説明

二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法

【課題】600℃未満の焼成温度での焼成でも、600℃以上の焼成温度で得られたものと同様かそれ以上の超伝導特性を有する二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法を提供する。
【解決手段】マグネシウムに対して0.9〜25mol%の銀を添加して混合粉末とし、焼成温度を600℃未満とする二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法。
【効果】得られた二ホウ化マグネシウム超伝導体は、550℃あるいは500℃での焼成により、臨界温度が36K以上、20K、低磁場での臨界電流密度が2×10A/cm以上の超伝導特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マグネシウムとホウ素の混合粉末を焼成して二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来法では、MgとBを十分に反応させてMgBを生成するのに600度以上の熱処理温度が必要であったが、600度以上ではMgBの結晶粒が粗大化するのに加えて高温であるために熱処理のコストがかさむという問題点があり、より低温での熱処理が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、600℃未満の焼成温度での焼成でも、600℃以上の焼成温度で得られたものと同様かそれ以上の超伝導特性を有する二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法は、マグネシウムに対して0.9〜25mol%の銀を添加して混合粉末とし、焼成温度を600℃未満としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明により得られた二ホウ化マグネシウム超伝導体は、550℃あるいは500℃での焼成によっても、臨界温度は36K以上、20K、低磁場での臨界電流密度も2x 10A/cm以上という良好な超伝導特性を有するに至った。
また、線材化のためには、MgBと金属とを複合化する必要があるが、低温での熱処理が可能となったことで、従来では使用出来なかったMgやBと反応しやすい金属(例えば、銅、銅−ニッケル合金、アルミニウム)も複合金属材(シース材)として使用することが可能となり、MgB線材の性能向上、低コスト化に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
【実施例】
【0007】
マグネシウム、ホウ素、銀をモル比で、1.1+x:2:xの比で混合した粉末を、ステンレス管に充填し、両端を封じた後、石英管に真空封入して、表1に示すように500°Cおよび550°Cで72時間、焼成を行った。このとき、銀添加量xは0〜0.1の範囲で変えた。得られたバルク試料について二ホウ化マグネシウム相生成の様子を粉末X線回折で調べた結果を図1および図2に示す。
図1は550°Cで72時間焼成した試料のX線回折パターンで、銀を添加しないx=0の試料では二ホウ化マグネシウム相がほとんど生成していないのに対し、x=0.02の試料では原料マグネシウムの回折ピークが消え、二ホウ化マグネシウム相が主相となった。さらに銀の添加量を増やした試料でも二ホウ化マグネシウム相が主相でマグネシウム−銀合金相の生成量が増すことがわかった。
図2は500°Cで72時間焼成した試料のX線回折パターンを示した。x= 0.05の試料では二ホウ化マグネシウム相が主相として生成しており、従来より100°C低い焼成温度でも焼成時間の延長によって二ホウ化マグネシウムが生成することを示す初めての結果である。図3はこれら低温で焼成した試料の磁化率の温度依存性であるが、二ホウ化マグネシウムが主相となった試料の臨界温度は36K以上と十分に高く、また、表1に示すとおり、20 K、低磁場での臨界電流密度も2 x 10A/cm以上と十分高いことがわかった。
【0008】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明による二ホウ化マグネシウム超伝導体は、既に3 km以上の長さの線材が開発されており、今後これを用いての、医療用磁気共鳴診断装置(MRI)や磁気浮上列車用の超伝導電磁石としての実用が期待されているほか、限流器、変圧器などに応用できる可能性を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実験No.1から6による二ホウ化マグネシウムバルクの粉末のX線回折パターンを示すグラフ。
【図2】実験No.9、10による二ホウ化マグネシウムバルクの粉末のX線回折パターンを示すグラフ。
【図3】実験No.1から6による二ホウ化マグネシウムの磁化率の温度依存性を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムとホウ素の混合粉末を焼成して二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法であって、マグネシウムに対して0.9〜25mol%の銀を添加して混合粉末とし、焼成温度を600℃未満としたことを特徴とする二ホウ化マグネシウム超伝導体の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−120659(P2008−120659A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309780(P2006−309780)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】