説明

乗算回路

【目的】 小規模かつ高精度の乗算が可能であるとともに、アナログ対デジタルの乗算が可能な乗算回路を提供することを目的とする。
【構成】 デジタル入力電圧をスイッチング信号として、アナログ入力電圧Xを出力端子Toutに生じさせるか否かの制御を行うものであり、複数ビットのデジタル入力信号B0,B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7に対しては、乗算回路M0,M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7を複数並列し、各乗算回路の出力V0out,V1out,V2out,V3out,V4out,V5out,V6out,V7outを容量結合CPによって統合し、この容量結合において、各乗算回路のデジタル入力電圧B0,B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7の重みに対応した重みを与えるものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は乗算回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、デジタル型の乗算回路は大規模となり、またアナログ型の乗算回路はその計算精度が低かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この発明はこのような従来の問題点を解消すべく創案されたもので、小規模かつ高精度の乗算が可能であるとともに、アナログ対デジタルの乗算が可能な乗算回路を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明に係る乗算回路は、デジタル入力電圧をスイッチング信号として、アナログ入力電圧を出力端子に生じさせるか否かの制御を行うものであり、複数ビットのデジタル入力信号に対しては、乗算回路を複数並列し、各乗算回路の出力を容量結合によって統合し、この容量結合において、各乗算回路のデジタル入力電圧の重みに対応した重みを与えるものである。
【0005】
【実施例】次にこの発明に係る乗算回路の1実施例を図面に基づいて説明する。図1において、乗算回路Mアナログ入力電圧Xが非反転入力に接続された演算増幅器Ampを有し、Ampの出力は第1電界効果トランジスタTr1のドレインに接続されている。Tr1は、ゲートにデジタル入力電圧Bが入力され、ソースに出力端子Toutが接続されている。さらにTr1のソースには、第1、第2キャパシタンスC1、C2が直列に接続され、C1、C2の中間点は、帰還路Fを介してAmpの反転入力に接続されている。
【0006】Ampの出力電圧をV1、Toutの電圧をVout、C1、C2の中間点の電圧をV2とすると、Tr1の導通状態において、 (X−V2)=0 (1)
となるように、AmpはV1を調整する。そして、キャパシタンスC1、C2の容量をC1、C2とすると、 Vout=X{(C1+C2)/C1} (2)
となり、演算増幅器の特性上、V2は比較的高精度が保証され、またLSI上においてC1、C2の相対精度は比較的良好であるので、Tr1の導通時にはアナログ入力電圧Xに一定の乗数を乗じた値が出力される。
【0007】Tr1のゲートにはデジタル入力電圧Bが入力され、BがハイレベルのときにTr1は導通し、BがローレベルのときにTr2は遮断される。すなわち、 {(C1+C2)/C1}=2k (3)
とすると、Bを2kの1ビットデータとしたときの、 Vout=X×B (4)
なる乗算結果が得られることになる。
【0008】また、Toutには第2電界効果トランジスタTr2がそのドレインにおいて接続され、Tr2はソースが接地されるとともに、ゲートにデジタル入力電圧Bが接続されている。Tr1、Tr2は相互にトグルとして開閉するようにスイッチング特性が設定され、Tr1の導通時にはTr2は遮断され、Tr1の遮断時にはTr2は導通する。従って、Tr1が遮断されたときには、Voutは略0Vとなる。これは、B=0のときの乗算結果とみなすことができる。
【0009】図2は8ビットのデジタルデータ(B0、B1、・・・B7)とXとの乗算のための乗算回路を示すものであり、図1と同様の乗算回路M0〜M7が並列して設けられ、それぞれに共通のアナログ入力データXと、デジタル入力データの各ビットが入力されている。
【0010】k番目の乗算回路Mkの出力電圧をVkoutとし、図1のC1、C2に対応する容量をCk1、Ck2で表すと、 Vkout=X{(Ck1+Ck2)/Ck1} (5)
と表現される。
【0011】さらにM0〜M7の出力はキャパシタンスCC0〜CC7よりなる容量結合CPにより統合されて、出力Voutが生成されている。容量結合CPは、 Vout=(CC0×V0out+CC1×V1out・・・+CC7×V7out
/(CC0+CC1・・・+CC7) (6)
なる統合を行う。
【0012】すなわち、Mkの出力Vkoutに CCk/(CC0+CC1+・・・+CC7) (7)
を乗じた結果が合計され、 {(Ck1+Ck2)/Ck1}×CCk=2k (8)
あるいは、 〔{(CK1+CK2)/CK1}×CCk〕/(CC0+CC1・・・+CC7) =2k (9)
とすれば、アナログ対デジタルの乗算が実行されたことになる。
【0013】なお、式(9)の場合には、Voutに対して(CC0+CC1+・・・+CC7)を乗じて、最終結果とする必要がある。
【0014】
【発明の効果】前述のとおり、この発明に係る乗算回路は、デジタル入力電圧をスイッチング信号として、アナログ入力電圧を出力端子に生じさせるか否かの制御を行うものであり、複数ビットのデジタル入力信号に対しては、乗算回路を複数並列し、各乗算回路の出力を容量結合によって統合し、この容量結合において、各乗算回路のデジタル入力電圧の重みに対応した重みを与えるので、小規模かつ高精度の乗算が可能であるとともに、アナログ対デジタルの乗算が可能であるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る乗算回路の第1実施例を示す回路図である。
【図2】この発明に係る乗算回路の第2実施例を示す回路図である。
【符号の説明】
M,M0,M1,M2,M3,M4,M5,M6,M7 乗算回路
X 入力電圧
Amp 演算増幅器
Tr1 第1電界効果トランジスタ
B デジタル入力電圧
out 出力端子
1 第1キャパシタンス
2 第2キャパシタンス
F 帰還路
1 出力電圧
out 出力端子の電圧
2 中間点の電圧
Tr2 第2電界効果トランジスタ
0,B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7 デジタルデータ
CC0,CC1,CC2,CC3,CC4,CC5,CC6,CC7 キャパシタンス
CP 容量結合

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アナログ入力電圧が非反転入力に接続された演算増幅器と、この演算増幅器の出力がドレインに入力された第1電界効果トランジスタと、この第1電界効果トランンジスタのソースに第1端子が接続された第1キャパシタンスと、この第1キャパシタンスの第2端子に第1端子が接続されかつ第2端子が接地された第2キャパシタンスと、第1電界効果トランジスタのソースに接続された出力端子と、この出力端子にドレインが接続されかつソースが接地された第2電界効果トランジスタと、第1キャパシンタンスの第2入力および第2キャパシタンスの第1入力と前記演算増幅器の反転入力とを接続する帰還路とを備え、第1、第2電界効果トランジスタのゲートにはデジタル入力電圧が接続され、第1、第2電界効果トランジスタは相互のトグルを構成するようにスイッチング特性が設定されていること乗算回路。
【請求項2】 請求項1記載の乗算回路が並列して設けられ、これら乗算回路に共通のアナログ入力電圧が入力され、乗算回路の出力端子には、各乗算回路に対するデジタル入力電圧の重みに対応した容量のキャパシタンスよりなる容量結合によって統合されていることを特徴とする乗算回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−162230
【公開日】平成6年(1994)6月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−330003
【出願日】平成4年(1992)11月16日
【出願人】(390010515)株式会社鷹山 (1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)