説明

乾式クリーニング装置および乾式クリーニング方法

【課題】固化状態でない付着物に対しても良好な乾式クリーニングを実現できる乾式クリーニング装置を実現する。
【解決手段】可撓性で薄片状の洗浄片cpの集合による洗浄媒体を空気流により飛翔させ、クリーニング対象物obに当てて行なう乾式クリーニング装置であって、クリーニング筐体10と、吸気手段と、温度制御手段104と、を有し、クリーニング筐体10は、内部に洗浄媒体を保持して飛翔させるための空間を有し、開口部101と、吸気口10D1と、内部において洗浄媒体を飛翔させるための旋回空気流TAを形成するための通気路103と、洗浄片cpの吸気口側への移動を阻止しつつ除去された除去物を通過させる多孔手段102とを有し、温度制御手段は、クリーニング筐体の通気路103を通って流入する空気流の温度を、クリーニング対象物obに付着した付着物の硬性を高める温度に制御する手段である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は乾式クリーニング装置および乾式クリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄液を用いずにクリーニング対象物に対するクリーニングを行なう「乾式クリーニング方式」として、粒状の洗浄体を気流により飛翔させ、クリーニング対象物に衝突させてクリーニングを行なうものが知られている(特許文献1、2)。また、可撓性で薄片状の洗浄体を用いて乾式クリーニングを行なう装置も知られている(特許文献3、4)。
【0003】
特許文献1、2に記載された乾式クリーニングでは、粒状の洗浄体の材料として「スポンジ体や化学粘土質」等の柔軟な材料が用いられるので、洗浄体が衝突することによりクリーニング対象物に与える衝撃力は比較的小さく、クリーニング対象物の表面を傷める恐れは少ないが、クリーニング対象物に強固に固着した付着物である「汚れ」を取り除くことは難しく、十分なクリーニングを実現するために長時間のクリーニングが必要になったりする。
【0004】
また、特許文献2に記載された乾式クリーニングは、クリーニング対象物に対して、網部材を介して洗浄体を当てるので、洗浄体が柔軟であることとも相俟って「強固に付着した汚れのクリーニング」には不向きであると考えられる。
【0005】
画像形成装置に関連しては、例えば、トナー粒子を用いる乾式の現像装置では、現像ユニットに「熱により融着したトナー」が固着することが多く、オーバホール時やリサイクルの工程で、このような固着トナーを除去するクリーニング作業が必要となる。
【0006】
また「フローはんだ槽工程」で用いられる、ディップパレットもしくはキャリアパレットと呼ばれるマスク治具にはフラックスが塗布されるが、塗布されたフラックスが堆積して固化すると「被はんだ物」に対するマスクとしての精度が低下し、適正な「フローはんだ」の妨げになる。このため、上記マスク治具に付着して固着したフラックスを除去するクリーニング作業が必要となる。
【0007】
固着したトナーやフラックスの「固着力」は相当に強く、特許文献1や2に記載された「柔軟な洗浄剤」を用いる乾式クリーニングでは除去することが困難である。
【0008】
特許文献3、4記載の乾式クリーニングは、固着したトナーやフラックスがクリーニング対象物に強く付着していても、良好なクリーニング効果を発揮できる。
このように、可撓性で薄片状の洗浄体をクリーニング対象物に衝突させるクリーニング方式は、除去されるべき付着物が固化している場合に極めて有効であるが、例えば、フラックスがまだ十分に固化していない状態では、付着しているフラックスは「粘着状態」にあり、薄片状の洗浄体を衝突させても、衝突のエネルギが「粘性」により吸収され、クリーニング効果を十分に発揮させることが難しい。
【0009】
フラックスのみならず、ペーストや、油脂のような粘着物、粘土のような柔軟性を持つ場合にもクリーニング効果を発揮させることが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、上述した事情にかんがみなされたものであって、固化状態でない付着物に対しても良好な乾式クリーニングを実現できる乾式クリーニング装置および方法の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の乾式クリーニング装置は「可撓性で薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を空気流により飛翔させ、クリーニング対象物に当ててクリーニング対象物のクリーニングを行なう乾式クリーニング装置」である。
請求項1記載の乾式クリーニング装置は、クリーニング筐体と、吸気手段と、温度制御手段と、を有する。
【0012】
「クリーニング筐体」は、内部に洗浄媒体を保持して飛翔させるための空間を有し、クリーニング対象物の表面に接して該表面により閉ざされる開口部と、内部を吸気するための吸気口と、外部からの空気を内部へ通しつつ整流し、内部において洗浄媒体を飛翔させるための旋回空気流を形成するための通気路と、吸気口を介した内部の吸気に際して、洗浄片の吸気口側への移動を阻止しつつクリーニング対象物から除去された除去物を通過させる多孔手段とを有する。
【0013】
「吸気手段」は、クリーニング筐体の吸気口を介して、クリーニング筐体の内部を吸気する手段である。
【0014】
「温度制御手段」は、クリーニング筐体の通気路を通って流入する空気流の温度を「クリーニング対象物に付着した付着物の硬性を高める温度」に制御する手段である。
【0015】
請求項1記載の乾式クリーニング装置における温度制御手段は「クリーニング筐体に着脱可能」であることができる(請求項2)。
【0016】
請求項1または2記載の乾式クリーニング装置における「クリーニング筐体」は、断熱性素材で形成されていることが好ましい(請求項3)。
【0017】
請求項1〜3の任意の1に記載の乾式クリーニング装置は、クリーニング筐体は「断熱性素材による取っ手」を有することが好ましい(請求項4)。即ち、クリーニング筐体に取っ手を設けることにより、クリーニング筐体を手に持った状態でクリーニング作業を行うことができるが、取っ手を断熱性素材で形成することにより、手とクリーニング筐体との間を熱的に遮断でき、クリーニング筐体側からの熱で手が熱くなる状態や、手の熱がクリーニング筐体に伝わって、温度制御手段の作用を低下させるのを防止できる。
【0018】
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、温度制御手段が加熱手段と冷却手段とを有し、これらの少なくとも一方がクリーニング筐体に着脱可能である構成とすることができる(請求項5)。
【0019】
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング装置における温度制御手段は「加熱手段」であることもできるし(請求項6)、冷却手段であることもできる(請求項7)。
【0020】
請求項5または6記載の乾式クリーニング装置のように、温度制御手段として加熱手段が用いられる場合「耐熱性素材の洗浄片による洗浄媒体」を用いることが好ましい(請求項8)。
【0021】
この発明の乾式クリーニング方法は、請求項1〜7の任意の1に記載の乾式クリーニング装置を用いる乾式クリーニング方法であって以下のごとき特徴を有する(請求項9)。
【0022】
即ち、可撓性で薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を、クリーニング筐体内に取り込み、クリーニング筐体の開口部をクリーニング対象物で塞ぎ、この状態で「吸気手段によりクリーニング筐体内を吸気」することにより、通気路を通して「温度制御手段により温度制御された空気」をクリーニング筐体内に導気し、クリーニング筐体内に旋回空気流を生ぜしめて、この旋回空気流により洗浄媒体を旋回的に飛翔させる。
【0023】
そして、旋回空気流により「クリーニング対象物に付着した付着物」の硬性を高めつつ、飛翔する洗浄片をクリーニング対象物に当ててクリーニング対象物から付着物を除去してクリーニングを行なう。
【0024】
上記の如く、クリーニング動作は、洗浄媒体をクリーニング筐体内に保持させ、クリーニング筐体の開口部を「クリーニング対象物の表面」で塞ぐ。この状態で、吸気手段によりクリーニング筐体内を吸気すると、クリーニング筐体内部に負圧が生じ、通気路を通して外部の空気がクリーニング筐体内に流入する。
【0025】
以下、説明を補足する。
初めに、クリーニング筐体について補足する。
クリーニング筐体に設けられる通気路は「筐体内部において洗浄媒体を飛翔させるための旋回空気流を形成する」ように形成されているので、流入した空気はクリーニング筐体内に旋回空気流を形成し、この旋回空気流が洗浄媒体を構成している洗浄片を飛翔させ、飛翔した洗浄片は旋回しつつ、クリーニング対象物の表面に衝突し、付着物を除去する。
【0026】
クリーニング筐体に形成された通気路が短くなって「通気口(通気路の長さがクリーニング筐体の壁厚と同程度の状態)」となると、外部から吸引される空気は、筐体内部で拡散的な乱れた流れとなり「洗浄媒体を良好に飛翔させる旋回空気流」が形成され難い。
従って、通気路は「外部から吸引される空気の流れ」を整流できる長さを有する。
【0027】
クリーニング筐体に設けられる「多孔手段」は、洗浄片の吸気口側への移動を阻止しつつクリーニング対象物から除去された除去物を通過させる機能を有し、その名の示すとおり「多数の孔」を有するが、この「孔」の大きさは「除去物よりも大きく、洗浄片よりも小さく」設定され、これにより除去物(汚れ)をクリーニング筐体外に排出させるが、洗浄片はクリーニング筐体内に留める。多孔手段は、例えば洗浄片の大きさよりもメッシュの細かい網状体や「洗浄片の大きさより径の細かい孔を多数穿ったパンチングメタル」等を好適に用いることができる。
【0028】
「開口部」は「筐体の本体」に形成される。
「吸気口」は、クリーニング筐体に2以上設けることもできる。吸気口の数に応じて、多孔手段も複数個設けることができる。
【0029】
吸気口、通気路、多孔手段は、何れも「クリーニング筐体自体の構造の一部」として形成されることもできるし、筐体本体部とは別個に形成したものを、本体部に組み付けて筐体本体部と共に「クリーニング筐体」を構成するようにしてもよい。
【0030】
上記の説明から明らかなように、開口部、吸気口、通気路、多孔手段は「開口部をクリーニング対象物の表面で閉ざした状態で、吸気口を介した内部の空気の吸引により筐体内部に生じる負圧により、外部の空気が通気路を介して内部空間に導気されて、筐体内部に洗浄媒体を飛翔させる旋回空気流が発生する」ように形成されている。
旋回空気流により飛翔する洗浄媒体の各洗浄片は、クリーニング筐体内を旋回して「開口部を閉ざしているクリーニング対象物」に繰り返し衝突し、クリーニング対象物に付着している付着物である「汚れ」を除去する。
「汚れ」は、洗浄片による衝突により、微細な塊や粉状物となってクリーニング対象物から離れ、多孔手段を通って吸気口から排出される。
【0031】
クリーニング筐体内で旋回して飛翔する洗浄片は、多孔手段を通過できず、筐体内部に留まって旋回空気流により飛翔を続け、クリーニング対象物に繰り返し衝突する。
【0032】
クリーニング対象物が、乾式クリーニング筐体の開口部から離れ、開口部が開放状態になると、クリーニング筐体内部の負圧が急速に減少し、通気路を通る空気流の流れも「速やかに減衰」して洗浄媒体の飛翔が止み、洗浄媒体は吸気口を介した吸引力により、多孔手段に張り付いた状態となる。
従って、「開放状態となった開口部」から洗浄媒体が筐体外部へ漏れ出ることがない。
【0033】
このように「開放状態となった開口部から、洗浄媒体がクリーニング筐体外部へ漏れ出る」のを、より確実に防止するには「クリーニング対象物の表面が開口部から離れたとき、通気路出口近傍の静圧が、大気圧もしくはその近傍となる位置に、通気路出口を配置」すれば良い。
【0034】
「通気路出口」は、クリーニング筐体内部の負圧により外部から通気路を通して引き込まれる空気流の「クリーニング筐体内部側の出口」である。
【0035】
上記の如く、「通気路」は「吸引される空気の流れを整流する作用」を果たすが、このように整流された空気流により飛翔する洗浄媒体が、クリーニング対象物に対して有効に衝突するようにするには、整流された空気流の流速が最も大きい通気路出口部分での空気流が「開口部に向かって流れる」ようになっているのが良い。
【0036】
「多孔手段」は、旋回空気流の旋回軸に直交する面に配置されることが好ましい。
【0037】
クリーニング筐体は、クリーニング筐体内部の空間が回転体形状で、通気路を介して導気される空気流が「回転体形状の接線に近い角度」で旋回空気流を形成するように、通気路が形成され、導気される空気流が「クリーニング筐体内壁に平行に近い角度」でクリーニング筐体内部に導気されるようにすることが好ましい。
【0038】
クリーニング筐体は「内部に、旋回空気流の旋回軸を囲繞する流路制限部材」を有することができる。このような流路制限部材を設けると、旋回空気流は、流路制限部材と筐体内壁の間を旋回して流れ、「流路断面積」が小さくなり、旋回空気流の流速が大きくなって、洗浄媒体をより良好に飛翔させることができる。
【0039】
クリーニング筐体は、その内部に旋回空気流を発生させるので、クリーニング筐体の内部空間は「旋回空気流を発生させ易い」ように、空気流が筐体内壁に沿って循環して流れるように「連続した内壁」を持つ空間であり、断面形状として多角形形状や円形状等が好ましい。
【0040】
上述のように、クリーニング筐体の有する「通気路」は、「外部から導気される空気の流れを整流する機能」を有するので、通気路の形態は「滑らかな内面を持った管形状」が一般的であるが、これに限らず、例えば「滑らかな面を持つ、板状の流路制御板」等を用いても、空気を板面に沿った方向に流れやすくする整流効果を発現できるので「板状の流路制御手段を用いて通気路を構成する」こともできる。
【0041】
また、通気路による「空気の流れ」は、直線的であることが一般的であるが、流路抵抗をあまり生じない「緩やかなカーブ」を描いて曲がっていても整流機能はあり、通気路の形態は直線状に限らない。
通気路内面の「通気路に直交する断面形状」は、円形状、楕円形状、矩形形状、スリット形状等、種々の形態のものが許容される。
【0042】
通気路を通して導気された空気は、上記の如く旋回空気流を形成するが、クリーニング筐体内は多孔手段を介して吸引されているので、旋回空気流を形成した空気の一部は多孔手段を介して筐体外へ排出される。
しかし、通気路を通じて外部の空気が連続的に導気されるので、このように導気される空気が常に旋回空気流に合流し、定常的な旋回空気流が形成される。
【0043】
ここで「洗浄媒体」を構成する「可撓性で薄片状の洗浄片」について説明する。
洗浄片は「薄片状」とあるように薄い形態を有し、「片」とあるようにサイズも大きくは無い。
洗浄片の材質は、後述する実施の形態において示すように「ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂」などの樹脂が好適である。
【0044】
クリーニング対象物に付着している「汚れ」の付着強さの程度によって、上記の種々の樹脂材料のなかから適当なものを選択して用いることができる。
【0045】
「薄片状の洗浄片」には、以下の如き利点がある。
(イ)洗浄片1枚あたりの重さに対して「面方向の空気抵抗」が大きく、比較的弱い空気流により浮遊・飛翔・加速し易く、旋回空気流に対する追従性が高い。
(ロ)洗浄片の厚みが薄いため、クリーニング対象物の表面が複雑な形状であっても、表面形状の狭い領域にも入り込んで付着物(汚れ)を除去できる。
【0046】
(ハ)大きさ・厚さが小さいので、洗浄媒体に使用する素材の量が大量とならない。
【0047】
(ニ)薄片の「厚みのエッジ部」のスクレーパ効果により、強い付着力の汚れの除去に良好に適応できる。
【0048】
(ホ)クリーニング対象物に付着した汚れが、クリーニング対象物から「粉状」になって分離するような場合、分離した「粉状汚れ」と、洗浄片との面積差が大きいため、多孔手段による分離が容易である。特に、洗浄片を「樹脂フィルム」の小片で形成する場合、洗浄片の表面が平滑であるようにすると、洗浄片と汚れ片の分離が容易である。
【0049】
(ヘ)洗浄片は可撓性であるので、クリーニング対象物に衝突するとき、撓みにより衝撃の一部を吸収するのでクリーニング対象物を傷つけにくい。
【0050】
(ト)クリーニング対象物に倣う線接触、面接触が発生し、一度の衝突でより広い面積に付着した付着物(汚れ)を除去できる。
【0051】
この発明の乾式クリーニング装置を用いる乾式クリーニング方法では「クリーニング動作が開始する段階」において、クリーニング対象物に付着しているフラックスやソルダペースト等はなお「柔らかい粘着状態」にあり、洗浄片の剛性が高いと、付着物に衝突した洗浄片が付着物に突き刺さった状態となり、付着物から離れない状態となることがある。
【0052】
(チ)しかし、洗浄片が可撓性を有すれば、可撓性により衝突のエネルギを吸収して撓むので、この撓みが戻るときに、付着物から離れやすくなる。
【0053】
洗浄媒体を構成する「洗浄片」の形状には特に制限がない。クリーニング対象物の面形状や汚れの種類、付着の程度等に応じて、適宜の形状を設定できる。
例えば「矩形状の洗浄片」は形成が容易で、安価に作製できる。クリーニング対象物の細孔状部分のクリーニングを目的とする場合であれば「短冊形状や、十字型、星型等の鋭角を持つ形状」が適しており、クリーニング動作に伴う「洗浄媒体の欠け」等による発塵を最小に押さえたいときは円形状の洗浄片が適している。
【0054】
なお「同時に使用される洗浄媒体」を構成する洗浄片は、大きさや形状・厚さ等が必ずしも完全に揃っていなくても良い。
【0055】
可撓性を有する材質による「洗浄片」の場合、その面積が:Sが200mmを超えて大きくなると、上記「ハ」の効果を有効に得られないし、旋回空気流による飛翔が生じ難くなり、飛翔のために大きな吸気力が必要になる。
【0056】
逆に、面積:Sが1mmより小さいと、上記「ニ、ホ、ト」の効果を得にくい。
【0057】
前述のように、面積:Sは、上記効果を「より有効に発揮できる」ためには、
2mm≦S≦100mm
であることが好ましい。
【0058】
洗浄片の厚み:Dが、0.5mmを超えて大きくなると洗浄片の剛性が強くなり、可撓性が低減して「可撓性による上記効果(ヘ、ト、チ)」を期待できない。
厚み:Dが0.03mmよりも小さいと、洗浄片の「腰」が弱くなり、クリーニング対象物への衝突の際に「汚れに与える衝撃」が小さくなってクリーニング効果が低下するほか、クリーニング筐体の内壁等に密着して再飛翔しにくくなったり、多孔手段に強く付着して目詰まりを生じたりし易い。
【0059】
洗浄片の厚み:Dは「より良好なクリーニング効果」の実現のためには、0.2mmより小さく、0.05mmよりも大きいことが好ましい。
【0060】
なお、洗浄片の厚さ:Dの下限は「面積:S」が小さい場合には、厚さ:Dが0.05mmより小さくても、洗浄片に所望の可撓性を与えて、上記の洗浄片の「腰」が弱くなることに起因する「再飛翔しにくい問題や、多孔手段の目詰まりの問題」を生じないようにできる。
【0061】
洗浄媒体は、クリーニング機能上「乾式クリーニング装置」を構成する構成要素であるが、これを常時「乾式クリーニング筐体内に保持」する必要は無く、装置とは別に保存されたものを、クリーニング時に乾式クリーニング筐体内にセットするようにして良いことは言うまでもない。
また、洗浄媒体は乾式クリーニングが実行されるに連れ、経時的に消耗するが、消耗品として随時補給できることは勿論である。
【0062】
「吸気手段」は、乾式クリーニング筐体の内部を、吸気孔を介して吸気する。
吸気手段も、クリーニング機能上「乾式クリーニング装置」を構成する構成要素であるが、「専用の手段」である必要は必ずしも無く、例えば、家庭用あるいは業務用の電気掃除機の「真空モータ」の吸引ダクトを、乾式クリーニング筐体の吸気口に接続して「吸気手段」として用いることもできる。
【0063】
「吸気手段」には、真空モータのほかに、真空ポンプや、さらにはベンチュリー効果を利用した「空気流や水流により低圧を発生させる」タイプのものなどを適宜利用できる。
【0064】
また、吸気手段は常時、クリーニング筐体と連結させてもよいが、必要に応じて、クリーニング筐体に着脱する構成と出来ることは勿論である。
【0065】
この発明における特徴の一端は、上記の如く「クリーニング筐体の通気路を通って流入する空気流の温度を、クリーニング対象物の硬性を高める温度に制御する温度制御手段」を有する点にある。
【0066】
温度制御手段の作用は上記の如く「通気路を通って流入する空気流の温度を、クリーニング対象物の硬性を高める温度に制御」することであるが、ここにいう「硬性を高める」とは、クリーニング対象物に付着した付着物の「硬さを強める」ことを意味する。
【0067】
例えば、付着物がフラックスやソルダーペーストのような「溶剤を含んだ粘性物質」は、加熱によって溶剤が蒸発して乾燥し、粘着性や弾性(以下、「粘弾性」とも言う。)が失われて「硬い状態」即ち「硬性を高められた状態」となり、薄片状の洗浄媒体により除去しやすい状態に変質する。
【0068】
また、粘土質の付着物や、油脂成分の付着物では、これを冷却することにより、粘性や柔性が失われて「硬性を高め」られ、薄片状の洗浄媒体により除去しやすい状態に変質する。
【0069】
温度制御手段は、通気路を通って流入する空気流の温度を高める場合は「加熱手段」が用いられ、上記空気流の温度を低下させる場合は「冷却手段」が用いられる。
【0070】
乾式クリーニング装置におけるクリーニング対象物における付着物が「前記フラックスやソルダーペースト」のように「加熱により硬性を増す」ものに限られる場合には、加熱手段のみを用いれば良いし、逆に油脂汚れのように「冷却により硬性を増す」ものに限られる場合には、冷却手段のみを用いれば良い。
【0071】
より一般的な場合には、加熱手段と冷却手段の両方を用意し、付着物に応じて選択的に用いるようにすれば良い。
【0072】
この場合、加熱手段と冷却手段の「一方もしくは双方」をクリーニング筐体に固定しても良いし、一方をクリーニング筐体に固定し、他方をクリーニング筐体に着脱可能としても良く、さらには、双方をクリーニング筐体に対して着脱可能として、付着物に応じて冷却手段もしくは加熱手段を選択して、クリーニング筐体に装着して用いるようにしても良い。
【0073】
加熱手段や冷却手段としては、市販の「温寒両用のドライヤ」を適当なアタッチメントにより通気路入り口に接続させるようにしてもよい。また、温風ドライヤを「加熱手段」として用いることもできる。
【発明の効果】
【0074】
以上に説明したように、この発明によれば、固化状態でない付着物に対しても良好な乾式クリーニングを実現できる新規な乾式クリーニング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施の1形態におけるクリーニング筐体を説明するための図である。
【図2】図1のクリーニング筐体を用いる乾式クリーニング装置の使用状態を説明するための図である。
【図3】図1、図2の実施の形態におけるクリーニング動作を説明するための図である。
【図4】実施の別形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、実施の形態を説明する。
【0077】
以下に説明する実施の各形態においては、洗浄媒体を構成する洗浄片は「面積が1〜100mm、厚みが0.05〜0.2mmで、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、アクリル、セルロース樹脂、ポリイミド、メラミンなどの耐久性のある樹脂素材からなるフィルムの薄片」を想定している。
【0078】
図1に乾式クリーニング装置のクリーニング筐体の部分を説明図的に示す。
この実施の形態はクリーニング対象物を「ディップパレット」とし、付着したフラックスあるいはソルダーペーストの除去を行なう場合であり、「温度制御手段」として「加熱手段」を用いる例である。
【0079】
図1(a)はクリーニング筐体10を開口部101の側から見た図、(b)は、(a)のBB'断面図(以下、BB'方向を「上下方向」と言い、図1(a)の上方を「上」、下方を「下」という。)、(c)は図1(a)のAA'断面図を示している。
【0080】
図1から理解されるように、クリーニング筐体10は、上側部分10Uが円筒状に形成され、下側部分10Dが円錐状に形成されており、円筒状部分をなす上側部分10Uと、円錐状部分をなす下側部分10Dとの間に多孔手段102が設けられ、上側部分10Uには「通気路」を成すインレット103が形成されている。
【0081】
クリーニング筐体10の上側部分10Uの上部は平面状に閉じている。
【0082】
図1(b)に示す多孔手段102は、パンチングメタルのような「穴が空いた板状の部材」である。多孔手段102は「洗浄媒体をなす洗浄片を通過させず、空気及び粉塵(クリーニング対象物から除去された付着物)を通過させる径の細孔を多く備える多孔形態」であればよく、パンチングメタルのほかにスリット板や網などを用いることもできる。
【0083】
多孔手段102は、円錐形状の下側部分10Dの大面積の底面部に設けられているので、面積が大きく、かつ、クリーニング時に発生する「旋回空気流に沿う位置」であり、洗浄媒体が不必要に滞留することがない。
【0084】
円錐形状に形成された下側部分10Dの最下部は円筒状に開口し、吸気口10D1を成している。図1に図示されない「吸気手段」は、吸気口10D1に連結されて、吸気口10D1からクリーニング筐体10内部の空気を吸気する。矢印ARは、クリーニング筐体内から吸気される「空気流」を示している。
【0085】
なお、図1(b)、(c)に符号10U1で示すのは「流路制限部材」である。
【0086】
流路制限部材10U1は、上側部分10Uと一体構造に形成され、円筒形状である。
【0087】
上側部分10Uに形成された開口部101は、図1(a)に示すように矩形形状であり、開口周縁部には「クリーニング対象物に弾性的に圧接密着して、クリーニング対象物との機密性を高める」ための耐熱スポンジによる当接部材1011が設けられている。
【0088】
クリーニング筐体10は、クリーニング対象物から除去された異物の付着や「洗浄媒体との摩擦による消耗」を防ぎ、かつ加熱による破損が生じないように、アルミ、ステンレスなどの金属や耐熱プラスチックにより形成するのが好ましい。また、筐体内面は、旋回空気流の減衰を押さえるために平滑であることが好ましい。また、筐体外面には適当な断熱処理を施すのが良い。
【0089】
「通気路」を成すインレット103は、クリーニング筐体10に一体に設けられ、上側部分10Uの円筒部内面に接する方向に向けられた旋回空気流(図1(c)に符合TAで示す。)を発生させる。インレット103は、図2に示すように「角柱型」である。
【0090】
上記開口部101は、インレット103との関係では、図1(c)に示すように、インレット103により通気流入した空気流が「直接当たる位置」に配置されている。
開口部101の面積は、開口部101とクリーニング対象物とが離間したときに、開口部を介して空気を吸気できるように、インレット103の断面積以上とする。
【0091】
上側部分10Uに設けられた流路制限部材10U1は、円筒形(楕円筒形でもよい。)の滑らかな周面形状を有し、旋回空気流の流路断面積を絞って流速を向上させる。
【0092】
インレット103は、クリーニング筐体10の外部で「外気に開放」され、クリーニング筐体10の内部で「開口部101に近接した位置」に開放されている。
【0093】
インレット103には「ニクロム線など高抵抗の金属線」で作製されたヒートリボン104が巻きつけられ、上記金属線に通電することでインレット103の温度を上昇させ、インレット103内を流れる空気流を加熱する。
【0094】
ヒートリボン104とこれに通電する手段(図示されず)は「温度制御手段」を構成する。付着物であるフラックスやソルダーペーストが、未だ固化していない「粘弾性状態」において、付着物を120℃〜150℃に加熱することにより、溶剤成分を気化蒸発させ、付着物の硬性を高めて乾式クリーニングを良好に行なえる状態にできる。
【0095】
洗浄媒体を構成する洗浄片の材質は「ガラス転移点が空気流温度よりも高いもの」を用いる。加熱気温が120℃〜150℃であれば、殆どの樹脂フィルムを使用できるが、より高温の加熱が必要な場合は、耐熱性のもの、具体的にはポリイミド、メラミンなどの熱硬化性樹脂のフィルムや、鉱物製の材料により洗浄片を形成できる。
【0096】
図1(b)、(c)において、符号cpは洗浄片を示している。また、図1(c)において、符号obは「クリーニング対象物」を示している、
図2は、説明中の実施の形態の乾式クリーニング装置によるクリーニング状態を説明するための図である。
【0097】
クリーニング対象物obは、フラックスの付着したディップパレットである。ディップパレットobの「開口部の周りに漏出して付着したフラックスFL」を除去するために、クリーニング筐体10の開口部(図1に符号101で示す。)をフラックスFLの付着箇所に押し当てて使用する。
乾式クリーニングが開始される状態では、フラックスFLは未だ固化しておらず、粘弾性状態にある。
【0098】
図2に示すように、クリーニング筐体10には取っ手105が取り付けられ、この取っ手105を作業者が手HDで保持して作業を行う。
【0099】
図2に図示されていない吸気手段によりクリーニング筐体10の内部を吸気し、ヒートリボン104のコンセントCNTを電源に差込み、スイッチswをONにして、加熱手段を駆動する。
【0100】
クリーニング筐体10の内部を吸気状態として、開口部から洗浄媒体を適量吸い込み、洗浄媒体をクリーニング筐体10(の上側部分)に保持させる。
【0101】
ついで、クリーニング筐体10の開口部をクリーニング対象物obの「フラックスFLが付着した部分」に押し当てる。
【0102】
このとき、クリーニング筐体10に生じる負圧によりインレット103を通して空気が吸引され、クリーニング筐体内部に通気される。
【0103】
通気される空気は、インレット103を通る際に、ヒートリボン104により加熱され熱風となってディップパレットobの表面に吹き付けられ、付着しているフラックスFLを過熱して「硬性」を高める。
【0104】
インレット103により通気された熱風はまた、クリーニング筐体10内に旋回空気流を発生させ、クリーニング筐体内に保持された洗浄媒体(図1に示す洗浄片cpの集合である。)を飛翔させる。
【0105】
飛翔する洗浄片cpは、フラックスFLに衝突する。フラックスFLは上述の如く、熱風により硬性を高められているので、洗浄片の衝突によりディップパレットobの表面から粉砕された状態で除去され、多孔手段102(図1(b)参照)の穴を抜けて吸気手段側へ吸引され、図2に図示されない回収部に回収される。
【0106】
作業者は、図2に示すように、取っ手105を手に持ち、ディップパレットobの表面に沿ってゆっくりと平行移動させるか「飛び石的に洗浄したい他のスポットに移動」することによって、残留したフラックスFLを全て除去することができる。
【0107】
取っ手105は「断熱素材」により形成されており、クリーニング筐体10からの熱が取っ手105に伝わり難いため、クリーニング筐体10が熱くなっても、作業を実行できる。
【0108】
クリーニングすべき部位が開口や辺縁部、端部等のように「クリーニング対象物obによりクリーニング筐体10の開口部101を塞ぐことができないときには、クリーニング対象物の背後に「柔軟で耐熱性かつ厚手の塩化ビニールまたはゴムシート」を配し、上記箇所のクリーニングを行なう際、柔軟なシートを吸引気流によって開口部101を塞ぎ、クリーニング筐体内部の気密性が保ち、洗浄媒体を飛翔させることができるようにする。
【0109】
洗浄媒体を構成する洗浄片は「繰り返し使用される」につれて微小片に破壊され、除去したフラックス汚れと一緒に吸気手段により吸引回収される。
このため、クリーニング作業を長時間行うと、クリーニング筐体内の洗浄媒体が不足する。このような場合は、洗浄槽開口部を、新規な洗浄媒体に近づけて、吸引により洗浄槽内に補給する。この実施の形態のクリーニング筐体では、多孔手段が吸い付け得る量の洗浄媒体しか吸い込むことができないため、適切な量の洗浄媒体供給が容易に行える。
【0110】
旋回空気流が発生している間は「クリーニング筐体内は負圧状態」であるため、吸気手段が過負荷になり、また、説明中の実施の形態では、吸気手段が吸気する空気は高温であるため、吸気手段の焼きつきなどが発生する可能性がある。これを防ぐために、吸気される空気流を導く「吸引ダクト部分」に、冷却管を巻きつけて冷却液ポンプにより冷却液を流すなどの冷却措置を講じ、吸気される空気流を冷ますことにより、安全性を高めることができる。また、クリーニング筐体内の負圧状態が長時間連続する場合に「吸引ダクトを大気に開放する安全弁」を設けることが好ましい。
【0111】
目詰まりしやすい洗浄媒体を使用する場合は、多孔手段に「微細な凸部」を成型し、洗浄片が、多孔手段に張り付いて吸気穴を塞がないようにする工夫も有効である。
【0112】
説明中の実施の形態では、除去すべき付着物がフラックスである場合であるが、付着物が「水分もしくは溶剤成分」を含む「粘弾性の高い粘弾性物質」である場合には、フラックス以外の付着物に対してもクリーニング効果を実現できる。
【0113】
即ち、熱風を付着物に吹き付けることにより、粘弾性物質の水分または溶剤成分を揮発させて、乾燥させることができる。これにより付着物の粘弾性が失われて「硬性」が増し、洗浄媒体によるスクレーパ効果でクリーニング対象物表面から容易に除去できるようになる。前記粘弾性物質として「粘土、練り物、ソルダーペーストなど」に適用できる。
【0114】
上に説明した実施の形態では、インレット103に加熱手段(ヒートリボン104)を直接装着した例を示したが、加熱手段をクリーニング筐体と別体に構成し、たとえば既製品の温風ドライヤをインレットの空気取り込み口に接続して、加熱気流を送り込む構成としてもよい。
【0115】
図3に、上で説明した実施の形態におけるクリーニング作業の動作をフロー図として示す。
吸引機(吸気手段)を駆動させ、クリーニング筐体の開口部から洗浄媒体を吸い込む。吸い込む洗浄媒体の量は「多孔手段の面積に応じた適量」とする。
続いて、加熱手段(ヒートリボン)のスイッチを入れて通電させ、この状態でクリーニング筐体の開口部を「洗浄対象物(クリーニング対象物)」の表面で塞ぐ。
クリーニング筐体内が負圧になると、ヒートリボンによって加熱された空気流がインレットを通して流入し、洗浄媒体を開口部に向かって加速するとともに「クリーニング筐体の上側部分の内壁に沿って回転する旋回空気流」を発生させる。
【0116】
このとき、旋回空気流は、円筒形状の底面に位置する多孔手段の面に平行な気流となるため、多孔手段に張り付いた洗浄片に横からあたり、洗浄片と多孔手段の間に入り込んで多孔手段に吸いつけられている洗浄片を良好に飛翔させる。
【0117】
外部から取り込まれ「120〜150度に加熱」された空気流は、クリーニング対象物に付着した付着物(フラックス)に吹き付けられて付着物を乾燥させて粘性を低め(硬性を高め)て「洗浄片の衝突によって取れやすい状態」に変質させる。
フラックスなどの付着物が厚く付着している場合でも、乾燥した表面から次々に除去されることにより、露出した内部を順次乾燥させることができ、厚く付着した粘性付着物でも除去可能である。
【0118】
洗浄対象物から分離された付着物は、粉塵となって多孔手段の穴から吸いだされて吸引機に排出され、回収される。
【0119】
一つの洗浄対象物(クリーニング対象物)に対するクリーニングが終了し、クリーニング筐体の開口部を離すと、筐体内の負圧が弱まる。この状態で「洗浄終了(クリーニングすべきクリーニング対象物全てのクリーニングが終了した状態)」であるときは、加熱手段を停止し、吸引機を停止してクリーニング作業を終了する。
【0120】
クリーニングするべき他のクリーニング対象物がある場合には(洗浄終了でない)、筐体内に保持されている洗浄媒体の「残量」を確認し、次の洗浄対象に対してクリーニング作業を続行する。
【0121】
なお、上に説明した実施の形態では、クリーニング筐体において、旋回空気流を発生させる上側部分10Uを円筒形状としたが、これに限らず、強い旋回流が発生する形状であれば良く、上記部分を円筒形状に替えて「円錐形状」や、円錐台形状あるいはこれらに類似する形状としてもよい。
【0122】
旋回空気流を発生させる部分を「円錐形状とする場合」も、多孔手段は「旋回空気流による遠心力が作用しない底面」に配置する。
【0123】
実施の別の形態を、図4を参照して説明する。
この実施の形態は、温度制御手段として「冷却手段」を用いる場合である。
【0124】
クリーニング筐体20は、上側部分も下側部分も円錐台状に形成され、円錐台の大面積底面を合わせてこの部分を「短い円筒状」とし、この部分に多孔手段を配している。円筒上の部分は「旋回空気流の流速を早める効果」を奏する。
【0125】
通気路をなすインレット203には冷却管204が巻装されている。冷却管204は冷却液ポンプ(図示されず)に接続され、冷却液を向きW1、W2のように流して循環させることによってインレット外壁を冷却し、インレット203によりクリーニング筐体20内に吸い込まれる空気を冷却する。
【0126】
この実施の形態では、冷却液としてエチレングリコール溶液を用い、5℃以下に冷却して冷却管204内を循環させる。冷却液としては他に、水もしくはアルコール、あるいは水とアルコールの混合液等を適宜使用してもよい。
【0127】
インレット203はクリーニング筐体20に対して、接続手段CNによりネジ固定されており着脱・交換可能である。
【0128】
図4に示す実施の形態では、クリーニング対象物ob1は「油脂汚れが付着した食器」類であり、洗浄媒体を構成する洗浄片としては、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート、セルロース樹脂もしくはアクリルなどの耐久性のある素材のフィルムを、面積:100mm以下の小片に切断したものが用いられる。
【0129】
クリーニング作業は、上述した実施の形態の場合と同様に、吸気手段(吸引機)を動作させたのち、冷却ポンプを駆動して冷却液の循環によりインレット203を冷却し、上記洗浄媒体を開口部からクリーニング筐体20内に吸い込んで保持する。
【0130】
クリーニング対象物ob1により開口部を塞ぐと、インレット203を通して空気流がクリーニング筐体20内に流入する。流入する空気流は、冷却手段により冷却されて冷風となり、クリーニング対象物ob1の表面に吹き付けられ、付着している「油脂汚れ」を蝋状に固化させる。
同時に、流入気流によって形成される旋回空気流により飛翔した洗浄片が「蝋状に固化した油脂汚れ」に衝突し、固化した油脂汚れをクリーニング対象物ob1から分離する。
【0131】
分離した固体上の油脂汚れは、多孔手段の穴を通過して、吸引機に回収される(図に符号ARで示すのは吸引機により吸引される「空気流」である。)。
【0132】
洗浄媒体は、空気旋回流により高速でクリーニング筐体内(の上側部分)を循環し、クリーニング対象物のクリーニングを継続する。
クリーニングが終了したら、開口部をクリーニング対象物ob1から離し、洗浄したい他の個所に開口部を移動させ、上記洗浄工程を繰り返す。
開口部をクリーニング対象物ob1から離すと旋回空気流は旋回を停止し、洗浄媒体の飛翔も止み、洗浄片は多孔手段に吸い付けられる。このため、洗浄媒体をクリーニング筐体の外部に漏れ出させることなく、開口部を次のクリーニング箇所へ移動できる。
【0133】
クリーニング対象物ob1の全面の洗浄が完了したら、洗浄媒体が落下しないように開口部を上方に向けてから吸引機を停止し、冷却液ポンプを停止する。
【0134】
なお、クリーニング筐体20は、その外面に「断熱性素材であるガラスウール」を設けて「クリーニング筐体内部の冷気」を保つようにしている。また、クリーニング筐体の保持は、取っ手205を手HDで保持して行なう。これにより、クリーニング筐体20が冷却された空気流によって冷却されていても、洗浄器具を快適に保持することができる。
【0135】
上に説明した実施の形態では、冷却手段に「冷却管と冷却液」を使用したが、「ドライアイスや氷の粒の供給装置」をインレット203に接続し、クリーニング対象物ob1に付着した「油脂汚れ」に衝突させることで付着物を冷却しても良い。
【符号の説明】
【0136】
10 クリーニング筐体
101 開口部
103 インレット(通気路)
104 ヒートリボン(加熱手段)
cp 洗浄片
TA 旋回空気流
ob クリーニング対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】
【特許文献1】特開昭 60−188123号公報
【特許文献2】特開平 4− 83567号公報
【特許文献3】特開2007− 29945号公報
【特許文献4】特開2009−226394号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性で薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を空気流により飛翔させ、クリーニング対象物に当ててクリーニング対象物のクリーニングを行なう乾式クリーニング装置であって、
クリーニング筐体と、吸気手段と、温度制御手段と、を有し、
上記クリーニング筐体は、内部に洗浄媒体を保持して飛翔させるための空間を有し、クリーニング対象物の表面に接して該表面により閉ざされる開口部と、上記内部を吸気するための吸気口と、外部からの空気を上記内部へ通しつつ整流し、上記内部において上記洗浄媒体を飛翔させるための旋回空気流を形成するための通気路と、上記吸気口を介した上記内部の吸気に際して、上記洗浄片の上記吸気口側への移動を阻止しつつ上記クリーニング対象物から除去された除去物を通過させる多孔手段とを有し、
上記吸気手段は、上記クリーニング筐体の吸気口を介して、上記クリーニング筐体の内部を吸気する手段であり、
上記温度制御手段は、上記クリーニング筐体の通気路を通って流入する空気流の温度を、クリーニング対象物に付着した付着物の硬性を高める温度に制御する手段であることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項2】
請求項1記載の乾式クリーニング装置において、
温度制御手段が、クリーニング筐体に着脱可能であることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の乾式クリーニング装置において、
クリーニング筐体が断熱性素材で形成されていることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、
クリーニング筐体が、断熱性素材による取っ手を有することを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、
温度制御手段が、加熱手段と冷却手段とを有し、これらの少なくとも一方がクリーニング筐体に着脱可能であることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項6】
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、
温度制御手段が、加熱手段であることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項7】
請求項1〜4の任意の1に記載の乾式クリーニング装置において、
温度制御手段が、冷却手段であることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項8】
請求項5または6記載の乾式クリーニング装置において、
温度制御手段として加熱手段が用いられるとき、耐熱性素材の洗浄片による洗浄媒体を用いることを特徴とする乾式クリーニング装置。
【請求項9】
請求項1〜7の任意の1に記載の乾式クリーニング装置を用いる乾式クリーニング方法であって、
可撓性で薄片状の洗浄片の集合による洗浄媒体を、クリーニング筐体内に取り込み、該クリーニング筐体の開口部をクリーニング対象物で塞ぎ、
吸気手段によりクリーニング筐体内を吸気することにより、通気路を通して、温度制御手段により温度制御された空気を上記クリーニング筐体内に導気して、クリーニング筐体内に旋回空気流を生ぜしめて、上記旋回空気流により洗浄媒体を旋回的に飛翔させ、
上記旋回空気流によりクリーニング対象物に付着した付着物の硬性を高めつつ、飛翔する洗浄片を上記クリーニング対象物に当ててクリーニング対象物から付着物を除去してクリーニングを行なうことを特徴とする乾式クリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91127(P2012−91127A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241481(P2010−241481)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】