説明

二色性色素、及びそれを用いた液晶組成物、液晶素子

【課題】製造が容易であり、高いオーダーパラメーターを有する二色性色素、並びに、それを用いた液晶組成物及び液晶表示素子を提供する。
【解決手段】下記構造式(I) で表される部分構造を有する二色性色素、並びに、該二色性色素を含有する液晶組成物、及び該液晶組成物を含有する液晶相を有する液晶素子。
【化1】


〔式(I) 中、R1 はアルキル基を示し、環A1 及び環A2 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、L1 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示等に好適に用いられる新規な二色性色素、並びにそれを用いた液晶組成物及び液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子として多くの方式が提案されている中で、液晶中に二色性色素を溶解させた液晶組成物をセル中に封印し、これに電場を与え、電場による液晶の動きに合わせて二色性色素の配向を変化させ、セルの吸光状態を変化させることにより表示するゲストホスト方式が、バックライトを用い電力消費の少ない反射液晶素子として期待されている。その液晶素子に用いられる二色性色素には、適当な吸収特性、高いオーダーパラメーター(S値)、ホスト液晶に対する高い溶解性、及び耐久性等が要求される中で、従来の二色性色素は、オーダーパラメーターが十分に高くはなく、その結果、ゲストホスト方式の液晶表示における表示コントラストの低下を招いていた。
【0003】
一方、従来より、アゾ系二色性色素において、オーダーパラメーター改良のために、1,4−フェニレン基と(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基とを組み合わせた各種化合物が提案されている(例えば、特許文献1〜10)が、いずれもオーダーパラメーターが、高々0.81と小さく、更に同種構造で改良されたオーダーパラメーターを有する化合物も提案されている(例えば、特許文献11〜13)が、これらでさえ殆どのオーダーパラメーターは0.83以下であって、満足できるものとは言えないばかりか、炭素−炭素結合形成反応を繰り返す必要のある1,4−フェニレン基を多く含み経済的不利を免れ得ないものであった。
【特許文献1】特開昭58−138767号公報
【特許文献2】特開昭59−22964号公報
【特許文献3】特開昭59−182877号公報
【特許文献4】特開昭60−36569号公報
【特許文献5】特開昭61−21163号公報
【特許文献6】特開昭62−252461号公報
【特許文献7】特開平5−25399号公報
【特許文献8】特開平5−59294号公報
【特許文献9】特開平10−95980号公報
【特許文献10】特開2000−44955号公報
【特許文献11】特開2003−96453号公報
【特許文献12】特開2003−96461号公報
【特許文献13】特開2003−96462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、製造が容易であり、高いオーダーパラメーターを有する二色性色素、並びに、それを用いた液晶組成物及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構造式を有する二色性色素が極めて高いオーダーパラメーターを有し、製造も容易であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記構造式(I) で表される部分構造を有する二色性色素、並びに、該二色性色素を含有する液晶組成物、及び該液晶組成物を含有する液晶相を有する液晶素子、を要旨とする。
【0006】
【化1】

【0007】
〔式(I) 中、R1 はアルキル基を示し、環A1 及び環A2 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、L1 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示す。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製造が容易であり、高いオーダーパラメーターを有する二色性色素、並びに、それを用いた液晶組成物及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の二色性色素は、下記構造式(I) で表される部分構造を有することを必須とする。
【0010】
【化2】

【0011】
〔式(I) 中、R1 はアルキル基を示し、環A1 及び環A2 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、L1 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示す。〕
【0012】
構造式(I) において、R1 のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のものが好ましく、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0013】
又、環A1 及び環A2 の1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基の中で、環A1 としては、(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であるのが好ましい。
【0014】
又、L1 の、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、イソブテニレン基、sec−ブテニレン基、tert−ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基;エチニレン基、プロピニレン基、イソプロピニレン基、ブチニレン基、イソブチニレン基、sec−ブチニレン基、tert−ブチニレン基、ヘキシニレン基、オクチニレン基等の炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキニレン基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の炭素数2〜20、好ましくは2〜10のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基、等が挙げられる。
【0015】
これらの中で、L1 としては、結合原子数が2個のものが好ましく、−O−CO−、−CO−O−、−CH2 O−、−O−CH2 −等が更に好ましく、−CH2 O−が特に好ましい。
【0016】
前記構造式(I) で表される部分構造としては、具体的には、例えば、下記構造が挙げられる。
【0017】
【化3】

【0018】
以上の前記構造式(I) で表される部分構造を有する本発明の二色性色素としては、前記構造式(I) 以外の構造部分に、例えば、アゾ結合を有するアゾ系、アントラキノン骨格を有するアントラキノン系、ジオキサジン骨格を有するジオキサジン系等のものが挙げられるが、中で、本発明の二色性色素としては、前記構造式(I) 以外の構造部分に、アゾ結合を有するアゾ系二色性色素であるのが好ましい。
【0019】
そのアゾ性二色性色素の中で、本発明においては、下記構造式(II)で表される二色性色素が特に好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
〔式(II)中、R1 、環A1 、環A2 、及びL1 は、構造式(I) におけると同様であり、環Ar1 は、置換基を有していてもよい芳香環を示し、X1 は、酸素原子、又はNR3 (R3 は、水素原子、又はアルキル基を示す。)を示し、n1 は1〜4の整数を示し、R2 は任意の置換基を示す。尚、n1 が2以上の場合、複数のAr1 は同一であっても異なっていてもよい。〕
【0022】
構造式(II)において、Ar1 の芳香環とは、芳香族性を有する環、即ち、(4n+2)π電子系(nは自然数)を有する環を意味し、その骨格構造は、通常5又は6員環の、単環又は2〜6縮合環からなり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環も含まれる。そして、構造式(II)におけるAr1 は、これらの芳香環から水素原子2個が引き抜かれた2価の基である。
【0023】
構造式(II)におけるAr1 の芳香環の骨格構造としては、具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、キノリン環、チエノ〔2,3−d〕チアゾール環、チオフェン環、2,1,3−ベンゾチアゾール環等が挙げられ、中でもベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環の置換位置としては、1,4−位が好ましい。
【0024】
Ar1 で示される前記芳香環の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、イソプロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、イソブタノイルオキシ基、sec−ブタノイルオキシ基、tert−ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基等の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアシルオキシ基;アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、イソプロパノイルアミノ基、ブタノイルアミノ基、イソブタノイルアミノ基、sec−ブタノイルアミノ基、tert−ブタノイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、オクタノイルアミノ基等の炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアシルアミノ基;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基、等が挙げられ、これらの置換基の中で、炭素原子を有する置換基においては、炭素原子数が1〜3であるのが好ましい。
【0025】
これらの置換基の中で、本発明においては、炭素数1〜20のアルキル基、及び、炭素数1〜20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基、及び、炭素数1〜3のアルコキシ基が特に好ましい。
【0026】
又、これらの置換基は、1個であっても複数個であってもよく、複数個の場合、該複数の置換基は同一であっても異なっていてもよく、又、置換基同士が結合して環を形成していてもよい。
【0027】
又、構造式(II)において、1〜4の整数であるn1 としては、1〜3であるのが好ましい。又、酸素原子又はNR3 (R3 は、水素原子、又はアルキル基を示す。)のX1 がNR3 であるときのアルキル基としては、Ar1 が有していてもよい置換基として前述した炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が挙げられ、中で、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
【0028】
前記構造式(I) 以外の構造部分にアゾ結合を有する以上の前記構造式(II)で表される部分構造としては、具体的には、例えば、下記構造が挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
そして、本発明においては、構造式(II)における任意の置換基のR2 としては、前記構造式(I) で表される基や、Ar1 が有していてもよい置換基として前述したアルキル基;アルコキシ基;アシルオキシ基;アシルアミノ基;ハロゲン原子;シアノ基;水酸基;ニトロ基、等であってもよく、又、その際、X1 とR2 が互いに結合して環を形成したものであってもよいが、高いオーダーパラメーターを達成するためには、R2 が下記構造式(III) で表されるものであるのが特に好ましい。
【0031】
【化6】

【0032】
〔式(III) 中、L2 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示し、L3 は、単結合、又は環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示し、環A3 及び環A4 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、n2 は1以上の整数を示し、R4 はアルキル基を示す。尚、n2 が2以上の場合、複数のL3 及び環A4 は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【0033】
構造式(III) において、L2 の、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基としては、特に限定されるものではないが、例えば、前記構造式(I) のL1 として前述した炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基、等が挙げられ、これらの中で、L2 としては、−CH2 −、−CH2 CH2 −、−CH2 CH2 CH2 −、−CH(CH3 )−、−CH2 CH2 O−、−CO−等が好ましい。
【0034】
又、構造式(III) において、L3 の、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基としても、特に限定されるものではないが、例えば、前記構造式(I) のL1 として前述した炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基;同じく前述した炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルケニレン基;同じく前述した炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキニレン基;同じく前述した炭素数2〜20のエステル基;エーテル基;カルボニル基;それらを組み合わせた基、等が挙げられ、これらの中で、L3 としては、−C≡C−、−CH2 O−、−O−CH2 −、−O−CO−、−CO−O−等が好ましい。
【0035】
又、環A3 及び環A4 の1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基の中で、環A3 及び環A4 の少なくとも1つは(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であるのが好ましく、n2 が1である場合及びn2 が2以上である場合のR4 と結合する環A4 としては、(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であるのが更に好ましい。
【0036】
又、構造式(III) において、1以上の整数であるn2 としては、1〜3であるのが好ましく、1又は2であるのが特に好ましい。又、R4 のアルキル基としては、構造式(I) におけるR1 のアルキル基として前述したと同様のものが挙げられ、中でも、直鎖状のものが更に好ましく、炭素数3〜8の直鎖状のアルキル基が特に好ましい。
【0037】
前記構造式(II)で表される部分構造におけるR2 としての前記構造式(III) で表される構造としては、具体的には、例えば、下記構造が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
以上の本発明の二色性色素は、下記反応により前記構造式(I) を含む化合物を合成した後、更に既知の反応を組み合わせることにより、合成することができる。
【0040】
【化8】

【0041】
ここで、L1 が−O−CO−又は−CO−O−等のエステル結合を有する場合には、例えば、対応するアルコールとカルボン酸を縮合反応させることにより、L1 を形成する。その際の縮合剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等のカルボジイミド類;ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、カルボニルジイミダゾール等のホスゲン等価体等が挙げられる。又、対応するアルコールと酸クロリドを塩基存在下に反応させることにより、L1 を形成する。
【0042】
又、L1 が−CH2 O−又は−O−CH2 −等のエーテル結合を有する場合には、例えば、対応するアルコールとハロゲン化物或いはスルホン酸エステル等を塩基存在下で反応させることにより、L1 を形成する(Williamsonエーテル合成法)。又は、対応するアルコールとフェノール体をトリフェニルホスフィンやアゾカルボン酸ジエチル等の縮合剤を用いて縮合反応させることにより、L1 を形成する(Mitsunobu反応)。
【0043】
又、L1 がアセチレン基等の炭素原子からなるものの場合には、対応するエチニル体とアリールハロゲン化物或いはスルホン酸アリールを遷移金属触媒の存在下でクロスカップリング反応させることにより、L1 を形成する(Sonogashira反応)。
【0044】
そして、合成した前記構造式(I) を含む化合物を既知の反応方法、例えば、A.V.Ivashchenko著「Dichroic Dye for Liquid Crystal Display」(CMC社、1994年発行)、堀口博著「総説合成染料」(三共出版、1968年発行)、及びこれらに引用されている文献に記載の方法、等を用いて反応させることにより、本発明の二色性色素を合成することができる。
【0045】
本発明の液晶組成物は、前記二色性色素の1種又は2種以上を、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989年発行)の第154〜192頁及び第715〜722頁記載のネマチック或いはスメクチック相を示すビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリミジン系、シクロヘキシルシクロヘキサン系等の各種のホスト液晶化合物、又はそれらの化合物を含有するホスト液晶組成物に公知の方法で混合することにより、容易に調製することができる。
【0046】
本発明の液晶組成物におけ本発明の前記二色性色素の含有割合は、特に限定されるものではないが、2種以上を含有する場合も含めて、通常0.05〜15重量%であり、0.1〜5重量%であるのが好ましい。
【0047】
その際のホスト液晶化合物としては、例えば、下記一般式(IV) 〜(VIII)で表されるNp型液晶化合物、Nn型液晶化合物が挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
〔式(IV) 〜(VIII)中、環Bは、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ジオキサン環、又はピリミジン環を示し、qは1〜3の整数を示す。Zは、単結合、−CO−O−、−CH2 CH2 −、−CH=CH−、又は−C≡C−を示す。Y1 及びY3 は各々独立して、水素原子、又は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、Y2 は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子、弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子を置換基として有する炭素数1〜7のアルキル基、同じくアルケニル基、同じくアルコキシ基、これらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するシクロヘキシル基、又はこれらの置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルコキシ基を置換基として有するフェニル基を示す。Y7 及びY8 は各々独立して、シアノ基、又は弗素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示す。Y11及びY13はシアノ基を示す。Y4 、Y5 、Y6 、Y9 、Y10、Y12、及びY14は各々独立して、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示す。〕
【0050】
尚、本発明の液晶組成物としては、本発明の前記二色性色素以外の二色性色素、及び、コレステリルノナノエート等の、液晶相を示しても示さなくてもよい光学活性物質や、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0051】
本発明の前記二色性色素は、380〜700nmの波長範囲において、オーダーパラメーターとして0.83以上、好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.86以上という高い値を示し、それを含有する液晶組成物として、コンピューター、時計、電卓用等の表示素子、電子光学シャッター、電子光学絞り、光通信光路切替スイッチ、光変調器等の種々の電子光学デバイスとして好適に利用することができる。
【0052】
尚、色素のオーダーパラメーター(S値)は、分光学的な測定に基づき、前述の日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」に記載の次式から求めることができる。
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
ここで、「A//」及び「A⊥」は、それぞれ、液晶の配向方向に対して平行及び垂直に偏光した光に対する色素の吸光度であり、S値は、理論上は0〜1の範囲の値をとり、その値が1に近づく程、ゲストホスト型液晶素子としてのコントラストが向上することとなる。
【0053】
本発明の液晶素子は、本発明の前記二色性色素を含有する前記液晶組成物を、少なくとも一方が透明な2枚の電極付基板間に挟持することにより、松本正一、角田市良著「液晶の最新技術」(工業調査会、1983年発行)第34頁、J.L.Fergason,SID85Digest,68(1985)、日本学術振興会第142委員会編「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社、1989発行)第315〜329頁、等に記載されているHeilmeier型ゲストホスト、相転移型ゲストホスト等のゲストホスト効果を利用した各種液晶素子を構成することができる。このように、本発明では、液晶素子のモードは種々のものが使用可能であるが、ネマチック液晶組成物中に光学活性物質を加えることにより得られる相転移モードでは、偏光板を用いなくてもコントラストが高く表示が明るいため、反射型液晶表示素子として特に好ましい。
【0054】
本発明の液晶素子の一例として、図1及び図2にアクティブ駆動方式の相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の略示的断面図を示す。図1は液晶表示素子の電圧印加状態を表し、図2は電圧無印加状態を表す。図中、1は入射光、3は透明ガラス板、4は透明電極、5は配向膜、6は液晶化合物分子、7は二色性色素分子、9は反射層、10は反射光を示す。
【0055】
電圧無印加時(図2)では、液晶化合物分子6はコレステリック相を示し、二色性色素分子7も液晶化合物分子6と共にコレステリック構造を示すので、入射光1は自然光であっても、偏光板を用いることなく二色性色素分子7に吸収される。電圧を印加すると(図1)、液晶化合物分子6と二色性色素分子7は電界方向に配列するため、光は透過し反射層9によって反射される。このように、液晶素子では、電界の有無によって、光の透過、吸収を制御することができる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<中間体「M06」の合成>
以下の反応式に従って中間体「M06」を合成した。
【0058】
【化10】

【0059】
反応1
「M01」50.4g(180mmol)、メタノール500ml、濃硫酸2.4mlの混合物を3時間加熱還流後、室温まで冷却し、減圧濃縮した。氷水250ml及びヘキサン500mlを加え、不溶物を濾別し、濾液を分液し、有機層を水250ml及び飽和食塩水250mlで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して、「M02」48.5g(収率92%)を白色結晶で得た。
【0060】
反応2
水素化アルミニウムリチウム15.4g(410mmol)をテトラヒドロフラン(THF)250mlに懸濁し、「M02」48.3g(164mmol)のTHF500ml溶液を氷浴で冷却下に滴下した。2時間加熱還流後、氷浴で冷却し、THF250ml、酢酸エチル150ml、20%硫酸水溶液250mlを順次滴下した。不溶物をセライト濾過で除き、酢酸エチルで洗い込んだ。濾液に1N塩酸500mlを加えて分液し、有機層を水500ml及び飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、「M03」40.9g(収率94%)を得た。
【0061】
反応3
「M03」17.0g(64mmol)、「M04」13.7g(64mmol)、トリフェニルホスフィン18.3g(70mmol)、THF200mlの混合物に、水浴下、アゾジカルボン酸ジエチルの2.2Nトルエン溶液31.8ml(70mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。メタノールを加え、得られた沈澱を濾取、メタノール洗浄して、「M05」23.5g(収率80%)を得た。
【0062】
反応4
「M05」25g(55mmol)、硫化ナトリウム9水和物49.6g(207mmol)、THF1L、エタノール0.5Lの混合物を3時間加熱還流した。室温まで冷却後、水1Lを加え、攪拌後、沈澱を濾取し、水及びメタノールで洗浄して、「M06」22.6g(収率97%)を得た。
【0063】
<中間体「M08」の合成>
以下の反応式に従って中間体「M08」を合成した。
【0064】
【化11】

【0065】
反応5
「M01」23.38g(83mmol)と1−ナフチルアミン12.11g(85mmol)とN,N−ジメチルアミノピリジン1.57g(12.9mmol)をジクロロメタン95mlに懸濁させ、氷冷した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩17.89g(93.3mmol)のジクロロメタン95ml懸濁液を加え、室温に戻して一晩攪拌した。1N塩酸を加えて濾過した。ウエットケーキを水、メタノール、ヘキサンの順で洗浄し、乾燥して「M07」31.6g(収率94%)を得た。
【0066】
反応6
「M07」31.6g(77.9mmol)とTHF300mlの混合物に水素化ホウ素ナトリウム6.79g(179mmol)を加え、氷浴で冷却後、沃素23.7g(93.4mmol)のTHF200ml溶液を滴下した。2時間加熱還流後、氷浴で冷却し、1N塩酸100ml、1N水酸化ナトリウム水溶液200mlを順次滴下し、酢酸エチル250mlを加え、有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、メタノールを加えて生じた沈澱を濾取し、メタノールで洗浄して、「M08」24.6g(収率81%)を得た。
【0067】
<中間体「M13」の合成>
以下の反応式に従って中間体「M13」を合成した。
【0068】
【化12】

【0069】
反応7
「M09」5.00g(37.8mmol)、「M10」11.7g(37.8mmol)、トリエチルアミン100ml、沃化銅(I)0.16g(0.86mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)1.0g(0.86mmol)の混合物を窒素雰囲気下で3時間加熱還流した。室温に冷却後、酢酸エチル50mlを加え、不溶物を濾過で除去し、酢酸エチルで洗い込んだ。母液を濃縮し、得られた粉末をメタノールで懸濁洗浄して、「M11」8.63g(収率63%)を得た。
【0070】
反応8
「M11」1.80g(5.0mmol)、四臭化炭素1.99g(6.0mmol)をTHF7mlに溶解し、トリフェニルホスフィン1.57g(6.0mmol)を室温で徐々に加えた。室温で20分間反応後、メタノールを加え、沈澱を濾取、メタノールで洗浄して、「M12」を得た。
【0071】
反応9
1−ナフチルアミン2.14g(15mmol)、炭酸カリウム1.4g(10mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mlの混合物を100℃に加熱し、反応8で得られた「M12」の全量をDMF20mlに懸濁させて加えた。100℃で2時間攪拌後、室温まで冷却、メタノール及び水を加え、沈澱を濾取、メタノールで懸濁洗浄して、「M13」1.94g(「M11」からの収率80%)を得た。
【0072】
<中間体「M18」の合成>
以下の反応式に従って中間体「M18」を合成した。
【0073】
【化13】

【0074】
反応10
対応するカルボン酸から反応1及び反応2と同様にして合成した「M14」4.77g(20mmol)、フタルイミド2.94g(20mmol)、トリフェニルホスフィン5.77g(22mmol)、THF100mlの混合物に、アゾジカルボン酸ジエチルの2.2mol/Lトルエン溶液10ml(22mmol)を室温で加え、室温で2時間攪拌後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル500g、ヘキサン/酢酸エチル=10/1〜5/1)で精製して、「M15」6.83g(収率93%)を得た。
【0075】
反応11
「M15」6.83g(18.6mmol)、エタノール100mlにヒドラジン1水和物2ml(41mmol)を加え、1.5時間加熱還流した。室温に冷却後、沈澱を濾別し、THFで洗い込み、濾液を濃縮し、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、THFとエーテルの混合溶媒で抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られたアモルファス状物質をメタノールに懸濁し、1N塩酸30mlを添加した。メタノールを留去し、沈澱を濾取し、水洗浄して、「M16」2.13g(収率42%)を得た。
【0076】
反応12
J.Am.Chem.Soc.98,3237(1976)に記載の方法で合成した「M17」1.84g(7.76mmol)、「M16」2.13g(7.78mmol)、トルエン20ml、ナトリウム−tert−ブトキシド1.86g(19.4mmol)、Pd2 (dba)3 0.18g(0.20mmol)、rac−BINAP0.36g(0.58mmol)の混合物を、85℃で2時間、95℃で2時間、105℃で2時間、115℃で0.5時間攪拌後、室温に冷却し、水及び酢酸エチルを加え、セライト濾過し、酢酸エチルで洗い込んだ。濾液を分液し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ヘキサン/酢酸エチル=100/1〜20/1〜10/1〜4/1)で精製し、粉末をメタノール/水で洗浄して、「M18」2.56g(収率84%)を得た。
【0077】
<中間体「M25」の合成>
以下の反応式に従って中間体「M25」を合成した。
【0078】
【化14】

【0079】
反応13
「M19」19.0g(77mmol)とジクロロメタン380mlの混合物にトリフルオロメタンスルホン酸無水物24.2g(86mmol)のジクロロメタン60ml溶液を加えた。ピリジン7.1ml(90mmol)のジクロロメタン25ml溶液を氷冷下に滴下し、室温で4時間攪拌後、氷水350mlを加えた。有機層を分離し、水層をジクロロメタンで抽出し、合わせたジクロロメタン層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル800g、ヘキサン)で精製して、「M20」24.25g(収率99%)を得た。
【0080】
反応14
「M20」27.2g(72mmol)、「M21」14.3g(79mmol)、炭酸ナトリウム22.9g(216mmol)、エタノール22ml、水90ml、トルエン200mlの混合物に、窒素雰囲気下でテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)3.0g(3mmol)を加え、60℃で7時間攪拌した。室温に冷却後、水を加え、セライト濾過で不溶物を除き、濾液を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル750g、ヘキサン/ジクロロメタン=9/1〜1/4)で精製し、得られた粉末をヘキサン/ジクロロメタンで懸濁洗浄して、「M22」10.9g(収率42%)を得た。
【0081】
反応15
水素化アルミニウムリチウム4.9g(129mmol)とTHF75mlの混合物に、氷冷下に「M22」21.2g(59mmol)を滴下し、2時間加熱還流した。氷冷下にTHF75ml、酢酸エチル45ml、及び20%硫酸水溶液70mlを順次滴下し、不溶物をセライト濾過で除き、酢酸エチルで洗い込んだ。濾液を1N塩酸250ml、水250ml、及び飽和食塩水250mlで順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、「M23」19.3g(収率99%)を得た。
【0082】
反応16
「M23」5.0g(14.9mmol)に30%臭化水素酸酢酸溶液40mlを加え、90℃で3時間攪拌後、室温に冷却し、氷水を加えて得られた結晶を濾取し、水及びメタノールで洗浄して、「M24」5.6g(収率95%)を得た。
【0083】
反応17
「M24」5.3g(13.3mmol)、1−ナフチルアミン2.28g(16mmol)、炭酸カリウム2.2g、及びDMF100mlの混合物を、60〜70℃で5時間攪拌し、室温に冷却した。水を加え、濾過で得た不溶物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100g、ヘキサン/ジクロロメタン=5/1〜3/1)で精製して、「M25」4.02g(収率66%)を得た。
【0084】
実施例1、比較例1
前記で得られた中間体「M06」を用い、以下の反応式に従って二色性色素「化合物1」を合成した。
【0085】
【化15】

【0086】
反応18
「M06」10.4g(24mmol)、J.Org.Chem.44,2510(1979)に記載の方法で合成した「M26」3.65g(24mmol)、酢酸300mlの混合物を50℃で5時間攪拌した。室温に冷却後、メタノールと水を加え、析出した固体を濾取し、水及びメタノールで洗浄し、「M27」14.0g(収率定量的)を得た。
【0087】
反応19
「M27」13.5g(23.8mmol)、硫化ナトリウム9水和物21.5g(89.5mmol)、THF600ml、及びエタノール300mlの混合物を1.5時間加熱還流した。室温に冷却後、水500mlを加え、沈澱を濾取し、水及びメタノールで懸濁洗浄して、「M28」13.1g(収率定量的)を得た。
【0088】
反応20
「M28」0.28g(0.51mmol)、「M24」0.20g(1.1mmol)、炭酸カリウム0.15g(1.1mmol)、沃化カリウム0.024g(0.14mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)36mlの混合物を100℃で5時間攪拌した。氷冷してメタノールを加え、沈澱を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル50g、ヘキサン/クロロホルム=1/1〜0/1)で精製し、クロロホルム/酢酸エチルで懸濁洗浄して、二色性色素「化合物1」0.010g(収率13%)を得た。
【0089】
得られた二色性色素「化合物1」を「MCL−2039」としてMerck社より市販されているフッ素系液晶混合物に、0.1重量%の濃度で溶解させ、ゲストホスト液晶組成物を調製した。ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付ガラス基板2枚を対向させ、液晶が平行配向となるように構成したギャップ50μmのセルに、この液晶組成物を封入した。この着色したセルの配向方向に平行な直線偏光に対する吸光度(A//)、及び配向方向に垂直な偏光に対する吸光度(A⊥)を測定し、吸収ピーク(λmax)における吸光度(A//)及び吸光度(A⊥)から、下記式よりオーダーパラメーター(S値)を算出し、結果を「比較化合物1」と共に表1に示した。
S=(A//−A⊥)/(2A⊥+A//)
【0090】
【表1】

【0091】
実施例2、比較例2
前記で得られた中間体「M06」を用い、以下の反応式に従って二色性色素「化合物2」を合成した。
【0092】
【化16】

【0093】
反応21
「M06」4.3g(9.9mmol)とNMP220mlの混合物に、氷冷下に濃硫酸2.66ml(30mmol)、及び亜硝酸ナトリウム0.725g(10.5mmol)を少量の水に溶解させて加え、氷冷下で2時間攪拌した。アミド硫酸0.188gを少量の水に溶解させて加え、氷冷下で暫く攪拌してジアゾ液を得た。別の容器に、1−ナフチルアミン1.43g(10mmol)、酢酸22ml、及び水11mlの混合物を取り、氷冷下にジアゾ液を滴下し、氷冷下に30分間攪拌後、室温で暫く攪拌した。再度氷冷し、酢酸ナトリウム2.4g(30mmol)の水200ml溶液を加え、得られた沈澱にエタノール100mlと酢酸ナトリウム2.4g(30mmol)を加え、室温で1時間攪拌後、沈澱を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル150g、ヘキサン/クロロホルム=3/2〜クロロホルム〜クロロホルム/メタノール=100/1)で精製し、ジクロロメタン/メタノールで懸濁洗浄して、「M29」2.91g(収率51%)を得た。
【0094】
反応22
「M29」2.5g(4.3mmol)とNMP250mlの混合物に、氷冷下に濃硫酸3.8ml(43mmol)、及び亜硝酸ナトリウム0.326g(4.7mmol)を少量の水に溶解させて加え、氷冷下で4時間攪拌した。アミド硫酸0.543gを少量の水に溶解させて加え、氷冷下で暫く攪拌してジアゾ液を得た。別の容器に、フェノール4.0g(43mmol)、及び氷水120mlの混合物を取り、酢酸ナトリウムを加えてpH8にした後、氷冷下に内部温度を10℃以下に保ちつつジアゾ液を滴下した。この間、1N水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応液のpHを8〜10に保った。滴下収量後、室温に昇温し、沈澱を濾取し、水及びメタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで2回(1回目:シリカゲル200g、ジクロロメタン/メタノール=1/0〜10/1、2回目:シリカゲル35g、クロロホルム/メタノール=1/0〜10/1)で精製し、得られた固体をジクロロメタン/メタノールで懸濁洗浄して、「M30」1.09g(収率37%)を得た。
【0095】
反応23
「M30」0.380g(0.55mmol)、「M24」0.241g(0.61mmol)、炭酸カリウム0.115g(1.1mmol)、及びNMP35mlの混合物を70℃で2時間攪拌した。「M24」0.022g、及び炭酸カリウム0.010gを追加し、70℃で2時間攪拌後、「M24」0.44g、及び炭酸カリウム0.020gを追加し、70℃で1時間攪拌した。室温に冷却後、沈澱を濾取し、水及びメタノールで洗浄し、THF、DMF、メタノールで順次懸濁洗浄して、二色性色素「化合物2」0.35g(収率63%)を得た。
【0096】
得られた二色性色素「化合物2」について、実施例1におけると同様にして、吸収ピーク(λmax)における吸光度からオーダーパラメーター(S値)を算出し、結果を「比較化合物2」と共に表2に示した。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例3〜6、比較例3
前記で得られた中間体「M06」を用い、以下の反応式に従って二色性色素「化合物3」を合成した。
【0099】
【化17】

【0100】
反応24
「M06」0.22gをNMP30mlに溶解し、0℃で濃硫酸0.2ml、及び亜硝酸ナトリウム0.036gの水1ml溶液を加え、0℃で2時間攪拌した。別の容器に、前記<中間体「M08」の合成>で得られた中間体「M08」0.20gのNMP5ml溶液を採り、前記反応液を0℃で加えた。10分間攪拌後、酢酸ナトリウム1g、及びメタノール20mlを加え、沈澱を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル50g、ヘキサン/クロロホルム=1/1〜0/1)、及びエタノール懸濁洗浄で精製して、二色性色素「化合物3」0.17g(収率41%)を得た。
【0101】
又、前記反応24において、「M08」に代えて、前記<中間体「M18」の合成>と同様にしてフェノール体を用いて合成した下記「M32」を用いた外は、前記反応24と同様にして、二色性色素「化合物4」を合成した。
【0102】
【化18】

【0103】
又、前記反応24において、「M08」に代えて、前記<中間体「M25」の合成>で得られた中間体「M25」を用いた外は、前記反応24と同様にして、二色性色素「化合物5」を合成した。
【0104】
又、前記反応24において、「M08」に代えて、前記<中間体「M13」の合成>で得られた中間体「M13」を用いた外は、前記反応24と同様にして、二色性色素「化合物6」を合成した。
【0105】
得られた二色性色素「化合物3〜6」について、実施例1におけると同様にして、吸収ピーク(λmax)における吸光度からオーダーパラメーター(S値)を算出し、結果を「比較化合物3」と共に表3に示した。
【0106】
【表3】

【0107】
実施例7〜9、比較例4
「M14」を原料に用いて「M28」と同様にして合成した中間体「M31」と、前記<中間体「M25」の合成>で得られた中間体「M25」とから、以下の反応式に従って二色性色素「化合物7」を合成した。
【0108】
【化19】

【0109】
反応25
「M31」0.37g(0.7mmol)とNMP20mlの混合物を氷冷し、濃硫酸0.2ml、及び亜硝酸ナトリウム0.057g(0.8mmol)の水0.5ml溶液を加え、氷冷下に1時間攪拌してジアゾ液を得た。別の容器に、前記<中間体「M25」の合成>で得られた中間体「M25」0.33g(0.7mmol)とNMP3mlの混合物を取り、氷冷下にジアゾ液を加え、室温で1時間攪拌した。氷冷し、酢酸ナトリウム及び水を加え、沈澱を濾取し、メタノールで洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル75g、ヘキサン/クロロホルム=1/2〜1/9)で精製し、得られた固体をクロロホルム/酢酸エチル、及びTHF/酢酸エチルで順次洗浄して、二色性色素「化合物7」0.195g(収率28%)を得た。
【0110】
又、前記反応25において、「M31」に代えて前記中間体「M28」を用い、「M25」に代えて前記中間体「M32」を用いた外は、前記反応25と同様にして、二色性色素「化合物8」を合成した。
【0111】
又、前記反応25において、「M25」に代えて、前記<中間体「M13」の合成>で得られた中間体「M13」を用いた外は、前記反応25と同様にして、二色性色素「化合物9」を合成した。
【0112】
得られた二色性色素「化合物7〜9」について、実施例1におけると同様にして、吸収ピーク(λmax)における吸光度からオーダーパラメーター(S値)を算出し、結果を「比較化合物4」と共に表4に示した。
【0113】
【表4】

【0114】
実施例10、比較例5
「M14」を原料に用いて「M29」と同様にして合成した中間体「M33」を用い、以下の反応式に従って二色性色素「化合物10」を合成した。
【0115】
【化20】

【0116】
反応26
「M33」6.73g(12.0mmol)とNMP300mlの混合物を氷冷し、濃塩酸3ml、及び亜硝酸ナトリウム1.28g(13.2mmol)の水5ml溶液を加え、1時間攪拌後、アミド硫酸0.65g(3.6mmol)の水1ml溶液を加え、30分間攪拌してジアゾ液を得た。別の容器に、1−ナフチルアミン1.77g(12.4mmol)、酢酸30ml、酢酸ナトリウム1.22g、及び水5mlの混合物を氷冷して、ジアゾ液を加え、NMP150mlで洗い込んだ。室温に戻して1時間攪拌後、氷冷し、酢酸ナトリウム1.2gの水300ml溶液を加え、沈澱を濾取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル350g、クロロホルム/ヘキサン=1/1〜0/1)で2回精製し、「M34」0.40g(収率5%)を得た。
【0117】
反応27
「M34」0.39g(0.55mmol)とDMF25mlの混合物を氷冷し、濃塩酸0.15ml(1.8mmol)、及び亜硝酸ナトリウム0.0552g(0.57mmol)の水0.3ml溶液を加え、氷冷下に1時間攪拌した。アミド硫酸0.0192g(0.11mmol)の水0.1ml溶液を加え、10分間攪拌してジアゾ液を得た。別の容器に、前記<中間体「M18」の合成>で得られた中間体「M18」0.214g(0.54mmol)とDMF7mlの混合物を取り、氷冷下にジアゾ液を加え、室温で30分間攪拌した。再び氷冷し、酢酸ナトリウム0.061gの水50ml溶液を加え、濾過した。ウエットケーキをエタノールに懸濁させ、酢酸ナトリウムを加えて室温で攪拌後、濾過した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル75g、クロロホルム/メタノール=1/0〜50/1)で2回精製し、得られた固体をTHF/酢酸エチルで3回懸濁洗浄して、二色性色素「化合物10」0.036g(収率6%)を得た。
【0118】
得られた二色性色素「化合物10」について、実施例1におけると同様にして、吸収ピーク(λmax)における吸光度からオーダーパラメーター(S値)を算出し、結果を「比較化合物5」と共に表5に示した。
【0119】
【表5】

【0120】
以上、同一の色素骨格を有する色素化合物毎に纏めて結果を示した表1〜5から、本発明の色素化合物は比較例の化合物に比べてS値が高く、一般式(I) で表される部分構造を導入することにより、二色性色素のS値向上に大きな効果がもたらされることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の液晶素子の一実施例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧印加状態における略示的断面図である。
【図2】本発明の液晶素子の一実施例を示す相転移モードゲストホスト型液晶表示素子の電圧無印加状態における略示的断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1;入射光
3;透明ガラス基板
4;透明電極
5;配向膜
6;液晶化合物分子
7;二色性色素分子
9;反射層
10;反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I) で表される部分構造を有することを特徴とする二色性色素。
【化1】

〔式(I) 中、R1 はアルキル基を示し、環A1 及び環A2 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、L1 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示す。〕
【請求項2】
前記構造式(I) 以外の構造部分にアゾ結合を有する請求項1に記載の二色性色素。
【請求項3】
下記構造式(II)で表される請求項2に記載の二色性色素。
【化2】

〔式(II)中、R1 、環A1 、環A2 、及びL1 は、構造式(I) におけると同様であり、環Ar1 は、置換基を有していてもよい芳香環を示し、X1 は、酸素原子、又はNR3 (R3 は、水素原子、又はアルキル基を示す。)を示し、n1 は1〜4の整数を示し、R2 は任意の置換基を示す。尚、n1 が2以上の場合、複数のAr1 は同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項4】
前記構造式(II)におけるR2 が、下記構造式(III) で表される構造である請求項3に記載の二色性色素。
【化3】

〔式(III) 中、L2 は、環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示し、L3 は、単結合、又は環状構造及びアゾ結合を含まない二価の連結基を示し、環A3 及び環A4 は各々独立して、1,4−フェニレン基、又は(E)−シクロヘキサン−1,4−ジイル基を示し、n2 は1以上の整数を示し、R4 はアルキル基を示す。尚、n2 が2以上の場合、複数のL3 及び環A4 は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。〕
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の二色性色素を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶組成物を含有する液晶相を有することを特徴とする液晶素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−7485(P2009−7485A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170700(P2007−170700)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)