説明

二水石膏の製造方法

【課題】二水石膏とするための水和が困難なII型無水石膏を、効率よく二水石膏に水和させるために有効な二水石膏の製造方法を提供する。
【解決手段】II型無水石膏を含む無水石膏を、50%累積径が3μm以下になるように粉砕した後、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と、温度35℃以下で接触せしめる。また、得られる二水石膏をろ過、洗浄して発生するろ液及び/又は洗浄排水は、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液の一部として使用することができ、得られた二水石膏は、これをを乾燥すること無く、石膏ボードの原料として石膏ボード製造設備の石膏原料として再利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水石膏からの二水石膏の新規な製造方法に関する。詳しくは、二水石膏とするための水和が困難なII型無水石膏を、効率よく二水石膏に水和させるために有効な二水石膏の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボード廃材の発生量は、年間約150万tであり、この内、約50万tは生産時や家屋等の新築内装工事の端材で、石膏ボードメーカーがリサイクルを行っている。また、残りの約100万tが、家屋等の建造物の改装・解体工事で排出され、埋立処分されている。このような石膏ボード廃材の発生量は年々増加する傾向にあり、埋立地の不足、環境問題の点から石膏ボード廃材の有効な処理方法が求められている。
【0003】
石膏ボード廃材を有効にリサイクルするためには、まず、石膏以外の成分、主にはボード原紙とデンプン、界面活性剤などの有機成分を分離する必要がある。これらを石膏成分から分離させる方法の一つとして、石膏ボード廃材を加熱、焼成して分離する方法が提案されている。(特許文献1〜2参照)
上記特許文献1の方法では、石膏ボードを300℃前後の比較的低温で加熱することに有機成分を除去している。すなわち、かかる文献によれば、360℃以上で加熱すると、水和速度が極めて遅いII型無水石膏が大量に発生し、得られる石膏の用途が限定されるので好ましくないとされている。しかしながら、300℃以下の温度条件では、石膏中に混合された有機成分を焼失させるために非常に長時間を要すると共に、ボード原紙は、炭化物として残存するという問題がある。
【0004】
一般に、前記ボード原紙、有機成分を全て焼失させるには、特許文献2に示されるように500℃以上で焼成することが必要である。ところが、この条件では、前記したように、II型無水石膏が大量に発生し、かかるII型無水石膏は、水和速度が極めて遅いという問題を有する。そして、このように水和速度が遅い石膏は、水和させることを目的とするボード原料やセメント成分調整剤として使用する場合、その使用量が限定され、石膏ボードのリサイクル率を低下させる要因となっていた。
【0005】
一方、特許文献3には、フッ酸製造の際の副生無水石膏について、これを水和して二水石膏に水和させる方法として、硫酸ナトリウムなどの水和促進剤の存在下で行う方法が提案されている。しかしながら、特許文献3の実施例によれば、無水石膏を水和させて二水石膏を得るための反応に12時間程度を要しており、更なる改善の余地があった。
【0006】
以上の理由により、石膏ボードを焼成して無水石膏を生成させ、これを水和することにより、炭化物や有機成分を含まない高純度の二水石膏を得る方法は、従来、工業的に実施することが困難な状況にあった。
【0007】
【特許文献1】特許公報3221940号
【特許文献2】特許公報3108922号
【特許文献3】特開昭55−167127号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、(II型)無水石膏を効率よく二水石膏に水和せしめる二水石膏の製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、建築廃材、或いは、石膏ボード工場での生成する石膏ボード端材を焼成し、ボード原紙や有機成分を除去して得られる無水石膏を二水石膏に効率よく水和させて炭化物や有機成分を含まない高純度の二水石膏を得ることができ、これを石膏ボードの製造設備へのリサイクルすることを可能とした二水石膏の製造方法をも提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、II型無水石膏を水和促進剤の存在下に水和する反応において、水和促進剤として硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを使用した場合、上記無水石膏の粒径が、特定の粒径を境にして、その水和速度が劇的に向上するという知見を得た。
【0011】
本発明者らは、上記知見に基づき、II型無水石膏を含む無水石膏を、従来実施されたことのない、50%累積径が3μm以下という微粉に粉砕した後、特定の水和促進剤の存在下、特定の温度の下で水和することにより、極めて効率的に二水石膏が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、II型無水石膏を含む無水石膏を、50%累積径が3μm以下になるように粉砕した後、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と、温度35℃以下で接触せしめることを特徴とする二水石膏の製造方法である。
【0013】
また、上記大きさに粉砕された無水石膏を、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触せしめる際、平均粒径5〜70μmに二水石膏を種晶として添加することによって、粒径が十分大きい二水石膏が得られ、得られた無水石膏は石膏ボードの製造原料として有効に使用できることを確認した。
【0014】
即ち、本発明は、上記方法において、前記無水石膏の粉砕物を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液と接触せしめる際、種晶として平均粒径5〜70μmの二水石膏を存在せしめる、二水石膏の製造方法をも提供する。
【0015】
更に、本発明は、上記方法を利用して、石膏ボードより、炭化物や有機成分を含まない高純度の二水石膏を製造する方法をも提供する。
【0016】
即ち、本発明によれば、石膏ボードを粗破砕する粗破砕工程、上記粗破砕工程で得られた石膏ボード粗破砕物を焼成し、ボード原紙及び有機成分(以下、これらを「可燃性成分」と総称することもある。)を燃失せしめる焼成工程、上記焼成工程より得られたII型無水石膏を含む無水石膏を粉砕して50%累積径が3μm以下にする微粉砕工程、及び、上記微粉砕工程より得られた無水石膏粉砕物を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液と、温度35℃以下で接触させる水和工程を含むことを特徴とする石膏ボードからの二水石膏の製造方法が提供される。
【0017】
尚、前記焼成によるII型無水石膏の生成は、粉末X線回折の測定よって確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、無水石膏を特定の大きさに微粉砕という簡易な操作によって、II型無水石膏を含む無水石膏から二水石膏への水和効率を著しく向上させることができる。従って、上記無水石膏を大量に処理することができ、工業的規模での二水石膏の製造をすることを可能とした。
【0019】
上記本発明の効果を裏付けるデータとして、図1を示す。図1は、粒径の異なるII型無水石膏を、一定の条件で、硫酸ナトリウムの存在下に反応させて水和が完結するまでの時間をプロットしたグラフであるが、このグラフより明らかなように、50%累積径を3μm以下にすることによって、II型無水石膏から二水石膏への水和速度が劇的に短縮されることが理解される。
【0020】
本発明において、前記特定の粒径を境にして、II型無水石膏の二水石膏への水和速度が劇的に変化する理由について、本発明者等は次のように推定している。
【0021】
即ち、II型無水石膏を粉砕し、粒径を小さくすることによってII型無水石膏の比表面積が大きくなる。これによって、II型無水石膏の溶解速度が大きくなり、次第に二水石膏への水和速度がある程度大きくなる。ところが、石膏の粒子は、一般的に結晶の一次粒子の凝集体であり、1〜50μm径程度の細孔を有する。II型無水石膏を粉砕しても、50%累積径が3μm以上の場合、上記径の細孔が多く残存している。この細孔を有した粒子を通常の撹拌により水和反応を行った場合、この細孔に水が滞留し、細孔内に二水石膏が析出することによって、この部分のII型無水石膏の水和を阻害する。つまり、上記粒度まで粉砕を行うことによって、水和阻害の要因となる細孔が除去され、これによって、劇的に二水石膏の水和速度が飛躍的に向上する。
【0022】
本発明において得られる二水石膏は、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触せしめる際、種結晶を用いることによって、容易に粒径を大きくすることが可能である。このようにして得られる二水石膏は石膏ボードの製造原料、セメントの凝結調整剤等の用途に十分使用することができる。
【0023】
従って、上記方法を利用して、従来、不純物を完全に分離することが困難なために、リサイクル用途が限定されていた石膏ボードを処理して、ボード原料、セメントの凝結調整剤等に有用な純度の高い二水石膏を工業的に、且つ、安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明において、II型無水石膏を含む無水石膏(以下単に、無水石膏ということもある。)は、II型無水石膏を90質量%以上含有するものが対象となる。即ち、上記割合以上のII型無水石膏を含有するものは、その水和速度においてII型無水石膏が律速となる傾向が特に強いからである。
【0025】
具体的には、石膏ボードより可燃性成分を消失させる程度の焼成を行って得られた無水石膏、フッ酸製造の際の副生無水石膏および天然鉱物として産出される無水石膏等が挙げられる。
【0026】
本発明において、水和反応に供される無水石膏は、50%累積径が3μm以下、好ましくは、50%累積径が2μm以下に粉砕することが重要である。
【0027】
即ち、前記粉砕により、50%累積径が3μm以上である場合、後述する、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触による二水石膏への水和速度が著しく低下し、本発明の目的を達成することが困難となる。
【0028】
前記のように、無水石膏を水和する前に粉砕することは知られていたが、粉砕効率を考慮して、通常、50%累積径が3μm以下になるまで粉砕することは行われないが、本発明者らは、かかる常識を超えて微粉砕を実施した結果、劇的な水和速度の向上効果を見出すことに成功し、かかる効果を考慮すると、粉砕に多少の労力をかけても、全体のプロセスとして工業的に極めて有利となることを見出した。
【0029】
尚、前記粒径への粉砕は、水和を行う無水石膏に対して行うことが重要である。即ち、後述のように、石膏ボードを使用して無水石膏を製造する方法においては、焼成して無水石膏とする前に前記粒径まで粉砕しておくことも考えられるが、ボード原紙の存在により、均一な粉砕が困難であったり、焼成時に細かい粒子が焼結したりし、目的とする粒径の粒子が得難い等が懸念される。また、取り扱いにおいても粉塵等の問題を引き起こすことがある。
【0030】
本発明において、無水石膏を前記平均粒径までに粉砕するための粉砕機は、工業的に入手可能なものが特に制限なく使用することができる。具体的には、高速回転式衝撃粉砕機、ボールミル、媒体撹拌型粉砕機、ジェット粉砕機、湿式高速回転ミル等の微粉砕機が使用可能である。また、粉砕に際し、無水石膏はそのまま乾式で粉砕しても良いし、水と混合して湿式で粉砕しても良い。湿式で粉砕する際は、後述する水和の際に使用する硫酸アルカリ、又は硫酸アンモニウム水溶液を使用しても良い。
【0031】
本発明において、前記平均粒径に粉砕した無水石膏を、35℃以下、好ましくは、20〜30℃の温度で、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触せしめて、二水石膏を製造する。即ち、上記温度が35℃より高い場合、反応速度が著しく低下し、本発明の目的を達成することができない。
【0032】
上記硫酸アルカリとしては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムが挙げられる。また、上記硫酸アルカリ、硫酸アンモニウムは、単独で使用することもできるし、2種以上を併用しても良い。また、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、他の水和促進材を併用することもできる。
【0033】
また、前記水溶液における硫酸アルカリ、硫酸アンモニウムの濃度は、溶解度の範囲内に調整されることが好ましい。かかる濃度は、濃い方が二水石膏の製造効率が良くなるが、二水石膏を洗浄する際の効率を考慮して、水100質量部に対して、0.2〜20質量部、更に1〜10質量部が好ましい。
【0034】
更に、前記粉砕された無水石膏と前記水溶液との割合は特に制限されないが、水溶液100質量部に対して、無水石膏5〜50質量部が好ましい。かかる割合は、低い方が粒径の大きい二水石膏が得られ易いが、低すぎると処理能力が低下するため、特に、無水石膏の割合が10〜30質量部であることが好ましい。
【0035】
更にまた、前記粉砕された無水石膏と硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液との接触方法は特に制限されないが、前記水溶液を収容した容器中に無水石膏を添加する方法が一般的である。
【0036】
本発明において、粉砕した無水石膏を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触せしめる際、二水石膏を種晶として存在させることによって、より粒径の大きな二水石膏を得ることができる。
【0037】
ここで、本発明において、前記粉砕した無水石膏を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と接触せしめた直後から、無水石膏の溶解と二水石膏の析出が開始する。
【0038】
従って、上記二水石膏を種晶として存在させる方法は、無水石膏が上記水溶液と接触を開始した時点から存在させることが好ましい。
【0039】
上記種結晶として用いる二水石膏の種類、粒径およびII型無水石膏との混合比率は特に限定されない。例えば、種晶の種類は、リン酸石膏、排煙脱硫石膏などの副産二水石膏、一般試薬二水石膏、又は、本発明の方法により得られた二水石膏の一部を使用することができる。また、種晶の大きさは、平均粒径で5〜70μm程度のものが好ましい。また、水和させる無水石膏との混合比は、無水石膏100質量部に対して、種晶が10〜150質量部、好ましくは、20〜100質量部となる割合が適当である。
【0040】
本発明において、前記粉砕した無水石膏と硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液との接触は、殆どの無水石膏が消失するまで行うことが好ましく、かかる時間は、一般に、2時間以上、好ましくは、3〜4時間である。
【0041】
本発明の方法により生成した二水石膏は、公知のろ過方法によって水溶液から分離される。具体的には、ロータリースクリーン、ドラムフィルター、ディスクフィルター、ヌッチェフィルター、フィルタープレス、スクリュウプレス、チューブプレス、およびスクリュウデカンター、スクリーンデカンター等の遠心分離機により水と分離する方法を採用することができる。
【0042】
本発明において、前記二水石膏と分離された硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液(ろ液)は、前記粉砕された無水石膏との反応に再利用することができる。そして、かかる操作により、ろ液を再利用することが可能となり、排水量が低減されたプロセスとすることが可能である。
【0043】
また、本発明において、得られた二水石膏は、必要に応じて、水洗することもでき、洗浄によって発生する洗浄排水も上記ろ液と同様に、再利用することができる。
【0044】
本発明の方法は、前述した水和反応を利用して、石膏ボードから、石膏ボード等の原料として有用な二水石膏を再生することができる。
【0045】
即ち、石膏ボードを粗破砕する粗破砕工程、上記粗破砕工程で得られた石膏ボード粗破砕物を焼成し、ボード原紙及び有機成分を燃失せしめる焼成工程、上記焼成工程より得られたII型無水石膏を含む無水石膏を、50%累積径が3μm以下になるように粉砕する微粉砕工程、及び、上記微粉砕工程より得られた無水石膏粉砕物を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液と接触させる水和工程により、石膏ボードからの二水石膏を製造することができる。
【0046】
上記石膏ボードは、特に制限されるものではなく、石膏ボードの生産工程および建築現場の施行工程で発生する端材、残材よりなる石膏ボードや、改装・解体工事で建築廃材として発生する石膏ボード廃材などが挙げられる。また、前記石膏ボードは、ボード原紙が付着しているものであってもよいし、予め石膏ボード廃材からボード原紙を取り除いたものであってもよい。
【0047】
本発明において、使用する石膏ボード廃材の粒径は、特に制限されるものではないが、焼成で可燃性成分を焼失させる工程を効率良く行うためには、平均粒径1〜100mm、好ましくは10〜50mmのものを使用することが好ましい。廃石膏を前記範囲の粒径にする方法は、特に制限されるものではなく、公知の破砕機、粉砕機を用いて前記範囲の粒径にすればよい。
【0048】
本発明において、石膏ボード廃材の焼成は、ボード原紙および有機成分の大半を効率よく焼失させることができる条件であることが好ましい。かかる条件は、酸素の存在下(通常は空気中である。)、500℃以上の温度で、1時間以内、具体的には、10〜30分間焼成する条件が好ましい。即ち、前述のように、500℃以上の焼成温度であれば、本発明の対象となる割合のII型無水石膏が生成する。また、上記II型無水石膏の他に、焼成する温度と時間の違いによって、生成する半水石膏、III型およびII型無水石膏の比率が異なったり、温度がより高温に、或いは時間が長時間になるに従い、生石灰が生成したりすることもあるが、これらは後工程で水和反応を行うことや生成した生石灰と当量の硫酸を添加することによって、すべて二水石膏になるのでその比率は特に制限されない。
【0049】
また、本発明において、前記焼成工程で得られる無水石膏は、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液と接触させる前に冷却することが好ましい。かかる冷却は、空冷でもよいが、水と接触させることによって冷却を行う水冷によることが好ましい。この水冷の方法は特に制限されることはなく、焼成後の石膏に散水する方法、焼成後の石膏を水槽中に直接投入する方法などで行うことができる。
【0050】
また、上記水と混合する態様においては、混合によってスラリーとし、かかるスラリーをその後の粉砕工程にそのまま導入し、湿式粉砕を行うこともできる。
【0051】
前記焼成後の石膏の冷却を、水冷で行うことの利点として、つぎの点が挙げられる。即ち、水冷による冷却は、空冷により冷却する場合に比べて冷却効率が良好なため、設備が非常に簡略化できること、焼成後の高温の石膏と水を接触させることによって、石膏が粉砕されやすくなり、粉砕効率が向上することが挙げられる。
【0052】
前記工程よりなる二水石膏の製造方法においては、前記水和工程において得られる二水石膏をろ過し、必要に応じて水で洗浄する洗浄工程を含んでもよい。この際に発生する、ろ液及び/又は洗浄排水は、前述の水和工程に再利用することができる。
【0053】
また、本発明において、前記ろ過により硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と分離された二水石膏、又は、更にこれを水洗して洗浄された二水石膏は、これを乾燥すること無く、石膏ボードの原料として石膏ボード製造設備に、石膏原料として再利用してもよい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を更に具体的に説明するため、実施例を示すが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
1.平均粒径の確認
レーザー回折散乱式粒度分布計により、石膏の粒度分布を測定した。
【0056】
2.II型無水石膏、二水石膏の確認
粉末X線回折の測定を行い、特定の半水石膏、無水石膏および二水石膏ピーク強度比から算出した。
【0057】
3.残存可燃性成分の確認
残存可燃性成分は、生成した二水石膏中の全有機炭素を測定することで評価した。
【0058】
実施例1
粗粉砕した天然無水石膏(II型無水石膏含有率98%)20質量部と水80質量部を混合し、ボールミルで50%累積径が1.5μmになるまで粉砕した。粉砕後のスラリー100質量部に、硫酸ナトリウム5質量部を添加してこれを溶解させた後、反応容器中で25℃、3時間撹拌を行った。二水石膏の生成率は99%であった。
【0059】
実施例2
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを電気炉で500℃、60分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率96質量%)をボールミルで粉砕し、50%累積径が2.8μmとした。粉砕後の石膏20質量部と、水100質量部に硫酸カリウム5質量部を溶解させた水溶液を反応器中で混合した。25℃で4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は100%、全有機炭素量は1ppm以下であった。
【0060】
実施例3
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを電気炉で700℃、30分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率98質量%)をボールミルで粉砕し、50%累積径を2.2μmとした。粉砕後の石膏20質量部と、水100質量部に硫酸アンモニウム10質量部を溶解させた水溶液を反応器中で混合した。25℃で4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は99%、全有機炭素量は1ppm以下であった。
【0061】
実施例4
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを電気炉で900℃、20分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率99質量%)20質量部に対し、水80質量部に硫酸ナトリウム2質量部を溶解させた水溶液を混合し、ボールミルで粉砕し、50%累積径を1.8μmとした。粉砕後のスラリーを反応器に移した後、平均粒径35μmの二水石膏20質量部と水80質量部に硫酸ナトリウム5質量部を溶解させた水溶液を混合した。25℃で4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は99%、平均粒径は45μm、全有機炭素量は1ppm以下であった。
【0062】
実施例5
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを直接加熱方式のキルンで650℃、滞留時間30分で焼成した。焼成直後の石膏(II型無水石膏の含有率99質量%)20質量部と水80質量部混合し、ボールミルで粉砕して、50%累積径を2.2μmとした。一方で、平均粒径40μmの二水石膏25質量部と水100質量部に硫酸ナトリウム7質量部を溶解させた水溶液を混合して作成したスラリーを反応器中に用意し、この反応器に、上記粉砕処理を行ったII型無水石膏スラリーを投入した。25℃で3時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は99%、平均粒径は55μm、全有機炭素量は1ppm以下であった。
【0063】
比較例1
石膏ボード廃材を粗破砕し、50%累積径が80μmの破砕片を作成した。これを電気炉で800℃、60分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率99質量%)を粉砕することなく、20質量部と、水100質量部に硫酸ナトリウム5質量部を溶解させた水溶液を反応器中で混合した。4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は12%であった。
【0064】
比較例2
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを電気炉で600℃、30分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率98質量%)をボールミルで粉砕し、50%累積径を2.8μmとした。粉砕後の石膏20質量部と、水100質量部に硫酸カリウム5質量部を溶解させた水溶液を反応器中で混合した。45℃で4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は25%であった。
【0065】
比較例3
石膏ボード廃材を粗破砕し、約5cm角の破砕片を作成した。これを電気炉で700℃、30分焼成した。焼成後の石膏(II型無水石膏の含有率98質量%)をボールミルで粉砕し、50%累積径を1.8μmとした。粉砕後の石膏20質量部と、水100質量部に硝酸ナトリウム5質量部を溶解させた水溶液を反応器中で混合した。25℃で4時間撹拌を行った後、ろ過洗浄を行った。二水石膏の生成率は35%であった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】水和反応における無水石膏の粒径と水和速度との関係を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
II型無水石膏を含む無水石膏を、50%累積径が3μm以下になるように粉砕した後、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と、温度35℃以下で接触せしめることを特徴とする二水石膏の製造方法。
【請求項2】
無水石膏が、石膏ボードを500℃以上の温度で焼成したものである請求項1記載の二水石膏の製造方法。
【請求項3】
前記無水石膏の粉砕物を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムの水溶液と接触せしめる際、種晶として平均粒径5〜70μmの二水石膏を存在せしめる請求項1又は2に記載の二水石膏の製造方法。
【請求項4】
石膏ボードを粗破砕する粗破砕工程、上記粗破砕工程で得られた石膏ボード粗破砕物を焼成し、ボード原紙及び有機成分を燃失せしめる焼成工程、上記焼成工程より得られたII型無水石膏を含む無水石膏を、50%累積径が3μm以下になるように粉砕する微粉砕工程、及び、上記微粉砕工程より得られた無水石膏粉砕物を硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液と、温度35℃以下で接触させる水和工程を含むことを特徴とする石膏ボードからの二水石膏の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程で得られる無水石膏を水と接触せしめる水冷工程を含む、請求項4記載の二水石膏の製造方法。
【請求項6】
前記水和工程より得られる二水石膏をろ過、洗浄する洗浄工程、及び、上記洗浄工程で発生する、ろ液及び/又は洗浄排水を前記水和工程に循環し、硫酸アルカリ、又は、硫酸アンモニウムを含有する水溶液の一部として使用する循環工程を含む、請求項4記載の二水石膏の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄工程より得られた二水石膏を乾燥すること無く、石膏ボードの原料として石膏ボード製造設備の石膏原料として再利用する、請求項6記載の二水石膏の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−40638(P2009−40638A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208329(P2007−208329)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】