説明

二成分現像剤の製造方法

【課題】2色以上のトナーの組み合わせにより調色された二成分現像剤であっても、使用開始直後から数百〜数千枚の連続印刷において、使用開始直後から色目の変化のない画像を得ることができる二成分現像剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも2色のトナーとキャリアからなる二成分現像剤の製造方法であって、各トナーをキャリアと混合して、各現像剤を得る工程Aと、工程Aで得られた現像剤を混合する工程Bとを含む二成分現像剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる二成分現像剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの多様な要求に応え得るカスタムカラーのトナーの製造や、装置の簡略化が可能な2色印刷等を目的として、色の異なる2種以上のカラートナーを混合する技術が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、電気抵抗の異なるカラートナーを組み合わせて混合することにより得られるカラートナーを用いて印刷すると、組み合わせたカラートナーが不均等に現像されるため、印字の色調が不安定になる課題に対して、含有量あるいは材質の少なくとも一方が互いに異なる白色導電性微粒子を含有するトナーを開示している。
【0004】
また、特許文献2では、帯電性の異なるカラートナーを組み合わせて混合することにより得られるカラートナーを用いて印刷すると、組み合わせたカラートナーが不均等に現像され、印刷画像の色調が不安定になる課題に対して、2種以上のカラートナーの表面に種類及び組成の少なくとも一方が異なる表面改質剤を付着させる技術が開示されている。
【0005】
特許文献3では、カスタムカラートナーを効率良く開発でき、安定した印刷を可能とすることを課題として、表面処理剤として体積平均粒径が5〜50nmの微粒子を用い、且つ、表面処理剤のトナー表面への固定化率が50%以下であるトナーを開示している。
【特許文献1】特開2003−223013号公報
【特許文献2】特開2003−149870号公報
【特許文献3】特開2005−316124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3の技術は、数10万枚の長期の連続印刷において安定した画像を課題とするものである。比較的長期の連続印刷での画像の安定性は、トナーの特性が重要と考えられ、いずれの技術も特定の内添剤や表面処理剤を用いてトナーの特性を制御している。しかしながら、トナーの特性を制御するために、特定の内添剤や表面処理剤を使用するとトナーの設計の自由度が制限される。
【0007】
一方、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を用いる場合では、使用開始直後から数百〜数千枚の比較的短期の連続印刷で色目の変化が生じ易く、この問題に対しては、トナーとキャリアからなる二成分現像剤の特性が重要と考えられる。
【0008】
本発明の課題は、2色以上のトナーの組み合わせにより調色された二成分現像剤であっても、使用開始直後から数百〜数千枚の連続印刷において、使用開始直後から色目の変化のない画像を得ることができる二成分現像剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも2色のトナーとキャリアからなる二成分現像剤の製造方法であって、各トナーをキャリアと混合して、各現像剤を得る工程Aと、工程Aで得られた現像剤を混合する工程Bとを含む二成分現像剤の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、2色以上のトナーを組み合わせて調色された二成分現像剤であっても、使用開始直後から数百〜数千枚の連続印刷において、使用開始直後から色目の変化のない画像が得られる二成分現像剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、少なくとも2色のトナーとキャリアからなる二成分現像剤を製造する際に、各トナーをキャリアと混合して、各現像剤を得る工程Aと、工程Aで得られた現像剤を混合する工程Bとを行う点に特徴を有する。従来のように、2色以上のトナーを予め混合した後、キャリアと混合して二成分現像剤を調製すると、現像時に、帯電量の小さいトナー、即ち正帯電性トナーでは帯電量の低いトナー、負帯電性トナーでは帯電量の高いトナーが、選択的に現像されるため、トナーの種類によって現像に偏りが生じ、所望の色目の画像が得られず、また耐刷とともに、画像の色目が変化する傾向がある。これは、トナーの帯電量はキャリアとの混合条件によって変化するが、その変化の程度はトナーの種類によって異なるため、予めトナーを混合して、同じ条件でキャリアと混合すると、二成分現像剤中のトナーの帯電量にトナーの種類によって差が生じることに起因しているものと推定される。これに対し、本発明では、工程Bで混合する各現像剤の帯電量を、工程Aにおけるトナーとキャリアの混合条件によって調整することができる。従って、工程Aにおいて、各色のトナーをキャリアと混合して、現像剤の帯電量を予め調整することにより、工程Bにおいて帯電量差の小さい現像剤同士を混合することができ、得られる二成分現像剤における各色のトナー間での現像の偏りを防止することができる。そのため、トナーに用いる内添剤や表面処理剤を調整しなくても、二成分現像剤の使用開始直後から、所望の色目を有する画像を得ることができ、また使用開始直後から数百〜数千枚の連続印刷において色目の変化のない画像を得ることができる。
【0012】
本発明の方法に用いるトナーは、特に限定されず、例えば、従来公知の結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等から構成されるものを用いることができる。
【0013】
結着樹脂としては、例えば、ポリエステル等の縮重合系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられるが、これらの中では、トナーの低温定着性、耐久性及び得られる画像の色再現性の観点から、ポリエステルが好ましい。ポリエステルの含有量は、結着樹脂中、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0014】
ポリエステルは、特に限定されないが、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分を含む原料モノマーを縮重合させて得られる。
【0015】
2価以上のアルコールとしては、トナーの保存安定性の観点から、式(I):
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。かかるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0018】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシエチレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数2のエチレンオキサイド付加物、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のRが炭素数3のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0019】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0020】
また、2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸(例えば、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸)等の脂肪族カルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、並びにこれらの酸の無水物及び低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。なお、上記のような酸、これらの酸の無水物、及び酸のアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
【0021】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整やトナーの耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0022】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、180〜250℃の温度で行うことができるが、エステル化触媒の存在下で行うことが好ましい。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、チタン化合物、Sn-C結合を有していない錫(II)化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は両者を併用して用いられる。
【0023】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0024】
耐久性及び定着性の観点から、ポリエステルの軟化点は80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましく、酸価は0.5〜60mgKOH/gが好ましい。
【0025】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを所望の色目に応じて使用することができる。イエロートナー用としては、C.I.ピグメントイエロー(P.Y.) 3, 12, 13, 14, 16, 17, 55, 65, 73, 74, 83, 94, 95, 97, 120, 139, 151, 154, 167, 169, 172, 180, 181, 185及びこれらの混合顔料等が挙げられる。マゼンタトナー用としては、C.I.ピグメントレッド(P.R.) 5, 31, 57:1, 122, 146, 147, 150, 176, 184, 202, 269、C.I.ピグメントバイオレット(P.V.) 19及びこれらの混合顔料等が挙げられる。シアントナー用としては、C.I.ピグメントブルー(P.B.) 15:3、C.I.ピグメントブルー 15:3とC.I.ピグメントグリーン(P.G.) 7又はC.I.ピグメントグリーン 36との混合顔料等が挙げられる。なお、ここでいう混合顔料とは、トナーの原料配合時にそれぞれの顔料が併用されていてもよく、両者を同一粒径に揃えてあらかじめ混合した状態で他のトナー原料に配合して用いられていてもよい。
【0026】
着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜40重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0027】
荷電制御剤としては、負帯電性及び正帯電性のいずれのものも使用することができる。負帯電性荷電制御剤としては、例えば、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、カリックスアレーン等のフェノール類とアルデヒド類との重合体等が挙げられる。正帯電性荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。また、樹脂等の高分子タイプのものを使用することもできる。荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜8重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。
【0028】
結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤以外の原料としては、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤が挙げられる。
【0029】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらのなかでは、離型性及び安定性の観点から、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスが好ましく、これらは単独で又は2種以上を混合して含有されていても良い。離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましい。
【0030】
トナーの製造方法は、混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の公知のいずれの方法であってもよいが、製造が容易なことから、混練粉砕法が好ましい。例えば、混練粉砕法による粉砕トナーの場合、結着樹脂、荷電制御樹脂、着色剤、ワックス等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0031】
さらに、各トナーには、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、樹脂微粒子等の有機微粒子等の外添剤と、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌可能な混合機を用いて混合することによって、外添処理が施されていてもよい。
【0032】
トナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0033】
本発明において、キャリアは公知の材料からなるものを特に限定することなく用いることができ、使用する印刷装置等により適宜決定すればよいが、例えば、キャリアの体積平均粒径は、一般的に30〜80μm程度が好ましく、キャリアの飽和磁化としては、キャリア上がりと画質の観点から、40〜100Am2/kgが好ましい。
【0034】
キャリアのコア材としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト、マグネシウムフェライト等の合金や化合物、ガラスビーズ等が挙げられ、これらの中では、帯電性の観点から、鉄粉、マグネタイト、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトが好ましく、画質の観点から、フェライト、銅-亜鉛-マグネシウムフェライト、マンガンフェライト及びマグネシウムフェライトがより好ましい。キャリアの表面は、スペント防止等の観点から、樹脂で被覆されていてもよい。
【0035】
工程Aにおいて、トナーとキャリアとの混合に用いられる混合機としては、V型ブレンダー、ターブラーシェーカーミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。混合時間は、所望の帯電量になるように適宜決定されるが、通常1〜30分間程度が好ましい。
【0036】
工程Aで得られる現像剤中のトナーの含有量は、初期画像濃度の観点から、0.1〜10重量%が好ましく、2.0〜8.0重量%がより好ましい。プリンター等の装置側のトナー濃度の設定の観点から、工程Bで混合する各現像剤中のトナーの含有量は同じであることが好ましい。
【0037】
工程Bで混合する現像剤同士の帯電量の差は小さいほど好ましく、具体的には、帯電量が最大の現像剤と最小の現像剤との帯電量の差は、10μC/g以下が好ましく、5μC/g以下がより好ましい。なお、仮に、工程Bで、正帯電性の現像剤と負帯電性の現像剤を混合する場合でも、正負の記号を含めて帯電量の差を計算する。例えば、帯電量が5μC/gの現像剤と帯電量の-5μC/gの現像剤の帯電量の差は10μC/gとなる。
【0038】
各現像剤の帯電量は、含有するトナー中の荷電調整剤の量によって調整することもできるが、本発明では、工程Aで得られた現像剤において、帯電量が最大の現像剤と最小の現像剤の帯電量の差が所望の範囲となるように、工程Aにおいてトナーとキャリアとの混合条件を調整することが好ましい。現像剤の帯電量の調整が可能な混合条件としては、混合時間やキャリアと混合するトナーの量等が挙げられ、混合時間を長くするほど、帯電量の絶対値が小さくなる傾向があり、トナーの量が少ないほど、帯電量の絶対値が大きくなる傾向がある。本発明においては、プリンター等の装置側のトナー濃度の設定の観点から、各現像剤の帯電量は、トナーの量よりも、トナーとキャリアの混合時間により、調整することが好ましい。さらに、各トナー中の荷電調整剤の量によって、各現像剤の帯電量を調整することもできる。
【0039】
工程Bにおいて、工程Aで得られた少なくとも2色の単色の現像剤同士の混合に用いられる混合機としては、工程Aに用いるのと同様の混合機を例示することができる。混合時間は、各色のトナーを均一に混合する観点から、通常1〜15分程度が好ましい。
【0040】
工程Bで混合する現像剤の色目や配合比は、目的色に応じて適宜決定されるが、トナー間での帯電量の不均一化を防止することができる本発明では、現像剤の配合比にかかわらず、所望の色目の画像を得ることができる。
【実施例】
【0041】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出する温度を軟化点とする。
【0042】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、降温速度100℃/minで−10℃まで冷却した試料を3分間放置し、その後、昇温速度60℃/minで25℃まで昇温し2分間保持して、昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
【0043】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0044】
〔樹脂の水酸基価〕
JIS K0070の方法により測定する。
【0045】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナーの体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5重量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0046】
〔現像剤の帯電量〕
q/m-meter(Epping社製)で、500メッシュを使用して下記の条件で測定する。
測定条件:
メッシュサイズ:500メッシュ(ステンレス製)
ソフトブロー
ブロー圧(1050V)
吸引時間:90秒
帯電量(μC/g)=90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナーの重量(g)
【0047】
〔キャリアの飽和磁化〕
(1) 外径7mm(内径6mm)、高さ5mmの蓋付プラスティックケースにキャリアをタッピングしながら充填し、プラスティックケースの重量とキャリアを充填したプラスティックケースの重量の差から、キャリアの質量を求める。
(2) 理研電子(株)の磁気特性測定装置「BHV-50H」(V.S.MAGNETOMETER)のサンプルホルダーにキャリアを充填したプラスティックケースをセットし、バイブレーション機能を使用して、プラスティックケースを加振しながら、79.6kA/mの磁場を印加して飽和磁化を測定する。得られた値は充填されたキャリアの質量を考慮し、単位質量当たりの飽和磁化に換算する。
【0048】
樹脂製造例1
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-(4-ヒドロキシフェニル)1705g、テレフタル酸328g、フマル酸1050g及び酸化ジブチル錫2.5gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、230℃にて8時間かけ反応させた後、8.3kPaにて所定の軟化点に達するまでさらに反応させた。得られた樹脂の軟化点は108℃、ガラス転移点は60℃、酸価は19mgKOH/g、水酸基価は23mgKOH/gであった。得られた樹脂をポリエステルAとする。
【0049】
イエロートナー製造例
ポリエステルA 100重量部、イエロー顔料「Paliotol Yellow D1155」(BASF社、P.Y.185)4.7重量部及び「Paliotol Yellow D1819」(BASF社、P.Y.139)0.3重量部、荷電制御剤「ボントロン E-81」(オリエント化学工業社)2重量部、及びポリプロピレンワックス「ハイワックスNP-105」(三井化学社製)2重量部をヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押出機により溶融混練し、冷却後、衝突板式粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて、粉砕、分級を行い体積中位粒径(D50)8.4μmのトナー粒子を得た。
【0050】
得られたトナー粒子100重量部に疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製)0.6重量部を添加し、10リットル容のヘンシェルミキサーで3200r/min、180秒間攪拌し、目開き100μmの金網で篩ってトナーYを得た。
【0051】
シアントナー製造例
イエロー顔料の代わりに、シアン顔料「ECB-301」(大日精化工業社製、銅フタロシアニン顔料、P.B.15:3)5重量部を使用した以外は、イエロートナー製造例と同様にして、トナーCを得た。
【0052】
マゼンタトナー製造例
イエロー顔料の代わりに、マゼンタ顔料「Fastogen Super Magenta R」(大日本インキ化学工業社製、P.R.122)5重量部を使用した以外は、イエロートナー製造例と同様にして、トナーMを得た。
【0053】
実施例1〜6
〔イエロー現像剤の調製〕
トナーY 342gとフェライトキャリア(体積平均粒径:60μm、飽和磁化:68Am2/kg)5000gとをV型ブレンダー(池本理化工業社製)で10分間混合し、現像剤Y1を得た。
【0054】
また、さらに10分間混合(合計20分)し、現像剤Y2を得た。
【0055】
〔シアン現像剤の調製〕
トナーYの代わりにトナーCを表1に示す量で使用し、混合時間を表1に示す時間に調整した以外は、現像剤Y1と同様にして、現像剤C1〜C4を得た。
【0056】
〔マゼンタ現像剤の調製〕
トナーYの代わりにトナーMを表1に示す量で使用し、混合時間を表1に示す時間に調整した以外は、現像剤Y1と同様にして、現像剤M1を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
〔現像剤の混合〕
表2に示す現像剤各々2.5kgを用い、V型ブレンダー(池本理化工業社製)で10分間混合して、現像剤を得た。
【0059】
比較例1
トナーY171gとトナーC 171gとを1リットル容の容器に入れて、ターブラーシェーカーミキサーにて10分間混合し、グリーン色のトナーG1を得た。
【0060】
トナーG1342gとフェライトキャリア(体積平均粒径:60μm、飽和磁化:68Am2/kg)5000gとをV型ブレンダー(池本理化工業社製)で10分間混合し、現像剤G1を得た。
【0061】
比較例2
トナーY265gとトナーC 77gを使用した以外は、比較例1と同様にして、グリーン色のトナーG2を得、さらに現像剤G2を調製した。
【0062】
比較例3
トナーYの代わりに、トナーM 171gを使用した以外は、比較例1と同様にして、パープル色のトナーP1を得、さらに現像剤P1を調製した。
【0063】
試験例1
実施例及び比較例で得られた現像剤を、オセプリンティングシステム社製の「Vario Stream 9220」(線速1000mm/sec)に実装し、印字率9%の画像を1000枚印刷した。1000枚目の画像の色相を初期画像(10枚目)と比較し、以下の方法により、色相の変化(ΔE)を測定した。ΔEが小さいほど、色相の変化が小さいことを示す。結果を表2に示す。
【0064】
〔ΔEの測定〕
色彩計「SPM50」(グレタグ社製)を用いてL*値、a*値及びb*値を測定する。下記式に従って色差(ΔE)を算出し、色相の変化を評価する。
【0065】
【数1】

【0066】
(式中、L1*、a1*及びb1*は初期画像の測定値を、L2*、a2*及びb2*は1000枚目の画像の測定値をそれぞれ示す。)
【0067】
【表2】

【0068】
以上の結果より、予め各色のトナー毎にキャリアと混合し、得られた現像剤同士を混合して調色した実施例1〜6の現像剤は、トナー同士を混合して調色した後にキャリアと混合して現像剤を調製した比較例1〜3の現像剤と対比して、連続印刷による色相変化が小さいことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により得られる二成分現像剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2色のトナーとキャリアからなる二成分現像剤の製造方法であって、各トナーをキャリアと混合して、各現像剤を得る工程Aと、工程Aで得られた現像剤を混合する工程Bとを含む二成分現像剤の製造方法。
【請求項2】
工程Aで得られる各現像剤中のトナーの含有量が、0.1〜10重量%である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
工程Aで得られた現像剤において、帯電量が最大の現像剤と最小の現像剤の帯電量の差が10μC/g以下となるように、工程Aにおいてトナーとキャリアとの混合条件を調整する、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
工程Aにおいて、トナーとキャリアの混合時間を調整することにより、各現像剤の帯電量を調整する、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−39276(P2010−39276A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203072(P2008−203072)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】