説明

乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ

【課題】乳製品の一部もしくは多くを代替できるような原料をもって、おいしくかつ安価にミルク系のハードキャンディ及びミルク系ノンシュガーハードキャンディを作製すること。
【解決手段】バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸溶液と糖質を加熱させてなる乳味増強物を、糖質、乳製品を主成分とするハードキャンディに対し、固形分として0.001〜1.0重量%含有することを特徴とする乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳味が増強されたミルク系ハードキャンディに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードキャンディは、世界的に食されている菓子類の一つであり、その中で生クリームやバターなどの乳製品を使用したようないわゆるスカッチキャンディは、世界的に見ると大きな市場を形成している。例えば、ヴェルタースオリジナルは世界的に普及しており、日本においても人気のあるスカッチキャンディである。また本件出願人が製造しているミルクキャンディである「特濃ミルク8.2」(商品名)も日本において確固たる市場を形成している。いずれにおいても乳製品をふんだんに原料として使用することで、ミルクのおいしさを出来る限り引き出したミルク系のハードキャンディとして、大きな市場を確立している。
【0003】
しかしながら、このようなミルク系のハードキャンディに不可欠である乳製品は、供給バランスや生乳の生産量によって大きく価格変動するものであり、乳製品を多量に使用したキャンディでは、原料コスト調整をするのが困難となることが多い。
【0004】
一方、近年のハードキャンディの市場は、のど飴を中心にノンシュガー化が進み、のど飴以外の他のハードキャンディにもノンシュガー化の要求は高まってきている。
【0005】
その背景には、近年の健康ブームやメタボリックシンドロームがあげられ、おいしいものを食べたいものの虫歯になりたくない、カロリーを抑えたいといったニーズが高まっているという現状がある。実際にその要求を満たすべく、ノンシュガーのフルーツキャンディや珈琲キャンディなどがすでに発売されている。
【0006】
しかしながら、世界的に見ても日本においても大きな市場を形成しているミルク系のハードキャンディにおけるノンシュガー化は他のキャンディのノンシュガー化と比べるとそう多くは見られない。
【0007】
その理由ははっきりしており、ハードキャンディをノンシュガーとするには、キャンディ100g当たり糖類を0.5g未満に抑える必要があるものの、ミルクキャンディのおいしさに不可欠である乳製品は乳糖を含むため、その添加量には大きな制限をうけるからである。実際に、商品として発売されているノンシュガーのミルクキャンディは、ミルク系の香料のみで作られていたり、やや乳糖含量が少ない生クリームやバター、乳タンパク質分解物などを限られた量添加して作られていたりと、工夫はなされているものの、やはりどのような乳製品をどれだけ添加してもよいシュガーベースのミルクキャンディと比べるとおいしさの面で圧倒的に劣るからである。
【0008】
一方、キャンディにかかわらず、今までも、乳味を増強・向上させるべく様々な提案がなされている。
【0009】
例えば、玄米あるいは催芽処理させた玄米を微砕処理して得られる粉末を、乳製品を含有する飲食品に添加し、加熱することによって乳製品の乳風味を増強するという提案がある(特許文献1)。確かに、玄米は香ばしい味を有しており、少量の添加によってミルク感を引き上げる効果はある。しかしながら、さらにミルク感を向上させようと玄米を添加すると、玄米の香ばしさが前面に出てきてしまい、ミルク感増強とは目的が異なるものとなってしまう。また、好ましくは玄米粉末の粒子径が50μm以下であると記載があるが、この玄米粉末をキャンディに練りこむと、粒子径が50μm以下であってもざらつきを感じ、なめらかな舐め心地とはならないという問題もある。
【0010】
他にも、コーン粉末と油脂を水の沸点以下で接触処理したものを利用した乳風味増強材の提案がある(特許文献2)。この提案によると接触処理温度として水の沸点以下と記載があり、比較例で水の沸点以上で接触処理すると効果はないとしている。ハードキャンディを作るためには濃縮という工程が不可欠であり、100℃以上の温度で濃縮する必要があるが、この提案では、水の沸点以下で処理したものを原料として、その後沸点以上で加工した場合の是非についてはふれられておらず、この提案は、バターやクリーム、牛乳のような水の沸点以下で加工するものにはあてはまると考えられるが、100℃以上の温度で濃縮するハードキャンディにはあてはまらない。
【0011】
他にも、スクラロースを添加することでの乳感の向上の提案がある(特許文献3)。スクラロースは高甘味度甘味料であり、少量の添加で甘さを感じ、その甘さにより乳感は幾分向上する。しかしながら、スクラロースをさらに添加すると、乳感の向上というより甘さだけが強くなり、乳感の向上には限界がある。
【0012】
他にも、ペプチドとカルボニル化合物とのアミノ−カルボニル反応物を、乳固形分を含有する飲食品に添加するという提案がある(特許文献4)。しかしながら、この提案では、酵素反応及びアルカリ処理等を行い、目的の分子量の反応物を得る必要があり、非常に手間がかかりコストも高くなること、および、ペプチドの起源であるタンパク質の味の影響を受けやすいという問題がある。
【0013】
他にも、焙煎コーヒーを水、極性有機溶媒又はこれらの混合物で抽出して得られる抽出物を分画処理して得られた画分を有効成分とする乳製品の香味増強剤の提案がある(特許文献5)。この提案によると、ごく少量のコーヒー分画物で効果があるとされているものの、コーヒーを各溶媒で抽出するという工程には限外濾過もしくはクロマトグラフィーなどの工程があり、さらにその中から限られた画分しか使用することが出きないというデメリットがあるため、非常に手間がかかること、及び残りの画分に対する用途も考えないといけないという問題がある。
【0014】
他にも、5’−グアニル酸ナトリウムを3重量%以上含有する酵母エキスと脱脂粉乳または脱脂乳を含む乳製品用調味剤の提案がある(特許文献6)。一般的に酵母エキスはコク味を増強するというものであるが、酵母由来のいわゆる「酵母臭」が出てしまうという問題がよく起こり用途が限られることが多い。この提案において酵母臭が減少しているとの記載はないため、やはり使用用途・添加量が限られ、酵母臭がでない範囲内での使用となってしまうため、ミルク感の増強、付与には限界がある。
【0015】
他にも、バターミルクを遠心分離して乳脂肪球を除去し、限外濾過を行って得た濃縮液を乾燥処理してコロイド分散系成分を含有する粉末を得ることを特徴とする乳風味付与剤の提案がある。(特許文献7)バターミルクはバター製造時の副産物であり、原料供給に限りがあったり、腐敗等の管理も必要であったり、また目的の添加液を作製するために遠心分離、限外濾過及び乾燥処理等の工程が複雑であったりする、欠点を有する。
【0016】
また、ミルク風味とバター風味が増強されたバターフレーバーの提案(特許文献8)、特定のジスルフィド化合物を含有することにより、乳のナチュラル感、フレッシュ感、ふくよかな乳感を付与増強する香料組成物の提案(特許文献9)、牛乳をポーラスポリマー等に接触させた後、吸着成分を溶出して得たフレーバー溶出液によって味が軽く、きれのよい後味、ナチュラルな香味、生乳感の付与に優れたナチュラルミルクフレーバーの提案(特許文献10)、極微量の(Z)−6−オクテナールを添加することによる乳風味付与または増強剤の提案(特許文献11)、カカオリカーまたはココア粉末を、アミノ酸、糖類及び水と混合した後、80℃〜100℃の温度で加熱し(第一工程)、次いで、この加熱生成物に乳または乳製品を添加して40〜80℃の温度で更に加熱することによってクックドココアフレーバーを製造する提案がある(特許文献12)。いずれにおいても、香料すなわち香りの付与という面では一定の効果があると考えられる。しかしながら、あくまで香味向上であり、十分なボディ感、呈味及び乳味は香料では実現することは難しい。さらに香料は一般的に加熱加工工程において揮発し力価が減少するという欠点を有したものである。
【0017】
他にも、砂糖、水飴の溶融系に、糖類とタンパク質を用いて水難溶性フレーバー物質に水に分散する性質を付与して可溶化様の状態にした液状またはペースト状の水分散性フレーバーと、他の香料製剤と、果汁または乳原料とアミノ酸類および糖類を混合加熱して得た呈味組成物をキャンディ類中に含有させることで、トップノートの強さ、香気香味の強さの持続性が顕著に改善されるという提案がある(特許文献13)。この提案は、高温で作製されるキャンディ類に対して、高温下での混合においても、香料のトップノート(香料の先立ち)、香料残留性を高め、香気香味の強さの持続性が得られるというものである。あくまで香料の改質の提案であり、十分なボディ感、呈味及び乳味は香料では実現する事はむずかしい。
【0018】
また、コーヒー分に強塩基性物質および/または塩基性アミノ酸を添加し、乳分と混合した後に加熱殺菌するという乳入りコーヒー飲料の提案がある(特許文献14)。これは乳分混合時の凝固を防止し、かつ、加熱殺菌後の沈殿物の発生が防止でき、乳化剤や糊料の添加量を低減することを効果の目的としているものであって、乳味増強を目的としたものではない。添加するアミノ酸としても我々が見出した本発明品とは異なるものであり、よって乳味増強効果は期待できない。
【0019】
他にも、遊離アミノ酸含有量が5重量%以上である酵母エキスを用いる食品の甘み及びコク味増強方法の提案がある。(特許文献15)酵母エキスは独特の酵母臭があること、また酵母エキス中のアミノ酸バランスが少々変わったところで、各アミノ酸が持つ独特の風味が少なからず出てきてしまい、添加量に大きな制限が生じる。
【0020】
他にも、L−グルタミン酸、L−ロイシン、DL−またはL−アラニン、L−セリン、L−アルギニン、L−チロシン、L−フェニルアラニン、L−ヒスチジン、DL−またはL−メチオニンを含有する発酵乳の風味改善組成物の提案がある(特許文献16)。この提案によると、ヨーグルト、ドリンクヨーグルトなどの低温で作製されるものには、一定の効果があると考えられるが、ハードキャンディの濃縮温度条件は、110〜150℃とかなり過酷な条件で行うため、ここで挙げられているアミノ酸の組み合わせでは、例えばL−フェニルアラニンやL−ロイシンは加熱によって風味が大きく変わり、ハードキャンディに対しての乳味増強には問題があるアミノ酸の組み合わせである。
【0021】
また、ミルク系キャンディのノンシュガー化を目的とした提案がある(特許文献17,18)。これらは牛乳や生クリームを膜処理することによって乳糖を減少させ、乳糖を減少させた乳成分を原料としているというものである。この方法によれば、確かに乳糖を減少させているため、原料として乳成分を使用する量を増加させることはできるものの、その量には限界があり、真においしいミルク系キャンディとするには課題がある。
【0022】
このように、比較的安価な原料で比較的簡易な方法で、乳製品の一部もしくは多くと代替できるような原料が求められており、さらにはミルク系のハードキャンディをおいしさを伴う形でカロリーオフ化、ノンシュガー化したものが要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−021047号公報
【特許文献2】特開2000−004822号公報
【特許文献3】特開2000−135055号公報
【特許文献4】特開2007−202492号公報
【特許文献5】特開2008−054507号公報
【特許文献6】特開2008−237037号公報
【特許文献7】特許第3059380号公報
【特許文献8】特許第3362092号公報
【特許文献9】特開2008−092890号公報
【特許文献10】特許第3516041号公報
【特許文献11】特許第4319361号公報
【特許文献12】特許第3507913号公報
【特許文献13】特開平10−099023号公報
【特許文献14】特許第3702176号公報
【特許文献15】特開2009−044978号公報
【特許文献16】特許第3714790号公報
【特許文献17】特開平10−004885号公報
【特許文献18】特開平10−179036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、前期事情に鑑みてなされたものであり、乳製品の一部もしくは多くを代替できるような食品素材をもって、乳味をおいしくかつ安価に味わうことができるミルク系のハードキャンディを作製すること、特にミルク系のノンシュガーハードキャンディを作製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは、上記課題解決のため鋭意研究を行った結果、少量の糖質と共に加熱させた特定のアミノ酸溶液を、糖質、乳製品に対し一定量加えることで、乳味が増強したミルク系ハードキャンディとなるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種を主成分とするアミノ酸と糖質とを含む水溶液を加熱させてなる乳味増強物を、糖質、乳製品を主成分とするハードキャンディに対し、固形分として0.001〜1.0重量%含有することを特徴とする乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ、
(2)乳味増強物に使用されるアミノ酸において、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上である前記(1)記載のミルク系ハードキャンディ、
(3)ハードキャンディを作製するのに使用する前記糖質が、還元麦芽糖水飴、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選ばれる1種以上である前記(1)または(2)記載の乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ、
(4)バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種を主成分とするアミノ酸と糖質と水を混合し、混合された水溶液を開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させて乳味増強物を得る工程、及び加熱させた乳味増強物を糖質及び乳製品と混合して加熱溶解し、次いで加熱濃縮する工程を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載のミルク系ハードキャンディの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のミルク系ハードキャンディは、乳味が増強されたものであり、乳成分の一部代替とすることも可能であり、供給問題やコスト的な課題も解決される。また、乳製品をふんだんに使用することが困難であるため、現状難しいとされているミルク系ハードキャンディをノンシュガー化した場合でも乳味を増強することができるため、様々な消費者のニーズにこたえることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のミルク系ハードキャンディは、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸を主成分とするアミノ酸と糖質とを含有する水溶液を加熱させてなる乳味増強物が含有していることを特徴としている。
単にアミノ酸高含有のしょうゆやみそなどを添加しても、それ自身が持つ風味が邪魔をしてしまい、また20種類のアミノ酸を適当に添加しても乳味増強にはならない、もしくは別の異臭が混在したおいしくないミルクキャンディになってしまうのに対し、本発明のミルク系ハードキャンディは、上記特定のアミノ酸を糖質と開放系下で加熱することによって出来た反応液を添加しているため、自然で効率的に乳味を増強することが可能となる。
本発明において、乳味とは、香料のようなものではなく、ボディ(呈味)として乳の味質が付与されている味のことをいう。
【0029】
本明細書において、ミルク系のハードキャンディとは、ミルクハードキャンディはもちろんのこと、スカッチハードキャンディ、ヨーグルトハードキャンディ、ミルクコーヒーハードキャンディ、イチゴミルクハードキャンディ、ミルクミントハードキャンディなど、乳製品が少なからず添加されているハードキャンディの事を指す。また、シュガー入りのハードキャンディに加えて、ノンシュガーのハードキャンディも本発明には含まれる。
【0030】
また、本明細書において、特に断らない限り、アミノ酸はL型アミノ酸を意味する。また本発明で用いるアミノ酸は、アミノ酸塩であってもよく、ナトリウム、カリウム、塩酸等の食品としての使用が問題ないアミノ酸塩、アミノ酸塩酸塩であれば使用可能である。なお、本発明にいうアミノ酸は、遊離のアミノ酸またはアミノ酸塩の状態のものを指すが、本発明に規定する含有量は、遊離のアミノ酸に換算した値をいう。
【0031】
原料として使用するアミノ酸の由来は特に限定されるものではなく、工業的に製造され精製されたアミノ酸でもよく、天然物から抽出した粗エキスでも、粗エキスをさらに精製したものでもよい。ただし、出来る限り雑味を有さないことが望ましいため、天然物原料由来の成分の持込がないという観点から考えると、精製されたアミノ酸の使用が好ましい。
【0032】
使用する糖質としては、特に限定はされないが、単糖類、二糖類、糖アルコールが好ましく、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、ガラクトース、キシリトールなどが該当し、特に還元糖である必要はない。また複数の糖の混合物であっても良く、コスト面からは果糖ブドウ糖液糖やブドウ糖果糖液糖などの異性化糖が好ましい。オリゴ糖、あるいは水飴やデキストリンなど分子量が大きい糖類を有している糖類であっても良い。また、黒糖などの精製度の低い糖類を使用することもでき、糖類を多く含有した蜂蜜や果汁シロップなども使用することができるが、本発明品を適用する対象食品との風味上の相性が好ましい場合に限る。
【0033】
これらの糖質を、目的に応じてあらかじめ加熱してカラメル化してもよいが、カラメル化は最終的な風味にも非常に影響を与えることから、所望のカラメル風味となるように加熱加減を厳密に制御することが必要である。
【0034】
本発明で用いる乳味増強物は、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種を主成分とするアミノ酸と糖質とを含む水溶液を加熱して得られる。使用するアミノ酸としては、必須成分として、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の組み合わせであって、組み合わせに限定はない。ただし、これら組み合わせて用いるアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上である必要がある。すなわち、これら6種類から選ばれたアミノ酸以外にも最終的に目的とする風味に適したアミノ酸を選択し使用することができるが、使用する全アミノ酸総量に対して30重量%未満である必要がある。
【0035】
バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の組み合わせとしては、特にバリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸及びアルギニンの6種類全て、及びバリン、プロリン、イソロイシン、リジン、及びアルギニンの5種類の組み合わせ、及びバリン、プロリン、イソロイシンの3種類の組み合わせが、特に高性能に乳味向上効果を有することから好ましい。
【0036】
アミノ酸と糖質との加熱反応は、水溶液の状態で行う。水に加えて、エタノール等の有機溶媒や油脂が混和していても問題ないが、異風味が最終的に生じることのないように溶媒は選択されるべきであり、この場合、水、有機溶媒及び油脂を含む溶媒中の水分の比率は70%(V/V)以上が好ましい。アミノ酸と糖質の比率に特に制限はないが、アミノ酸総量:糖質総量の重量比率が1:99〜99:1が好ましく、1:9〜9:1が更に好適である。また、水等の溶媒に添加するアミノ酸の濃度は、0.001〜10.0重量%が好ましく、0.01〜5重量%が更に好ましい。0.001重量%未満であれば乳味増強効果が弱く、10.0重量%を超えるとアミノ酸の溶解作業に手間がかかり、また加熱時に期待しない焦げ臭が生じるリスクがあがる。
【0037】
前記の水等の溶媒に、必要に応じてアミノ酸と糖質以外の調味物質を添加してもよい。例えば、食塩、核酸関連素材、各種調味エキス、ペプチド系調味素材などが該当する。食塩は精製塩であっても、岩塩などの精製が不十分な食塩であっても問題ない。核酸関連素材としては、精製されたイノシン酸・グアニル酸やその塩類、核酸を豊富に含有する白子エキスのような抽出物であっても良い。各種調味エキスとしては、酵母エキス、畜肉エキス、魚貝エキス或いは野菜エキスなど天然物抽出エキスの中から、好ましいものを使用することが出来る。ペプチド系調味素材としては、主にタンパク質分解物が知られており、トウモロコシ、小麦、カゼイン、ホエー、酵母などのタンパク質の酵素分解物やその精製物が該当する。ただし、核酸関連素材、各種調味エキス、ペプチド系調味素材は、これらの素材自体に特徴的な風味があるから、アミノ酸総量に対して20重量%以下の添加量に抑える必要がある。
なお、本発明においては、乳味を増強させる目的で、水等の溶媒中に乳由来原料(ただし前述のカゼインやホエー等の乳原料の酵素分解物は除く)を添加することは好適でない。乳由来原料を添加すると、アミノ酸と糖との反応が目的通りに進行せずに、雑味を生じるだけでなく、乳味増強効果そのものが低下する。
【0038】
前記アミノ酸と糖質と水を混合することで、アミノ酸と糖質を含有する水溶液(本発明では、前記水以外の溶媒を混合している場合も水溶液という)は調製される。
【0039】
調製された水溶液は、加熱処理を施すことにより初めて所望の乳味増強効果を有する。加熱処理は、混合された水溶液が開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させて乳味増強物を得る工程を含む。
【0040】
調製された水溶液を、開放系下で70℃〜150℃にて加熱するが、本明細書で言う開放系下とは、構造上密閉されていない系はもちろんのこと、構造上密閉されていても物質除去の仕組みが備わっている場合も開放系に該当する。すなわち、構造上密閉されているが排気装置が付いている場合、例えば、密閉反応容器のヘッドスペース部分に接続されているパイプ等により、容器内雰囲気が容器外に自発的に或いは強制的に導き出される反応系は開放系に含まれる。さらに、外気と接触しないが、ヘッドスペース部分の雰囲気が回収され、臭い除去装置を通過した後に再度反応容器に戻される循環型の装置も、この場合開放系に含まれる。さらに、外気と接触しないが、容器中の溶液が、臭い除去装置を通過した後に再度反応容器に戻される循環型の装置も、この場合開放系に含まれる。
【0041】
加熱手段は特に限定されず、直火、水蒸気、電気的な方法で反応容器の温度を上げる方法、水蒸気、電気的な方法で直接水溶液の温度を上げる方法、マイクロウェーブで水溶液の温度を上げる方法など何でも良い。加熱温度は、反応を生じさせる必要性から70℃〜150℃で行う。70℃未満であれば反応が不十分であり所望の効果は望めず、150℃を超えると行き過ぎた褐変による雑味が生じやすくなる。加熱時間に特に制限は無く、必要な効果が生じる段階で加熱を終える。ただし、工程の効率を考えると、5分〜120分が好ましく、完全に乾固するまでに加熱すると焦げ臭が発生するから、水溶液の状態で加熱は停止することが望ましい。加熱時の圧力は、常圧はもちろんこと、減圧あるいは加圧のいずれで行っても問題ない。
【0042】
前記の加熱を行うことによりメイラード反応が生じ、香気が発生する。この香気の原因となる揮発性の香気成分は、アミノ酸に由来すると考えられる。このような香気は、本発明のミルク系キャンディに悪影響を与える要因になるから、効率的に除去する必要がある。ただし、香気成分は、概ね沸点が低く易揮発性であるから、加熱時には外気と遮断されていない蓋のない容器や、発生した蒸気や香気成分の逃げ道を有した容器で加熱することが望ましい。また、減圧しながら加熱し効率的に香気成分を除去することが望ましい。あるいは、水蒸気を水溶液に吹き込みながら加熱と同時に、香気成分を除去する方法も効率的である。空気、炭酸ガス、窒素ガスなどを水溶液にバブリングし、パージすることも有効である。また、加熱しながら水溶液を攪拌することも除去効率を上げることができる。上記の各種方法を全て取り入れる必要はなく、単独で、あるいは組み合わせて採用すればよい。加圧可能な反応容器で製造することも可能である。加圧、常圧、減圧を繰り返すなど組み合わせも可能である。循環式の装置であれば、ヘッドスペース部分の雰囲気や加熱処理中の水溶液を回収し、活性炭などの臭い吸着剤を通過させ香気成分を低減させた後に、再度反応容器に戻すことも可能である。また、前記のように加熱した後の水溶液に、さらに香気成分を除去する処理を施してもよい。
【0043】
ただし、完全な閉鎖系で反応させた後に香気成分を除去することは、過剰で多様な香気成分が存在してしまい、香気発生の問題と除去に対する労力が増大するために望ましくない。有機溶媒による除去はテーブルスケールでは効果的であるが、工業化するには溶媒コストと分配コストが生じるし、同様に閉鎖系での反応後に水蒸気蒸留で香気成分を除去する製法は、除去すべき香気成分が水溶液中に高濃度に残存しており除去に時間を要するから、いずれも極めて非効率的であり望ましくない。
【0044】
前記のように加熱し、香気成分を除去することにより、香気の低減された乳味増強作用を有する水溶液が得られる。このようにして得られた水溶液はそのままでも、或いはこれを各種液体で希釈しても、或いは焦げ臭の発生しない適切な乾燥法や、デキストリンなど加工適性を改善するための基材を添加し乾燥させ得られた粉体としても使用可能であり、これら全てを本発明では乳味増強物という。
【0045】
前記乳味増強物を、糖質及び乳製品と混合し、加熱溶解し、次いで、加熱濃縮することで、ミルク系ハードキャンディを製造することができる。
【0046】
乳味増強物は、糖質、乳製品と同じく、仕込みの段階で添加しても、減圧濃縮後成型前に添加しても良い。また、砂糖、水飴などのハードキャンディの主原料と同じく、仕込みの段階で乳味増強物を添加し、ハードキャンディ化するための温度に再度さらすことで、乳味がさらに増強されることから好ましい。
【0047】
乳味増強物は、糖質、乳製品を主成分とするミルク系ハードキャンディに対し、固形分として0.001〜1.0重量%、好ましくは0.008〜0.3重量%、より好ましくは0.02〜0.1重量%含有される。0.001重量%よりも少ないと、乳味増強にはならず、1.0重量%より多いと、乳成分由来の味に対するアミノ酸由来の味が多すぎて味のバランスが悪く、おいしいミルク系ハードキャンディとはならない。
【0048】
ミルク系ハードキャンディを作製する場合の糖質としては、前記アミノ酸と加熱させる糖質を用いればよい。また、ノンシュガーのミルク系ハードキャンディを作製する場合には、使用する糖質としては、還元麦芽糖水飴、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選ばれる1種以上である。なお、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールは、結晶化しやすい糖のため、含有量には注意が必要である。
【0049】
また、ミルク系ハードキャンディにおいて使用する乳製品としてはハードキャンディに使用可能な原料であれば特に限定はない。一方、ノンシュガーのミルク系ハードキャンディにおいて使用する乳製品としては、乳糖含量が比較的少ない生クリーム及びバターが好ましい。キャンディ100g当たりの糖質が0.5g未満である範囲内で使用する事ができる。その他、練乳、粉乳などの乳製品も使用することが可能であるが、乳糖含量が多い乳製品は含有量が限られるためあまり好ましくない。
【0050】
なお、前記乳味増強物を、糖質及び乳製品と混合する手法、得られた混合物を加熱溶解する手法、得られた加熱溶解物を加熱濃縮する手法については、通常のハードキャンディの製造方法で使用させる方法であればよく、特に限定はない。また、得られた加熱濃縮物は、所望の型に充填した後、冷却することで成型することができるし、この成型物にさらにカットなどの加工処理を施してもよい。
【実施例】
【0051】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(製造例)
(1)乳味増強物(反応液A)の作製例
バリン、プロリン、イソロイシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン(それぞれ協和醗酵工業製)およびリジン塩酸塩(味の素製)を一定量秤量し(表1)、水で300mLにメスアップした。
【0053】
【表1】

【0054】
次に、このアミノ酸溶液と果糖ブドウ糖液糖(ハイフラクトM;日本コーンスターチ社製)2.5gを蓋のない鍋に移し、電磁調理器(ツインバード社製)にて攪拌しながら30分沸騰加熱した(約100℃)。攪拌することで加熱で生じた香気成分の揮発も行った。加熱後、再びこの水溶液を300mLにメスアップし、反応液Aを得た(アミノ酸組成を表1に示す)。
【0055】
(2)反応液B〜Jの作製
アミノ酸の種類及び量を表2〜10となるように秤量し、それ以外は反応液Aと同様に反応液B〜Iを作製した(アミノ酸組成を表2〜9に示す)。
なお、反応液Jに関しては、アミノ酸の種類及び量は反応液Aと同様であるが、加熱反応を行わない、単に混合溶解させたものとした。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
【表8】

【0063】
【表9】

【0064】
【表10】

【0065】
(実施例)ミルク系ハードキャンディへの適用
【0066】
(対照例1)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解(100℃、以下の実施例、比較例でも同じ)し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部を混合した後、真空釜にて−550mmHg、115℃の条件下で濃縮し、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。
【0067】
(対照例2)
還元麦芽糖水飴1000部を混合溶解(100℃、以下の実施例、比較例でも同じ)し、生クリーム100部、バター20部、乳化剤1.0部を混合した後、真空釜にて−650mmHg、145℃の条件下で濃縮し、水分値1.5重量%のノンシュガーミルクハードキャンディを得た。
【0068】
(実施例1)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、真空釜にて−550mmHg、115℃の条件下で濃縮し、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは対照例1と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0069】
(実施例2)
反応液(A)のかわりに反応液(B)を使用した以外は実施例1と同様にして水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0070】
(実施例3)
反応液(A)のかわりに反応液(C)を使用した以外は実施例1と同様にして水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0071】
(実施例4)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)10部を混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べミルク感が増しており、実施例1と比べると幾分ミルク感の増強は弱いものの、乳味増強効果が確認された。
【0072】
(実施例5)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)を20倍濃縮したものを214部混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べ確実にミルク感が増しており、実施例1と比べると幾分ミルク感のバランスは劣るものの、乳味増強効果が確認された。
【0073】
(実施例6)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム50部、バター10部、練乳35部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べ配合ミルク成分は少ないものの、対照例1と同等のミルク感を有し、乳味増強効果及び乳成分の代替となりうることが確認された。
【0074】
(実施例7)
砂糖450部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、キャラメルパウダー50部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のキャラメルハードキャンディを得た。このようにして得られたキャラメルハードキャンディは、対照例1と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0075】
(実施例8)
還元麦芽糖水飴1000部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、真空釜にて−650mmHg、145℃の条件下で濃縮し、水分値1.5重量%のノンシュガーミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたノンシュガーミルクハードキャンディは、対象例2と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0076】
(実施例9)
還元水飴1000部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、実施例9と同様に水分値1.5重量%のノンシュガーミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたノンシュガーミルクハードキャンディは、対照例2と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0077】
(実施例10)
還元パラチノース1000部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、実施例9と同様に水分値1.5重量%のノンシュガーミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたノンシュガーミルクハードキャンディは、対照例2と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0078】
(実施例11)
還元麦芽糖水飴500部、還元水飴500部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)200部を混合した後、実施例9と同様に水分値1.5重量%のノンシュガーミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたノンシュガーミルクハードキャンディは、対照例2と比べ、確実にミルク感が増しており、乳味増強効果が確認された。
【0079】
(比較例1)
反応液(A)のかわりに反応液(D)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とは異なる風味が付与されており、乳味増強にはあてはまらなかった。
【0080】
(比較例2)
反応液(A)のかわりに反応液(E)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とは異なる風味が付与されており、乳味増強にはあてはまらなかった。
【0081】
(比較例3)
反応液(A)のかわりに反応液(F)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とは異なる風味が付与されており、乳味増強にはあてはまらなかった。
【0082】
(比較例4)
反応液(A)のかわりに反応液(G)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とは異なる風味が付与されており、乳味増強にはあてはまらなかった。
【0083】
(比較例5)
反応液(A)のかわりに反応液(H)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とは異なる風味が付与されており、乳味増強にはあてはまらなかった。
【0084】
(比較例6)
反応液(A)のかわりに反応液(I)を使用した以外は実施例1と同様にして、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、ミルク系の風味とはことなりだしの味を強く感じ、乳味の増強にはつながらなかった。
【0085】
(比較例7)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)2.0部を混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、反応液の添加量が少なすぎるため、対照例1と味の違いが見られず、乳味増強は見られなかった。
【0086】
(比較例8)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(A)を20倍濃縮したものを248部混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、反応液の添加量が多すぎるため、味のバランスが非常に悪く、また乳味というよりも別の味になっており、乳味増強とは異なる味となっていた。
【0087】
(比較例9)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部を混合した後、実施例1と同様に濃縮し、ミルク香料を2部混合した後、水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは対照例1と比べ、香味に関しては強く感じられるものの、乳味のボディ感については、対照例1と変わらず、乳味増強効果は得られなかった。
【0088】
(比較例10)
砂糖500部、水飴400部を混合溶解し、生クリーム100部、バター20部、練乳70部、乳化剤1.0部、製造例で調整した反応液(J)200部を混合した後、実施例1と同様に水分値3.0重量%のミルクハードキャンディを得た。このようにして得られたミルクハードキャンディは、対照例1と比べると、わずかに乳味の増強が見られるものの実施例1と比べるとはるかに弱く、乳味増強の効果については課題を残した。
【0089】
対照例1〜2、実施例1〜11及び比較例1〜10で得られたミルク系ハードキャンディの評価を表11、12に示す。表11、12の結果より、実施例1〜11で得られたミルク系ハードキャンディはいずれも対照例1、2と比べ、乳味が増強されていることが分かる。
【0090】
なお、表11、12における評価基準は以下のとおり。
〈乳味〉
「◎」対照例1、2と比べ、自然な乳味が十分増強している。
「○」対照例1、2と比べ、乳味が増強している。
「△」対照例1、2と比べ、わずかに乳味が増強しているものの不十分である。
「×」対照例1、2と比べ、乳味の増強がみられない、もしくは不自然な味が付与されている。
【0091】
【表11】

【0092】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種を主成分とするアミノ酸と糖質とを含む水溶液を加熱させてなる乳味増強物を、糖質、乳製品を主成分とするハードキャンディに対し、固形分として0.001〜1.0重量%含有することを特徴とする乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ。
【請求項2】
乳味増強物に使用されるアミノ酸において、バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種のアミノ酸の総量が、全アミノ酸総量に対して70重量%以上である請求項1記載のミルク系ハードキャンディ。
【請求項3】
ハードキャンディを作製するのに使用する前記糖質が、還元麦芽糖水飴、還元水飴、還元パラチノース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選ばれる1種以上である請求項1または2記載の乳味が増強されたミルク系ハードキャンディ。
【請求項4】
バリン、プロリン、イソロイシン、リジン、グルタミン酸およびアルギニンから選ばれる少なくとも3種を主成分とするアミノ酸と糖質と水を混合し、混合された水溶液を開放系下で70℃〜150℃にて加熱させ、生じた香気成分を揮発させて乳味増強物を得る工程、及び加熱させた乳味増強物を糖質及び乳製品と混合して加熱溶解し、次いで加熱濃縮する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のミルク系ハードキャンディの製造方法。