説明

二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法

【課題】二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法を提供すること。
【解決手段】本発明は、触媒に付着したコークスを燃焼させる際に、希釈する必要がなく純酸素を使用することによって使用済み触媒の再生段階を改変した、二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解(FCC)法に関する。更に本発明は、再生済みの触媒を再調整する際に担体ガスとして窒素を用いる再調整器を、従来の再調整器の補助として組み込むことにより、触媒の再調整段階を改良するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COの排出を低減させた流動接触分解(FCC)法に関する。その方法では、使用済み触媒からのコークスの除去が、FCCユニットの全操作を含む革新的な経路を用いる純酸素による全燃焼法を使用して行われる。
【背景技術】
【0002】
FCCユニットは、従来から、石油精製業から大気中へのCO主排出源の1つであり、その結果としてこのガスは、温室効果の主原因の1つであると考えられている。このようなユニットの運転及び事業計画は、COによって引き起こされる環境への影響を可能な限り最小化することに焦点をあてながらも、継続して推進されてきた。
【0003】
FCCユニットからのCO排出は、再生器で触媒を再生する段階中に、触媒表面に形成されるコークス層の燃焼が行われる工程段階中に行われる。
【0004】
コークス層の存在によって触媒は不活性化されるので、コークス層を除去する必要があり、その除去は再生器で行われる。この再生器は、COボイラーでは部分燃焼方式、又はエネルギー回収ボイラーでは完全燃焼方式で運転することができ、酸素源として空気を使用することによってコークスを燃焼する。これにより触媒の活性の一部が再生される。この燃焼工程で、排出ガスが発生する。このガスは、大部分、約79体積%から81体積%の含量の窒素及び約12体積%から21体積%の含量のCOからなり、ガスは、大気中に放出しても放出しなくてもよい。
【0005】
大気中で運転する再生器からの排出ガスのフローは、後続工程に供してCOを回収することができるが、この方法では、一般に、大規模な装置及び多量のエネルギー消費を必要とするが、それは疑いなく燃焼工程で使用される空気から生成する窒素が多量に存在するためである。こうしたフローから生成するCOを回収するためには、COを最低でも95体積%の純度の最終製品として再使用又は販売可能として工程全体をより経済的にするため、極めて高価である深冷分離技法、又は分子篩を用いる分離方法を使用するか、或いはより普通には、モノ及びジエタノールアミン(DEA)など、CO吸収剤として機能する物質中へのこうしたCOの吸収を介する分離法を用いてNガスを分離し、他の用途に向けたり、大気中に放出することが必要であると思われる。
【0006】
こうしたより普通の上記方法においてすら、やはり、FCCユニットの再生器から出たガスフロー中に存在する大量のNゆえの大規模装置に加えて大量のエネルギーを必要とする。
【0007】
上記のエネルギー必要量に関して比較すると、使用済み触媒の再生段階で純O(純度95体積%超)を使用する本発明のような最新FCC法では、空気を使用する方法よりも50から60%も少ないエネルギーしか消費されない。というのは最新FCC法では、85体積%超のCO分を有する排ガスフローが発生するからである。したがって、空気中のNが存在しないので、このフローから単に湿分を除去するだけで、捕捉及び貯蔵されるCOの純度が95体積%になり、エネルギー消費ははるかに小さくなる。
【0008】
現行のFCCユニットはまた、環境への影響を低減しようとする努力に加えて一連の改良を行うことによって妥当な水準の収率及び経済性を維持しなければならない。というのは、世界における良質の石油の欠乏により、触媒表面上により多くのコークスを堆積する高濃度の炭素残渣のみならず塩基性窒素化化合物、有機金属化合物及び硫化化合物など処理が困難である他の汚染物質をも含む、益々重質化する負荷及び画分を処理することの必要性が予測されているからである。
【0009】
専門文献によって報告された問題点のなかでもとりわけ、コンバータの分離容器の排出生成物中にCOが存在することに伴う問題点が存在する。こうした問題点は、ユニットの低温領域及び設けられ得る分解生成物フローの後続工程中で発生する。
【0010】
燃料ガス処理システムで使用され、FCCライザーで発生する生成物の1つであるジエタノールアミン(diethanolamine,DEA)が過剰に消費されることが、こうした問題点の1つとして示されている。
【0011】
コンバータの分離容器の排出生成物中におけるCOの存在もまた、イオウ回収ユニット(Sulfur Recovery Units,SRU)のCO負荷が過剰になる場合に、このユニットの運転に悪影響を与える。というのは、この負荷過剰のために、DEA回収からの排出酸性ガス(HS)の濃度が低下し、SRUの収率が低下するからである。
【0012】
新規なFCCユニット計画はまた、主として純酸素で運転する場合の再生器中の過剰な温度上昇も克服しなければならない。
【0013】
FCCユニットは、分解反応で失われる熱が触媒上に堆積したコークスの燃焼で発生する熱によって供給されるという熱バランス方式で動いている。
【0014】
FCCユニットが、より重質な油を受け入れると、触媒上に形成されるコークスは、より多くなり、コークスが発熱酸化反応してCOになる際に発生する熱が、分解の吸熱反応に必要とされるものより大きくなり、そのために再生器の温度が上昇する結果、排出ガスがより高い温度で排出され、かくして悪影響を引き起こし、より多くのエネルギーがこうしたガスを冷却及び回収するために消費される。
【0015】
非常な高温は、再生器の建造材料の疲労をもたらす。観察される別の問題点は、750℃超の高温がFCC触媒を不活性化することである。
【0016】
新規のユニットが克服すべき別の困難は、如何にして再生器中に蒸気が存在しないようにするかである。蒸気は、触媒の不活性化を引き起こすことが知られており、意図的に添加しない場合でさえ、再調整した使用済み触媒中に吸収されているか又は触媒表面上に存在するコークスの燃焼反応の生成物としてのいずれかで必然的に存在する。不十分に行われた再調整操作では、再生器中に多くの蒸気が含まれることになる。蒸気は触媒によって吸収されて再生器に入り、触媒の空隙に保持された炭化水素が再生器中で燃焼して、水を生成し、その水が再生器の温度において触媒の水熱劣化をもたらす。かかる状況は再生器の温度が高いほどより深刻である。
【0017】
流速の影響、触媒の適切な流動化及び触媒/油の比を考慮しなければならず、これらは、普通でないより高温でFCCユニットを運転する場合に適合し直さなければならない。FCCユニットの装置は連続サイクルで運転され、材料のフローは、基本的に、装置間の熱バランスを介して管理及び指示されるが、技術文献にはこうした問題に対する妥当な解決策が既に示されている。但し、これらは未だ完全に望まれるとおりのものではない。
【0018】
関連する技術
より一層COに富むフローを発生させ、それによりCOガスの捕捉を容易にかつ経済的に行い、COガスの大気への排出を防止し、COガスを再使用していずれは最終製品として販売することを目的として、使用済み触媒の再生段階で空気ではなく純酸素を用いるFCCユニットの運転方法に関連する一連の教示が専門文献によって提供されている。
【0019】
例えば、米国特許第4542114号には、COに富む排ガスフローを発生させる目的で純Oフローを使用するFCCユニット再生器の運転が説明されている。温度ピーク及び再生器内の触媒の流動化不足を防止するために、この発明は、リサイクリング用COの使用量を計算して、再生器取入れ口におけるOフローを希釈している。この解決策は、上記の再生器運転を調節するのに必要なCO量を再処理しリサイクルするために大規模の装置の使用及び余分のエネルギー消費を必要とする。
【0020】
COを70%から76%として酸素フローの希釈を行うことが推奨され、その発明工程の経済性が増大するのは、COの回収のためのみではなく、同時にこの方法によって再生器からの排出ガスフローの水素又は合成ガス及びイオウ化合物を回収してその後に市販することできるためでもあると述べられている。
【0021】
上記特許と同様のFCC触媒再生方法が米国特許第5565089号に説明されているが、この発明の方法は、空気を使用することによって再生容器内に酸化性ガスを射出して行われ、COが排出ガスから回収されるので、これをリサイクルし、酸化性ガスフロー中に空気及び純酸素と共に徐々に配合し、最終的には再生容器の所望の温度に応じた所与の条件で酸化性ガスが単純にCOで希釈したOに転換されることになる。
【0022】
上記で検討した2つの特許は、再生器処理に加えられた改良及びかかる排出ガスの処理を取り扱うのみであり、流動接触分解法の連続サイクルに対応する他の段階に対する改変について全く言及していないことに言及しておく必要がある。
【0023】
FCCユニットに古くから採用されているもの以外の追加の再調整器を使用することが、米国特許第5601787号及び米国特許第6162402号の出願書類に説明されている。この改良は、当該ユニットの収率を増加させることのみでなく、この装置の運転を著しく妨害し、触媒の不活性化が加速される蒸気及び炭化水素が再生器に向かって輸送されることによって引き起こされる頻発する問題を防止することをも目的として、使用済み触媒の再調整を改良する要望を取り扱う。
【0024】
上記特許の提案は、使用済み触媒のより効率的な再調整を促進し、使用済み触媒の再調整器の運転温度を上昇させることである。この温度上昇は、使用済み触媒の混合物で運転される使用済み触媒再調整器内に高温の再生触媒負荷を導入することによって直接熱移動を使用して達成される。
【0025】
この工程における改良は当業者には非常に明確である。米国特許第5601787号の場合、装置の配列によってはコンバータ分離器の領域に向かうCO又はCOの輸送が起こってしまうので、装置の配列が制限される。このコンバータ分離器の領域に向かうCO又はCOの輸送は、流動接触分解中に得られる生成物を汚染するので望ましくない。
【0026】
同様の発想であるが、米国特許第6162402号に提示された装置の配列は、CO又はCO(即ち再調整器から再生器に直接送られることになるガス)の発生の増加がもたらされる可能性があることが注意される。
【0027】
例えば、米国特許第2451619号、米国特許第3821103号、米国特許第5346613号及び米国特許第6808621号などの調査した他の特許には、FCCユニットが生じさせる新たな難問に対処するための具体的な解決策が示されているが、これのいずれもが、本明細書で示す本発明の提案のようにFCC工程全体にこれほど多数の改良を同時にもたらすことはできない。それを以下に示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、二酸化炭素の排出が低減した流動接触分解法に関し、以下の段階:
a)一定負荷の重質炭化水素及び触媒負荷をFCCユニットの主ライザーに供給するステップと、
b)前記ユニットの主ライザーで流動接触分解反応を行うステップと、
c)コンバータの分離容器内でサイクロンを使用して前記ユニットの主ライザーの末端部において、前記一定負荷の重質炭化水素の流動接触分解によって発生した生成物から使用済み触媒を分離するステップと、
d)前記コンバータの分離容器に由来する使用済み触媒を、再生触媒の再調整器に由来する窒素で再生及び再調整された一定負荷の触媒と共に、使用済み触媒再調整器に供給し、水蒸気を使用してこの触媒混合物の再調整を行うステップと、
e)前記d)における再調整触媒の負荷を、純酸素と共に、再生器ライザー内に供給して、前記再生器ライザーにおいて再生工程を開始させ、この工程を再生容器内で終結させるステップと、
f)前記再生容器中の再生触媒を前記再生触媒再調整器に供給し、窒素を使用してその再調整を行うステップと、
g)窒素で再調整された触媒の一部を、前記コンバータの分離容器由来の使用済み触媒と共に、前記使用済み触媒主再調整器内に供給し、水蒸気を使用してこの触媒混合物の再調整を行うステップと、
h)前記g)で再調整された触媒混合物の一部を、Oと共に、前記再生器のライザー内に供給して、この使用済み触媒の再生工程を開始させ、その再生工程を上方の前記再生容器で終結させるステップと、
i)前記f)において窒素で再調整された触媒の他の部分を前記ユニットの主ライザーに輸送して、流動接触分解の連続工程を継続させるステップと
を含む。
【0029】
本発明の方法はFCCの工程全体を最適化するものであり、大気中へのCO排出を実用的に防止し、使用済み触媒の再生段階に作用し、それによって触媒に付着したコークスを燃焼させるためのより効果的な形態を導入し、また、触媒の再調整段階に作用し、既に再生済みの触媒を再調整する際に担体ガスとして窒素を用いる補助再調整器を慣用の再調整器に加える。
【0030】
本発明の主題である二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法のより良い理解と判断のため、本願の実体部分を構成する基礎として下記図面を参照しながら、以下の詳細な説明に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来のFCC法を示す該略図である。
【図2】本発明のFCCを示す該略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明をより良く理解し判断するために、本発明の主題を構成するCOの排出を低減させた流動接触分解法を、各構成要素の指定に従い、図で参照する。
【0033】
図1は、従来のFCC法の簡単な該略図を示す。本図に特定されたパラメータに従えば、一定負荷の予熱された重質炭化水素は、蒸気で流動化した一定負荷の再生触媒と接触状態に置かれ、かつ、FCCユニットのライザー(1)の基部において加熱されて接触分解される。
【0034】
重質炭化水素の負荷(F)のフロー及び触媒がライザー(1)を上昇する間に分解反応が行われ、いわゆるライザー(1)の末端部で完結したものと見なされる。その時点で、分解生成物及び使用済み触媒を既に含む炭化水素の負荷のフローをガス/固体分離サイクロン(2)内を通過させる。
【0035】
コンバータ分離容器(3)の頂部から出る分解ガス生成物(P)を触媒の固体粒子から分離する。この固体粒子はサイクロンの脚部を流下し、同じコンバータ分離容器(3)の底部に堆積する。その底部から固体粒子を使用済み触媒再調整器(4)に連続的に移送する。この使用済み触媒再調整器(4)では、触媒を水蒸気フロー(V)にさらす。これは、触媒粒子中に保持され得る如何なる痕跡量の炭化水素をも抽出せんとするものである。そして触媒粒子は輸送され、コンバータ分離容器(3)に向けて戻される。再調整後、触媒を再生容器(5)に送り、そこでその触媒を、通常は大気からの酸素(A)である酸化性ガスの存在下で高温にさらし、ライザー(1)での分解工程中に表面に堆積していたコークスを燃焼させる。
【0036】
こうして再生された触媒はその活性を回復し、次いでライザー(1)によってリサイクルされ、この流動接触分解法に連続操業性を与える。燃焼ガス(c)は、再生容器(5)の頂部から除去する。
【0037】
図2は、本発明の方法の簡単な該略図を示す。本図はまず、再生触媒を、窒素を使用し、再生触媒再調整器(6)で再調整に供した後でなければ、再生触媒からの負荷をFCCユニットの主ライザー(1)の基部に流さないことを示す。従来法をこのように改変すると、主ライザー(1)に対する再調整されている触媒フローによってCOの移送を排除しつつ、FCCの工程全体の改良を導き、工業水の消費を低減し、かつ、水蒸気を用いた従来の再調整中に発生する触媒の接触活性の喪失も防止する。再調整器を出る窒素フロー(G)はまた、工程におけるタンク中の不活性環境を維持するのに使用されるようにする場合もある。
【0038】
FCCユニット計画によって定められた工程のパラメータ(公知であり、当業者には既に十分周知徹底されている)に必ず添って、窒素で再生及び再調整された後に、触媒は、重質炭化水素の負荷(F)と共にFCCユニットの主ライザー(1)の基部から上昇する炭化水素の負荷のフロー内に、いわゆる主ライザー(1)を通して分解されるべき負荷の混合物の第1バルブ(7)によって調整されたフロー内で、注入される。
【0039】
主ライザー(1)の末端部で分解反応は完了とみなされ、使用済み触媒の固体粒子と混合した分解ガス生成物を既に含む炭化水素の負荷のフローを、ガス/固体分離サイクロン(2)を通過させる。分解ガス生成物(P)はコンバータ分離容器(3)の頂部から出、使用済み触媒の固体粒子から分離される。この固体粒子はサイクロン(2)の脚部を流下し、コンバータ分離容器(3)の底部に堆積し、そこから第1使用済み触媒再調整器(4)に連続的に移送される。
【0040】
第1使用済み触媒再調整器(4)は、同時に、コンバータ(3)を主使用済み触媒再調整器(4)につなぐ第1パイプライン(8)を介してコンバータの分離容器(3)由来の使用済み触媒の負荷(以下、「負荷A」という)と、再生触媒の第2再調整器(6)を主ライザー(1)につなぐ第2パイプライン(9)を介して第2再生触媒再調整器(6)で窒素によって再生及び再調整された触媒の負荷(以下、「負荷B」という)とを受け入れる。当該負荷A及びBの混合物の再調整は水蒸気フロー(V)を使用して行われるが、これは、触媒の粒子に保持され得る痕跡量の炭化水素をも抽出及び回収せんとするものである。これらの触媒は、主使用済み触媒再調整器(4)をコンバータ分離容器(3)につなぐ第3パイプライン(10)を介してコンバータ分離容器(3)に向けて輸送され、戻される。
【0041】
第2再生触媒再調整器(6)由来の窒素で再生及び再調整された触媒負荷(負荷A)と、コンバータの分離容器(3)由来の使用済み触媒の負荷(負荷B)との混合は、負荷Bに対する負荷Aの割合が0.1重量%から100重量%、好ましくは、負荷Bに対する負荷Aの範囲が50重量%から70重量%で行うことができる。
【0042】
この再調整の改変工程が従来のものより一層効率的であるのは、従来の装置で到達する温度よりも高い温度で運転が行われるよう管理されるからである。第2バルブ(11)によって調節される負荷Bのフローにより、使用済み触媒再調整器(4)内で処理される負荷AとBの混合物は、これらの型式の従来の再調整器が運転される温度より50℃から100℃高い温度とすることができる。本発明の再調整工程の他の利点は、流動技術状態で発生するような、コンバータの分離容器(3)に向けてのCO又はCOの輸送が全くないことである。
【0043】
主使用済み触媒再調整器(4)を再生器の「ライザー」(14)につなぐ第4パイプライン(12)を介して、かつ、第3バルブ(13)によって調節されるフローを用いて、主使用済み触媒再調整器(4)で再調整された触媒の負荷は次いで、再生器のライザー(14)の基部に向けられ、そこで、純酸素の最初の注入も行われ、COもまた添加されて排出及び触媒と酸素の混合の促進を助けることができ、更にはそこで、当該使用済み触媒上に堆積したコークスの燃焼が開始され、この燃焼は再生器のライザー(14)の全長にわたって進行し、再生容器(5)内に至って終了する。
【0044】
再生触媒の第2再調整器(6)由来の高温触媒との混合を介して得られた、使用済み触媒再調整器(4)に由来する触媒負荷の温度は、この負荷が純酸素と接触すると直ちにその中に存在するコークスの燃焼が起きることを保証するが、燃焼が再生器ライザー(14)の上昇部全体にわたって制御下に維持されることを保証するためには、酸素の新たな注入が前記ライザー(14)の全体にわたってなされなければならない。
【0045】
再生器ライザー(14)の高さ及び直径を制御しなければならないFCCユニットの計画の条件により、このライザー全体の温度を制御し、再生器のライザー(14)全体にわたり酸素が入る場合の熱点の発生を防止するためには、純酸化性ガスの少なくとも3つの注入点(当該ライザー経路の上方へそれぞれ1/3ずつの注入点)が必要であると思われる。触媒の再生段階において純酸素を使用すると、特に、再生容器(5)内部の温度を上昇させるのみならず、この温度においてピークと、再生容器(5)内の触媒の不充分な流動化が発生する危険がある。これらの問題点は、触媒冷却器(15)と協働して再生温度の制御が可能であり、720℃に近い温度において発生しやすい触媒の不活性化の防止が可能である本発明の再生器ライザー(14)の革新的な使用によって完全に是正される。
【0046】
本発明によって推奨されるとおりに再生容器(5)を運転することによって、酸素1mに対して触媒85kgから95kgの範囲の密度での使用が可能になり、これにより触媒表面上に存在するコークスの燃焼がより効率的になる。
【0047】
比較すれば、文献に記載の再生器ライザーは、空気によってのみ運転され、コークスの除去効率が低い。というのは、まさしく空気中に高濃度の窒素が存在するために、酸素1mに対して触媒24kg程度の密度でしか運転することができないからである。
【0048】
また、再生器ライザー(5)中で純酸素を使用すると、再生器の底部でのコークスの燃焼を空気使用の場合より約50℃から150℃低い温度で行わせることが可能となる。この事実によって、使用済み触媒が再調整器を出る通常の温度で早くもコークスの燃焼を行わせることが可能である。
【0049】
触媒再生段階で酸素を使用することに関係する2つの他の更なる利点は、当該再生容器内部で触媒が滞留する時間が短縮するため、再生容器の大きさをより小さく設計できること、及び、コークスの燃焼を行うのに必要なガスフローがより少なくなる結果として、再生容器(5)の頂部から大気中への粒子排出が約20質量%低減することである。
【0050】
本発明により、FCCユニットを、「サイド−バイ−サイド」配列が採用される限り、フロー間の熱バランスによってのみ制限される触媒循環で運転することも可能となる。換言すれば、再生容器(5)及びコンバータの分離容器(3)を同じ高さに配置し、前記2つの容器の間の水準差が通常引き起こす圧力バランスに対する制限を避けるのである。
【0051】
最後に、本発明による触媒の再生段階において純酸素が使用できるようになることによって、FCCユニットの運転技術に対する大きな利点が得られるのは、大気中へのCOの排出を実用上なくし、また、これを商品として回収し、現在通用している技術による方法よりもエネルギー消費がはるかに少ないからであることを強調しておきたい。
【実施例】
【0052】
以下の例は、本発明の主要部分である触媒再生段階の運転が如何に効率的であるかを例証することのみを目的とするものであり、本発明の全内容を限定する要素と考えるべきではない。0.7重量%から2重量%の範囲に設定したコークス含量を含むFCC法に典型的な触媒の再生を、空気を用いての再生を模して体積で21%Oと79%Heとの混合物を含む酸化性ガスを使用して行い、これと同一の条件ではあるが、酸化性ガスとして純Oを用いて行った別の再生と比較した。
【0053】
反応温度を毎分10℃の速度で室温から1000℃まで直線的に上昇させた。得られた結果を表1に示す。
【表1】

【0054】
得られた結果から、触媒の最大のコークス燃焼が純Oを使用して行われる温度は、もう一方の条件で測定された温度より実際にはるかに低いこと、及び、「純O条件」で得られたCO/CO比はもう一方の条件の半分未満であることがわかる。したがって、「純O条件」が、もう一方の条件よりはるかにCOに富むフローを発生し、その結果、エネルギーを消費する主たる必要性なく当該ガスを単離することがより容易となることが明白である。
【符号の説明】
【0055】
1 主ライザー
2 ガス/固体分離サイクロン
3 コンバータの分離容器
4 使用済み触媒再調整器
5 再生容器
6 第2再生触媒再調整器
7 第1バルブ
8 第1パイプライン
9 第2パイプライン
10 第3パイプライン
11 第2バルブ
12 第4パイプライン
13 第3バルブ
14 再生器ライザー
15 触媒冷却器
F 重質炭化水素の負荷
P 分解ガス生成物
V 水蒸気
A 空気
c 燃焼ガス
G 窒素フロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一定負荷の重質炭化水素及び触媒負荷をFCCユニットの主ライザー(1)に供給するステップと、
b)前記ユニットの主ライザー(1)で流動接触分解反応を行うステップと、
c)コンバータの分離容器(3)内でサイクロン(2)を使用して前記ユニットの主ライザーの末端部において、前記一定負荷の重質炭化水素(F)の流動接触分解によって発生した生成物(P)から使用済み触媒を分離するステップと、
d)前記コンバータの分離容器(3)に由来する使用済み触媒を、再生触媒の再調整器(6)に由来する窒素で再生及び再調整された一定負荷の触媒と共に、使用済み触媒再調整器(4)に供給し、水蒸気(V)を使用してこの触媒混合物の再調整を行うステップとからなる初期段階を含む二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法において、
e)前記d)における再調整触媒の負荷を、純酸素と共に、再生器ライザー(14)内に供給して、前記再生器ライザー(14)において再生工程を開始させ、この工程を再生容器(5)内で終結させるステップと、
f)前記再生容器(5)中の再生触媒を前記再生触媒再調整器(6)に供給し、窒素を使用してその再調整を行うステップと、
g)窒素で再調整された触媒の一部を、前記コンバータの分離容器(3)由来の使用済み触媒と共に、前記使用済み触媒主再調整器(4)内に供給し、水蒸気を使用してこの触媒混合物の再調整を行うステップと、
h)前記g)で再調整された触媒混合物の一部を、Oと共に、前記再生器のライザー(14)内に供給して、この使用済み触媒の再生工程を開始させ、その再生工程を上方の前記再生容器(5)で終結させるステップと、
i)前記f)において窒素で再調整された触媒の他の部分を前記ユニットの主ライザー(1)に輸送して、流動接触分解の連続工程を継続させるステップと
からなる追加の段階を含むことを特徴とする上記流動接触分解法。
【請求項2】
前記第2再生触媒再調整器(6)由来の窒素で再生及び再調整された触媒負荷(負荷A)と前記コンバータの分離容器(3)由来の使用済み触媒の負荷(負荷B)との混合を、負荷Bに対する負荷Aの割合が0.1重量%乃至100重量%、好ましくは、負荷Bに対する負荷Aの範囲が50重量%乃至70重量%で行ってもよいことを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法。
【請求項3】
前記再生器ライザー(14)に供給される、前記使用済み触媒主再調整器(4)で再調整された使用済み触媒の負荷と純Oガスとの比がガス1立方メートル当り触媒10kg乃至50kg程度であることを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素の排出を低減させた流動接触分解法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−137154(P2011−137154A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−280502(P2010−280502)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(591005349)ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス (25)
【Fターム(参考)】