説明

乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置

【課題】洗濯機に併設される乾燥機を改良して、ヒータスクリーン7で濾別されて該ヒータスクリーンの上面に堆積した埃を自動的に清掃する、小形軽量,低コストの装置を提供する。
【解決手段】ヒータスクリーン7の側方にエアー噴射手段15を設置する。該エアー噴射手段は複数個のエアーノズル15bを備えていて、圧縮空気を矢印e、同f、同gのように、ヒータスクリーン7の面に沿わせて放射状に噴射する。上記のエアーノズル15bは拡大詳細図Eに示したように厚肉管で構成され、その先端面に水平溝15eが設けられているので。噴射孔15dから噴出した圧縮空気が水平な扇形に広がって埃を吹き払い、ヒータスクリーン7の全面を清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機等に併設される熱風式の乾燥機において、ヒータに設けられているスクリーンを自動的に清掃する、乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は乾燥機の概要的な断面図である。ただし、構造機能を読み取り易いように模式化して描いてあるので、写実的な投影図ではない。
乾燥機本体1の中に、静止部材である外胴2が設置されるとともに、該外胴に対して同心に、回転部材である内胴3が配設されている。この内胴はパンチングプレートで構成するなどして通気性を持たせてある。
【0003】
前記外胴2は洗濯物4を収納して矢印aのように回転する。ファンモータ5aによって回転駆動されるファン5は、矢印d,bのように乾燥機本体1内の空気を吸入して大気中へ放出する。

これにより乾燥機本体1内が負圧になり、矢印cのようにヒータ6を通過させて大気を吸入する。
吸入された空気は、矢印aのように洗濯物4と一緒に回転した後、リントスクリーン8を通ってファン5に吸い込まれて流動する。
【0004】
矢印cの吸入空気はヒータ6で加熱されて熱風となり、内胴3内で回転流動して洗濯物4を乾燥させる。
乾燥中に上記の洗濯物から発生したリント(綿ぼこり)はリントスクリーン8で捕捉される。
矢印cの吸入空気中の塵埃はヒータスクリーン7で捕捉される。洗濯工場の空気中に浮遊している塵埃は主として綿ぼこりである。
ヒータスクリーンが塵埃で目詰まりすると乾燥能率が低下するので除去しなければならない。
【0005】
洗濯作業にリント(綿ぼこり)はつきものであるから、洗濯機のリント捕捉手段は種々研究されている。特許文献1として挙げた特開2005−312573号公報に記載された発明は、乾燥用の空気が流通するダクト内に水を注入してリントを洗い流し、水流中のリントをリントフィルタで除去している。しかし、リントフィルタに溜まったリントを取り除く方法については、格別の工夫が為されていない。
【0006】
特許文献2として挙げた特開2004−8280号公報に記載された発明は、糸屑フィルタの風路面積を大きくし、斜めに取り付けて風路抵抗を低減することによりリントの堆積を防止しているが、糸屑フィルタの清掃については格別の工夫が為されていない。
【特許文献1】特開2005−312573号公報
【特許文献2】特開2004−8280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前掲の図2に示した乾燥機を稼働させると、ヒータスクリーン7およびリントスクリーン8に綿ぼこりが堆積するので清掃しなければならない。
本図2から容易に推察されるようにリントスクリーン8の清掃は比較的容易であるが、
ヒータスクリーン7は高所に位置しているので、その清掃は容易でない。
このため従来一般に、リントスクリーンの清掃に多大の時間と労力とを費やしている。
【0008】
ヒータスクリーンの清掃を自動的に行わせるため、図3に示した清掃装置が実用化している。
ヒータスクリーン7の側方に、モータ11で駆動される案内・伝動手段10を設け、吸込口9を、ヒータスクリーン7に沿わせてスクレープさせる。
上記吸込口9に吸引ホース12が接続されていて、集塵室14を通して吸引ファン13で吸引される。超大形の家庭用電気掃除機が自動的に操作されるものと考えれば大差は無い。
【0009】
以上に述べた図3の自動清掃装置は大形大重量であり、製造コストが高価である。
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、小形軽量かつ低コストのヒータスクリーン自動清掃装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次の通りである。
ヒータスクリーン7の側方に多数のエアーノズル15bを並べ、矢印e、同f、同gのように圧縮空気を噴射する。
これにより、ヒータスクリーン7に堆積した綿ぼこりは容易に吹き払われる。
【0011】
図3に示した従来例においては、ヒータスクリーン7に堆積した塵埃を吸引ファン13で吸い取って集塵室14に捕集していたが、この塵埃を吹き払った場合、吹き飛ばされた塵埃が何うなるかという問題については、次の理由により懸念に及ばない。
1回の乾燥作業時間は20〜30分間であって、この間に堆積する塵埃の量は僅かである。この僅かな塵埃がヒータスクリーンを目詰まりさせるから問題になるのであるが、乾燥機全体の中では局部的な現象である。
視野を広げて見ると、洗濯工場内の空気には若干の綿ぼこりが浮遊しており、このため工場設備としての空調装置が設けられていて、空気清浄も行われている。
従って、ヒータスクリーンから吹き払われた僅かな綿ぼこりは、工場設備である空調装置の空気清浄機能によって捕捉され、実害を及ぼさない。
【0012】
上述の原理に基づく具体的な構成として請求項1の発明に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置は、
(図2参照)乾燥機本体(1)に対して回転可能に支持された通気性を有する内胴(3)と、該内胴を経て大気を吸入して内胴に通風させるファン(5)と、内胴へ流入する空気を加熱するヒータ(6)と、を具備しており、かつ、上記流入空気を濾過するヒータスクリーン(7)が設けられている乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置において、
(図1参照)前記ヒータスクリーン(7)の空気流入側の面(図において上面)に沿って圧縮空気を噴射するエアー噴射手段(15)が設置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係るヒータスクリーン自動清掃装置の構成は、前記請求項1の発明装置の構成要件に加えて、
(図1参照)前記のエアー噴射手段(15)には、ヒータスクリーン(7)の空気流入側に複数のエアーノズル(15b)が列設されており、
それぞれのエアーノズルは圧縮空気を、ヒータスクリーンの空気流入側の面とほぼ平行に、かつ放射状(矢印e、同f、同g)に噴出させる構造であることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置の構成は、前記請求項1又は請求項2の発明装置の構成要件に加えて、
(図1参照)前記のエアーノズル(15b)は厚肉管状をなし、かつ、先端面に「前記厚肉管の軸心(XーX)に直交する溝(15e)」が設けられ、その溝底面に噴射孔(15d)が開口していることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置の構成は、前記請求項1ないし請求項3の内のいずれかの発明装置の構成要件に加えて、前記のエアーノズル(15b)は、その噴射方向を、ヒータスクリーン(7)の空気流入側の面から遠ざける方向と、ヒータスクリーンの空気流入側の面に近づける方向との間で調節し得る構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置を適用すると、簡単で低コストの構成で、人手を要せずにヒータスクリーンに堆積した埃を吹き払うことができ、労務コストを低減できるのみならず、労働災害の防止にも有効である。
【0017】
請求項2に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置を請求項1の発明装置に併せて適用すると、静止部材であるエアーノズルから放射状に圧縮空気を噴射して、ヒータスクリーンのほぼ全面を清掃することができる。機械的に動く構造でないため、騒音,振動を発生することがなく、圧縮空気を供給するだけで、その他のエネルギーを消費しない。
【0018】
請求項3に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置を請求項1又は請求項2の発明装置に併せて適用すると、簡単な構造のノズルを動かすことなく、ヒータスクリーンの面に沿った放射状の噴出空気流を発生させることができる。
【0019】
請求項4に係る乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置を請求項1ないし請求項3の発明装置に併せて適用すると、ヒータスクリーンのスクリーンエレメントの種類や広さ、および堆積する埃の性状に応じて圧縮空気流を適正な方向に噴射して、有効な清掃を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明に係るヒータスクリーン自動清掃装置の1実施形態を示す模式的な外観斜視図にエアーノズルの詳細拡大図を付記してある。
この図は最も一般的なヒータを描いてあり、ヒータスクリーンの空気流入側の面は水平である。以下、特に断らない限り、本図1に描かれている状態で上下・水平,傾斜を呼称する。
ヒータスクリーン7の縁に沿ってエアー噴射手段15が設置され、エアー供給管15cによって圧縮空気を供給されている。本実施形態では、0.5〜0.6MPaの圧縮空気を用いた。
【0021】
このエアー噴射手段は、多岐管15aに複数の(本例では5個の)エアーノズル15bが装着されていて、それぞれのエアーノズルは矢印e、矢印f、矢印gのように放射状に空気流を噴射する。上記の矢印e、矢印f、矢印gは、それぞれ、ほぼ水平である。すなわち、ヒータスクリーン7の面に対して、ほぼ平行に噴射する。上記の「ほぼ」については、後に(段落番号0021で)詳細を説明する。
なお、前掲の図2に描かれているように、ヒータスクリーン7の上面は空気の流入側、下面は流出側である。従ってヒータスクリーンで捕捉された塵埃は上面(空気の流入側)に堆積する。このため図1に示したように、本発明のエアー噴射手段15はヒータスクリーン7の空気流入側に設ける。
【0022】
円形の鎖線Eで囲んだ部分は、前記複数個のエアーノズル15bの内の1個を拡大して部分的に破断して描いた斜視図である。
X軸はこのエアーノズル15bの中心線で、本例においては水平である。Yは、X軸に直交する水平軸、Zは垂直軸である。
エアーノズル15bは厚肉の管状をなし、その先端面にY軸方向の水平溝15eが削成されている。その結果、噴射孔15dは上記水平溝の溝底に開口している。
本発明において厚肉管とは、横断面における中心孔の面積が全面積の1/2以下である管をいう。
【0023】
上述のようなエアーノズル15bを用いると、前記矢印e、矢印f、矢印gの放射状の噴出空気流が得られる。
このように、エアーノズルに首振り運動をさせないで、水平な放射状の噴射を行わせることができるので、非常に好適である
【0024】
上述のごとく、エアーノズル15bはヒータスクリーン7の空気流入側の面に平行に、すなわち水平に設置されているのが基本的な構成であるが、上記と異なる実施形態として、前記エアー噴射手段15の多岐管15aをY軸周りに回動可能に構成し、矢印e、矢印f、矢印gの放射状噴出空気流の方向を若干上下に調節し得るように構成しておくことが望ましい。本発明において「ヒータスクリーン面とほぼ平行に」とは、「基本的にはヒータスクリーンの空気流入面と平行であり、調節可能」という意味である。
調節可能な角度範囲は、上向きに15度、下向きに30度が適当である。このように構成しておくと、ヒータスクリーンの様式や広さ、および埃の量や性状に応じて、最も効率的な噴射方向に調節することができる。
【0025】
図1を参照して以上に説明したところは、ヒータスクリーンの空気流入側の面が水平な場合である。しかし、ヒータスクリーンの空気流入側の面は必ずしも水平であるとは限らないので、該ヒータスクリーン面が傾斜している場合の応用例について説明する。
本発明におけるエアーノズルの姿勢は、ヒータスクリーンを基準として定められる。従って、ヒータスクリーン面が傾斜している場合は、本図1に示したX軸を、ヒータスクリーンに合わせて傾斜させる。
【0026】
この場合、図に示したX軸はヒータスクリーンの空気流入側の面に平行な座標軸に対して平行であり、Z軸はヒータスクリーン面に垂直な座標軸である。Y軸は、X軸およびZ軸に直交する座標軸である。
このようにヒータスクリーンが傾斜している場合について考えると、エアーノズルの噴射方向を上下に調節するという意味は、噴射方向をヒータスクリーンの空気流入側の面に対して近づけ、もしくは遠ざけることである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る「乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置」の1実施形態を示す、部分的に破断して描かれたエアーノズルの拡大詳細斜視図を付記した模式的な外観斜視図
【図2】洗濯機に併設される乾燥機の1例を示し、空気の流路を付記した模式的な断面図
【図3】乾燥機のヒータに流入する空気を濾過するヒータスクリーンを清掃する装置の従来例を描いた斜視図
【符号の説明】
【0028】
1…乾燥機本体
2…外胴
3…内胴
4…洗濯物
5…ファン
6…ヒータ
7…ヒータスクリーン
8…リントスクリーン
9…吸込口
10…案内・伝動手段
11…モータ
12…吸引ホース
13…吸引ファン
14…集塵室
15…エアー噴射手段
15a…多岐管
15b…エアーノズル
15c…エアー供給管
15d…噴射孔
15e…水平溝





【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体に設けられた内胴と、前記乾燥機本体を経てて大気を吸入し、前記の内胴に通風させるファンと、該内胴へ流入する空気を加熱するヒータとを具備しており、かつ、上記のヒータには空気を濾過するヒータスクリーンが設けられている乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置であって、
前記ヒータスクリーンの空気流入側の面に沿わせて空気を噴射するエアー噴射手段が設けられていることを特徴とする、乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置。
【請求項2】
前記のエアー噴射手段は、ヒータスクリーンの空気流入側に複数のエアーノズルが列設されており、
それぞれのエアーノズルは、圧縮空気を、ヒータスクリーンの空気流入側の面とほぼ平行に、かつ放射状に噴出させる構造であることを特徴とする、請求項1に記載した乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置。
【請求項3】
前記のエアーノズルは厚肉管からなり、かつ、先端面に「前記厚肉管の軸心に直交する溝」が設けられ、その溝の底面に噴射孔が開口していることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載した乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置。
【請求項4】
前記のエアー噴射手段は、その噴射方向を、ヒータスクリーンの空気流入側の面から遠ざける方向と、ヒータスクリーンの空気流入側の面に近づける方向との間で調節し得る機構であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載した乾燥機のヒータスクリーン自動清掃装置。























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−275116(P2007−275116A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101963(P2006−101963)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】