説明

乾燥3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の製造方法

【課題】安定して運転ができる乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を製造する方法を提供する。
【解決手段】溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を間接的に加熱し乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を製造する方法であって、特定の部分を有し特定の条件を満たす乾燥機を用い、溶媒の沸点(℃)〜190℃の温度範囲の加熱用媒体を加熱部に通す事を特徴とする、乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(スピログリコール又はSPGと略す。)粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥SPG粉体を製造する際に、従来は溶媒で湿潤されたSPG粉体の投入口と、乾燥SPG粉体の排出口と、軸を中心として回転する攪拌翼と、乾燥機の外壁にジャケットを有する乾燥機を用い、ジャケットに加熱用媒体を通して間接的に加熱していた(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、攪拌翼によって粉体が捏ねられることで攪拌翼などに付着が起こり、付着を取り除く為に装置を停止させる必要があった。
【特許文献1】特開2003−55383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の課題を解決し安定して運転ができる乾燥SPG粉体を製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような問題点を解決すべく鋭意検討した結果、乾燥機の内部に位置する、加熱用媒体を通す加熱部を有する乾燥機を用い、乾燥機外筒部および加熱部を回転させることにより溶媒で湿潤されたSPG粉体の撹拌および/または投入口から搬出口への搬送を行うことにより長期間安定して運転ができる事を見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明は即ち、溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を間接的に加熱し乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を製造する方法であって、下記の(1)〜(3)および乾燥機外筒部を有し条件(4)を満たす乾燥機を用い、溶媒の沸点(℃)〜190℃の温度範囲の加熱用媒体を加熱部に通す事を特徴とする、乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の製造方法に関するものである。
(1)溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の投入口
(2)乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の排出口
(3)乾燥機の内部に位置する、加熱用媒体を通す加熱部
(4)乾燥機外筒部および加熱部を回転させることにより溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の撹拌および/または投入口から排出口への搬送を行う
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乾燥機内部に形成されるスケーリングが抑制され、攪拌翼などに付着がなく長期間安定して乾燥SPG粉体を効率的に製造する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、溶媒で湿潤されたSPG粉体を間接的に加熱し乾燥SPG粉体を製造する方法であり、溶媒で湿潤されたSPG粉体は、例えばヒドロキシピバルアルデヒドとペンタエリスリトールとを酸触媒下、水溶液中でアセタール化反応させて合成され、アルカリで中和後、反応中に析出したスピログリコールの結晶をろ過、水洗の工程を経て得られる(特開昭59−148776号公報参照)。また、スピログリコールをアルコールによって再結晶操作を行い、結晶をろ過、洗浄することで得られる(特開2000-7678号公報)。乾燥に用いるスピログリコールは5〜40重量%の範囲で湿潤したものが用いられる。
【0009】
本発明において用いられる乾燥機は下記の(1)〜(3)および乾燥機外筒部を有する。
(1)溶媒で湿潤されたSPG粉体の投入口
(2)乾燥SPG粉体の排出口
(3)乾燥機の内部に位置する、加熱用媒体を通す加熱部
本発明において用いられる好ましい乾燥機としては、例えば、図1または図2記載のように、乾燥機外筒部1の内部に位置する、加熱用媒体を通す加熱部4を有しており、湿潤されたSPG粉体の投入口2は乾燥機の側面又は上部に設けられているものが挙げられる。また、乾燥SPG粉体の排出口3は乾燥機の下部に設けられているものが好ましい。
加熱用媒体を通す加熱部は加熱用媒体を通すため内部が空洞の構造であり、通常管状のものがもちいられ、また、外形の断面形状は通常円形である。
【0010】
本発明において用いられる乾燥機は条件(4)を満たす。
(4)乾燥機外筒部および加熱部を回転させることにより溶媒で湿潤されたSPG粉体の撹拌および/または投入口から排出口への搬送を行う
SPG粉体の撹拌および/または投入口から排出口への搬送の手段としては、乾燥機外筒部および加熱部を回転させる。乾燥機外筒部および加熱部は接続されており一体化して同時に回転させる。この際乾燥機内壁にはピンや板などを設けて、SPG粉体が十分に混合されるようにすることも可能である。
回転速度は、乾燥機外筒部が湿潤されたSPG粉体と接触する部分の周速度が10〜30m/分となる回転速度が好ましい。さらに好ましくは15−25m/分である。これよりも遅いと粉体が十分攪拌されず、乾燥効率が悪化する。また、これよりも早いと加熱部への接触が不十分となりやはり乾燥効率が悪化する。
【0011】
本発明において用いられる乾燥機は、乾燥中に湿潤されたSPG粉体中から蒸発した水、親水性および/または疎水性有機溶媒などの溶媒を凝縮させるコンデンサー6を有していてもよく、更にコンデンサーで凝縮されない溶媒蒸気を排気する排気口5や真空ポンプを有しても良い。また、SPG粉体が溶媒蒸気中に同伴される場合には排気口にスクラバーやサイクロンなどのSPG粉体捕集装置を設けても良い。この際必要であれば、捕集装置までの配管を排気ガスが濃縮しないようにスチームトレース等によって保温することも可能である。
【0012】
乾燥の効率を上げるためや、粉体の流動の補助的な役割として乾燥機内にガスを通気又は循環させても良い。ガスは例えば、図1に記載のように、ブロアー7により循環される。通気又は循環されるガスとしては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、及び二酸化炭素などが挙げられるが、乾燥SPG粉体の物性やガスの入手の容易さなどから窒素が特に好ましい。
【0013】
乾燥の際に乾燥機内を減圧としてもよい。圧力に特に制限は無いが、湿潤粉体中に有機溶媒を含む場合は揮発した溶媒を溶媒回収装置、たとえばコンデンサーにて十分に回収できる程度の圧力とすることが好ましい。
【0014】
本発明において、加熱部へ通す加熱用媒体の温度は、乾燥機の運転圧力における、投入口に投入される湿潤粉体に含まれる溶媒の沸点以上、乾燥SPGの融点未満、好ましくは溶媒の沸点+15℃以上190℃以下である。加熱用媒体としては、水、シリコーンオイルなどの液体、高圧水蒸気などの気体などが挙げられ、中でも高圧水蒸気が好ましく用いられる。高圧水蒸気の圧力と温度は、例えば0.2MPaで約120℃、0.5MPaで約150℃、1.3MPaで約190℃である。
【0015】
本発明における溶媒の沸点とは、乾燥機の運転圧力における、共沸組成を有しない複数の溶媒では複数の溶媒の中で最も高い沸点を有する溶媒の沸点(℃)とし、共沸組成を有する複数の溶媒で湿潤されるときには、複数の溶媒の中で最も高い沸点を有する溶媒の沸点と複数の溶媒における共沸点とを比較して高い方の温度を溶媒の沸点(℃)とする。
例えば、メタノールと水で湿潤されている場合で、大気圧下で乾燥機を運転する場合は、共沸組成を有しないため、メタノールよりも高沸点である水の沸点の100℃(大気圧下)を沸点とする。また、トルエンと水で湿潤されている場合、これ等の溶媒は共沸組成を有し(共沸点は大気圧下85℃)、トルエン及び水の沸点がそれぞれ110℃及び100℃(大気圧下)であるので、これらのうちで最も高温である110℃を沸点とする。
乾燥の際に乾燥機内を減圧した際には、その減圧下における溶媒の沸点以上190℃以下であり、好ましくは、その減圧下における溶媒の沸点+15℃以上190℃以下である。
【0016】
溶媒の凝縮が起こることを防ぐため乾燥機の外壁面は保温材などで溶媒の沸点以上に保温することが好ましい。溶媒の沸点や凝縮のしやすさなどによっては、スチームトレース等の保温用媒体を通すことの出来る保温用装置や、電気ヒーターなどを設けることも可能である。
本発明の乾燥SPGの製造方法により、溶媒含有量0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下の乾燥SPGを製造できる。
【実施例】
【0017】
次に本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
<水で湿潤されたSPG粉体の合成方法>
<HPAの合成>
イソブチルアルデヒド(以下、IBALと称する)595kgと37重量%ホルマリン657kgを、40℃、窒素気流下で攪拌しながら、トリエチルアミン(以下、TEAと称する)33kgを5分間かけて加えた。TEA添加終了時、反応液温度は65℃に達した。ここから、反応液温度を徐々に上げ、30分後には90℃に達した。90℃で5分間反応を継続させた後、外部冷却によって、60℃まで冷却し、反応を停止させた。
続いて、60〜70℃、圧力53kPaで、未反応のIBAL、TEA、メタノール等の低沸留分を留去した。この低沸留分留去後の反応生成液(以下、粗HPAと称する)を、GCを用いて組成分析した結果、HPA62.4重量%、IBAL0.26重量%、ホルムアルデヒド2.4重量%、TEA0.31重量%、ネオペンチルグリコール0.64重量%、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノエステル2.0重量%、イソ酪酸ネオペンチルグリコールモノエステル0.18重量%および水28.5重量%であった。
<SPG合成反応>
水600kgにPE49kg溶解し、35重量%塩酸5kg添加した。ここに上記で得られた粗HPA147kgを3.5時間かけて滴下した。このとき反応開始前の反応液のpH値は1.5であり、反応温度は90℃であった。滴下終了後90℃のまま3時間熟成した。熟成終了時の反応液スラリーのSPG濃度は15.0重量%であった。熟成終了後、反応液を固液分離後、水にて洗浄し、水で湿潤されたSPG粉体(水分15重量%)97kgを得た。
【0019】
<実施例1>
図1記載の乾燥機を用いて、上記の、水で湿潤されたSPG粉体を以下の条件で乾燥した。
・湿潤されたSPG粉体の投入速度(投入量/時・加熱部の表面積):9kg/h・m2
・乾燥機外筒部が湿潤されたSPG粉体と接触する部分の周速度:17m/分
・通気ガス:窒素(5.5Nm3/h)
・圧力:常圧(大気圧)
・加熱用媒体:加熱水蒸気(140℃、0.4MPa)
上記条件で湿潤されたSPG粉体を乾燥した結果、スケーリングが抑制され、水分が0.1重量%以下の乾燥SPGを得る事ができた。仕込んだPEに対するSPGの収率は75モル%であり、GCを用いて分析した結果、この結晶の純度は99.2重量%であった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例で用いた乾燥機の概略図
【図2】乾燥機例の概略図
【符号の説明】
【0021】
1:乾燥機外筒部
2:粉体投入口
3:粉体排出口
4:加熱部
5:排気口
6:コンデンサー
7:ブロアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を間接的に加熱し乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体を製造する方法であって、下記の(1)〜(3)および乾燥機外筒部を有し条件(4)を満たす乾燥機を用い、溶媒の沸点(℃)〜190℃の温度範囲の加熱用媒体を加熱部に通す事を特徴とする、乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の製造方法。
(1)溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の投入口
(2)乾燥3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の排出口
(3)乾燥機の内部に位置する、加熱用媒体を通す加熱部
(4)乾燥機外筒部および加熱部を回転させることにより溶媒で湿潤された3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン粉体の撹拌および/または投入口から排出口への搬送を行う
【請求項2】
加熱用媒体が溶媒の沸点よりも15℃以上高い温度である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
気流を通気または循環させながら、乾燥する請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
乾燥機の外壁面を溶媒の沸点以上で保温する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
減圧下で乾燥する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−156234(P2008−156234A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343128(P2006−343128)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】