説明

乱気流領域を特徴付けるためのシステムおよび方法

【課題】乱気流の領域を特徴付けるためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】一実装形態において、方法は、航空機の慣性基準ユニットにより乱気流を測定して、乱気流測定値を取得するステップと、乱気流測定値に関連付けられた航空機の位置および乱気流測定値を、少なくとも1つのメモリデバイスに記録するステップと、乱気流測定値を処理ユニットで処理して、乱気流強度設定を決定するステップと、記録された位置について乱気流領域を決定するステップと、乱気流領域を乱気流強度設定に関連付けるステップと、乱気流強度設定および関連付けられた乱気流領域を送信するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、例えば、乱気流領域を特徴付けるためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0001]乱気流は、乗客の快適さ、乗客の安全、および機器/気体の完全性に悪影響を与えるので、民間航空機のフライトでは、激しい乱気流のエリアを避けるよう試みる。センサを使用するシステムが、大気条件の検知に基づいて、強い/激しい乱気流のエリアを予想し、予測するよう試みる。また、飛行機が乱気流を伴うエリアを通過するとき、パイロットは、乱気流について口頭による報告を伝達し、報告は次いで、航空交通管制または航空会社の管制センターを通して伝えられる。乱気流を特徴付けるための精度が改善されれば、民間航空機は、激しい乱気流を避ける確率が改善されるだけでなく、不必要な、および/または非効率な回避操縦を最小限にすることができるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の実施例は、例えば、乱気流領域を特徴付けるためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0002]一実施形態において、乱気流の領域を特徴付けるためのシステムおよび方法が提供される。一実装形態において、方法は、航空機の慣性基準ユニットにより乱気流を測定して、乱気流測定値を取得するステップと、乱気流測定値に関連付けられた航空機の位置および乱気流測定値を、少なくとも1つのメモリデバイスに記録するステップと、乱気流測定値を処理ユニットで処理して、乱気流強度設定を決定するステップと、記録された位置について乱気流領域を決定するステップと、乱気流領域を乱気流強度設定に関連付けるステップと、乱気流強度設定および関連付けられた乱気流領域を送信するステップとを含む。
【0005】
[0003]図面は例示的な実施形態のみを表し、したがって、範囲を限定するものとみなされるべきでないことを理解しながら、添付の図面の使用を通して、例示的な実施形態が、追加的な特異性および詳細と共に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】[0004]乱気流を特徴付けるためのシステムの一実施形態のブロック図である。
【図2】[0005]一実施形態に従った、航空機についてのボディフレームの慣性座標系の図である。
【図3】[0006]一実施形態に従った、航空機位置を中心とした乱気流領域の図である。
【図4】[0007]一実施形態に従った、一定の位置を有する乱気流領域の図である。
【図5】[0008]一実施形態に従って、さまざまな通信リンクを通して乱気流データを通信する航空機の図である。
【図6】[0009]乱気流を特徴付けるための方法の一実施形態の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0010]一般的なやり方に従って、さまざまな説明される特徴は、一定の縮尺で描かれず、例示的な実施形態に関連した特定の特徴を強調するように描かれている。
[0011]以下の詳細な説明において、本明細書の一部を形成する添付の図面に対する参照が行われ、特定の説明的な実施形態が例示として示される。しかしながら、他の実施形態が利用されてもよいこと、ならびに、論理的、機械的、および電気的な変更が行われてもよいことを理解されたい。さらに、本図面および本明細書において提示される方法は、個々の行為が実施され得る順序を限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に取られるべきではない。
【0008】
[0012]図1は、乱気流領域を特徴付けるためのシステム100のブロック図を示す。たとえば、システム100は、航空機ユニット102を含む。航空機ユニット102は、乱気流を測定する、航空機101に存在するシステムである。航空機101は、飛行機、ヘリコプターなどであってよい。フライトの間、周期的に、航空機は乱気流の領域に遭遇することがある。航空機が乱気流の領域中を移動するとき、航空機は、経験される乱気流の力に応答して不規則に動くことがある。乱気流は弱い場合もあるが、乱気流はまた、航空機を激しく損傷し、航空機に搭乗している可能性のある人々を傷つけることがある。航空機が乱気流の領域を避けるのを支援するために、航空機ユニット102を含む航空機101は、乱気流の領域中を移動する。航空機101が乱気流の領域中を移動するとき、航空機ユニット102は、航空機101の動きを測定して、領域内の乱気流を特徴付ける。
【0009】
[0013]領域における乱気流を特徴付けるために、航空機ユニット102は、慣性基準ユニット106を含む。慣性基準ユニット106は、航空機ユニット102の加速度を測定する、加速度計およびジャイロスコープなどの慣性センサを含む。たとえば、慣性基準ユニット106は、針路、速度、および姿勢などのパラメータの変化を測定する。乱気流は、針路、速度、および姿勢に予期しない変化を引き起こすことがあるため、慣性基準ユニット106は、航空機ユニット102によって経験される加速度の乱気流測定値を生成する。語句「乱気流測定値」は、本明細書で使用されるとき、針路、速度、または姿勢のうちの任意の1つまたは複数における、慣性基準ユニット106による加速度の測定値を指す。さらに、乱気流測定値はまた、針路、速度、または姿勢のうちの任意の1つまたは複数における加速度の変化率の測定値を指すことができる。
【0010】
[0014]航空機ユニット102は、慣性基準ユニット106から受信された乱気流測定値を送信するように構成されたトランシーバ112をさらに含む。トランシーバ112は、地上通信局または機上通信局のいずれかと、通信リンク120を介してデータの送受信ができるデバイスである。一実装形態において、トランシーバ112は、放送型自動従属監視(automatic dependent surveillance−broadcast:ADS−B)トランスポンダとして機能する。トランシーバ112がADS−Bトランスポンダとして機能するとき、トランシーバ112は、慣性基準ユニット106から受信された乱気流強度情報を、通常のADS−Bパラメータ(経度、緯度、および高度)と共に、他の地上局およびADS−B機器を備える航空機に、周期的にブロードキャストする。したがって、トランシーバ112は、特定の位置に関連付けられた乱気流強度情報をブロードキャストする。あるいは、トランシーバ112は、慣性基準ユニット106から受信された乱気流測定値、および乱気流強度情報に関連付けられた位置情報を、他の通信リンクによって送信する。
【0011】
[0015]いくつかの実装形態において、航空機ユニット102は、慣性基準ユニット106から受信された測定値を、通信リンク120を介して地上局104に送信する。地上局104は、複数の航空機ユニット102から乱気流測定値および関連付けられた位置を収集し、変化する乱気流強度の三次元領域を計算する。たとえば、地上局104は、航空機ユニット102からの乱気流測定値および関連付けられた位置を、トランシーバ118で受信する。乱気流測定値および関連付けられた位置から、地上局104は、航空機ユニット102を乗せた航空機101の位置における乱気流レベルを決定する。
【0012】
[0016]乱気流レベルを決定するために、地上局104は、処理ユニット116を含む。処理ユニット116は、データを受け入れ、数学的演算および論理的演算を実行する、少なくとも1つのプロセッサを含む。処理ユニット116は、以下で説明される機能性の実装において使用されるさまざまな方法、プロセスタスク、計算、および制御機能を実行するための、ソフトウェアプログラム、ファームウェア、または他のコンピュータ可読命令を含む、またはそれらによって機能する。これらの命令は、一般に、コンピュータ可読命令またはデータ構造を記憶するために使用される、メモリデバイス114などの任意の適切なコンピュータ可読媒体またはマシン可読媒体に記憶される。たとえば、メモリデバイス114は、強度設定命令115および乱気流領域命令117などのコンピュータ可読命令を記憶する。さらに、航空機ユニット102はまた、以下で説明されるように、処理ユニット116と同様に機能する処理ユニット108を含むことができる。
【0013】
[0017]メモリデバイス114は、マシン可読媒体にデータを保持することができる少なくとも1つのデバイスを含む。マシン可読媒体は、汎用コンピュータもしくは特殊目的コンピュータ、またはプロセッサ、または任意のプログラマブル論理デバイスによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体として実装されてもよい。好適なマシン可読媒体またはプロセッサ可読媒体は、磁気媒体または光学媒体などの記憶/メモリ媒体を含むことができる。たとえば、記憶/メモリ媒体は、従来のハードディスク、コンパクトディスク−読み取り専用メモリ(CD−ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性または不揮発性媒体(同期動的ランダムアクセスメモリ(SDRAM)、ダブルデータレート(DDR)RAM、RAMBUS動的RAM(RDRAM)、静的RAM(SRAM)などを含むが、これらに限定されない)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM)、およびフラッシュメモリなどを含むことができる。好適なプロセッサ可読媒体はまた、ネットワークおよび/またはワイヤレスリンクなどの通信媒体を介して伝達される電気的信号、電磁気的信号、または、デジタル信号などの伝送媒体を含むことができる。さらに、航空機ユニット102はまた、以下で説明されるように、メモリデバイス114と同様に機能するメモリデバイス110を含むことができる。
【0014】
[0018]いくつかの実装形態において、地上局104のメモリデバイス114は、航空機ユニット102から受信されたデータを記憶する。たとえば、地上局104は、航空機ユニット102から受信された乱気流測定値を記憶する。地上局104はまた、航空機ユニット102の位置情報をメモリデバイス114に記憶し、ここでの位置情報は、乱気流測定値が集められるときの航空機ユニット102の位置(緯度、経度、および高度)を記述する。いくつかの実装形態において、地上局104は、航空機ユニット102からの複数の乱気流測定値をメモリデバイス114に記憶し、ここでの乱気流測定値は、ある期間にわたって集められる。さらに、地上局104は、複数の航空機から受信された乱気流測定値および位置を記憶する。処理ユニット116は、メモリデバイス114に記憶された乱気流測定値および位置情報を使用する命令を実行して、乱気流領域についての乱気流強度設定を計算し、定義する。たとえば、メモリデバイス114は、強度設定命令115および乱気流領域命令117を記憶する。同様に、航空機ユニット102のメモリデバイス110は、強度設定命令111および乱気流領域命令113を記憶する。
【0015】
[0019]いくつかの実装形態において、航空機ユニット102は、航空機ユニット102が存在する航空機101のサイズおよび重みを記述する情報を送信する。たとえば、航空機が、重さ約13600Kg(約30000ポンド)のDHC−8などの小型で軽量のコミューター航空機であるとき、航空機ユニット102は、航空機の重量を、トランシーバ112を通して地上局104に送信する。地上局104が、重量を含んだ送信をトランシーバ118で受信するとき、地上局104は、受信された重量をメモリ114に記憶し、メモリ114において、重量を、航空機ユニット102から受信された乱気流測定値に関連付ける。地上局104の処理ユニット116は、メモリ114に記憶された重量を使用して、乱気流測定値から乱気流の激しさを判定する。さらに、航空機ユニット102は、乱気流を経験しているときの航空機101がどのように動くことになるかを示すことができる他の情報を送信することができる。たとえば、航空機ユニット102は、翼の幅、長さ、外形、高さなどのような情報を送信することができる。
【0016】
[0020]地上局104が、航空機ユニット102から、位置情報、サイズおよび重量情報、ならびに乱気流測定値を受信するとき、地上局104は、情報をメモリ114に記憶する。強度設定命令115は、処理ユニット116に、乱気流測定値、ならびにサイズおよび重量情報をメモリ114から取り出して、乱気流強度設定を計算するように指図する。語句「乱気流強度設定」は、本明細書で使用されるとき、他の航空機のパイロットによって理解される乱気流の標準化されたカテゴリ化を指す。たとえば、連邦航空局航空情報マニュアルのセクション7−1−23からの乱気流報告基準は、乱気流についての標準化されたカテゴリ、および乱気流がどのようにカテゴリの中に分類されるかについて記述している。乱気流報告基準を示す表は、以下の通りである。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
[0021]乱気流強度設定を計算するために、強度設定命令115は、処理ユニット116に、航空機ユニット102についての特定の位置において、航空機ユニット102のジャークおよび加速度を判定するように指示する。図2は、航空機ユニット102を含む航空機202についてのボディフレームの慣性座標系200の図である。慣性座標系200は、固定され、遠い恒星に対して方向付けられている。航空機202に存在する、図1の慣性基準ユニット106の慣性センサは、慣性座標系200に対してボディフレームの動きを検知する。航空機202は、航空機202のボディに固定されたボディフレームを有する。航空機202が乱気流を経験するとき、航空機202のボディフレームは、速度、姿勢、または針路において加速度を経験することがある。速度、姿勢、および針路における加速度は、3つの直交軸に沿った加速度の成分によって表されてもよい。たとえば、乱気流は、航空機に、上下軸204、前後軸206、および左右軸208の方向における加速度の成分を生じさせることがある。強度設定命令115は、処理ユニット116に、3つの軸における加速度の測定値を使用して航空機202のボディフレームについての全加速度を計算するように指示する。
【0021】
[0022]いくつかの実装形態において、強度設定命令115を実行する処理ユニット116は、以下の式を使用して、上下軸204、前後軸206、および左右軸208に沿った航空機202のボディフレームについての全加速度を計算する。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、α=前後軸206に沿った加速度
α=左右軸208に沿った加速度
α=上下軸204に沿った加速度
ボディフレームにおける全加速度αが、乱気流強度の計算に使用されてもよい。さらに、メモリ114が、ある期間にわたる航空機ユニット102からの複数の測定値を表す乱気流測定値を記憶するとき、強度設定命令115は、処理ユニット116に、ボディフレームにおける全加速度αの変化率を計算するようにさらに指図する。処理ユニット116は、時間に対する全加速度の変化率を、全ジャークとして計算する。全ジャークは、以下の式によって計算される。
【0024】
【数2】

【0025】
[0023]少なくとも一実装形態において、処理ユニット116が全ボディ加速度および全ジャークを計算するとき、強度設定命令115は、処理ユニット116に、全ボディ加速度および全ジャークを、メモリ114に記憶された乱気流レベル閾値と比較するように指示する。たとえば、メモリ114は、無、弱、並、強、および強烈といった乱気流強度設定に対応した乱気流レベル閾値を含むルックアップテーブルを記憶する。可能性のある各乱気流強度設定について、メモリ114は、加速度閾値およびジャーク閾値を記憶する。たとえば、無の乱気流強度設定では、メモリ114は、全加速度について値Asmoothを記憶し、全ジャークについて値Jsmoothを記憶する。処理ユニット116は、乱気流レベル閾値を取り出し、計算された全ボディ加速度および計算された全ジャークを、乱気流レベル閾値と比較する。たとえば、処理ユニット116が、メモリ114のルックアップテーブルから乱気流閾値AsmoothおよびJsmoothを取り出すとき、強度設定命令115は、処理ユニット116に、α≦Asmoothであるかどうか、または≦Jsmoothであるかどうかを判定するように指示する。処理ユニット116が、全ボディ加速度が無乱気流に関連付けられた加速度閾値を下回る、または全ジャークが無乱気流に関連付けられたジャーク閾値を下回ることを判定した場合、処理ユニット116は、測定値が航空機ユニット102によって取得された時間および位置において、航空機ユニット102が乱気流を経験していなかったことを結論付ける。以下の表は、異なる乱気流強度設定がどのようにしてルックアップテーブルから判定されるのかを示す。
【0026】
【表4】

【0027】
[0024]いくつかの実装形態において、乱気流レベル閾値(Asmooth、Jsmooth、Alight、Jlight、Amoderate、Jmoderate、Asevere、Jsevere)は、航空機の重量に従って変化する。たとえば、重さ約13600Kg(30000ポンド)のDHC−8などの軽量のコミューター航空機が、2Gの大きさの加速度を引き起こす乱気流を経験する場合、強度設定命令115を実行する処理ユニット116は、乱気流強度設定が並であると判定することになる。一方で、重さが約450000Kg(1000000ポンド)を超えるA380が、2Gの大きさの加速度を引き起こす乱気流を経験した場合、強度設定命令115を実行する処理ユニット116は、乱気流強度設定が強であると判定することになる。一実装形態において、航空機の重量の違いを相殺するために、強度設定命令115の実行が、ベース閾値(Asmooth、Jsmooth、Alight、Jlight、Amoderate、Jmoderate、Asevere、Jsevere)を取り、ベース閾値に重量スカラーWを掛けることによって、処理ユニット116に、乱気流レベル閾値を決定するように指図し、ここでの重量スカラーは、上の乱気流強度ルックアップテーブルに示されるように、航空機の重量に従ってベース閾値を調整する。
【0028】
[0025]いくつかの実装形態において、航空機ユニット102は、サンプリング期間にわたって集められた複数の乱気流測定値を提供し、乱気流測定値を地上局104に送信する。地上局104は、航空機ユニット102から受信された複数の測定値から複数の全加速度および全ジャークを計算し、複数の全加速度および全ジャーク計算値を乱気流レベル閾値と比較し、サンプルが取得された間のサンプリング期間にわたる最終的な乱気流強度を決定する。強度設定命令115を実行する処理ユニット116は、サンプリング期間にわたって測定された最大強度サンプルの数を分析することによって、最終的な乱気流強度を決定する。
【0029】
[0026]強度設定命令115を実行する処理ユニット116が、航空機ユニット102から受信された乱気流測定値を使用して乱気流レベルを計算するとき、乱気流領域命令117を実行する処理ユニット116はまた、航空機ユニット102が乱気流を測定した時間に関連付けられた航空機ユニット102の位置を使用して乱気流領域を計算する。一実装形態において、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、航空機ユニット102の位置上に、定義された緯度、経度、および高度範囲を有する乱気流領域の中心を合わせるように指図する。図3は、航空機ユニット102の位置を中心とした乱気流領域を示す。乱気流領域は、航空機ユニット102の位置を中心とした空間の三次元エリアである。上面図340は、緯度および経度の観点から乱気流領域の横方向の次元を示す。たとえば、乱気流測定時において、航空機ユニット102の位置が、上面図340の中央に示されるように、北緯37度および西経97度である場合、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、北緯38度、北緯36度、西経98度、および西経96度として示されるような、乱気流領域の横方向の境界を定義するように指示する。側面図342は、乱気流領域の高さ方向の次元の側面図を示す。たとえば、乱気流測定時において、航空機ユニット102が10.67km(35000フィート)にあった場合、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、10.97km(36000フィート)および10.36km(34000フィート)として、乱気流領域の高さ方向の境界を定義するように指図する。このようにして、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、乱気流測定値に関連付けられた位置情報を取り囲む領域を定義するように指示する。図3に示されるように、乱気流領域は、乱気流測定値に関連付けられた航空機ユニット102の位置のまわりに2度の緯度、2度の経度、および0.6096km(2000フィート)の高度の次元を有する。あるいは、乱気流領域の次元は、さまざまな大きさを伴ってマイル、メートル、フィート、キロメートルなどで測定されてもよい。さらに、図3は、乱気流領域をボックスとして示しているが、乱気流領域はまた、球体、円柱などとして定義されてもよい。したがって、強度設定命令115を実行する処理ユニット116が、航空機ユニット102が弱乱気流を経験したと判定した場合、処理ユニット116は、乱気流を、乱気流領域全体にわたって弱として定義する。
【0030】
[0027]代替実装形態において、処理ユニット116は、地球全体にわたって一定の乱気流領域を定義することができる。語句「一定の乱気流領域」は、本明細書で使用されるとき、あらゆる航空機の場所から独立した場所による、地球に対して一定の空域の領域を指す。たとえば、ある一実装形態において、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、地球全体を覆う40898の乱気流領域を定義するように指示する。各乱気流領域は、最大および最小経度ならびに最大および最小緯度によって定義される。さらに、各領域は、一連の等間隔の高度帯を含む。たとえば、乱気流領域は、0.6096km(2000フィート)刻みの増分で、0kmから15.24km(50000フィート)まで変化する、25の等間隔の高度帯を含む。
【0031】
[0028]図4は、地球の定義された領域400にわたる複数の一定の乱気流領域の分布を示す。定義された領域400は、西経0度と西経90度との間、および北緯83度と北緯88度との間に位置する地球上の領域である。定義された領域400は、各乱気流領域が最大および最小の緯度および経度を有する、複数の乱気流領域に分割される。乱気流領域の最大および最小の緯度および経度を計算するために、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、地球上にグリッドを定義するように指示する。示されるように、定義された領域400における乱気流領域間の緯度方向の境界が、緯度の各1度に設定される。たとえば、定義された領域400は、83度、84度、85度、86度、87度、および88度において緯度方向の境界を有する。いくつかの実装形態において、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、南緯90度から北緯90度の緯度範囲全体にわたって、1度刻みに増分する緯度方向の境界を設定するように指図する。あるいは、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、基準地点から特定の距離において、境界を設定するように指示する。たとえば、境界は、赤道の北および南80.47km(50マイル)の倍数ごとに存在してもよい。
【0032】
[0029]経度方向の境界を計算するために、乱気流領域命令は、処理ユニット116に、以下の式を使用して、各最大緯度の境界上の等間隔の経度地点を計算するように指示する。
【0033】
【数3】

【0034】
ここで、Δλ=緯度φにおいて使用されるべき経度ステップ
[0030]たとえば、地上局104は、北緯85度と北緯86度との間を飛行していた航空機の位置を受信する。乱気流領域命令は、処理ユニット116に、北緯86度の緯度方向の境界に沿った等間隔の経度方向の地点を定義するように指示する。図4に示されるように、定義された領域400は、北緯85度と北緯86度との間に経度方向の境界を含み、ここでの経度方向の境界は、14.4度の経度によって分離される。以下の表は、北緯86度と北緯85度との間の経度方向の境界を示す。
【0035】
【表5】

【0036】
[0031]いくつかの実装形態において、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、一定の乱気流領域と航空機の位置を中心とした乱気流領域との組合せを使用して、乱気流領域を定義するように指示する。たとえば、乱気流領域命令117は、処理ユニット116に、一定の乱気流領域としての第1の領域、および航空機位置を中心とした乱気流領域としての第2の領域を定義するように指図する。処理ユニット116は、乱気流領域を計算し、計算された乱気流領域についての乱気流強度設定を計算する。処理ユニット116は、乱気流領域、および関連付けられた乱気流強度設定を、メモリ114に記憶する。さらに、処理ユニット116は、トランシーバ118に、乱気流領域を記述する情報、および関連付けられた乱気流強度設定を、他の航空機に送信するように指示する。
【0037】
[0032]図5は、いくつかの通信リンクを通して乱気流測定値を伝達する航空機の図である。たとえば、乱気流測定航空機501−1および501−2が、乱気流525の中を飛行し、上で説明されたように、乱気流を測定し、乱気流測定値に関連付けられた位置を記録する。乱気流測定航空機501−1および501−2は、乱気流測定値および位置情報を、通信リンク520−1および520−2を介して地上局504−1に送信する。乱気流測定値および関連付けられた位置情報を受信すると、地上局504−1は、図1の地上局104に関して上で説明されたように、乱気流測定値および関連付けられた位置情報を処理し、乱気流領域、および乱気流領域に関連付けられた乱気流強度設定を決定する。さらに、地上局504−1は、乱気流領域、および乱気流領域に関連付けられた乱気流強度設定を、非測定航空機530に送信する。乱気流領域、および乱気流領域に関連付けられた乱気流強度設定を受信すると、非測定航空機530は、乱気流領域で測定された乱気流が、非測定航空機530に危険を及ぼすかどうかを判定する。乱気流が非測定航空機530に危険を及ぼす場合、非測定航空機530は、定義された乱記流領域における乱気流525の中を飛行するのを避けるための回避行為を取る。
【0038】
[0033]いくつかの実装形態において、地上局504−1は、非測定航空機530から、特定の乱気流領域のための乱気流領域情報の要求を受信する。たとえば、非測定航空機530がADS−Bを備えるとき、非測定航空機530は、通信リンク532を通して、位置情報を地上局504−1に周期的にブロードキャストする。地上局504−1は、受信された位置情報を使用して、非測定航空機530の現在の位置における、非測定航空機530のための乱気流領域情報を判定する。語句「乱気流領域情報」は、本明細書で使用されるとき、一般に、特定の位置および針路を有する移動している輸送手段に関係する乱気流領域を記述する情報を指す。たとえば、地上局504−1は、現在の乱気流強度設定、およびそれに付随した乱気流領域を、非測定航空機530がその中を移動することが予測される乱気流領域に関連付けられた乱気流強度設定と共に、非測定航空機530に送信する。
【0039】
[0034]代替実施形態において、乱気流測定航空機501−1および501−2は、図1に示すような、処理ユニット108とメモリデバイス110とを含む。処理ユニット108およびメモリデバイス110は、処理ユニット116およびメモリデバイス114に関して上で説明されたように、乱気流強度設定および乱気流領域を計算するように機能する。したがって、乱気流測定航空機501−1と501−2の両方が航空機ユニット102を含む場合に、乱気流測定航空機501−1および501−2が慣性基準ユニット106を通して乱気流525を測定するとき、航空機ユニット102の処理ユニット108は、メモリデバイス110から、強度設定命令111および乱気流領域命令113を実行して、乱気流測定航空機501−1および501−2の乱気流強度設定および、現在の乱気流領域を決定する。乱気流測定航空機501−1および501−2が乱気流強度設定および乱気流領域を決定するとき、乱気流測定航空機501−1および501−2は、乱気流強度設定および乱気流領域情報を、地上局504−1、非測定航空機530、および/または衛星534に送信することができる。
【0040】
[0035]一実装形態において、乱気流測定航空機は、乱気流強度設定および乱気流領域情報を地上局504−1に送信する。地上局504−1は、受信された情報を、非測定航空機530に直接中継する。しかしながら、非測定航空機530が、地上局504−1の範囲内にないことがある。非測定航空機530が地上局504−1の範囲の外にあるとき、地上局504−1は、乱気流強度設定および乱気流領域情報を、衛星534、地上局504−2、ならびに乱気流測定航空機501−1および501−2のうちの任意の1つを介して、非測定航空機530に中継する。たとえば、地上局504−1は、情報を、通信リンク522を介してその情報を非測定航空機530に送信する地上局504−2に送信することができる。あるいは、地上局504−1は、情報を、通信リンク524を介してその情報を非測定航空機530に送信する乱気流測定航空機501−1に送信することができる。さらに、情報は、通信リンク526を介して衛星534に中継されてもよく、次いで、通信リンク528を介して非測定航空機530に中継されてもよい。あるいは、乱気流測定航空機501−1および501−2は、情報を、非測定航空機530に直接送信することができる。
【0041】
[0036]いくつかの状況において、乱気流測定航空機501−1および501−2が乱気流強度設定または乱気流測定値を送信するとき、乱気流測定航空機501−1および乱気流測定航空機501−2は、同じ乱気流領域525および高度帯の中を移動していることがある。乱気流強度は、乱気流領域全体を通して変化するため、乱気流測定航空機501−1および乱気流測定航空機501−2は、矛盾する乱気流強度設定および情報を生成することがある。同じ領域および高度帯内の2つ以上の航空機が、あらかじめ決められた期間内で矛盾する乱気流強度設定または情報を報告するとき、航空機にとってより大きなリスクを表す乱気流強度設定が、乱気流領域内の乱気流強度を表すように選択される。たとえば、あらかじめ決められた期間内に、乱気流測定航空機501−1が、強乱気流の乱気流強度設定を地上局504−1に送信し、一方で、乱気流測定航空機501−2が、弱乱気流の乱気流強度設定を地上局504−1に送信する。乱気流測定航空機501−1および乱気流測定航空機501−2から受信された乱気流強度設定は矛盾し、両方があらかじめ決められた期間内に受信されたので、地上局504−1は、強乱気流であるより激しい乱気流強度設定を非測定航空機530に送信する。
【0042】
[0037]乱気流領域は、常に変化しているために、乱気流領域についての乱気流強度設定は、古くなる。古くなっている乱気流強度設定は、乱気流領域における乱気流が測定された瞬間から十分な時間が経過しており、乱気流強度設定がその乱気流領域について不正確である可能性があることを示す。古い乱気流強度設定の送信を避けるために、乱気流測定航空機501−1および501−2のメモリデバイス110、または地上局504−1のメモリデバイス114のいずれかが乱気流強度設定を記憶するとき、乱気流強度設定は、乱気流強度設定が取得された時間と共に記憶される。乱気流強度設定が取得されてからあらかじめ決められた期間が経過すると、乱気流測定航空機501−1および501−2、または地上局504−1のいずれかが、乱気流領域の乱気流強度設定について「報告なし」を送信することになる。たとえば、乱気流測定航空機501−1および501−2は、乱気流強度を測定し、乱気流強度情報を、地上局504−1に第1の時間に送信する。地上局504−1は、受信された乱気流強度情報から乱気流強度設定を計算し、乱気流強度設定を、乱気流強度情報が乱気流測定航空機501−1および501−2によって取得された時間と共に、メモリ114に記憶する。乱気流強度設定が古くなるためにあらかじめ決められた期間を超えて時間が経過した後に、非測定航空機530は、地上局504−1に乱気流強度設定を要求する。乱気流強度の測定値は古くなっているので、地上局504−1は、「報告なし」の乱気流強度設定を、非測定航空機530に送信する。
【0043】
[0038]乱気流測定航空機501−1および501−2が乱気流525の中を飛行するとき、乱気流測定航空機501−1および501−2、ならびに地上局504−1は、図1の慣性基準ユニット106から集められた乱気流測定値を編集することが可能である。乱気流測定航空機501−1および501−2、ならびに地上局504−1が乱気流強度情報を編集するとき、乱気流測定航空機501−1および501−2、ならびに地上局504−1は、乱気流強度設定、および慣性基準ユニット106から受信された乱気流測定値を記述する乱気流領域を決定する。乱気流強度設定を決定した後で、乱気流測定航空機501−1および501−2、ならびに地上局504−1は、他の航空機が潜在的に危険な乱気流を避けることができるように、取得された情報を、非測定航空機530などの他の航空機に分配する。
【0044】
[0039]図6は、乱気流の領域を特徴付けるための方法600の流れ図である。ブロック602で、航空機の慣性基準ユニットにより乱気流が測定されて、乱気流測定値を取得する。たとえば、慣性基準ユニットは、航空機の動きを測定するように構成されたジャイロスコープおよび加速度計を含む。航空機が乱気流を経験するとき、航空機の動きが、慣性基準ユニットによって測定される。ブロック604で、乱気流測定値に関連付けられた航空機の位置および乱気流測定値が、少なくとも1つのメモリデバイスに記録される。たとえば、航空機は、乱気流測定値に関連付けられた航空機の位置を、地上局に送信する。受信すると、地上局は、航空機の位置および乱気流測定値をメモリデバイスに記憶する。ブロック606で、乱気流測定値は処理ユニットで処理されて、乱気流強度設定を決定する。たとえば、地上局または航空機は、処理ユニットで乱気流測定値を処理することによって、乱気流強度設定が、無、弱、並、強、または強烈のうちの1つであることを決定することができる。
【0045】
[0040]ブロック608で、記録された位置についての乱気流領域が決定される。たとえば、航空機または地上局は、乱気流強度情報が集められた時間に記録された航空機の位置を使用して、乱気流領域を特定し、乱気流領域は、航空機が乱気流を経験したときに航空機がそこを通って通過していた空域の定義された領域である。ブロック610で、乱気流領域は、乱気流強度設定に関連付けられる。たとえば、乱気流領域を定義した後で、処理ユニットは、乱気流領域全体についての乱気流強度設定を、決定された強度設定に設定する。ブロック612で、乱気流強度設定および乱気流領域情報が送信される。たとえば、乱気流強度設定を決定し、乱気流領域を特定した後で、航空機または地上局のいずれかが、乱気流強度設定および乱気流領域を記述する情報を、他の航空機に送信することができる。他の航空機は、乱気流強度設定および乱気流領域情報を受信すると、乱気流が危険を及ぼすかどうかを判定することができ、乱気流が危険を及ぼす場合、飛行経路を変更して乱気流領域を避けることができる。
【0046】
[0041]本明細書において、特定の実施形態が図示され、説明されてきたが、同じ目的を達成するように計算された任意の構成が、示された特定の実施形態の代わりに使用されてもよいことが、当業者によって認識されるであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが明白に意図される。
【符号の説明】
【0047】
100 システム
101 航空機
102 航空機ユニット
104 地上局
106 慣性基準ユニット
108 処理ユニット
110 メモリデバイス
111 強度設定命令
113 乱気流領域命令
112 トランシーバ
114 メモリデバイス
115 強度設定命令
117 乱気流領域命令
116 処理ユニット
118 トランシーバ
120 通信リンク
202 航空機
204 上下軸
206 前後軸
208 左右軸
501−1 乱気流測定航空機
501−2 乱気流測定航空機
504−1 地上局
504−2 地上局
520−1 通信リンク
520−2 通信リンク
522 通信リンク
524 通信リンク
525 乱気流(領域)
526 通信リンク
528 通信リンク
530 非測定航空機
532 通信リンク
534 衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱気流の領域(regions)を特徴付ける(characterizing)ための方法であって、
航空機の慣性基準(inertial reference)ユニットにより乱気流(turbulence)を測定して、乱気流測定値を取得するステップと、
前記乱気流測定値に関連付けられた前記航空機の位置および前記乱気流測定値を、少なくとも1つのメモリデバイスに記録するステップと、
前記乱気流測定値を処理ユニットで処理して、乱気流強度設定(turbulence intensity)を決定するステップと、
記録された位置について乱気流領域を決定するステップと、
前記乱気流領域を前記乱気流強度設定に関連付けるステップと、
前記乱気流強度設定および関連付けられた乱気流領域を送信するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記乱気流測定値から乱気流強度設定を決定するステップが、
前記乱気流測定値から、前記航空機の全加速度および前記航空機の全ジャーク(jerk)の測定値を含む全動き(total movement)測定値を計算するステップと、
前記全動き測定値を乱気流強度閾値(turbulence intensity threshold)と比較するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
乱気流領域を特徴付けるためのシステムであって、
航空機によって経験される乱気流を測定するように構成された慣性基準(inertial reference)ユニットと、
乱気流測定値を記憶し、
測定された乱気流に関連付けられた前記航空機の位置情報を記録するように構成された、少なくとも1つのメモリデバイスと、
前記乱気流測定値から乱気流強度設定を決定し、前記乱気流測定値に関連付けられた前記位置情報から乱気流領域を決定するように構成された処理ユニットと、
前記乱気流強度設定、および前記乱気流領域を記述する乱気流領域情報を送信するように構成されたトランシーバと
を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218731(P2012−218731A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−84516(P2012−84516)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)