二次電池
【課題】ガス排出弁が開弁した際の破片の飛散を防止する。
【解決手段】発電体3が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、ガス排出弁は、ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部12と、外周溝部12により形成される領域内に設けられた内側溝部11とを有し、外周溝部12は、複数の溝要素12S1〜S4,12D1〜D4と溝要素同士の間に設けられた不連続部13A,13Bにより構成され、内側溝部11の深さは、溝要素12S1〜S4,12D1〜D4の深さよりも深くなっている。
【解決手段】発電体3が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、ガス排出弁は、ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部12と、外周溝部12により形成される領域内に設けられた内側溝部11とを有し、外周溝部12は、複数の溝要素12S1〜S4,12D1〜D4と溝要素同士の間に設けられた不連続部13A,13Bにより構成され、内側溝部11の深さは、溝要素12S1〜S4,12D1〜D4の深さよりも深くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出弁を設けた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等から二次電池を搭載したハイブリット車や電気自動車の開発が進んでいる。二次電池は何らかの異常動作により発熱し、電池内圧が高くなる可能性があり、その安全対策として、ガス排出弁を設けた構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の密閉型電池では、開口部を塞ぐ封口板に、溝によって囲繞された領域を形成してガス排出弁としている。特許文献2記載の電池の安全弁は、環状の破砕溝と、この破砕溝の内方領域に形成された破砕補助溝とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4155734号
【特許文献2】特許3222418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2記載のガス排出弁は、連続的な溝によって囲繞された領域が破断される構成であるため、ガス排出時に、破断した破片が飛散するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明は、発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、前記ガス排出弁は、前記ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部と、前記外周溝部により形成される領域内に設けられた内側溝部とを有し、前記外周溝部は、複数の溝要素と前記溝要素同士の間に設けられた不連続部により構成され、前記内側溝部の深さは、前記溝要素の深さよりも深くなっていることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の二次電池において、前記内側溝部は、前記ガス排出弁中央部側から前記外周溝部を構成する不連続部に向けて形成された溝要素であることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の二次電池において、前記内側溝部を構成する溝要素の端部は、前記不連続部に配置されていることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3に記載の二次電池において、前記外周溝部を構成する溝要素及び前記内側溝部を構成する溝要素の断面形状は、三角形状または円弧状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス排出弁が開弁した際の破片の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による二次電池の第1実施形態を示す外観斜視図。
【図2】図1の二次電池の分解斜視図。
【図3】図1の二次電池のガス外出弁の拡大図。
【図4】図3におけるガス排出弁の平面図。
【図5】図4のV−V矢視線に沿う断面図。
【図6】図5におけるVI部を示す拡大図。
【図7】図5におけるVII部を示す拡大図。
【図8】図4のガス排出弁の開口時の状態を示す斜視図。
【図9】図8のIX−IX矢視線に沿う断面図。
【図10】図9におけるX部を示す断面図。
【図11】本発明による二次電池の第2実施形態におけるガス排出弁の平面図。
【図12】図11のXII−XII矢視線に沿う断面図。
【図13】図12におけるXIII部を示す拡大図。
【図14】図12におけるXIV部を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による二次電池の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1に示す二次電池は、電池容器を構成するケース1および蓋6を備える。ケース1内には発電体3(図2)が収納され、ケース1は蓋6によって封止される。蓋6はケース1に溶接されて電池容器が構成される。蓋6には、正極外部端子8Aと、負極外部端子8Bとが設けられている。発電体3から外部端子8A,8Bを介して外部負荷に電力が供給される。また、外部で発電された電力が外部端子8A,8Bを介して発電体3に充電される。
【0010】
蓋6にはガス排出弁10が一体的に設けられ、電池容器内の圧力が上昇すると、ガス排出弁10が開いて内部からガスが排出され、電池容器内の圧力が低減される。これによって、二次電池の安全性が確保される。
【0011】
図2を参照して、二次電池のケース1内に収容される電池の構成を説明する。二次電池のケース1内には、絶縁シート2を介して発電体3が収容されている。発電体3は、セパレータを介して正負極体を扁平形状に捲回した電極群であり、捲回軸方向の両端面側には、正極合剤および負極合剤が塗布されていない電極泊露出面(不図示)が設けられている。発電体3の電極泊露出面である正極接続部と負極接続部には、それぞれ正負極集電板4A,4Bの一端が接続されている。正負極集電板4A,4Bの他端は正負極外部端子8A,8Bにそれぞれ接続されている。正負極集電板4A,4Bと外部端子8A,8Bを蓋6から電気的に絶縁するため、ガスケット5および絶縁リング7が蓋6に設けられている。
【0012】
蓋6には、ケース1内に電解液を注入する注液口9が穿設され、注液口9は、電解液注入後に注液栓19によって封止される。
【0013】
図3〜図7を参照してガス排出弁10を詳細に説明する。ガス排出弁10は、蓋6の板厚よりも薄く成形され、電池容器内の圧力が所定値に達したときに開裂して容器内部の圧力を逃がすものである。
【0014】
蓋6は、例えば、アルミニウム合金板をプレス加工して成形され、ガス排出弁10は、その成形時に、蓋6の外周よりも内側に一体的に成形される。すなわち、蓋6の上面には略楕円形状の凹部10aが設けられ、ガス排出弁10は、凹部10aの底面の略楕円形状の薄板10b(図3および図5参照)により構成されている。薄板10bの表面には、内側溝部11と外周溝部12とがプレス加工にて形成され、薄板10bがガス排出弁の弁体として機能する。
【0015】
図3と図4を参照して説明すると、外周溝部12は、凹部10aの外周に沿った第1溝要素群12D1,12D2と、第2溝要素群12D3,12D4と、第3溝要素群12S1,12S2と、第4溝要素群12S3,12S4により構成されている。第1溝要素群を構成する溝要素12D1と12D2との間、第2溝要素群を構成する溝要素12D3と12D4との間、第3溝要素群を構成する溝要素12S1と12S2との間、第4溝要素群を構成する溝要素12S3と12S4との間には、それぞれ第1不連続部13Aが形成されている。また、第1溝要素群〜第4溝要素群の各群間には、第2不連続部13Bが形成されている。
【0016】
後述するように、第1不連続部13Aは弁素片が分離するのを防止する飛散抑止としての機能を有し、第2不連続部13Bは、内側溝から外周溝へ開裂が進展するのを遅延する開裂進展遅延部としての機能を有する。
【0017】
内側溝部11は、ダブルY字形状の溝であり、1本の中央溝要素11aと4本の放射溝要素11bとで構成されている。溝要素11aは、凹部10aの中央部で楕円の長手軸方向に延在する。溝要素11bのそれぞれは、溝要素11aの両端部から放射状に不連続部13Bまで延在する。すなわち、溝要素11bの端部11Eは不連続部13に位置している。
【0018】
図6、図7に示すように、内側溝部11、外周溝部12は断面三角形状に形成され、内側溝部11は外周溝部12よりも深く形成されている。これは、外周溝部12が内側溝部11よりも遅れて開裂することを保証するためである。
【0019】
図4に示すように、略楕円形状の薄板10bの表面は、外周溝部12と内側溝部11により4つの領域、すなわち、台形形状の領域D1、D2と三角形形状の領域S1、S2とに区画されている。2つの台形形状の領域D1、D2の上底は共通の内側溝要素11aであり、台形形状のD1、D2の側辺は、隣接する三角形状の領域S1、S2の側辺と共通の内側溝要素11bである。
【0020】
台形領域D1、D2と三角形領域S1、S2は、電池容器の内圧が所定値以上に上昇して内側溝部11が開裂すると、それぞれ外周溝部12を開き運動回転軸として容器外方に開くように構成されている。したがって、台形領域D1、D2と三角形領域S1、S2の4つの領域をそれぞれ弁素片と呼ぶ。
【0021】
以上のように構成されたガス排出弁10の動作と作用効果について説明する。
電池容器内部の圧力が上昇すると、弁体10bは外方に膨張し、内側溝部11に引張応力が発生する。内圧が所定値以上に達すると、内側溝部11が開裂し弁素片が開弁する。すなわち、容器内圧により、ガス排出弁10は、2個の台形領域D1、D2と2個の三角形領域S1、S2とに分割される。すなわち、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は分断されつつ、外側にめくれ上がることによって、ガス排出弁10には大きな開口が生じる。
【0022】
このとき、図8および図9に示すように、台形領域D1、D2は上記楕円の短軸方向にめくれ上がり、三角形領域S1、S2は長軸方向にめくれ上がる。内側溝部11は、上記楕円の短軸、長軸両方向について対称形状であり、全方向に均等に開裂する。これによって、開裂はガス排出弁10全面に渡って、均等に生じ、ガス排出は円滑である。
【0023】
放射溝要素11bの外周端部11Eは、外周溝部12の溝要素群間の不連続部13Bに位置する。放射溝要素11bが裂けて、亀裂が外周端部11Eに到達したとき、台形領域D1、D2および三角形領域S1、S2は大きく変形し、外側に大きくめくれ上がる。これによって、ガス排出弁10に大きな開口が形成され、内部のガスを急速に排出することができる。
【0024】
外周溝部12を変形支点とした弁素片の開弁動作に際して、不連続部13Bは、放射溝要素11bの亀裂が外周溝部12の溝要素へ進展するのを遅延させ、内側溝部11全体に亀裂が生じたときに、外周溝部12の溝要素が亀裂を開始する。これによって、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2の一部のみがめくれ上がることを防止し、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2が均等に開口するようになっている。
【0025】
また、不連続部13Aを、各溝要素群における一対の溝要素の間、すなわち、一対の溝要素12D1、12D2の間、一対の溝要素12D3、12D4の間、一対の溝要素12S1、12S2の間、一対の溝要素12S3、12S4の間にそれぞれ設けた。不連続部13Aは、各溝要素群の中央部に配置されているから、開弁する際、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は安定に保持されつつ開弁動作する。
【0026】
図8〜図10に示すように、ガス排出弁10が充分大きく開口した際には、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は、不連続部13Aにおいて支持されつつ、外側方向に大きく変形し、充分大きな開口が生じる。これによって、電池容器内部の圧力が所定値に達したときに、弁素片を飛散させることなく、迅速に内側溝部11を大きく開裂させることができる。
【0027】
以上のとおり、第1実施形態による排出弁構造によれば、排出弁10を構成する弁体10bが破片となって分離することなく、充分な開口面積を確保することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明による二次電池の第2実施形態を、図11〜図14を参照して説明する。第2実施形態は、内側溝部11の形状をX字状に変更したものである。図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図11に示すように、内側溝部11は、上記楕円の中心で交差し、かつ長軸、短軸に対して傾斜した対称な線分11c、11dよりなるX字状に形成されている。内側溝部11によって、ガス排出弁10は、楕円の中心を頂点とし、外周溝部12を底辺とする4個の三角形領域S11〜S14に分割される。
【0030】
電池容器内部の圧力が上昇すると、弁体10bは外方に膨張し、内側溝部11に引張応力が発生する。内圧が所定値以上に達すると、内側溝部11が開裂し、三角形領域である弁素片S11〜S14が開弁する。すなわち、容器内圧により、ガス排出弁10は、4個の三角形形状の弁素片S11〜S14に分割される。すなわち、三角形形状の弁素片S11〜S14は分断されつつ、外側にめくれ上がることによって、ガス排出弁10には大きな開口が生じる。
【0031】
なお、三角形領域である弁素片S11〜S14は、底辺の外周溝部12を支点として、外側にめくれ上がり、不連続部13Bが破断して外周溝要素に亀裂が進展し、弁素片の開放運動が終了したときは、弁素片は不連続部13Aのみによって弁体である薄板11bに接続支持される。
【0032】
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0033】
[変形例]
本発明によるガス排出弁を有する二次電池は次のように変形して実施することができる。
(1)ガス排出弁10を蓋6と一体に形成したが、別体に製作し、蓋6の開口を覆うように設置してもよい。この場合も、ガス排出弁10の形状、機能は、第1実施の形態のガス排出弁10と同様に構成することができる。
【0034】
(2)ガス排出弁10を蓋6に設けたが、ケース1にガス排出弁10を一体形成し、あるいは別体のガス排出弁をケース1に装着してもよい。
(3)蓋6をアルミニウム製として説明したが、SUSで蓋を作製した場合、ガス排出弁をニッケルにより製作し、蓋に穿設したガス排出口を弁体で塞ぐように装着する。
【0035】
(4)内側溝部11および外周溝部12の断面形状を三角形としたが、円弧状等他の形状も採用することができる。また、内側溝部11と外周溝部12とを異なる断面形状としてもよい。ガス排出弁10の開裂を目的とする内側溝部11が外周溝部12よりも先に開裂して弁素片が開くような形状、強度であればよい。
【0036】
(5)ガス排出弁10を楕円形状としたが、円形、凸多角形等、種々の形状を採用できる。この場合、外周溝要素は、その外周形状に沿って不連続の環状として配置される。
(6)弁素片の形状も、上記実施形態に限定されないが、弁素片が花びらが開く如く開弁動作するような形状が好ましい。
【0037】
(7)角形二次電池に代えて、円筒形二次電池の上蓋に設けたガス排出弁に本発明を適用してもよい。
(8)内側溝部11と外周溝部12の形状は実施形態に限定されない。
【0038】
(9)上記実施形態では、外周溝部12に2種類の不連続部13A,13Bを設けたが、少なくとも不連続部13Aを飛散抑止部として設ければよい。
【0039】
上記の説明は本発明の一例であり、本発明が上記実施形態や変形例に限定されるものではない。
したがって、本発明は、発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池であって、ガス排出弁は、電池容器の内圧によって外部に膨張する弁体を含み、弁体には、膨張により開裂して弁体を複数の弁素片に分割するための複数の溝と、溝の開裂によって開放した複数の弁素片が弁体から飛散することを抑止する飛散抑止部とが設けられている種々の二次電池にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:電池ケース
3:発電体
6:電池蓋
10:ガス排出弁
10a:凹部
10b:弁体
11:内側溝部
11a,11b,11c::内側溝要素
11E:外周端部
12:外周溝部
12S1〜S4,12D1〜D4:外周溝要素
13A:不連続部(飛散抑止部)
13B:不連続部(開裂進展遅延部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス排出弁を設けた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等から二次電池を搭載したハイブリット車や電気自動車の開発が進んでいる。二次電池は何らかの異常動作により発熱し、電池内圧が高くなる可能性があり、その安全対策として、ガス排出弁を設けた構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1記載の密閉型電池では、開口部を塞ぐ封口板に、溝によって囲繞された領域を形成してガス排出弁としている。特許文献2記載の電池の安全弁は、環状の破砕溝と、この破砕溝の内方領域に形成された破砕補助溝とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4155734号
【特許文献2】特許3222418号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2記載のガス排出弁は、連続的な溝によって囲繞された領域が破断される構成であるため、ガス排出時に、破断した破片が飛散するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)請求項1の発明は、発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、前記ガス排出弁は、前記ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部と、前記外周溝部により形成される領域内に設けられた内側溝部とを有し、前記外周溝部は、複数の溝要素と前記溝要素同士の間に設けられた不連続部により構成され、前記内側溝部の深さは、前記溝要素の深さよりも深くなっていることを特徴とする。
(2)請求項2の発明は、請求項1に記載の二次電池において、前記内側溝部は、前記ガス排出弁中央部側から前記外周溝部を構成する不連続部に向けて形成された溝要素であることを特徴とする。
(3)請求項3の発明は、請求項2に記載の二次電池において、前記内側溝部を構成する溝要素の端部は、前記不連続部に配置されていることを特徴とする。
(4)請求項4の発明は、請求項3に記載の二次電池において、前記外周溝部を構成する溝要素及び前記内側溝部を構成する溝要素の断面形状は、三角形状または円弧状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス排出弁が開弁した際の破片の飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明による二次電池の第1実施形態を示す外観斜視図。
【図2】図1の二次電池の分解斜視図。
【図3】図1の二次電池のガス外出弁の拡大図。
【図4】図3におけるガス排出弁の平面図。
【図5】図4のV−V矢視線に沿う断面図。
【図6】図5におけるVI部を示す拡大図。
【図7】図5におけるVII部を示す拡大図。
【図8】図4のガス排出弁の開口時の状態を示す斜視図。
【図9】図8のIX−IX矢視線に沿う断面図。
【図10】図9におけるX部を示す断面図。
【図11】本発明による二次電池の第2実施形態におけるガス排出弁の平面図。
【図12】図11のXII−XII矢視線に沿う断面図。
【図13】図12におけるXIII部を示す拡大図。
【図14】図12におけるXIV部を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による二次電池の実施形態を、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1に示す二次電池は、電池容器を構成するケース1および蓋6を備える。ケース1内には発電体3(図2)が収納され、ケース1は蓋6によって封止される。蓋6はケース1に溶接されて電池容器が構成される。蓋6には、正極外部端子8Aと、負極外部端子8Bとが設けられている。発電体3から外部端子8A,8Bを介して外部負荷に電力が供給される。また、外部で発電された電力が外部端子8A,8Bを介して発電体3に充電される。
【0010】
蓋6にはガス排出弁10が一体的に設けられ、電池容器内の圧力が上昇すると、ガス排出弁10が開いて内部からガスが排出され、電池容器内の圧力が低減される。これによって、二次電池の安全性が確保される。
【0011】
図2を参照して、二次電池のケース1内に収容される電池の構成を説明する。二次電池のケース1内には、絶縁シート2を介して発電体3が収容されている。発電体3は、セパレータを介して正負極体を扁平形状に捲回した電極群であり、捲回軸方向の両端面側には、正極合剤および負極合剤が塗布されていない電極泊露出面(不図示)が設けられている。発電体3の電極泊露出面である正極接続部と負極接続部には、それぞれ正負極集電板4A,4Bの一端が接続されている。正負極集電板4A,4Bの他端は正負極外部端子8A,8Bにそれぞれ接続されている。正負極集電板4A,4Bと外部端子8A,8Bを蓋6から電気的に絶縁するため、ガスケット5および絶縁リング7が蓋6に設けられている。
【0012】
蓋6には、ケース1内に電解液を注入する注液口9が穿設され、注液口9は、電解液注入後に注液栓19によって封止される。
【0013】
図3〜図7を参照してガス排出弁10を詳細に説明する。ガス排出弁10は、蓋6の板厚よりも薄く成形され、電池容器内の圧力が所定値に達したときに開裂して容器内部の圧力を逃がすものである。
【0014】
蓋6は、例えば、アルミニウム合金板をプレス加工して成形され、ガス排出弁10は、その成形時に、蓋6の外周よりも内側に一体的に成形される。すなわち、蓋6の上面には略楕円形状の凹部10aが設けられ、ガス排出弁10は、凹部10aの底面の略楕円形状の薄板10b(図3および図5参照)により構成されている。薄板10bの表面には、内側溝部11と外周溝部12とがプレス加工にて形成され、薄板10bがガス排出弁の弁体として機能する。
【0015】
図3と図4を参照して説明すると、外周溝部12は、凹部10aの外周に沿った第1溝要素群12D1,12D2と、第2溝要素群12D3,12D4と、第3溝要素群12S1,12S2と、第4溝要素群12S3,12S4により構成されている。第1溝要素群を構成する溝要素12D1と12D2との間、第2溝要素群を構成する溝要素12D3と12D4との間、第3溝要素群を構成する溝要素12S1と12S2との間、第4溝要素群を構成する溝要素12S3と12S4との間には、それぞれ第1不連続部13Aが形成されている。また、第1溝要素群〜第4溝要素群の各群間には、第2不連続部13Bが形成されている。
【0016】
後述するように、第1不連続部13Aは弁素片が分離するのを防止する飛散抑止としての機能を有し、第2不連続部13Bは、内側溝から外周溝へ開裂が進展するのを遅延する開裂進展遅延部としての機能を有する。
【0017】
内側溝部11は、ダブルY字形状の溝であり、1本の中央溝要素11aと4本の放射溝要素11bとで構成されている。溝要素11aは、凹部10aの中央部で楕円の長手軸方向に延在する。溝要素11bのそれぞれは、溝要素11aの両端部から放射状に不連続部13Bまで延在する。すなわち、溝要素11bの端部11Eは不連続部13に位置している。
【0018】
図6、図7に示すように、内側溝部11、外周溝部12は断面三角形状に形成され、内側溝部11は外周溝部12よりも深く形成されている。これは、外周溝部12が内側溝部11よりも遅れて開裂することを保証するためである。
【0019】
図4に示すように、略楕円形状の薄板10bの表面は、外周溝部12と内側溝部11により4つの領域、すなわち、台形形状の領域D1、D2と三角形形状の領域S1、S2とに区画されている。2つの台形形状の領域D1、D2の上底は共通の内側溝要素11aであり、台形形状のD1、D2の側辺は、隣接する三角形状の領域S1、S2の側辺と共通の内側溝要素11bである。
【0020】
台形領域D1、D2と三角形領域S1、S2は、電池容器の内圧が所定値以上に上昇して内側溝部11が開裂すると、それぞれ外周溝部12を開き運動回転軸として容器外方に開くように構成されている。したがって、台形領域D1、D2と三角形領域S1、S2の4つの領域をそれぞれ弁素片と呼ぶ。
【0021】
以上のように構成されたガス排出弁10の動作と作用効果について説明する。
電池容器内部の圧力が上昇すると、弁体10bは外方に膨張し、内側溝部11に引張応力が発生する。内圧が所定値以上に達すると、内側溝部11が開裂し弁素片が開弁する。すなわち、容器内圧により、ガス排出弁10は、2個の台形領域D1、D2と2個の三角形領域S1、S2とに分割される。すなわち、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は分断されつつ、外側にめくれ上がることによって、ガス排出弁10には大きな開口が生じる。
【0022】
このとき、図8および図9に示すように、台形領域D1、D2は上記楕円の短軸方向にめくれ上がり、三角形領域S1、S2は長軸方向にめくれ上がる。内側溝部11は、上記楕円の短軸、長軸両方向について対称形状であり、全方向に均等に開裂する。これによって、開裂はガス排出弁10全面に渡って、均等に生じ、ガス排出は円滑である。
【0023】
放射溝要素11bの外周端部11Eは、外周溝部12の溝要素群間の不連続部13Bに位置する。放射溝要素11bが裂けて、亀裂が外周端部11Eに到達したとき、台形領域D1、D2および三角形領域S1、S2は大きく変形し、外側に大きくめくれ上がる。これによって、ガス排出弁10に大きな開口が形成され、内部のガスを急速に排出することができる。
【0024】
外周溝部12を変形支点とした弁素片の開弁動作に際して、不連続部13Bは、放射溝要素11bの亀裂が外周溝部12の溝要素へ進展するのを遅延させ、内側溝部11全体に亀裂が生じたときに、外周溝部12の溝要素が亀裂を開始する。これによって、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2の一部のみがめくれ上がることを防止し、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2が均等に開口するようになっている。
【0025】
また、不連続部13Aを、各溝要素群における一対の溝要素の間、すなわち、一対の溝要素12D1、12D2の間、一対の溝要素12D3、12D4の間、一対の溝要素12S1、12S2の間、一対の溝要素12S3、12S4の間にそれぞれ設けた。不連続部13Aは、各溝要素群の中央部に配置されているから、開弁する際、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は安定に保持されつつ開弁動作する。
【0026】
図8〜図10に示すように、ガス排出弁10が充分大きく開口した際には、台形領域D1、D2、三角形領域S1、S2は、不連続部13Aにおいて支持されつつ、外側方向に大きく変形し、充分大きな開口が生じる。これによって、電池容器内部の圧力が所定値に達したときに、弁素片を飛散させることなく、迅速に内側溝部11を大きく開裂させることができる。
【0027】
以上のとおり、第1実施形態による排出弁構造によれば、排出弁10を構成する弁体10bが破片となって分離することなく、充分な開口面積を確保することができる。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明による二次電池の第2実施形態を、図11〜図14を参照して説明する。第2実施形態は、内側溝部11の形状をX字状に変更したものである。図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0029】
図11に示すように、内側溝部11は、上記楕円の中心で交差し、かつ長軸、短軸に対して傾斜した対称な線分11c、11dよりなるX字状に形成されている。内側溝部11によって、ガス排出弁10は、楕円の中心を頂点とし、外周溝部12を底辺とする4個の三角形領域S11〜S14に分割される。
【0030】
電池容器内部の圧力が上昇すると、弁体10bは外方に膨張し、内側溝部11に引張応力が発生する。内圧が所定値以上に達すると、内側溝部11が開裂し、三角形領域である弁素片S11〜S14が開弁する。すなわち、容器内圧により、ガス排出弁10は、4個の三角形形状の弁素片S11〜S14に分割される。すなわち、三角形形状の弁素片S11〜S14は分断されつつ、外側にめくれ上がることによって、ガス排出弁10には大きな開口が生じる。
【0031】
なお、三角形領域である弁素片S11〜S14は、底辺の外周溝部12を支点として、外側にめくれ上がり、不連続部13Bが破断して外周溝要素に亀裂が進展し、弁素片の開放運動が終了したときは、弁素片は不連続部13Aのみによって弁体である薄板11bに接続支持される。
【0032】
第2実施形態は第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0033】
[変形例]
本発明によるガス排出弁を有する二次電池は次のように変形して実施することができる。
(1)ガス排出弁10を蓋6と一体に形成したが、別体に製作し、蓋6の開口を覆うように設置してもよい。この場合も、ガス排出弁10の形状、機能は、第1実施の形態のガス排出弁10と同様に構成することができる。
【0034】
(2)ガス排出弁10を蓋6に設けたが、ケース1にガス排出弁10を一体形成し、あるいは別体のガス排出弁をケース1に装着してもよい。
(3)蓋6をアルミニウム製として説明したが、SUSで蓋を作製した場合、ガス排出弁をニッケルにより製作し、蓋に穿設したガス排出口を弁体で塞ぐように装着する。
【0035】
(4)内側溝部11および外周溝部12の断面形状を三角形としたが、円弧状等他の形状も採用することができる。また、内側溝部11と外周溝部12とを異なる断面形状としてもよい。ガス排出弁10の開裂を目的とする内側溝部11が外周溝部12よりも先に開裂して弁素片が開くような形状、強度であればよい。
【0036】
(5)ガス排出弁10を楕円形状としたが、円形、凸多角形等、種々の形状を採用できる。この場合、外周溝要素は、その外周形状に沿って不連続の環状として配置される。
(6)弁素片の形状も、上記実施形態に限定されないが、弁素片が花びらが開く如く開弁動作するような形状が好ましい。
【0037】
(7)角形二次電池に代えて、円筒形二次電池の上蓋に設けたガス排出弁に本発明を適用してもよい。
(8)内側溝部11と外周溝部12の形状は実施形態に限定されない。
【0038】
(9)上記実施形態では、外周溝部12に2種類の不連続部13A,13Bを設けたが、少なくとも不連続部13Aを飛散抑止部として設ければよい。
【0039】
上記の説明は本発明の一例であり、本発明が上記実施形態や変形例に限定されるものではない。
したがって、本発明は、発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池であって、ガス排出弁は、電池容器の内圧によって外部に膨張する弁体を含み、弁体には、膨張により開裂して弁体を複数の弁素片に分割するための複数の溝と、溝の開裂によって開放した複数の弁素片が弁体から飛散することを抑止する飛散抑止部とが設けられている種々の二次電池にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1:電池ケース
3:発電体
6:電池蓋
10:ガス排出弁
10a:凹部
10b:弁体
11:内側溝部
11a,11b,11c::内側溝要素
11E:外周端部
12:外周溝部
12S1〜S4,12D1〜D4:外周溝要素
13A:不連続部(飛散抑止部)
13B:不連続部(開裂進展遅延部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、
前記ガス排出弁は、前記ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部と、前記外周溝部により形成される領域内に設けられた内側溝部とを有し、
前記外周溝部は、複数の溝要素と前記溝要素同士の間に設けられた不連続部により構成され、
前記内側溝部の深さは、前記溝要素の深さよりも深くなっていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池において、
前記内側溝部は、前記ガス排出弁中央部側から前記外周溝部を構成する不連続部に向けて形成された溝要素であることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池において、
前記内側溝部を構成する溝要素の端部は、前記不連続部に配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載の二次電池において、
前記外周溝部を構成する溝要素及び前記内側溝部を構成する溝要素の断面形状は、三角形状または円弧状であることを特徴とする二次電池。
【請求項1】
発電体が収容された電池容器にガス排出弁を設けた二次電池において、
前記ガス排出弁は、前記ガス排出弁の外周に沿って設けられた外周溝部と、前記外周溝部により形成される領域内に設けられた内側溝部とを有し、
前記外周溝部は、複数の溝要素と前記溝要素同士の間に設けられた不連続部により構成され、
前記内側溝部の深さは、前記溝要素の深さよりも深くなっていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池において、
前記内側溝部は、前記ガス排出弁中央部側から前記外周溝部を構成する不連続部に向けて形成された溝要素であることを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項2に記載の二次電池において、
前記内側溝部を構成する溝要素の端部は、前記不連続部に配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載の二次電池において、
前記外周溝部を構成する溝要素及び前記内側溝部を構成する溝要素の断面形状は、三角形状または円弧状であることを特徴とする二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−20988(P2013−20988A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−241515(P2012−241515)
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2010−41792(P2010−41792)の分割
【原出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【分割の表示】特願2010−41792(P2010−41792)の分割
【原出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(505083999)日立ビークルエナジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】
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