説明

二酸化炭素固定化装置

【課題】 一度に数多くの光触媒反応を実施することが可能で、しかも装置の外部から反応進行状況を容易に観察することができる、光触媒反応を利用した二酸化炭素固定化装置を提供すること。
【解決手段】 光触媒の存在下、水素供与体と二酸化炭素ガスを原料として二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置であって、筐体1内に、固定化反応用のそれぞれ独立した複数の耐圧透明容器2と、前記複数の耐圧透明容器を挟持して回転させる攪拌ロータ3とを備え、前記攪拌ロータ3の回転軸3aと平行な筐体面に光照射装置4を配置した二酸化炭素固定化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、製鉄分野、石油化学産業分野、一般化学工業分野等において、とりわけスクリーニング試験用として好適な二酸化炭素(CO)固定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、工場、自動車等の人間の社会的活動に伴って大気中に排出される二酸化炭素は地球温暖化の主たる原因であることが知られており、近年、この二酸化炭素の排出量を削減することが地球環境の保護の大きな課題となっている。これに対し、従来より、発電所等の排煙や大気中の二酸化炭素を固定化し除去するためのシステムが種々提案されている。
【0003】
二酸化炭素の固定化方法は、概ね生物的方法、物理的方法、化学的方法の3種類に分けられる。光合成を利用する生物的方法はかなりの量のCOの固定が期待でき、しかも熱帯林の保護や砂漠化防止にも役立つので、現在広範な植樹と微細藻類の多量かつ連続的な培養、増殖を行う研究開発が行われている。しかし、微細藻類による固定化反応は、微細藻類の表面で進行するため、微細藻類でCOを固定化するためには広大な面積の微細藻類が必要となる問題がある。
【0004】
物理的方法は、COの特殊な媒体への溶解、吸着を利用する分離・濃縮法であり、例えば、COをアルカリ溶液に溶解、反応後、炭酸塩として分離する方法、或いは、COをゼオライト媒体等に吸着させた後、脱着、濃縮する方法などが開発研究されている。しかし、吸着法ではCOの吸脱着に膨大なエネルギーを要する問題点がある。吸収法では大掛かりな装置が必要である。
【0005】
3番目の化学的方法は、電気化学法(電気化学的還元、電気化学的固定)、触媒反応を利用する方法、光反応を利用する方法に分けられる。電気化学法によるCOの還元は、特殊な電極を使用して電解溶液中のCOを分解し、ギ酸、メタン等を常温で生成する。電気化学的固定は、電気分解により例えばNaイオン源とCOを反応させ、炭酸Naとして固定する。
【0006】
触媒反応を利用するCOの還元は、COを一酸化炭素、メタノール等に転換してそれを利用するという手段のほかに、COを直接原料として用いる有機合成反応の研究等も行われている。二酸化炭素のような不活性分子を反応させる一般的な方法として、遷移金属化合物による配位活性化がある。
【0007】
光反応を利用するCOの還元は、自然界で発生している光合成反応と光触媒によるCOの還元に分けられる。自然界では、植物によりCOとHOから光を利用して炭水化物を合成する。この光合成反応は、緑色植物中の色素クロロフィルが光を吸収して励起状態になり、その励起状態から電子移動をし、最終的にCOを還元するというものである。また、光触媒反応によるCOの還元も報告されている。光触媒には、二酸化チタン(TiO)のような半導体微粒子や、金属を表面に担持した二酸化チタン、遷移金属錯体などが用いられる。しかし、光触媒反応を利用するCOの還元に関する研究の現状としては、近年進歩しているものの、まだ反応効率が低く、反応機構も十分に解明されていない状態である。
【0008】
光触媒を利用したCOの還元反応に関する報告は多々あるが、例えば、特許文献1には、TiOなどの半導体光触媒を利用して水とCO混合物に紫外線照射することにより、COをギ酸、ホルムアルデヒド、メタノール及びメタンに還元する方法が開示されている。この方法では純水100mlに光触媒1gを懸濁させ、COガスを前記懸濁水中に吹き込み攪拌しながら、ガラス製反応容器の底部側面に設けた石英板製の光照射用窓を介して超高圧水銀灯を用いて光を触媒に照射し、COを還元している。
【特許文献1】特開昭55−105625号公報(特許請求の範囲(1)、第3頁左上欄、第6頁第1図等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の反応装置では光照射面積が狭く、かつ、固定化反応を側面からの紫外線照射で行っているため、内部状況を観察するには光源を移動させなければならず、逐次反応進行状況を観察することが難しい。また、一度に数多くの固定化実験を行うことができないため、最適な反応条件を見出すまでに長期間を要する問題もある。
【0010】
本発明は、一度に数多くの光触媒反応を実施することが可能で、しかも装置の外部から反応進行状況を容易に観察することができる、光触媒反応を利用した二酸化炭素固定化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す構成により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、光触媒の存在下、水素供与体と二酸化炭素ガスを原料として二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置であって、筐体内に、固定化反応用のそれぞれ独立した複数の耐圧透明容器と、前記複数の耐圧透明容器を挟持して回転させる攪拌ロータとを備え、前記攪拌ロータの回転軸と平行な筐体面に光照射装置を配置したことを特徴とする二酸化炭素固定化装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、光触媒の存在下、水素供与体と二酸化炭素ガスを原料として二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置であって、筐体内に、固定化反応用のそれぞれ独立した複数の耐圧透明容器と、前記複数の耐圧透明容器を載置する回転磁場装置とを備え、前記回転磁場装置の対面または側面となる筐体面に光照射装置を配置したことを特徴とする二酸化炭素固定化装置を提供する。
【0014】
上記の二酸化炭素固定化装置においては、水素供与体が、水及びメタノールの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記構成によれば、一度に数多くの光触媒反応を実施することができ、しかも装置の外部からでも反応を内部観察することができる二酸化炭素固定化装置を提供することが可能となるので、スクリーニング試験の効率化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。図2は、図1の二酸化炭素固定化装置における攪拌ロータ(ロータリーミキサー)の概略を示す拡大図であり、攪拌ロータに耐圧透明容器(反応容器)を取り付けた状態を示している。図3は、二酸化炭素固定化装置における耐圧透明容器の概略を示す拡大図及び反応容器蓋廻りの部分拡大断面図である。
【0017】
図1において、二酸化炭素固定化装置10は、筐体1と、筐体1の中に備えられた耐圧透明容器(反応容器)2と、該耐圧透明容器2を挟持して回転させる攪拌ロータ3と、該攪拌ロータ3の回転軸3aと平行な筐体面に配置された光照射装置4とから構成されている。
【0018】
図1において、筐体1は攪拌ロータ3を収納すると共に、光照射装置4を攪拌ロータの回転軸3aと平行に配置するためのものであり、反応容器を装置外部から観察可能とするため、透明ガラス製の窓1aを有している。透明ガラス窓1aを有する筐体面は、開閉自在のドア構造となっている。
【0019】
図2において、攪拌ロータ3は、耐圧透明容器2を挟持する把持部(クランプ)3bを複数有しているので、複数の反応容器を使用して光固定化反応を同時に進行させることが可能となる。光触媒と、反応原料である水素供与体及び二酸化炭素ガスとを充填した耐圧透明容器2を、把持部3bに取り付けた後、回転軸3aを中心として図1中の矢印方向に連続して回転させる。回転によって反応容器2の内容物が攪拌されることで、光触媒と水素供与体あるいは二酸化炭素が接触して反応が進行する。
【0020】
また図1に示すように、攪拌ロータ3の回転軸3aと平行に光照射装置4が備えられているので、耐圧透明容器2に均等に光が照射される。そのため、反応条件のバラツキを無くすることができる。図1では、筐体の上面に光照射装置を備えた例を示したが、光照射装置は回転軸と平行な面に配置されていればよいので、筐体の側面すなわち透明ガラス窓1aの対面に配置されていてもよい。光照射装置としては、例えばキセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができ、これらを複数本設置してもよい。
【0021】
本発明の二酸化炭素固定化装置においては、反応容器として耐圧性の透明容器が使用されるが、これは、二酸化炭素ガス圧入による固定化反応実験を加圧状態でも実施可能とするためであり、また、光触媒による固定化反応を円滑に進行させるために光透過性が要求されるからである。耐圧透明容器としては、例えば、図3に示すような、ガラス製の耐圧容器等を使用することができ、外部にコーティングが施されていてもよい。
【0022】
図3において、耐圧透明容器2には、攪拌ロータ3の把持部3bに適合させることができるように、頸部2bが形成されている。また、耐圧透明容器2の本体2aは、図4にその詳細を示すように、光触媒5と水素供与体6と二酸化炭素ガス7を収容する。耐圧透明容器2は、上部の蓋2cの下端部と本体2aの上端部がネジで嵌合するように作製されているので、容器に収容された内容物が、その回転によって漏出することはない。また、上部の蓋2cは、容器内へ二酸化炭素ガスを圧入するためのシリンジ口2eと、圧入時のガス漏れを防止するためのシリコン栓2d、及びシリンジの挿入を調整するためのバルブ2fを有している。バルブを左右いずれかに押すことにより、バルブが開閉する。バルブを開けた状態でガスを圧入し、圧入後バルブを閉じることにより、容器内が密閉状態に保たれる。
【0023】
図5は本発明の他の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。図6は、図5の二酸化炭素固定化装置における耐圧透明容器の概略を示す拡大図である。
【0024】
図5において、二酸化炭素固定化装置20は、筐体11と、筐体11の中に備えられた耐圧透明容器(反応容器)12と、該耐圧透明容器12を載置する回転磁場装置13と、該回転磁場装置13の対面となる筐体面に配置された光照射装置14とから構成されている。
【0025】
図5において、筐体11は攪拌磁場装置13を収納すると共に、光照射装置14を回転磁場装置13の対面に配置するためのものであり、反応容器を装置外部から観察可能とするため、透明ガラス製の窓11aを有している。筐体11は、先の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を構成する筐体1と同じものを使用することができる。
【0026】
図5において、回転磁場装置13は、複数の回転盤を有しているので(いわゆる、マルチスターラー)、これを使用して複数の光固定化反応を同時に進行させることが可能となる。光触媒と、反応原料である水素供与体及び二酸化炭素ガスとを充填し、さらに回転子を入れた耐圧透明容器12を、回転盤13の上に置き、変速手段等で調整しながら回転子を連続回転させる。回転によって容器12の内容物が攪拌されることで、光触媒と水素供与体あるいは二酸化炭素が接触して反応が進行する。
【0027】
また図5に示すように、攪拌磁場装置13の対面となる上面に光照射装置14が備えられているので、耐圧透明容器(反応容器)12に均等に光が照射される。そのため、反応条件のバラツキを無くすることができる。光照射装置としては、先の実施例に係る二酸化炭素固定化装置と同様、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を、複数本配置する。
【0028】
本発明の二酸化炭素固定化装置においては、反応容器として耐圧性の透明容器が使用されるが、これは、二酸化炭素ガス圧入による固定化反応実験を加圧状態でも実施可能とするためであり、また、光触媒による固定化反応を円滑に進行させるために光透過性が要求されるからである。耐圧透明容器としては、例えば、図6に示すような、ガラス製の耐圧容器等を使用することができ、外部にコーティングが施されていてもよい
【0029】
耐圧透明容器12の本体12aは、図7にその詳細を示すように、回転子15を円滑に回転させることができるように、底面がほぼ平面状に形成されている。耐圧透明容器12は、光触媒16と、水素供与体17と、二酸化炭素ガス18を収容する。図6に示すように、耐圧透明容器12は、上部の蓋12cの下端部と本体12aの上端部がネジで嵌合するように形成されているので、容器に収容された内容物が内容物の回転によって漏出することはない。また、上部の蓋12cは、図3に示した反応容器と同様、容器内へ二酸化炭素ガスを圧入するためのシリンジ口と、圧入時のガス漏れを防止するためのシリコン栓、及びシリンジの挿入を調整するためのバルブを有している。バルブを左右いずれかに押すとバルブが開閉し、バルブを開いた状態でガスを圧入し、圧入後バルブを閉じることにより、容器内が密閉状態に保たれる。
【0030】
本発明の二酸化炭素固定化装置において、光触媒は、粒子径が小さくて表面積の大きい超微粒子状または取扱い性のよい粒状のものが好ましく用いられる。チタニアゾルなどの光触媒ゾルや、光触媒の水に分散させた分散体なども使用することができる。
【0031】
光触媒としては、特に限定されないが、紫外光領域に吸収を有する金属酸化物などが用いられる。例えば、アナターゼ型、ルチル型、あるいはブルッカイト型の二酸化チタン(TiO)、ガリウムリン(GaP)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO)、酸化第二鉄(FeO)、酸化タングステン(WO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等を使用することができる。好ましくは、プラズマ法や湿式法(アンモニア加水分解処理)などによる酸素欠陥型の酸化チタン光触媒(TiO2−x)(より好ましくは、アナターゼ型酸化チタン)、窒素ドープ法などによる窒素ドープ型酸化チタン光触媒(TiO2−x,x=N)(より好ましくは、アナターゼ型酸化チタン)、コロイド焼成法などによるPd、Pt、Au等の金属超微粒子担持酸化チタン触媒(より好ましくは、ルチル型酸化チタン)、イオン注入法や、金属ドープ法などによるV、Cr、Ni、Mn、Fe、W等の遷移金属注入型酸化チタン(より好ましくは、アナターゼ型酸化チタン)、マグネトロンスパッタ法などによる薄膜型酸化チタン光触媒などの可視光応答可能な酸化チタン光触媒がよい。また、CdS、Fe、硫化モリブデン、GaAs、WOなどの可視光応答性が良いが光触媒活性が弱いもしくは不安定な物質(単一もしくは複数)をHTiなどの半導体の層間に包接することで、活性を向上させた光触媒を用いることも考えられる。これらの光触媒は、一種又は複数種を適宜混合して用いてもよい。
【0032】
光触媒は、水素供与体に懸濁した状態で反応に供される。水素供与体としては、水及びメタノールの中から選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。水及びメタノールは、CO還元反応における水素供与体として作用する。水及びメタノールは単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。
【0033】
また、二酸化炭素固定化装置には少なくとも二酸化炭素を含むガスを供給する。供給ガスは、発電所の排ガス等であってもよい。ガスを供給する手段は、特に限定されないが、例えばシリンジなどを用いて供給する。
【0034】
二酸化炭素固定化装置への紫外線の照射出力は特に限定されず、適宜に決定するが、通常5W〜1kWである。
【0035】
反応開始時より、反応容器内を攪拌しながら所定時間反応させる。所定時間経過後、攪拌を停止し、反応容器から反応生成ガスを取り出して、ガスクロマトグラフィー(GC)等の分析装置を用いて生成ガスを同定、定量する。一方、水やメタノール中に溶存している反応生成物を同定、定量する。
【0036】
上記の一連の操作により、本発明の二酸化炭素固定化装置を用いて、二酸化炭素の固定化反応試験を実施することができる。
【0037】
図8は本発明の他の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。図8において、二酸化炭素固定化装置30は、筐体21と、筐体21の中に備えられた耐圧透明容器(反応容器)22と、該耐圧透明容器22を載置する回転磁場装置23と、該回転磁場装置23の両側面の筐体面に配置された光照射装置24とから構成されている。
【0038】
図8において光照射装置24を両側面に配置した以外、筐体21、耐圧透明容器22、攪拌磁場装置23、光照射装置24などは図5に示す場合と同様である。図8に示す二酸化炭素固定化装置においては、光が両側面から照射されるので、上面から照射する場合に比べて、光固定化反応を速やかに進行させることが可能となる。
【0039】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0040】
次に、本発明の二酸化炭素固定化装置を用いた二酸化炭素の固定化例について、更に具体的に説明する。
【0041】
(実施例1:スターラータイプ)
エポキシ樹脂でコーティングしてあるガラス製の反応容器(容量:50ml、外径:38mm、高さ:110mm)に、攪拌子と純水40mlとメタノール5mlを入れ、これに酸化チタン光触媒0.25gを懸濁させた後、シリンジを使用してサンプリングできるテフロン(登録商標)製の蓋を反応容器の上部に取り付け、図6に示す固定化反応容器を作製した。この容器を図9に示すガス圧入装置40に取り付け、容器上部にシリンジ41を差し込みシリンジ上流に接続してある真空ポンプにより容器内のガスを排出した。シリンジ上部の3方コックを切り替えることによりCOガスをシリンジから反応容器内に供給した。容器内部に残存している空気を除去するため、真空ポンプによる脱気、COガス注入を3回繰り返した後、反応容器内圧力を常圧に調整した。反応容器よりシリンジを抜き取り、反応容器上部バルブを閉にし、反応容器をガス圧入装置から取り外した。反応容器を固定化反応装置内部に設置してあるスターラーの上に置き、攪拌を行った。固定化反応装置上面に設置している高圧水銀ランプを発光させ(波長365nm、出力20W×6本)、反応装置内に紫外光を照射し、41時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。
【0042】
その結果、Hが1.79%、COが0.73%生成した。
【0043】
(実施例2:ローターミックス)
エポキシ樹脂でコーティングしてあるガラス製の反応容器(容量:9ml、外径:19mm、高さ:129mm)に、純水5mlを入れ、これに実施例1で用いたものと同じ酸化チタン光触媒0.5gを懸濁させた後、反応容器の上部にテフロン(登録商標)製の蓋をとりつけ、図3に示す反応容器を作製した。この容器をガス圧入装置に取り付け、容器上部にシリンジを差し込みシリンジ上流に接続してある真空ポンプにより容器内のガスを排出した。シリンジ上部の3方コックを切り替えることによりCOガスをシリンジから反応容器内に供給した。容器内部に残存している空気を除去するため、真空ポンプによる脱気、COガス注入を3回繰り返した後ガス圧入装置の上部の3方コックを開き、反応容器内を常圧に調整した。反応容器よりシリンジを抜き取り、容器上部バルブを閉にした。反応容器を図1に示す固定化反応装置内部に設置してあるロータリーミキサーに固定し21rpmの速度で、回転を行った。固定化反応装置上面に設置した高圧水銀ランプを発光させ(波長365nm、出力20W×4本)、反応装置内に紫外光を照射し、14時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0044】
(実施例3:ローターミックス)
純水の変わりに1mol/lの炭酸ナトリウム水溶液5mlを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で35時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0045】
(実施例4:ローターミックス)
純水を添加しない以外は、実施例2と同様の方法により、室温で27時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0046】
(実施例5:ローターミックス)
光触媒として硫黄をドープした可視光応答型酸化チタン光触媒0.5gを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で54時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0047】
(実施例6:ローターミックス)
実施例5で用いたものと同じ可視光応答型酸化チタン光触媒0.5gを使用し、純水の変わりに1mol/lの炭酸ナトリウム水溶液5mlを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で167時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0048】
(実施例7:ローターミックス)
エポキシ樹脂でコーティングしてあるガラス製の反応容器(容量:9ml、外径:19mm、高さ:129mm)に、メタノール5mlを入れ、これに実施例5で用いたものと同じ可視光応答型酸化チタン光触媒0.25gを懸濁させた後、テフロン(登録商標)製の蓋を取り付けた。この容器をガス圧入装置に取り付け、容器内部に残存している空気を除去するため、真空ポンプによる脱気、COガス注入を3回繰り返した。容器内圧力を1Mpaに調整後、シリンジを抜き取り、上部バルブを閉にした。反応容器を固定化装置内部に設置してあるロータリーミキサーに固定し21rpmの速度で、回転を行った。固定化反応装置上面に設置した高圧水銀ランプを発光させ(波長365nm、出力20W×4本)、反応装置内に紫外光を照射し、21日間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0049】
(実施例8:ローターミックス)
光触媒としてパラジウム1%を担持した酸化チタン光触媒0.25gを使用し、純水の変わりにメタノール5mlを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で90時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0050】
(実施例9:ローターミックス)
光触媒として白金1%を担持した酸化チタン光触媒0.25gを使用し、純水の変わりにメタノール5mlを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で90時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0051】
(実施例10:ローターミックス)
光触媒を使用しない以外は、実施例2と同様の方法により、室温で90時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0052】
(実施例11:ローターミックス)
光触媒を使用せず、純水の変わりにメタノール5mlを使用した以外は、実施例2と同様の方法により、室温で90時間、COの光固定化反応を行った。反応後、反応溶液及び反応容器内のガスを分析し、同定・定量した。その結果を表1に示した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から明らかなように、本発明の固定化装置を使用することにより、二酸化炭素の固定化反応が進行し、水素供与体や触媒、添加剤の有無ならびに種類が固定化反応に及ぼす影響を迅速に把握することができたので、スクリーニング実験に好適な装置であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。
【図2】図1に示す攪拌ロータ、及び、それに耐圧透明容器を取り付けた状態を示す拡大図である。
【図3】図1に示す耐圧透明容器の拡大図とその蓋廻りの部分拡大断面図である。
【図4】図3の耐圧透明容器に原料を充填したときの部分拡大図である。
【図5】本発明の実施例に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。
【図6】図5に示す二酸化炭素の固定化装置の耐圧反応容器を示す拡大図である。
【図7】図6の耐圧透明容器に原料を充填したときの部分拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る二酸化炭素固定化装置を示す外観図である。
【図9】ガス圧入装置の正面図である。
【符号の説明】
【0056】
10,20,30 二酸化炭素固定化装置
1 筐体
2 耐圧透明容器(反応容器)
3 攪拌ロータ
3a 回転軸
4 紫外線照射装置
5 光触媒
6 水素供与体
7 二酸化炭素ガス
11,21 筐体
12,22 耐圧透明容器(反応容器)
13,23 回転磁場装置
14,24 紫外線照射装置
15 回転子
16 光触媒
17 水素供与体
18 二酸化炭素ガス
40 ガス圧入装置
41 シリンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒の存在下、水素供与体と二酸化炭素ガスを原料として二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置であって、
筐体内に、
固定化反応用のそれぞれ独立した複数の耐圧透明容器と、
前記複数の耐圧透明容器を挟持して回転させる攪拌ロータとを備え、
前記攪拌ロータの回転軸と平行な筐体面に光照射装置を配置したことを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項2】
光触媒の存在下、水素供与体と二酸化炭素ガスを原料として二酸化炭素を固定化する二酸化炭素固定化装置であって、
筐体内に、
固定化反応用のそれぞれ独立した複数の耐圧透明容器と、
前記複数の耐圧透明容器を載置する回転磁場装置とを備え、
前記回転磁場装置の対面または側面となる筐体面に光照射装置を配置したことを特徴とする二酸化炭素固定化装置。
【請求項3】
水素供与体が、水及びメタノールの中から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の二酸化炭素固定化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−104027(P2006−104027A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294517(P2004−294517)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】