説明

乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療に使用するための組成物

本発明は、乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療に使用するための組成物であって、(a)ラクターゼと、(b)ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Steptococcus thermophilus)から選択される1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物を含有する非乳製固体投与形であり、ラクターゼ(a)が前記1種類以上の微生物(b)に由来するラクターゼ以外のものであり、前記1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物(b)が乾燥形態である組成物を提供する。また、ラクターゼとラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物を含む非コーティングカプセル剤および錠剤組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は乳糖不耐症罹患者への投与に使用するための、酵素ラクターゼ(チラクターゼ、チラクタスム(tilactasum)、β−ガラクトシダーゼと同義)と微生物の組合せを含む薬剤である。本特許出願において、乳糖不耐症という用語は、医学的に定義された乳糖不耐症および乳糖代謝障害(乳糖吸収不良、乳糖消化不良)だけでなく、乳糖または乳糖含有食品の摂取の結果として、またはヒトまたは動物の消化管で医薬組成物などの他の物質からの乳糖の放出によって起こる任意の形態の健康障害および症状を意味して用いられる。
【背景技術】
【0002】
乳糖は二糖類であり、エネルギーを供給する重要な栄養成分である。乳糖は主として乳および乳製品の成分として存在するが、食品工業により、例えば、スィーツ、加工肉、ベーカリー製品および調理済み食品で甘味剤、充填剤および稠度調整剤としても用いられている。また、医薬組成物も乳糖を含む場合が多い。体内で乳糖は、小腸で内因性酵素ラクターゼによって利用可能な栄養素であるグルコースとガラクトースに切断される。乳児にとっては、母乳に含まれる乳糖は極めて重要な栄養である。
【0003】
乳糖不耐症は通常にはラクターゼ欠乏症の結果である。体内で利用可能な酵素ラクターゼが十分な量でなければ(ラクターゼ欠乏症)、乳糖は切断されない形で腸の下方部分(大腸)に送られ、そこで腸管細菌によって発酵を受け、例えば、ガスの生産が起こり、かつ/または大腸への水の流入が増える。これが乳製品を摂取した後の胃痛、膨満感、鼓脹または下痢などの病訴につながる。これは乳糖不耐症(lactose intolerance, milk sugar intolerancem)と呼ばれる。これらの病訴が似ているために、乳糖不耐症は過敏性腸症候群(過敏性結腸、痙性結腸)と混同されることが多い。
【0004】
ラクターゼ欠乏症には一般に3つの異なる形態が認知されている。
1.原発性ラクターゼ欠乏症
2.続発性ラクターゼ欠乏症
3.先天性ラクターゼ欠乏症
【0005】
小腸のラクターゼ量は母乳摂取期の乳児で最も高く、その後、遺伝的理由でほとんどの人では一貫して低下する。従って、結果としてのいわゆる原発性ラクターゼ欠乏症は正常な加齢過程の結果であり、世界の成人人口の大多数(70%〜90%)に見られる。このように、アフリカおよびアジアのほとんど全ての集団群は乳糖不耐性である。しかしながら、ドイツでも15%前後の成人が原発性ラクターゼ欠乏症である。従って、原発性ラクターゼ欠乏症の結果である乳糖不耐症は原発性乳糖不耐症と呼ばれることが多い。
【0006】
例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、小児脂肪便症(地方病性スプルー)および他の腸管炎症(例えば、ウイルスまたは細菌感染によるもの)など、様々な腸管疾患がいわゆる続発性ラクターゼ欠乏症(後天性ラクターゼ欠乏症と同義)をもたらし得る。また、消化管手術後、特に、小腸の一部を摘出した後には、続発性ラクターゼ欠乏症が珍しくない。これは続発性または一過性乳糖不耐症と呼ばれている。続発性ラクターゼ欠乏症は通常、それを引き起こした腸管疾患が治癒した後は元に戻り得る。
【0007】
極めてまれに存在する先天性ラクターゼ欠乏症では、生まれながらにラクターゼ生産を担う遺伝子を欠いている。これは身体がこの酵素を全く生産することができない状態をもたらす。このような乳児では厳格に乳糖不含栄養を維持しなければならない。
【0008】
本特許出願では、ラクターゼ欠乏症という用語は、医学的に定義されたラクターゼ欠乏症だけではなく、任意の形態のラクターゼ欠乏症を意味して用いられる。
【0009】
乳糖代謝の障害の必ずしも全てが重度の乳糖不耐症につながるわけではない。しかしながら、乳糖代謝の軽度の障害でも病訴が見られることがある。これまでは、低乳糖食もしくは乳糖不含食を維持するか、または乳糖を含む食品を食べる際に酵素ラクターゼを含む製剤を服用することによってしか、上記の病訴を回避することができなかった。低乳糖食または乳糖不含食を維持することは満足のいくものではなく、また、乳製品に含まれる有用な栄養素および生命維持に必要な物質のために、栄養生理学的観点からも好ましくない。乳糖不含乳製品の選択肢は限られ、これに加え、乳糖不含乳製品は、生産中にラクターゼを添加することによって乳糖がすでに切断されているので、乳糖含有乳製品よりも甘みが強い。多くの消費者がこれらの製品の味を好んでない。さらに、乳糖を含んでいるとは思わない非常に多くの食品がある。これは乳糖不含食品の購入が問題を引き起こす場合が多いことを意味している。ラクターゼ製剤を即使用することがよい選択肢となり、罹患者の生活の質を著しく改善する場合が多い。個々に必要とされるラクターゼの量は、一方で使用者の乳糖に対する感受性によって異なる。これは主として内因性ラクターゼの残留活性によって決まる。この他、ラクターゼの必要量は食品の種類、食品の合計摂取量およびそれが含む乳糖の量によって異なる。ラクターゼ製剤は常に有効であるというわけではなく、または全ての罹患者に等しく有効であるとうわけでもないことが知られている。
【0010】
乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の症状を治療または軽減する上で使用するためのいくつかの製品が提案されている。
【0011】
特許文献1は、キクイモ(エルサレム・アーティチョーク)抽出物とラクターゼとS.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスを含有する発酵乳ベースとの組合せを開示している。この製品は乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の罹患者による摂取を意図し、このラクターゼの目的は乳汁ベースの乳糖含量を低減することであると思われる。これらの2つの微生物が乳糖不耐症に何らかの有益な効果を持つということは示唆されていない。さらに、最良の味と稠度を得るにはこれら2つの微生物がS.サーモフィルス:L.ブルガリカス=1:4の比率で存在しなければならないことが述べられている。
【0012】
特許文献2(特許文献3に相当)は、乳糖が低く、従って、乳糖不耐症罹患者が摂取するのに好適である発酵乳製品を製造するための4段階法を開示している。この方法は他の種類の食品中の乳糖から起こり得る乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の症状を予防または治療する一般手段を提供することを意図したものではない。この方法は、乳酸菌(S.サーモフィルス(S. thermophilus)またはL.ブルガリカス(L. bulgaricus)ではない)を用いた第一の発酵によるバターミルクの取得;S.サーモフィルスまたはL.ブルガリカスなどのヨーグルト菌を用いた第二の発酵;少量の初乳の添加を含む第三の工程;およびL.アシドフィルス(L. acidophilus)またはL.ビフィズス(L. bifidus)による発酵を含む第四の工程を含む。
【0013】
特許文献4は、とりわけS.サーモフィルス、L.ブルガリカスおよび外因性ラクターゼを含む乳製品(ヨーグルト)を開示している。第11頁4行目に乳糖不耐症の治療におけるラクターゼの既知の使用が言及されているが、これらの製品は乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症を治療または予防することを意図したものではない。
【0014】
特許文献5は、乳糖不耐症患者に対するプロバイオティック微生物とラクターゼの組合せを含む咀嚼可能な菓子の投与を開示している。好ましい微生物の一覧にはS.サーモフィルスは含まれるが、L.ブルガリカスは含まれていない。ラクターゼの目的(第16頁参照)は、これらの菓子の中に存在する乳糖を除去することであると思われる。特許文献5は、ラクターゼおよび/またはS.サーモフィルスまたはL.ブルガリカスなどの微生物を含有する菓子の例を含んでおらず、それらの微生物が提供される形態についての開示もない。特許文献5の第2頁および第3頁には、凍結乾燥された微生物の使用には問題があることが示唆され、また、他所でも随所に、これらの菓子が加熱および脱水せずに製造されることが述べられており、これにより、これらの微生物は乾燥形態で用いられないことが示唆される。
【0015】
特許文献6は、プロバイオティック微生物と乳腺刺激酵素の組合せを開示している。乳腺刺激酵素(ラクターゼを含む)はプロバイオティック微生物の増殖の促進を意図したものである。これら(またはそれらの成分)の組合せはカプセル形態で提供することができる。これらの微生物は凍結乾燥形態であり得る。ラクターゼとS.サーモフィルスまたはL.ブルガリカスのいずれかとの特定の組合せは開示も例示もされていない。この文献は乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の予防または治療に関するものではない。
【0016】
特許文献7(=特許文献8)は、ラクターゼなどの種々の生活性物質と微生物を含有する微小顆粒剤を開示しており、ここで、この微小顆粒剤は腸溶コーティングされている。これらのコーティング微小顆粒剤は乳製品などの食品に配合することを意図したものである。S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスは微生物の例として記載されている。乳糖不耐症は第3頁に述べられ、ラクターゼが記載されている。ラクターゼを含有するコーティング顆粒剤の例があり、また、L.アシドフィルスを含有するコーティング顆粒剤の例もある。しかしながら、ラクターゼとS.サーモフィルスまたはL.ブルガリカスを組み合わせた使用の開示はなく、S.サーモフィルスまたはL.ブルガリカスのいずれかを含有するコーティング顆粒剤の例もない。
【0017】
特許文献9は、動物に投与するための乳粉を開示している。これらの乳粉は、動物において乳糖不耐症の症状を予防するために添加されたラクターゼを含む。これらの粉末はプロバイオティック微生物も含む(第3頁参照)。S.サーモフィルスは微生物の一覧の中にあるが、L.ブルガリカスはない。しかしながら、プロバイオティック微生物ならびにラクターゼを含む乳粉の例は挙げられていない。
【0018】
特許文献10(=特許文献11)は、S.サーモフィルスを含有する媒体を発酵させることにより、ガラクトオリゴ糖およびβ−ガラクトシダーゼ(ラクターゼ)に富んだ発酵製品を製造する方法を開示している。第12頁には、これらの製品はラクターゼ欠乏症罹患者に耐用性があることが述べられている。外因性ラクターゼの添加の開示は見られず、この製品が乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症を予防または治療するために使用できるという示唆も見られない。
【0019】
特許文献12は、(1)消化酵素、(2)プロバイオティック、および(3)ステビアのうち少なくとも2つを含有する胃食道逆流障害を治療するための組成物(とりわけ、錠剤またはカプセル剤であり得る)を開示している。ラクターゼは消化酵素の一覧の中にある。S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスはプロバイオティクスの中に挙げられているが、好ましいとは述べられていない。1つの例が示され、これはラクターゼならびに他の7つの消化酵素を含んでいるが、それはまた6つのプロバイオティック種を含み、それにはS.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスは含まれていない。乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の治療または予防に対する言及はない。
【0020】
特許文献13は、とりわけ、ミネラル、酵素、ビタミン、植物抽出物(プロバイオティクスおよびアミノ酸から選択される)から選択される50を超える異なる有効成分を含有する栄養補助健康食品を開示している。第3頁には、ラクターゼ(5mg)およびラクトバチルス・ブルガリカス(ビフィズスを含め2.5mg)を含む、50を超える成分を含有する組成物が開示されている。第12頁には、ラクターゼが乳汁中の乳糖の加水分解に不可欠であり、この酵素の欠乏が乳糖不耐症を引き起こすことが記載されている。これらの組成物は全身の健康をカバーする普遍的万能薬であると記載され、いずれか1つの病態または症状を目的とするものではない。
【0021】
特許文献14は、「ヒト身体の化学を正常化する」ための組成物に関し、良好な健康を増進するための普遍的万能薬として意図されている。これらの組成物はとりわけ、消化酵素、可溶性および不溶性繊維、緩下薬、1種類以上のプロバイオティクス、プロテアーゼ、リパーゼ、種々のミネラルおよび種々の生薬および植物抽出物を含有しなければならない。これらの組成物は乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症の症状を予防または治療することを特に目的としない。消化酵素はラクターゼを含み得、プロバイオティック酵素はラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスを含み得る。
【0022】
特許文献15は、ラクターゼ欠乏症を治療するためのラクターゼ産生微生物含有カプセル剤を開示している。L.ブルガリカスおよびS.サーモフィルスの記載があり、例示組成物はL.アシドフィルスのみを含有する。特許文献15には外因性ラクターゼの包含に関する開示はない。このLangnerのカプセル剤の必須の特徴は、胃の酸性条件では放出を防ぐが、腸内で崩壊してそれらの微生物を放出する腸溶ポリマーでコーティングされていることである。
【0023】
特許文献16、特許文献17、特許文献18および特許文献19はそれぞれ、3〜6の範囲に至適機能pHを有する第一のラクターゼ酵素と6〜8の範囲に至適pHを有する第二のラクターゼ酵素を含む乳糖不耐症を治療するための組成物を開示している。第二のラクターゼ酵素は、胃での早期分解を防ぐために腸溶コーティングを有する。これらの文献に、そこに記載されている組成物、方法およびプロセスに乳酸菌の使用を示唆するものはない。
【0024】
非特許文献1は、ヨーグルト菌S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスが高いラクターゼ活性を有すること、およびヨーグルトが乳糖の消化を改善し、乳糖不耐症の症状を取り除くことを開示している。しかしながら、Guarnerらは、外因性ラクターゼが添加可能であること、またはそうすることから利益が得られることを示唆していない。
【0025】
さらに、Guarnerらは、S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスを含有するヨーグルトを摂取することが、非発酵乳およびアイスクリームなどの他の乳製品を摂取した乳糖吸収不良者において乳糖消化に効果を有することを示唆する根拠を示していない。
【0026】
このヨーグルトの摂取は、ヨーグルトの摂取を楽しむ乳糖吸収不良者の幾人かには全般的利益を提供するが、多くの人はヨーグルトの味および食感を好まない。結果として、S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスなどの生きた細菌培養物を含有するヨーグルトは、乳糖吸収不良および乳糖不耐症の問題に全般的な解決をもたらさない。
【0027】
非特許文献1(前記参照)は、何らかの有益な効果を得るために生きた培養物を用いることの重要性を強調している。もしこのヨーグルトが熱処理されれば、これらの利益は失われる。非特許文献1は、非乳製媒体に休眠細菌(例えば、凍結乾燥細菌)を投与することが乳糖不耐症罹患者に利益を与えることを示唆する根拠を示していない。乳糖不耐症の問題に取り組む特許文献5の開示によれば、脱水された細菌の使用は望ましくない。例えば、特許文献5の第2頁には、「凍結乾燥されたプロバイオティック生物も利用可能である。凍結乾燥細菌は非生物状態である。多くの細菌は再水和に生き残ることができないので、生命力を回復させるために投与前に微生物に含水させる必要性は不利である。さらに、生き残る生物がいたとしても、すぐには代謝的に活性のある状態にはならず、胃の極端な酸性条件に生き残ることをできない。」と述べられている。よって、特許文献5によれば、乾燥細菌の使用は前進を与えるものではない。
【0028】
非特許文献2は、乳糖吸収不良患者に行った試験を記載しており、被験体にB.ビフィズス、L.アシドフィルス、S.サーモフィルスおよびL.ブルガリカスを含む凍結乾燥混合乳酸菌を含有するカプセル剤を与えた。非特許文献2では、これらの凍結乾燥乳酸菌を含有するカプセル剤が乳糖吸収不良の症状(すなわち、腹痛、下痢および「鼓腸」)を緩和せず、乳糖吸収不良を有する被験体の小腸で乳糖の加水分解を促進しなかったと結論付けている。
【0029】
従って、上述の開示に鑑みて、乳糖不耐者が、乳糖不耐症に通常関連する症状に苦しむことなく、少数の罹患者により良い耐用性のある生きた細菌を含有するヨーグルト以外の乳糖含有食品を摂取できるようにする有効な製品の必要が依然としてある。
【0030】
従って、酵素ラクターゼを含有するだけの製剤よりも信頼性があり、かつ/またはより良い効果を有する薬剤は、多くの罹患者にとっての既存の差し迫った必要性を満たし、乳糖不耐症の症例に利用可能な栄養的選択肢に向けた著しい改善かつ劇的な段階を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】ロシア特許第292125号
【特許文献2】ドイツ特許第2725731号
【特許文献3】米国特許第4034115号
【特許文献4】国際公開第2009/056979号(Danisco)
【特許文献5】国際公開第2004/089290号(Pharmachem)
【特許文献6】米国特許出願第2008/0187525号(Porubcan)
【特許文献7】ドイツ特許第69505374号
【特許文献8】国際公開第95/34292号
【特許文献9】欧州特許第1112002号
【特許文献10】国際公開第96/06924号
【特許文献11】ドイツ特許第69535290号
【特許文献12】米国特許出願第2008/0213320号(Eisenstein Mayer)
【特許文献13】米国特許出願第2009/110674号(Loizou Nicos)
【特許文献14】米国特許出願第2008/0260708号
【特許文献15】米国特許第6008027号(Langner)
【特許文献16】米国特許第6410018号(Eisenhardt et al)
【特許文献17】米国特許第6428786号(Eisenhardt et al)
【特許文献18】米国特許第6562338号(Eisenhardt et al)
【特許文献19】米国特許第6562339号(Eisenhardt et al)
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Guarner et al. Brit. J. Nutrition, 93 (2005), 783−786
【非特許文献2】Hove et al., Amer. J. Clin. Nutr., 1994, 59: 74−79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、乳糖不耐症およびラクターゼ欠乏症の症状の治療または予防に使用するためのより有効な薬剤を提供すること、および被験体が乳糖不耐症に罹患していても乳糖含有食品を摂取できるようにすることである。さらに、本発明の目的は、乳糖不耐症罹患者が、乳糖含量のためにそれまでは食べられなかった食品を食べられるようにすることである。さらに、本発明の目的は、乳糖含有食品または乳糖含有物質を摂取した後に乳糖不耐症の症状の発生を予防、軽減または除去することができる薬剤を提供することである。
【0034】
本発明者らは、細菌ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Steptococcus thermophilus)を乾燥形態で乳糖吸収不良患者に投与しても乳糖消化に統計学的に有意な改善はもたらされないことを見出した。この知見は上述のWO2004/089290およびHoveらの教示と一致している。
【0035】
しかしながら、本発明者らはまた、ラクターゼとラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスの組合せを非コーティング乾燥形態で含有する組成物が、乳糖吸収不良患者に投与された場合、ラクターゼのみを含有する組成物よりも、乳糖消化の改善に有効性と信頼性が著しく高く、より広範囲の被験体にそれらの有益な特性を発揮することを見出した。
【0036】
よって、上述、特にUS6008027(Langner)およびWO2004/089290(Pharmachem)に述べられた従来技術において示唆されたものとは対照的に、ラクターゼと細菌ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスの組合せを非コーティング乾燥形態で含有する非乳製組成物は、乳糖吸収不良被験体において乳糖消化を改善する有効な手段を提供することができる。
【0037】
よって、本発明は、乳糖不耐症罹患者が乳糖不耐症の症状に苦しむことなく、乳糖含有食品を摂取できるようにするために有効な薬剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
よって、第一の実施形態(実施形態1.1)では、本発明は、乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療に使用するための組成物であって、
(a)3〜6のpH範囲で活性のあるラクターゼと
(b)ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物
を含む非乳製固体投与形であり、ラクターゼ(a)が前記1種類以上の微生物(b)に由来するラクターゼ以外のものであり、前記1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物(b)が乾燥形態である組成物を提供する。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明は、下記を提供する。
1.2 投与形が腸溶コーティングでコーティングされたカプセル剤以外のものである、実施形態1.1に記載の使用のための組成物。
【0040】
1.3 ラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有生物が腸溶コーティングされていない、実施形態1.1に記載の組成物。
【0041】
1.4 ラクターゼ(a)が37℃にて2〜6の範囲のpHで1時間後にその活性の少なくとも30%をなお有するものである、実施形態1.1〜1.3のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0042】
1.5 ラクターゼ(a)が37℃にて3〜6の範囲のpHで1時間後にその活性の少なくとも30%をなお有するものである、実施形態1.1〜1.3のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0043】
1.6 ラクターゼ(a)が37℃にて4〜6の範囲のpHで1時間後にその活性の少なくとも30%をなお有するものである、実施形態1.1〜1.3のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0044】
1.7 ラクターゼ(a)が3〜6の範囲のpHで最大活性を示す、実施形態1.1〜1.3のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0045】
1.8 ラクターゼ(a)が4〜6の範囲のpHで最大活性を示す、実施形態1.1〜1.3のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0046】
1.9 ラクターゼ(a)が微生物に由来し、組成物がそのラクターゼが由来する微生物を実質的に含まない、実施形態1.1〜1.8のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0047】
1.10 ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスの双方を含有する、実施形態1.1〜1.9のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0048】
1.11 固体投与形がカプセル剤、錠剤、糖衣錠、散剤、ペレット剤および顆粒剤から選択される、実施形態1.1〜1.10のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0049】
1.12 単位投与形である、実施形態1.1〜1.11のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0050】
1.13 単位投与形が、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、およびサシェ剤(散剤、ペレット剤および顆粒剤を含有する)から選択される、実施形態1.12に記載の使用のための組成物。
【0051】
1.14 単位投与形がカプセル剤である、実施形態1.13に記載の使用のための組成物。
【0052】
1.15 2000〜12000FCC単位の間のラクターゼ(a)を含有する、実施形態1.1〜1.14のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0053】
1.16 2000〜6000FCC単位の間のラクターゼ(a)を含有する、実施形態1.15に記載の使用のための組成物。
【0054】
1.17 5千万〜百億コロニー形成単位のラクトバチルス・ブルガリカスと5千万〜百億コロニー形成単位のストレプトコッカス・サーモフィルスを含有する、実施形態1.1〜1.16のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0055】
1.18 1億〜20億コロニー形成単位のラクトバチルス・ブルガリカスと1億〜20億コロニー形成単位のストレプトコッカス・サーモフィルスを含有する、実施形態1.17に記載の使用のための組成物。
【0056】
1.19 実質的に乳糖を含まない、実施形態1.1〜1.18のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0057】
1.20 ラクトバチルス・ブルガリカスがラクトバチルス・デルブレッキイLB−VC18(寄託番号:DSM 23320)である、実施形態1.1〜1.19のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0058】
1.21 ストレプトコッカス・サーモフィルスがストレプトコッカス・サーモフィルスST−VC18(寄託番号:DSM 23319)である、実施形態1.1〜1.20のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0059】
1.22 ラクターゼ(a)がアスペルギルス種に由来する、実施形態1.1〜1.21のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0060】
1.23 ラクターゼ(a)がアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に由来する、実施形態1.22に記載の使用のための組成物。
【0061】
1.24 ラクターゼ(a)がアスペルギルス・オリゼに由来する、実施形態1.23に記載の組成物。
【0062】
1.25 組成物が2種類以上の付加的生薬抽出物と外因性リパーゼおよび外因性プロテアーゼとの組合せを含有する組成物以外のものである、実施形態1.1〜1.24のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0063】
1.26 (c)薬学上または食餌上許容される担体または賦形剤を含有する、実施形態1.1〜1.25のうちいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0064】
1.27 乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療に使用するための非乳製固体投与形組成物の製造のための、
(a)3〜6のpH範囲で活性のあるラクターゼと、
(b)ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物
の組合せの使用であって、
ラクターゼ(a)が前記1種類以上の微生物(b)に由来するラクターゼ以外のものであり、前記1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物(b)が乾燥形態であり、
ラクターゼ(a)およびラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物(b)が実施形態1.1〜1.26のうちいずれか1つに定義されている、使用。
【0065】
1.28 乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療のための方法であって、それを必要とする被験体に実施形態1.1〜1.26のうちいずれか1つに定義される有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【0066】
1.29 実施形態1.1〜1.26のうちいずれか1つに定義される、腸溶コーティングによりコーティングされておらず、ラクターゼとラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される1種類以上のラクターゼ産生おうおび/またはラクターゼ含有微生物とを含有する、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、散剤、ペレット剤および顆粒剤から選択される固体投与形(ただし、この組成物は2種類以上の付加的生薬抽出物と外因性リパーゼおよび外因性プロテアーゼとの組合せを含有する組成物以外のものである)。
【0067】
1.30 カプセル剤、錠剤および糖衣錠から選択される、実施形態1.29に記載の固体投与形。
【0068】
1.31 散剤、ペレット剤および顆粒剤から選択され、該散剤、ペレット剤および顆粒剤がサシェ剤に含まれる、実施形態1.29に記載の固体投与形。
【0069】
1.32 カプセル剤である、実施形態1.30に記載の固体投与形。
【0070】
1.33 錠剤である、実施形態1.30に記載の固体投与形。
【0071】
1.34 糖衣錠である、実施形態1.30に記載の固体投与形。
【0072】
本発明のさらなる態様および実施形態
本発明のさらなる実施形態および態様は以下の記載および例から明らかになる。
【0073】
本発明の対象は、上記、本出願の導入の節に記載した問題を解決することができる薬剤である。該薬剤は酵素ラクターゼと微生物の組合せを含有する。対象微生物は乳酸菌、特に好ましくは、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスである。本発明の意味するラクターゼは、乳糖をグルコースとガラクトースに変換(切断)することができる酵素である。本発明の意味する乳酸菌は特に、それらの固有の微生物ラクターゼの手段によって乳糖を代謝することができ、かつ/またはそれからヒトまたは動物の消化管内でラクターゼが放出され得る微生物である。本発明に従って使用される微生物は、貯蔵寿命を長くし、良好な加工性を与えるために好ましくは凍結乾燥または噴霧乾燥(好ましくは、凍結乾燥)することができる。
【0074】
以下、ラクトバチルス・ブルガリカスが用いられる場合には、これはラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスを意味する。
【0075】
本発明の薬剤は、食品または食品パルプ中の乳糖を摂取後にグルコースとガラクトースに切断することができる。このことは、乳糖がもはや腸における発酵を特徴とする細菌代謝に利用できないということを意味する。
【0076】
よって、本発明の対象は、微生物、好ましくは乳酸菌、特に好ましくはラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスと組み合わせたラクターゼの助けで、ヒトまたは動物身体における乳糖のバイオアベイラビリティを低減する薬剤である。
【0077】
本発明の対象はまた、微生物、好ましくは乳酸菌、特に好ましくはラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスと組み合わせたラクターゼの助けで、ヒトもしくは動物身体、またはそこに定着している腸管細菌に利用可能な乳糖の量を低減する薬剤である。
【0078】
本発明の対象はさらに、ラクターゼと微生物、好ましくは乳酸菌、特に好ましくはラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する、乳糖不耐症の症例に使用するための薬剤である。
【0079】
さらなる本発明の対象は、乳糖不耐症の症例における、微生物、好ましくは乳酸菌、特に好ましくはラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスと組み合わせたラクターゼの使用である。
【0080】
ラクターゼは、乳糖をグルコースとガラクトースに変換する特性を有する酵素である。乳糖は小腸から吸収されないが、グルコースとガラクトースは容易に消化でき、迅速に吸収される単糖類である。経口用に意図されるラクターゼ製剤に現在使用されているラクターゼは、ほとんどがアスペルギルス・オリゼを用いて生産される、いわゆる酸性ラクターゼ(サワーラクターゼと呼ばれることもある)である。酸性ラクターゼは、食品摂取後に胃の酸性環境で極めて有効である。酸性ラクターゼは3〜6前後のpHで安定かつ活性がある。本出願に関して「安定な」とは、酸性ラクターゼが、37℃、3〜6のpH値で1時間後にその活性の少なくとも30%をなお有していることを意味する。本明細書においてその活性の30%とは、米国食品化学物質規格集(FCC; Food Chemical Codex)第6版に記載される酸性ラクターゼに関するアッセイに従って試験される場合に、明示されている1時間の後に残留している酵素活性を意味する。
【0081】
小腸に見られるような6.5を超えるpH値では、酸性ラクターゼは安定であるが、もはやあまり活性がない。従って、酸性ラクターゼはもはや小腸で満足のいく効果を発揮することができない。従って、現在のところ、ラクターゼ製剤は、できる限り胃で、通常食物とともに摂取される乳糖の量を切断するのに必要な量のラクターゼを含まなければならない。低pH値で安定であり、かつ活性があり、胃と小腸双方の酸性環境で有効なラクターゼは知られておらず、市販されていない。胃通過時間は摂取された食品および摂取された食品の量によって大きく異なるので、ラクターゼ製剤の適正量は使用者にとって問題となる場合が多く、結果として、上記のように、使用者はこれらの製品の効果に満足でない場合が多い。単位用量当たりのラクターゼ活性を増加させれば助けとなり得るが、効果の増大および効果の信頼性は単位用量当たりのラクターゼ活性に比例して増大しないことが分かっている。摂取の時間も重要であり、これは酸性ラクターゼが空の胃に優勢な極めて低いpH値(1〜2.5の間)で急速に失活するためである。従って、使用者が食前の空の胃にラクターゼ製剤を摂取する時間が早すぎると(例えば、10分)、食品の摂取時には酵素がすでに不可逆的にその活性を失い、目的の乳糖切断にはもはや利用できず、このような場合には、単位用量当たりのラクターゼ活性は役割を果たさないことになる可能性がある。
【0082】
ある種の乳酸菌は、小腸に優勢なpH値で活性があり、かつ安定なラクターゼを含む。この乳酸菌ラクターゼは細菌外被で保護され、少なくとも部分的に(またはある程度まで)胃から小腸へと通過し、2つの有利な効果を果たすことができる。一方で、この微生物ラクターゼは小腸で消化液によって細菌外被が破壊された際に放出することができ、従って、胃で酸性ラクターゼによって切断されなかった乳糖がその後この乳酸菌によって放出されるラクターゼによって切断される。他方、無傷なままの細菌は乳糖を代謝することができるので、小腸の乳糖量のさらなる低減に寄与する。乳糖不耐症罹患者には、非発酵乳製品とは対照的に発酵乳製品にはより良い耐性を持っている人がいるが、これは1つには乳酸菌のラクターゼ含量によるものである。しかしながら、ほとんどの罹患者はいずれの問題もなく発酵乳製品を摂取するということはできない。乳糖不耐症者に乳酸菌を投与した試験では、乳糖消化に関して良好かつ信頼性のある有効性はなかったことが示された。この結果は多数の異なる株に関して、また、広範な異なる組合せを用いた場合に示された。従って、乳糖不耐症の症例での唯一乳酸菌を含む製剤の使用は意味をなさない(例えば、上述のHoveらを参照)。現在、健康に有利な効果を発揮するために大腸に無傷な状態で到達する、乳製品および他の食品へ乳酸菌を添加する試みがしばしばなされているが、本明細書で提供される発明では、摂取したできるだけ多くの乳酸菌が小腸で破壊されることが好ましく、その結果、そこで微生物ラクターゼが放出され、これによりその後、乳糖切断に利用可能となる。このような乳酸菌を添加することによって、ラクターゼ製剤の有効性および/または信頼性が増大し得る。このような製剤は一方で胃において乳糖を切断することができ(酸性ラクターゼによる)、他方で、胃で切断されなかった乳糖を小腸で切断することができる(乳酸菌ラクターゼによる)。従って、乳酸菌を添加することによってこの製剤の効果の延長が達成され、これにより、単に単位用量当たりのラクターゼ活性を増大させるだけでは達成することのできない、または少なくともコスト効率良く達成することができない、効果のより大きな有効性および/または信頼性が得られる。従って、本発明の薬剤に、酵素ラクターゼの他、小腸においてそれら固有の十分な活性があり、かつ安定なラクターゼを放出し、かつ/または小腸において乳糖を代謝するような微生物を添加することが有利である。乳酸菌のラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスがこの適用に特によく適していることが分かったが、それはこれらの微生物は大部分が、そうでなくても少なくとも一部が、微生物ラクターゼを保護する完全な細菌外被をもって胃で生き残り、また、大部分が、そうでなくても少なくとも一部が小腸では完全な状態で生き残らず、そこで適切な程度でそれらの微生物ラクターゼを放出するためである。例えば、ラクトバチルス・デルブレッキイ(ラクトバチルス・ブルガリカス以外の亜種)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillusrhamnosus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ルテリ(Lactobacillus rheuteri)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcos acidilacti)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)も対象となる。
【0083】
このような組合せ剤は2つの個別用量単位、例えば、2個の個別錠剤またはカプセル剤の形態で適用することができ、そのうち一方が酵素ラクターゼを、他方が乳酸菌を含有する。
【0084】
本発明の意味する食品は、2002年1月28日の欧州議会および閣僚理事会規則No.178/2002(EC; European Parliament and of the Council)の意味する食品である。本発明の意味する食品は特に、特定栄養用途食品、特殊医療目的食品、栄養補助食品、ダイエタリーサプリメントおよび食品添加物を含む。
【0085】
本発明の意味する栄養補助食品は、2002年6月10日の欧州議会および閣僚理事会指令2002/46/ECの意味する栄養補助食品である。
【0086】
本発明の意味する特定栄養用途食品は、特定栄養用途を意図した食品に関する2009年5月6日の欧州議会および閣僚理事会指令2009/39/ECの意味する特定栄養用途食品である。
【0087】
本発明の意味する特殊医療目的食品は、特殊医療目的の健康食品に関する1999年3月25日の欧州議会および閣僚理事会指令1999/21/ECの意味する特殊医療目的食品である。
【0088】
本発明は、医療に、例えば医薬組成物として使用するための、酵素ラクターゼと乳酸菌との組合せ、特に、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを提供する。よって、本発明の対象はまた、医療手法、特に、ヒトまたは動物身体の治療的処置の手法において使用するための、ラクターゼとラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスの組合せからなる、またはこれらの物質を1種類以上の他の有効成分とともに含有する製品である。
【0089】
本発明の対象はまた、ラクターゼと、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブレッキイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ルテリ、ラクトコッカス・ラクティス、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcos acidilacti)、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・インファンティスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物とを含有する、医療に使用するための組成物である(ここで、このラクターゼは好ましくは上記微生物に由来するものではない)。本発明に関して医薬組成物は、指令2004/27EC版の指令2001/83ECの意味する製品である。
【0090】
本発明のさらなる態様によれば、ラクターゼと、乳酸菌との組合せ、特に、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する食品が提供される。さらに本発明によれば、ラクターゼと、乳酸菌との組合せ、特に、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを、乳糖をグルコースとガラクトースに変換するのに有効な量で含有する食品が提供される。
【0091】
また、食品は、食品にラクターゼとラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せが、そのラクターゼと乳酸菌の効果が主として食品の摂取の後に始まるような方法で添加される手順を用いて製造することができる。このような食品は非処理食品と実質的に同じ食味であり、摂取後に存在する乳糖含量が低い結果として、乳糖不耐症の症例における摂取に適している。基本的に、本出願では、食品の摂取後に酵素および乳酸菌の乳糖切断作用の少なくとも50%が存在することを意味する。あるいは、食品の摂取後にその作用の(a)少なくとも90%、(b)少なくとも80%、(c)少なくとも70%、または(d)少なくとも60%が存在し得る。
【0092】
本発明のさらなる態様によれば、ラクターゼと、乳酸菌との組合せ、特に、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する医療装置が提供される。よって、本発明の対象はまた、ラクターゼと、乳酸菌との組合せ、特に、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する、またはそれを1種類以上の他の有効成分とともに含有する医療装置である。
【0093】
本特許出願の意味する医療装置は、指令2007/47/ECによる補正版の指令93/42/EECの意味する医療装置である。
【0094】
本発明の種々の態様をさらに以下に記載する。以下で薬剤という場合には、これはいつも食品、医療装置または医薬組成物も意味する。
【0095】
医薬分野、特にヒトまたは動物の乳糖不耐症の症例においては、ラクターゼ、具体的には、酸性ラクターゼ、より具体的には、アスペルギルス亜種由来の酸性ラクターゼ、いっそうより具体的には、アスペルギルス・オリゼ由来の酸性ラクターゼがラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスと併用されたことはない。従って、本明細書に提供される発明は、これらの物質の組合せに関する最初の医療適応である。
【0096】
本発明の薬剤は食前、食中または食後に経口摂取することができ、これによって食品パルプ中の乳糖に切断効果を発揮し得る。好ましくは、本発明の薬剤は食事に直前、食事中または食事の直後に摂取する。本発明の薬剤は、さらなる添加物を用いずに酵素と乳酸菌を含んでもよい。しかしながら、本発明の薬剤は増量材、結合剤、安定剤、保存剤、香味料などの、薬学上許容されるおよび/または食品に許容される添加物をさらに含むことが好ましい。このような添加物は慣用されており、医薬組成物、医療装置、食品、特定栄養用途食品、特殊医療目的食品、栄養補助食品、ダイエタリー・サプリメントおよび食品添加物の製造に関して周知のものであり、当業者であれば特定の剤形に対してどの添加物のどのような量が好適かが分かる。好ましくは、本発明の薬剤は添加物としてリン酸二カルシウム、修飾デンプン、微晶質セルロース、マルトデキストリンおよび/またはファイバーソルを含有する。
【0097】
本発明の薬剤はまた摂取前の食品に添加することもできる。本発明の薬剤は、食品摂取後にそれらの効果を少なくとも部分的に、好ましくは全面的に発揮させるために製造段階で食品に添加することさえできる。これは例えばマイクロカプセル化によって達成することができる。このように、食品の利用可能な乳糖含量は特に有利な方法で低減される。従って、ラクターゼとラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する製剤は、ヒトまたは動物の消化管に入るまでに、特に胃または小腸でこれらの物質を主として放出しないものが好ましい。本発明は、例えば、カード、ヨーグルト、クリーム、チーズ、プディング、乳飲料、混合乳飲料およびアイスクリームなどの乳および乳製品の製造、ならびに例えばチョコレートおよびチョコレート製品、ベーカリー製品(例えば、ビスケットおよびケーキ)、パン、菓子、乳糖含有飲料、乳糖含有ソース(例えば、クリームソース)および乳糖含有甘味剤の製造に使用可能である。煮る、焼くまたは揚げる料理については、本発明の薬剤を例えば調理後の料理に混ぜるか、振りかけることができる。本発明によれば、乳および乳製品が関連する限り、それらは酸性ラクターゼと、本明細書に挙げられた少なくとも1種類の微生物、好ましくは、ラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルス(ただし、ラクトバチルス・アシドフィルスは好ましくない)を含有する。
【0098】
本発明の薬剤はまた、摂取後に別の食品に由来する乳糖にその効果を発揮するために食品に加えることができる。この一例がシリアルへの本発明の薬剤の添加であり、このようにすれば、ミルクの味を損なうことなく、ミルクで処理したシリアルを摂取した後にミルクに含まれていた乳糖の低減が生じる。
【0099】
本発明の対象はまた、他の有効成分に加えて、ラクターゼとラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスとの組合せを含有する薬剤である。
【0100】
本発明は、意図する投与経路に好適な任意の形態で調剤することができる。経口投与には、本発明の薬剤は好ましくは、カプセル剤(コーティングまたは非コーティング);錠剤(コーティングまたは非コーティング)、糖衣錠(コーティングまたは非コーティング);コーティングまたは非コーティングペレット剤、顆粒剤またはマイクロもしくはミニ錠剤を含有するカプセル剤;コーティングまたは非コーティング散剤、ペレット剤またはマイクロもしくはミニ錠剤から打錠した錠剤の形態で調剤される。経口投与の可能性としてはまた、コーティングまたは非コーティングゲルキャップ(ゼラチン軟カプセル)、または液体形態、例えば、溶液、滴剤、懸濁液またはゲルがある。本発明はまた、乾燥または含水口中サプリメントとして提供することもできる。本発明の薬剤の散剤としての調剤は食品への混合に特に好適である。散剤は食事に振りかけてもよいし、またはパルプもしくは飲料に混合してもよい。散剤は、バルク散剤として供給された薬剤が個別バックなどの個別投与量に包装される場合、または散剤が投与装置で提供される場合が特に好適である。
【0101】
本発明の薬剤は散剤として、またはカプセル中の顆粒剤もしくはペレット剤として、または経口投与される錠剤として調剤される場合が特に好ましい。
【0102】
本発明の薬剤または組成物は一般に少なくとも1種類の薬学上または食餌上許容される担体または賦形剤を含有する。
【0103】
経口投与には、有効成分が許容される賦形剤および/または担体中に含まれ得る。「許容される担体」とは、その標的部位に有効成分を送達し、レシピエントのヒトまたは動物に有意な害を引き起こさない担体をいう。しかしながら、担体の厳密な形態は重要ではない。
【0104】
担体は有効成分が封入される例えばカプセル剤皮、サシェまたはマトリックスであり得る。
【0105】
本発明の薬剤に関する担体および/または賦形剤の総量は、好ましくは組成物の5〜99.9重量%の間、より好ましくは10〜95重量%の間、いっそうより好ましくは25〜90重量%の間である。
【0106】
好適な賦形剤および/または担体としては、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、微晶質セルロース、デキストロース、米粉、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、クロスカルメロースナトリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスポビドン、スクロース、植物ガム、乳糖、メチルセルロース、ポビドン、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、修飾デンプン、ファイバーソル、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど(それらの混合物を含む)が挙げられる。好ましい担体としては、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、リン酸二カルシウム、修飾デンプン、微晶質セルロース、ファイバーソル、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの混合物が挙げられる。常法を用い、種々の成分と賦形剤および/または担体を混合し、所望の形態にする。錠剤またはカプセル剤などの本発明に従う経口投与に意図される剤形は、低pH値に耐性のあるコーティングまたは胃耐性コーティングでコーティングしてもよい。また、低pH値に対する耐性はないが、低pH値で個々の酵素または個々の乳酸菌の放出の遅延をもたらすコーティングも使用可能である。また、本発明の薬剤を、非コーティングカプセルに充填することができる、または非コーティング錠剤へと打錠することができる、コーティングされた(上記参照)ペレット剤、顆粒剤またはマイクロもしくはミニ錠剤として調製することもできる。好適なコーティングは例えば、酢酸フタル酸セルロース、セルロース誘導体、セラック、ポリビニルピロリドン誘導体、アクリル酸、ポリアクリル酸誘導体およびポリメチルメタクリレート(PMMA)、例えばEudragit(Rohm GmbH製,ダルムシュタット)、特に、Eudragit FS30DおよびEudragit L30D−55である。コーティング剤に例えば水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、このコーティング剤のpH耐性にさらに影響を与えることができる。調剤方法および投与方法に関するさらなる詳細は、Lippincott, Williams & Wilkins(米国ボルチモア)により2005年に刊行された”Remington: The Science & Practice of Pharmacy”第21版およびWissenschaftliche Verlagsgesellschaftにより2006年に刊行されたProf. Bauer ”Lehrbuch der Pharmazeutischen Technologie”第18版(ISBN 3804−72222−9)に見出せる(これらの文献は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0107】
本発明によれば、できるかぎり無傷な細菌外被をもって胃で生き残るような乳酸菌を用いるのが好ましいが、やはり、できる限り大きな割合の細菌を小腸または少なくとも十二指腸(小腸の上部)に到達させるために、これらの乳酸菌に胃耐性コーティングを施すか、またはそれらを胃耐性コーティングを持った例えばカプセル剤、糖衣錠、錠剤、ペレット剤、顆粒剤または結晶中に調剤することが有利であり得る。また、乳酸菌を胃耐性コーティングを持った例えばペレット剤、顆粒剤中に含ませることもできるし、または乳酸菌粉末に胃耐性コーティングを施すこともできる(例えば、噴霧法を使用)。これらのペレット剤、顆粒剤または散剤は非コーティングカプセルに充填することもできる。これらはまた、胃で放出されると思われるラクターゼを含有してもよい。胃酸から乳酸菌を保護するコーティングは、特に、乳酸菌を用い、そうでなければその細菌外被が胃で破壊され、その結果、微生物ラクターゼが例えばそこでの低pH値のために失活されてしまう場合に極めて有利となる。
【0108】
本発明で用いるための他の好適な薬学上および/または食餌上許容される担体または賦形剤としては、水、鉱油、エチレングリコール、プロピレングリコール、ラノリン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アセトン、グリセリン、ホスファチジルコリン、コール酸ナトリウムまたはエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本発明で用いるための組成物はまた少なくとも1種類の補助乳化剤を含んでもよく、オキシエチレン化モノステアリン酸ソルビタン、脂肪アルコール(ステアリルアルコールまたはセチルアルコールなど)、または脂肪酸エステル、およびポリオール(ステアリン酸グリセリルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
好ましくは、本発明で用いるべき薬剤は安定化形態で提供される。一般に、本発明に従って使用可能な安定化方法および手順としては、例えば、化学薬剤の添加、温度調節に基づく方法、照射に基づく方法またはそれらの組合せを含む、当技術分野で公知の化学材料または生物材料の安定化のための任意の、またあらゆる方法が含まれる。本発明に従って使用可能な化学薬剤としては、とりわけ、保存剤、酸、塩基、塩、酸化防止剤、増粘剤、乳化剤、ゲル化剤、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0111】
酸性ラクターゼは市販されており(例えば、Amano、日本およびDSM、オランダ)、慣例的に微生物アスペルギルス・オリゼを用いて微生物による方法で製造されている。ラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスも市販されている(例えば、Danisco、デンマークまたはChristian Hansen、デンマーク)。
【0112】
しかしながら、本発明は現在市販されている酸性ラクターゼ酵素に限定されず、一般に、小腸において乳糖を分解することができる(すなわち、ラクターゼの放出によるか、または乳糖の細胞内代謝による)乳酸菌と相まって乳糖のグルコースおよびガラクトースへの変換を特異的にまたは非特異的に行うことができる酵素に関する。
【0113】
ラクターゼの活性は、本発明に従ってFCC単位(Food Chemical Codex units)で定義される。1酵素単位は、米国食品化学物質規格集第6版(そのcomplete measuring specification, test description, activity calculationを参照)に記載されている条件下で、37℃、pH4.5で1分当たりに1マイクロモルのo−ニトロフェノールを放出する。
【0114】
この定義に従って測定される酵素活性では、本発明の薬剤は、ラクターゼの単位用量当たり500〜50,000FCC単位、好ましくは2000〜20,000FCC単位、特に好ましくは3000〜12,000FCC単位を含むべきである。
【0115】
本発明の薬剤に含まれている乳酸菌に関して量が低く記載されていれば(コロニー形成単位、cfuと略す)、それらは本発明の薬剤の貯蔵寿命の終わりになお生存力のある乳酸菌の量(cfu)を表す。乳酸菌を含有する製剤は乾燥した低温の場所で貯蔵するのが好ましくいことを注記しておく。従って、乳酸菌の十分に長い生存力を達成するには、本発明の薬剤を、シリカゲルまたはモレキュラーシーブなどの乾燥剤(例えば、蓋の中に)を備えた気密性の、好ましくは水−蒸気を通さない容器(例えば、ガラスまたはアルミニウム製)で貯蔵するのが有利といえる。
【0116】
乳酸菌の量はcfu(コロニー形成単位)で示される。本発明の薬剤は、乳酸菌株当たり1千万〜2千億cfuの間、好ましくは5千万〜百億cfuの間、特に好ましくは1億〜20億cfuの間(例えば、1億〜10億cfuの間)を含むべきである。
【0117】
酵素ラクターゼに加えて、ラクトバチルス・ブルガリカスおよび/またはストレプトコッカス・サーモフィルスを含有する組合せ薬剤の場合、1用量単位は1千万〜2千億cfuの間のラクトバチルス・ブルガリカス、好ましくは5千万〜百億cfuの間のラクトバチルス・ブルガリカス、特に好ましくは1億〜20億cfuの間(例えば、5億〜20億cfuの間)のラクトバチルス・ブルガリカスを含むべきである。ラクトバチルス・ブルガリカス菌に加えて、またはその代わりに、本発明の薬剤は単位用量当たり1千万〜2千億cfuの間のストレプトコッカス・サーモフィルス、好ましくは5千万〜百億cfuの間のストレプトコッカス・サーモフィルス、特に好ましくは1億〜20億cfu(例えば、5億〜20億cfuの間)のストレプトコッカス・サーモフィルスを含むべきである。
【0118】
本発明の薬剤は、単位用量当たり2000〜12000FCC単位の間(例えば、2000〜6000FCC単位の間)の酸性ラクターゼ、1億〜百億cfu(例えば、1億〜20億cfuの間)のラクトバチルス・ブルガリカス、および1億〜百億cfuの間(例えば、1億〜20億cfuの間)のストレプトコッカス・サーモフィルスを含有するものが特に有利であることが分かっている。
【0119】
酸性ラクターゼを、ドイツのブラウンシュヴァイクのDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)に寄託されたラクトバチルス・デルブレッキイLB−VC18(寄託番号:DSM 23320)とストレプトコッカス・サーモフィルスST−VC18(寄託番号:DSM 23319)の2株と組み合わせた場合に、特に有利な結果を得ることができる。
【0120】
広範な上記の用量は、本発明の薬剤が幅広く異なる重篤度、また軽度の乳糖代謝障害に適用可能であるという事実によって説明できる。罹患しているヒトおよび/または動物はある特定の乳糖負荷に異なる程度で反応する。この他、用量の違いも、摂取される個々の食品によって身体に大きく異なる量の乳糖が供給されるという事実によるものである。
【0121】
本発明の薬剤は、単位用量当たり例えば、500〜50,000FCC単位の間(例えば、500〜30,000FCC単位の間)のラクターゼと1千万cfu〜2千億cfuの間のラクトバチルス・ブルガリカスおよび/または1千万cfu〜2千億cfuの間のストレプトコッカス・サーモフィルスを含み得る。これらの2つの微生物の代わりに、またはこれらの微生物の一方もしくは双方に加えて、本発明の薬剤は、各場合において、1千万cfu〜2千億cfuの以下の乳酸菌:ラクトバチルス・デルブレッキイ(ラクトバチルス・ブルガリカス以外の亜種)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ルテリ、ラクトコッカス・ラクティス、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcos acidilacti)、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・インファンティスも含み得る。
【0122】
この他、好適な添加剤も必要な量で使用することができる。
【0123】
本発明は、医療目的および非医療目的に、例えば、医薬組成物、医療装置または食品として利用可能とすることができる。
【0124】
本明細書において治療とは、広い意味で理解すべきである。本出願に関して治療は、疾病に療法を施す、または疾病を治療することを表すだけでなく、極めて全般的に本発明の薬剤の使用、またはヒトまたは動物の乳糖不耐症およびラクターゼ欠乏症における本発明の薬剤の使用(ほとんど全ての哺乳類で、母乳摂取が停止された後に乳糖消化能が低下するため)も含む。本出願に関して、治療は相応に特に、本発明の薬剤の使用、または乳糖もしくは乳糖含有食品の摂取の結果として、または他の物質、例えば医薬組成物からヒトもしくは動物の消化管への乳糖の放出によって起こり得る(a)あらゆる種類および重篤度の症状、(b)あらゆる種類および重篤度の病気、ならびに(c)あらゆる形態の健康障害および病訴を予防する、消散させる、緩和する、軽減する、またはその発生に対して予防的手段として機能させるための本発明の薬剤の使用を包含する。さらに、本出願に関して、治療は、乳糖もしくは乳糖含有食品の摂取に関連する、または他の物質、例えば医薬組成物からヒトもしくは動物の消化管への乳糖の放出に関連する鼓脹、腸内ガス、胃痛、胃疝痛、疝痛、下痢、水様下痢、腸音、腹痛、げっぷ、悪心、嘔吐、膨満、腸内の微生物バランスの乱れ、または腸内ガスの生産増の消散、緩和、除去、軽減、それに対する予防的手段および予防を包含する。さらに、本出願に関して、治療は、乳糖もしくは乳糖含有食品の摂取に関連する、または他の物質、例えば医薬組成物からヒトもしくは動物の消化管への乳糖の放出に関連する、乳糖消化不良もしくは乳糖吸収不良に関連する各種鬱病、頭痛、片頭痛、湿疹、発疹、ならびに食欲不振および体重減の消散、緩和、除去、軽減、それに対する予防的手段および予防を包含する。さらに、本出願に関する治療は、ヒトまたは動物身体における乳糖のバイオアベイラビリティの低減、およびヒトもしくは動物身体に、またはそこに定着している腸管細菌に利用可能な乳糖の量の低減を包含する。
【0125】
本出願において、「治療」という用語には予防および治療が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0126】
以下、限定されるものではないが以下に示す実施例により本発明を説明する。
【0127】
実施例1
カプセル剤組成物
以下のカプセル組成物は、アスペルギルス・オリゼ由来ラクターゼと凍結乾燥したラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスを混合することによって製造することができる。
【0128】
カプセル組成物A−サイズ1カプセル
Capsugel BVBA(ベルギー、ボルネム)から入手できるサイズ1ゼラチンカプセル(容量0.5ml)に、1カプセル当たり70mgのラクターゼ(ラクターゼ活性は50,000FCC/g)、40mgの凍結乾燥ストレプトコッカス・サーモフィルス(3百億cfu/g)、30mgの凍結乾燥ラクトバチルス・ブルガリカス(5百億cfu/g)および200mgのリン酸二カルシウムを充填する。
【0129】
好ましいストレプトコッカス・サーモフィルス株はストレプトコッカス・サーモフィルスST−VC18(寄託番号:DSM 23319)であり、好ましいラクトバチルス・ブルガリカス株はラクトバチルス・デルブレッキイLB−VC18(寄託番号:DSM 23320)である。
【0130】
カプセル組成物B−サイズ3カプセル
Capsugel BVBA(ベルギー、ボルネム)から入手できるサイズ3ゼラチンカプセル(容量0.3ml)に、1カプセル当たり70mgのラクターゼ(ラクターゼ活性は50,000FCC/g)、30mgのストレプトコッカス・サーモフィルス(3百億cfu/g)、20mgのラクトバチルス・ブルガリカス(5百億cfu/g)および100mgのリン酸二カルシウムを充填する。
【0131】
カプセル組成物C−サイズ0カプセル
Capsugel BVBA(ベルギー、ボルネム)から入手できるサイズ2ゼラチンカプセル(容量0.68ml)に、150mgのラクターゼ(ラクターゼ活性は50,000FCC/g)、100mgのトレプトコッカス・サーモフィルス(3百億cfu/g)、50mgのラクトバチルス・ブルガリカス(5百億cfu/g)および250mgのリン酸二カルシウムを充填する。
【0132】
カプセル組成物D−サイズ2カプセル
Capsugel BVBA(ベルギー、ボルネム)から入手できるサイズ3ゼラチンカプセル(容量0.37ml)に、100mgのラクターゼ(ラクターゼ活性は100,000FCC/g)、50mgのストレプトコッカス・サーモフィルス(3百億cfu/g)、30mgのラクトバチルス・ブルガリカス(5百億cfu/g)および100mgのリン酸二カルシウムを充填する。
【0133】
実施例2
乳糖吸収不良者における乳糖消化に対するラクターゼと乳酸菌の組合せ効果の検討
乳糖吸収不良者における乳糖消化に対するラクターゼ、凍結乾燥乳酸菌、およびラクターゼと乳酸菌の組合せの効果を比較するための検討を行った。
【0134】
本検討は24人の乳糖吸収不良被験者を含むプラセボ対照、無作為化、二重盲検交差試験からなった。最初に30人の被験者を動員したが、6人は乳糖吸収不良者ではないことが判明し、従って、これらの6人の被験者から得られた結果は結果の分析から除外した。
【0135】
試験は登録検査と、各2週間の4回のウォッシュアウト期間を挟んだ5日の試験日を含む。試験中、参加者には食習慣を変えないこと、また、ビタミン、ミネラルおよびその他のサプリメントの摂取を控えることを要請した。各試験日の最初に、一晩絶食した後、各被験者から最初の呼気サンプルを採取した。その後、各被験者は5つの試験製剤のうち1つを無作為な順序で摂取した。
【0136】
これらの試験製剤は外観の同じカプセルで提供され、試験食1回当たり1個を試験参加者に、5gの乳糖が添加された150mlのミルク(およそ12.5gの乳糖を含有する乳糖強化乳となる)とともに投与された。5つの試験製剤の組成は次の通りであった。
製剤(a):1×10cfuのストレプトコッカス・サーモフィルスと1×10cfuのラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスを含有するカプセル
製剤(b):3300FCCのアスペルギルス・オリゼ由来酸性ラクターゼを含有するカプセル
製剤(c):9000FCCのアスペルギルス・オリゼ由来酸性ラクターゼを含有するカプセル
製剤(d):3300FCCの酸性ラクターゼと1×10cfuのストレプトコッカス・サーモフィルスおよび1×10cfuのラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスの組合せ(試験製剤a)を含有するカプセル
製剤(e):リン酸二カルシウム(プラセボ)
【0137】
試験製剤(a)および(d)の乳酸菌は、実施例1および上記24頁の説明に記載されているST−VC18およびLB−VC18株であった。試験製剤(b)はLactrase 3300(Pro Natura Gesellschaft fur gesunde Ernahrung mbH、ドイツのバートフィルベル)、試験製剤(c)はLactrase Plus 9000(Pro Natura Gesellschaft fur gesunde Ernahrung mbH、ドイツのバートフィルベル)、試験製剤(d)はLactrase 3300(Pro Natura)に乳酸菌を加えたものであった。
【0138】
試験製剤の無作為化、ならびに包装および試験製剤のコード化は、それ以外にはその試験に関わらなかった者によって行われた。
【0139】
与えられた乳糖用量(12.5g)は従来の乳糖吸収不良試験(50g)よりも少なかったが、通常摂取される食品の乳糖含量に近いものである。従来の乳糖吸収不良試験(50gの乳糖で行う)では、H最大濃度20ppm以上が乳糖吸収不良の証明であると考えられる。しかしながら、本試験では与える乳糖用量が少ないので、参加者が乳糖吸収不良者であったかどうかを判定するためにより低い閾値を用いた。従って、プラセボでH最大濃度が13ppm以上となる参加者を乳糖吸収不良者とみなし、これらの参加者から得られた結果を試験に含めた。
【0140】
乳糖消化に対するこれらの試験製剤の効果をH呼気試験を用いて測定した。この試験は、MicroLyzer Model 12i(QuinTron Instruments,米国ミルウォーキー、Wl 53215)にて行った。結腸の細菌によって炭水化物が発酵を受けた場合、その集団のおよそ90%で水素ガスが放出される。従って、呼気中の水素量は結腸で発酵を受けている乳糖の量の良好な指標となり、小腸におけるラクターゼ欠乏の良好な指標ともなる。
【0141】
呼気サンプルは3時間採取した。H最大濃度を乳糖消化のパラメーターとして選択した。各被験者、また5つの各製剤に関するH最大濃度を下表に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
試験結果の統計分析は、得られたH最大値に関して食事間で有意な全体的効果があったことを示した(フリードマン検定、p=0.001)。多重比較(ウィルコクソン)は、3300FCC単位のラクターゼを含む製剤(b)とプラセボ製剤(e)の間、9000FCC単位のラクターゼを含む(c)とプラセボ製剤(e)の間、および3300FCCのラクターゼと20億cfuの乳酸菌を含む組合せ製剤(d)とプラセボ製剤(e)の間で、H最大値に関する有意差を示した。さらに、製剤(d)のH最大値の平均偏差(分散)、すなわち、25/75%−四分位数間領域は他の試験製剤(すなわち、製剤(a)、(b)および(c))の平均偏差の大きさの半分に過ぎなかった。
【0144】
これらの結果は、有効成分を含有する4つの製剤、すなわち、製剤(a)(細菌単独)、製剤(b)(3300FCC)、製剤(c)(9000FCC)および製剤(d)(組合せ製剤)の全てが少なくとも一部の被験者においてH呼気濃度を低下させたが、3300FCC製剤(製剤(b))、9000FCC製剤(製剤(c))および組合せ製剤(製剤(d))だけが有意な効果を示したことが実証された。組合せ製剤(d)は9000FCC含有製剤(c)よりもはるかに有効であったが、H呼気値において有意に低い平均偏差も示した。これらのデータを分析したところ、組合せ製剤(d)を受容した参加者で有益な効果をほとんどまたは全く享受しなかった者はほとんどいなかったことが示された。よって、組合せ製剤(d)の利点は、乳糖消化へのより強い寄与だけではなく、より大きな割合の試験参加者に有効であったということでもある。従って、組合せ製剤(d)の乳糖消化効果から、個々の乳酸菌製剤(a)ならびにラクターゼ製剤(b)および(c)から利益を受ける場合よりも多くの乳糖吸収不良者が利益を受けると結論づけることができる。
【0145】
実施例3
乳糖をストレプトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・ブルガリカス菌とともにインキュベートすることによる乳糖のターンオーバーの検討
この試験では、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・ブルガリカス菌の凍結乾燥および再懸濁培養物による乳糖切断の程度を検討した。
【0146】
用いたストレプトコッカス・サーモフィルス株はストレプトコッカス・サーモフィルスST−VC18(寄託番号:DSM 23319)であり、用いたラクトバチルス・ブルガリカス株はラクトバチルス・デルブレッキイLB−VC18(寄託番号:DSM 23320)であった。
【0147】
両培養物の凍結乾燥物を双方個別に、また、コロニー形成単位(cfu)に基づいて両細菌の1:1混合物としてpH7.3のリン酸バッファーに再懸濁させた。さらに、これらの細菌調製物のラクターゼ活性が胃に匹敵する酸性環境(人工胃液=SGF; simulated gastric fluid)中で安定かどうかについて検討を行った。全ての場合において、乳糖切断を活性のある膵臓酵素と胆汁活性を模倣する洗剤を含有するブタ膵臓由来の膵臓酵素(欧州薬局方に従った10000単位のリパーゼ、8000単位のアミラーゼおよび600単位の膵臓プロテアーゼと、ドデシル硫酸ナトリウムとを含有するクレオンカプセル)(人工腸液=SIF; simulated intestinal fluid)の存在下で試験した。グルコースオキシダーゼアッセイによって酵素的に測定されるグルコース量を乳糖ターンオーバーの尺度とした。グルコースオキシダーゼアッセイは記載の通りに、また、Sigma Aldrich Chem Co. Data sheet glucose oxidase assay, 1996に言及されている通りに使用した。
【0148】
凍結乾燥細菌(1mg/ml)を1mlのリン酸バッファー(0.1mol/l)に再懸濁させた。乳糖(10mmol/l)およびクレオンを1リットル当たり2カプセルの密度(1回の食事当たり1〜2カプセルの摂取が推奨される)で加え、懸濁液を10分間および30分間インキュベートした。この実験では、ラクトバチルス・ブルガリカスのインキュベーションの結果、30分後に1.7mmol/lのグルコースが遊離し、ストレプトコッカス・サーモフィルスのインキュベーションにより2.8mmol/lのグルコースが生じ、それぞれ17%および28%のターンオーバーが示された。
【0149】
ラクターゼ活性の酸安定性を試験するために、再懸濁させた凍結乾燥物(懸濁液1ml当たり1mg/mlの細菌凍結乾燥物)をpH4.0の人工胃液とともに10分、30分および60分間インキュベートした。この懸濁液をリン酸バッファーの添加によって中和してpHおよそ7.0とした後、乳糖(10mmol/l)とクレオンを加え、ラクターゼ活性を上記のように測定した(細菌懸濁液を乳糖とともに30分インキュベーション、すなわち、同一の条件)。
【0150】
ラクトバチルス懸濁液は30分後に2.0〜2.5mmol/lのグルコースを遊離し、ストレプトコッカス懸濁液はこの期間の後に3〜3.5mmol/lのグルコースを遊離した。人工胃液とともに10分間、30分間または60分間インキュベートしたサンプル間で違いは見られなかった。
【0151】
この実験は、双方の製剤のラクターゼ活性が再構成された胃環境で安定であることを示す。
【0152】
3つ目の実験では、ストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・ブルガリカス凍結乾燥物を1:1混合した(コロニー形成単位の数値に基づく)。ターンオーバー評価のために、1mgのストレプトコッカス菌と0.6mgのラクトバチルス菌を1mlのリン酸バッファーに再懸濁させ、得られた混合物を人工腸液とともにインキュベートした。この混合物を10mmol/lの乳糖とともに30分間インキュベートした後に、3.1mmolのグルコースが検出された。
【0153】
同じ混合物を、ラクターゼ測定の前に、人工胃液とともに30分間インキュベートした。中和し、人工腸液中で10mmol/lの乳糖とともに30分間インキュベートした後に、グルコース濃度は3.15mmol/lであることが分かり、これにより、酸性条件に対するこの混合物の安定性が示される。
【0154】
これらの実験は、凍結乾燥細菌にラクターゼ活性が存在することを示す。このラクターゼ活性は人工腸液中で安定かつ活性があり、SIF中で試験する前に人工胃液に曝した後でも安定かつ活性があった。これらの実験から、小腸における乳糖のin vivo加水分解は両細菌の組合せの摂取により、または各細菌の単独摂取により達成することができ、また、単独で用いる場合または併用する場合において個々の細菌種の活性の間に有意な差はないと結論付けることができる。
【0155】
上記の例で示されるデータは、酸性ラクターゼと細菌のストレプトコッカス・サーモフィルスおよび/またはラクトバチルス・ブルガリカスとの組合せが、ラクターゼだけを含有する組成物または細菌だけを含有する組成物の場合よりも乳糖吸収不良者における乳糖消化により有効で信頼性の高い改善を提供することを示す。さらに、上述の先行技術文献の教示とは対照的に、細菌を乾燥形態で提供することができ、所望の治療効果を達成するために細菌を腸溶コーティングでコーティングする必要はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳糖不耐症またはラクターゼ欠乏症から起こる症状の治療に使用するための組成物であって、
(a)3〜6のpH範囲で活性のあるラクターゼと
(b)ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii ssp bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Steptococcus thermophilus)から選択される1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物
を含む非乳製固体投与形であり、ラクターゼ(a)が前記1種類以上の微生物(b)に由来するラクターゼ以外のものであり、前記1種類以上のラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有微生物(b)が乾燥形態である、組成物。
【請求項2】
投与形が腸溶コーティングでコーティングされたカプセル剤以外のものである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
ラクターゼ産生および/またはラクターゼ含有生物が腸溶コーティングされていない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ラクターゼ(a)が3〜6の範囲のpHで最大活性を示す、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
ラクターゼ(a)が微生物に由来し、組成物がそのラクターゼが由来する微生物を実質的に含まない、請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスとストレプトコッカス・サーモフィルスの双方を含有する、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
固体投与形がカプセル剤、錠剤、糖衣錠、散剤、ペレット剤および顆粒剤から選択される、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
単位投与形である、請求項1〜7のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
単位投与形がカプセル剤、錠剤および糖衣錠から選択される、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
単位投与形がカプセル剤である、請求項9に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
2000〜12000FCC酵素単位の間のラクターゼ(a)を含有する、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
5千万〜百億コロニー形成単位のラクトバチルス・ブルガリカスと5千万〜百億コロニー形成単位のストレプトコッカス・サーモフィルスを含有する、請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
実質的に乳糖を含まない、請求項1〜12のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
ラクトバチルス・ブルガリカスがラクトバチルス・デルブレッキイLB−VC18(寄託番号:DSM 23320)である、請求項1〜13のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
ストレプトコッカス・サーモフィルスがストレプトコッカス・サーモフィルスST−VC18(寄託番号:DSM 23319)である、請求項1〜14のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
ラクターゼ(a)がアスペルギルス種に由来する、請求項1〜15のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
アスペルギルス種がアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)である、請求項16に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
組成物が2種類以上の付加的生薬抽出物と外因性リパーゼおよび外因性プロテアーゼとの組合せを含有する組成物以外のものである、請求項1〜17のうちいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
(c)薬学上または食餌上許容される担体または賦形剤
を含有する、請求項1〜18のうちいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のうちいずれか一項に定義される、腸溶コーティングによりコーティングされておらず、ラクターゼとラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスから選択される1種類以上のラクターゼ産生またはラクターゼ含有微生物とを含有する、カプセル剤、錠剤、糖衣錠、散剤、ペレット剤および顆粒剤から選択される固体投与形(ただし、この組成物は2種類以上の付加的生薬抽出物と外因性リパーゼおよび外因性プロテアーゼとの組合せを含有する組成物以外のものである)。
【請求項21】
カプセル剤、錠剤および糖衣錠から選択される、請求項20に記載の固体投与形。

【公表番号】特表2013−518842(P2013−518842A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551549(P2012−551549)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000510
【国際公開番号】WO2011/095339
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512199117)ヴィタケア ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー (1)
【Fターム(参考)】