説明

二輪車二人乗り用ベルト

【課題】オートバイなどの二輪車に二人乗りする場合、後部座席の同乗者が安定した姿勢で乗車でき、しかも運転者の自由な動きを拘束しない二輪車二人乗り用ベルトを提供する。
【解決手段】ライダーの着衣の上から腰部周囲を巻く巻着ベルトと、当該巻着ベルト長さ調整窓を備えた一対の枠状一体成型の掴まり具と、当該掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段と、前記巻着ベルトをライダーに装着するためのバックルからなる二輪車二人乗り用ベルトであって、前記一対の枠状の掴まり具をライダーの腰部の略前方左右に位置させ、前記巻着ベルトを通し、そのまま延長して腰部背面に設けたバックルを通してUターンさせ、再び、前記一対の枠状の掴まり具を通してから、巻着ベルトの各々の先端を左右各々の掴まり具に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オートバイなどの二輪車に二人乗りする場合、後部座席の同乗者が安定した姿勢で掴まって乗車でき、しかも運転者の自由な動きを拘束しない二輪車二人乗り用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の簡単な構造の廉価な二輪車二人乗り用ベルトは、運転者に装着するベルトの斜め前方向に左右対称の位置に同乗者が掴まる輪状の補助具を設けた多くのもの(例えば特許文献1参照)の技術が公開されている。
また、運転者の体形に合わせてベルトの長さや補助具の位置を変えることができるもの(例えば特許文献2参照)や、前記補助具である矩形枠形状のグリップの改良(例えば特許文献3参照)なども公開されている。
【0003】
しかし、上記いずれのものも、未だ十分でなく、特に同乗者の乗車姿勢を楽にすることに対しては考えられていないので、乗車中に疲労してしまう問題が多くあった。
【先行技術文献】
【特許文献1】 実開昭62−36817号公報
【特許文献2】 実登録第3069172号公報
【特許文献3】 実登録第3141046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題を解決すると共に、多くの市場の要求にも応えようとするもので、オートバイなどの二輪車に二人乗りする場合、後部座席の同乗者が安定した姿勢で掴まって乗車でき、しかも運転者の自由な動きを拘束しない二輪車二人乗り用ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、この発明の二輪車二人乗り用ベルトは、ライダーの着衣の上から腰部周囲を巻く巻着ベルトと、当該巻着ベルト長さ調整窓を備えた一対の枠状一体成型の掴まり具と、当該掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段と、前記巻着ベルトをライダーに装着するための着脱手段からなる二輪車二人乗り用ベルトであって、前記一対の枠状の掴まり具をライダーの腰部の略前方左右に位置させ、前記巻着ベルトを通し、そのまま延長して腰部背面に設けた前記着脱手段を通してUターンさせ、再び、前記一対の枠状の掴まり具を通してから、巻着ベルトの各々の先端を左右各々の掴まり具に固定した二輪車二人乗り用ベルトである。
【0006】
また、前記枠状一体成型の掴まり具のグリップ部を垂直に対して下方が拡開するように(後座席同乗者の方向に)傾斜させると好ましい。
【0007】
そして、前記掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段を、前記一対の掴まり具の上下の枠部材にベルト通し窓を形成して、当該窓を通した固定ベルトを設けて、当該固定ベルトを前記巻着ベルトの先端に各々固定する。
【0008】
また、前記掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段を、前記一対の枠状の掴まり具の枠部内側上下に固定リブを設けて、当該固定リブに前記巻着ベルトの先端と共に、ロック付きネジ類で各々固定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり、本発明によれば、以下の多くの優れた効果を奏する。
請求項1の発明によれば、幅広の巻着ベルトに固定された一対の枠状一体成型の掴まり具を設けたので、ライダーは乗車姿勢を阻害されないで、同時に後部座席の同乗者は車両の加減速に対しても、両手でグリップを掴まって楽な姿勢で乗車することができる。
【0010】
また、従来のもののように、掴まるグリップが、ふたつの枠状グリップを一つに連結したものではないので、走行中に同乗者の姿勢の変化によって、異常な方向への異常な力が生じた場合でも、連結部が外れてしまう恐れがない。
【0011】
また、従来のもののように、掴まるグリップが、単なる紐やベルトまたは円環金具ではないので、走行中に同乗者の姿勢の変化で体が揺れ動くことがなく、体を十分に支え安定させることができる。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、剛性を有する枠状一体成型の掴まり具のグリップ部を垂直より下方に拡開するように(後座席同乗者の方向に)傾斜させることによって、人間工学的に後部座席の同乗者は、ライダーの腰側面付近に手を伸ばすことだけで、容易に枠のグリップに掴まることができ、しかも車両の加速や減速に対応して、体を支えたり、引っ張ったり、十分な力で追従することができる。
【0013】
また、請求項3または請求項4の発明によれば、一対の枠状の掴まり具の枠部に固定ベルトや固定リブを設けて、これらを前記巻着ベルトの先端と共に、掴まり具に確実に固定したことによって、掴まり具のグリップが不安定に動くことが無く、安定しているので、ライダーと同乗者が共に安心して走行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の第一実施例の全体斜視図で、図2は図1の巻着ベルトを左右の掴まり具(ベルト長さ調整具を兼ねる)やバックルに通し方を示す概略図である。
図1及び図2で示すように、ライダーの着衣の上から腰部周囲を巻く幅広の巻着ベルト1と、一対の枠状一体成型のベルト長さ調整窓付きの掴まり具2と、当該掴まり具2を前記巻着ベルト1の両端に固定する手段3と、前記巻着ベルト1をライダーに装着する着脱手段のバックル4から構成されていて、前記一対の枠状の掴まり具2をライダーの腰部の略前方左右に位置させ、前記巻着ベルトを通し、そのまま延長して腰部背面に設けたバックル4を通してUターンさせ、再び、前記一対の枠状の掴まり具2を通してから、巻着ベルト1の各々の先端を左右各々の掴まり具2に固定した二輪車二人乗り用ベルトである。
【0015】
そして、各部の詳細を説明すると、
巻着ベルト1は厚みのある幅広の高強度クロスベルトで、その長さは装着するライダーの腰周りの約2倍程度として、所定の通し方で両方の掴まり具と一組雌雄のバックル42、41、を通してから前にもどし、その両端をそれぞれの掴まり具2の内側で固定する。
前記巻着ベルト1は多くの過激な伸縮の繰り返しにも耐える、十分な強度と耐久性とを備えているものである。
また、前記の所定の通し方とは図2で示すように、先ず巻着ベルト1を左右対称となるように二分して、その中心点Aから左右等分の斜め前方になる位置に対称的に且つベルト長さ調整窓が前、グリップ24が後ろ側でグリップの下端が後方に傾斜するようにして掴まり具2を配置し、前記A点と対称の位置(ライダーがベルト装着時の背中側)に雌雄一組のバックル4を配置して、先ず前記中心点Aから右側の掴まり具2のベルト長さ調整窓前22を内側から外側に通してから、その直ぐ横にあるベルト長さ調整窓後23を外側から内側に通し、そのまま延長して前記A点と対称の位置(背中側)の雌バックル42のベルト通し窓を外側から内側に通し、Uターンさせて延長して戻し、再び掴まり具2のベルト長さ調整窓後23を内側から外側に通し、続いて、その横にあるベルト長さ調整窓前22を外側から内側に通しておいて、最後にベルトの先端を前記掴まり具2の枠部材21に固定する。因みに他方、中心点Aから左側は前記と対称的にして同様に行えばよい。但しバックルは雄バックル41とする。
【0016】
図3は、この発明の右側の掴まり具2の図で、a)は上面図、b)は正面図、c)はb)のA−A断面図、d)はc)のc部拡大断面図である。
図3に示すように、掴まり具2は剛性を有する樹脂による枠状一体成型品であり、枠の上下高さの内側は前記巻着ベルト1の幅に合わせて、僅かに大きく設定されているが、後ろ側のグリップの付近は手袋を装着した状態でも楽に掴まれるように広くしている。そして、前側には巻着ベルト1のベルト長さ調整窓前22とベルト長さ調整窓後23が形成されている。これらの窓はベルトの長さを調整するとともに、ベルトを一定の長さで保持する、通し留めの機能も持っているものである。
本図3は請求項2および請求項3の掴まり具を示すもので、グリップ24は図3b)で示すように、垂直から下方に拡がって傾斜させ、握持部の円筒外周は図3d)で示すように、凹凸を形成して滑り止めを図っている。
従って、簡略品はグリップを傾斜させることは、省略して垂直にしたものでもよい。
【0017】
更に、請求項3に係る、前記巻着ベルトの両端に固定する手段を、前記一対の枠状の掴まり具に通した固定ベルト3を設けて、当該固定ベルト3を前記巻着ベルト1の先端に固定したものであって、本図3の掴まり具2は図3a)とc)に示すように、上下の枠部材21に固定ベルト通し窓25を固定ベルト3の寸法に合わせて周囲に隙間を持たせた程度の細長い形状で設けている。当該固定ベルト通し窓25は掴まり具2の水平に対して、後方が僅かに内側に傾斜させていて、これが巻着ベルト1をライダーに装着させたときには、体の腰部にぴったりとフィットして、その分グリップ24が外側に開く(体より離れる)ことになるので、同乗者はグリップ24を掴まり易くなるのである。
【0018】
図4は、この発明の第二実施例の右側掴まり具の正面図である。
図4に示すように、前記の掴まり具2を前記巻着ベルト1の両端に固定する手段を、前記一対の枠状の掴まり具2の上下枠部材21の長手方向に固定リブ29を設けて、当該固定リブ29に前記巻着ベルト1の先端と共に、ロック付きネジ類で固定するものである。
固定リブ29は図4のように上下の枠部材21の内側に向かいあって対称的に十分な厚さをもって形成する。また、図3の固定ベルト通し窓25と同様に水平より僅かに後ろを内側になるように傾斜角度を持たせておくと好ましい。
【0019】
本発明の二輪車二人乗り用ベルトは以下のように作用する。
巻着ベルト1は厚みのある、しかも幅の広い(約85mm)クロスベルトとしたので、車両が制動(グレーキング)された時のライダーの腰や腹部に食い込みを抑制する作用があり、同時に車両の加速・減速に対応して伸縮する作用もある。そして、ベルトの着脱手段のバックル4は樹脂成型の大型一箇所のはめ込み品であり、ワンタッチで嵌め合と離脱ができる。
図3で示すように、枠状一体成型の掴まり具2は、剛性に優れた樹脂による一体成型で、耐久性を確保した、掴まり易い肉厚のグリップ形状としている。
また、当該グリップ24は傾斜している円筒状で、長さはライダーグローブを手に装着したまま掴める程度に平行枠部より拡大されて形成し、円筒のグリップ24の外周には凹凸の筋をつけて、摩擦作用により、滑り止め機能をもたせてある。
【0020】
前記掴まり具2のグリップ24の作用は、上下の枠部材21を通した固定ベルト3によって反動防止機能で制御作用があり、ライダーは左右のグリップ24が腰の側面にぴったりと安定して固定されているので、走行中に同乗者の状態が体全体で感知することができ、同時に後ろ座席の同乗者は、座席に楽に腰掛けて、ライダーの腰の側面に両手をそのまま伸ばしてグリップ24をしっかりと掴むことにより、車両の加速時に発生する引っ張り力は四本の指によって引っかかり、反対に車両の制動時には体が前のめりになる動きを親指と手の平の付け根部分でグリップ24全体を受けることで十分に支えることができるので、体がライダーの方にもたれこむことがないのである。
従って、後ろ座席の同乗者の乗車姿勢の変化を抑制する作用がある。故に、長時間走行に同乗しても疲労が少ないことになる。
【0021】
以上のように構成されているので、使用方法は以下のとおりである。図5参照
1) 予め、ライダーの太身、細身に応じた巻着ベルト1を選択した後、その体形に合 わせて巻着ベルト1がぴったりフィットして、緩みがないようにすると共に、左 右の掴まり具2がライダーの腰部側面付近に位置するように巻着ベルトの通し窓 から移動させて全体のベルト長さを調整する。このとき構造上、ベルト長さを長 くすると、グリップ24の位置がライダーの後方側に移動することを考慮する。
2) 調整したベルト全体を、ライダーの腰部に巻きつけて、左右のグリップ24の方 向を確認した後に、装着後背中の中央に位置するバックル4を、体の正面でカチ ット音がするまで確実にはめ込んで、腰にぴったりと装着されたかどうかを確認 する。もし緩いようであったら、取り外して再度ベルトの全体長さを調整する。
3) バックル4がライダーの背中中央位置になるように掴まりベルト全体を回す。
4) バックル雌雄42、41が確実に嵌っているかを確認する。
5) 同乗者が後部座席に腰掛けて、グリップ24の掴み具合を確認後、走行開始。
【0022】
以上の各実施例を上記に述べたが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明の内容に含まれるものとする。
例えば、巻着ベルトの調整具への通し方の変化や、ベルトの長さの調整手段などを省略することや、ライダーへの装着する着脱手段をバックルでなくジッパー(ファスナー)などとすることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の第一実施例の全体斜視図である。
【図2】図1の巻着ベルトの通し方を示す概略図である。
【図3】この発明の右側の掴まり具2の設計図である。
【図4】この発明の第二実施例の右側掴まり具の正面図である。
【図5】この発明の使用状態の概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 巻着ベルト
2 掴まり具
21 枠部材
22 ベルト長さ調整窓前 23 ベルト長さ調整窓後
24 グリップ
25 固定ベルト通し窓 29 固定リブ
3 固定ベルト
4 バックル
41 雄バックル 42 雌バックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダーの着衣の上から腰部周囲を巻く巻着ベルトと、当該巻着ベルト長さ調整窓を備えた一対の枠状一体成型の掴まり具と、当該掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段と、前記巻着ベルトをライダーに装着するための着脱手段からなる二輪車二人乗り用ベルトであって、前記一対の枠状の掴まり具をライダーの腰部の略前方左右に位置させ、前記巻着ベルトを通し、そのまま延長して腰部背面に設けた前記着脱手段を通してUターンさせ、再び、前記一対の枠状の掴まり具を通してから、巻着ベルトの各々の先端を左右各々の掴まり具に固定したことを特徴とする二輪車二人乗り用ベルト。
【請求項2】
前記枠状一体成型の掴まり具のグリップ部を垂直に対して下方が拡開するように(後座席同乗者の方向に)傾斜させたことを特徴とする二輪車二人乗り用ベルト。
【請求項3】
前記掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段を、前記一対の掴まり具の上下の枠部材にベルト通し窓を形成して、当該窓を通した固定ベルトを設けて、当該固定ベルトを前記巻着ベルトの先端に各々固定したことを特徴とする請求項1に記載する二輪車二人乗り用ベルト。
【請求項4】
前記掴まり具を前記巻着ベルトの両端に固定する手段を、前記一対の枠状の掴まり具の枠部内側上下に固定リブを設けて、当該固定リブに前記巻着ベルトの先端と共に、ロック付きネジ類で各々固定したことを特徴とする請求項1に記載する二輪車二人乗り用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−20663(P2011−20663A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181930(P2009−181930)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(592016485)株式会社デイトナ (8)