説明

乳化型ドレッシング

【課題】低粘度で、長期間保存しても分離及びゲル化せず、乳化安定性に優れた乳化型ドレッシングを提供すること。
【解決手段】結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%含有する結晶セルロース複合化物であり、固形分1.0質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上である結晶セルロース複合化物を含むことを特徴とする乳化型ドレッシング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期間保存した際に、油と水の分離及びゲル化が生じず、低粘度で、乳化安定性に優れた乳化型ドレッシングに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サラダ類、パスタ類等の食品類の需要拡大と共に、ドレッシング類の需要も急速に伸びている。その種類は、非常に豊富で、イタリアン、サウザンドアイランド、フレンチ、和風、マヨネーズ風などの各種タイプのドレッシングが市販されている。
ドレッシング類は、大別すると、ノンオイルドレッシング類と含油ドレッシング類に分けられる。一般的には、口当りのよさから含油ドレッシング類の方がよく使用されている。更に、その含油ドレッシング類は、油相と水相とが分離していて使用時に撹拌して使用する分離型ドレッシングと、卵等の乳化作用を有する食品素材を加えることにより、水と油が乳化した乳化型ドレッシングとに分けられる。
従来、乳化型ドレッシングには、食品成分を均一化することや、均一な状態を安定化させること、及び分離を起こさせないことを目的として、キサンタンガム等の増粘剤等が入っている。しかし、キサンタンガムを添加したドレッシングは、長期間放置していると増粘し、ゲル化を引き起こし、容器から注ぎだすことが困難になる。また、ゲル化をさせないためにキサンタンガムの添加量を低くすると、ゲル化は抑制出来るが、逆に分離を引き起こしてしまうという問題があった。この問題に対して様々な検討がなされている。
【0003】
特許文献1には、マヨネーズ様食品や乳化液状ドレッシングのような酸性水中油型乳化食品において、特定の加工卵白を配合することが開示されている。
特許文献2には、微結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる組成物を、サラダドレッシングに配合することが開示されている。
特許文献3には、セルロース系安定剤とキサンタンガムからなる組成物を、ゴマドレッシングに配合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−011786号公報
【特許文献2】特表2006−508195号公報
【特許文献3】特開2004−159530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、確かに特定の加工卵白を配合することによって、長期間保存しても離水しない乳化液状ドレッシングが出来ている。しかしながら、低粘度で安定化するのは困難である。
特許文献2では、確かに低カロリーマヨネーズ様調味料が安定に製造されるものであるが、調味料のボディ感を出す為に、キサンタンガムが必須となるため、長期保存した際には、増粘し、ゲル化するという問題がある。
特許文献3に記載のゴマ含有調味料は、分離を抑制するためにセルロース系安定剤とキサンタンガムとの組成物を含む。特許文献3によると、確かに、ゴマ含有調味料において、安定剤を組み合わせることで、分離およびゲル化を抑制されたものであるが、この組み合わせでは、粘度が1000mPa・sを越え、増粘しすぎる問題がある。従って、低粘度で風味を向上させるのは困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、低粘度で、長期間保存しても分離及びゲル化せず、乳化安定性に優れた乳化型ドレッシングを提供することである。
ここで、ゲル化とは、液体の流動性が損なわれた状態になることであり、ドレッシングがゲル化すると容器から流れ出ないという問題に繋がる。ドレッシングが流動性を失い、多少の弾性と固さを持って固化するゲル化が起こると、容器を上下に一定のスピードで軽く振った程度では均一にはならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、特定の結晶セルロース複合化物を含有した乳化型ドレッシングは、低粘度で、長期間保存しても分離及びゲル化せず、乳化安定性に優れることを見出して本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、以下のものである。
(1)結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%含有する結晶セルロース複合化物であり、固形分1.0質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上である結晶セルロース複合化物を含むことを特徴とする乳化型ドレッシング。
(2)アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比が1/9から9/1であることを特徴とする上記(1)記載の乳化型ドレッシング。
(3)結晶セルロース複合化物が、さらに乳化剤を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)記載の乳化型ドレッシング。
(4)結晶セルロース複合化物を0.1質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の乳化型ドレッシング。
【発明の効果】
【0008】
特定の結晶セルロース複合化物を配合した乳化型ドレッシングとすることで、長期間保存しても分離及びゲル化せず、低粘度で、乳化安定性に優れ、容器から容易に注ぎだすことが出来る乳化型ドレッシングを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
本発明は、結晶セルロース複合化物を配合した乳化型ドレッシングに関する発明である。
本実施形態において、結晶セルロース複合化物とは、少なくとも結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルが、一部、水素結合をして複合化しているものである。
本実施形態において、「結晶セルロース」とは、木材パルプ、精製リンター、再生セルロース、穀物又は果実由来の食物繊維、バクテリアセルロース等のセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解、スチームエクスプロージョン分解、亜臨界水又は超臨界水による加水分解等により、或いはそれらの組み合わせにより、解重合処理して、洗浄、濾過して得られたセルロースのことである。セルロースの平均重合度は、30〜375が好ましい。
【0010】
本実施形態において、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」とは、アルギン酸中のカルボキシル基にプロピレンオキシドがエステル化されたものである。そのエステル化度には、特に制限はないが、50%以上が好ましい。より好ましくは、エステル化度は70%以上、さらに好ましくは、エステル化度は75%以上である。また、上限は95%以下が好ましい。エステル化度が高いほど乳化性は良くなるのだが、95%を越えると、結晶セルロースとの複合化が進みにくいので、95%以下が好ましい。アルギン酸プロピレングリコールエステルの粘度としては、結晶セルロースとの複合化が進みやすい点から、粘度(固形分1%の水溶液として)は300mPa・s以下であることが好ましい。 より好ましくは、100mPa・s以下であり、さらに好ましくは、70mPa・s以下である。また、下限は、粘度は2mP・s以上であることが好ましい。粘度が2mPa・s以上であれば、結晶セルロースとの複合化が進み易い。
【0011】
本実施形態において、「カルボキシメチルセルロース・ナトリウム」とは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で一部置換されたものである。カルボキシメチル基の置換度(エーテル化度)に関しては、結晶セルロースとの複合化が進みやすい点から、0.5〜1.5であることが好ましい。より好ましくは0.5〜1.0であり、さらに好ましくは、0.7〜0.9である。粘度(固形分2%の水溶液として)に関しては、結晶セルロースとの複合化が進みやすい点から、300mPa・s以下が好ましい。より好ましくは100mPa・s以下であり、さらに好ましくは50mPa・s以下であり、特に好ましくは10mPa・s以下である。また、エ−テル化度は、1.3以下、粘度は2mP・s以上であることが好ましい。エーテル化度が1.3以下、粘度2mP・s以上であれば、結晶セルロースとの複合化が進み易い。
【0012】
上記した粘度は、次の方法で測定できる。アルギン酸プロピレングリコールエステル又はカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを、純水に溶解する(例えば、粉末の場合は、水分散液の全量を300mLにし、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製、エクセルオートホモジナイザーED−7型)を用いて、15000rpmで、溶解するまで分散させる。)。その後、25℃で1時間恒温した後、B型粘時計(TOKI SANGYO製 VISCOMETER TV−10型)を用いて計測する。ロータータイプは粘度に応じて選択し、水溶液にセットする。セット後30秒間静置した後、60rpmで30秒間ローターを回転させた際に、粘度が測定される。
【0013】
本実施形態において、結晶セルロース複合化物は、結晶セルロースを50〜95質量%含み、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%含む。結晶セルロースが50質量%以上であれば、乳化型ドレッシング中の結晶セルロースの量が十分であり、分離、ゲル化等が抑制される。また、結晶セルロースが95質量%以下であれば、結晶セルロースに対してアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの量が十分であり、結晶セルロース複合化物を乾燥及び粉体化しても、結晶セルロース同士の角質化を防止できる。角質化した結晶セルロースは、それを水中で分散させたとしても分散しにくく、微細な結晶セルロース粒子数が不十分となる。その場合、分散液において結晶セルロースの網目構造が形成され難く、分離、ゲル化等を防止できない。結晶セルロースの含有量は、より好ましくは55〜90質量%であり、さらに好ましくは、60〜90質量%である。
特に好ましくは、70〜85質量%である。
【0014】
本実施形態において、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルとが複合化することで、結晶セルロース表面に親油性が付与される。親油性が付与されることにより、油球同士が合一することを抑制でき、分散状態を保つことができる。また、結晶セルロースとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとが複合化することによって、結晶セルロース表面の電位が強化されて、結晶セルロース複合化物間の静電反発力が生じ、結晶セルロース複合化物を分散させた場合に、安定な懸濁状態となる。
上記の親油性と、懸濁安定性を共に兼ね備えた結晶セルロース複合化物は、分離やゲル化等の抑制効果が高い。親油性と懸濁安定性をバランス良く得るには、アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比を、1/9〜9/1とすることが好ましい。より好ましくは、2/8〜8/2、さらに好ましくは、4/6〜6/4である。
【0015】
本実施形態において、結晶セルロース複合化物は、さらに乳化剤を含有することが好ましい。本実施形態において、「乳化剤」とは、親水基と疎水基を併せ持つ両親媒性化合物のことである。その化学構造は特に制限されるものではないが、例えば以下の化合物が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖イソ酪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル類、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン酢酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル類、ステアロイル乳酸カルシウム、オキシエチレン高級脂肪族アルコール、オレイン酸ナトリウム、モルホリン脂肪酸塩、ポリオキシエチレン高級脂肪族アルコール等の特殊用途用界面活性剤類を用いることができる。これらは、二種以上を併用することも可能である。
【0016】
特に、上記の乳化剤のなかでも、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。本実施形態において、「ショ糖脂肪酸エステル」は、ショ糖の水酸基と脂肪酸が脱水縮合しエステル化した化合物のことである。このショ糖脂肪酸エステルは、親水性と疎水性のバランスを示すHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が10以下のものを用いると、結晶セルロースと乳化剤が複合化しやすく、分離やゲル化抑制の効果が高くなるため好ましい。より好ましくは、HLBは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。
【0017】
本実施形態において、乳化剤の好ましい含有量は、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの含有量の合計を100質量部として、0.1質量部以上である。より好ましくは、0.5質量部以上であり、さらに好ましくは1質量部以上であり、特に好ましくは、1.5質量部以上である。乳化剤の添加量が多すぎると、遊離の乳化剤が増量し凝集等を引き起こしたり、味がわるくなったりするために、上限は10質量部以下が好ましい。より好ましくは、5質量部以下である。
また、本実施形態において、結晶セルロース複合化物は、発明の効果を失わない程度に親水性物質を含有してもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質である。具体的には、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、蔗糖、乳糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)等が挙げられる。親水性物質としては、これらより選ばれる2種以上の物質を用いてもよい。最も好ましい親水性物質はデキストリンである。
【0018】
さらに、結晶セルロース複合化物は、本発明の目的を損なわない範囲で、各種目的に応じて添加剤を含むことができる。添加剤の具体例としては、甘味剤、乳化剤、単糖類、多糖類、オリゴ糖類、糖アルコール類、デンプン類、可溶性デンプン、デンプン加水分解物、油脂類、蛋白質類、食塩、各種リン酸塩類等の塩類、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、酸味料、保存料、殺菌料、参加防止剤、防かび剤、日持ち向上剤、香料、色素等を挙げることができる。
【0019】
本実施形態において、結晶セルロース複合化物は、固形分1.0質量%の水分散液における貯蔵弾性率が0.1Pa以上である。この貯蔵弾性率が高い程、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの複合化が進んでいることを示しており、本発明の効果が大きくなるため好ましい。好ましくは、0.3Pa以上であり、より好ましくは0.7Pa以上であり、さらに好ましくは1Pa以上である。貯蔵弾性率の上限は、特に設定されるものではないが、現実的な範囲としては5Pa以下である。
【0020】
上記の貯蔵弾性率は、以下の方法で測定されるものである。
<貯蔵弾性率>
(1)固形分1質量%の水分散液となるように結晶セルロース複合化物と純水を量り取り、エースホモジナイザー((株)日本精機製作所、ED−7型)にて、15000rpmで5分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3日間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置に、サンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、貯蔵弾性率(G’)を求める。
装置:ARES(100FRTN1型)
(Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度:25℃
歪み:5%(固定)周波数:0.1→100rad/s
貯蔵弾性率は、上記の方法において、周波数0.1→100rad/sで掃引された周波数−貯蔵弾性率の曲線において、周波数20rad/sにおいて示される値のことである。
【0021】
本実施形態において、結晶セルロース複合化物の水分散時における平均粒径の範囲は1〜20μmが好ましい。平均粒径が前述の範囲ならば、結晶セルロース複合化物が添加されたドレッシングを食する際に、口腔内でざらつきを感じにくく、食感が優れるため好ましい。より好ましくは3〜15μmであり、さらに好ましくは4〜12μmであり、特に好ましくは5〜9μmである。
ここで、結晶セルロース複合化物の平均粒径とは、次の方法で測定した粒径のことである。結晶セルロース複合化物を1質量%で純水に希釈し、全量300mLの水分散液をつくる。それを、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)に導入し、15000rpmで、5分間分散する。これを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−910型)に導入し、超音波で1分間処理し、相対屈折率1.20で得られる積算体積50%の平均粒径として測定されるものである。
【0022】
また、結晶セルロース複合化物の水分散時における微粒子成分量としては、20%以上が好ましい。微粒子成分とは、1μm以下の粒子のことである。微粒子成分が前記の範囲を満たすことで、結晶セルロース複合化物を含む乳化型ドレッシングを保存した際に、ゲル化が発生しにくいため好ましい。より好ましくは30質量%以上である。さらに好ましくは35質量%以上である。特に好ましくは、40質量%以上である。上限は、99質量%である。
【0023】
ここで、微粒子成分量は、次の方法で測定できる。結晶セルロース複合化物を、1質量%として純水で希釈し水分散体を全量300mLにし、ホモジナイザー(NIHON SEIKI KAISYA製 エクセルオートホモジナイザーED−7型)に導入し、15000rpmで、5分間分散した水分散液を作る。これを、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製 LA−910型)に導入し、超音波で1分間処理し、相対屈折率1.04で得られる1μm以下の成分含量として測定されるものである。
【0024】
次に、結晶セルロース複合化物の製造方法を説明する。
結晶セルロース複合化物の製造方法としては、例えば結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを含む混合物を混練機等を用いて混練する方法等が挙げられる。この際に、必要に応じて、乳化剤、親水性物質、添加剤を添加しておくことも可能である。また、親水性物質と添加剤の添加に関しては、混練前に予め親水性物質と添加剤を混ぜ合わせてから添加してもよいし、添加剤を添加して混練後、親水性物質をさらに加えて混ぜ合わせてもよい。
【0025】
混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよく、二種以上を組み合わせてもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の摩擦等により発熱する場合には、除熱しながら混練してもよい。
混練工程においては、混練物の粘性が高い半固形状態で混練することが好ましく、混練時の固形分は10質量%以上とすることが好ましい。この範囲で混練を制御することで、混練物が水分量の多いシャバシャバな状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、特に好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以下である。混練工程において、固形分を調整するために加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。
【0026】
ここで、上記した混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、結晶セルロースとアルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムとの複合化が進み、分離やゲル化等の抑制効果が高まるため好ましい。
複合化の程度は、結晶セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、結晶セルロース複合化物の貯蔵弾性率(G’)が高くなる。混練エネルギーが高い程、磨砕性が高まると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると工業的に過大な設備になるのでコストの点から好ましくない。この観点から、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgである。
【0027】
結晶セルロース複合化物を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後の結晶セルロース複合化物の含水率は1〜20質量%が好ましい。
結晶セルロース複合化物を市場に流通させる場合は、粉体の方が取り扱いやすいので、乾燥により得られた結晶セルロース複合化物を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、上記の乾燥方法において、噴霧乾燥を選択した場合は、粉砕の必要はない。乾燥した結晶セルロース複合化物を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度が10〜250μmとなるように粉砕することである。
結晶セルロース複合化物は、種々の用途に応じて、粉末状(粉末同士を混合したもの)、液体状、固体状、ゲル状又はペースト状等、どのような形態でも使用することができる。また、結晶セルロース複合化物は、飲料又は食品に添加して使用することもできる。
【0028】
次に、本発明の乳化型ドレッシングについて、詳細に説明する。
本発明の乳化型ドレッシングとは、水相と油相が乳化されたドレッシングのことである。乳化型ドレッシングの具体例としては、マヨネーズ、タルタルソース、サラダクリーミードレッシング、トンカツソース、たれ等の半固体状のもの、フレンチドレッシング、シーザーサラダドレッシング、ラーメンスープ等の乳化液状のものが挙げられる。
また、乳化型ドレッシングには、酸性のものと、中性のものがある。酸性のドレッシングの具体例として、フレンチドレッシング、シーザーサラダドレッシング、マヨネーズ、タルタルソース、コールスロードレッシング、トンカツソース等である。pHは6.5以下が好ましい。中性のドレッシングの具体例として、焼肉のたれ、ラーメンスープ等である。pHは8.0以下、塩濃度は10%以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態の乳化型ドレッシングは、固形物を含んでもよい。固形物の具体例としては、ゴマ、青しそ、ゆず、梅、スパイス、ハーブ、コショウ、ガーリック、乾燥こんにゃく加工品、抹茶、緑茶などの粉末茶、リンゴなどの果実やダイコン、ショウガ、タマネギなどの野菜のカット品、おろし、ピューレ、パルプ、さのうなどや、カットゼリーなどが挙げられるが、特に限定されない。これらから選ばれる2種以上を使用することも出来る。ドレッシングに配合する固形物の固形分は10%以下が好ましい。それ以上に配合すると、固形物が沈降又は浮上したりして、安定化することが困難となる。
【0030】
本実施形態の乳化型ドレッシングは、上記の結晶セルロース複合化物を、0.1質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは、1質量%以上であり、特に好ましくは2質量%以上であり、最も好ましくは、3質量%以上である。結晶セルロース複合化物の配合量は多いほど、本発明の効果が向上するため、上限は特に設定されるものではないが、10質量%以下である。10質量%を越えると、ドレッシングの粘度が1000mPa・sを越え低粘度ではなくなったり、ゲル化を起こす場合がある。
【0031】
本実施形態において、結晶セルロース複合化物は、乳化型ドレッシングの安定剤として高い機能を有しているため、上記のように低濃度で効果が高く、コストが低い食品用安定剤である。加えて、上記濃度範囲でドレッシングに配合させても、味に影響せず、食感を損なうこともない。
本実施形態の乳化型ドレッシングの粘度は、結晶セルロース複合化物を1.0質量%配合したときに、1000mPa・s以下となることが好ましい。この時の粘度の測定条件は、製造1日後(5℃)に、B形粘度形(ローターNo.3、ローター回転数30rpm)で測定した。より好ましくは、900mPa・s以下であり、さらに好ましくは、800mPa・s以下である。
【0032】
本実施形態の乳化型ドレッシングに配合する食用油脂としては、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂、動物油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、米油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油を挙げることができる。食用油脂の配合量は、ドレッシング全量に対して10〜60質量%の範囲で用いることが好ましい。食用油脂はドレッシングの風味に関係する重要な成分であり、10質量%未満では、ドレッシングとしての風味が乏しくなることがあり、60質量%を超えるとドレッシングの粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなることがある。より好ましくは15〜55質量%である。
【0033】
本実施形態の乳化型ドレッシングに、その他の通常使用される原料を配合してもよい。その具体例としては、酢、醤油、食塩、糖類、甘味剤、果汁、酸味剤、辛料、旨み剤、化学調味料等の調味料や、香料、着色料、乳化剤、保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
食塩としては、一般的に使用されている食塩を用いればよいが、塩分が過剰に成らないように、配合割合はドレッシング全量に対して30質量%以下の範囲内が適当である。
甘味料としては、デキストリン、オリゴ糖、砂糖、キシロース、グルコース、糖アルコール、還元水あめ、サッカリンナトリウム、キシリトール、アスパルテーム、スクラロース、ソルビトール又はステビア等が挙げられる。
酸味料としては、食酢、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、柑橘果汁等が挙げられる。
旨味剤としては、例えばグルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ等の化学調味料、粉末醤油、蛋白加水分解物、酵母エキス、「鰹節、さば節、イワシ煮干し、昆布、椎茸」等の粉末又は抽出エキスなどが挙げられる。
【0034】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド、反応モノグリセライド、ジ・トリグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等)及び、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、ステアロイル乳酸塩(ナトリウムもしくはカルシウム)、ポリソルベート及び大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン等が挙げられる。
また、ビタミン、カルシウム、鉄、DHAの栄養剤等を配合してもよい。
上記したその他の通常使用される原料は、単独又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
本実施形態の乳化型ドレッシングの好適な形態の一例として、ゴマドレッシングが挙げられる。ゴマドレッシングとは、ゴマ成分を含有した水中油滴型の乳化液状ドレッシング様の食品である。一般的には、ゴマ成分、食用油脂、卵黄または全卵、および酸味料からなり、該成分に調味料、香辛料、デンプン、増粘剤、着色料、香辛料等の食品素材や食品添加物を適宜配合して得られる。卵黄または全卵の代わりに、食品用乳化剤を用いてもよく、あるいは、これらを併用してもよい。
ここで、ゴマ成分とは、ゴマ種子をミル等で流動性の認められる程度まですり潰したペースト状のもののことである。これに煎りゴマや煎りゴマを擦ったものを加えたものでもよい。ゴマ等の種類等は特に制限されない。ゴマ成分の配合量は、例えば、ゴマドレッシングの全体量に対して、1〜30質量%範囲で用いることが出来る。1質量%未満では、ゴマ特有の風味に乏しくゴマドレッシングとして物足りなさを感じる。30質量%を越えるとゴマドレッシングの粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れにくくなる。好ましくは2〜25質量%である。
【0036】
ゴマドレッシングで用いられる食用油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ゴマ油、ヤシ油、パーム油等の植物性油脂、牛脂、ラード等の動物性油脂及びこれらの水添脂、これらの分別脂、これらのエステル交換脂等が単独または二種以上混合して使用される。
上記した食用油脂の配合量は、ゴマドレッシング全量に対して10〜60質量%の範囲で用いることが好ましい。食用油脂は調味料の風味に関係する重要な成分であり、10質量%未満では、調味料としての風味が乏しくなることがあり、60質量%を越えるとゴマドレッシングの粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなることがある。より好ましくは15〜55質量%である。
【0037】
ゴマドレッシングで用いられる酸味料としては、食酢、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、柑橘果汁等が挙げられる。これらは、単独または二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
ゴマドレッシングで用いられる卵黄や全卵およびまたは食品用乳化剤、酸味料、調味料、香辛料、デンプン、増粘剤、着色料、香辛料等の食品素材および食品添加物の配合量は、乳化液状ドレッシング様の物性、食感および風味を有する範囲で適宜選択されるものである。
【0038】
本実施形態の乳化型ドレッシングの製造方法としては、上記説明した各種成分を原料として、一般的な乳化液状ドレッシングの調製方法を採ればよい。結晶セルロース複合化物は、粉体のまま用いてもよく、水又は酸味料水溶液に分散して用いてもよい。
以下で、調整方法の一例を述べるが、これに限定されるものではない。
結晶セルロース複合化物と、食用油脂以外のその他の原料(水、調味料、酸味料、卵黄など)を撹拌層に投入し、ホモミクサー等の攪拌機をもちいて均一な状態となるまで撹拌する。最後に食用油脂を投入して撹拌し、水中油型の乳化液状ドレッシングを調整する。撹拌は減圧下で行うことも可能である。殺菌の目的で加熱しても良い。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。なお、本発明の実施例等で用いる測定評価手段などは以下の通りである。
【0040】
<外観の評価基準(分離に関する評価)>
ドレッシングに分離が発生して、ドレッシング容器の下部に水分が分離する様子を以下の基準で評価する。
3:全くなし
2:ごくわずかに発生(容器の底面から5%未満の分離である)
1:あり(容器の底面から5%以上10%未満の分離である)
0:著しく発生(容器の底面から10%以上の分離である)
2点以上が実用的に充分使用可能である。
【0041】
<ゲル化の評価基準>
ドレッシングにゲル化が発生した場合の評価を以下の基準で評価する。ゲル化とは、ドレッシングが流動性を失い、多少の弾性と固さを持って固化する現象であり、容器を上下に一定のスピードで軽く振った程度では均一にはならない。
3:全くなし
2:ごくわずかに発生(容器を上下に1回振とうし均一になる)
1:あり(容器を上下に数回振とうし均一になる)
0:著しく発生(容器を上下に振とうしても均一にならない)
2点以上が実用的に充分使用可能である。
【0042】
<ドレッシングの粘度>
製造1日後(5℃保存)に、B形粘度計(ローターNo.3、ローター回転数30rpm)で測定した。
以下の実施例及び比較例では、結晶セルロースをMCC、アルギン酸プロピレングリコールエステルをPGA、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムをCMC、ショ糖脂肪酸エステルをSEと略して記載する。
【0043】
[実施例1]
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い固形分が50質量%のウェットケーキ状の結晶セルロースを作製した。
プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)にMCC、PGA((株)大阪アルギン、NLS−K)、CMC(第一工業製薬(株)、F−5A)を、MCC/PGA/CMCとの質量比が90/9/1となるように投入し、固形分35質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Aを得た。混練エネルギーは55Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物AのG’は0.15Paであった。また、結晶セルロース複合化物Aの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.5μm、31.5%であった。
【0044】
結晶セルロース複合化物Aを用いて次のようにしてゴマドレッシングを作った。
結晶セルロース複合化物Aを固形分で1.0質量部、砂糖10.0質量部、食塩2.0質量部、粉からしを0.4質量部の粉体類をポリ袋中で混合する。次に、温水(80℃)21質量部にポリ袋中で混合した粉体類を温水中に全量を投入し、TKホモミクサ(MARK2型:特殊機化工業(株)製)を用いて、10000rpmで10分間攪拌した。そこへ、サラダ油15.0質量部、薄口醤油7.6質量部、穀物酢26.0質量部、白ゴマペースト10.0質量部、ゴマペースト7.0質量部を加え、更にTKホモミクサにて10000rpmで10分間、80℃に温度調節しながら撹拌した。撹拌停止後は、透明な容器に入れて、流水で室温まで冷却し、1.5ヶ月室温で静置保存し、外観の均一性(分離、ゲル化)を目視観察した。結果を表2に示す。
【0045】
[実施例2]
実施例1と同様の質量比でMCC、PGA、CMCを混練し、結晶セルロース複合化物Bを得た。混練エネルギーは100Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物BのG’は0.30Paであった。また、結晶セルロース複合化物Bの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.1μm、33.3%であった。
結晶セルロース複合化物Bを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0046】
[実施例3]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が50/25/25となるように投入し、固形分43質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し、結晶セルロース複合化物Cを得た。混練エネルギーは80Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物CのG’は0.25Paであった。また、結晶セルロース複合化物Cの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.4μm、32.3%であった。
結晶セルロース複合化物Cを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0047】
[実施例4]
実施例3と同様の質量比で、固形分43質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し、結晶セルロース複合化物Dを得た。混練エネルギーは250Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物DのG’は0.75Paであった。また、結晶セルロース複合化物Dの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.7μm、39.4%であった。
結晶セルロース複合化物Dを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0048】
[実施例5]
MCC、PGA、CMC及び乳化剤を、MCC/PGA/CMC/SEの質量比が84/8/8/4となるように投入し、固形分40質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Eを得た。混練エネルギーは200Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物EのG’は0.70Paであった。また、結晶セルロース複合化物Eの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.8μm、38.2%であった。
結晶セルロース複合化物Eを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0049】
[実施例6]
実施例5と同様の質量比で、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Fを得た。混練エネルギーは280Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物EのG’は1.40Paであった。結晶セルロース複合化物Fの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.6μm、42.6%であった。
結晶セルロース複合化物Fを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表2に示す。
上記したいずれの実施例も、混練中の混練物は、50℃以下であった。
【0050】
[比較例1]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が80/10/10となるように投入し、固形分30質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し、結晶セルロース複合化物Gを得た。混練エネルギーは10Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物GのG’は0.02Paであった。また、結晶セルロース複合化物Gの平均粒子径及び微粒子成分量は、9.0μm、30.5%であった。
結晶セルロース複合化物Gを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0051】
[比較例2]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が45/28/27となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Hを得た。混練エネルギーは120Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物HのG’は0.22Paであった。また、結晶セルロース複合化物Hの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.6μm、32.1%であった。
結晶セルロース複合化物Hを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表4に示す。
比較例2は、貯蔵弾性率は本願範囲に入るものの、結晶セルロースの含有量が低いため、ゴマドレッシング中での、結晶セルロース複合化物Hの分散が悪く、だまになる傾向を示した。
【0052】
[比較例3]
MCC、PGA、CMCを、MCC/PGA/CMCの質量比が96/2/2となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Iを得た。混練エネルギーは80Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物IのG’は0.06Paであった。また、結晶セルロース複合化物Iの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.8μm、31.7%であった。
結晶セルロース複合化物Iを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0053】
[比較例4]
MCC、PGA、CMC及び乳化剤を、MCC/PGA/CMC/SEの質量比が70/15/15/3となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。その後、126rpmで混練し結晶セルロース複合化物Jを得た。混練エネルギーは40Wh/kgであり、結晶セルロース複合化物JのG’は0.08Paであった。結晶セルロース複合化物Jの平均粒子径及び微粒子成分量は、8.7μm、32.0%であった。
結晶セルロース複合化物Jを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表4に示す。
【0054】
[比較例5]
MCC、PGAを、MCC/PGAの質量比が70/30となるように投入し、固形分48質量%となるように加水した。その後、ホバートミキサー中で数分間混合した。該混合物を、混練二軸押し出し機(栗本鉄工所製 S2KRCニーダ)を通して、せん断した。混練エネルギーは80Wh/kgであった。この混練物を固形分が6質量%となるよう純水を加え(全量2500g)、数分間ミキサーで攪拌し、pHを8.0に調整し、得られたスラリーを17MPaでマントンゴーリンホモジナイザー(APV製、15MR−8TA型)を通し、噴霧乾燥(噴霧化ノズルφ0.25cm、缶体径0.9mのBowen型噴霧乾燥機、入口温度195℃/出口温度95℃)し、結晶セルロース複合化物Kを得た。結晶セルロース複合化物KのG’は0.08Paであった。また、結晶セルロース複合化物Kの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.9μm、30.5%であった。
結晶セルロース複合化物Kを用いて実施例1と同様にゴマドレッシングを作製し、評価した。結果を表4に示す。
カルボキシメチルセルロースを含有しない結晶セルロース複合化物Kは、貯蔵弾性率が、実施例に比較的近いものの、ゴマドレッシングに配合した際に、分離が発生した。
【0055】
[比較例6]
MCC、親水性高分子としてキサンタンガム、加水分解した澱粉の質量比が75/5/20となるように配合して、固形分48質量%となるように加水した。その後、混練二軸押し出し機(栗本鉄工所製 S2KRCニーダ)を通して、せん断した。混練エネルギーは65Wh/kgであった。この混練物をオーブン(105℃)で熱風乾燥し、ハンマーミルにて粉砕し、結晶セルロース複合化物Lを得た。結晶セルロース複合化物LのG’は0.08Paであった。また、結晶セルロース複合化物Lの平均粒子径及び微粒子成分量は、7.5μm、29.5%であった。
【0056】
結晶セルロース複合化物Lを用いゴマドレッシングを作製し、評価した。水146.5g、醤油150g、液糖145g、食酢65g、ゴマ成分(市販練りゴマ)50g、20%加糖殺菌凍結卵黄8gを加えて、TKホモミクサ(MARK2型:特殊機化工業(株)製)にて6000rpmで5分間撹拌した。続いて撹拌しながら、結晶セルロース複合化物L20g、キサンタンガム0.5g、食塩15gを加え、更に5分間撹拌した。更に撹拌しながら、コーンサラダ油380gとゴマ油20gを滴下し、更に5分間撹拌し、95℃湯浴中にてプロペラ撹拌しながら90℃になるまで加温した後、220mlのガラス容器に200g充填し、流水中で室温まで冷却して水中油型の乳化液状ドレッシング様のゴマ含有調味料を得た。この時のゴマ含有調味料のpHは4.0であった。結果を表4に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
[実施例7]
結晶セルロース複合化物Eを用いて、次の如くマヨネーズを作製した。予め、結晶セルロース複合化物Eを固形分で2.0質量部、キサンタンガム0.3質量部、卵黄10質量部、水41.7質量部を量り取り、ケンミックス・メタリック(KM−800型)において回転数MAXで5分間撹拌する。その後、サラダ油35.0質量部を加え、ケンミックス・メタリック(KM−800型)にて回転数MAXで30分間撹拌する。その後、調味料4.0質量部、食酢7質量部を加え、同じくケンミックス・メタリック(KM−800型)にて回転数MAXで5分間撹拌する。その後、卓上コロイドミル((株)日本精機製作所)3000rpmで通し、透明な容器に入れマヨネーズを作製した。
マヨネーズの評価は、2ヶ月室温で静置保存し、外観の均一性(分離)を目視で観察した。その結果、分離、ゲル化は全くなく良好な状態を示した。また、粘度の低下率も測定した。作製1日後の15300mPa・s(B形粘度形で測定。条件はNo.4ローター使用。30rpmで30秒間測定した)に対し、2ヵ月後も粘度は15280mPa・sと変化はなかった。
【0062】
[実施例8]
結晶セルロース複合化物Eを用いて、次の如くフレンチドレッシングを作製した。予め、結晶セルロース複合化物Eを固形分で1.0質量部、塩1.0質量部、こしょう0.3質量部、砂糖1.8質量部の粉体類をポリ袋中で混合する。水20.0質量部に粉体類を投入し、TKホモミクサ(MARK2型:特殊機化工業(株)製)にて10000rpmで10分間攪拌した。これにサラダ油27.6質量部、酒13.8質量部、酢34.5質量%を加え、更にTKホモミクサにて10000rpmで10分間撹拌した。撹拌停止後は、透明な容器に入れて、1ヶ月室温で静置保存し、外観の均一性(分離、ゲル化)を目視観察した。その結果、分離、ゲル化は全くなく良好な懸濁状態を示した。
【0063】
[実施例9]
結晶セルロース複合化物Eを用いて、ラーメンスープを作製した。煮干し・鰹節のダシと鶏・豚のダシを作製し、それを1:1で混ぜてラーメンスープとした。まず、煮干し・鰹節のダシを作製した。鍋に水2Lと結晶セルロース複合化物E20g、市販の煮干し30g、市販の真昆布10gを入れて、弱火で30分間、沸騰しないように加熱し火を止める。その後、市販の鰹節50gを入れて、蓋をして、そのまま3分間待ち、濾過して液体のみを採り、煮干しと鰹節のダシを作製した。次に鶏・豚のダシを作製した。鍋に水2L、豚と鶏の挽肉をそれぞれ200g、長ネギ2本、玉葱2個、ニラ1本、生姜30g、人参1本を入れ、弱火で沸騰しないようにアクをとりながら3時間ほど煮込み、鶏・豚のダシを作製した。
煮干し・鰹節のダシと鶏・豚のダシをそれぞれ500g透明の容器に採り、3日間室温で静置保存し、外観の均一性(分離)を目視観察した。その結果、分離することなく良好な懸濁状態を示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、結晶セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを含む結晶セルロース複合化物を含む乳化型のドレッシングに関する発明であり、粘度が低く、長期間の保存においても分離及びゲル化せず、乳化安定性に優れる。様々な食品に添加されるドレッシング等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶セルロースを50〜95質量%、アルギン酸プロピレングリコールエステル及びカルボキシメチルセルロース・ナトリウムを合計5〜50質量%含有する結晶セルロース複合化物であり、固形分1.0質量%の水分散液としたときの貯蔵弾性率が0.1Pa以上である結晶セルロース複合化物を含むことを特徴とする乳化型ドレッシング。
【請求項2】
アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロース・ナトリウムの質量比が1/9から9/1であることを特徴とする請求項1記載の乳化型ドレッシング。
【請求項3】
結晶セルロース複合化物が、さらに乳化剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の乳化型ドレッシング。
【請求項4】
結晶セルロース複合化物を0.1質量%以上10質量%以下含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乳化型ドレッシング。