説明

二輪車フレームの保持装置

【課題】 簡易な構成で、二輪車フレームの移載作業を一人作業にすることができる二輪車フレームの保持装置を提供する。
【解決手段】 二輪車フレームWを保持して搬送するための保持装置1は、第1アーム3の一端3aにバランサーアーム2を接続し、第1アーム3の他端3bに第1アーム3と直交して回動自在に第2アーム4を設け、この第2アーム4に第2アーム4と直交して回動自在に第3アーム5を設け、この第3アーム5の一端5aに把持手段6を設け、第3アーム5の他端5bに位置決めボス7を設けた。また、第2アーム4の外周にエアシリンダ8のピストンロッド8aの先端を連結し、第1アーム3に立設した支柱3cにエアシリンダ8のシリンダ本体8bを連結し、第3アーム5の外周にエアシリンダ9のピストンロッド9aの先端を連結し、第2アーム4に立設した支柱4cにエアシリンダ9のシリンダ本体9bを連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が二輪車フレームを把持して搬送する作業をアシストするための二輪車フレームの保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車フレームをハンガーコンベアから取り外して作業工程へ搬送する移載作業は、重量物搬送作業であるため、二人の作業者により行われている。そこで、このような移載作業を一人作業にするために、二輪車フレームの移載アシスト装置として、二輪車フレームを片吊把持する装置が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、二輪車フレームを搬送ロボットによって所定位置に移動して固定する場合に、搬送ロボットのアーム先端にヘッドパイプの両端を挟持するピンとフレームの振れ止め板からなる保持用治具を設け、この保持用治具とは分離して所定位置に設けた固定治具と前記保持用治具とで二輪車フレームを所定位置に移動し固定する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−278998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、片吊把持する装置では、片吊把持のためバランスが取り難く、他機種のフレームに適用することができない。また、特許文献1に記載された技術では、移載作業を自動化することが可能になるものの二輪車フレームの搬送距離が搬送ロボットの可動範囲に限られると共に、装置が大掛かりになるという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で、二輪車フレームの移載作業を一人作業にすることができる二輪車フレームの保持装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、二輪車フレームを保持して搬送するための保持装置であって、アームの一端にフレーム部を把持する把持手段を設け、前記アームの他端にピポット部に挿入して固定する位置決めボスを設け、前記アームがバランサーアームに吊るされるものである。
【0008】
前記アームは第1アームと第2アームと第3アームから構成され、第1アームの一端に前記バランサーアームを接続し、第1アームの他端に第1アームと直交して回動自在に第2アームを設け、この第2アームに第2アームと直交して回動自在に第3アームを設け、この第3アームの一端に前記把持手段を設け、第3アームの他端に前記位置決めボスを設けることができる。
【0009】
また、前記第2アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、前記第1アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結し、前記第3アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、前記第2アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結し、これらのエアシリンダの進退動作により二輪車フレームの姿勢変更を補助することができる。
【0010】
また、前記把持手段は、手首部を中心に左右に夫々連結された複数のリンクと、これらのリンク毎に取り付けた複数のプレートにより手型形状の指多関節に形成され、前記把持手段の動作方向を把持方向に制限するラチェット機構と、このラチェット機構による把持状態を1アクションで解除する解除機構を備えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二輪車フレームの移載作業を二人作業から一人作業にすることができると共に、重量物搬送作業の作業者に対する負荷の軽減が図れる。
【0012】
バランサーアームに接続するアームを第1アームと第2アームと第3アームから構成し、第1アームの他端に第1アームと直交して回動自在に第2アームを設け、この第2アームに第2アームと直交して回動自在に第3アームを設け、この第3アームの一端に把持手段を設け、第3アームの他端に位置決めボスを設ければ、第2アームの回動動作(ツイスト動作)と第3アームの回動動作(ベント動作)の合成により、二輪車フレームの姿勢を変更することができる。
【0013】
また、第2アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、第1アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結し、第3アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、第2アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結すれば、これらのエアシリンダの進退動作が第2アームの回動動作(ツイスト動作)と第3アームの回動動作(ベント動作)を補助するので、作業者は二輪車フレームWの旋回・反転などの姿勢変更作業を円滑且つ容易に行うことができる。
【0014】
また、把持手段を、手首部を中心に左右に夫々連結された複数のリンクと、これらのリンク毎に取り付けた複数のプレートにより手型形状の指多関節に形成すれば、フレーム形状に合わせて把持することができる。更に、動作方向を把持方向に制限するラチェット機構と、このラチェット機構による把持状態を1アクションで解除する解除機構を備えれば、把持を円滑に行うことができると共に、把持状態を1アクションで解除することができるので、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】二輪車フレームの概要斜視図
【図2】本発明に係る二輪車フレームの保持装置の概要斜視図
【図3】本発明に係る二輪車フレームの保持装置の説明図で、(a)は平面図、(b)は側面図
【図4】把持手段の説明図で、(a)は非把持状態の平面図、(b)は直線状に開いた場合の背面図、(c)は把持状態の平面図
【図5】ラチェット機構と解除機構の説明図
【図6】位置決めボスの説明図
【図7】作用説明図
【図8】作用説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。本発明に係る二輪車フレームの保持装置の保持対象となる二輪車フレームWは、図1に示すように、パイプ型フレームで、ヘッドパイプWaと、ヘッドパイプWaから延びるフレーム部Wbと、フレーム部Wbの所定箇所に設けられたピポット部Wcなどから形成されている。ピポット部Wcには孔Wdが開いている。なお、二輪車フレームWとしてパイプ型フレームの他に、アルミ型フレームも保持の対象となる。
【0017】
本発明に係る二輪車フレームの保持装置1は、図2と図3に示すように、搬送重量を軽減するバランサーアーム2に一端3aを接続した第1アーム3と、第1アーム3の他端3bに第1アーム3と直交して回動自在に嵌合したT字形状の第2アーム4と、第2アーム4に第2アーム4と直交して回動自在に嵌合した第3アーム5と、第3アーム5の一端5aに設けた把持手段6と、第3アーム5の他端5bに設けた位置決めボス7からなる。
【0018】
第1アーム3の他端3bは、第2アーム4の一端4aが回動自在に嵌合できるよう円筒形状に形成されている。第2アーム4の他端4bも、第3アーム5が回動自在に嵌合できるよう円筒形状に形成されている。把持手段6は二輪車フレームWの所定箇所のフレーム部Wbを把持し、位置決めボス7は二輪車フレームWのピポット部Wcの孔Wdに内側から挿入して固定する。
【0019】
また、第2アーム4の外周中央にエアシリンダ8のピストンロッド8aの先端を連結し、第1アーム3の他端3bに立設した支柱3cの端部にエアシリンダ8のシリンダ本体8bの端部を連結している。更に、第3アーム5の外周中央にエアシリンダ9のピストンロッド9aの先端を連結し、第2アーム4に立設した支柱4cの端部にエアシリンダ9のシリンダ本体9bの端部を連結している。
【0020】
そして、作業者による保持装置1により支持された二輪車フレームWの姿勢変更は、第2アーム4の回動動作(ツイスト動作)と第3アーム5の回動動作(ベント動作)の合成によって行われる。エアシリンダ8,9のピストンロッド8a,9a側には、保持装置1により支持された二輪車フレームWの姿勢を、作業者が円滑に変更するのに必要な圧力のエアを供給し、その反対側は開放して大気圧としている。
【0021】
作業者による二輪車フレームWの姿勢変更の際には、エアシリンダ8の進退動作が第2アーム4の回動動作(ツイスト動作)を補助し、エアシリンダ9の進退動作が第3アーム5の回動動作(ベント動作)を補助するので、作業者は二輪車フレームWの旋回・反転などの姿勢変更作業を円滑且つ容易に行うことができる。
【0022】
把持手段6は関節機構(ボールジョイント)10を介して第3アーム5の一端5aに取り付けられ、位置決めボス7も関節機構(ボールジョイント)11を介して第3アーム5の他端5bに取り付けられている。把持手段6と位置決めボス7は、関節機構(ボールジョイント)10,11により、円滑に動作することができる。
【0023】
二輪車フレームの保持装置1は、二輪車フレームWのフレーム部Wbを把持手段6により把持し、ピポット部Wcを位置決めボス7により固定し、2点を把持・固定することにより二輪車フレームWを保持する構成である。
【0024】
把持手段6は、図4(a),(b)に示すように、5関節からなる手型形状に形成され、手首部12を中心として、左側に対向して配設した一対のリンク13a,13bを、3つのジョイント14を介して3組連結し、同じく右側にも対向して配設した一対のリンク13a,13bを、2つのジョイント14を介して2組連結し、更に各一対のリンク13a,13bと手首部12に樹脂製のプレート15を取り付けて構成されている。
【0025】
そして、把持手段6は、図4(c)に示すように、手首部12の左側に設けた3組のリンク13a,13bと手首部12の右側に設けた2組のリンク13a,13bを作動させて二輪車フレームWのフレーム部Wbを把持する。また、各ジョイント14には、動作方向を把持方向に制限するラチェット機構16が設けられている。
【0026】
ラチェット機構16は、図5に示すように、ジョイント14の中央に配設したギヤ16aと、このギヤ16aにスプリング(不図示)による所定の押圧力で噛み合ってギヤ16aの回転方向を把持方向に制限するロック爪16bからなる。
【0027】
また、把持手段6には、各ジョイント14に設けたラチェット機構16によるフレーム部Wbに対する把持状態を、1アクションで解除する解除機構17が設けられている。解除機構17は、ギヤ16aにスプリングによる所定の押圧力で噛み合うロック爪16bをギヤ16aから解放するもので、解除ピン(不図示)を操作することによりロック爪16bに接続されたワイヤ17aがスプリングによる押圧力に抗してロック爪16bをギヤ16aから引き離す構成である。
【0028】
位置決めボス7は、図6に示すように、先端部に偏心ワッシャ7aを設けると共に、先端部が二輪車フレームWのピポット部Wcの孔Wdに挿入できる形状に形成されている。また、位置決めボス7は、関節機構(ボールジョイント)11に固定するプレート部材18に回転自在に嵌合されている。
【0029】
そして、位置決めボス7の先端部に設けた偏心ワッシャ7aをピポット部Wcの孔Wdに二輪車フレームWの内側から挿入し、その孔Wdから偏心ワッシャ7aを突出させた状態にする。更に、後端部7bを把持して位置決めボス7を回転させ、ピポット部Wcの孔Wdの縁部に偏心ワッシャ7aの一部が引っ掛かる状態にする。すると、位置決めボス7によりピポット部Wcは支持される。
【0030】
以上のように構成された本発明に係る二輪車フレームの保持装置1の作用について説明する。組立工程でハンガーコンベア(不図示)に吊り下げられた二輪車フレームWに対して、図7に示すように、作業者がフレーム部Wbを把持手段6により把持し、ピポット部Wcの孔Wdに二輪車フレームWの内側から位置決めボス7の先端部に設けた偏心ワッシャ7aを挿入して固定する。
【0031】
この時、把持手段6は、複数のリンク13a,13bとジョイント14とからなる5関節の手型形状に形成されているので、各種二輪車フレームの外径や外周の大きさに対応可能で、且つ動作方向を把持方向に制限するラチェット機構16により、二輪車フレームWのフレーム部Wbを円滑に把持することができる。また、位置決めボス7の先端部に設けた偏心ワッシャ7aを二輪車フレームWの内側から孔Wdに挿入することにより、二輪車フレームWの落下を防止することができる。
【0032】
次いで、作業者が保持装置1に支持された状態の二輪車フレームWのフレーム部Wbを両手で把持して、2点で二輪車フレームWを支持する保持装置1に補助されながら、二輪車フレームWを持ち上げてハンガーコンベアから二輪車フレームWを取り外す。
【0033】
次いで、図8に示すように、作業者は一人で保持装置1に支持された状態の二輪車フレームWのフレーム部Wbを両手で把持し、2点で二輪車フレームWを支持する保持装置1に補助されながら、二輪車フレームWにナンバーを打刻する工程に二輪車フレームWを搬送する。
【0034】
この時、作業者は二輪車フレームWを把持して搬送しながら、第2アーム4の回動動作(ツイスト動作)に対するエアシリンダ8の進退動作による支援と、第3アーム5の回動動作(ベント動作)に対するエアシリンダ9の進退動作による支援を受けながら、二輪車フレームWを所望な姿勢に円滑且つ容易に変更してナンバー打刻工程にセットすることができる。
【0035】
次いで、二輪車フレームWがナンバー打刻工程にセットされ、保持装置1に保持された状態の二輪車フレームWへのナンバー打刻が完了すると、作業者は保持装置1に補助されながら、二輪車フレームWのフレーム部Wbを両手で把持して搬送し、次工程の作業台に載置する。
【0036】
次いで、作業者は解除機構17を操作して、ギヤ16aに所定の押圧力で噛み合うロック爪16bをギヤ16aから解放すると共に、ピポット部Wcの孔Wdから位置決めボス7を外して、保持装置1を二輪車フレームWから取り外す。
【0037】
この時、解除機構17は、把持手段6の各ジョイント14に設けたラチェット機構16によるフレーム部Wbに対する把持手段6の把持状態を1アクションで解除することができるので、二輪車フレームWのハンガーコンベアから後工程への移載作業を速やかに終了させることが可能になる。
【0038】
なお、本発明は二輪車フレームWを作業対象としているが、アタッチメントなどを用いることにより、三輪車バギーの車体フレームや四輪車の車体フレームなどの移載作業にも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、二輪車フレームの移載作業を二人作業から一人作業にすることができると共に、重量物搬送作業の作業者に対する負荷の軽減が図れる二輪車フレームの保持装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…二輪車フレームの保持装置、2…バランサーアーム、3…第1アーム、3a,4a,5a…一端、3b,4b,5b…他端、4…第2アーム、5…第3アーム、6…把持手段、7…位置決めボス、7a…偏心ワッシャ、8,9…エアシリンダ、8a,9a…ピストンロッド、8b,8b…シリンダ本体、12…手首部、13a,13b…リンク、14…ジョイント、15…プレート、16…ラチェット機構、16a…ギヤ、16b…ロック爪、17…解除機構、17a…ワイヤ、W…二輪車フレーム、Wa…ヘッドパイプ、Wb…フレーム部、Wc…ピポット部、Wd…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車フレームを保持して搬送するための保持装置であって、アームの一端にフレーム部を把持する把持手段を設け、前記アームの他端にピポット部に挿入して固定する位置決めボスを設け、前記アームがバランサーアームに吊るされることを特徴とする二輪車フレームの保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二輪車フレームの保持装置において、前記アームは第1アームと第2アームと第3アームからなり、第1アームの一端に前記バランサーアームを接続し、第1アームの他端に第1アームと直交して回動自在に第2アームを設け、この第2アームに第2アームと直交して回動自在に第3アームを設け、この第3アームの一端に前記把持手段を設け、第3アームの他端に前記位置決めボスを設けたことを特徴とする二輪車フレームの保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の二輪車フレームの保持装置において、前記第2アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、前記第1アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結し、前記第3アームの外周にエアシリンダのピストンロッドの先端を連結し、前記第2アームに立設した支柱にエアシリンダのシリンダ本体を連結し、これらのエアシリンダの進退動作により二輪車フレームの姿勢変更を補助することを特徴とする二輪車フレームの保持装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の二輪車フレームの保持装置において、前記把持手段は、手首部を中心に左右に夫々連結された複数のリンクと、これらのリンク毎に取り付けた複数のプレートにより手型形状の指多関節に形成され、前記把持手段の動作方向を把持方向に制限するラチェット機構と、このラチェット機構による把持状態を1アクションで解除する解除機構を備えたことを特徴とする二輪車フレームの保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196730(P2012−196730A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61906(P2011−61906)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】