説明

乳房マッサージ用練習具

【課題】簡単な器具によって、手や指による圧を変化させて乳房をマッサージする際に、乳房の組織に対して適圧を練習により探り当てることができる乳房マッサージ用練習具を提供すること。
【解決手段】少なくとも拇指と折り曲げた示指の第2関節部とで乳房をマッサージする二指挟圧法による乳房マッサージの練習具1であって、該練習具1は伸縮性を有する合成繊維生地で形成された袋体10を有し、該袋体10は内部に緑豆12を充填することにより乳房様の形状をなし、前記袋体10の頂部には柔軟材を充填してなる乳頭部11を備え、前記袋体10の上部に乳輪部15が形成され、該乳輪部15の周辺下方には乳腺体部16が形成されており、前記緑豆12の擦接音により二指挟圧法を習得する構成を有する乳房マッサージ用練習具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房マッサージ用練習具に関し、詳しくは手や指による圧を変化させて乳房をマッサージする際に、乳房の組織に対して適圧を探り当てることができる乳房マッサージ用練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、円形基板をもめん綿で包みこむようにしてもめん綿を乳房形状にして、これを化繊綿で被覆し、さらに全体を伸縮及び弾性を有する化繊生地で包んで、乳房の周囲を3等分にして区分表示し、各区分をさらに3等分して区分表示するようにした乳房模型が開示されている。この模型は区分表示にしたがって指を動かして乳房治療手段を習得するものである。
【0003】
特許文献2、3は、水を用いて、実際に乳が出てくるようにして実際に適した乳房マッサージ練習具を提案している。
【特許文献1】特公昭57−23268号公報
【特許文献2】特開2002−49306号公報
【特許文献3】特開2004−191788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、マッサージする乳房の部位は特定されているが、マッサージ圧力が人によって異なるので、実際にはそれほど効果的な乳房マッサージ効果が得られない問題がある。また特許文献2,3のように擬装乳を出す手法では水を出したり、水漏れがしない機構が必要になり、コスト高となる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、簡単な器具によって、手や指による圧を変化させて乳房をマッサージする際に、乳房の組織に対して適圧を練習により探り当てることができる乳房マッサージ用練習具を提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0008】
(請求項1)
少なくとも拇指と折り曲げた示指の第2関節部とで乳房をマッサージする二指挟圧法による乳房マッサージの練習具であって、
該練習具は伸縮性を有する合成繊維生地で形成された袋体を有し、該袋体は内部に緑豆を充填することにより乳房様の形状をなし、
前記袋体の頂部には柔軟材を充填してなる乳頭部を備え、
前記袋体の上部に乳輪部が形成され、該乳輪部の周辺下方には乳腺体部が形成されており、
前記緑豆の擦接音により二指挟圧法を習得する構成を有する乳房マッサージ用練習具。
【0009】
(請求項2)
前記拇指と折り曲げた示指の第2関節部とで該乳腺体部の周方向に回動しながら押圧する最適押圧力と最適回動リズムを前記緑豆の擦接音により習得することを特徴とする請求項1記載の乳房マッサージ用練習具。
【0010】
(請求項3)
前記回動リズムは、前記擦接音の発するリズムと、胎児心音の強音回数と実質的に同数となるリズムにすることを特徴とする請求項2記載の乳房マッサージ用練習具。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な器具によって、手や指による圧を変化させて乳房をマッサージする際に、乳房の組織に対して適圧を練習により探り当てることができる乳房マッサージ用練習具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
はじめに、二指挟圧法について説明する。
【0014】
二指挟圧法とは、拇指と折り曲げた示指の第2関節部とによる二指圧の形で乳頭、乳輪部のマッサージを挟んで圧する方法で、他の三指も軽く曲げて示指にそえておくこともできる。
【0015】
二指挟圧法を行なうと、乳頭、乳輪部を一点圧でとらえず、面として幅広くとらえることができる。これによって乳頭、乳輪部にかかる圧刺激は、ソフトでかつ安定したものとなる。乳頭、乳輪部の状態に合った圧刺激を与えるため、組織への負担が少なく、また皮膚や乳管を傷めることがない。乳頭、乳輪部に心地よい圧を加えながらマッサージを行なうことによって、乳口の開口を促し、乳管をやわらげるため、乳汁の流れはスムーズになる。さらに、乳頭と乳輪部には、伸展性と柔軟性が出てくるため、赤ちゃんが上手に乳を吸うことができる状態をつくる。
【0016】
本発明は、上記の二指挟圧法によって乳房(乳頭、乳輪部)のマッサージを効果的に実施できる方法をマスターするための練習具であり、例えば助産師等がかかる練習具によって二指挟圧法を正しくマスターするのに効果的な練習具を提供するものである。
【0017】
図1は、本発明の乳房マッサージ用練習具の一例を示す要部断面図であり、図1において、1は乳房マッサージ用練習具であり、該練習具1は袋体10と袋体10の頂部に形成された乳頭部11を備えている。
【0018】
袋体10は伸縮性を有する合成繊維生地で形成され、例えばナイロン繊維生地や、ポリエステル繊維生地などは後述の緑豆の擦接音が発生しやすいので好ましい。たとえば女性用のナイロンストッキングなどをそのまま使用することもできる。ジョーゼット、ネル、サラシは伸縮性に劣り上記擦接音が生じにくいので好ましくない。
【0019】
袋体10内部には、緑豆12を充填することにより袋体10を乳房様の形状に形成している。緑豆とは、もやしの原料などに使われている豆の種類のことであり、市販品を使用できる。本発明では、緑豆12という特定された部材を使用しているが、これは本発明者が、各種の充填材を個別に検討した結果、本発明において好ましい擦接音を生じさせる部材として最適なものとして選定したものである。本発明者は堤式乳房マッサージ法を出版しているが(2002年たにぐち出版発行)、この書籍の中に開示されている練習具は袋体の内部に米を充填している。米では擦接音は全く生じない。また本発明者は通常のお手玉に使用される小豆(あずき)についても検討したが、最適な擦接音は生じないことがわかった。
【0020】
乳頭部11の内部には綿のような柔軟材を充填して乳首様に形成されている。
【0021】
図1において、13は袋体10に緑豆12を充填した後、下方を結束する結束部であり、例えば紐や輪ゴムなどで結束してもよいし、あるいは袋体10の余剰部分14を利用して結束してもよい。
【0022】
袋体10に充填される緑豆12の空隙率は、擦接音に影響するので、例えば20%〜60%の範囲、好ましくは30〜50%の範囲である。
【0023】
図1において、15は袋体10の上部に形成される乳輪部であり、16は乳輪部15の周辺下方に形成される乳腺体部である。
【0024】
本発明において特徴的なことは、前記緑豆12の擦接音により二指挟圧法を習得することである。
【0025】
好ましい態様について図2に基づいて説明する。
【0026】
図2に示すように、二指挟圧法は、拇指20と折り曲げた示指21の第2関節部により乳頭部11を挟むようにして、乳輪部15及び乳腺体部16の所定位置を面として幅広くとらえ、ソフトな圧刺激を行う。圧刺激に際しては、乳輪部15及び乳腺体部16の周方向に回動しながら押圧する。回動方向は限定されないが、通常は反時計周りである。
【0027】
本発明においては、圧刺激における最適押圧力と最適回動リズムを前記緑豆12の擦接音により習得する。最適押圧力と最適回動リズムを習得すると、組織への負担が少なく、また皮膚や乳管を傷めることがなく、また乳口の開口を促し、乳汁の流れはスムーズになる。さらに、乳頭と乳輪部に伸展性と柔軟性が出てくるため、赤ちゃんが上手に乳を吸うことができる状態をつくる。このように助産師にとって好適な練習具となる。
【0028】
擦接音は、濁音よりも清音になることが好ましく、また清音により一定のリズムを形成することが好ましい。
【0029】
擦接音の発するリズムは、胎児心音の強音回数と実質的に同数となるリズムになるように、上記回動リズムをつくるように練習する。本発明者は、日本ヒューレット・パッカード(株)社製「シリーズ50分娩監視装置(シリーズ50A(HPM1351A))」の計測器で胎児心音を測定し、その際の胎児心音の強音回数(赤ちゃんが心臓から血液を送り出す回数)と実質的に同数となるリズムで圧刺激における圧力と回動リズムを作れば、そのリズムと圧力に応じた緑豆の擦接音が発生することを確認している。緑豆の擦接音については聴覚試験(複数人が同じ擦接音を聴覚する試験)によって確認した。
【0030】
なお、胎児心音は、産婦の腹部にベルトを装着し超音波トランスジューサを留めて外部から測定する。この測定方法では、低エネルギーの超音波信号を胎児の心臓に向けて送信し、反射信号を受信する。
【0031】
胎児心音の強音回数は、通常140〜160回/分であり、本発明では、この回数を目安として、本発明の練習具に圧刺激を与え、同様なリズムと清音の擦接音を発生させる練習をすることができる。
【0032】
なお、本発明では、図2に示すように、拇指20と折り曲げた示指21の第2関節部以外に、他の指を練習具に接触するようにしてもよいし、また圧刺激を行っていない側の手で練習具を支持することも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る乳房マッサージ用練習具の一例を示す要部断面図
【図2】本発明に係る二指挟圧法の好ましい態様を示す図
【符号の説明】
【0034】
1:乳房マッサージ用練習具
10:袋体
11:乳頭部
12:緑豆
13:結束部
14:余剰部分
15:乳輪部
16:乳腺体部
20:拇指
21:示指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも拇指と折り曲げた示指の第2関節部とで乳房をマッサージする二指挟圧法による乳房マッサージの練習具であって、
該練習具は伸縮性を有する合成繊維生地で形成された袋体を有し、該袋体は内部に緑豆を充填することにより乳房様の形状をなし、
前記袋体の頂部には柔軟材を充填してなる乳頭部を備え、
前記袋体の上部に乳輪部が形成され、該乳輪部の周辺下方には乳腺体部が形成されており、
前記緑豆の擦接音により二指挟圧法を習得する構成を有する乳房マッサージ用練習具。
【請求項2】
前記拇指と折り曲げた示指の第2関節部とで該乳腺体部の周方向に回動しながら押圧する最適押圧力と最適回動リズムを前記緑豆の擦接音により習得することを特徴とする請求項1記載の乳房マッサージ用練習具。
【請求項3】
前記回動リズムは、前記擦接音の発するリズムと、胎児心音の強音回数と実質的に同数となるリズムにすることを特徴とする請求項2記載の乳房マッサージ用練習具。

【図1】
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【図2】
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