説明

二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物。

【課題】二酸化炭素冷媒の存在下で、圧縮機の転がり軸受けの寿命の低下を十分に防止することが可能な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油は、アルキルジフェニルエーテルを含有することを特徴とする。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、アルキルジフェニルエーテルと、二酸化炭素冷媒とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来から冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。しかしながら、このようなHFC冷媒においても、地球温暖化係数(GWP : Global Warming Potential)が高いなどの問題がある。そこで、これらのフロン系冷媒に代わる代替冷媒としてGWPが低い二酸化炭素、アンモニア、炭化水素などの自然系冷媒の使用が検討されている。
【0003】
中でも二酸化炭素(CO)は環境に対して無害であり安全性の点で優れており、また、これまで主流ではなかったものの冷凍機などの冷媒として従来から使用されてきたことから、近年、開放型圧縮機あるいは密閉型電動圧縮機を用いたカーエアコンやルームエアコンあるいは給湯用ヒートポンプ用の冷媒としてその適用が検討されている。
【0004】
このような背景の下、代替冷媒用冷凍機油の開発が進められており、様々な冷凍機油の使用が提案されている。例えば、二酸化炭素冷媒用冷凍機油として、特許文献1には炭化水素系基油を用いたもの、特許文献2にはポリアルキレングリコール(PAG)やポリビニルエーテル(PVE)等のエーテル系基油を用いたもの、特許文献3には芳香族ポリエーテル油を用いたもの、特許文献4〜6にはエステル系基油を用いたものがそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開平10−46168号公報
【特許文献2】特開平10−46169号公報
【特許文献3】特開2000−73951号公報
【特許文献4】特開2000−104084号公報
【特許文献5】特開2000−169868号公報
【特許文献6】特開2000−169869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の冷凍機油を二酸化炭素冷媒の存在下で使用すると、圧縮機の転がり軸受の寿命が大変短くなることが判明した。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素冷媒の存在下で、圧縮機の転がり軸受けの寿命の低下を十分に防止することが可能な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、アルキルジフェニルエーテルを含有することを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油を提供する。
【0008】
また、本発明は、アルキルジフェニルエーテルと、二酸化炭素冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物によれば、二酸化炭素冷媒の存在下で、圧縮機の転がり軸受けの寿命の低下を十分に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油はアルキルジフェニルエーテルを含有する。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物はアルキルジフェニルエーテルと二酸化炭素冷媒とを含有する。なお、本発明の冷凍機用作動流体組成物には、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油と二酸化炭素冷媒とを含有する態様が包含される。
【0012】
本発明に用いられるアルキルジフェニルエーテルとしては、下記一般式(1)で表わされるアルキルジフェニルエーテルが好ましく用いられる。
【化1】

【0013】
上記一般式(1)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、mは1〜3の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。m個のR及びn個のRのうちの1つ以上はアルキル基である。アルキル基の結合箇所はベンゼン環のいずれでもよい。
【0014】
本発明に用いられるアルキルジフェニルエーテルの製造法は任意であるが、例えば、ジフェニルエーテルをフリーデルクラフツ反応等を利用してアルキル化して合成したモノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、トリアルキルジフェニルエーテル、テトラアルキルジフェニル等が挙げられ、アルキル基としては直鎖及び/又は分岐のいずれのものでもよく、炭素数1〜18のものである。
【0015】
上記のような原料より得られた生成物を精製して副生物や未反応物を除去しても良いが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の潤滑油の優れた性能を損なわない限り、存在していても支障はない。
【0016】
本発明にかかるアルキルジフェニルエーテルのアルキル基の数およびその炭素数は特に限定されないが、アルキルジフェニルエーテルの40℃における動粘度が3〜500mm/sであることが好ましく、4〜400mm/sであることがより好ましく、5〜300mm/sであることがさらに好ましい。また、当該アルキルジフェニルエーテルの100℃における動粘度は1〜50mm/sであることが好ましく、1.5〜40mm/sであることがより好ましく、2〜30mm/sであることがさらに好ましい。
【0017】
また、当該アルキルジフェニルエーテルの100℃における動粘度は1〜50mm/sであることが好ましく、1.5〜40mm/sであることがより好ましく、2〜30mm/sであることがさらに好ましい。
【0018】
アルキルジフェニルエーテルの動粘度が上記の範囲内であると、潤滑性、シール性、冷媒相溶性等がよりバランスよく満たされる傾向にある。
【0019】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油において、上記アルキルジフェニルエーテル化合物は主として基油として用いてもよく、他の基油に配合して用いてもよい。
【0020】
また、本発明においては、基油として、当該アルキルジフェニルエーテルのみを単独で用いてもよく、当該アルキルジフェニルエーテルと、エステル(ポリオールエステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂環式ジカルボン酸エステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油とを併用してもよい。
【0021】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物において、当該アルキルジフェニルエーテルと酸素を含有する合成油とを併用する場合、それぞれの配合量は特に制限されないが、当該アルキルジフェニルエーテル100質量部に対して、酸素を含有する合成油が900質量部以下であることが好ましく、800質量部以下であることがより好ましい。
【0022】
アルキルジフェニルエーテル以外の酸素を含有する合成油の配合量が前記上限値を超えると、転がり軸受の寿命延長が満たされない傾向にある。
【0023】
本発明において、アルキルジフェニルエーテル、並びに必要に応じて配合される当該アルキルジフェニルエーテル以外の酸素を含有する合成油は主として基油として用いられる。
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、添加剤が配合されていない態様であっても好適に用いることができるが、必要に応じて後述する各種添加剤を配合することもできる。
【0024】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その耐摩耗性、耐荷重性をさらに向上するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0025】
具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0026】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0027】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、上記の酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等が挙げられる。
【0028】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等が挙げられる。
【0029】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等が挙げられる。
【0030】
これらのリン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物がリン化合物を含有する場合、その含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜3.0質量%である。
【0032】
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0033】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0034】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0035】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0036】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0037】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0038】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0039】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0040】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0041】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0042】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
また、上記リン化合物及びエポキシ化合物を2種以上併用してもよいことは勿論である。
【0044】
さらにまた、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に対して、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来から公知の冷凍機油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等の添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて配合することも可能である。
【0045】
これらの添加剤の合計配合量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0046】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度が3〜500mm/sであることが好ましく、4〜400mm/sであることがより好ましく、5〜300mm/sであることがさらに好ましい。
【0047】
また、本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油の100℃における動粘度は1〜50mm/sであることが好ましく、1.5〜40mm/sであることがより好ましく、2〜30mm/sであることがさらに好ましい。
【0048】
当該冷凍機油の動粘度が上記の範囲内であると、潤滑性、シール性、冷媒相溶性等がよりバランスよく満たされる傾向にある。
【0049】
上記の構成を有する本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油は、冷凍機器の冷媒循環システム内において、二酸化炭素冷媒と混合された流体組成物として使用される。すなわち、本発明の冷凍機用流体組成物は、上記本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油と二酸化炭素冷媒とを含有するものである。
【0050】
ここで、本発明の冷凍機用流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0051】
なお、本発明の冷凍機用流体組成物は、前述の通り二酸化炭素冷媒を含有するものであるが、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、炭化水素、アンモニア等の他の冷媒をさらに含有していてもよい。
【0052】
本発明にかかるハイドロフルオロカーボン冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは炭素数1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
【0053】
具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、またはこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0054】
また、本発明にかかる炭化水素冷媒としては、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられる。具体的には、炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4、のアルカン、シクロアルカン、アルケンまたはこれらの混合物である。具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパンまたはこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、プロパン、ブタン、イソブタンまたはこれらのうちの2種以上の混合物が好ましい。
【0055】
なお、二酸化炭素とハイドロフルオロカーボンおよび/または炭化水素との混合比については特に制限はないが、二酸化炭素100質量部に対してハイドロフルオロカーボンと炭化水素の合計量として好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部である。
【0056】
本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、潤滑性、冷媒相溶性、低温流動性、安定性等の要求性能全てをバランスよく十分に満足させるものであり、往復動式あるいは回転式の開放型または密閉型圧縮機を有する冷凍機器あるいはヒートポンプ等に好適に使用することができる。より具体的には、自動車用エアコン、除湿器、冷蔵庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置、住宅用エアコン、給湯用ヒートポンプ等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】

[実施例1〜5、比較例1〜4] 実施例1〜5及び比較例1〜4においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて表1に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
(基油)
基油1:アルキルジフェニルエーテル1(40℃における動粘度:68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油2:アルキルジフェニルエーテル2(40℃における動粘度:100mm/s、流動点:−40℃未満)
基油3:基油1(70質量部)と基油6(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:63mm/s、流動点:−40℃未満)
基油4:基油1(70質量部)と基油7(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油5:基油1(70質量部)と基油8(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油6:ポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル(40℃における動粘度50mm/s、流動点:−40℃未満)
基油7:2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸とペンタエリスリトールとのテトラエステル(40℃における動粘度68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油8:ポリビニルエーテル(40℃における動粘度68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油9:分岐型アルキルベンゼン(40℃における動粘度32mm/s、流動点:−40℃未満)。
【0059】
次に、実施例1〜5及び比較例1〜4の各冷凍機油組成物について以下の評価を行った。
【0060】
[転がり軸受け特性の評価試験]
まず、本試験において用いた冷媒雰囲気摩擦試験装置について説明する。冷媒雰囲気摩擦試験装置は耐圧容器内に摩擦試験機が収容されたもので、耐圧容器内に冷媒を導入することによって冷媒雰囲気下で摩擦試験を行うことが可能となっている。より具体的には、耐圧容器内において、上側試験片としてのコロ及びプレート(いずれもSUJ2製)を備える軸受と、下側試験片としてのプレート(SUJ2製)とが、両者を重ね合わせた状態で試料油に浸漬するように配置される。そして、下側試験片から上側試験片に向けて所定の荷重を加えると共に、上側試験片の軸受を所定の回転させることにより、上側のプレートの下面と下側のプレートの上面とを所定の荷重下で摺擦させることが可能となっている。下側試験片の支持体には振動計が装着されており、試験片を摺擦させたときにピッチングによる振動が発生した場合には、その振動を検知することが可能となっている。
【0061】
本試験では、二酸化炭素冷媒の圧力を3MPa、温度を80℃、軸受の回転数を1800rpm、下側のプレートに加える荷重を4kNとし、ピッチングによる振動を検知するまでの時間(min)を測定した。この試験を3回行い、その平均値を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0062】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルジフェニルエーテルを含有することを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油。
【請求項2】
アルキルジフェニルエーテルと、二酸化炭素冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。

【公開番号】特開2008−239803(P2008−239803A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82394(P2007−82394)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】