説明

乾式電気集塵装置およびその運転方法

【課題】集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができる構造の乾式電気集塵装置およびその運転方法を提供すること。
【解決手段】排ガスを容器内部に導入する入口管7と、前記排ガス中のダストを帯電させる、容器内部に設けられた放電極2と、帯電したダストを捕集する、容器内部に設けられた集塵極1と、前記集塵極から落下させたダストを回収する、容器底部に設けられたホッパー9と、容器内部で清浄化された排ガスを容器外部に導出する出口管11と、容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段、を備える集塵容器8が複数配置され、各々の集塵容器8が備える入口管7が相互に接続され、各々の集塵容器8が備える出口管11が相互に接続された乾式電気集塵装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式電気集塵装置およびその運転方法に関し、特に集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができる構造の乾式電気集塵装置、およびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾式電気集塵装置は、高電圧が印加される放電極と集塵極の間に排ガスを流入させ、高電圧の印加により発生するコロナ放電によって排ガスに含まれるダストを帯電させ、帯電させたダストをクーロン力によって集塵極で捕集する。
そして、集塵極で捕集されたダストは、集塵極の所定箇所をハンマで強打したり、バイブレータで振動させたりする等の機械的な衝撃を集塵極に与えることによって(以下、槌打という。)、集塵極から剥離、落下させ、集塵容器の下部に設置されたホッパーで回収される。
【0003】
ところで、乾式電気集塵装置は次々と流入する排ガスを連続して処理する必要があるため、後者のダスト回収は前者のダスト捕集と並行して行われる。したがって、ダストを回収するために集塵極を槌打すると、集塵極から剥離したダストが再びガス流れに乗って飛散し、集塵効率が低下する問題がある(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0004】
このため、集塵空間の入口または出口に設けたカーテンやダンパー等の遮蔽手段を用いて排ガスの流れの一部を遮断する方法(例えば、特許文献1〜2参照)、再飛散量を見込んで装置設計する方法、集塵極にフィンを設ける方法、あるいは、ダストが分散しないように槌打する方法等の様々な改善策が提案されてきた。
【0005】
このうち特許文献1には、集塵極から剥離したダストが再びガス流れに乗らないようにするために、図6に示すようにガス流れの上流側端部近傍または下流側端部近傍に、ガス流れの一部を遮断する移動式カーテンを配置した電気集塵装置が開示されている。なお、図6はガス流れの下流側端部近傍に移動式カーテンを配置した場合の図である。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の電気集塵装置においては、ダストの再飛散を防ぐためにガス流れを遮断する領域、すなわち、集塵極を槌打してダストを回収している領域と、ガス流れを遮断しない領域、すなわち、集塵極でダストを捕集している領域とが同一の集塵空間に存在するため、集塵極を槌打してダストを回収している領域を完全な密閉系とすることはできない。このため、図6に示すように、移動式カーテンを用いてガス流れを遮断した領域の上部または下部にはガス流れの迂回路ができて、槌打によって集塵極から剥離したダストが当該迂回路を流れるガス流れに乗って再飛散することとなる。すなわち、移動式カーテン等を用いてガス流れの一部を遮断する電気集塵装置は、ガス流れの遮断能力に限界があって、ダストの再飛散を完全に防止することはできない。
【0007】
なお、特許文献1には、ガス流れの中流側端部近傍や下流側端部近傍に移動式カーテンを配置してもよく、この場合には中流部や下流部においてダストが再飛散したとしても、再飛散したダストは下流に位置する集塵極で集塵されることからダストの再飛散は大きな問題とはならない旨が記載されているが(特許文献1の段落[0038]参照)、これは、特許文献1に記載の電気集塵装置においては、所定の場合にはダストが再飛散すること、ならびに、ガス流れの下流ほど集塵能力が必要とされることから、これに応じた装置設計を要することを意味するものに他ならない。
【特許文献1】特開平7−299387号公報
【特許文献2】特開平11−319630の段落[0004]〜[0005]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決すべき課題は、集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができる構造の乾式電気集塵装置およびその運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく様々な実験的検討および理論的検討を重ねた結果、以下の技術的知見を得た。
【0010】
(A)前記したように集塵極を槌打してダストを回収している領域(以下、回収領域と表記する。)と、集塵極でダストを捕集している領域(以下、捕集領域と表記する。)が同一の集塵空間に存在するために、回収領域から捕集領域にダストが飛散する現象が生じるところ、各々が内部に放電極と集塵極を備えた集塵容器であって、各々が容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段を備えた集塵容器を、図1に示すように複数配置すれば、回収領域と捕集領域を分離できるので、ダストの再飛散を完全に防止できること。
【0011】
(B)例えば、図1の最も左側に位置する集塵容器(以下、便宜的にNo1容器と表記する。)が備える遮蔽手段を閉塞してNo1容器内部に導入するガス流れおよびNo1容器外部に導出するガス流れを止めた場合にはNo1容器を密閉系とすることができるので、No1容器内部において集塵極を槌打して集塵極上に堆積したダストを剥離、落下させたとしても、当該ダストはNo1容器外部には飛散しないこと。また、他の5台の集塵容器については、No1容器内部で行うダスト回収の影響をなんら受けることなく、ダスト捕集を行うことができること。
【0012】
(C)複数配置された集塵容器は上記操作によって各々を密閉系とすることができるため、複数配置された集塵容器についてダスト回収を順次繰り返すことにより、装置全体としての集塵効率を向上させることができること。
【0013】
(D)前記したように特許文献1に記載の電気集塵装置ではガス流れの下流ほど高い集塵能力が必要となって、これに応じた装置設計が必要とされるところ、上記のように各々を密閉系とすることができる集塵容器を複数配置した集塵装置ならば、目標集塵効率を達成するための装置設計が容易であること。
【0014】
(E)具体的には、ガス流れを遮蔽する遮蔽手段を用いて各々を密閉系とすることができる集塵容器を複数配置した集塵装置はダストの再飛散を完全に防止できるので、各々の集塵容器に均一の集塵性能を与える設計思想を採用できること。例えば、図1に示すように集塵容器を6台配置する場合には、このうち1台がダスト回収を実施している場合には、残りの5台でダスト捕集を受け持つことになるので、各々の集塵容器に20%(=100%/5台)の集塵性能を与える設計をすればよいこと。同様に、集塵容器を3台配置する場合には50%、2台配置する場合には100%の集塵性能を各々の集塵容器に与える設計をすればよいこと。
【0015】
上記の知見に基づき、本発明者は、集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができる構造の乾式電気集塵装置およびその運転方法に想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
【0016】
(1)排ガスを容器内部に導入する入口管と、前記排ガス中のダストを帯電させる、容器内部に設けられた放電極と、帯電したダストを捕集する、容器内部に設けられた集塵極と、前記集塵極から落下させたダストを回収する、容器底部に設けられたホッパーと、容器内部で清浄化された排ガスを容器外部に導出する出口管と、容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段、を備える集塵容器が複数配置され、各々の集塵容器が備える入口管が相互に接続され、各々の集塵容器が備える出口管が相互に接続された乾式電気集塵装置。
【0017】
(2)排ガスを容器内部に導入する入口管と、前記排ガス中のダストを帯電させる、容器内部に設けられた放電極と、帯電したダストを捕集する、容器内部に設けられた集塵極と、前記集塵極から落下させたダストを回収する、容器底部に設けられたホッパーと、容器内部で清浄化された排ガスを容器外部に導出する出口管と、容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段、を備える集塵容器が複数配置され、各々の集塵容器が備える入口管が相互に接続され、各々の集塵容器が備える出口管が相互に接続された乾式電気集塵装置の運転方法であって、複数配置された集塵容器のいずれかの集塵容器の遮蔽手段を閉塞して当該集塵容器内部に導入するガス流れおよび当該集塵容器外部に導出するガス流れを止めた状態で、当該集塵容器が備える集塵極を槌打して当該集塵極が捕集したダストを落下させ、あらかじめ定めた所定時間の経過後に閉塞していた遮蔽手段を開き、これを複数配置された集塵容器について順次繰り返す乾式電気集塵装置の運転方法。
【発明の効果】
【0018】
(イ)本発明に係る乾式電気集塵装置は、内部に放電極と集塵極を備える集塵容器が複数配置された構造であり、各々の集塵容器は、容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段を備えている。
これにより、本発明に係る乾式電気集塵装置は、複数配置された集塵容器のいずれかの集塵容器の遮蔽手段を閉塞することにより、この遮蔽手段を閉塞した集塵容器内部に導入するガス流れおよび当該集塵容器外部に導出するガス流れを止めることができる。
したがって、当該ガス流れを止めた集塵容器内部において集塵極を槌打して集塵極上に堆積したダストを剥離、落下させたとしても、当該ダストが容器外部に飛散することはない。このため、他の集塵容器においては、ガス流れを止めた容器内部で行うダスト回収に何らの影響を受けることなく、安定したダスト捕集を行うことができる。
すなわち、本発明に係る乾式電気集塵装置は、集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができ、これにより高い集塵効率を発揮することができる。
【0019】
(ロ)本発明に係る乾式電気集塵装置は、集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができるので、従来技術に係る乾式電気集塵装置と異なり、目標集塵効率を達成するための装置設計が容易である。
すなわち、従来技術に係る乾式電気集塵装置においてはダストが再飛散するため、ガス流れの下流ほど高い集塵能力が必要となって、これに応じた複雑な装置設計が必要とされるところ、本発明に係る乾式電気集塵装置はダストの再飛散を完全に防止することができるので、各々の集塵容器が受け持つ集塵性能を均一にすることができる。このため、本発明に係る乾式電気集塵装置は、目標集塵効率を達成するための装置設計が極めて容易である。
また、いずれか1の集塵容器のダスト回収の終了後に当該集塵容器をダスト捕集に移行させ、次の集塵容器のダスト回収を行う運転を順次繰り返す本発明に係る乾式電気集塵装置の運転方法によれば、各々の集塵容器の集塵性能が均一であることから安定した操業が可能であり、装置全体としての集塵効率を向上させることができる。
【0020】
(ハ)本発明に係る乾式電気集塵装置は、従来技術に係る乾式電気集塵装置と異なり、清浄化された排ガスを有効利用することができる。
すなわち、従来技術に係る乾式電気集塵装置はダストが再飛散するので排ガスの清浄性能に限界があり、当該清浄化された排ガスを工業用の燃焼ガスとして利用する場合には当該ガスを燃焼させるバーナが摩耗・損傷するおそれがある。また、当該清浄化された排ガスから圧力を回収する場合には、タービンの羽根が摩耗・損傷しないように低効率での運転が必要となる。
これに対して、本発明に係る乾式電気集塵装置はダストの再飛散を完全に防止することができるので排ガスの清浄度が高く、工業用の燃焼ガスとして利用する場合にも圧力を回収する場合においても、当該清浄化された排ガスを有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1〜図5を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明に係る乾式電気集塵装置の模式図である。図1に示すように本発明に係る乾式電気集塵装置は、従来技術に係る乾式電気集塵装置の構造とはまったく異なり、集塵容器8が複数配置された構造である。
【0022】
図1に示すように各々の集塵容器8が備える入口管7は相互に接続される。また、各々の集塵容器が備える出口管11も相互に接続される。より具体的には、各々の集塵容器が備える入口管7のすべては入口集塵本管6に接続され、各々の集塵容器が備える出口管11のすべては出口清浄本管13に接続される。加熱炉、燃焼炉、還元炉、溶解炉、乾燥炉等の工業用炉から排出された排ガスは、入口集塵本管6および当該本管に接続された入口管7を通って集塵容器8の内部に導入され、当該集塵容器8の内部においてダストの捕集や回収が行われる。そして、容器内部で清浄化された排ガスは、出口管11を通って集塵容器8の外部に導出され、出口清浄本管13を通って乾式電気集塵装置の系外に排出される。
【0023】
図2は本発明に係る乾式電気集塵装置が備える集塵容器8の側面断面図である。図2に示すように入口集塵本管6を流れる排ガスは入口管7を通って容器底部まで下降し、ここで容器底部に設けられた整流装置10によって整流される。
【0024】
図3は放電極2と集塵極1の配置図であり、図2のB−B断面図である。図4は図2のA方向から見た平面図である。集塵容器8の断面形状は円形に限定されるものではないが、断面形状が円形の集塵容器を用いる場合には、排ガス中のダストを帯電させる放電極2は、図3に示すように入口管7を中心に放射状に配置するのが望ましい。入口管7を中心として放射状に放電極2を配置することにより、ダストの帯電効率が向上する。なお、放電極2への電圧印加は、図2に示す高圧直流電源3から供給される。
【0025】
集塵極1は、図3に示すように放電極2を取り囲んでセル状の集塵空間を形成するように配置する。また、当該セル状の集塵空間の中心に放電極2が位置するように集塵極1を配置する。当該セル状の集塵空間の中心に放電極を配置することで、ダストの集塵効率が向上する。整流装置によって整流された排ガスが当該セル状の集塵空間を上昇していく過程で、高電圧の印加により発生するコロナ放電によって排ガスに含まれるダストが帯電され、このように帯電したダストがクーロン力によって集塵極1で捕集される。そして、集塵極1で捕集されたダストは、集塵極1を槌打することによって集塵極から剥離、落下させ、集塵容器の底部に設置されたホッパー9で回収する。
【0026】
容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段としては、ダンパー、仕切り弁、バタフライ弁等を用いるのが望ましい。
また、遮蔽手段は入口管7と出口管11のいずれか一方または双方に設置するのが望ましい。入口管7に遮蔽手段を設置した場合は、容器内部に導入するガス流れが遮断されるので、容器外部に導出するガス流れも遮蔽される。一方、出口管11に遮蔽手段を設置した場合は、容器外部に導出するガス流れが遮断されるので、容器内部に導入するガス流れも遮蔽される。なお、図1〜2は、出口管11にダンパー12を設置した例である。
【0027】
本発明に係る乾式電気集塵装置は、このように従来技術に係る乾式電気集塵装置の構造とはまったく異なり、内部に放電極2と集塵極1を備える集塵容器8が複数配置された構造である。そして、各々の集塵容器8は、容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段を備える。したがって、本発明に係る乾式電気集塵装置は、複数配置された集塵容器8のうちのいずれかの集塵容器の遮蔽手段を閉塞することにより、この閉塞手段を閉塞した集塵容器内部に導入するガス流れおよび当該集塵容器外部に導出するガス流れを止めることができる。
【0028】
換言すると、本発明に係る乾式電気集塵装置においては、複数配置された集塵容器8のうちのいずれかの集塵容器の遮蔽手段を閉塞して、当該集塵容器内部に導入するガス流れおよび当該集塵容器外部に導出するガス流れを止めた状態で、当該集塵容器が備える集塵極1を槌打して当該集塵極が捕集したダストを落下させる。
【0029】
集塵極1を槌打する際には、高圧直流電源から放電極2への電圧印加を停止するのが望ましい。すなわち、集塵極1でのダスト回収を停止させた状態で集塵極1を槌打するのが望ましい。遮蔽手段の閉塞によって集塵極近傍のガス流れは全くなく、集塵極1から剥離したダストの大半はその自重によって所定の沈静時間を経過した後、集塵容器8の底部に設置されたホッパー9に降下して堆積する。
【0030】
しかし、一部の微粒子のダストは降下速度が遅いため、上記沈静時間内ではホッパーまで降下せず、集塵極近傍で浮遊する。このため、当該浮遊している微粒子ダストの再飛散を防止するために、遮蔽手段を開く前に電圧印加を開始するのが望ましい。電圧印加後、微粒子ダストは集塵極1に再度捕集されるので、集塵極近傍で浮遊していた微粒子ダストが再飛散することはない。そして、あらかじめ定めた所定時間の経過後に閉塞していた遮蔽手段を開き、集塵容器8の内部にガスを導入し、ダスト捕集を再開する。
【0031】
以上説明したように、本発明に係る乾式電気集塵装置は、ガス流れを止めた集塵容器8の内部において集塵極1を槌打して集塵極上に堆積したダストを剥離、落下させたとしても、当該ダストが容器外部に飛散することはない。よって、他の集塵容器においては、ガス流れを止めた容器内部で行うダスト回収の影響を何ら受けることなく、安定したダスト捕集を行うことができる。すなわち、本発明に係る乾式電気集塵装置は、集塵極の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができ、これにより高い集塵効率を発揮することができる。
【0032】
また、従来技術に係る乾式電気集塵装置はダストが再飛散するので排ガスの清浄性能に限界があり、当該清浄化された排ガスを工業用の燃焼ガスとして利用する場合には当該ガスを燃焼させるバーナが摩耗・損傷するおそれがあり、当該清浄化された排ガスから圧力を回収する場合には、タービンの羽根が摩耗・損傷しないように低効率での運転が必要となるところ、本発明に係る乾式電気集塵装置はダストの再飛散を完全に防止することができるので排ガスの清浄度が高く、工業用の燃焼ガスとして利用する場合にも圧力を回収する場合においても、当該清浄化された排ガスを有効利用することができる。
【0033】
さらに、本発明に係る乾式電気集塵装置は、集塵極1の槌打時に発生するダストの再飛散を完全に防止することができるので、従来技術に係る乾式電気集塵装置と異なり、目標集塵効率を達成するための装置設計が容易である。すなわち、従来技術に係る乾式電気集塵装置においてはダストが再飛散するため、ガス流れの下流ほど高い集塵能力が必要となって、これに応じた複雑な装置設計が必要とされるところ、本発明に係る乾式電気集塵装置はダストの再飛散を完全に防止することができるので、各々の集塵容器8が受け持つ集塵性能を均一にすることができる。例えば、図1に示すように集塵容器8を6台配置する場合には、このうち1台がダスト回収を実施している場合には、残りの5台でダスト捕集を受け持つことになるので、各々の集塵容器に20%(=100%/5台)の集塵性能を与えればよい。同様に、集塵容器8を3台配置する場合には50%、2台配置する場合には100%の集塵性能を各々の集塵容器に与えればよい。
【0034】
図5は本発明に係る乾式電気集塵装置の運転方法を示す模式図である。図5に示すように本発明に係る乾式電気集塵装置においては、いずれか1の集塵容器8のダスト回収の終了後に当該集塵容器をダスト捕集に移行させ、次の集塵容器8のダスト回収を行う運転を順次繰り返すのが望ましい。前記したように本発明に係る乾式電気集塵装置は、各々の集塵容器が受け持つ集塵性能を均一にすることができることから、装置全体としての安定した操業が可能であり、集塵効率を向上させることができる。
【0035】
図1および図5に示す本発明に係る乾式電気集塵装置は6台の集塵容器を備えているが、集塵容器8の台数はこれに限定されるものではなく、装置全体として要求される集塵性能に応じて2台以上を備えればよい。
また、図5に例示する運転方法では、はじめにNo1容器が備える遮蔽手段を閉塞して当該No1容器のダスト回収を行い、以後、隣に配置されたNo2容器、No3容器、そして最終的にはNo6容器が備える遮蔽手段を閉塞して当該容器のダスト回収を行い、No6容器でのダスト回収の完了後に、再びNo1容器のダスト回収を行うサイクルを示しているが、ダスト回収を実施する順序はこれに限定されるものではない。本発明に係る乾式電気集塵装置が備える集塵容器8は、ガス流れを遮蔽する遮蔽手段を用いて各々を密閉系とすることができるので、ダスト回収を実施する順序についても任意に設定することができる。
【0036】
また、図5に例示する運転方法では、遮蔽手段を閉塞していない集塵容器8のすべてにおいてダスト捕集を行っているが、必ずしもこれに限定されるものではない。加熱炉、燃焼炉、還元炉、溶解炉、乾燥炉等の工業用炉から排出される排ガスは、工業炉の操業状態に応じてその流量が随時変動するところ、排ガスの流量が減少して装置全体として要求される集塵性能が減少したような場合には、当該減少した集塵性能を満たすだけの集塵容器を稼動させればよい。例えば、図5に例示する運転方法では、1台の集塵容器でダスト回収を行っている場合には残りの5台でダスト捕集を受け持っているが、排ガスの流量が減少して4台分の集塵性能で足りる場合には、当該減少した集塵性能を満たすだけの集塵容器8を稼動させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る乾式電気集塵装置の模式図である。
【図2】本発明に係る乾式電気集塵装置が備える集塵容器の側面断面図である。
【図3】放電極と集塵極の配置図であり、図2のB−B断面図である。
【図4】図2のA方向から見た平面図である。
【図5】本発明に係る乾式電気集塵装置の運転方法を示す模式図である。
【図6】従来技術に係る乾式電気集塵装置の模式図であり、(A)は平面断面図、(B)は側面断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 集塵極 2 放電極
3 高圧直流電源 4 ヘッド碍子室
5 支持碍子室 6 入口集塵本管
7 入口管 8 集塵容器
9 ホッパー 10 整流装置
11 出口管 12 ダンパー
13 出口清浄本管 14 ガス流れ
15 ガスの迂回路 16 移動式カーテン
17 機械式ハンマ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを容器内部に導入する入口管と、
前記排ガス中のダストを帯電させる、容器内部に設けられた放電極と、
帯電したダストを捕集する、容器内部に設けられた集塵極と、
前記集塵極から落下させたダストを回収する、容器底部に設けられたホッパーと、
容器内部で清浄化された排ガスを容器外部に導出する出口管と、
容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段、
を備える集塵容器が複数配置され、
各々の集塵容器が備える入口管が相互に接続され、
各々の集塵容器が備える出口管が相互に接続された乾式電気集塵装置。

【請求項2】
排ガスを容器内部に導入する入口管と、
前記排ガス中のダストを帯電させる、容器内部に設けられた放電極と、
帯電したダストを捕集する、容器内部に設けられた集塵極と、
前記集塵極から落下させたダストを回収する、容器底部に設けられたホッパーと、
容器内部で清浄化された排ガスを容器外部に導出する出口管と、
容器内部に導入するガス流れおよび容器外部に導出するガス流れを遮蔽する遮蔽手段、
を備える集塵容器が複数配置され、
各々の集塵容器が備える入口管が相互に接続され、
各々の集塵容器が備える出口管が相互に接続された乾式電気集塵装置の運転方法であって、
複数配置された集塵容器のいずれかの集塵容器の遮蔽手段を閉塞して当該集塵容器内部に導入するガス流れおよび当該集塵容器外部に導出するガス流れを止めた状態で、当該集塵容器が備える集塵極を槌打して当該集塵極が捕集したダストを落下させ、あらかじめ定めた所定時間の経過後に閉塞していた遮蔽手段を開き、これを複数配置された集塵容器について順次繰り返す乾式電気集塵装置の運転方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−78215(P2009−78215A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248472(P2007−248472)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】