説明

二軸試験装置及び二軸試験方法

【課題】試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化を実現することが可能である二軸試験装置及び二軸試験方法を提供する。
【解決手段】アクチュエータ3と、アクチュエータ3の作動により一軸方向に接近離間する一対の治具プレート5,6と、一対の治具プレート5,6と試験片Pとを分離可能に結合し且つアクチュエータ3を動作させて試験片Pに鉛直方向の荷重を負荷した段階で、鉛直方向の荷重と直交する方向の荷重を試験片Pに作用させる荷重伝達機構10を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験装置及び二軸試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した二軸試験装置としては、例えば、試験片に鉛直荷重を負荷する鉛直用アクチュエータ及び鉛直方向と直交する方向のせん断荷重を負荷するせん断用アクチュエータを備えた二軸試験装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−180322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記した従来の二軸試験装置にあっては、鉛直用アクチュエータ及びせん断用アクチュエータの二つのアクチュエータを備えている都合上、試験スペースが狭くなると共に、試験コストが高くついてしまうという問題があった。
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化を実現することが可能である二軸試験装置及び二軸試験方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る発明は、試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験装置であって、アクチュエータと、このアクチュエータの作動により一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部と、この荷重負荷部と試験片とを分離可能に結合し且つ前記荷重負荷部を動作させて前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる荷重伝達機構を備えた構成としたことを特徴としており、この構成の二軸試験装置を前述の従来の課題を解決するための手段としている。
【0005】
本発明の請求項2に係る二軸試験装置において、前記荷重伝達機構は、一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、前記試験片に設けられて前記ピンが摺動自在に係合する長孔を具備し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させるべく、前記長孔を斜め又は湾曲させて形成した構成としている。
【0006】
本発明の請求項3に係る二軸試験装置において、前記荷重伝達機構は、一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、前記試験片を把持するクランプに設けられて前記ピンが摺動自在に係合する長孔を具備し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させるべく、前記長孔を斜め又は湾曲させて形成した構成としている。
【0007】
一方、本発明の請求項4に係る発明は、試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験方法であって、一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部には二本のピンを設けると共に、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部には二本のピンを設け、前記試験片には前記ピンが摺動自在に係合する長孔を斜め又は湾曲させて形成し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる構成としている。
【0008】
本発明の請求項5に係る発明は、試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験方法であって、一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部には二本のピンを設けると共に、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部には二本のピンを設け、試験片を把持するクランプに前記ピンが摺動自在に係合する長孔を斜め又は湾曲させて形成し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる構成としている。
【0009】
本発明の二軸試験装置及び二軸試験方法において、試験片に一軸方向の荷重、例えば、引張り荷重を負荷すると、試験片には一軸方向の引張り荷重が作用することとなる。
この際、斜め又は湾曲状に形成した長孔と係合するピンが一軸方向に移動するのに伴って、長孔内をその上端側又は下端側に向けて相対的に移動することから、試験片には一軸方向と直交する方向の引張り荷重又は圧縮荷重が作用することとなる。
【0010】
つまり、この二軸試験装置及び二軸試験方法では、アクチュエータにより試験片に一軸方向の引張り荷重を負荷すると、一軸方向と直交する方向の引張り荷重又は圧縮荷重をも試験片に作用させ得ることとなり、すなわち、従来必要としていた水平方向に荷重を負荷するためのアクチュエータが不要となり、その分だけ、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化が図られることとなる。
【0011】
ここで、本発明に係る二軸試験装置及び二軸試験方法において、試験片又はこの試験片を把持するクランプに設ける長孔を斜めに形成する場合、その傾斜角度はとくに限定しないが、長孔の一軸方向に対する傾斜角度を45°とした場合には、試験片に一軸方向の荷重を負荷すると、試験片に対してこの荷重とほぼ同等の荷重を一軸方向と直交する方向に負荷し得ることとなる。
【0012】
また、長孔の一軸方向に対する傾斜角度を45°よりも小さくしたり大きくしたりすれば、試験片に負荷し得る一軸方向と直交する方向の荷重の大きさを上記傾斜角度の変化に応じて任意に変更し得ることとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1,2に係る二軸試験装置及び請求項4に係る二軸試験方法では、上記した構成としているので、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化を実現することが可能である。
また、本発明の請求項3に係る二軸試験装置及び請求項5に係る二軸試験方法では、試験片に造作を加えずに済ませることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る二軸試験装置を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、本発明に係る装置の一実施形態を示している。
図1に示すように、この二軸試験装置1は、ベース2と、押し引きロッド3aを具備してこの押し引きロッド3aを鉛直方向(一軸方向)の装置機軸L上に位置させた状態でベース2の上方に配置したアクチュエータ3と、ベース2に設けた二枚の治具プレート(一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部)5と、アクチュエータ3の押し引きロッド3aにブラケット7を介して設けた二枚の治具プレート(一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部)6と、これらの治具プレート5,6と試験片Pとを分離可能に結合する荷重伝達機構10を備えている。
【0015】
上記荷重伝達機構10は、治具プレート5,6にそれぞれ設けたピン11と、試験片Pに設けた長孔12とからなっており、ピン11は長孔12に摺動自在に係合するようになっている。
ベース2側のピン11,11は、装置機軸Lを間にして対称配置してあり、一方、アクチュエータ3側のピン11,11も、装置機軸Lを間にして対称配置してあって、ベース2側のピン11,11の間隔及びアクチュエータ3側のピン11,11の間隔は互いに等しくしてある。
【0016】
この場合、荷重伝達機構10の長孔12は、ほぼ正方形状を成す試験片Pの四隅に配置してあり、ベース2側のピン11,11と係合する長孔12,12は、各々の上端同士の間隔が下端同士の間隔よりも広くなるようにして斜めに形成してあり、一方、アクチュエータ3側のピン11,11と係合する長孔12,12は、各々の下端同士の間隔が上端同士の間隔よりも広くなるようにして斜めに形成してある。
【0017】
そして、試験開始前の段取り段階において、ベース2側のピン11,11をこれに対応する長孔12,12の各上端側に位置させると共に、アクチュエータ3側のピン11,11をこれに対応する長孔12,12の各下端側に位置させてセットするようになっている。
次に、上記した二軸試験装置1による試験要領を説明する。
【0018】
まず、段取り段階において、二軸試験装置1のベース2側に位置する荷重伝達機構10のピン11,11をこれに対応する長孔12,12の各上端側に係合させると共に、アクチュエータ3側に位置する荷重伝達機構10のピン11,11を同じくこれに対応する長孔12,12の各下端側に係合させる(図1に示す状態)。
次いで、二軸試験装置1のアクチュエータ3にロッド引き込み動作を行わせて、アクチュエータ3の押し引きロッド3aを上昇させると、アクチュエータ3の引張り荷重が荷重伝達機構10を介して試験片Pに伝えられ、試験片Pには鉛直方向(一軸方向)の引張り荷重が作用することとなる(図2に示す状態)。
【0019】
この際、アクチュエータ3側における荷重伝達機構10のピン11,11が治具プレート6とともに上昇するのに伴って、アクチュエータ3側に位置する長孔12,12内をその上端側に向けて相対的に移動することから、試験片Pの上端側には鉛直方向と直交する水平方向(図示矢印方向)の引張り荷重が作用することとなる。
一方、ベース2側における荷重伝達機構10のピン11,11は、試験片Pがアクチュエータ3の押し引きロッド3aに引っ張られて上昇するのに伴って、ベース2側に位置する長孔12,12内をその下端側に向けて相対的に移動することから、試験片Pの下端側にも鉛直方向と直交する水平方向(図示矢印方向)の引張り荷重が作用することとなる。
【0020】
つまり、この二軸試験装置1では、アクチュエータ3を作動させて試験片Pに鉛直方向の引張り荷重を負荷すると、荷重伝達機構10によって、鉛直方向と直交する水平方向の引張り荷重をも試験片Pに作用させ得ることとなり、すなわち、従来必要としていた水平方向に荷重を負荷するためのアクチュエータが不要となり、その分だけ、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化が図られることとなる。
【0021】
図3及び図4は、本発明に係る二軸試験装置の他の実施形態を示している。
図3及び図4に示すように、この実施形態の二軸試験装置1が先の実施形態の二軸試験装置1と相違するところは、荷重伝達機構20を構成する試験片Pの四隅に配置した長孔22の傾斜方向を変更した点にあり、他の構成は先の実施形態の二軸試験装置1と同じである。
【0022】
すなわち、この実施形態において、ベース2側のピン21,21と係合する長孔22,22は、各々の下端同士の間隔が上端同士の間隔よりも広くなるようにして斜めに形成してあり、一方、アクチュエータ3側のピン21,21と係合する長孔22,22は、各々の上端同士の間隔が下端同士の間隔よりも広くなるようにして斜めに形成してある。
この二軸試験装置1においても、段取り段階では、二軸試験装置1のベース2側に位置する荷重伝達機構20のピン21,21をこれに対応する長孔22,22の各上端側に係合させると共に、アクチュエータ3側に位置する荷重伝達機構20のピン21,21を同じくこれに対応する長孔22,22の各下端側に係合させる(図3に示す状態)。
【0023】
次いで、二軸試験装置1のアクチュエータ3にロッド引き込み動作を行わせて、アクチュエータ3の押し引きロッド3aを上昇させると、アクチュエータ3の引張り荷重が荷重伝達機構20を介して試験片Pに伝えられ、試験片Pには鉛直方向(一軸方向)の引張り荷重が作用することとなる(図4に示す状態)。
この際、アクチュエータ3側における荷重伝達機構20のピン21,21が治具プレート6とともに上昇するのに伴って、アクチュエータ3側に位置する長孔22,22内をその上端側に向けて相対的に移動することから、試験片Pの上端側には鉛直方向と直交する水平方向(図示矢印方向)の圧縮荷重が作用することとなる。
【0024】
一方、ベース2側における荷重伝達機構20のピン21,21は、試験片Pがアクチュエータ3の押し引きロッド3aに引っ張られて上昇するのに伴って、ベース2側に位置する長孔22,22内をその下端側に向けて相対的に移動することから、試験片Pの下端側にも鉛直方向と直交する水平方向(図示矢印方向)の圧縮荷重が作用することとなる。
つまり、この二軸試験装置1では、アクチュエータ3を作動させて試験片Pに鉛直方向の引張り荷重を負荷すると、荷重伝達機構20によって、鉛直方向と直交する水平方向の圧縮荷重をも試験片Pに作用させ得ることとなり、すなわち、従来必要としていた水平方向に荷重を負荷するためのアクチュエータが不要となり、その分だけ、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化が図られることとなる。
【0025】
図5は、本発明に係る二軸試験装置のさらに他の実施形態を示している。
図5に示すように、この実施形態の二軸試験装置1が先の実施形態の二軸試験装置1と相違するところは、試験片Pの四隅を把持するクランプ8を設け、荷重伝達機構30のピン31と係合する長孔32をこのクランプ8に形成した点にあり、他の構成は先の実施形態の二軸試験装置1と同じである。
【0026】
この実施形態の二軸試験装置1では、上記実施形態の二軸試験装置1と同様に、試験スペースの拡大化及び試験コストの低減化が図られ、さらに、荷重伝達機構30の長孔32をクランプ8に形成することから、試験片Pに造作を加えずに済むという利点がある。
上記した実施形態では、試験片Pがいずれも略正方形状を成している場合を示したが、これに限定されるものではない。
【0027】
また、上記した実施形態では、荷重伝達機構の長孔がいずれも直線状を成している場合を示したが、長孔が湾曲状を成していても差し支えない。
さらに、上記した実施形態では、荷重伝達機構の長孔に係合するピンがいずれも一本の場合を示したが、周り止めとして機能する補助ピンを上記ピンと並べて配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る二軸試験装置の一実施形態を示す作動前の正面説明図である。
【図2】図1における二軸試験装置の作動後の正面説明図である。
【図3】本発明に係る二軸試験装置の他の実施形態を示す作動前の正面説明図である。
【図4】図3における二軸試験装置の作動後の正面説明図である。
【図5】本発明に係る二軸試験装置のさらに他の実施形態を示す作動後の正面説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 二軸試験装置
3 アクチュエータ
5,6 治具プレート(一対の荷重負荷部)
8 クランプ
10,20,30 荷重伝達機構
11,21,31 ピン(荷重伝達機構)
12,22,32 長孔(荷重伝達機構)
P 試験片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験装置であって、アクチュエータと、
このアクチュエータの作動により一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部と、
この荷重負荷部と試験片とを分離可能に結合し且つ前記荷重負荷部を動作させて前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる荷重伝達機構を備えた
ことを特徴とする二軸試験装置。
【請求項2】
前記荷重伝達機構は、一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、前記試験片に設けられて前記ピンが摺動自在に係合する長孔を具備し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させるべく、前記長孔を斜め又は湾曲させて形成した請求項1に記載の二軸試験装置。
【請求項3】
前記荷重伝達機構は、一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部に設けた二本のピンと、前記試験片を把持するクランプに設けられて前記ピンが摺動自在に係合する長孔を具備し、前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させるべく、前記長孔を斜め又は湾曲させて形成した請求項1に記載の二軸試験装置。
【請求項4】
試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験方法であって、
一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部には二本のピンを設けると共に、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部には二本のピンを設け、
前記試験片には前記ピンが摺動自在に係合する長孔を斜め又は湾曲させて形成し、
前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる
ことを特徴とする二軸試験方法。
【請求項5】
試験片の二軸応力下における力学特性を評価するのに用いる二軸試験方法であって、
一軸方向に接近離間する一対の荷重負荷部のうちの一方の荷重負荷部には二本のピンを設けると共に、一対の荷重負荷部のうちの他方の荷重負荷部には二本のピンを設け、
前記試験片を把持するクランプに前記ピンが摺動自在に係合する長孔を斜め又は湾曲させて形成し、
前記試験片に一軸方向の荷重を負荷した段階で、前記一軸方向の荷重と直交する方向の荷重を前記試験片に作用させる
ことを特徴とする二軸試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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