説明

二酸化炭素検出器を有する人工呼吸用の組立体

手動の呼吸回復装置のような人工呼吸用のバルブ組立体(1)は、このバルブ組立体上における溝(59)上に固定するよう構成したディスク型のハウジング(50)内に、二酸化炭素色変化インジケータ素子(52)を有する。呼気および吸気ガスを、2個の可撓性チューブ(60)および(61)を介してハウジングに供給し、これらバルブは、バルブ組立体(1)からインジケータのハウジング(50)まで互いに並置して延びて存在し、したがって、インジケータはバルブ組立体内に収納されず、必要に応じて配置を変えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択したガスの濃度変化の視覚的表示を与えるよう構成したハウジング内の、ガス検出素子を有する、種類のガス検出器に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は二酸化炭素を検出する検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
気管内チューブの使用に関連する主要な問題のうちの一つに、チューブの患者側端部を正確に気管内に配置し、食道内に配置しないようにすることを確実にすることがある。正確な挿管の検出を可能にするは様々な方法がある。一般的な方法としては、チューブの装置側端部を、二酸化炭素濃度に応答するカプノグラフに接続する方法がある。チューブが正確に挿管されれば、検出される二酸化炭素の濃度は、患者の呼吸に合わせて上下する。二酸化炭素の濃度変化が検出されれば、正確な挿管が行われたことを示す。チューブが正確に挿管されず食道内にあれば、消化器系により生じる二酸化炭素は、比較的一定の濃度となるだろう。カプノグラフは正確な挿管に関する信頼できる表示を与えるが、この設備は比較的大形で高価であるため、十分に設備の整った外科手術室でしか使用できない。
【0004】
化学的色変化インジケータまたは比色分析インジケータを有する代替的デバイスを使用して二酸化炭素を検出することができ、このようなインジケータとしては、例えば、特許文献1(国際公開第96/24054号)、特許文献2(欧州特許第509998号)、特許文献3(米国特許第5005572号)、特許文献4(米国特許第4879999号)、特許文献5(欧州特許第257916号)、特許文献6(米国特許第4691701号)、特許文献7(米国特許第4790327号)、特許文献8(国際公開第89/07956号)、特許文献9(英国特許第2218515号)、特許文献10(米国特許第6378522号)、特許文献11(米国特許第4728499号)などに記載のものがある。このデバイスの形態は、通常、pH−感応性表示染料を含む化学薬品を含浸もしくは被覆した紙または他のサブストレートを有し、そのサブストレートを、好適には、チューブの装置側端部に取り付けた、透過コネクタの何らかの形態として設ける。このようなインジケータは低価格であり、チューブが正確に挿管されたか否かを明確に表示することができる。インジケータが変色しない場合、臨床医はチューブが正確に挿管されていないことをただちに知ることができる。好適には、このインジケータは、呼気(高二酸化炭素濃度)および吸気のような新鮮なガス(低二酸化炭素濃度)に曝される度毎に、2つの異なる色間で変化し続けるよう構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第96/24054号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第509998号明細書
【特許文献3】米国特許第5005572号明細書
【特許文献4】米国特許第4879999号明細書
【特許文献5】欧州特許第257916号明細書
【特許文献6】米国特許第4691701号明細書
【特許文献7】米国特許第4790327号明細書
【特許文献8】国際公開第89/07956号パンフレット
【特許文献9】英国特許第2218515号明細書
【特許文献10】米国特許第6378522号明細書
【特許文献11】米国特許第4728499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インジケータを二酸化炭素の高濃度および低濃度の変化に曝して、交互の色変化を生じさせるために、インジケータを最大限によく見え、かつ呼気と新鮮な空気の双方に曝す位置に設置することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、この種のガス検出器を提供し、本発明ガス検出器は、第1ガスをハウジング内に供給して、ガス検出素子を第1ガスに曝すようにした第1供給構造体と、および第2ガスをハウジングに供給して、ガス検出素子を第2ガスに曝すようにした第2供給構造体とを設け、第1供給構造体および第2供給構造体は、ガス検出素子が曝される第1ガスおよび第2ガスの濃度が時間的に交互に変化するよう構成し、また第1供給構造体および第2供給構造体の少なくとも一方を可撓性のチューブとし、このチューブの一方の端部を前記ハウジングに開口させる構成としたことを特徴とする。
【0008】
ガス検出素子は、好適には、色変化素子を有するものとする。好適には、そのガス検出素子は二酸化炭素濃度に応答するものとする。第1供給構造体および第2供給構造体の双方は、それぞれ可撓性チューブを有するものとする。好適には、2個のチューブを互いに並置して延在させ、これらチューブの一方の端部をハウジングに開口させる。チューブまたは各チューブの他方の端部を、人工呼吸用のバルブ組立体に開口させることができる。代案として、第1および第2の供給構造体のうちの一方を可撓性のチューブとし、他方の供給構造をハウジングに開口する開孔として構成する。好適には、ハウジングは包囲した構成とし、ガス検出素子が見えるように透明部分を設ける。ハウジングを、人工呼吸用のバルブ組立体のような他の要素部品上に固定するよう構成する。好適には、そのハウジングはディスク型の形状にする。
【0009】
本発明による他の態様によれば、上述した本発明による態様によるガス検出器を有する、人工呼吸用のバルブ組立体を提供する。
【0010】
本発明によるガス検出器を有する呼吸用のバルブ組立体を、以下に添付図面につき、例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バルブ組立体の一部断面とする側面図である。
【図2】バルブ組立体の斜視図である。
【図3】他の実施形態によるバルブ組立体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および図2につき説明すると、バルブ組立体は、弾性手動呼吸回復圧搾用のバッグ4の出口3に接続する入口2を有するバルブ1を備える。このバルブ組立体は、さらに、バルブ1に接続した二酸化炭素ガス検出器5を有する。
【0013】
バルブ1は、可撓性のバルブ素子11を設けた上側チャンバ10を有する、普通の種類とし、バルブ素子11によりこの上側チャンバ10を下側チャンバ12から分離し、この下側チャンバ12に対して、雄形テーパ付きの出口接続部13を旋回可能継手によって取り付ける。出口接続部13は、フェイスマスクまたは気管チューブ接続部に接続し得るよう構成する。バルブ1は、さらに、下側チャンバ12に開口する排気ポート14を有する。バルブの動作は従来通りであるので、本明細書において詳細には説明しない。簡潔に説明すると、バッグ4を圧搾するとき、空気はバルブ素子11から出口接続部13を通過し、患者に空気を供給する。バルブ素子11は、吸気段階では排気ポート14を断絶するとともに、出口接続部13に空気が流れる。バッグ4を釈放すると、患者は息を吐き、呼気が出口接続部13から下側チャンバ12内に流入し、排気ポート14から外気へ流出する。
【0014】
ガス検出器5は、円筒状の内部空間51を有する円形断面のディスク型とした、透過プラスチック製のハウジング50を有する。普通の比色分析材料のインジケータディスク52をハウジング50内に取り付け、空間51内でガスに曝され、円形の上側窓53から、または上側窓および下側窓54の双方から見えるようにする。ハウジング50の下側面55には浅い窪み56を設け、下方に突出する周辺リム57に内向きのリップ58を設け、このリップ58は、バルブ1の上面周りの溝59に係合するスナップ嵌合部として構成する。このように、ガス検出器のハウジング50をバルブ1に対して、必要に応じて固定または釈放することができる。
【0015】
2個の可撓性のチューブ60および61の一方の端部を、片側がハウジング50内の空間51内に開口させ、またガス検出器のハウジング50をバルブ1に接続する。チューブ60および61は互いに並置して延びて存在(延在)し、好適には、その大部分の長さに渡り相互に結合する。一方のチューブ60の反対側端部を下側チャンバ12内またはバルブ1の別の部分に開口させ、患者の呼気に曝す。他方のチューブ61の反対側端部を上側チャンバ10内またはバルブの別の部分に開口させ、患者に供給される吸気ガスに曝す。
【0016】
バッグ4の圧搾により患者に空気が運ばれると、比較的二酸化炭素濃度の低いこの空気のごく微量が、ハウジング50内の空間51にチューブ61を経て流入する。したがって、インジケータディスク52は低濃度の二酸化炭素に曝され、それを示す色となる。バッグ4を釈放して患者が息を吐くとき、この呼気の一部がチューブ60を経て、ハウジング50内の空間51に流入し、この空間51内に存在する空気を押し出す。この呼気は比較的高濃度の二酸化炭素を含むため、インジケータディスク52は高二酸化炭素濃度を示す、異なる色に変化する。バッグ4を再び圧搾すると、空間51内のガスを押し出して、吸気ガスに入れ換わり、インジケータディスク52は再び元の色へと変化する。患者に繰り返し空気が供給されれば、インジケータディスク52は2つの色間で変化し続ける。
【0017】
この人工呼吸用のバルブ組立体を気管内チューブに使用し、この気管内チューブが正確に挿入されておらず気管でなく食道内にある場合、患者の呼吸系によって呼気は供給されず、低濃度の二酸化炭素のみが検出器50へと流れる。この結果、インジケータディスク52は一定の低CO 色を保ち、したがって、使用者には、チューブが正確に挿入されていないことが容易に分かる。同様に、フェイスマスクに使用するとき、患者が死亡し、肺内部で呼吸ガス交換が行われていないとき、一定の低CO 色を示すであろう。
【0018】
検出器50を呼気源に可撓性のチューブ60により、上述のように接続することによって、検出器を必要なガスに曝すことができるとともに、ガス源から離れた使用者に最も見やすい位置に設置することができる。検出器はバルブ1の上面に固定する、または都合のよい表面上に設置することができる。検出器は、このような表面上に固定できるように、粘着性の裏面を設けることができる。
【0019】
少なくとも呼気息源と相互作用するチューブがあれば、ガス検出器は2個のチューブに接続している必要はない。1個のチューブのみを使用するとき、呼吸作用の各呼気供給段階相互間において、呼気を流出させまた外気を流入させる小さなブリード孔を検出器のハウジングに設けることができる。図3に、1個のチューブ160のみを有する構成を示す。この構成において、チューブ160を出口接続部113に接続する。ガス検出器のハウジングは、上側チャンバに開口し吸気に曝されるバルブのハウジング内の開孔(図示せず)に連通する開口(図示せず)を有することができる。ガス検出器はバルブのハウジング上で開口の上方に固定し、順次の呼気段階相互で、呼気を押し出して吸気が検出器内へ流入する。このような構成では、呼気がチューブを介して検出器に流入し、吸気が代替ルートを介して流入することが分かる。
【0020】
比色分析インジケータを用いる代わりに、二酸化炭素を検出することができる種々の異なる方法がある。例えば、ナノミックス(NanoMix)社、イオン・オブティクス(Ion Optics)社、アスサマ・アラート(Asthma Alert)社、およびスマート・ホログラムズ(Smart Holograms)社は、代替の技術を提供している。
【0021】
本発明は、機械駆動式の呼吸回復装置(例えばガス駆動式呼吸回復装置)における人工呼吸用バルブに使用できるが、人工呼吸装置への使用に限定されず、他の用途にも使用可能である。二酸化炭素の代わりに他のガスの存在を検出するために、同様の検出器を使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択したガスの濃度変化の視覚的表示を与えるよう構成したハウジング(50)内の、ガス検出素子(52)を有するガス検出器において、第1ガスを前記ハウジング内に供給して、前記ガス検出素子を前記第1ガスに曝すようにした第1供給構造体(60,160)と、および第2ガスを前記ハウジング(50)に供給して、前記ガス検出素子(52)を第2ガスに曝すようにした第2供給構造体(61)とを設け、前記第1供給構造体および第2供給構造体(60,160および61)は、ガス検出素子(52)が曝される前記第1ガスおよび前記第2ガスの濃度が時間的に交互に変化するよう構成し、また前記第1供給構造体および第2供給構造体の少なくとも一方を可撓性のチューブ(60,160および/または61)とし、このチューブの一方の端部を前記ハウジング(50)に開口させる構成としたことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス検出器において、前記ガス検出素子は、色変化素子(52)を有することを特徴とする、ガス検出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガス検出器において、前記ガス検出素子(52)は、二酸化炭素濃度に応答することを特徴とする、ガス検出器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のガス検出器において、第1供給構造体および第2供給構造体の双方は、それぞれ可撓性のチューブ(60および61)を有することを特徴とする、ガス検出器。
【請求項5】
請求項4に記載のガス検出器において、2個のチューブ(60および61)を互いに並置して延在させ、これらチューブの一方の端部を前記ハウジング(50)に開口させたことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項6】
請求項4および5に記載のガス検出器において、前記チューブまたは各チューブ(60および61)の他方の端部を、人工呼吸器用のバルブ組立体(1)に開口させたことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項7】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のガス検出器において、前記第1および第2の供給構造体のうちの一方を可撓性のチューブ(160)とし、他方の供給構造体は前記ハウジング(50)に開口する開孔として構成したことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一項に記載のガス検出器において、前記ハウジング(50)は包囲した構成とし、前記ガス検出素子(52)が見える透明部分(53)を設けたことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載のガス検出器において、前記ハウジング(50)を他の要素部品(1)上に固定するよう構成したことを特徴とする、ガス検出器。
【請求項10】
請求項9に記載のガス検出器において、前記他の要素部品を人工呼吸用のバルブ組立体(1)としたことを特徴とするガス検出器。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項に記載のガス検出器において、前記ハウジングをディスク型の形状にしたことを特徴とするガス検出器。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項に記載のガス検出器を有する、人工呼吸用のバルブ組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−541768(P2009−541768A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517389(P2009−517389)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002383
【国際公開番号】WO2008/003928
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(501038551)スミスズ グループ ピーエルシー (26)
【氏名又は名称原語表記】SMITHS GROUP PLC
【Fターム(参考)】