説明

二胴式自立型ボイラ

【課題】管台部付近の伝熱管に発生する曲げ応力に対して、該伝熱管の強度を高め、該伝熱管の曲げ変形を防止し、二胴式自立型ボイラの大型化に対応可能にする。
【解決手段】水ドラム16の軸方向両端域で、伝熱管14が水ドラム16に接続される管台付近の曲管領域eで伝熱管14の間に架設される補強板20を設けている。補強板20を設ける伝熱管14は、水平線の片側線hを0°とし、他側水平線hを180°としたとき、二胴式自立型ボイラ10の容量が大型化されるにつれて、中心点Oから30〜70°及び110〜150°の領域から、20〜80°及び100〜160°の領域に広げていき、さらには1〜180°の全領域の伝熱管14に補強板20を設けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ構造物の大型化に対処して、水ドラムの管台付近の強度を高めた二胴式自立型ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
二胴式自立型ボイラの構成を図5及び図6により説明する。図5において、二胴式自立型ボイラ100は、上部に水平方向に設けられた蒸気ドラム102と、該蒸気管の下方に蒸気ドラム102と対置されて水平方向に配置された水ドラム104と、蒸気ドラム102及び水ドラム104間に架設され、これらドラムの軸方向及び周方向に接続された多数の伝熱管106と、燃焼室108を囲む管壁とで構成されている。
【0003】
管壁は、前方管壁110と、右側管壁112と、左側管壁114と、上面管壁116と、下面管壁(図示省略)とで構成され、管壁中に蒸気ドラム102及び水ドラム104間に架設された伝熱管が組み込まれている。前方管壁110にはバーナ118が設けられている。二胴式自立型ボイラ100は、2箇所の前方支持台120及び122で支持され、後方は、水ドラム104に、2箇所(両端支持)、又は大型ボイラの場合3箇所の支持台が設けられている。
【0004】
図6に示すように、大型ボイラの場合、水ドラム104は、右端を支持する右側支持台124と、中央を支持する中央支持台126と、左端を支持する左側支持台128とで3点支持されている。各管壁は、バックステー129で補強されている。
特許文献1には、二胴式自立型ボイラの一構成例が開示されている。二胴式自立型ボイラは、石油精製過程で生じるCOガスやBFGガス(製鉄の際に発生する高炉ガス)等の低カロリーガスを燃料として用いることができる機能を有している。
【0005】
二胴式自立型ボイラにおいて、構造上大きな負荷が加わる部位のひとつとして、伝熱管106が水ドラム104に接続される部分である管台部がある。図7に、水ドラム104の管台部130付近を示す。管台部130は、蒸気ドラム102と水ドラム104とを繋ぐ伝熱管106の重量と蒸気ドラム102の重量とを支持している。
【0006】
図6に示すように、水ドラム104の管台部130には、支持台124〜128がある両端部及び中央部に、大きな荷重が加わっている。特に、左右管壁がある両端部は剛性が大きいため、極端に大きな荷重が付加される。そのため、両端部付近に位置する伝熱管106に大きな荷重が付加されており、この荷重傾向は、水ドラムを両端で2点支持する場合のときも同様である。
【0007】
図7は、図5中d方向から視た図である。図7において、中央域aの管台部には、他の領域と比べて最大荷重が付加されるが、曲げ応力は発生しない。斜め領域bの管台部には、荷重及び曲げ力が共に付加される。この曲げ力によって大きな曲げ応力が発生する。両端域cの管台部には、荷重及び曲げ力が付加されるが、付加される荷重は小さいので、大きな曲げ応力は発生しない。この知見は、本発明者等の実験及び解析によって今回新たに得られたものである。
【0008】
なお、特許文献2には、管台部の取付構造において、伝熱管が水ドラムに接続される管台近傍の伝熱管の隙間を補強板で埋める構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−49801号公開公報
【特許文献2】実開平1−123007号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ボイラの上流側の設備(流動層式接触分解装置など)の大容量化に伴い、今後自立型ボイラ自体も大型化する必要に迫られている。ボイラの大型化に伴い、ボイラの重量がさらに増加する傾向にあるため、管台部に加わる曲げ応力はさらに増大することが予想される。そのため、管台部、特にボイラ壁付近の管台部の強度を増大させないと、この大型化の傾向に対応できないという問題がある。
【0011】
特許文献2には、管台近傍の伝熱管の隙間を補強板で埋める構成が開示されているが、伝熱管が水ドラムに対して、直上方向にのみ配置されているため、管台部に付加される曲げ応力の増大に対応するためのものではない。
図7に示すように、伝熱管106の上部領域である直管部sでは、従来から、伝熱管106の間に、補強板132が架設固着されている。直管部sは、補強板132の溶接がしやすいが、伝熱管106の下方領域である管台部付近の曲管部eは、伝熱管の間の隙間が小さく、かつ伝熱管106が複雑に曲折しているので、溶接作業が容易ではない。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、管台部付近、特にボイラ壁付近の伝熱管に発生する曲げ応力に対して、該伝熱管の強度を高め、該伝熱管の曲げ変形を防止し、二胴式自立型ボイラの大型化に対応可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明の二胴式自立型ボイラは、上部に横方向に設けられた蒸気ドラムと、該蒸気ドラムの下方に蒸気ドラムと対置された水ドラムと、蒸気ドラム及び水ドラム間に架設され、これらドラムの軸方向及び周方向に接続された多数の伝熱管と、燃焼室を囲む管壁とで構成され、水ドラムの軸方向両端域に支持点を有する二胴式自立型ボイラにおいて、水ドラムの軸方向両端域で、伝熱管が水ドラムに接続される管台付近の曲管領域で伝熱管の間に架設される補強板を設けたものである。
【0014】
本発明装置では、水ドラムの軸方向両端域で、管台付近の領域で伝熱管の間に架設される補強板を設けたので、管台に付加される蒸気ドラム及び伝熱管の重量が増大しても、これらの重量を個々の伝熱管ではなく、伝熱管の集合体で支持できる。そのため、管台付近の伝熱管の支持強度を増大でき、伝熱管の曲げ変形を防止できる。これにより、市場から求められる大型化のニーズに対して、今後顕在化すると考えられる管台部の曲げ変形の問題を事前に解消できる。
【0015】
本発明装置において、水ドラムの中心を横切る水平面の片側を0°とし、他側を180°としたとき、水ドラムの中心から30〜70°の領域及び110〜150°の領域に補強板を設けるようにするとよい。水ドラムに対して前記斜め領域の管台部に、特に大きな曲げ応力が付加されることが、本発明者等によって見い出された。二胴式自立型ボイラの大型化が進行するにつれて、まず前記斜め領域で曲げ応力が許容曲げ応力を超えると予想される。そのため、該斜め領域に補強板を取り付けるようにする。これによって、曲げ応力が許容曲げ応力を超えると予想される領域のみに、補強板を取り付けることで、補強板取付の手間を最小限にしながら、管台付近での伝熱管の曲げ変形を防止できる。
【0016】
二胴式自立型ボイラの大型化がさらに進行し、管台付近の伝熱管に付加される曲げ応力がさらに増大したときには、許容曲げ応力が超えた領域がさらに増大するので、水ドラムの中心から20〜80°の領域及び100〜160°の領域に位置する伝熱管の間に補強板を設けるようにするとよい。これによって、ボイラの大型化が相当進行し場合においても、管台部の伝熱管の曲げ変形を防止できると共に、許容曲げ応力を超えると予想される領域のみに補強板を施工するので、補強板取付の手間を最小限にしながら、管台付近での伝熱管の曲げ変形を防止できる。
【0017】
さらに大型化が進み、管台の全域の伝熱管で許容曲げ応力が超えると予想されるときには、水ドラムの中心から0〜180°の領域全域に位置する伝熱管に補強板を設けるようにするとよい。これによって、二胴式自立型ボイラの大型化が究極的に進行しても、管台部の全域で伝熱管の曲げ変形を防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明装置によれば、上部に横方向に設けられた蒸気ドラムと、該蒸気ドラムの下方に蒸気ドラムと対置された水ドラムと、蒸気ドラム及び水ドラム間に架設され、これらドラムの軸方向及び周方向に接続された多数の伝熱管と、燃焼室を囲む管壁とで構成され、水ドラムの軸方向両端域に支持点を有する二胴式自立型ボイラにおいて、水ドラムの軸方向両端域で、伝熱管が水ドラムに接続される管台付近の曲管領域で伝熱管の間に架設される補強板を設けたので、二胴式自立型ボイラの大型化に対しても、管台付近の領域で伝熱管の支持強度を増大でき、伝熱管の曲げ変形を防止できる。これにより、市場から求められる大型化のニーズに対して、今後顕在化すると考えられる管台部の曲げ変形の問題を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明装置の第1実施形態に係る管台付近の正面図である。
【図2】前記第1実施形態の伝熱管の断面図(図1中のE−E断面)である。
【図3】管台付近で伝熱管に加わる曲げ応力を示す線図である。
【図4】本発明装置の第2実施形態に係る管台付近の正面図である。
【図5】二胴式自立型ボイラの全体斜視図である。
【図6】水ドラムに加わる荷重曲線図である。
【図7】従来の二胴式自立型ボイラの管台付近の正面図(図5中のd矢視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0021】
(実施形態1)
本発明装置の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は、図7に相当する図で、図7と同様な方向から視た、本実施形態に係る二胴式自立型ボイラ10の管台部18付近の図である。図1において、二胴式自立型ボイラ10の水ドラム12に、水ドラム12の軸方向及び上側周方向に多数の伝熱管14が接続されている。水ドラム12は、図示省略の水平基礎面に対して、支持台16を介して支持されている。支持台16は、水ドラム12の軸方向左右端の管壁付近、及び中央部の3箇所に設けられている。水ドラム12の管台部18に、伝熱管14が接続されている。
【0022】
伝熱管14の直管部sには、従来より補強板132が架設固着されている。本実施形態では、水ドラム12の左右端で管壁を支持する部位に、直管部sの下方領域の曲管部e(管台部18付近を含む。)で、伝熱管14間に補強板20を架設固着している。図2は、補強板20が架設固着された伝熱管14の断面図である。なお、補強板20は、水ドラム12の周方向1列の伝熱管のみに限らず、必要に応じて複数列の伝熱管に設けてもよい。
【0023】
図3は、本発明者等が実験し、解析して得た知見を示したものであり、管台部18付近の伝熱管14に発生する曲げ応力を表したものである。横軸は、水ドラム12の中心を通る水平線の片側線h(図1中、水ドラム12の中心点Oから左側の水平線)を0°とし、他側水平線h(図1、中心点Oから右側の水平線)を180°に設定している。図3に示すように、管台部18付近で伝熱管14に付加される曲げ応力は、水ドラム12の斜め領域で最も大きくなる。図3中、矢印fは、二胴式自立型ボイラの容量の今後の大型化の方向を示す。即ち、A<B<C<Dのように容量が大型化していることを示している。
【0024】
ボイラAは既存の二胴式自立型ボイラである。ボイラAより大型化された二胴式自立型ボイラBでは、中心点Oから30〜70°及び110〜150°の範囲で、伝熱管14に付加される曲げ応力が許容曲げ応力Pを超えている。そのため、本実施形態では、図1に示すように、前記領域にある伝熱管14の間に補強板20を架設固着している。これによって、曲げ応力が許容曲げ応力Pを超えた領域で、蒸気ドラム(図示省略)及び伝熱管14の重量を、補強板20が架設された伝熱管14の集合体で支持することができる。
【0025】
そのため、伝熱管14による支持強度を増大できるので、蒸気ドラム及び伝熱管14から受ける曲げ応力に対して、管台部18における伝熱管14の曲げ変形を防止できる。
【0026】
例えば、3本の伝熱管14が補強板20で連結された場合、これら伝熱管の集合体に付加される曲げモーメントは1本の伝熱管14に加わる曲げモーメントの3倍となる。しかし、3本の伝熱管14の断面係数は、3の二乗倍、即ち9倍となる。そのため、個々の伝熱管14に加わる曲げ応力は、補強板20を設けないときと比べて、1/3に低減する。
【0027】
なお、ボイラBからさらに大型化が進み、容量がさらに大きい二胴式自立型ボイラCとなったとき、許容曲げ応力Pを超える領域は、水ドラム12の中心点Oから20〜80°及び100〜160°の領域となる。そのため、二胴式自立型ボイラCの場合は、これらの領域にある曲管部eで、補強板20を伝熱管14の間に架設固着するようにする。これによって、さらに大型化したボイラCにおいても、管台部18付近で伝熱管14の曲げ変形を防止できる。
【0028】
(実施形態2)
次に、本発明装置の第2実施形態を図4により説明する。本実施形態は、ボイラ容量がボイラCよりさらに大型化した二胴式自立型ボイラDの場合の例である。図3に示すように、ボイラDは、管台部18の全ての領域で伝熱管14に加わる曲げ応力が許容曲げ応力Pを超えている。そのため、図4に示すように、水ドラム12の左右端で管壁を支持する部位に、曲管部eの全ての領域で伝熱管14間に補強板20を架設固着している。
【0029】
これによって、大容量のボイラDにおいて、水ドラム12の上部全周領域の管台部18で、伝熱管14の曲げ変形を防止できる。従って、本実施形態によって、究極的に容量が増大した二胴式自立型ボイラに対して、管台部18付近における伝熱管14の曲げ変形問題を解消できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、二胴式自立型ボイラの容量大型化の趨勢に対して、懸念される管台部付近における伝熱管の曲げ変形の問題を解決できる。
【符号の説明】
【0031】
10,100 二胴式自立型ボイラ
12,104 水ドラム
14,106 伝熱管
16 支持台
18,130 管台部
20,132 補強板
102 蒸気ドラム
108 燃焼室
110 前方管壁
112 右側管壁
114 左側管壁
116 上面管壁
118 燃焼室
120,122 前方支持台
124 右側支持台
126 中央支持台
128 左側支持台
129 バックステー
O 中心点
P 許容曲げ応力
e 曲管部
f 大型化方向
水平線の片側線
他側水平線
s 直管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に横方向に設けられた蒸気ドラムと、該蒸気ドラムの下方に蒸気ドラムと対置された水ドラムと、蒸気ドラム及び水ドラム間に架設され、これらドラムの軸方向及び周方向に接続された多数の伝熱管と、燃焼室を囲む管壁とで構成され、水ドラムの軸方向両端域に支持点を有する二胴式自立型ボイラにおいて、
水ドラムの軸方向両端域で、伝熱管が水ドラムに接続される管台付近の曲管領域で伝熱管の間に架設される補強板を設けたことを特徴とする二胴式自立型ボイラ。
【請求項2】
前記水ドラムの中心を横切る水平面の片側を0°とし、他側を180°としたとき、水ドラムの中心から30〜70°の領域及び110〜150°の領域に位置する伝熱管の間に前記補強板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の二胴式自立型ボイラ。
【請求項3】
前記水ドラムの中心を横切る水平面の片側を0°とし、他側を180°としたとき、水ドラムの中心から20〜80°の領域及び100〜160°の領域に位置する伝熱管の間に前記補強板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の二胴式自立型ボイラ。
【請求項4】
前記水ドラムの中心を横切る水平面の片側を0°とし、他側を180°としたとき、水ドラムの中心から0〜180°の領域全域に位置する伝熱管に前記補強板を設けたことを特徴とする請求項1に記載の二胴式自立型ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132609(P2012−132609A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284307(P2010−284307)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)