説明

予備苗台及びそれを備えた苗移植機

【課題】 周囲の状況に応じて使い勝手を優先した展開状態と、スペース効率を優先した収納状態とを適宜切り換えることができるようにする。
【解決手段】 本発明の予備苗台1は、固定側予備苗搭載部2と、可動側予備苗搭載部3とを備えている。固定側予備苗搭載部2は、固定側フレーム21と、固定側フレーム21に上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の固定側受け台22とを備えている。可動側予備苗搭載部3は、固定側予備苗搭載部2に対して移動可能に支持された可動側フレーム31と、該可動側フレーム31に上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の可動側受け台32とを備えている。可動側フレーム31は、固定側予備苗搭載部2の側方に位置する展開状態と該展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置する収納状態との間で移動可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備苗台及びそれを備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の予備苗台及びそれを備えた苗移植機としては、特許文献1に記載されたものを例示する。この苗移植機は、走行車体の後側に苗植付部を装着して設け、走行車体前部のフロントカバ−の左右両側方に予備苗台51を設置してある。そして、前記フロントカバ−は前端側へいくにつれて左右幅が狭くなるように構成し、図8に示すように、フロントカバ−前部の左右側方に予備苗台51の回動支点軸52を配置し、予備苗台51が標準位置で機体前端より後側に納まり、前方へ回動すると機体前端より突出するように設け、予備苗台51の360度回動軌跡の外側にフロントカバ−が位置する構成としてある。予備苗台には、上下方向に3つの受け台53が列設されており、該3つの受け台53が一体的に回動するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−192462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の苗移植機における予備苗台51は、回動支点軸52を中心に全体が一体的に回動するように構成されているので、苗箱の積載可能数を増やすために受け台53の設置台数を増加する場合に、次の課題がある。
(1)受け台53の上下方向の段数を多くすると、上側の受け台53の設置位置が高くなってしまったり、受け台53同士の間隔が狭くなってしまったりし、苗箱の出し入れがし難くなる。
(2)受け台53の左右方向の配設列数を2以上にすると、予備苗台51の回動のために必要なスペースが大きくなり、機体への設置が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の予備苗台は、固定側予備苗搭載部と、該固定側予備苗搭載部に対して移動可能に支持された可動側予備苗搭載部とを備え、該両予備苗搭載部の各受け台に苗箱が載置されるように構成された予備苗台であって、
前記固定側予備苗搭載部は、苗移植機の機体に取り付けられる固定側フレームと、前記固定側フレームに上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の固定側受け台とを備え、
前記可動側予備苗搭載部は、前記固定側予備苗搭載部に対して移動可能に前記機体又は前記固定側フレームに支持された可動側フレームと、該可動側フレームに上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の可動側受け台とを備え、
前記可動側フレームには、前記固定側予備苗搭載部の側方に位置する展開状態と該展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置する収納状態との間で移動可能に支持されるとともに、該収納状態において前記可動側受け台の少なくとも一部分が前記固定側受け台同士の間に進入しているように前記可動側受け台が列設されている。
【0006】
この構成によれば、前記展開状態においては、前記可動側予備苗搭載部が前記固定側予備苗搭載部の側方に位置するので、予備苗台全体の占有スペースが増大するが、各固定側受け台及び各可動側受け台の上方のスペースが広くなり、予備の苗箱の出し入れがし易くなる。これに対し、前記収納状態においては、前記可動側予備苗搭載部が展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置するとともに、前記可動側受け台の少なくとも一部分が前記固定側受け台同士の間に進入している状態となるので、各固定側受け台及び各可動側受け台の上方のスペースが狭くなるが、予備苗台全体の占有スペースが減少する。また、前記展開状態と前記収納状態との状態遷移時には、可動側予備苗搭載部だけが移動するので、該状態遷移のために必要なスペースは従来と同程度で済む。このように、予備の苗箱の積載可能数を多めにとることができ、周囲の状況に応じて使い勝手を優先した展開状態と、スペース効率を優先した収納状態とを適宜切り換えることができる。
【0007】
前記可動側フレームとしては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記固定側予備苗台搭載部と前記可動側予備苗台搭載部との間における前記機体又は前記固定側フレームに支持された垂直軸を中心に回動移動自在に支持された態様。
(2)前記機体又は前記固定側フレームに設けられた略横方向に延びるスライド手段により略横方向にスライド移動自在に支持された態様。
【0008】
また、本発明の苗移植機は、いずれかの態様の前記予備苗台を備えている。
【0009】
この構成によっても、前記予備苗台と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る予備苗台及びそれを備えた苗移植機によれば、予備の苗箱の積載可能数を多めにとることができ、周囲の状況に応じて使い勝手を優先した展開状態と、スペース効率を優先した収納状態とを適宜切り換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図7は本発明を具体化した一実施形態の予備苗台1及びそれを備えた苗移植機10を示している。この苗移植機10は、乗用型であり、図1及び図5に示すように走行車輪としての左右一対の前輪11及び左右一対の後輪12と、該走行車輪により圃場を走行可能に支持された機体13と、該機体13の後部に設けられた苗移植装置14とを備えている。機体13の前部には操縦ハンドル等を含む操縦装置15が設けられ、該操縦装置15の後側には運転席16が設けられている。運転席16の後側における機体13の両側部には、それぞれ予備苗台1が配設されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0012】
予備苗台1は、図1〜図7に示すように、苗移植装置14に供給するための予備の苗箱Bを積載しておくためのものであり、固定側予備苗搭載部2と、該固定側予備苗搭載部2に対して移動可能に支持された可動側予備苗搭載部3とを備えている。
【0013】
固定側予備苗搭載部2は、機体13に取り付けられる固定側フレーム21と、固定側フレーム21に上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の固定側受け台22とを備えている。固定側フレーム21には、垂直軸支持穴23、展開状態用固定穴24及び収納状態用固定穴25が設けられている。固定側フレーム21は、機体13から側方へ突設された横フレーム17に支持されている。この横フレーム17は、側方への突出長さを調節可能に構成されており、これにより固定側フレーム21の横方向における配設位置を調節可能にしている。
【0014】
可動側予備苗搭載部3は、固定側予備苗搭載部2に対して移動可能に固定側フレーム21に支持された可動側フレーム31と、該可動側フレーム31に上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の可動側受け台32とを備えている。可動側フレーム31には、垂直軸支持穴23、展開状態用固定穴24及び収納状態用固定穴25にそれぞれ挿入可能に下方へ突設された垂直軸33、展開状態用固定ピン34及び収納状態用固定ピン35が設けられている。可動側フレーム31は、その垂直軸33が固定側フレーム21の垂直軸支持穴23に上下スライド可能かつ回動自在に上から挿入されることにより、固定側予備苗搭載部2の側方に位置する展開状態(図1〜図4参照)と該展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置する収納状態(図5〜図7参照)との間で移動可能に支持されるとともに、該収納状態において可動側受け台32の少なくとも一部分が固定側受け台22同士の間に進入しているように可動側受け台32が列設されている。展開状態用固定ピン34又は収納状態用固定ピン35をそれぞれ展開状態用固定穴24又は収納状態用固定穴25に挿入するために可動側フレーム31を上方に持ち上げたときに、垂直軸33が垂直軸支持穴23から抜けないように、垂直軸33は、展開状態用固定ピン34及び収納状態用固定ピン35よりも長く形成されている。
【0015】
次に、本例の予備苗台1の操作方法について説明する。例えば、図1〜図4に示す展開状態から図5〜図7に示す収納状態に変更し、所定の収納スペースS(例えば運搬用トラックの荷台)内に格納可能にする場合、まず、可動側フレーム31を持ち上げることにより、展開状態用固定穴24から展開状態用固定ピン34を抜き、垂直軸33を中心に、図3に二点鎖線で示す矢印方向へ可動側フレーム31を回動させる。次いで、可動側フレーム31を図7に示す状態まで回動させ、可動側フレーム31を降ろすことにより、収納状態用固定穴25に収納状態用固定ピン35を挿入する。そして、図5に示すように適宜横フレーム17の突出長さを短く調節すると、状態の変更が完了する。なお、以上の操作を逆に行うと、収納状態から展開状態に変更することができる。
【0016】
以上のように構成された本例の予備苗台1及びそれを備えた苗移植機10によれば、展開状態においては、可動側予備苗搭載部3が固定側予備苗搭載部2の側方に位置するので、予備苗台1全体の占有スペースが増大するが、各固定側受け台22及び各可動側受け台32の上方のスペースが広くなり、予備の苗箱Bの出し入れがし易くなる。これに対し、収納状態においては、可動側予備苗搭載部3が展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置するとともに、可動側受け台32の一部分が固定側受け台22同士の間に進入している状態となるので、各固定側受け台22及び各可動側受け台32の上方のスペースが狭くなるが、予備苗台1全体の占有スペースが減少する。また、展開状態と収納状態との状態遷移時には、可動側予備苗搭載部3だけが移動するので、該状態遷移のために必要なスペースは従来と同程度で済む。このように、予備の苗箱Bの積載可能数を多めにとることができ、周囲の状況に応じて使い勝手を優先した展開状態と、スペース効率を優先した収納状態とを適宜切り換えることができる。
【0017】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)可動側フレーム31は、機体13又は固定側フレーム21に設けられた略横方向に延びるスライド手段により略横方向にスライド移動自在に支持された態様とすること。
(2)苗移植機10に対する予備苗台1の配設位置や配設台数を適宜変更すること。
(3)固定側予備苗搭載部2や、可動側予備苗搭載部3に設けられた固定側受け台22や、可動側受け台32の配設位置、配設数、配設列数等をそれぞれ適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る予備苗台(展開状態)を備えた苗移植機を示す平面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1のIV矢視図である。
【図5】同予備苗台(収納状態)を備えた苗移植機を示す平面図である。
【図6】図5のVI矢視図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】従来の移植機における予備苗台を示す平面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 予備苗台
2 固定側予備苗搭載部
3 可動側予備苗搭載部
10 苗移植機
13 機体
14 苗移植装置
17 横フレーム
21 固定側フレーム
22 固定側受け台
23 垂直軸支持穴
24 展開状態用固定穴
25 収納状態用固定穴
31 可動側フレーム
32 可動側受け台
33 垂直軸
34 展開状態用固定ピン
35 収納状態用固定ピン
B 苗箱
S 収納スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側予備苗搭載部と、該固定側予備苗搭載部に対して移動可能に支持された可動側予備苗搭載部とを備え、該両予備苗搭載部の各受け台に苗箱が載置されるように構成された予備苗台であって、
前記固定側予備苗搭載部は、苗移植機の機体に取り付けられる固定側フレームと、前記固定側フレームに上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の固定側受け台とを備え、
前記可動側予備苗搭載部は、前記固定側予備苗搭載部に対して移動可能に前記機体又は前記固定側フレームに支持された可動側フレームと、該可動側フレームに上下方向へ互いに間隔をおいて列設された複数の可動側受け台とを備え、
前記可動側フレームには、前記固定側予備苗搭載部の側方に位置する展開状態と該展開状態よりも相対的に該固定側予備苗搭載部側に位置する収納状態との間で移動可能に支持されるとともに、該収納状態において前記可動側受け台の少なくとも一部分が前記固定側受け台同士の間に進入しているように前記可動側受け台が列設された予備苗台。
【請求項2】
前記可動側フレームは、前記固定側予備苗台搭載部と前記可動側予備苗台搭載部との間における前記機体又は前記固定側フレームに支持された垂直軸を中心に回動移動自在に支持された請求項1記載の予備苗台。
【請求項3】
前記可動側フレームは、前記機体又は前記固定側フレームに設けられた略横方向に延びるスライド手段により略横方向にスライド移動自在に支持された請求項1記載の予備苗台。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の予備苗台を備えた苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−271926(P2008−271926A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122516(P2007−122516)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】