説明

二液型アクリル系接着剤第2液の保存方法、及びその包装体

【課題】二液型アクリル系接着剤第2液を、長期間安定に貯蔵できる貯蔵方法、及びその包装体の提供。
【解決手段】酸素透過性が3cc/m2・24h・atm以下の樹脂製包装体。ガスバリ
ア性樹脂層がポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン・ポバール共重合系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系接着剤を長期間安定に保存する包装体、特に重合性(メタ)アクリルモノマー及び有機過酸化物を主成分とする第1液と、重合性(メタ)アクリルモノマー及び第1液中の有機過酸化物とレドックス触媒系を形成する還元剤を主成分とする第2液からなる二液型アクリル系接着剤において、第2液を収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系接着剤は、各種材料の接着に使用されている。アクリル系接着剤のタイプとしては、プライマー型、二液型、一液紫外線硬化型、一液嫌気硬化型及び一液湿気硬化型等が挙げられる。アクリル系接着剤の中でも、SGAと呼ばれる第二世代アクリル系接着剤は、その優れた性能から構造接着の用途に使用されている。SGAは重合開始剤を含有するレドックス触媒硬化系接着剤であり、空気中の酸素による重合禁止作用を利用する方法、例えば、包装中に大量の空気を閉じ込める方法や接着剤中に空気を泡立てて通す方法(米国特許第2,628,178号参照)、酸素透過性の高い材料を用いた包装体に保存する方法(特開2000−302179号参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、レドックス触媒系を形成する還元剤を含有する第2液は、接着剤中の空気の存在により貯蔵時の安定性が低下し、ゲル化してしまうという課題があった。
【0004】
本発明者は種々検討を重ねた結果、特定の包装体を使用することにより、前記課題が解決できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、二液型アクリル系接着剤の第2液を保存する方法であって、酸素透過性が3cc/m2・24h・atm以下の樹脂製包装体で保存することを特徴とする保存
方法である。又、二液型アクリル系接着剤の第2液を保存するための酸素透過性が3cc/m2・24h・atm以下の樹脂製包装体である。更にガスバリア性樹脂層がポリエチ
レンテレフタレート系樹脂、エチレン・ポバール共重合系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる二液型アクリル系接着剤第2液用包装体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の包装体は、酸素透過性を3cc/m2 ・24h・atm以下とすることで、アクリル系接着剤、特に重合開始剤を含有するレドックス触媒系還元剤含有アクリル系接着剤を、長期間安定に貯蔵することができる。40℃雰囲気下では30日以上の貯蔵安定性の効果があり、常温下ではより長期間の保存が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を説明する。
【0008】
本発明のアクリル系接着剤用包装体は、酸素透過性は3cc/m2・24h・atm以
下の材料からなるものである。3cc/m2・24h・atm以下にすることにより、包
装体の外部から包装体内のアクリル系接着剤へ酸素の供給が遮断され、酸化重合禁止作用が発現し、貯蔵時の安定性が向上するものである。
【0009】
ガスバリア性樹脂層としては有機材料や無機材料のいずれも使用できる。これらの中では、効果や価格の点で、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン・ポバール共重合系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなり、より好ましくはポリエチレン系樹脂にエチレン・ポバール共重合系樹脂をラミネートした包装体がより好ましい。これらの樹脂には、白色や黒色等の着色剤を添加しても良い。
【0010】
ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などは、ホモポリマー又はそれを主成分とするコポリマーのいずれでも良い。
【0011】
コポリマーの構造は、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーのいずれでも良く、コポリマーの生成が可能な単量体としては、エチレン、プロピレン及びブテン等のオレフィン系モノマーが好適に用いられる。
【0012】
更に、本発明の包装体に用いるポリオレフィン系樹脂としては、異種のポリマーどうしのブレンドでも良い。例えば、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とのブレンドが挙げられる。
【0013】
包装体としては、ボトル等の容器、チューブ、シリンジ及びフィルム製バッグ等の密閉できるものが挙げられる。
【0014】
本発明の容器は、容器本体以外にも、外蓋と内蓋を付けることが好ましい。
【0015】
本発明で規定する酸素透過性は、容器本体のみに制限され、外蓋や内蓋では制限されない。内蓋と外蓋の仕様としては、容器本体に充填したアクリル系接着剤が液漏れしなければよい。但し、容器本体と外蓋のみの組合せにより、液漏れ防止機能の発現が可能な場合には、内蓋を省略しても良い。
【0016】
本発明で用いる好ましいアクリル系接着剤としては、レドックス触媒系を形成する還元剤として可溶性バナジウム化合物を含有するアクリル系接着剤が挙げられる。
【0017】
このレドックス触媒硬化系接着剤は、通常、重合開始剤とアクリル系モノマーを含有する第1液と、還元剤とアクリル系モノマーを含有する第2液と分け、第1液と第2液を別々に貯蔵するものである。
【0018】
本発明の包装体は、還元剤とアクリル系モノマーを含有した第2液を収容した場合に、大きな効果を有するものである。
【0019】
本発明のアクリル系接着剤のアクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及び末端(メタ)アクリル変性液状ポリブタジエン等が挙げられる。これらを単独又は2種以上併用して使用することができる。
【0020】
本発明のアクリル系接着剤は、アクリル系モノマーと他のラジカル重合性モノマーを併
用することができるが、ここで用いられる他のモノマーには特に制限はなく、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル及びアクリルアミド等の単官能モノマー、並びに、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート及びトリアリルイソシアヌレート等の多官能モノマーを単独又は2種以上併用して使用することができる。
【0021】
本発明のアクリル系接着剤の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤として使用される過酸化物又はアゾ化合物が好適に用いられるが、有機過酸化物としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−プチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシドデカノエート等のパーオキシエステル類等が適当であり、特にハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0022】
又、還元剤は重合開始剤の分解を促進する化合物であり、還元剤として使用される可溶性バナジウム化合物としては、バナジルアセチルアセトネート、バナジルステアレート、バナジウムナフテネート、バナジウムアセチルアセトネート、バナジウムベンゾイルアセトネート、シュウ酸バナジル等が挙げられ、コバルト化合物としては、酢酸コバルト、安息香酸コバルト、クエン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、オレイン酸コバルト、2 − エチルヘキサン酸コバルト等の有機酸のコバルト塩があげられる。これらは単独又は2種以上併用して使用することができる。
【0023】
本発明の容器本体、外蓋及び内蓋の作製はブロー成型や射出成型により可能である。
【0024】
酸素透過性は、容器本体の厚みが厚いほど低下する。よって厚さを増大する場合には酸素透過性を測定し、適正範囲に納める必要がある。容器本体は、2.0mm前後が適正厚さである。なお、ここでいう酸素透過性の測定は、JIS K 7126に準拠するものである。
【0025】
以下に、実施例を説明する。
【実施例1】
【0026】
材料としてポリエチレンテレフタレートを使用し、ブロー成型機で1Lサイズの容器本体を作成した。容器本体の厚さは、1.7mmであり、酸素透過性は0.8±1cc/m2・24h・atmであった。又、容器本体に組み合わされる内蓋及び外蓋を、ポリエチ
レンを使用し、射出成形機で作成した。更にアクリル系接着剤として、還元剤(バナジルアセチルアセトネート)とアクリル系モノマーからなる市販のアクリル系接着剤(比重1.0)を用いた。この容器にアクリル系接着剤0.6kg(0.6L)を入れ、40℃での貯蔵寿命を測定した。貯蔵寿命の測定は、1日間隔でガラス棒を用いてアクリル系接着剤中のゲル化の有無を目視で確認することにより実施した。その結果、90日目でゲル化が見られた。ただし、接着剤を吐出する際のスクイズ性はあまり良くない。
【実施例2】
【0027】
材料として高密度ポリエチレンを使用し、容器本体の厚さを1.7mmとした。更に容器本体にエチレン・ポバール共重合樹脂製フィルムを被覆し、酸素透過性を0.1±1cc/m・24h・atmとしたこと以外には、実施例1と同様に実施した。その結果、90日目でもゲル化は見られなかった。又、スクイズ性も良好であった。
【0028】
比較例1
容器本体にエチレン・ポバール共重合樹脂製フィルムを被覆しなかった事以外は、実施例2と同様に実施した。なお、酸素透過性は6.0±1cc/m2・24h・atmであ
った。その結果、貯蔵28日目でゲル化が見られた。なお、スクイズ性は良好であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系モノマーと、有機ハイドロパーオキサイドを必須成分とする第1液とともに用いられ、(メタ)アクリル系モノマーと、可溶性バナジウム、コバルト化合物の群から選ばれる1種以上の還元剤を必須成分とする二液型アクリル系接着剤第2液を保存する方法であって、酸素透過性が3cc/m2・24h・atm以下の樹脂製包装体で保
存することを特徴とする保存方法。
【請求項2】
請求項1記載の保存方法に使用するための樹脂製包装体であって、前記樹脂製包装体が単層もしくは複層から構成され、前記樹脂製包装体を構成する層の少なくとも一層がガスバリア性樹脂層からなることを特徴とする二液型アクリル系接着剤第2液用樹脂包装体。
【請求項3】
前記ガスバリア性樹脂層がポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン・ポバール共重合系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂の群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる請求項2記載の二液型アクリル系接着剤第2液用樹脂包装体。
【請求項4】
前記樹脂製包装体の酸素透過性が3cc/m2・24h・atm以下であることを特徴
とする請求項2又は3に記載の樹脂製包装体。



【公開番号】特開2010−274947(P2010−274947A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127965(P2009−127965)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】