説明

二酸化炭素分離方法および二酸化炭素分離装置

【課題】二酸化炭素と、他の成分として少なくともメタンを含む混合ガスから、二酸化炭素をハイドレート化して分離してメタンリッチなガスを得る際に、前記二酸化炭素の分離効率を高め、高濃度のメタンガスを得ることができる二酸化炭素分離方法および二酸化炭素分離装置を提供する。
【解決手段】少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスをハイドレート化する第1の生成工程と、前記第1の生成工程で生成した混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解工程と、前記第1の分解工程で生じた分解ガスをハイドレート化する第2の生成工程と、を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともメタンおよび二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離し、高濃度のメタンガスを得る二酸化炭素分離方法および二酸化炭素分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギー源としての天然ガスは、通常、その主成分がメタンであり、前記メタン以外の他の成分もエタン、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素化合物を含むものであるが、燃料として利用することができない不燃性ガス(例えば、二酸化炭素、窒素等)を多く含んでいる場合がある。
天然ガスが、不燃性ガスである二酸化炭素を多く含む場合、前記天然ガスを燃料として利用するためには、前記二酸化炭素を分離して除く必要がある。
【0003】
また、下水汚泥の嫌気性消化(メタン発酵)によって得られるバイオガス(消化ガス)も、メタンと二酸化炭素の混合ガスであり、このバイオガスに含まれるメタンを有効に活用するため、前記バイオガスから二酸化炭素を分離する技術が求められている。
【0004】
二酸化炭素とメタンを含む混合ガス中から二酸化炭素を分離する技術としては、化学吸収法、PSA法(物理吸着法)、膜分離法、物理吸収法、ハイドレート分離法などがある。
中でも、前記混合ガス中の二酸化炭素をハイドレート化することによって前記混合ガスから二酸化炭素を分離するハイドレート分離法(例えば、特許文献1または特許文献2)は、水のみを利用して二酸化炭素の分離を行うことができるとクリーンな方法という点で注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−179629号公報
【特許文献2】米国特許明細書第5700311号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、被分離対象である混合ガス(二酸化炭素を含む混合ガス)が天然ガスである場合(特許文献1)、二酸化炭素と分離したい他の成分は主としてメタンであるが、二酸化炭素とメタンは、それぞれのハイドレートの相平衡条件が近い。そのため、二酸化炭素ハイドレートを形成させる際には、メタンハイドレートや、メタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートも同時に形成されてしまい、燃料として有用な成分であるメタンの一部も二酸化ハイドレートとともに除かれてしまう。
【0007】
この方法によって生成した二酸化炭素を多く含むガスハイドレートは、燃料として有用なメタンを未だ含んでいるが、そのガスハイドレートを分解したガスは、大気放出、または帯水層等への貯留が想定されている。すなわち、そこに含まれるメタンが燃料として利用されないという問題がある。
そのため、二酸化炭素をハイドレート化することによって前記混合ガスから二酸化炭素を分離するハイドレート分離法では、ガスハイドレートとして分離されるガス中に含まれるメタンはできるだけ少なくすることが求められている。
【0008】
本発明の目的は、二酸化炭素と、他の成分として少なくともメタンを含む混合ガスから、二酸化炭素をハイドレート化して分離してメタンリッチなガスを得る際に、前記二酸化炭素の分離効率を高め、高濃度のメタンガスを得ることができる二酸化炭素分離方法および二酸化炭素分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る二酸化炭素分離方法は、少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスをハイドレート化する第1の生成工程と、前記第1の生成工程で生成した混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解工程と、前記第1の分解工程で生じた分解ガスをハイドレート化する第2の生成工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0010】
二酸化炭素とメタンは、図3に示されるように、それぞれのハイドレートの平衡条件が近いが、二酸化炭素はメタンよりも高温側または低圧側でハイドレート化する。二酸化炭素とメタンの混合ガスのハイドレート平衡曲線は、該混合ガス中の二酸化炭素とメタンの混合比により変わるが、二酸化炭素のハイドレート平衡曲線とメタンのそれとの間に位置する。
二酸化炭素とメタンを含む混合ガス(以下、混合ガスGと称する)と水をハイドレート生成器に導入し、該生成器内を、少なくとも前記混合ガスG中の二酸化炭素がハイドレート化する所定の温度および圧力条件にして混合ガスGをハイドレート化すると、前述のようにメタンと二酸化炭素のそれぞれのハイドレートの平衡条件が近いため、通常、メタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートが形成される(第1の生成工程)。
【0011】
このとき、前述のように、二酸化炭素はメタンよりもハイドレート化し易いので、生成した前記混合ガスハイドレートに含まれる混合ガス(以下、混合ガスGと称する)の組成は、元の混合ガスGよりも二酸化炭素が多い組成となる。
一方、前記第1の生成工程においてハイドレート化しなかったガス(ガスGと称する)中には、元の混合ガスGよりも多いメタンが残り、前記ガスGはガスGよりもメタンリッチになる。
【0012】
ここで、混合ガスGは二酸化炭素を多く含んでいるが、依然としてメタンを含んでいる。本態様では、混合ガスGをハイドレート化して得た混合ガスハイドレート(混合ガスGのガスハイドレート)を分解して再ガス化し、分解ガスとして前記混合ガスGを得て(第1の分解工程)、当該分解ガス(混合ガスG)をハイドレート化する第2の生成工程を行う。
【0013】
このとき、前記第1の生成工程と同様、前記混合ガスG中の二酸化炭素がハイドレート化する所定の温度および圧力条件にして混合ガスGをハイドレート化すると、メタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートが形成される。そして、二酸化炭素はメタンよりもハイドレート化し易いので、第2の生成工程で生成する混合ガスハイドレートに含まれる混合ガス(以下、混合ガスGと称する)の組成は、第2の生成工程前の混合ガスGよりも更に二酸化炭素が多い組成となる。
また、前記第2の生成工程においてハイドレート化しなかったガス(ガスGと称する)中にはメタンが残っているので、メタンリッチな前記ガスGが得られる。
【0014】
本態様によれば、従来よりもメタンの含有量の少ない混合ガスGを含むガスハイドレートを生成し、混合ガスGをからの二酸化炭素の分離率を向上することができる。以って、より高濃度のメタンを含むガス(ガスGおよびガスG)を得ることができる。
【0015】
本発明の第2の態様に係る二酸化炭素分離方法は、第1の態様において、前記第2の生成工程の温度条件および圧力条件は、第1の生成工程のそれよりも、高温および/または低圧であることを特徴とするものである。
【0016】
前述のように、前記第1の生成工程によって得られた混合ガスハイドレートを第1の分解工程で分解して生じた分解ガス(混合ガスG)は、元の混合ガスGよりも二酸化炭素を多く含んでいる。すなわち、混合ガスGにおける二酸化炭素の分圧は、混合ガスGにおける二酸化炭素の分圧より高くなる。したがって、混合ガスGは混合ガスGよりも高温側または低圧側でハイドレート化する。
【0017】
本態様によれば、前記第2の生成工程を、第1の生成工程よりも高温、または低圧、または高温且つ低圧の条件で行い、より省エネルギーで第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
本発明の第3の態様に係る二酸化炭素分離方法は、第1の態様または第2の態様において、前記第1の生成工程においてハイドレート化しないガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第1の二酸化炭素吸収工程と、前記第2の生成工程においてハイドレート化しないガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第2の二酸化炭素吸収工程と、前記第2の生成工程において生成した分解ガスのハイドレートを分解して再ガス化する第2の分解工程と、前記第1の分解工程および前記第2の分解工程での前記再ガス化で得られる水から、該水に溶解している前記二酸化炭素を放散させる二酸化炭素放散工程と、該二酸化炭素放散工程で得られた水を前記第1の二酸化炭素吸収工程および/または第2の二酸化炭素吸収工程に送る工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、第1の生成工程、第2の生成工程のそれぞれの後工程として、各生成工程においてハイドレート化しないガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる二酸化炭素吸収工程を行い、よりメタン濃度を高めたガスを得ることができる。
【0020】
加えて、第1の分解工程および前記第2の分解工程での前記再ガス化で得られる水を集めて二酸化炭素放散工程を行うため、該二酸化炭素放散工程を高効率に行うことができる。
更に、該二酸化炭素放散工程を経た水は、二酸化炭素が除かれているため、二酸化炭素の吸収能力が回復している。該二酸化炭素放散工程において二酸化炭素を系外に除いた水を、第1の二酸化炭素吸収工程または第2の二酸化炭素吸収工程、またはその両方に送って再利用するため、二酸化炭素の分離率を高めることができる。
【0021】
尚、第1の二酸化炭素吸収工程および第2の二酸化炭素吸収工程を経た水は、それぞれ第1の生成工程および第2の生成工程に戻すように構成されていることが好ましい。第1の二酸化炭素吸収工程および第2の二酸化炭素吸収工程を経た水は、二酸化炭素飽和の状態であるため、新たに二酸化炭素ほとんど溶かすことができない。その結果、二酸化炭素が水に溶解することによるにハイドレートの各生成工程における圧力の低下が防止され、以ってガスハイドレートの生成効率の低下を防止することができる。
【0022】
本発明の第4の態様に係る二酸化炭素分離方法は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つにおいて、前記第1の分解工程を、温度を高めることにより実行することを特徴とするものである。
【0023】
第1の分解工程を、温度を高めることにより実行すると、その第1の分解工程の圧力条件は前記第1の生成工程とほぼ同じ圧力で行うことができる。これにより、第1の生成工程で生成した混合ガスハイドレートを第1の分解工程へ送る際に圧力変動がなくなる。
また、第1の分解工程後の分解ガス(混合ガスG)は、第1の生成工程とほぼ同様の圧力のまま第2の生成工程へ送ることができるので、昇圧にかかるエネルギーを抑えることができる。
【0024】
尚、前記第2の生成工程を、第1の生成工程よりも低圧、または高温且つ低圧の条件で行う場合には、前記第1の分解工程における圧力を、前記第2の生成工程の低い圧力条件にまで下げることも可能である。
また、前記第3の態様のように、二酸化炭素放散工程を行う場合には、水からの二酸化炭素の放散は、圧力を下げるだけで行うことが可能である。
【0025】
本発明の第5の態様に係る二酸化炭素分離方法は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つにおいて、前記混合ガスは、二酸化炭素が主成分であることを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【0026】
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスGにおいて、二酸化炭素が主成分である場合、前記混合ガスG中における二酸化炭素の分圧が高くなる。このような混合ガスGをハイドレート化する場合には、前記二酸化炭素の分圧の高さにより、二酸化炭素ハイドレートが更に生成しやすくなる。このことにより、二酸化炭素が主成分である混合ガスGでは、二酸化炭素の分離効率がより高くなる。
【0027】
ここで、天然ガスのガス組成はその産出場所によって異なり、メタンよりも二酸化炭素を多く含んでいる天然ガスを産出するガス田も存在する。二酸化炭素が主成分である天然ガスは、現状利用されずにいる。このような二酸化炭素を主成分とする天然ガス等に対して、本態様の二酸化炭素分離方法を用いることにより、効果的に二酸化炭素を分離することができる。
【0028】
本発明の第6の態様に係る二酸化炭素分離装置は、少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスと、原料水と、を供給して、所定の温度条件および圧力条件で混合ガスのハイドレートを生成する第1の生成部と、前記第1の生成部において生成した混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解部と、前記第1の分解部において生じた分解ガスと、原料水と、を供給して、所定の温度条件および圧力条件で前記分解ガスのハイドレートを生成する第2の生成部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0029】
本態様によれば、第1の態様の二酸化炭素分離方法を実行し、第1の態様と同様の効果を得ることができる。
【0030】
本発明の第7の態様に係る二酸化炭素分離装置は、第6の態様において、第2の生成部の温度条件および圧力条件は、第1の生成部のそれよりも、高温および/または低圧に設定されていることを特徴とするものである。
【0031】
本態様によれば、第2の態様の二酸化炭素分離方法を実行し、第2の態様と同様の効果を得ることができる。
【0032】
本発明の第8の態様に係る二酸化炭素分離装置は、第6の態様または第7の態様において、前記第1の生成部をハイドレート化しないで通過したガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第1の二酸化炭素吸収部と、前記第2の生成部をハイドレート化しないで通過したガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第2の二酸化炭素吸収部と、前記第2の生成部において生成した分解ガスのハイドレートを分解して再ガス化する第2の分解部と、前記第1の分解部および前記第2の分解部での前記再ガス化で得られる水を受けて、該水に溶解している前記二酸化炭素を放散させる二酸化炭素放散部と、を備え、該二酸化炭素放散部を経た水を、前記第1の二酸化炭素吸収部および/または第2の二酸化炭素吸収部に送るように構成されていることを特徴とするものである。
【0033】
本態様によれば、第3の態様の二酸化炭素分離方法を実行し、第3の態様と同様の効果を得ることができる。
【0034】
本発明の第9の態様に係る二酸化炭素分離装置は、第6の態様から第8の態様のいずれか一つにおいて、前記第1の分解部は、温度を高めることにより、前記混合ガスハイドレートを分解するように構成されていることを特徴とするものである。
【0035】
本態様によれば、第4の態様の二酸化炭素分離方法を実行し、第4の態様と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る二酸化炭素分離装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る二酸化炭素分離装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】二酸化炭素とメタンのそれぞれのハイドレート平衡曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
最初に、本発明に係る混合ガスおよび原料水について説明する。
【0038】
<混合ガス>
本発明に係る二酸化炭素分離方法における分離対象である混合ガスGは、二酸化炭素を含み、他の成分として少なくともメタンを含む複数のガス成分の混合ガスGである。このような混合ガスGとしては、例えば、二酸化炭素を含む天然ガスが挙げられる。天然ガスは、二酸化炭素およびメタンの他、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン等の炭化水素化合物を含んでいる。
また、他の例としては、下水汚泥の嫌気性消化(メタン発酵)によって得られるバイオガス(消化ガス)が挙げられる。前記天然ガスやバイオガスは、二酸化炭素、メタン等の炭化水素化合物の他、硫化水素、窒素等を含んでいる場合がある。これらの成分は、予め脱硫処理等を行い、除去しておくことが望ましい。
【0039】
<原料水>
原料水としては、蒸留水、精製水、イオン交換水、RO水等の他、ガスハイドレートの生成に影響を与える夾雑物が含まれていない水道水を用いることができる。
【0040】
[実施例1]
本発明に係る二酸化炭素分離装置の実施形態の一例を図1に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る二酸化炭素分離装置の一例を示す概略構成図である。図1に記載の二酸化炭素分離装置1は、混合ガスGと原料水Lからガスハイドレートを生成する第1の生成部2と、前記第1の生成部において生成した混合ガスハイドレート受けて、該混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解部3と、前記第1の生成部2をハイドレート化しないで通過したガスGを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第1の二酸化炭素吸収部4を備えている。
【0041】
前記混合ガスGは所定の圧力および温度にされて、前記第1の生成部2の下部から気泡として第1の生成部2内の水中に導入されるように構成されている。また、原料水Lは、所定の温度にされて第1の生成部2に導入される。前記第1の生成部2内の圧力および温度は、混合ガスGからハイドレートを生成する条件に設定される。
例えば、混合ガスGのガス組成が二酸化炭素:メタン=60:40である場合、第1の生成部2内は2〜5MPa、1〜10℃に設定することが望ましい。
【0042】
前記第1の生成部2において生成した混合ガスハイドレートは、第1の分解部3に送られる。本実施例においては、混合ガスハイドレートスラリーSの状態で送られるが、第1の生成部2と第1の分解部3との間に脱水部を設け、脱水後の混合ガスハイドレートを第1の分解部3に送るように構成されていてもよい。
【0043】
また、前記第1の生成部2をハイドレート化しないで通過したガスGは、第1の二酸化炭素吸収部4に送られる。第1の生成部2には、二酸化炭素がほとんど溶解していない水Lが導入され、該水LとガスGを気液接触させて該ガスG中の二酸化炭素を水Lに吸収させるように構成されている。第1の二酸化炭素吸収部4は、例えば、2〜5MPa、1〜10℃に設定される。第1の二酸化炭素吸収部4を経た水Lは、第1の生成部2に戻すように構成されている。
【0044】
第1の分解部3では、該第1の分解部3内の温度を上げる、または圧力を下げる、またはその両方を行うことによって混合ガスハイドレートの分解条件とすることができる。好ましくは、主として温度を上げることによって前記混合ガスハイドレートの分解条件とする。
【0045】
前記第1の分解部3において分解して再ガス化したガスGは、第2の生成部5に送られる。前記第1の分解部3と前記第2の生成部5の間には、圧縮器14を設けることができる。第2の生成部5には原料水Lが導入される。前記第2の生成部5内の圧力および温度は、ガスGからハイドレートを生成する条件に設定される。
前述のように、ガスGは元の混合ガスGよりも二酸化炭素を多く含んでいる。例えば、混合ガスG(二酸化炭素:メタン=60:40)を第1の生成部2においてハイドレート化して得た混合ガスハイドレートを分解して得られるガスGのガス組成は、二酸化炭素:メタン=約70:30である。このとき第2の生成部5内は1.8〜4.8MPa、1〜10℃に設定することが望ましい。
【0046】
第2の生成部5内の圧力および温度は、第1の生成部2よりも高温、または低圧、または高温且つ低圧の条件に設定することが望ましい。
ガスGは元の混合ガスGよりも二酸化炭素を多く含んでいるため、ガスGにおける二酸化炭素の分圧は、混合ガスGにおける二酸化炭素の分圧より高くなる。したがって、混合ガスGは混合ガスGよりも高温側または低圧側でハイドレート化する。第2の生成部5内の圧力および温度を、第1の生成工程よりも緩やかな条件で行うことにより、より省エネルギーで二酸化炭素の分離を行うことができる。
【0047】
第2の生成部5において、ガスGをハイドレート化することにより、ハイドレートスラリーSを得ることができる。
また、前記第2の生成部5をハイドレート化しないで通過したガスGは、第2の二酸化炭素吸収部6に送られる。第2の生成部5には、二酸化炭素がほとんど溶解していない水Lが導入され、該水LとガスGを気液接触させて該ガスG中の二酸化炭素を水Lに吸収させるように構成されている。第2の二酸化炭素吸収部6は、例えば、1.8〜4.8MPa、1〜10℃に設定される。第2の二酸化炭素吸収部6を経た水Lは、第2の生成部5に戻すように構成されている。
【0048】
次に、本実施例に係る二酸化炭素分離装置1を用いて行う二酸化炭素分離方法について説明する。
二酸化炭素とメタンは、それぞれのハイドレートの相平衡条件が近いが、二酸化炭素はメタンよりも高温側または低圧側でハイドレート化するため(図3を参照)、二酸化炭素とメタンを含む混合ガスGをハイドレート化すると、二酸化炭素ハイドレートと、メタンハイドレートと、メタンと二酸化炭素の両方を含むガスハイドレートが同時に形成され、全体としてはメタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートが形成される(第1の生成工程)。
【0049】
このとき、二酸化炭素はメタンよりもハイドレート化し易いので、生成した前記混合ガスハイドレートに含まれるガスGの組成は、元の混合ガスGよりも二酸化炭素が多い組成となる。
一方、前記第1の生成工程においてハイドレート化しなかったガスG中には、元の混合ガスGよりも多いメタンが残り、前記ガスGはガスGよりもメタンリッチになる。
【0050】
ここで、ガスGは二酸化炭素を多く含んでいるが、依然としてメタンを含んでいる。前記混合ガスGをハイドレート化して得た混合ガスハイドレートスラリーS(ガスGのガスハイドレートを含むスラリー)を、第1の分解部3において分解して再ガス化し、分解ガスとして前記混合ガスGを得て(第1の分解工程)、当該分解ガス(混合ガスG)を、第2の生成部5においてハイドレート化する(第2の生成工程)。
【0051】
このとき、第2の生成工程では前記第1の生成工程と同様、二酸化炭素ハイドレートと、メタンハイドレートと、メタンと二酸化炭素の両方を含むガスハイドレートが同時に形成され、全体としてはメタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートが形成される。そして、二酸化炭素はメタンよりもハイドレート化し易いので、第2の生成工程で生成する混合ガスハイドレートスラリーSに含まれるガスGの組成は、第2の生成工程前のガスGよりも更に二酸化炭素が多い組成となる。
また、前記第2の生成工程においてハイドレート化しなかったガスG中にはメタンが残っているので、メタンリッチな前記ガスGが得られる。
【0052】
前記ガスGおよびガスGは、それぞれ第1の二酸化炭素吸収部4および第2の二酸化炭素吸収部6を経ることによって、ガスGおよびガスG中から更に二酸化炭素が除去される。以って、よりメタン濃度の高いガスGおよびガスGを得ることができる。
【0053】
本実施例によれば、従来よりもメタンの含有量の少ないガスGを含むガスハイドレートを生成し、混合ガスGをからの二酸化炭素の分離率を向上することができる。以って、より高濃度のメタンを含むガス(ガスGおよびガスG)を得ることができる。
【0054】
尚、第1の分解部3における混合ガスハイドレートの分解を、温度を高めることにより実行すると、第1の分解部3の圧力条件は第1の生成部2とほぼ同じ圧力で行うことができる。これにより、第1の生成部2で生成した混合ガスハイドレートを第1の分解部3へ送る際に圧力変動がなくなる。
また、第1の分解部3において生じた分解ガス(混合ガスG)は、第1の生成工程とほぼ同様の圧力のまま後述の第2の生成工程へ送ることができるので、昇圧にかかるエネルギーを抑えることができる。
【0055】
また、第1の二酸化炭素吸収部4および第2の二酸化炭素吸収部6において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素飽和状態の水Lおよび水Lが、それぞれ第1の生成部2および第2の生成部5に戻されることによって、各生成部内における二酸化炭素の水への溶け込みによる圧力の低下が防止され、以ってガスハイドレートの生成効率の低下を防止することができる。
【0056】
[実施例2]
本発明に係る二酸化炭素分離装置の他の実施形態を図2に基づいて説明する。
本実施例に係る二酸化炭素分離装置11において、実施例1に係る二酸化炭素分離装置1と同様の部材には同じ符号を付し、その説明は省略する。
【0057】
二酸化炭素分離装置11は、二酸化炭素分離装置1における第2の生成部5の後段に、更に前記第2の生成部5において生成したガスハイドレートスラリーSに含まれるガスハイドレートを分解して再ガス化する第2の分解部7を備えている。
そして、前記第1の分解部3および前記第2の分解部7での前記再ガス化で得られる水Lおよび水Lを受けて、該水Lおよび水Lに溶解している前記二酸化炭素を放散させる二酸化炭素放散部8を備えている。更に、二酸化炭素放散部8を経た水を分配し、前記第1の二酸化炭素吸収部4に水Lを、第2の二酸化炭素吸収部6には水L10を送るように構成されている。符号11および符号12はポンプである。
【0058】
本実施例によれば、第1の分解部3および前記第2の分解部7での前記再ガス化で得られる水Lおよび水Lを集めて、二酸化炭素放散部8において前記水Lおよび水Lに含まれる二酸化炭素放散工程を行うため、当該二酸化炭素放散工程を高効率に行うことができる。
更に、該二酸化炭素放散部8を経た水は、二酸化炭素が除かれているため、二酸化炭素の吸収能力が回復している。前記二酸化炭素放散部8における二酸化炭素放散工程で二酸化炭素を系外に除いた水Lおよび水L10を、第1の二酸化炭素吸収部4および第2の二酸化炭素吸収部6に送って再利用するため、混合ガスGからの二酸化炭素の分離率を高めることができる。
【0059】
尚、二酸化炭素放散部は、第1の二酸化炭素分解部および第2の二酸化炭素分解部のそれぞれの後段に個別に設けることも可能である。また、第2の生成部5と第2の分解部7との間に脱水部を設け、脱水後の混合ガスハイドレートを第2の分解部7に送るように構成されていてもよい。
【0060】
[実施例3]
本発明に係る二酸化炭素分離方法を用い、混合ガス(二酸化炭素:メタン=60:40)に含まれる二酸化炭素の分離を行った。第1の生成工程は、温度約3℃、圧力約2.5MPaで、第1の二酸化炭素吸収工程は、温度約7℃、圧力約2.5MPaで行った。また、第2の生成工程は、温度約3℃、圧力約2.5MPaで、第2の二酸化炭素吸収工程は、温度約7℃、圧力約2.5MPaで行った。
表1に、第1の生成工程によって得られた混合ガスハイドレートに含まれるガスGと、第2の生成工程よって得られた混合ガスハイドレートに含まれるガスGのガス組成を示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示されるように、混合ガスGからガスハイドレートとして最終的に分離されるガスG中に含まれるメタンは、従来の分離方法(混合ガスGに対して1度のハイドレート化を行う)によって分離されるガス(ガスGに相当)よりも少なくなり、二酸化炭素は多くなっている。
以上のように、混合ガスGからの二酸化炭素の分離効率が高くなり、以って、高濃度のメタンガスを得ることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 二酸化炭素分離装置、 2 第1の生成部、
3 第1の分解部、 4 第1の二酸化炭素吸収部、
5 第2の生成部、 6 第2の二酸化炭素吸収部、
7 第2の分解部、 8 二酸化炭素放散部、
11 二酸化炭素分離装置、
混合ガス、 G〜G ガス、 L〜L10


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスをハイドレート化する第1の生成工程と、
前記第1の生成工程で生成した混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解工程と、
前記第1の分解工程で生じた分解ガスをハイドレート化する第2の生成工程と、
を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【請求項2】
請求項1に記載された二酸化炭素分離方法において、前記第2の生成工程の温度条件および圧力条件は、第1の生成工程のそれよりも、高温および/または低圧であることを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載された二酸化炭素分離方法において、
前記第1の生成工程においてハイドレート化しないガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第1の二酸化炭素吸収工程と、
前記第2の生成工程においてハイドレート化しないガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第2の二酸化炭素吸収工程と、
前記第2の生成工程において生成した分解ガスのハイドレートを分解して再ガス化する第2の分解工程と、
前記第1の分解工程および前記第2の分解工程での前記再ガス化で得られる水から、該水に溶解している前記二酸化炭素を放散させる二酸化炭素放散工程と、
該二酸化炭素放散工程で得られた水を前記第1の二酸化炭素吸収工程および/または第2の二酸化炭素吸収工程に送る工程と、を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載された二酸化炭素分離方法において、
前記第1の分解工程を、温度を高めることにより実行することを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載された二酸化炭素分離方法において、前記混合ガスは、二酸化炭素が主成分であることを特徴とする、二酸化炭素分離方法。
【請求項6】
少なくとも二酸化炭素とメタンを含む混合ガスと、原料水と、を供給して、所定の温度条件および圧力条件で混合ガスのハイドレートを生成する第1の生成部と、
前記第1の生成部において生成した混合ガスハイドレートを分解して再ガス化する第1の分解部と、
前記第1の分解部において生じた分解ガスと、原料水と、を供給して、所定の温度条件および圧力条件で前記分解ガスのハイドレートを生成する第2の生成部と、
を備えたことを特徴とする、二酸化炭素分離装置。
【請求項7】
請求項6に記載の二酸化炭素分離装置において、第2の生成部の温度条件および圧力条件は、第1の生成部のそれよりも、高温および/または低圧に設定されていることを特徴とする、二酸化炭素分離装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載された二酸化炭素分離装置において、
前記第1の生成部をハイドレート化しないで通過したガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第1の二酸化炭素吸収部と、
前記第2の生成部をハイドレート化しないで通過したガスを水と気液接触させて該ガス中の二酸化炭素を水に吸収させる第2の二酸化炭素吸収部と、
前記第2の生成部において生成した分解ガスのハイドレートを分解して再ガス化する第2の分解部と、
前記第1の分解部および前記第2の分解部での前記再ガス化で得られる水を受けて、該水に溶解している前記二酸化炭素を放散させる二酸化炭素放散部と、を備え、
該二酸化炭素放散部を経た水を、前記第1の二酸化炭素吸収部および/または第2の二酸化炭素吸収部に送るように構成されていることを特徴とする、二酸化炭素分離装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載された二酸化炭素分離装置において、前記第1の分解部は、温度を高めることにより、前記混合ガスハイドレートを分解するように構成されていることを特徴とする、二酸化炭素分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251012(P2012−251012A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122259(P2011−122259)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】