説明

乳酸系樹脂組成物からなるシートおよびその成形体

【課題】耐熱性に優れた乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートより製造した成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】乳酸系樹脂(A)5〜75重量部、および乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部(ただし、(A)と(B)との合計を100重量部とする)を含んでなる乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートを熱成形することにより製造した成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートより製造した成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックから作られる成形体の材料としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂が使用されている。かかる樹脂から製造された成形体は耐熱性に優れているが、廃棄する際その処理方法を誤るとゴミの量を増加させる。さらに、化石原料、石油資源の枯渇、二酸化炭素の増大が問題視されている。
【0003】
優れた成形性を有するポリ乳酸は、とうもろこし等の穀物資源から発酵により得られる乳酸を原料とする、植物由来の樹脂として注目されている。しかしながら、非晶性ポリ乳酸はガラス転移点が58℃であり、耐熱変形温度が低く、かつアイゾット衝撃強度が30J/mであり脆いものであった。
【0004】
例えば、非晶性ポリ乳酸より製造した容器は輸送時の変形、熱湯による変形、電子レンジ使用による変形等が起こるため、限られた用途のみに用いられてきた。
このため日常の環境下で使用すべく、乳酸系樹脂の改良が望まれている。例えば耐熱性を向上させるために、成形加工時に結晶化温度付近に保持した金型内に充填することにより、あるいは、成形後に非晶性の成形体を熱処理(アニール)等することにより、結晶化度をあげることが可能であるが、サイクルタイムが長くなるばかりでなく、過大な設備投資が必要であった。
【0005】
例えば、特開2002−146170号公報(特許文献1)には、可塑剤と結晶核剤とを必須成分とし、可塑化されたポリ乳酸樹脂に特定の結晶性を付与することにより、実用性の高いフィルムが得られることが記載されている。しかしながら、この方法によると、ポリ乳酸樹脂に結晶性を付与するための設備投資が必要である。また、添加した結晶核剤の粒子径が大きいこと、あるいはその添加量が多いことから、透明性が著しく低下し、良好な透明性を有するシートや成形体を得ることは困難である。
【0006】
また、特開平9−278991号公報(特許文献2)には、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコールおよび脂肪族カルボン酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種の透明核剤と乳酸系ポリマーとからなる組成物を成形し、成形時または成形後に熱処理することにより、透明性および結晶性が付与された成形体およびその製造方法が記載されている。しかしながら、この方法は、例えば、熱成形の場合は成形時に該樹脂組成物が結晶化する温度に保持された金型に接触させる必要があり、設備面や経済性の点で工業的且つ汎用的に容易に実施できる技術とは言い難い。
【特許文献1】特開2002−146170号公報
【特許文献2】特開平9−278991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における課題を解決しようとするものであり、耐熱性に優れた乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートより製造した耐熱性および生産性に優れた成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、乳酸系樹脂(A)および乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)を含んでなる乳酸系組成物からなるシートは耐熱性および生産性に優れることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明のシートは、
乳酸系樹脂(A)5〜75重量部、および乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部(ただし、(A)と(B)との合計を100重量部とする)を含んでなる乳酸系樹脂組成物からなる。
【0010】
前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアクリル酸系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂(B)がポリアクリル酸系樹脂であってもよい。
【0011】
本発明には上記シートを熱成形することにより製造した成形体を含む。
前記成形体は、金型を加熱することなく熱成形することにより製造することが好ましい。
【0012】
前記熱可塑性樹脂(B)がポリアクリル酸系樹脂であるシートを、金型を加熱することなく熱成形することにより製造した、厚みが100〜700μmの部分のヘイズ(JIS
K6714に準拠)が0.2〜15%の成形体が好ましい。
【0013】
本発明の成形体は耐熱温度が65℃以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐熱性に優れた乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートより製造した耐熱性および生産性に優れた成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の乳酸系樹脂組成物からなるシートおよび該シートより製造した成形体について詳細に説明する。
なお、本発明においてシートとは、シートの幅方向にダイヤルゲージにより測定した際の厚みが10μm〜15mmの範囲内のシートを意味する。
【0016】
[シート]
本発明に係るシートとは、乳酸系樹脂(A)5〜75重量部、および乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部(ただし、(A)と(B)との合計を100重量部とする)を含んでなる乳酸系樹脂組成物からなるシートである。
【0017】
<乳酸系樹脂(A)>
本発明に用いる乳酸系樹脂(A)とは、乳酸単位を50モル%以上、好ましくは75モル%以上含むポリマーであり、具体的には、(1)ポリ乳酸、または乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマー、(2)多官能多糖類および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、(3)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位および乳酸単位を含む乳酸系ポリマー、ならびに(4)これらの混合物である。これらの中では、使用時の透明性および耐熱性等を考慮すると、好ましくはポリ乳酸および乳酸−他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸コポリマーであり、さらに好ましくはポリ乳酸である。
なお、乳酸にはL−乳酸とD−乳酸とが存在するが、本発明において、単に乳酸という場合は、特にことわりがない限り、L−乳酸およびD−乳酸の両方を意味する。
【0018】
上記乳酸系樹脂の原料としては、乳酸類およびヒドロキシカルボン酸類が用いられる。乳酸類としては、L−乳酸、D−乳酸、これらの混合物または乳酸の環状2量体であるラクタイドを使用することができる。なお、高い結晶性を発現するためには、このような乳酸類を原料とする乳酸系ポリマーにおいて、L−乳酸含有率またはD−乳酸含有率が大きい方が好ましい。具体的には、乳酸単位中におけるL−乳酸またはD−乳酸の含有率が、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上である。
【0019】
また、上記乳酸類と併用できるヒドロキシカルボン酸類としては、炭素数2〜10のヒドロキシカルボン酸類が好ましい。具体的には、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などを好適に使用することができる。また、ヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや、6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンも使用できる。原料としての乳酸類とヒドロキシカルボン酸類との混合物は、得られるコポリマー中の乳酸含有率が50%以上、好ましくは75%以上になるように、種々の組み合わせで使用することができる。
【0020】
上記乳酸系樹脂を得るためには、公知公用の方法を用いることができる。例えば、上記原料を直接脱水重縮合する方法や、上記乳酸類やヒドロキシカルボン酸類の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライド、あるいはε−カプロラクトンのような環状エステル中間体を開環重合させる方法などが挙げられる。
【0021】
直接脱水重縮合して製造する場合、原料である乳酸類または乳酸類とヒドロキシカルボン酸類との混合物を、好ましくは有機溶媒の存在下で共沸脱水縮合して重合することにより、本発明に適した強度を持つ高分子量の乳酸系ポリマーが得られる。特に、有機溶媒としてフェニルエーテル系溶媒を用い、共沸により留出した溶媒から水を除去し、実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻すことが好ましい。
【0022】
乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3万〜500万、より好ましくは5万〜100万、さらに好ましくは10万〜30万、特に好ましくは10万〜20万である。また、その分散度(Mw/Mn)は、2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは2〜3である。乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)や分散度(Mw/Mn)が前記範囲にあることにより、成形性に優れる。
【0023】
乳酸系樹脂(A)の使用量は、後述する熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部にたいして乳酸系樹脂(A)5〜75重量部(ただし、(A)と(B)の合計を100重量部とする)の範囲で用いる。
【0024】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明に用いる熱可塑性樹脂(B)とは、上述の乳酸系樹脂(A)に添加したときに耐熱性を付与することができる、乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂であれば特に制限はされない。熱可塑性樹脂(B)の使用量は、前記乳酸系樹脂(A)5〜75重量部にたいして熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部(ただし、(A)と(B)の合計を100重量部とする)の範囲で用いる。
【0025】
耐熱性を付与することができる熱可塑性樹脂(B)としては例えば、ポリスチレン系樹脂(b-1)、ポリカーボネート樹脂(b-2)、ポリアクリル酸系樹脂(b-3)、アク
リロニトリル−ブチレン−スチレン共重合体、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を
混合し用いてもよい。
【0026】
本発明のシートは、該シートを用いて金型を加熱することなく熱成形を行った場合でも耐熱性を有するため好ましい。中でも添加量が少量でも耐熱性を付与することができるためポリスチレン系樹脂(b-1)、ポリカーボネート樹脂(b-2)が好ましい。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるシートを用いて金型を加熱することなく、熱成形を行った場合には通常得られる成形体は白色である。しかし、ポリアクリル酸系樹脂(b-3)を用いた場合には、金型を加熱することなく、熱成形を行った場合でも得られる成
形体が透明性に優れるため好ましい。
【0028】
<<ポリスチレン系樹脂(b-1)>>
本発明に用いるポリスチレン系樹脂は、一般的なポリスチレン系樹脂であり、スチレン系炭化水素、スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとのブロック共重合体、またはスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体等があげられる。なかでもスチレン系炭化水素、スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸とのブロック共重合体が他樹脂と比較して少ない添加量にて耐熱性を付与することができ好ましい。
さらにスチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸とのブロック共重合体が他樹脂と比較して耐熱性と耐衝撃性を同時に付与することができ好ましい。
【0029】
ブロック共重合体としては、ブロック毎に樹脂がピュアーになっているピュアブロック、また、共重合成分が混合してブロックを形成しているランダムブロック、さらには共重合成分濃度をテーパーになったテーパードブロック等が含まれる。
【0030】
(スチレン系炭化水素)
本発明において、スチレン系炭化水素とは、スチレン、o-メチルスチレン、p−メチ
ルスチレン、α−メチルスチレン等を示す。例えば、PSジャパン社製:HF77が挙げられる。
【0031】
(スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体)
本発明において、スチレン系炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体におけるスチレン系炭化水素とは、スチレン、o-メチルスチレン、p−メチルスチレン
、α−メチルスチレン等を指し、脂肪族不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートを用いることが出来る。中でもメチル(メタ)アクリレートが乳酸系樹脂(A)との相容性が高く、耐熱性向上効果が最も高いので、このましい。
【0032】
上記スチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては、PSジャパン社製:MX121が挙げられる。
上記スチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体のスチレン含有量を40重量%以上90重量%の範囲とすることが好ましい。スチレン含有量が40重量%以上90重量%の範囲にて、得られた熱成形体の耐熱性さらに耐衝撃性を上げることができる。
【0033】
(スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体)
本発明において、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体におけるスチレン系炭化水素の例としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、該スチレン系炭化水素ブロックは、これらの単独重合体、それらの共重合体及び/又はスチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでよい。また共役ジエン系炭化水素としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、該共役ジエン系炭化水素ブロックは
、これらの単独重合体、それらの共重合体及び/又は共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでよい。
【0034】
例えばスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体として、旭化成ケミカルズ(株)社製:アサフレックスシリーズ、電気化学工業(株)社製:クリアレンシリーズ、シェブロンフィリップス社製:Kレジン、BASF社製:スタイロラックス、アトフィナ社製:フィナクリアが挙げられる。
【0035】
上記ポリスチレン系樹脂(b−1)のメルトフロー(ISO1133に準拠:温度200℃ 荷重 5kgf)は0.1〜30が好ましく更に0.5〜20が好ましい。この範囲ではブレンド時に乳酸系樹脂(A)との相溶性が良好である。
【0036】
熱可塑性樹脂(B)としてポリスチレン系樹脂(b−1)を用いた場合、前記乳酸系樹脂(A)5〜75重量部にたいしてポリスチレン系樹脂(b−1)が95〜25重量部(ただし、(A)と(b−1)の合計を100重量部とする)の範囲で用いる。好ましくは乳酸系樹脂(A)20〜60重量部にたいしてポリスチレン系樹脂(b−1)80〜40重量部が好ましく、最も好ましくは乳酸系樹脂(A)40〜60重量部たいしてポリスチレン系樹脂(b−1)60〜40重量部である。上記範囲内のポリスチレン系樹脂(b−1)を含有する乳酸系樹脂組成物からなるシートを熱成形することにより得られる成形体は耐熱性が良好である。
【0037】
<<ポリカーボネート樹脂(b−2)>>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法、溶融法などの公知の方法で反応させ、製造される樹脂である。2価フェノールの代表的なものとしてはハイドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。特にビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系が好適に使用されており、なかでも通常ビスフェノールAと称される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが汎用的に用いられている。また、カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カルボニルエステルおよびハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、2価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などの添加は差し支えない。また2価フェノール、カーボネート前駆体はいずれも単独あるいは2種以上で使用することができ、さらに得られたポリカーボネート樹脂を2種以上混合使用してもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂(B)としてポリカーボネート樹脂(b−2)を用いた場合、前記乳酸系系樹脂(A)5〜75重量部にたいしてポリカーボネート樹脂(b−2)95〜25重量部(ただし、(A)と(b−2)の合計を100重量部とする)が好ましく、さらに好ましくは乳酸系樹脂(A)20〜60重量部にたいしてポリカーボネート樹脂(b−2)80〜40重量部が好ましく、最も好ましくは乳酸系樹脂(A)40〜60重量部たいしてポリカーボネート樹脂(b−2)60〜40重量部である。上記範囲内のポリカーボネート樹脂(b−2)を含有する乳酸系樹脂組成物からなるシートを熱成形することにより得られる成形体は耐熱性が良好である。
【0039】
<<ポリアクリル酸系樹脂(b−3)>>
本発明に用いるポリアクリル酸系樹脂(b−3)とは、アクリル酸モノマーを主成分と
するものであれば、単独重合体であっても共重合体でもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体などが挙げられる。アクリル酸モノマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルまたは(メタ)アクリル酸−2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、これらの中で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルへキシルが好ましい。
【0040】
中でも金型を加熱することなく熱成形を行った場合に、他のポリアクリル酸系樹脂(b−3)を用いた場合と比べて得られる熱成形が透明性により優れ、かつ耐熱性向上効果が高いため、(メタ)アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルがより好ましく、特に(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。
【0041】
上記ポリアクリル酸系樹脂は単独ないし2種以上を用いることができる。
アクリル酸系樹脂(b−3)のメルトフロー(JIS K7210に準拠:温度230℃
荷重 37.3N)は、1〜15が好ましく、さらに好ましくは2〜5が好ましい。特にこの範囲内のアクリル酸系樹脂を含有する乳酸系樹脂組成物から得られる熱成形体は透明性・耐熱性ともに良好である。
【0042】
熱可塑性樹脂(B)としてポリアクリル酸系樹脂(b−3)を用いた場合、前記乳酸系系樹脂(A)5〜75重量部にたいしてポリアクリル酸系樹脂(b−3)95〜25重量部(ただし、(A)と(b−3)の合計を100重量部とする)が好ましく、さらに好ましくは乳酸系樹脂(A)20〜60重量部にたいしてポリアクリル酸系樹脂(b−3)80〜40重量部が好ましく、最も好ましくは乳酸系樹脂(A)40〜60重量部たいしてポリアクリル酸系樹脂(b−3)60〜40重量部である。上記範囲内のポリアクリル酸系樹脂(b−3)を含有する乳酸系樹脂組成物からなるシートを熱成形することにより得られる成形体は透明性および耐熱性が良好である。
【0043】
<乳酸系樹脂組成物>
本発明で用いる乳酸系樹脂組成物とは、前述した乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)とを含む組成物である。乳酸系樹脂組成物には必要に応じて各種改質剤(耐衝撃性改良剤、アンチブロッキング剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、結晶化促進剤、可塑剤、静電防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤など)がさらに添加されていても良い。これら改質剤は1種単独で添加してもよく、2種以上を添加してもよい。
【0044】
<<耐衝撃性改良剤>>
本発明では成形体の耐衝撃性を向上するために、公知公用の耐衝撃改良剤を添加することもできる。用いられる耐衝撃改良剤としては、本発明の乳酸系ポリマー組成物の特徴を損なわない限り何ら制限はない。例えば、生分解性を有する耐衝撃性改良剤や非生分解性の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0045】
生分解性の耐衝撃性改良剤としては、たとえば、プラメートPD−150(商品名;大日本インキ化学社製)やプラメートPD−350(商品名;大日本インキ化学社製)などが挙げられる。非生分解性の熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、タフマー(商品
名;三井化学社製)、シンジオタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレン系のSBBSラバー、イミノ変性したSBBSラバー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン系のSEBSラバー、イミノ変性したSEBSラバー等のオレフィン系エラストマーもしくはラバーや、メタブレン(商品名:三菱レイヨン社製)等のシリコン系ラバーなどが挙げられる。中でも少量で耐衝撃性を付与することが可能なメタブレンが特に好ましい。
【0046】
上記耐衝撃性改良剤は、一種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記耐衝撃改良剤の添加量は、用途に応じて適宜選択することができるが、乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.1重量部〜20重量部、好ましくは1重量部〜15重量部の範囲の量で用いられる。
【0047】
<<アンチブロッキング剤>>
本発明においてアンチブロッキング剤としては、公知公用のものを用いることができ、無機フィラーなどが好適に用いられる。このような無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、チタニア、マイカ、タルク等が挙げられ、特にシリカが好ましい。
【0048】
また、上記アンチブロッキング剤の平均粒径は5μm以下、好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下である。
上記アンチブロッキング剤の添加量は、乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部の範囲の量で用いられる。
【0049】
<<滑剤>>
本発明において滑剤としては、公知公用のものを用いることができる。例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレン等の脂肪族炭化水素系滑剤;ステアリン酸、ラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤;モンタンワックス等の長鎖エステルワックス類;および、これらを複合した複合滑剤などが挙げられる。
【0050】
滑剤の使用量は、乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.1重量部〜2重量部、好ましくは0.2重量部〜1.5重量部、より好ましくは0.3重量部〜1重量部である。添加量が過少であると、得られる成形体、例えばシートの滑り性が発現しない場合があり、逆に添加量が過大であると、シートの成形性が低下し、得られるシートの平板性が低下する場合がある。
【0051】
滑剤とアンチブロッキング剤とを併用する場合、その使用量は乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、滑剤とアンチブロッキング剤の総量が0.2〜5重量部である。滑剤とアンチブロッキング剤とが少なすぎると、耐候性の持続性効果が発現されず、多過ぎると成形が不安定になったり、フィルムの外観が劣ることがある。
【0052】
<<離型剤>>
本発明では成形加工時の成形性を向上するために、公知公用の離型剤を添加することもできる。用いられる離型剤としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の特徴を損なわない限り何等制限はない。例えば、シリコン誘導体類、テフロン(登録商標)誘導体類、脂肪族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸金属塩類、脂肪族アルコール類などが挙げられる。特に、離型剤効果の高いシリコン誘導体類や脂肪族カルボン酸類が好ましい。
【0053】
上記シリコン誘導体類としては、ジメチルシリコーンオイルが特に好ましく、その溶液粘度は、0.5〜50万センチストークス、好ましくは1〜1万センチストークス、より好ましくは5〜5000センチストークス、さらに好ましくは5〜1000センチストークスである。例えば、KF96(商品名;信越化学(株)製)、KF69(商品名;信越化学(株)製)、KMP110(商品名;信越化学(株)製)が挙げられる。
【0054】
上記脂肪族カルボン酸類は、炭素数8〜30の脂肪族カルボン酸、好ましくは炭素数10〜26の脂肪族カルボン酸、より好ましくは炭素数12〜22の脂肪族カルボン酸である。
【0055】
上記離型剤は、乳酸系樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)との合計100重量部に対して、0.01重量部〜1重量部、好ましくは0.05重量部〜0.8重量部、より好ましくは0.1重量部〜0.5重量部の範囲の量で用いられる。
【0056】
<乳酸系樹脂組成物の製造方法>
本発明の乳酸系樹脂組成物は、乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、必要に応じて耐衝撃改良剤、結晶核剤、結晶化促進剤、アンチブロッキング剤、滑剤、離型剤などの他の改質剤を混合することにより得られる。各成分の混合は、公知公用の方法や混練技術を適用できる。
例えば、
(1)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)に必要に応じて他の改質剤をリボンブレンダーなどで一括混合した後、2軸押出機で組成物を加熱溶融しながら押出しペレット化する方法;
(2)パウダー状もしくはペレット状の乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)を押出ペレット化する際に、必要に応じて他の改質剤を、サイドフィードや液体注入ポンプで押出し機のシリンダー内に添加混合する方法;
(3)予め必要に応じて他の添加剤を、高濃度に押出しペレット化したペレット(マスターバッチ)を製造した後、そのマスターバッチを、パウダー状もしくはペレット状の乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)にドライブレンド等により希釈して成形体を加工する方法;
(4)上記方法を組み合わせて混合する方法
などが挙げられる。
【0057】
なお、必要に応じて他の改質剤をマスターバッチとして添加する場合、各改質剤毎のマスターバッチ、あるいは2種以上の改質剤のマスターバッチとして添加してもよく、その方法に何等制限はない。また、マスターバッチとして添加する際、乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)との混合比率は、マスターバッチ/熱可塑性樹脂の重量比が1/100〜1/2、好ましくは1/50〜1/3、より好ましくは1/30〜1/5、特に好ましくは1/30〜1/10である。
以下、本発明に係る一次成形体、及びそれより得られる成形体について詳細に説明する。
【0058】
<シートおよびその製造方法>
本発明のシートとは、上述した乳酸系樹脂組成物を公知公用の押出し機や押出し技術で製造することができる。また、必要に応じて延伸加工された延伸シートとして製造することもできる。
【0059】
本発明のシートは、Tダイが装着された押出機を用いる溶融押出法によりシート状に成形することが好ましい。
本発明のシートは上述の乳酸系樹脂組成物を用いるため耐熱性に優れる。また本発明の
シートは熱可塑性樹脂(B)としてポリスチレン系樹脂(b-1)やポリカーボネート樹
脂(b-2)を用いた場合には耐衝撃性に優れ、熱可塑性樹脂(B)としてポリアクリル
酸系樹脂(b-3)を用いた場合には透明性に優れる。
【0060】
[成形体]
本発明の成形体は、上記乳酸系樹脂組成物からなるシートを熱成形することにより製造される。
【0061】
<成形体およびその製造方法>
本発明に係る成形体は上記シートを熱成形することにより製造される。例えば乳酸系樹脂組成物からなるシートを加熱軟化させた後、真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の熱成形によって金型に接触させ金型形状を転写し成形することが可能である。
【0062】
本発明の成形体は、上述の乳酸系樹脂組成物からなるシートを熱成形することにより得られ、耐熱性に優れている。
シートを加熱する方法は、後述する様な各種熱成形方法によって異なり、例えば、ヒーターの輻射熱で加熱する方法や、加温した金属板等に接触させて加熱する方法などが挙げられる。また、加熱時間は、上記加熱方法によっても異なり、シートを上述した好ましい温度範囲に加熱する時間であればよく、適宜選択することができる。
【0063】
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン(PS)等の熱成形に用いられる真空成形や真空圧空成形の場合は、加熱方法はセラミックヒーターなどの輻射熱によって加熱する方法が一般的に用いられており、ヒーター温度は、乳酸系樹脂組成物のガラス転移温度から700℃ 、好ましくは150℃〜500℃、より好ましくは200℃〜500℃、さらに好ましくは250℃〜400℃、特に好ましくは300℃〜400℃であり、加熱時間は1秒〜60秒、好ましくは1秒〜30秒、より好ましくは1秒〜20秒、さらに好ましくは1秒〜10秒、特に好ましくは1秒〜7秒である。
【0064】
また、延伸したポリスチレン(OPS)等の熱成形に用いられる熱板圧空成形の場合、加熱方法は加温した金属板等に接触させる方法が一般的に用いられており、金属板等の温度は60℃〜200℃ 、好ましくは70℃〜175℃、より好ましくは80℃〜175
℃、さらに好ましくは80℃〜150℃であり、加熱時間は1〜20秒、好ましくは1秒〜15秒、より好ましくは1秒〜10秒、さらに好ましくは1秒〜5秒、特に好ましくは1秒〜3秒である
本発明の熱成形体を得るための熱成形は、真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形、プレス成形等の熱成形方法によって行うが、成形時に特定の温度に加熱した金型を用いる必要が無く、加熱を行っていない金型を用いることができる。従来の乳酸系樹脂シートの熱成形では、成形時に特定の温度に加熱した金型に接触させながら行うことにより耐熱性を有する成形体を得ていたが、本発明においては、上述の乳酸系樹脂組成物からなるシートを用いることにより、加熱を行っていない金型を用いた場合にも耐熱性を有する成形体を製造することができる。
【0065】
つまり、従来は金型を90〜100℃に加熱して熱成形を行っていたが、本発明の成形体を製造する際に金型は特に加熱する必要が無く、通常金型温度は0〜55℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは10〜40℃である。上記範囲は、金型を温度コントロールすることなく、熱成形を行った際の温度である。このため従来よりも装置を簡素化できると共に低コスト化することができ生産性に優れる。
【0066】
ここで、真空成形機、真空圧空成形、熱板圧空成形等の成形機を用いた成形方法の場合、予めシートを予備加熱した後、金型に接触させ、真空、圧空または真空圧空により賦形
される。
【0067】
例えば、乳酸系ポリマーがポリ乳酸の場合には、シートを60℃〜130℃、好ましくは70℃〜120℃、より好ましくは80℃〜110℃、特に好ましくは85℃〜105℃に予め加熱した後、金型に接触させながら成形する。
【0068】
シート温度が前記範囲であることにより、形状が良く、かつ透明性の高い熱成形体が得られる。また、金型温度が前記範囲であることにより、乳酸系ポリマー組成物の結晶化速度が高くなる。そのため、金型に接触させる時間を短縮することができるため、成形サイクルが短くなり、生産性が高くなる。
【0069】
本発明の成形体は、例えばトレー状の成形体を恒温器中で一定の温度で2時間保持した場合、目視での判断で変形する温度が高い、すなわち耐熱収縮性に優れているという特徴を有する。その熱変形開始温度は、通常は55℃以上、好ましくは65℃以上である。
【0070】
熱可塑性樹脂(B)としてポリアクリル酸系樹脂(b−3)を用いた乳酸系樹脂組成物からなるシートより製造した成形体は、透明性に優れる。具体的には、厚みが100〜700μmの部分の成形品のヘイズ(JIS K6714に準じて、東京電色製Haze
Meterを用いて測定)は、通常は0.2〜15%、好ましくは0.2〜10%、より好ましくは0.2〜7%、さらに好ましくは0.2〜5%である。
【0071】
本発明の成形体は、高い耐熱性を有するため、例えば、プリン、ジャムおよびカレー容器等のホットフィル容器、食品トレー、ブリスター容器、ならびに、クリアケース等の一般包装用容器など、耐熱性が要求される用途にも広く用いることができる。
【0072】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例における各種物性は下記の方法で測定・評価した。
【0073】
<外観>
得られた成形体の色を目視によって確認した。
<厚み>
成形したトレーの側面および底部の厚みを以下の方法で測定し、厚みのを求めた。
側部:縦(トレーの深さ方向)2cm×横(トレーの周方向)2cmのカットサンプルを採取し、カットサンプル中心部と端部の5箇所の厚みをダイヤルゲージを用いて測定し、その平均値を側部の厚みとした。
底部:底部を切り出し、カットサンプルの厚みをダイヤルゲージを用いて測定した。測定点はカットサンプル中心部と端部の計5箇所の厚みを測定し、その平均値を底部の厚みとした。
【0074】
<透明性(ヘイズ)>
成形体の底面を、JIS K6714に従い、東京電色製 Haze Meter を使
用して測定した。
【0075】
<耐熱性>
得られた熱成形体(トレー)を各温度(55℃、65℃)に設定した乾燥機中に2時間保持した後、変形の有無を目視にて評価した。評価基準は下記の通りである。
変形なし:○、変形あり:×。
【0076】
<耐衝撃性>
120mm×130mm×0.25mmのシートを用いて、測定温度23℃、先端径1/2インチ、受け1インチ、速度0.06m/secの条件で高速面衝撃試験を行った。
【0077】
本実施例で用いた乳酸系樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、耐衝撃改良剤、および金型の種類を下記に示す
<乳酸系樹脂(A)>
乳酸系樹脂(A)として下記の(A−1)〜(A−3)を用いた。
【0078】
乳酸系樹脂(A−1):ポリ乳酸(LACEA(登録商標) H−440、三井化学製、重量平均分子量(Mw);22万、分散度(Mw/Mn) ;3.0、L体/D体=9
6.7/4.3、融点156℃)
乳酸系樹脂(A−2):ポリ乳酸(LACEA(登録商標) H−100、三井化学製、重量平均分子量(Mw);16万、分散度(Mw/Mn) ;2.8、L体/D体=9
8.6/1.4、融点165℃)
乳酸系樹脂(A−3):ポリ乳酸(LACEA(登録商標) H−400、三井化学製、重量平均分子量(Mw);21万、分散度(Mw/Mn) ;3.2、L体/D体=9
8.2/1.8、融点165℃)
<熱可塑性樹脂(B)>
熱可塑性樹脂(B)としてポリスチレン系樹脂(b-1)、ポリカーボネート樹脂(b-2)およびポリアクリル酸系樹脂(b-3)を用いた。
【0079】
<<ポリスチレン系樹脂(b-1)>>
ポリスチレン系樹脂(b-1)として下記の(b−1−1)、(b−1−2)および(
b−1−3)を用いた。
ポリスチレン系樹脂(b−1−1):SX−100(商品名:PSジャパン製 メルトフロー(ISO1133に準拠:温度200℃ 荷重 5kgf)2.8g/10min)
ポリスチレン系樹脂(b−1−2):HF77(商品名:PSジャパン製 200℃のメルトフロー 7.5g/10min)
ポリスチレン系樹脂(b−1−3):MX121(商品名:PSジャパン製 メルトフロー(ISO1133に準拠:温度200℃ 荷重 5kgf)1.5g/10min)
<<ポリカーボネート樹脂(b-2)>>
ポリカーボネート樹脂(b-2)として下記の(b−2−1)を用いた。
ポリカーボネート樹脂(b−2−1):パンライトL1225L(商品名:帝人化成製)
<<ポリアクリル酸系樹脂(b-3)>>
ポリアクリル酸系樹脂(b-3)として下記の(b−3−1)および(b−3−2)を
用いた。
ポリアクリル酸系樹脂(b−3−1):PMMA−VH(商品名:三菱レイヨン製 メルトフロー(JIS K7210に準拠:温度230℃ 荷重 37.3N)2.0g/1
0min)
ポリアクリル酸系樹脂(b−3−2):PMMA−MF(商品名:三菱レイヨン製 230℃メルトフロー(JIS K7210に準拠:温度230℃ 荷重 37.3N)14g/10min)
<耐衝撃改良剤>
メタブレン:SRK200(商品名:三菱レーヨン製)
<金型>
上部の径が縦・横100mm、底部の径が縦・横75mm、高さが30mm、絞り比が約0.27のトレー状の金型を用いた。
【実施例1】
【0080】
上記乳酸系樹脂(A−1)50重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−1)50重量部と、上記メタブレン5重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を
30℃に調整したキャストロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0081】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例2】
【0082】
上記乳酸系樹脂(A−1)70重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−2)30重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロ
ール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0083】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例3】
【0084】
上記乳酸系樹脂(A−1)30重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−2)70重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロ
ール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0085】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例4】
【0086】
上記乳酸系樹脂(A−1)50重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−3)50重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロ
ール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0087】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例5】
【0088】
上記乳酸系樹脂(A−1)50重量部と、上記ポリカーボネート樹脂(b−2−1)50重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイ
ス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャスト
ロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0089】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例6】
【0090】
上記乳酸系樹脂(A−2)55重量部と、上記ポリアクリル酸系樹脂(b−3−1)45重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャスト
ロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0091】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【実施例7】
【0092】
上記乳酸系樹脂(A−2)50重量部と、上記ポリアクリル酸系樹脂(b−3−2)50重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャスト
ロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0093】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
上記乳酸系樹脂(A−1)85重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−2)15重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロ
ール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0095】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【0096】
[比較例2]
上記乳酸系樹脂(A−1)80重量部と、上記ポリスチレン系樹脂(b−1−3)20重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロ
ール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性
を評価した。
【0097】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【0098】
[比較例3]
上記乳酸系樹脂(A−1)100重量部をシリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフィルム製膜機へ供給した。温度
を30℃に調整したキャストロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0099】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【0100】
[比較例4]
上記乳酸系樹脂(A−1)93重量部と、上記メタブレン5重量部とを、シリンダー温度が220℃に設定された、スクリュー径が40mm、ダイス幅350mmのT-ダイフ
ィルム製膜機へ供給した。温度を30℃に調整したキャストロール上に溶融樹脂を押出し、厚み250μmのシートを得た。得られたシートの耐衝撃性を評価した。
【0101】
得られたシートを、上記金型を付備した真空圧空成形機を用い、ヒーター設定温度350℃で10sec加熱したシートを40℃の金型内で10sec間保持することにより熱成形体を得た。得られた成形体の外観、厚み、透明性、耐熱性を評価した。
結果を表1に示す。
【0102】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸系樹脂(A)5〜75重量部、および乳酸系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)95〜25重量部(ただし、(A)と(B)との合計を100重量部とする)を含んでなる乳酸系樹脂組成物からなるシート。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂(B)が、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアクリル酸系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂(B)がポリアクリル酸系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のシート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のシートを熱成形することにより製造した成形体。
【請求項5】
金型を加熱することなく熱成形することにより製造した請求項4記載の成形体。
【請求項6】
請求項3に記載のシートを、金型を加熱することなく熱成形することにより製造した、厚みが100〜700μmの部分のヘイズ(JIS K6714に準拠)が0.2〜15%の成形体。
【請求項7】
耐熱温度が65℃以上である請求項4〜6のいずれかに記載の成形体。

【公開番号】特開2008−31321(P2008−31321A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207179(P2006−207179)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】