説明

乳頭保護具

【課題】乳頭部を収容する内部空間から母乳が漏れて着衣を汚すことを防止し、清潔に使用することができる乳頭保護具を提供すること。
【解決手段】硬質の外側部材30と該外側部材より柔軟な変形し易い材料でなる内側部材40とを備え、内側に内部空間S2を形成する乳頭保護具であって、前記内側部材が、装着状態において、弾性的に変形して前記乳頭部の周囲に沿って隙間なく面状に密接できる変形当接部45を有しているとともに、前記内部空間と外部とを連絡する母乳排出手段41を備えており、さらに、前記外側部材には、該母乳排出手段と連通する貫通孔31a、31b、31cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の乳頭部を覆い保護するための乳頭保護具の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、授乳期にある母親等では、授乳時に乳児に噛まれるなどして、乳頭部に傷がついてしまったり、荒れてしまうことがある。
乳頭部にそのようなトラブルがあると、授乳時に、痛みによるストレスで母乳の出が悪くなり、そのため、乳児がより多くの母乳を吸い出そうとして、さらに強く吸うということを繰り返したり、授乳時間が長時間となってしまうことにより、乳頭部の傷をさらに悪化させる。
そこで、授乳の時以外は、当該乳頭部を覆い保護するためのものとして、乳頭保護具が用いられている。
【0003】
このような用途の乳頭保護具としては、例えば、図6に示す構成のものがある(特許文献1参照)。
図において、乳頭保護具1は、硬いカップのシェル2と、このシェル2の底部を塞ぐようにされた弾性部材3とを備えている。弾性部材3には、中央に開口6が形成されている。シェル2には多数の空気孔が形成されている(図示せず)。
また、弾性部材3の開口6の周囲には、花弁状に突起4が形成されている。
【0004】
このような乳頭保護具1は、図7に示すように、使用者の乳房7の前面に弾性部材3を当てて、その開口6から乳頭部5を挿入し、該乳頭部5を弾性部材3とシェル2により仕切られる内部空間S1に収容することで、傷ついた乳頭部5に接触するものがないようにし、該乳頭部5に外部から不要な刺激が加えられないようにするものである。
【0005】
【特許文献1】WO 01/47452
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような乳頭保護具1には次のような問題がある。
この乳頭保護具1は、傷ついた乳頭部5を比較的硬いシェル2の内側に収容して、これを保護するものである。
そして、乳頭保護具1を装着している時に、使用者の乳房7の前面には、弾性部材3の表面に形成された突起4が当たり、マッサージ効果を発揮するようにされている。
ところが、使用者の乳房7の前面には、弾性部材3の表面が密着せずに突起4が当接するようにしたため、内部空間S1に使用者の乳頭部5から分泌された母乳が溜まっていると、弾性部材3と突起4とがつくる隙間から母乳が漏れて、着衣を汚すなどの問題がある。
【0007】
そこで、このような突起4を省略することも考えられる。その場合には隙間が生じることなく、母乳の漏れが生じないが、弾性部材3と乳房7が密着することにより、ムレ等の不快な装着感が生じやすい。
さらに、母乳が外に排出されないと、内部空間S1に溜まる。
ところが、内部空間S1に母乳が溜まるとその重量により図示しない下着の下で、乳頭保護具1の装着状態がずれてしまう。
また、内部空間S1に溜まった母乳のせいで、傷ついた乳頭部5が常に湿った状態となり、傷が膿んだりして、さらに乳頭部のトラブルを悪化させることもある。
【0008】
本発明は、以上のような欠点を解消するためになされたものであり、乳頭部を収容する内部空間から母乳が漏れて着衣を汚すことを防止し、清潔かつ快適に使用することができる乳頭保護具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、第1の発明にあっては、乳頭保護具の外面を形成する硬質のシェル状でなる外側部材と、該外側部材より柔軟な変形し易い材料でなる内側部材とを備え、内側に内部空間を形成する乳頭保護具であって、前記内側部材が、装着状態において、弾性的に変形して装着者の乳頭部の周囲に沿って隙間なく面状に密接できる変形当接部を有しているとともに、前記内部空間と外部とを連絡する開口を含む母乳排出手段を備えており、さらに、前記外側部材には、前記開口と連通する貫通孔が設けられている乳頭保護具により、達成される。
第1の発明の構成によれば、硬い外側部材が前記内部空間に収容される使用者の乳頭部を覆って確実に保護する。
この際に、使用者の乳房前面に当接する変形当接部は、当接にあたり、変形して、乳頭部の周囲に沿って隙間なく密接することにより、前記内部空間からの乳汁の漏れを防止することができ、それにより着衣の汚れなどを生じることがない。
しかも、該変形当接部は(乳房前面に対して)面状に密接できるので、線状に接触する場合等に比して、接触面積が大きく、当接の刺激を低減し、密閉機能を確実にすることができる。
そして、内部空間内の母乳は、内側部材の開口を含む母乳排出手段と、該開口と連通して外側部材に設けられた貫通孔を介して外部に導かれるので、適宜母乳パッド等を使用することにより吸収させることができる。
ここで、母乳は、乳頭保護具を装着している使用者の乳頭部から分泌され、前記内部空間に保持されるが、内側部材には前記開口を含む母乳排出手段が設けられているので、該母乳は内部空間に滞留することなく、母乳排出手段を介して外側部材および該外側部材の貫通孔から外部に排出される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の構成において、 前記内側部材の前記開口の外側の箇所及び/または前記外側部材の前記貫通孔の外側の箇所には、前記開口または貫通孔の面積よりも大きな面積の開口が形成されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、前記内側部材の前記開口の外側の箇所及び/または前記外側部材の前記貫通孔の外側の箇所に、前記開口よりも大きな面積の開口を設けているので、内側部材と外側部材の組み合わせでなる乳頭保護具において、2以上の部材を用いても、大きな開口を形成した分、重量が低減されるので、全体が軽くなる。これにより、乳頭保護具を装着した状態において、位置ずれを生じにくく、装着状態を良好に保持できる。
また、変形当接部が面状に密接することにより生じるムレは前記開口により通気をされることにより、適切に防止される。
【0011】
第3の発明は、第1または第2のいずれか発明の構成において、前記外側部材が、前記内部空間に収容された前記乳頭部の周囲を包囲する硬い支持部を備えるとともに、周縁部が使用者の乳房の外面の曲線に沿った形状となる曲面とされていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記外側部材が、前記乳頭部の周囲を包囲する硬い支持部を備えているので、乳頭部は、硬い支持部により周囲が囲まれているから、該乳頭部に外側部材の一部が押しつけられることがなく、非接触に保護されるので、使用者の乳頭部に痛みや不快な刺激を与えることがない。
しかも、外側部材の周縁部は、使用者の乳房の外面の曲線に沿った形状となる曲面とされているので、装着者の乳房前面へのフィット性が向上する。
【0012】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明の構成において、前記内側部材の前記母乳排出手段が隙間のない壁部を有しており、さらに、該壁部に続いて、内側が内方へ湾曲する湾曲部と、該湾曲部に続いて外方に拡がる前記変形当接部とを有していることを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、内側部材の前記装着部が、壁部およびこれと一体の内方へ湾曲する湾曲部を有しているので、湾曲部の湾曲変形機能によって、変形当接部が使用者の乳房前面に適切に変形して当接することができる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記内側部材の前記隙間のない壁部が、前記外側部材に向かって徐々に拡径するテーパ形状とされていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、前記隙間のない壁部が、前記外側部材に向かって徐々に拡径するテーパ形状とされているので、該壁部により画成される前記内部空間に溜まった母乳が部分的に滞留することを効果的に防止し、外部への排出を容易にする。
【0014】
第6の発明は、第4または第5のいずれかの発明の構成において、前記内側部材が、前記変形当接部の外側で外方に湾曲して、前記外側部材の外縁を覆う当接保護部とを有していることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、変形当接部の外側で外方に湾曲して、前記外側部材の外縁を覆う当接保護部を有しているから、外縁部が乳房前面に食い込むことがなく、適切な保護を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、乳頭部を収容する内部空間から母乳が漏れて着衣を汚すことを防止し、清潔かつ快適に使用することができる乳頭保護具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態に係る乳頭保護具を示す概略分解斜視図であり、図2は乳頭保護具の概略分解平面図(上から見た図)、図3は乳頭保護具の分解状態で示した概略側断面図、図4は、使用者の乳房前面に当接させた状態の概略縦断面図である。
これらの図を参照しながら、乳頭保護具の実施形態について詳しく説明する。
乳頭保護具20は、全体としてほぼシェル状、もしくは、ほぼドーム形態あるいは半球状の硬質プラスチックによる成形品であるガード部としての外側部材30と、その内側に(図1では「後側に」)装着される胸当て部としての柔軟な内側部材40とを組み合わせて形成されている。
これら外側部材30と内側部材40の外形は、図1からも理解されるように、好ましくは、例えば、正面から見るとほぼ円形に近いハート形状とされている。このため外側部材30と内側部材40は、上下の方向性がある形態、つまり、装着における上下方向が予め決められている形態とされている。
【0018】
外側部材30は、硬質プラスチックの成形品であり、たとえば、PP(ポリプロピレン)により形成されている。外側部材30の材料は、勿論ポリプロピレンに限らない。成形可能で、必要な硬度をもった材料であればなんでもよい。
外側部材30は、ほぼドーム状もしくは半球状の形態であり、内部が凹状とされて、空間が形成されるようになっている(図4の内部空間S2参照)。
外側部材30には、その中央付近に内外を貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔は好ましくは複数個形成されおり、図示の場合、符号31a,31b,31cで示すように形成されている。複数個の貫通孔のうち、特に、一部の貫通孔31aは、図3や図4で示されているように、縦方向(高さ方向)の仮想の中心線C1よりも下に配置されている。
【0019】
外側部材30の上記貫通孔31a,31b,31cが形成されている中央部の領域の外側の領域には、左右対称の形状でなる大きなスリットもしくは開口32,32がそれぞれ形成されている。開口32,32は、少なくとも2つ合わせると、貫通孔31a,31b,31cの合計開口面積よりも大きな開口面積を備えており、外側部材30の中央部をさけて、上部の円弧が大きく、下部で先細りになるような、勾玉のような形状である。
このように外側部材30の材料を削除して大きな開口32,32を形成することにより、その分重量を削減することができる。これにより、乳頭保護具20を装着した状態においては、全体の慣性を小さくして装着位置のずれが生じることを有効に防止することができる。また、変形当接部が密着しても、開口32,32により通気が確保できるので、密着することにより生じるムレを防止することができる。
【0020】
さらに、図3に示されているように、少なくとも上記貫通孔31a,31b,31cよりも僅かに外側の位置において、外側部材30の内側(裏側)には、内方に向かって(図3では右方に向かって)、延出された筒状部分である支持部33が形成されている。支持部33は、外側部材30と一体で形成された硬質のものであり、図3に示す外側部材30の縦方向の仮想の中心線C1と同じ方向に起立する壁状のリブである。
この実施形態では、支持部33であるリブは、上記貫通孔31a,31b,31cが形成されている中央部の領域の外側の領域を囲むように隙間の無い壁状に形成されている。これにより、支持部33の内側に空間を形成することができ、この空間は硬い支持部33により画成されるため変形しない。
【0021】
外側部材30の上端位置には、例えば凹所でなる位置決め部34が形成されている。この凹所34は、後述するように、内側部材40を組み合わせる際に、正しい位置に装着するように案内するものである。
また、外側部材30の該周縁部35は、図2、図4に示すように使用者の乳房Tの前面に乳頭保護具20を配置することを考慮して、該乳房Tの外面の曲線R1およびR2に沿った形状となる平面または曲面とされている。
つまり、周縁部35は、斜めに該乳房Tの外面の曲線R1およびR2に沿って、細幅の平面または曲面とされている。
ここで、図2のR1は、乳房Tが前方へ突出する形状であることに起因して、上から見た場合の曲面であり、図3のR2は横から見た場合の曲面を表している。
外側部材の周縁部35が所定の幅の面積を備えることで、内側部材を介して使用者の乳房T前面に当接した際に、後述する変形当接部の機能と相俟って、該変形当接部を面接触させることができる。
【0022】
次に、内側部材40について説明する。
乳頭保護具20においては、硬質の外側部材30が変形することなく、内部空間に収容した乳頭部に外部のなんらかの力が作用したり、外部にあるものが直接触れるのを防ぐ他、変形により、乳頭保護具20の内面自体が傷ついた乳頭部に触れることを防止する機能を担うものである。
これに対して、内側部材40は、乳頭保護具20を装着した時に、硬質の外側部材30が直接使用者の肌に当たり、不快な刺激を与えることがないように緩衝の役割を果たすものである。
このような機能を発揮するために、内側部材40は、全体が軟質の材料により形成されている。この軟質材料としては、例えばシリコーンを用いることができる。内側部材40を形成するための材料の硬度は、たとえば、JIS(K6253)形式のデュロメータにより50である。材料の硬度は材料厚みなどにより変化するが、本実施形態について以下で説明する機能・作用を発揮させ、保形性や、成形性等の点を考慮すると、硬度は35ないし65程度が好ましい。
なお、内側部材40の材料としては、外側部材30よりも柔らかく、ある程度のゴム弾性を備えて変形しやすく、成形性に優れるものならシリコーン以外のものを使用することができる。
【0023】
内側部材40の外形は外側部材30に近似し、外形どうしは略重なる形態である。
すなわち、内側部材40は、全体として円形に近いハート形状であり、中央部に筒状開口41を備えている。筒状開口41は貫通孔である。この筒状開口41の内側が内部空間S2になる。
筒状開口41が形成されている中央部の領域の外側の領域には、左右対称の形状でなる大きなスリットもしくは開口42,42がそれぞれ形成されている。開口42,42は、少なくとも2つ合わせると、筒状開口41の開口面積よりも大きな開口面積を備えており、外側部材30の中央部をさけて、上部の円弧が大きく、下部で先細りになるような、勾玉のような形状とされている。
このように内側部材40においても、その材料を削除して大きな開口42,42を形成することにより、その分重量を削減することができる。これにより、乳頭保護具20を装着した状態においては、全体の慣性を小さくして装着位置のずれが生じることを有効に防止することができる。また、変形当接部が密着しても、開口32,32により通気が確保できるので、密着することにより生じるムレを防止することができる。
【0024】
図3および図4において、内側部材40には、母乳排出手段として、例えば筒状に形成されており、中心部に開口を備えた筒状開口41が設けられている。すなわち、筒状開口41は、その開口周縁が、該開口周縁から延出する低い筒状部分とされており、この筒状部分は、使用者の乳頭部Nの周囲を包囲する包囲部である。さらに、この実施形態では、包囲部は、外側部材30の支持部33を内側部材40に装着する際の装着部43とされている。
ここで、母乳排出手段は、好ましくは、図示の筒状開口41の形態とするが、これに限らず、例えば完全な筒ではなくてもよい。例えば、筒を半割りした溝状もしくは樋状の母乳流路として形成することができる。
この場合、包囲部としての筒状開口41は、乳頭部Nをその周囲に沿って完全に包囲するわけではないが、少なくとも下部の半周程度を包囲したり、あるいは、断続的に周囲を囲む形態とすることができる。
装着部43は、外側部材30の壁状のリブである支持部33の内側に嵌入されることにより取り付けられ、該装着部43の外側には、支持部33に嵌入されたときに、該支持部33の先端に当接する横向きの段部である嵌入段部43aが設けられている。
すなわち、装着部43は、装着状態において、支持部33の先端を覆うとともに、装着部43の内側である筒状開口41は、鎖線t1で示すように前方に向かって開くようにされたテーパ状とされている。
【0025】
内側部材40の装着部43には、湾曲部44が連設されて、該湾曲部44には、さらに外周方向へ向かって拡がる変形当接部45が連設されている。
湾曲部44は、装着部43の基端部である内側部分が、内方へ湾曲する形状であり、該湾曲部44の終端部は図2、図3の曲線R1およびR2とほぼ同様の曲面となるような曲面、すなわち、図2の下方および、図3の左方に僅かに凸となる曲面とされて、上記変形当接部45となっている。
さらに、変形当接部45の外縁部は、外方に湾曲して、前記外側部材30の外縁を覆う当接保護部46とされている。
【0026】
また、内側部材40の外縁部は図3から理解されるように、斜め前方に開口する溝を形成した取付け部47となっている。取付け部47は、その溝内に外側部材30の外縁部を嵌入したり、離脱させたりすることで、外側部材30に対して内側部材40を容易に着脱させることができるようになっている。
しかも、内側部材40の上端位置では、例えば前方へ突出する係止片でなる係止部47aが形成されている。この係止部47aを外側部材30の位置決め部34に挿入することで、外側部材30と内側部材40を正しく位置合わせして組み合わせ状態とすることができる。
【0027】
本実施形態は以上のように構成されており、以下のように使用することができる。
図5は、乳頭保護具20を使用者の乳房Tの前面に配置して、その外側に母乳パッドBを当てて、図示しないブラジャーなどの下着で保持する様子を示している。
本実施形態の乳頭保護具20では、外側部材30が硬質の材料で形成されているから、内部空間S2を覆って該内部空間に収容される(装着者の)乳頭部Nを外力から確実に保護することができる。
【0028】
ここで、内部空間S2に収容されている乳頭部Nが傷ついている場合に、乳頭保護具20の外面が弾性変形するなどして、内部空間S2が潰れて減少すると、乳頭保護具20の内側(内面)が、該乳頭部Nに触れてしまい、不要な刺激を与え、痛みなどを与えてしまう。
しかしながら、この実施形態では、外側部材30が乳頭部Nの周囲を包囲する壁状の硬い支持部33を備えているので、内部空間S2が変形することなく、乳頭部Nは、硬い支持部33により周囲が囲まれて保護される。このため、乳頭部Nに外側部材30の一部が押しつけられることがなく、常に非接触に保護されるので、使用者の乳頭部Nに痛みや不快な刺激を与えることがない。
なお、外側部材30の硬い支持部33の代りに、内側部材40から筒状部分が延出されて内部空間S2を形成するようにしてもよく、これによっても、乳頭部Nを保護することができる。
【0029】
また、硬い支持部33の先端部には、柔軟な内側部材40の装着部43が覆うようにされているので、この硬い支持部33が使用者の乳房Tに当たり、痛み等の不快な刺激を与えることがない。
そして、内側部材40はさらに、乳頭部Nの周囲に沿って隙間なく面状に密接できる変形当接部45を有している。つまり、内側部材40において、使用者の乳房Tの前面に当接する変形当接部45は、当接にあたり、変形して、乳頭部Nの周囲に沿って隙間なく密接することにより、内部空間S2からの乳汁が外に漏れるのを防止することができる。しかも該変形当接部45は(乳房Tの前面に対して)面状に密接できるので、線状に接触する場合等に比して、接触面積が大きく、当接の刺激を低減し、密閉機能を確実にすることができる。
なお、乳頭部Nから分泌された乳汁は、内部空間S2から筒状開口41を通り、これと連通した外側部材30の貫通孔31a,31b,31cから外に導かれて、母乳パッドBに吸収されることになる。
【0030】
また、内側部材40の装着部43が、隙間のない壁部およびこれと一体の内方へ湾曲する湾曲部44を有している。このため、該湾曲部44の湾曲変形機能によって、変形当接部45が使用者の乳房Tの前面に適切に変形して当接することができる。
しかも、該変形当接部45の外側で外方に湾曲して、前記外側部材30の外縁を覆う当接保護部46を有しているから、外縁部が乳房Tの前面に食い込むことがなく、不快な刺激を与えることなく、適切な保護を行うことができる。
【0031】
また、装着部43である隙間のない壁部が、図3の符号t1に示すように、外側部材30に向かって徐々に拡径するテーパ形状とされている。このため、該壁部により画成される内部空間S2に溜まった母乳が部分的に滞留することを効果的に防止し、溜まった母乳の外部への排出を容易にする。
これにより、母乳は内部空間S2から乳房T側に漏れて着衣を汚す心配はなく、母乳パッドBに適切に吸収される。
また、このことにより、傷ついた乳頭部Nが滞留した母乳に浸されることなく、乾燥されるので、傷が治癒し易く、雑菌の繁殖も抑制される。
さらに、外側部材30の複数個の貫通孔のうち、特に、一部の貫通孔31aは、図3や図4で示されているように、縦方向(高さ方向)の仮想の中心線C1よりも下に配置されている。このため、母乳が内部空間S2の下部に滞留することなく、全ての母乳を外部に排出することが容易となる。
【0032】
さらに、内側部材40には、筒状開口41の左右の外側に大きなスリットもしくは開口42,42を形成している。また、外側部材30には、貫通孔31a,31b,31cの左右の外側の箇所に、これら貫通孔の合計開口面積よりも大きな面積の開口32,32を設けているので、外側部材30と内側部材40の組み合わせでなる乳頭保護具20において、2以上の部材の用いても、これら大きな開口を形成した分、重量が低減されるので、全体が軽くなる。これにより、乳頭保護具20を装着した状態において、位置ずれを生じにくく、装着状態を良好に保持できる。
【0033】
図6および図7は本発明の第2の実施形態を示しており、図6はその分解側断面図、図7はその装着状態(使用状態)を示す図である。
これらの図において、第1の実施形態と共通する構成には同一の符号を付して重複する説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、外側部材30−1の筒状部分である支持部が形成されておらず、内側部材40−1にのみ筒状部分43−1が形成されている。この筒状部分43−1は、使用者の乳頭部の周囲を包囲する包囲部であり、肉厚の壁状であって、湾曲部44とともに十分な高さ(長さ)L1を備えている。
また、内側部材40−1には、母乳排出手段として、例えば筒状に形成されており、中心部に開口を備えた筒状開口41が設けられている点は、第1に実施形態と同じである。
つまり、好ましくは、図7に示されているように、使用者の乳頭部の平均的な高さ(長)L2と少なくとも同等かそれよりも大きくなるようにされている。筒状部分43−1は、好ましくは、外側部材30−1の内面と当接する構成である。
好ましくはこのL1の寸法は5mmないし20mm程度である。
【0034】
また、好ましくは、外側部材30−1には、図6に示す受容部としての溝部36が形成されている。つまり、外側部材30−1の内側において、内側部材40−1と、図7に示すように組み合わせた際に、該内側部材40−1から延びる包囲部としての筒状部分43−1の先端部43bが当接する位置に、これを受容するための部分が形成され、受容部の形態は、例えば、環状に形成された円環溝である溝部36とされている。
【0035】
本実施形態によれば、内側部材40−1から延びる筒状部分43−1が使用者の乳頭部Nを囲んで保護するので、該乳頭部Nに外側部材30−1の一部が押しつけられることがなく、非接触状態を保持できる(図7参照)。
しかも、この筒状部分43−1が当接している外側部材30−1により該筒状部分43−1が支持されるので、該筒状部分43−1により形成される内部空間S2の容積が常に変化せず、使用者の乳頭部を適切に保護できる。しかも変形当接部45が使用者の乳房Tの前面に適切に押し付けられるから、弾性的な接触を確実に実現できる。
さらに、外側部材30−1が受容部としての例えば溝部36を備えていることにより、筒状部分43−1は外側部材30−1の内面の所定位置に正しく位置決めされて保持されるから、内部空間S2の形成が一層確実である。
【0036】
ところで本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
本実施形態では、内部空間を形成するための筒状部分は、外側部材30の支持部33と内側部材40の装着部43として、それぞれに形成しているが、外側部材か内側部材のいずれか一方にだけ形成するようにしてもよい。
したがって、第2の実施形態においても説明したように、内部空間を形成するための大きな開口は、外側部材30と内側部材40のどちらかに形成されるようにしてもよい。外側部材だけに筒状部分を形成した場合には、その筒状部分の先端部は、内側部材で十分に覆うようにして、使用者の乳房前面への当接による刺激を極力低減することが好ましい。
乳頭保護具20の外形はハート型でなくても花びらの形態、幾何学形状など種々の形状を採用することができるが、好ましくは上下の方向性があるデザインとすると、母乳パッドBが同様に上下の方向性がある場合などに、誤りなく組み合わせて装着できて便利である。
内側部材と外側部材は上記説明のように別に成形された2部材ではなく、異なる種類の材料を組み合わせて用いた二色成形品や多色成形品としてもよい。
また、上述の実施形態の個別の構成は、必要により省略したり、説明しない他の構成と組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る乳頭保護具の概略分解斜視図。
【図2】図1の乳頭保護具の概略分解平面図。
【図3】図1の乳頭保護具の概略分解側断面図。
【図4】図1の乳頭保護具を使用者が装着した状態を示す概略縦断面図。
【図5】図1の乳頭保護具の使用状態を示す概略側断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る乳頭保護具の概略分解側断面図。
【図7】図6の乳頭保護具を使用者が装着した状態を示す概略縦断面図。
【図8】従来の乳頭保護具の一例を示す概略断面図。
【図9】図8の乳頭保護具の使用状態を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0038】
20・・・乳頭保護具、30・・・外側部材、31a、31b、31c・・・貫通孔、32・・・開口、33・・・筒状部分(支持部)、35・・・周縁部、40・・・内側部材、41・・・母乳排出手段(筒状開口)、42・・・開口、43・・・筒状部分(包囲部、装着部)、44・・・湾曲部、45・・・変形当接部、46・・・当接保護部、47・・・取付け部、N・・・乳頭部、T・・・乳房

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳頭保護具の外面を形成する硬質のシェル状でなる外側部材と、該外側部材より柔軟な変形し易い材料でなる内側部材とを備え、内側に内部空間を形成する乳頭保護具であって、
前記内側部材が、
装着状態において、弾性的に変形して装着者の乳頭部の周囲に沿って隙間なく面状に密接できる変形当接部を有しているとともに、前記内部空間と外部とを連絡する開口を含む母乳排出手段を備えており、
さらに、前記外側部材には、前記開口と連通する貫通孔が設けられている
ことを特徴とする乳頭保護具。
【請求項2】
前記内側部材の前記開口の外側の箇所及び/または前記外側部材の前記貫通孔の外側の箇所には、前記開口または貫通孔の面積よりも大きな面積の開口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乳頭保護具。
【請求項3】
前記外側部材が、前記内部空間に収容された前記乳頭部の周囲を包囲する硬い支持部を備えるとともに、周縁部が使用者の乳房の外面の曲線に沿った形状となる曲面とされていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の乳頭保護具。
【請求項4】
前記内側部材の前記母乳排出手段が隙間のない壁部を有しており、さらに、該壁部に続いて、内側が内方へ湾曲する湾曲部と、該湾曲部に続いて外方に拡がる前記変形当接部とを有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の乳頭保護具。
【請求項5】
前記内側部材の前記隙間のない壁部が、前記外側部材に向かって徐々に拡径するテーパ形状とされていることを特徴とする請求項4に記載の乳頭保護具。
【請求項6】
前記内側部材が、前記変形当接部の外側で外方に湾曲して、前記外側部材の外縁を覆う当接保護部とを有していることを特徴とする請求項4または5のいずれかに記載の乳頭保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−299224(P2009−299224A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155726(P2008−155726)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】