説明

二次電池の劣化判定装置及び劣化判定方法

【課題】二次電池の充電完了からの経過時間にかかわらず、劣化判定を精度良く行うことができる二次電池の劣化判定装置及び劣化判定方法を提供する。
【解決手段】劣化判定装置10は、充電完了後のインピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定するものであり、インピーダンス測定部11と、変化率計算部12と、補正部13と、判定部14と、表示部15とを備えている。補正部13は、変化率測定部12により求められたインピーダンスの変化率に基づき、インピーダンス測定部11により測定されたインピーダンスの測定値を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池のインピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定する劣化判定装置及び劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、充電が完了した状態の二次電池のインピーダンス値は、二次電池の劣化状態と相関があることが知られており、劣化が進むにつれて、インピーダンス値が高く変化していく(例えば、特許文献1参照)。この特性に基づき、充電が完了した状態の二次電池のインピーダンス値を測定し、判定の基準となる良品の二次電池のインピーダンス値と比較することにより、二次電池の劣化判定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−228226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電完了直後に測定した二次電池のインピーダンス値と、判定の基準値とを比較して劣化判定を行うと、判定精度が低下してしまうという問題があった。これは、充電完了直後に、二次電池のインピーダンス値が、一時的に、特に低い状態になるからであり、この時に測定されたインピーダンス値を判定に用いると、二次電池の劣化状態を誤判定してしまう。
【0005】
この判定精度の低下は、二次電池のインピーダンス値を充電完了直後ではなく、充電完了後、数時間放置してから測定することにより防ぐことができる。これは、充電が完了してからしばらく経過すると、インピーダンス値が充電完了直後の低い状態から本来の状態に戻るためである。
【0006】
従って、インピーダンスの測定値に基づき二次電池の劣化を判定する場合には、測定作業者が、二次電池の充電が完了した後、数時間放置して、測定条件を揃える必要があった。そのため、充電後に放置する時間の分だけ劣化判定の作業時間が増加してしまい、迅速に判定を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、二次電池の充電完了からの経過時間にかかわらず、劣化判定を精度良く行うことができる二次電池の劣化判定装置及び劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二次電池の劣化判定装置は、インピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定するものであって、二次電池のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、このインピーダンス測定部により測定されたインピーダンスの測定値に基づき、インピーダンスの変化率を求める変化率計算部と、この変化率計算部により求められたインピーダンスの変化率に基づき、インピーダンス測定部により測定されたインピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値を求める補正部と、この補正部により補正したインピーダンスの補正値と、判定の基準となるインピーダンスの基準値とを比較し、二次電池の劣化を判定する判定部とを備えたものである。
【0009】
本発明の二次電池の劣化判定方法は、二次電池の充電完了後のインピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定するものであって、二次電池の充電完了後にインピーダンス値を測定する工程と、測定したインピーダンスの測定値に基づき、インピーダンスの変化率を求める工程と、求めたインピーダンスの変化率に基づき、インピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値を求める工程と、補正したインピーダンスの補正値と、判定の基準となるインピーダンスの基準値とを比較し、二次電池の劣化を判定する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インピーダンスの変化率に応じてインピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値と、インピーダンスの基準値とを比較して、二次電池の劣化を判定するようにしたので、充電完了後、インピーダンス値が安定するまで一定時間待たなくても、充電完了直後のインピーダンスの測定値から、一定時間経過後のインピーダンス値を推定して、精度良く二次電池の劣化を判定することができる。よって、迅速に高い精度で劣化判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の劣化判定装置の構成を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る二次電池の劣化判定装置10の構成を表すものである。この二次電池の劣化判定装置10は、充電完了後のインピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定するものであり、例えば、インピーダンス測定部11と、変化率計算部12と、補正部13と、判定部14と、表示部15とを備えている。この二次電池の劣化判定装置10は、鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル水素充電池、リチウム二次電池等の各種二次電池の劣化判定に用いることができる。
【0014】
インピーダンス測定部11は、例えば、判定対象の二次電池20に接続され、二次電池のインピーダンス値について所定時間の連続した測定を行うものである。インピーダンス測定部11は、また、変化率計算部12及び補正部13と接続されており、測定したインピーダンスの測定値を変化率計算部12及び補正部13にそれぞれ出力するようになっている。
【0015】
変化率計算部12は、例えば、インピーダンス測定部11から受け取った所定時間の連続したインピーダンスの測定値から、単位時間当たりのインピーダンスの変化率を求めるものである。変化率計算部12は、また、補正部13にも接続されており、求めたインピーダンスの変化率を補正部13に出力するようになっている。
【0016】
補正部13は、例えば、インピーダンス測定部11から受け取った所定時間の連続したインピーダンスの測定値のうち、定められた時点のインピーダンス値について、変化率測定部12から受け取ったインピーダンスの変化率に基づき補正し、インピーダンスの補正値を求めるものである。例えば、判定対象の二次電池20について予め充電完了後のインピーダンス値と時間との関係を求めておき、その関係と、求められたインピーダンス変化率とを用いて、インピーダンスの補正値が求められる。補正部13は、また、判定部14に接続されており、求めたインピーダンスの補正値を判定部14に出力するようになっている。
【0017】
判定部14は、例えば、補正部13から受け取ったインピーダンスの補正値と、判定の基準となるインピーダンスの基準値とを比較し、二次電池20の劣化を判定するものである。インピーダンスの基準値は、判定対象の二次電池20に応じて予め設定される。判定部14は、また、表示部15に接続されており、判定結果を表示部15に出力するようになっている。
【0018】
この二次電池の劣化判定装置10は、例えば、次のようにして二次電池20の劣化を判定する。なお、以下では、例えば、充電完了後に二次電池20のインピーダンス値が直線的に増加し、安定するまでの時間がA、二次電池20の劣化判定の基準となるインピーダンスの基準値がFである場合について説明する。
【0019】
まず、充電を完了した直後の二次電池20をインピーダンス測定部11に接続する。インピーダンス測定部11は、所定の時間、例えば5分間、インピーダンスを測定し、測定結果を変化率計算部12及び補正部13に出力する。変化率計算部12は、インピーダンス測定部11から受け取ったインピーダンスの測定値に基づき、インピーダンスの変化率を求め、補正部13に出力する。例えば、測定開始時のインピーダンスの測定値をB、測定終了時(例えば、5分後)のインピーダンスの測定値をC、インピーダンスの変化率DをD=(C−B)/5分により求める。
【0020】
補正部13は、変化率測定部12から受け取ったインピーダンスの変化率に基づき、インピーダンス測定部11から受け取ったインピーダンスの測定値をインピーダンスが安定化する後の値に補正し、求めたインピーダンスの補正値を判定部14に出力する。例えば、判定対象の二次電池20のインピーダンス値が充電完了後に直線的に増加し、安定するまでの時間がAであるとすると、インピーダンスの変化率DにAを掛けた値D×Aを測定開始時のインピーダンスの測定値Bに加算して、インピーダンスの補正値E=B+D×Aを求める。
【0021】
判定部14は、補正部13から受け取ったインピーダンスの補正値Eと、インピーダンスの基準値Fとを比較し、例えば、インピーダンスの補正値Eがインピーダンスの基準値F以上の場合には、否品と判定し、インピーダンスの補正値Eがインピーダンスの基準値Fよりも小さい場合には、良品と判定する。判定部14は、この判定結果を表示部15に出力し、表示部15は、判定結果を表示する。
【0022】
(実施例)
劣化しているニッケル水素充電池について、上述した二次電池の劣化判定装置10を用いて劣化判定を行った。なお、このニッケル水素充電池は、充電完了後にインピーダンス値が直線的に増加し、インピーダンス値が安定するまでの時間Aが120分のものであり、インピーダンスの補正値Eは上述した関係式により求められる。また、インピーダンスの基準値Fは1000mΩとした。
【0023】
まず、充電を完了した直後の二次電池20をインピーダンス測定部11に接続し、インピーダンス測定部11により、5分間、インピーダンスを測定した。測定開始時のインピーダンスの測定値Bは800mΩ、5分後のインピーダンスの測定値Cは825mΩであった。次いで、このインピーダンスの測定値B,Cに基づき、変化率計算部13により、インピーダンスの変化率Dを求めた。その結果、インピーダンスの変化率Dは、D=(C−B)/5分=(825mΩ―800mΩ)/5分=5mΩ/分であった。
【0024】
続いて、補正部13により、インピーダンスの変化率DにAを掛けた値D×Aを測定開始時のインピーダンスの測定値Bに加算して、インピーダンスの補正値を測定した。その結果、インピーダンスの補正値Eは、E=B+D×A=800mΩ+(5mΩ/分×120分)=800mΩ+600mΩ=1400mΩであった。
【0025】
そののち、判定部14により、インピーダンスの補正値E=1400mΩと、インピーダンスの基準値F=1000mΩとを比較し、劣化判定を行った。その結果、インピーダンスの補正値Eは、インピーダンスの基準値Fよりも大きかったので、否品と判定した。
【0026】
また、同一の二次電池20について、充電完了から120分経過後にインピーダンスを測定したところ、インピーダンス値は1380mΩであった。
【0027】
このように、充電完了直後のインピーダンスの測定値B,Cは800mΩ及び825mΩであり、いずれもインピーダンスの基準値Fの1000mΩよりも小さいので、これにより劣化判定を行うと誤判定となってしまう。これに対して、本実施例によれば、インピーダンスの変化率Dに基づき、インピーダンスの測定値を補正するようにしたので、インピーダンスの補正値Eは1400mΩとなり、充電完了から120分経過後に測定した安定化後のインピーダンス値と変わらない値が得られ、正しい劣化判定を行うことができた。
【0028】
このように本実施の形態によれば、インピーダンスの変化率に応じてインピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値と、インピーダンスの基準値とを比較して、二次電池20の劣化を判定するようにしたので、充電完了後、インピーダンス値が安定するまで一定時間待たなくても、充電完了直後のインピーダンスの測定値から、一定時間経過後のインピーダンス値を推定して、精度良く二次電池の劣化を判定することができる。よって、迅速に高い精度で劣化判定を行うことができる。
【0029】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、補正部13における補正方法について具体的に説明したが、判定対象の二次電池20の特性に応じて、他の方法により求めることができる。また、上記実施の形態では、インピーダンス測定部11において二次電池のインピーダンス値を所定時間連続して測定する場合について説明したが、所定時間を開けて複数回測定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
二次電池の劣化判定に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
10…劣化判定装置、11…インピーダンス測定部、12…変化率計算部、13…補正部、14…判定部、15…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定する劣化判定装置であって、
二次電池のインピーダンス値を測定するインピーダンス測定部と、
このインピーダンス測定部により測定されたインピーダンスの測定値に基づき、インピーダンスの変化率を求める変化率計算部と、
この変化率計算部により求められたインピーダンスの変化率に基づき、前記インピーダンス測定部により測定されたインピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値を求める補正部と、
この補正部により補正したインピーダンスの補正値と、判定の基準となるインピーダンスの基準値とを比較し、二次電池の劣化を判定する判定部と
を備えたことを特徴とする二次電池の劣化判定装置。
【請求項2】
二次電池の充電完了後のインピーダンス値に基づき二次電池の劣化を判定する劣化判定方法であって、
二次電池の充電完了後にインピーダンス値を測定する工程と、
測定したインピーダンスの測定値に基づき、インピーダンスの変化率を求める工程と、
求めたインピーダンスの変化率に基づき、インピーダンスの測定値を補正し、インピーダンスの補正値を求める工程と、
補正したインピーダンスの補正値と、判定の基準となるインピーダンスの基準値とを比較し、二次電池の劣化を判定する工程と
を含むことを特徴とする二次電池の劣化判定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−83522(P2013−83522A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223007(P2011−223007)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(309019408)株式会社 ケーエンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】