を送信するとともに、自装置がメッセージ番号(2)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、メッセージ番号(2)の音声メッセージを出力する。一方、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10からのメッセージ番号(2)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信すると、自装置がメッセージ番号(2)の音声メッセージを出力しないことを確認し、次の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号が送信されるまで待機する。
【0060】
次に、マスタとなる音声案内装置10は、メッセージ番号(2)の音声メッセージの出力が終了した後、所定のインターバル時間が経過したタイミングで、メッセージ番号(3)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を送信するとともに、自装置がメッセージ番号(3)の音声メッセージを出力しないことを確認する。一方、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10からのメッセージ番号(3)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、自装置がメッセージ番号(3)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、同期信号に合わせてメッセージ番号(3)の音声メッセージを出力するとともに、メッセージ番号(3)の音声メッセージの出力が終了するまで、音声メッセージ出力中信号を送信する。
【0061】
次に、マスタとなる音声案内装置10は、スレーブとなる音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号の送信が停止した後、所定のインターバル時間が経過したタイミングで、メッセージ番号(4)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を送信するとともに、自装置がメッセージ番号(4)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、メッセージ番号(4)の音声メッセージを出力する。一方、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10からのメッセージ番号(4)の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を受信し、自装置がメッセージ番号(4)の音声メッセージを出力すべきことを確認して、同期信号に合わせてメッセージ番号(4)の音声メッセージを出力するとともに、メッセージ番号(4)の音声メッセージの出力が終了するまで、音声メッセージ出力中信号を送信する。
【0062】
本実施形態の音声案内システムでは、マスタとなる音声案内装置10とスレーブとなる音声案内装置10とが以上の動作を繰り返すことで、複数の音声案内装置10間で音声案内として出力する音声メッセージの内容が異なる場合であっても、各音声案内装置10が個々の音声メッセージごとにタイミングを同期させながら音声案内を出力することが可能となる。
【0063】
なお、以上の例では、内容の異なる複数の音声メッセージごとにそれぞれ異なるメッセージ番号を付与しているが、例えば、上りエスカレータと下りエスカレータとが並列設置された環境で、上りエスカレータの下階側のスピーカ5から出力する行き先案内と、下りエスカレータの上階側のスピーカ5から出力する行き先案内など、同時に出力しても支障がないと考えられる音声メッセージについては同一のメッセージ番号を付与し、これらの音声メッセージを同時に出力させるようにしてもよい。
【0064】
図8は、マスタとなる音声案内装置10とスレーブとなる音声案内装置10とがともにメッセージ番号(1)〜(3)の音声メッセージを出力し、マスタとなる音声案内装置10が出力するメッセージ番号(2)の音声メッセージの内容と、スレーブとなる音声案内装置10が出力するメッセージ番号(2)の音声メッセージの内容とが異なっている場合の動作を示すタイミングチャートである。この図8に示す例のように、メッセージ番号(2)の音声メッセージの内容がマスタとなる音声案内装置10とスレーブとなる音声案内装置10とで異なった内容であり、例えば、スレーブとなる音声案内装置10が出力する音声メッセージが、マスタとなる音声案内装置10が出力する音声メッセージよりも長い場合であっても、マスタとなる音声案内装置10が、スレーブとなる音声案内装置10からの音声メッセージ出力中信号の送信停止後、所定のインターバル時間が経過してから次の音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を送信することにより、メッセージ番号(1)、(3)の音声メッセージの出力タイミングにずれを生じさせることなく、メッセージ番号(2)が付与された異なる内容の音声メッセージを同時に出力させることが可能となる。
【0065】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の音声案内システムによれば、マスタとなる音声案内装置10が自装置では出力しない音声メッセージも含めて全ての音声メッセージの出力指令情報を含む同期信号を他の音声案内装置10に対して送信し、スレーブとなる音声案内装置10は、マスタとなる音声案内装置10からの同期信号に基づいて、自装置で出力すべき音声メッセージのメッセージ番号が指定されているタイミングで当該音声メッセージを出力させ、音声メッセージを出力している間は音声メッセージ出力中信号を送信するようにしているので、複数の音声案内装置10間で音声案内として出力する音声メッセージの内容が異なる場合であっても、各音声案内装置10が個々の音声メッセージごとにタイミングを同期させながら音声案内を出力することができる。
【0066】
なお、以上説明した第1の実施形態及び第2の実施形態は、本発明の一適用例を具体的に説明したものであり、本発明の技術的範囲は、以上の各実施形態の説明で開示した技術事項に限定されるものではなく、以上の開示内容をもとに一般的な技術常識も鑑みて当然に導かれる変形例、応用例も含まれるものである。例えば、以上説明した各実施形態では、複数の音声案内装置10を通信線7を介して相互に通信可能に接続するようにしているが、各音声案内装置10に光や電波を用いた無線通信を行う無線通信機を設け、各音声案内装置10間の同期信号や音声メッセージ信号などの送受信を無線通信により行うようにしてもよい。また、乗客コンベア制御部3にも無線通信機を設けるようにすれば、エスカレータ1の起動・停止を示す起動信号の送受信も無線通信により行うことができる。このように無線通信で信号の送受信を行うようにした場合には、配線数をさらに削減して、設計、製造、据付時における煩雑な手数をさらに低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を適用した音声案内システムの全体構成を示すシステム構成図。
【図2】音声案内装置の制御部による処理手順を示すフローチャート。
【図3】音声案内システム全体の動作概要を説明するタイミングチャート。
【図4】最初に起動してマスタとなった音声案内装置が停止した場合の動作概要を説明するタイミングチャート。
【図5】第2の実施形態の音声案内システムにおいて、マスタとなる音声案内装置の制御部による処理手順の一例を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態の音声案内システムにおいて、スレーブとなる音声案内装置の制御部による処理手順の一例を示すフローチャート。
【図7】第2の実施形態の音声案内システムにおける音声案内装置の動作の一例を説明するタイミングチャート。
【図8】第2の実施形態の音声案内システムにおける音声案内装置の動作の他の例を説明するタイミングチャート。
【符号の説明】
【0068】
1 乗客コンベア
4 音声信号増幅器
5 スピーカ
10 音声案内装置
11 制御部(判定手段、音声出力制御手段、同期信号途絶監視手段、優先順位設定手段)
12 入出力インターフェース部
13 設定情報記憶部(記憶手段)
14 音声データ記憶部
15 音声信号出力部
16 設定入力部(設定変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の音声案内を出力する音声案内装置を複数台の乗客コンベアごとに各々設置して、これら複数の音声案内装置を相互に通信可能に接続した乗客コンベアの音声案内システムであって、
前記複数の音声案内装置のうち、最初に起動した音声案内装置をマスタとし、その後起動した音声案内装置をスレーブとして、マスタとなる音声案内装置からスレーブとなる音声案内装置に対して前記音声案内の出力タイミングを同期させる同期信号を送信し、スレーブとなる音声案内装置が、マスタとなる音声案内装置から送信された前記同期信号に基づいて、前記音声案内の出力タイミングを制御することを特徴とする乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項2】
前記複数の音声案内装置のそれぞれが、
起動後の所定時間の間、他の音声案内装置からの同期信号を受信するか否かを監視して、起動後の所定時間の間に他の音声案内装置からの同期信号を受信しない場合は自装置がマスタであると判定し、起動後の所定時間の間に他の音声案内装置からの同期信号を受信した場合は自装置がスレーブであると判定する判定手段と、
自装置がマスタであると判定した場合は、前記音声案内を所定のタイミングで出力するとともに当該音声案内の出力タイミングに応じた同期信号を他の音声案内装置に対して送信し、自装置がスレーブであると判定した場合は、他の音声案内装置から送信される同期信号に基づいて前記音声案内の出力タイミングを制御する音声出力制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項3】
前記複数の音声案内装置のそれぞれが、
他の音声案内装置からの同期信号の途絶を監視する同期信号途絶監視手段をさらに備え、
前記判定手段は、自装置をスレーブであると判定した後に、設定された優先順位に応じた監視時間の間、他の音声案内装置からの同期信号の途絶が継続していることを検知した場合に、自装置がスレーブからマスタに切り換わったと判定することを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項4】
前記複数の音声案内装置のそれぞれが、
自装置がマスタであると判定した場合は、他の音声案内装置の起動を監視して起動順に応じた順位情報を他の音声案内装置に送信し、自装置がスレーブであると判定した場合は、他の音声案内装置から送信される順位情報に基づいて前記優先順位を設定する優先順位設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項5】
前記音声案内はメッセージ番号が付与された複数の音声メッセージからなり、
前記同期信号は、前記複数の音声メッセージを所定のインターバル時間をおいて前記メッセージ番号順に順次出力させる出力指令情報を含むものであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項6】
前記音声出力制御手段は、自装置がマスタであると判定した場合は、自装置で出力しないが他の音声案内装置で出力される音声メッセージを含めた全ての音声メッセージを順次出力させる出力指令情報を含む同期信号を送信し、自装置がスレーブであると判定した場合は、前記出力指令情報で指定されている音声メッセージを出力している間、当該音声メッセージの出力中であることを示す音声メッセージ出力中信号を送信することを特徴とする請求項5に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項7】
前記複数の音声メッセージには、それぞれ異なるメッセージ番号が付与されていることを特徴とする請求項6に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項8】
前記複数の音声メッセージのうち同時に出力可能なメッセージ同士には、同一のメッセージ番号が付与されていることを特徴とする請求項6に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項9】
前記複数の音声案内装置のそれぞれが、
前記インターバル時間の情報及び前記メッセージ番号の情報を記憶する記憶手段と、
外部入力に応じて、前記記憶手段に記憶されたインターバル時間又はメッセージ番号を書き換える設定変更手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の乗客コンベアの音声案内システム。
【請求項10】
前記複数の音声案内装置が無線通信により相互に通信を行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乗客コンベアの音声案内システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−208916(P2009−208916A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54955(P2008−54955)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】