説明

二元冷凍装置

【課題】低圧力比となる運転条件の場合でも単元運転に切り替える必要のない簡単な構成で、低元側冷凍サイクルの圧力比と高元側冷凍サイクルの圧力比を適正範囲に維持した運転が可能となる二元冷凍装置を得る。
【解決手段】二元冷凍装置は、低元側圧縮機2、カスケード熱交換器9、低元側膨張弁5、低元側熱交換器6を有する低元側冷凍サイクルと、高元側圧縮機11、高元側熱交換器13、高元側膨張弁14、前記カスケード熱交換器を有する高元側冷凍サイクルとが、前記カスケード熱交換器を介して熱的に接続されて構成されている。また、前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の出口温度の設定値から前記カスケード熱交換器における目標中間温度を設定し、この目標中間温度になるように前記低元側圧縮機を制御する制御手段50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低元側冷凍サイクルと高元側冷凍サイクルを有する二元冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二元冷凍装置としては特開2000−274848号公報(特許文献1)に記載されているものなどがある。
【0003】
この特許文献1のものには、1次側冷媒回路(低元側冷凍サイクル)と2次側冷媒回路(高元側冷凍サイクル)とが冷媒熱交換器(カスケード熱交換器)を介して接続された二元冷凍装置において、二元の冷凍サイクル動作と単元の冷凍サイクル動作とを切り換える切換手段を備えているものである。そして、この引用文献1のものでは、外気に応じて、低圧力比となる運転条件の場合には、単元運転へ切替えて運転することで省エネルギ性を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−274848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のものでは、単元運転と二元運転を切替えることができるようにしているが、二元運転から単元運転に切替えた場合、一方の圧縮機を止めなければならず、その圧縮機の停止時には、冷凍サイクルの冷媒の挙動が大きく変化し、運転が乱れるという課題がある。
【0006】
また、単元運転と二元運転を切替えるため、2次側冷媒回路は、二元運転時と単元運転時とでは、適正な冷媒量が異なり、単元運転時にのみ使用される冷媒配管や熱交換器に溜まる冷媒量の調節が必要となる。更に、2次側冷媒回路は、二元運転時用と単元運転時用の2系統の冷媒配管と熱交換器が必要となり、必要となる熱交換器全体の容積や冷媒配管長も大きくなり、大形化するという課題もある。
【0007】
本発明の目的は、低圧力比となる運転条件の場合でも単元運転に切り替える必要のない簡単な構成で、低元側冷凍サイクルの圧力比と高元側冷凍サイクルの圧力比を適正範囲に維持した運転が可能となる二元冷凍装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、低元側圧縮機、カスケード熱交換器、低元側膨張弁、低元側熱交換器を有する低元側冷凍サイクルと、高元側圧縮機、高元側熱交換器、高元側膨張弁、前記カスケード熱交換器を有する高元側冷凍サイクルとが、前記カスケード熱交換器を介して熱的に接続されて構成されている二元冷凍装置において、前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の出口温度の設定値から前記カスケード熱交換器における目標中間温度を設定し、この目標中間温度になるように前記低元側圧縮機を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の特徴は、低元側圧縮機、カスケード熱交換器、低元側膨張弁、低元側熱交換器を有する低元側冷凍サイクルと、高元側圧縮機、高元側熱交換器、高元側膨張弁、前記カスケード熱交換器を有する高元側冷凍サイクルとが、前記カスケード熱交換器を介して熱的に接続されて構成されている二元冷凍装置において、前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の入口温度を検知する媒体入口温度検知器を設け、この媒体入口温度検知器で検知された媒体入口温度から前記カスケード熱交換器における目標中間温度を設定し、この目標中間温度になるように前記低元側圧縮機を制御する制御手段を備えることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低圧力比となる運転条件の場合でも単元運転に切り替える必要のない簡単な構成で、低元側冷凍サイクルの圧力比と高元側冷凍サイクルの圧力比を適正範囲に維持した運転が可能となる二元冷凍装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の二元冷凍装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図。
【図2】実施例1における高元側圧縮機の制御を説明するフローチャート。
【図3】実施例1における低元側圧縮機の制御を説明するフローチャート。
【図4】実施例1における高元側膨張弁の制御を説明するフローチャート。
【図5】高元側熱交換器媒体出口温度の設定値と、目標中間温度設定値との適正な関係を示す線図。
【図6】本発明の二元冷凍装置の実施例2を示す冷凍サイクル構成図。
【図7】高元側熱交換器媒体入口温度と、目標中間温度設定値との適正な関係を示す線図。
【図8】実施例2における低元側圧縮機の制御を説明するフローチャート。
【図9】実施例2における高元側圧縮機の制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の二元冷凍装置の具体的実施例を図面に基づき説明する。各図において同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【実施例1】
【0013】
本発明の二元冷凍装置の実施例1を、図1〜図5により説明する。
図1は本発明の二元冷凍装置の実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。二元冷凍装置は、低元側冷凍サイクル1と高元側冷凍サイクル10で構成されている。
【0014】
前記低元側冷凍サイクル1は、低元側圧縮機2、低元側四方切替弁3、カスケード熱交換器9、レシーバ4、膨張弁5、低元側熱交換器6などの主構成要素で構成されている。また、前記高元側冷凍サイクル10は、高元側圧縮機11、高元側四方切替弁12、高元側熱交換器13、高元側膨張弁14、前記カスケード熱交換器9及びアキュムレータ15などの主構成要素で構成されている。
前記カスケード熱交換器9を介して、前記低元側冷凍サイクル1と前記高元側冷凍サイクル10とが熱的に接続されて、前記二元冷凍装置が構成されている。なお、前記低元側圧縮機2及び前記高元側圧縮機11は、その軸受などの摺動部に、潤滑油を差圧により供給する形式のもので構成されている。
【0015】
本実施例の二元冷凍装置は、加熱運転を目的とした冷凍装置であり、前記低元側冷凍サイクル1には、高圧冷媒であるR410Aを使用し、高元側冷凍サイクル10には低圧冷媒であるR134aを使用した例で説明する。なお、冷媒はこれらに限られるものではなく、用途に応じて種々の適切な冷媒を使用することができる。
【0016】
本実施例の加熱運転を目的とした二元冷凍装置においては、前記カスケード熱交換器9は、高元側冷凍サイクル10としては蒸発器として働き、低元側冷凍サイクル1としては凝縮器として働く。即ち、このカスケード熱交換器9では、前記低元側冷凍サイクル1からの高圧ガス冷媒と、前記高元側冷凍サイクル10からの低圧の気液二相冷媒が熱交換することで、高元側冷凍サイクル10の冷媒をガス化させ、低元側冷凍サイクル1の冷媒を凝縮させて液化させる。
【0017】
前記低元側冷凍サイクル1と前記高元側冷凍サイクル10の動作を更に詳しく説明する。
低元側冷凍サイクル1では、低元側圧縮機2で圧縮された冷媒は高圧ガスとなり、低元側四方切替弁(四方弁)3を通過後、カスケード熱交換器9に流入し、高元側冷凍サイクル10の二相冷媒と熱交換することで液化する。この液冷媒はレシーバ4を通過後、低元側膨張弁5で減圧されて気液二相の冷媒となり、低元側熱交換器(空気熱交換器)6においてファンにより取り込まれる空気と熱交換されて蒸発し、ガス化される。このガス冷媒は、再度前記四方弁3を通過した後、前記圧縮機2に吸入され、再度高圧ガスに圧縮され、以下同様のサイクルを繰り返す。なお、低元側冷凍サイクルの前記圧縮機2の吸入側にアキュームレータを設けるようにしても良い。
【0018】
高元側冷凍サイクル10では、高元側圧縮機11で圧縮された冷媒は高圧ガスとなり、高元側四方切替弁(四方弁)12を通過後、高元側熱交換器13において、入口配管35から供給される温水などの媒体と熱交換されて液化する。この液冷媒は高元側膨張弁14で減圧膨張されて気液二相の冷媒となり、前記カスケード熱交換器9に流入して、前記低元側冷凍サイクルのガス冷媒と熱交換してガス化される。このガス冷媒は、再度前記四方弁12を通過後、アキュームレータ15を通り、前記圧縮機11へ吸入されて、再度高圧ガスに圧縮され、以下同様のサイクルを繰り返す。前記温水などの媒体は、ポンプにより循環されることで、前記入口配管35から前記高元側熱交換器13に流入し、ここで加熱された後、出口配管36から需要先に供給されるようにして、温水などの供給が継続される。
【0019】
なお、前記カスケード熱交換器9や前記高元側熱交換器13としては、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器、或いはシェルアンドチューブ熱交換器などを使用すると良い。また、これらの熱交換器を使用する場合、熱交換される冷媒どうし、或いは冷媒と媒体とは、対向流とすることが好ましいが、並行流とすることもできる。また、前記低元側熱交換器6としては、熱源として外気を利用する場合には空冷式熱交換器などを使用し、熱源として水やブラインを使用する場合にはプレート式熱交換器や二重管式熱交換器を使用すると良い。
【0020】
前記低元側冷凍サイクル1には、前記圧縮機2の吐出側の冷媒温度を検知するための温度検知器21と、前記カスケード熱交換器9の出口側の液冷媒温度(中間温度)を検知するための中間温度検知器22が設けられている。
【0021】
前記高元側冷凍サイクル10には、前記圧縮機11の吐出圧力を検知するための圧力検知器41、前記圧縮機11への吸入ガス冷媒の温度を検知するための温度検知器31、前記圧縮機11の吸入圧力を検知するための圧力検知器42、前記高元側熱交換器13に接続された出口配管36から流出する温水(媒体)の温度、即ち温水出口温度を検知するための媒体出口温度検知器32が設けられている。
【0022】
50は二元冷凍装置全体を制御するための制御装置で、この制御装置50には、前記温度検知器21,22,31,32で検出された温度情報、及び前記圧力検知器41,42で検出された圧力情報が取り込まれ、これらの情報に基づいて、前記圧縮機2,11や前記膨張弁5,14を制御するように構成されている。
【0023】
次に、図2〜図5を用いて、前記制御装置50による二元冷凍装置の制御について説明する。
図2に示すフローチャートにより、前記高元側圧縮機11の制御について説明する。まず、高元側冷凍サイクル10の高元側熱交換器(凝縮器)13から流出される温水などの媒体の目標温度、即ち高元側熱交換器媒体出口温度(高圧ガス冷媒と熱交換されて生成される媒体の目標温度)を設定する(ステップS11)。このとき、前記高元側熱交換器媒体出口温度の設定値に応じて、前記カスケード熱交換器9における低元側冷凍サイクル1の目標中間温度を設定する(ステップS12)。この目標中間温度設定値は、低元側冷凍サイクル1において圧力比が適正に確保されるように設定される。また、前記目標中間温度は、前記低元側冷凍サイクルの圧力比と前記高元側冷凍サイクルの圧力比のバランスが取れるように設定されることが好ましい。例えば、図5に示すように、前記高元側熱交換器媒体出口温度の設定値と、前記目標中間温度設定値との適正な関係を、前記制御装置50に線図化して記憶させておき、この線図に基づいて、前記目標中間温度を設定すれば良い。
【0024】
また、図2のステップS11で前記高元側熱交換器媒体出口温度が設定されると、ステップS13で、前記出口配管36に設けられている前記媒体出口温度検知器32で検知された媒体出口温度と、前記高元側熱交換器媒体出口温度の設定値(設定出口温度)とを比較する。この結果、検出された媒体出口温度が前記設定出口温度よりも低ければ、前記高元側圧縮機11の周波数(回転数)を上昇させる(ステップ14)。反対に、検出された媒体出口温度が前記設定出口温度よりも高ければ、前記高元側圧縮機11の周波数を下降させる(ステップ15)。その後、再び前記ステップS13に戻り、以下同様の制御が例えば10秒毎に繰り返される。
【0025】
このように、前記高元側圧縮機11の運転容量の制御は、前記媒体出口温度検知器32で検知される温度が設定出口温度(目標設定温度)となるように、前記制御装置50により行なわれる。
【0026】
次に、図3に示すフローチャートにより、前記制御装置50における前記低元側圧縮機2の制御について説明する。この低元側圧縮機2の制御においては、図2のステップ12で設定された目標中間温度の設定値が使用される。また、前記カスケード熱交換器9の出口側の液冷媒温度を検知するための前記中間温度検知器22で検知された温度(中間温度)を使用する。即ち、ステップS16においては、前記中間温度検知器22で検知された中間温度と、前記目標中間温度とを比較する。その結果、検知された中間温度が、前記目標中間温度よりも低ければ、前記低元側圧縮機2の周波数(回転数)を上昇させる(ステップ17)。反対に、検知された中間温度が前記目標中間温度よりも高ければ、前記低元側圧縮機2の周波数を下降させる(ステップ18)。その後、再び前記ステップS16に戻り、以下同様の制御を、例えば3分毎に繰り返す。
このように、前記低元側圧縮機2の運転容量の制御は、前記中間温度検知器22で検知される温度が目標中間温度になるように、前記制御装置50により行われる。
【0027】
次に、図4に示すフローチャートにより、前記制御装置50における前記高元側膨張弁14の制御について説明する。
まず、ステップS21で、前記高元側圧縮機11に吸入される吸入ガス(ガス冷媒)の温度を前記温度検知器31で検出する。更に、ステップS22では、前記圧力検知器41で検知される前記高元側圧縮機11の吐出ガス圧力と、前記圧力検知器42で検知される前記高元側圧縮機11の吸入ガス圧力を検知する。そして、これらの検知された吐出ガス圧力と、吸入ガス圧力とから、前記高元側圧縮機11前後の圧力比を求める。また、前記制御装置50には、高元側圧縮機11における圧力比の下限値が記憶されている。この圧力比の下限値は、高元側圧縮機11や低減側圧縮機2において、例えば軸受などの摺動部に潤滑油を供給できる差圧が確保できるように設定されている。
【0028】
次に、ステップS23では、前記ステップS23で求めた圧力比が、制御装置50に記憶されている前記圧力比下限値まで近づいている否かを判断し、求めた圧力比が前記圧力比下限値近傍以下になっていると判断された場合には、前記高元側膨張弁14の開度を小さくして圧力比が大きくなる方向に制御する(ステップS24)。また、前記圧力比が適切に保たれている場合(圧力比下限値よりも十分大の場合)には、前記高元側膨張弁14は通常の制御が為される(ステップS25)。
【0029】
この高元側膨張弁14の通常制御は前記制御装置50により、次のように行なわれる。即ち、前記圧力検知器42から得られる圧力値から、冷媒の飽和温度を換算して求め、また前記温度検知器31から得られる吸入冷媒温度から、圧縮機吸入側の過熱度を算出する。そして、その算出した過熱度が大きい場合には前記高元側膨張弁14の開度を大きくするように制御し、前記過熱度が小さい場合には、圧縮機11に対して液戻り運転とならないように、前記高元側膨張弁14の開度を適切な開度に制御する。好ましくは、前記圧縮機吸入側の過熱度が一定となるように、前記高元側膨張弁14の開度を制御する。
【0030】
低元側冷凍サイクル1の低元側膨張弁5の制御も前記制御装置50から行われる。この制御は、低元側圧縮機2の吐出配管に設けられた温度検知器21で検知される冷媒の吐出ガス温度が、前記カスケード熱交換器9における前記目標中間温度の設定値(図2参照)から決定される目標吐出ガス温度となるように、前記膨張弁5の開度が制御される。
【0031】
なお、前記圧縮機2の吐出配管に圧力検知器を設け、この圧力検知器で検知された吐出圧力値と、前記温度検知器21により検知された吐出温度から過熱度を求め、この過熱度により、前記膨張弁5の開度を制御するようにしても良い。或いは、前記圧縮機2の吸入側に圧力検知器と温度検知器を設けて、これらの検出値から過熱度を求めて、前記膨張弁5の開度制御をしても良い。
【0032】
上述した本実施例の二元冷凍装置において、前記中間温度検知器22で検知された中間温度は、低元側冷凍サイクルと高元側冷凍サイクルとの間のバランスを意味する指標でもあるため、前記検知された中間温度が、図3のステップS16に示す目標中間温度に対して所定温度、例えば−2℃以下となった場合には、圧縮機11の運転容量(運転周波数)を一時固定(維持)するようにしても良い。また、前記中間温度が、前記目標中間温度に対して、例えば、−5℃以下となった場合には、圧縮機11の運転容量(運転周波数)を落とし、前記中間温度を持ち上げるようにしても良い。
【0033】
また、上記実施例において、前記低元側冷凍サイクル1の低圧圧力は、低元側熱交換器6に供給される室外空気の温度によってほぼ決定され、前記高元側冷凍サイクル10の高圧圧力は、高元側熱交換器13の温水(媒体)出口温度により決定される。
【0034】
ここで、高温水を取出したい場合には、前述した目標中間温度も高く設定されるため、低元側冷凍サイクル1及び高元側冷凍サイクル10の圧力比は確保し易い。外気温度が高い場合には、それに応じて前記低減側熱交換器6に室外空気を供給するファンの回転数を低下させることで熱交換量を減らし、低圧圧力を適切に保ちながら運転を継続できる。
【0035】
しかし、温水温度が30℃以下であるような温水を取出す場合には、最も厳しい条件となり、この場合の前記目標中間温度は、低元側冷凍サイクル1での圧力比が確保できる下限値に設定される。高元側冷凍サイクル10に関しては、取出し温度が低いために高圧圧力が低くなり、カスケード熱交換器9における中間温度で決まる高元側冷凍サイクル10の低圧圧力との差が小さくなる。このため、高元側冷凍サイクル10では圧力比が小さくなり、適切な圧力比を確保できない。そこで、高元側圧縮機11の軸受などの摺動部に給油可能な最小圧力比付近となった場合には、図4で説明したように、前記制御装置50により、高元側膨張弁14の開度を小さくして低圧圧力を下げるように制御する。これにより、高元側冷凍サイクル10での圧力比も確保でき、安定した運転を継続できる。
【0036】
このように、本実施例によれば、負荷が小さく低圧力比となるような運転条件の場合であっても、単元運転へ切替える必要のない簡単な構成で、低元側及び高元側の各圧縮機2,11の摺動部に給油できるだけの適正な圧力比を維持した運転が可能となる。
【0037】
また、取出し温水の設定温度に応じて目標中間温度を設定するので、低元側冷凍サイクル1と高元側冷凍サイクル10のバランスを保った安定した効率の良い運転が可能となる。更に、カスケード熱交換器9において、低元側冷凍サイクル1の高圧圧力及び高元側冷凍サイクル10の低圧圧力が決定されるから、低元側冷凍サイクルの圧力比及び高元側冷凍サイクルの圧力比を適正値に保ちながら運転が可能となる。また、低元側冷凍サイクル1では設定された目標中間温度となるように制御されるから、高元側冷凍サイクル10では外気に依存しない運転となり、安定した運転が可能となる。
【0038】
更に、本実施例においては、単元運転に切替える必要のない簡単な構成であるため、冷媒配管全体の長さを短くでき、低元側熱交換器6の冷媒流路も1系統だけとなるから、熱交換器も小さくすることが可能となる。
【実施例2】
【0039】
本発明の二元冷凍装置の実施例2を図6〜図9を用いて説明する。これらの図において、図1〜図5と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しており、同一部分についての説明は省略する。
【0040】
図6は本発明の二元冷凍装置の実施例2を示す冷凍サイクル構成図である。この実施例2の二元冷凍装置が、上記実施例1の二元冷凍装置に対して異なるところを説明する。上記実施例1では、カスケード熱交換器9における低元側冷凍サイクル1の目標中間温度は、高元側冷凍サイクル10の高元側熱交換器13における媒体出口温度の設定値(温水取出し温度)に応じて設定するようにしている。これに対し、本実施例2では、高元側冷凍サイクル10の高元側熱交換器13における媒体(温水)の入口温度を検出するための媒体出口温度検知器33を設け、この媒体出口温度検知器33で検知された媒体の入口温度に応じて、カスケード熱交換器9における低元側冷凍サイクル1の目標中間温度を設定するようにしたものである。
【0041】
例えば、図7に示すように、前記高元側熱交換器媒体入口温度と、前記目標中間温度設定値との適正な関係を、前記制御装置50に線図化して記憶させておき、この線図に基づいて、前記目標中間温度を設定すれば良い。
【0042】
即ち、高元側熱交換器13への媒体入口温度が高い場合、目標となる中間温度設定値も高くすることで、高元側冷凍サイクル10における圧力比の増加を防ぐようにする。逆に、高元側熱交換器13への媒体入口温度が低い場合には、目標となる中間温度設定値も低くすることで、高元側冷凍サイクル10における圧力比が過小となるのを防ぐように、前記図7に示す線図は作成される。また、図7に示す線図において、目標となる中間温度設定値は、高元側熱交換器13への媒体入口温度に応じて、高元側冷凍サイクル10及び低元側冷凍サイクル1が共に、適正な圧力比が確保できるように、両サイクルの圧力比のバランスが取れる温度に設定されている。
【0043】
制御装置50には、上記図7に示すようなデータが記憶されており、また前記温度検知器33で検知された高元側熱交換器13への媒体入口温度の検知データも取り込まれる。前記制御装置50は、これらのデータに基づき、前記高元側熱交換器13への媒体入口温度に応じて、前記カスケード熱交換器9における低元側冷凍サイクル1の目標中間温度(カスケード熱交換器9の出口温度の目標値)が、例えばある一定時間毎に設定されるように構成されている。
高元側熱交換器13から流出する媒体(温水)の出口温度の設定も、前記制御装置50で為される。
【0044】
次に、図8及び図9を用いて、本実施例における前記制御装置50による二元冷凍装置の制御を説明する。
図8に示すフローチャートにより、前記制御装置50における前記低元側圧縮機2の制御について説明する。この低元側圧縮機2の制御においては、まず、ステップS30で、前記高元側熱交換器13への媒体の入口温度を媒体入口温度検知器33で検知する。次に、ステップS31に移り、前記媒体入口温度検知器33で検知された媒体入口温度から、制御装置50に記憶されている図7に示すデータに基づいて、前記カスケード熱交換器9における低元側冷凍サイクル1の目標中間温度が設定される。ステップS16では、前記カスケード熱交換器9の出口側の液冷媒温度を検知するための前記中間温度検知器22で検知された中間温度と、前記目標中間温度とが比較される。その結果、検知された中間温度が、前記目標中間温度よりも低ければ、前記低元側圧縮機2の周波数を上昇させる(ステップ17)。反対に、検知された中間温度が前記目標中間温度よりも高ければ、前記低元側圧縮機2の周波数を下降させる(ステップ18)。その後、再び前記ステップS16に戻り、以下同様の制御を、例えば3分毎に繰り返す。
【0045】
このように、本実施例では、前記低元側圧縮機2の運転容量の制御は、前記中間温度検知器22で検知される温度が、高元側熱交換器13への媒体入口温度に応じて決められる目標中間温度になるように行われる。
【0046】
次に、図9に示すフローチャートにより、高元側圧縮機11の制御について説明する。まず、高元側冷凍サイクル10の高元側熱交換器13から流出される媒体の目標温度、即ち高元側熱交換器媒体出口温度を設定する(ステップS11)。この高元側熱交換器媒体出口温度が設定されると、ステップS13で、この高元側熱交換器媒体出口温度の設定値と、前記媒体出口温度検知器32で検知された媒体出口温度とが比較される。この結果、検出された媒体出口温度が前記設定出口温度よりも高ければ、ステップS15に移り、前記高元側圧縮機11の周波数を下降させるように制御する。逆に、検出された媒体出口温度が前記設定出口温度よりも低い場合には、本実施例では、ステップS32に移り、前記カスケード熱交換器9の出口側の液冷媒温度を検知するための前記中間温度検知器22で検知された中間温度と、図8のステップS31で設定された前記目標中間温度とを比較する。このステップS32では、検知された前記中間温度が、「目標中間温度−2℃」以上であれば、ステップS14に移り、前記高元側圧縮機11の周波数を上昇させる。逆に検知された前記中間温度が、「目標中間温度−2℃」未満であれば、ステップS33に移り、前記高元側圧縮機11の周波数を維持するように制御する。また、前記中間温度が、例えば、「目標中間温度−5℃」以下となった場合には、圧縮機11の運転容量(運転周波数)を落とし、前記中間温度を持ち上げるようにしても良い。
【0047】
前記中間温度検知器22で検知された中間温度は、低元側冷凍サイクルと高元側冷凍サイクルとの間のバランスを意味する指標でもあるため、本実施例では、前記中間温度が前記目標中間温度に対して−2℃未満となった場合には、高元側圧縮機11の運転容量を一時固定するようにしている。
【0048】
その後、再び前記ステップS13に戻り、以下同様の制御が例えば10秒毎に繰り返される。
【0049】
このように、本実施例では、前記高元側圧縮機11の運転容量の制御は、前記媒体出口温度検知器32で検知される温度が設定出口温度(目標設定温度)となるように制御されるが、更にカスケード熱交換器9から出る低元側冷凍サイクルの中間温度も考慮して制御している。
【0050】
なお、高元側膨張弁14の制御及び低元側膨張弁5の制御については、上記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
また、二元冷凍装置においては、高元側冷凍サイクルの四方弁12と低元側冷凍サイクルの四方弁3とがアンマッチとならぬように制御される。
他の構成は上記実施例1と同様である。また、本実施例2においても、前記実施例1と同様の効果を得ることができるが、本実施例は、二元冷凍装置の起動時の制御に特に有効である。即ち、二元冷凍装置の起動時には、前記高元側熱交換器13から流出する媒体の出口温度は低く且つ安定していないが、媒体出口温度の設定値は定常状態と同じであるため、前記カスケード熱交換器9での目標中間温度は、必ずしもバランスの取れた状態にはなっていない。これに対し、本実施例2では起動時であっても、媒体入口温度検知器33で検知された温度に基づいて前記目標中間温度を設定するので、高元側と低元側とでバランスのとれた安定した運転が可能となる。
【0051】
従って、前記実施例1と実施例2を組合せ、起動時には実施例2により、目標中間温度を設定して制御を実施し、定常時になったら実施例1により、目標中間温度を設定して制御を実施するようにすることも有効である。
【0052】
なお、上記の各実施例の二元冷凍装置は、加熱運転を目的とした冷凍装置の例を説明したが、冷却運転を目的とした冷凍装置にも同様に実施できるものである。また、本発明は、前記低元側圧縮機2及び高元側圧縮機11として、潤滑油を差圧により給油する形式の圧縮機を使用して特に効果があるが、これに限られるものでもない。
【符号の説明】
【0053】
1:低元側冷凍サイクル
2:低元側圧縮機、3:低元側四方切替弁(四方弁)、
4:レシーバ、
5:低元側膨張弁、6:低元側熱交換器、
9:カスケード熱交換器、
10:高元側冷凍サイクル、
11:高元側圧縮機、12:高元側四方切替弁(四方弁)、
13:高元側熱交換器、14:高元側膨張弁、
15:アキュームレータ、
21,31:温度検知器、22:中間温度検知器、
32:媒体出口温度検知器、33:媒体入口温度検知器、
35:入口配管、36:出口配管、
41,42:圧力検知器、
50:制御装置(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低元側圧縮機、カスケード熱交換器、低元側膨張弁、低元側熱交換器を有する低元側冷凍サイクルと、高元側圧縮機、高元側熱交換器、高元側膨張弁、前記カスケード熱交換器を有する高元側冷凍サイクルとが、前記カスケード熱交換器を介して熱的に接続されて構成されている二元冷凍装置において、
前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の出口温度の設定値から前記カスケード熱交換器における目標中間温度を設定し、この目標中間温度になるように前記低元側圧縮機を制御する制御手段を備えることを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項2】
低元側圧縮機、カスケード熱交換器、低元側膨張弁、低元側熱交換器を有する低元側冷凍サイクルと、高元側圧縮機、高元側熱交換器、高元側膨張弁、前記カスケード熱交換器を有する高元側冷凍サイクルとが、前記カスケード熱交換器を介して熱的に接続されて構成されている二元冷凍装置において、
前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の入口温度を検知する媒体入口温度検知器を設け、この媒体入口温度検知器で検知された媒体入口温度から前記カスケード熱交換器における目標中間温度を設定し、この目標中間温度になるように前記低元側圧縮機を制御する制御手段を備えることを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二元冷凍装置において、前記カスケード熱交換器の低元側冷媒の出口側温度を検知する中間温度検知器を備え、前記制御手段は、前記中間温度検知器で検知された温度が前記目標中間温度になるように前記低元側圧縮機の周波数を制御することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記目標中間温度は、前記低元側冷凍サイクルの圧力比と前記高元側冷凍サイクルの圧力比のバランスが取れ、且つ前記低元側冷凍サイクルでの圧力比が適正に確保されるように設定されることを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項5】
請求項1に記載の二元冷凍装置において、前記目標中間温度は、前記高元側冷凍サイクルの前記媒体出口温度の設定値により変動し、該媒体出口温度の設定値が高い場合には前記目標中間温度も高く設定することで、高元側冷凍サイクルの圧力比の増加を防ぎ、前記媒体出口温度の設定値が低い場合には前記目標中間温度も低く設定することで、高元側冷凍サイクルの圧力比が過小となるのを防ぐようにしたことを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項6】
請求項2に記載の二元冷凍装置において、前記目標中間温度は、前記高元側冷凍サイクルの前記検知された媒体入口温度により変動し、この検知された媒体入口温度が高い場合には前記目標中間温度も高く設定することで、高元側冷凍サイクルの圧力比の増加を防ぎ、前記検知された媒体入口温度の設定値が低い場合には前記目標中間温度も低く設定することで、高元側冷凍サイクルの圧力比が過小となるのを防ぐようにしたことを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記高元側熱交換器で熱交換される媒体の出口温度を検知する媒体出口温度検出器を設け、前記制御手段は、この媒体出口温度検出器で検知される値が前記媒体出口温度の設定値に近づくように前記高元側圧縮機の周波数を制御することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記高元側圧縮機の吐出側の圧力を検知する圧力検知器と、前記高元側圧縮機の吸入側の圧力を検知する圧力検知器とを備え、前記圧力検知器で検知された吐出ガス圧力と吸入ガス圧力から前記高元側圧縮機前後の圧力比を求め、更に前記制御手段には前記高元側圧縮機における圧力比の下限値を記憶させておき、この記憶されている圧力比下限値と前記求められた圧力比を比較して、求められた前記圧力比が、前記圧力比下限値近傍以下となっている場合には前記高元側膨張弁の開度を小さく制御することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項9】
請求項8に記載の二元冷凍装置において、更に前記高元側圧縮機の吸入側の温度を検知する温度検知器を備え、前記求められた前記圧力比が、前記圧力比下限値近傍よりも大きい場合には、記高元側圧縮機の吸入側の温度検知器で検知された吸入冷媒温度と、前記高元側圧縮機の吸入側の圧力を検知する圧力検知器で検知された吸入ガス圧力とから、前記高元側圧縮機の吸入側の過熱度を算出し、この過熱度がほぼ一定となるように、前記高元側膨張弁の開度を制御することを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記低元側圧縮機の吐出側の温度を検知する温度検知器を備え、この温度検知器で検知される冷媒の吐出ガス温度が、前記カスケード熱交換器における前記目標中間温度の設定値から決定される目標吐出ガス温度となるように、前記低元側膨張弁の開度が制御されることを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記カスケード熱交換器及び前記高元側熱交換器の少なくとも何れかをプレート式熱交換器で、前記低元側熱交換器を空冷式熱交換器で構成したことを特徴とする二元冷凍装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載の二元冷凍装置において、前記低元側冷凍サイクルと前記高元側冷凍サイクルはそれぞれ四方切替弁を備えており、加熱運転及び冷却運転を切り換え可能に構成されていることを特徴とする二元冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113535(P2013−113535A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261899(P2011−261899)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】