説明

二成分混合容器

【課題】使用時に小さな力で確実に開封することのできる二成分混合容器を提供する。
【解決手段】有底筒状に形成され粉末Bを収容するケース1と、このケース1の上端開口部に固定され液状化粧料Aを収容する中キャップ3と、上記ケース1と中キャップ3とを区画するために上記中キャップ3の下端部に配設された区画板4と、上記中キャップ3の上端開口部を蓋するキャップ5とを備えている。そして、上記中キャップ3にキャップ5が上下方向に摺動自在に設けられ、上記区画板4が、インサート成形により中キャップ3の内周面に周方向に形成された凹溝18に着脱自在に係合され、上記キャップ5を中キャップ3に沿って下方に摺動させ上記キャップ5の下部で上記区画板4を下方に押圧して上記係合を外しケース1内と中キャップ3内とを連通させるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分を混合して得られる化粧料等の上記二成分をそれぞれ隔離状態で収容し、使用時等に混合することのできる二成分混合容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化粧料,整髪料,飲料等として様々なものが開発されて市場に出回っているが、そのなかで、美容成分,栄養成分等が含有される粉末や錠剤を液状化粧料,飲料等に混合して使用するものがある。ところが、このものでは、粉末等を予め液状化粧料等に混合させていると、美容成分や栄養成分の化学変化等によりその効力が失われてしまうという問題がある。このため、未使用時には粉末等と液状化粧料等とを別々に隔離した状態にして収容し、使用の際に、両者を混合して使用することが必要になる。
【0003】
そこで、粉末等と液状化粧料等とを別々に隔離した状態で収容し、使用時にそれらを混合して使用することができる容器として、図9に示すような混合容器が提案されている。この混合容器は、哺乳用混合容器であり、内部に湯もしくは水(図示せず)が収容された哺乳ビン31と、乳首キャップ32と、粉ミルク(図示せず)が収容された粉ミルク収容体33とを備えている。上記乳首キャップ32は、上記哺乳ビン31の環状口頸部31aに離脱自在に装着される本体部35と、この本体部35に装着される乳首36と、この乳首36をカバーするように上記本体部35に装着されるカバーキャップ37とを備えており、上記本体部35により粉ミルク収容体33が哺乳ビン31の環状口頸部31a内に配設された状態で、この環状口頸部31aに離脱自在に固定されている。
【0004】
また、上記粉ミルク収容体33は、合成樹脂で一体成形された収容本体38と、この収容本体38の上端開口部を密封する閉塞体39とからなり、上記収容本体38の底壁38aの中央部に、破断可能な薄肉部により囲まれた開封予定部40が形成され、上記閉塞体39の中央部からカッタ部41が下向きに突設されている。図において、41aは上記カッタ部41の下端に形成されたカッタで、42は上記閉塞体39の外周部に形成されたフランジ部であり、上記哺乳ビン31の環状口頸部31aの上端面に載置されている。
【0005】
使用時には、哺乳ビン31から乳首キャップ32を取り外し、指先で粉ミルク収容体33の閉塞体39の中央部を下方に押圧することを行う。これにより、カッタ部41が下降し、そのカッタ41aで収容本体38の開封予定部40が押圧されて薄肉部が破断し、収容本体38の底壁38aの中央部が開封する。その結果、粉ミルク収容体33内の粉ミルクが哺乳ビン31内に落下し、哺乳ビン31内の湯もしくは水と混合する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−347102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の混合容器では、開封予定部40が粉ミルク収容体33の収容本体38の底壁38aに薄肉部を介して一体成形されているため、カッタ部41のカッタ41aで薄肉部を破断させにくく、大きな力が必要になり、また、場合によっては破断させることができないことがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、使用時に小さな力で確実に開封することのできる二成分混合容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の二成分混合容器は、有底筒状に形成され第1成分を収容する容器本体と、この容器本体の上端開口部に固定され第2成分を収容する筒体と、上記容器本体と筒体とを区画するために上記筒体の下端部に配設された板状区画体と、上記筒体の上端開口部を蓋する蓋体とを備え、上記筒体に蓋体が上下方向に摺動自在に設けられ、上記板状区画体が、インサート成形により筒体の内周面に周方向に形成された環状溝に着脱自在に係合され、上記蓋体を筒体に沿って下方に摺動させ上記蓋体の下部で上記板状区画体を下方に押圧して上記係合を外し容器本体内と筒体内とを連通させるように構成されているという構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
すなわち、本発明の二成分混合容器は、有底筒状に形成され第1成分を収容する容器本体と、この容器本体の上端開口部に固定され第2成分を収容する筒体と、上記容器本体と筒体とを区画するために上記筒体の下端部に配設された板状区画体と、上記筒体の上端開口部を蓋する蓋体とを備えている。そして、上記筒体に蓋体が上下方向に摺動自在に設けられ、上記板状区画体が、インサート成形により筒体の内周面に周方向に形成された環状溝に着脱自在に係合され、上記蓋体を筒体に沿って下方に摺動させ上記蓋体の下部で上記板状区画体を下方に押圧して上記係合を外し容器本体内と筒体内とを連通させるように構成されている。このように、本発明の二成分混合容器では、筒体をインサート成形により成形し、このインサート成形の際に、筒体の内周面に周方向に環状溝を形成するとともに、この環状溝に板状区画体を着脱自在に係合させ、これにより、筒体の環状溝に板状区画体を着脱自在に係合してなる一体化物を成形するようにしている。この一体化物は、インサート成形により作製されたものであるため、筒体の環状溝に板状区画体を隙間なく係合させることができ、別々に作製した筒体の環状溝と板状区画体とを係合させて一体化したものと比べ、筒体の環状溝と板状区画体との間の気密性を非常に高くすることができ、上記筒体に収容した第2成分が筒体の環状溝と板状区画体との間から漏れ出すことがない。しかも、上記筒体,板状区画体の材質の選定や上記筒体の環状溝,板状区画体の寸法の設定等により、インサート成形による一体化物でありながらも、上記筒体の環状溝と板状区画体との係合を外れやすくすることができ、蓋体を小さな力で下方に摺動させて確実に上記係合を外すことができる。なお、本発明において、二成分とは、液体,粉末,錠剤等の各成分のなかの、同種類(例えば、液体と液体)もしくは異種類(例えば、液体と粉末、液体と錠剤)の二成分を指す。
【0010】
また、上記蓋体の天板に、これを上下方向に貫通するようにして棒状体が固定され、この棒状体の上端部を下方に押圧することにより、上記蓋体を筒体に沿って下方に摺動させ上記棒状体の下端部で板状区画体を下方に押圧して筒体の環状溝から脱落させるように構成すると、手指等で棒状体の上端部を下方に押圧すると、蓋体が下方に摺動して上記棒状体の下端部で直接に板状区画体を下方に押圧することができ、上記押圧力が棒状体を介して確実に板状区画体に伝達される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、これに限定されるわけではない。
【0012】
図1〜図3は本発明の二成分混合容器の一実施の形態を示している。この実施の形態では、二成分混合容器として、美容成分等を含有した粉末(第2成分)Bを液状化粧料(第1成分)Aに混合して使用する二成分混合容器(図3参照)が用いられている。これらの図において、1は有底円筒状に形成された合成樹脂製のケース(容器本体)であり、図4に示すように、その周側壁1aの外周面上端部が切欠き形成され、後述する中キャップ3の下側二重壁部分13に挿入,係合する小径部11が形成されているとともに、この小径部11の外周面にその周方向に沿って、上記中キャップ3の係合用凹部16aに係合する円環状の係合用凸条11aが突設されている。また、上記ケース1には、その底壁1bに複数個(この実施の形態では、2個)の空気流通孔12が穿設されている。
【0013】
2は上記ケース1の周側壁1a内を上下方向に摺動しうる合成樹脂製の皿状体であり、図4に示すように、それ自体の外周面の上端部および下端部が上記周側壁1aの内周面に液密状に当接する略円筒状の周側壁2aと、この周側壁2aの内周面の中間高さ部から下方に向かって逆円錐台状に延びる底壁2bと、この底壁2bの中央横板部の外周部から垂下する円筒状の脚部2cとで構成されている。そして、上記ケース1内において、上記皿状体2の上部空間に液状化粧料Aが収容されている(図3参照)。
【0014】
3は略円筒状に形成されたアクリル系樹脂製の(硬質の)中キャップ(筒体)であり、図5に示すように、下側二重壁部分13と上側周側壁14とで構成されている。上記下側二重壁部分13は、円筒状の内側壁15と、円筒状の外側壁16と、これら内外両側壁15,16の上端部を連結する円環状の連結壁17とからなり、上記内外両側壁15,16間の部分に上記ケース1の小径部11が挿入,係合されている。上記内側壁15には、その内周面下端部に、その周方向に沿って円環状に延びる凹溝18(環状溝)が形成されており、この凹溝18に、後述する区画板4が着脱自在に係合,固定されている。また、上記外側壁16には、その内周面上部に、上記ケース1の小径部11の係合用凸条11aに係合する係合用凹部16aが形成されている(図6参照)。また、上記連結壁17の上面から立設される円筒状の上側周側壁14には、その外周面上端部にその周方向に沿って、後述するキャップ5の下側凸条24aに着脱自在に係合する円環状の凸条14aが突設されている。
【0015】
4は円板状に形成されたオレフィン系樹脂製の(可撓性を有する)区画板(板状区画体)であり、その外周部が上記中キャップ3の内側壁15の凹溝18に着脱自在に係合している。このような中キャップ3と区画板4とは、インサート成形により一体に形成されたものである。より詳しく説明すると、中キャップ3のインサート成形時に、中キャップ3を成形する金型(図示せず)の型内(キャビティ空間内)の、上記凹溝18に対応する部分に区画板4を配設し(このとき、上記凹溝18内には区画板4の外周部が位置決めされている)、その状態で型内に、溶融したアクリル系樹脂(図示せず)を注入し、中キャップ3と区画板4とを、中キャップ3の凹溝18に区画板4を着脱自在に係合させた状態で一体化したものである。
【0016】
この状態では、中キャップ3の凹溝18に区画板4の外周部が密着しており、気密性が高く、中キャップ3の凹溝18と区画板4の外周部との間に隙間がないため、中キャップ3に収容した粉末Bが中キャップ3の凹溝18と区画板4の外周部との間を通って外部に漏れ出すことがない。また、溶融したアクリル系樹脂とオレフィン系樹脂製の区画板4とは、これら両樹脂自体の性質によりインサート成形時に接着いないため、上記凹溝18の厚み,内径寸法や区画体4の厚み,外径寸法等を適宜設定することにより、区画体4に小さな力を下向きに加えるだけで、区画体4が下方に撓んで凹溝18から外れ、ケース1内に落下させることができる。
【0017】
5は円筒状に形成された合成樹脂製のキャップ(蓋体)であり、図7に示すように、下側二重壁部分20と天井壁(天板)21と上側周側壁22とで構成されている。上記下側二重壁部分20は、円筒状の内側壁23と、円筒状の外側壁24と、これら内外両側壁23,24の上端部を連結する円環状の連結壁25とからなり、上記内外両側壁23,24間の部分に中キャップ3の上側周側壁14が摺動自在に挿入されている。上記内側壁23の内周面には、その底面から上方に延びるようにして、後述するスリーブ7が内嵌,固定される大径切欠き部23aが形成されている。また、上記外側壁24には、その内周面下端部に、中キャップ3の上側周側壁14の凸条14aに着脱自在に係合する円環状の下側凸部24aが突設されているとともに、その内周面上部に、キャップ5を下方に所定距離摺動させた時に中キャップ3の上側周側壁14の上端面に当接してストッパー作用をする円環状の上側凸部24bが突設されている(図6参照)。
【0018】
上記天井壁21は、上記下側二重壁部分20の内側壁23の内周面上部から内側に円環状に突設されており、その中央孔に形成された円環状の係合用凹部21aに、上下方向に棒状に延びる合成樹脂製の押し棒(棒状体)6が固定されている。この押し棒6は、上側大径部26と下側棒状小径部27とからなり、この下側棒状小径部27の外周面上部に、上記天井壁21の中央孔の係合凹部21aに係合する円環状の係合凸部27aが突設されている。また、上記上側周側壁22には、その外周面下端部に、後述するオーバーキャップ8の凸条8aに着脱自在に係合する円環状の凸条22aが突設されている(図6参照)。
【0019】
7は円筒状に形成された合成樹脂製のスリーブであり、キャップ5の内側壁23の大径切欠き部23aに内嵌状に固定される円筒状の周側壁7aと、この周側壁7aの下端開口部から外側に向かって突設される円環状の鍔部7bとで構成されている(図6参照)。そして、上記区画板4の上面と中キャップ3の内側壁15の内周面とスリーブ7の内周面とキャップ5の天井壁21の下面と押し棒6の外周面とで形成される空間に粉末Bが収容されている(図3参照)。
【0020】
8は有天円筒状に形成された合成樹脂製のオーバーキャップであり、その周側壁8aの内周面下端部に、上記キャップ5の上側周側壁22の凸条22aに着脱自在に係合する円環状の凸条8bが突設されている(図8参照)。
【0021】
上記の構成において、上記二成分混合容器を作製する場合には、まず、液状化粧料Aを収容したケース1および、粉末Bを収容した収容体を準備する。この収容体は、粉末Bを収容した中キャップ3と、押し棒6,スリーブ7を取り付けたキャップ5とからなるものであり、粉末Bを収容した中キャップ3の上端開口部にキャップ5の下側二重壁部分20を押し込んで中キャップ3の上側周側壁14の凸条14aに上記下側二重壁部分20の外側壁24の下側凸部24aを係合させることにより、中キャップ3にキャップ5を組み付けたものである。ついで、ケース1の上端開口部に上記収容体の中キャップ3の下側二重壁部分13を押し込んでケース1の小径部11の係合用凸条11aに上記下側二重壁部分13の外側壁16の係合用凹部16aを係合させたのち、キャップ4にオーバーキャップ8を取り付けることを行う。なお、キャップ4にオーバーキャップ8を取り付けた状態でケース1に中キャップ3を取り付けるようにしてもよい。
【0022】
また、使用時には、オーバーキャップ8をキャップ5から取り外し、押し棒6を押し下げる。これにより、押し棒6とともにキャップ5が下降して押し棒6の底面で区画板4の上面を下方に押圧し、中キャップ3の凹溝18から区画板4が脱落する。そして、中キャップ3内の粉末Bがケース1内に流下し、ケース1内の液状化粧料Aと混合する。この混合ののち、押し棒6を上方に引っ張ってキャップ5を中キャップ3から取り外し、中キャップ3の上端開口部から混合液(図示せず)を取り出すことを行う。
【0023】
このように、上記実施の形態では、インサート成形を利用して、中キャップ3の凹溝18に区画板4を着脱自在に係合させているため、中キャップ3の凹溝18に区画体4の外周部を隙間なく係合させることができ、中キャップ3に収容した粉末Bが中キャップ3の凹溝18と区画体4との間から漏れ出すことがない。しかも、上記中キャップ3と区画体4との係合が外れやすく、区画体4を小さな力で中キャップ3の凹溝18から脱落させすことができる。
【0024】
なお、上記実施の形態では、第1成分として、液状化粧料Aを用い、第2成分として、粉末Bを用いているが、これに限定するものではなく、第1成分として、粉末Bや錠剤を用いてもよいし、第2成分として、液体や錠剤を用いてもよい。また、上記実施の形態では、中キャップ3をアクリル系樹脂で構成し、区画板4をオレフィン系樹脂で構成しているが、インサート成形の際に中キャップ3,区画板4として用いて互いに接着することがなく、区画板4として可撓性や弾性を有して中キャップ3の凹溝18から外れやすいものであれば、中キャップ3や区画板4をどのような樹脂材料で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の二成分混合容器の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】上記二成分混合容器の底面図である。
【図3】上記二成分混合容器の断面図である。
【図4】ケースおよび皿状体の断面図である。
【図5】中キャップの断面図である。
【図6】上記二成分混合容器の要部の断面図である。
【図7】キャップ,スリーブおよび押し棒の断面図である。
【図8】オーバーキャップの断面図である。
【図9】従来例の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ケース
3 中キャップ
4 区画板
5 キャップ
18 凹溝
A 液状化粧料
B 粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状に形成され第1成分を収容する容器本体と、この容器本体の上端開口部に固定され第2成分を収容する筒体と、上記容器本体と筒体とを区画するために上記筒体の下端部に配設された板状区画体と、上記筒体の上端開口部を蓋する蓋体とを備え、上記筒体に蓋体が上下方向に摺動自在に設けられ、上記板状区画体が、インサート成形により筒体の内周面に周方向に形成された環状溝に着脱自在に係合され、上記蓋体を筒体に沿って下方に摺動させ上記蓋体の下部で上記板状区画体を下方に押圧して上記係合を外し容器本体内と筒体内とを連通させるように構成されていることを特徴とする二成分混合容器。
【請求項2】
上記蓋体の天板に、これを上下方向に貫通するようにして棒状体が固定され、この棒状体の上端部を下方に押圧することにより、上記蓋体を筒体に沿って下方に摺動させ上記棒状体の下端部で板状区画体を下方に押圧して筒体の環状溝から脱落させるように構成した請求項1記載の二成分混合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−106426(P2007−106426A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296629(P2005−296629)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)