説明

二重布

【目的】 粒体17を詰め込む袋18の資材や粒体17によって形成される成型品22の表面材や裏面材に使用する二重布を得る。
【構成】 一定の間隔Hをおいて重なり合う上布11と下布12の間をパイル糸13で接結してダブルパイル布帛原反構造とし、その経方向(S)または緯方向(G)において隣り合うパイル糸の根元14Aと根元14Bまたは14Cの間隔SまたはGを2cm以上にして二重布15を構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粒体を詰め込む袋、マットその他のクッション材の表面材、成形品の外面材等に使用する二重布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】穀物、樹脂ペレット、土砂等の粒体を詰め込む袋は、上下に重ね合わせて二重にした布帛の周縁を縫い合わせて構成されている。この種従来使用の袋では、縫い合わせた周縁の内側が周縁から周縁まで連続した空洞となっており、その空洞の中で詰め込まれた粒体が自由に移動し得るし、袋自体も折り畳んで任意の形状に変形し得る可撓なものであるから、粒体をいっぱい詰め込むと袋全体が丸く膨み、底が浅い短い袋は球形に近い形に変形してしまい、底が深く長い袋では柱形に近い形に変形し、又、詰め込む粒体が少ない場合には様々な形に変形する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】粒体をいっぱい詰め込んで丸く膨らんだ袋は、荷崩れが起き易いので高く積み上げることは出来ず、その収納倉庫には広いスペースを要し、トラックによる輸送には常に荷崩れの危険を伴う。そこで本発明は、粒体をいっぱい詰め込んでも丸く膨らまず、平らに膨らんで高く積み上げることの出来る袋を提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明に係る二重布15は、周縁16を閉じただけで袋とし得るものであり、一定の間隔Hをおいて重なり合う上布11と下布12の間をパイル糸13で接結してダブルパイル布帛原反構造とし、その経方向(S)または緯方向(G)において隣り合うパイル糸の根元14Aと根元14Bまたは14Cの間隔SまたはGを2cm以上としたことを特徴とするものである。そのように二重布15をダブルパイル布帛原反構造とするには、ダブルモケット織機、ダブルウイルトン織機、ダブルラッシエル経編機等の織機や編機によって上布11と下布12を上下二重に同時に織成または編成する過程において、パイル糸13を上布11と下布12に織または編み込み、その織または編み込むパイル糸13を上布11と下布12の間で移し変えて上布11と下布12を接結すればよい。
【0005】従来、このようなダブルパイル布帛原反は、その後、上布11と下布12の間でパイル糸13をカットして上布11と下布12を切り離し、その切断面をパイル面とするカットパイル布帛のカーペットやモケットを製造する中間製品として公知であり、カーペットやモケットはパイルが緻密なものであるから、上布11と下布12を接結するパイル糸13は、隣り合うパイル間に隙間を開けずパイルが相互に密着する程度に緻密に織または編み込まれている。従って、従来のカーペットやモケットの中間製品としてのダブルパイル布帛原反では、隣り合うパイル糸14(A・B・C)の間に粒体を詰め込むことは出来ない。本発明は、従来カーペットやモケットの中間製品として織・編成されるダブルパイル布帛原反を、粒体17を詰め込む袋物18の資材に利用しようとするものであり、その経方向(S)または緯方向(G)において隣り合うパイル糸の間14(A・B・C)を2cm以上に離し、そのパイル糸14の隙間19から上布11と下布12の空間20に粒体17を詰め込めるようにする。勿論、パイル糸13の経方向(S)と緯方向(G)の双方の間隔を2cm以上にすることも出来、寧ろ、そのように双方とも2cm以上にすることが望ましい。
【0006】二重布15は、所要の寸法に裁断し、周縁16で上布11と下布12を縫い合わせるか、又は周縁16に当て布21を縫い付けて袋物18に仕立て、上布11と下布12の間20に粒体17が詰め込んで使用される。その場合、上布11と下布12の間20に粒体17を詰め込んでから周縁16を縫い合わせてもよく、又、場合によっては周縁16を縫い合わせずにおくことも出来る。何故なら、例えば、発泡剤を含有する発泡性ポリスチレンビーズや発泡性ポリエチレンビーズの如く熱融着性を有する粒体17では、それを上布11と下布12の間20に詰め込んでから加熱発泡させると同時に発泡ビーズ間を融着し、上布11と下布12とで表裏が被覆された発泡成形品22を得ることも出来るからであり、そのように詰め込んだ粒体相互間を接着する場合は、二重布15の周縁16で上布11と下布12を縫い合わせることは必ずしも必要とされない。
【0007】そのように粒体相互間を接着するには、粒体16を詰め込んだ上布11と下布12の外から接着剤を浸透させてもよいし、粒体17と接着剤を混ぜ合わせて上布11と下布12の間に詰め込むことも出来、接着剤にはホットメルトパウダーのように粒状のものやラテックスその他の液状のものを使用することも出来、従って、上布11と下布12の間に詰め込む粒体17は、水やラテックス等に混合したデイスパージョンとして調製することも出来る。そのように詰め込んだ粒体相互間を接着する場合、二重布15を所要の立体構造を成す成型金形や成型枠のキャビテイにセットし、そのセットされたキャビテイ内の二重布15に粒体17を詰め込んで、二重布15と粒体17とが一体になった複雑な立体構造の成型品22を得ることも出来る。そのように詰め込む粒体17が上布11と下布12の間で拡散し易くするためにも、パイル糸13の経方向(S)と緯方向(G)の双方の間隔SとGを共に2cm以上にすることが推奨される。このパイル糸13の間隔S・Gは部分的に変化したものであってもよく、そのようにパイル糸13の間隔S・Gを部分的に変えるには、ダブルパイル布帛原反構造の織・編成過程において、一定間隔をおいてパイル糸13を上布11と下布12の間で移し変えて上布11と下布12を接結し、その移り変わる迄の一定間隔にわたって長くパイル糸13が上布11や下布12を構成する地経糸23と一緒に上布11や下布12の織・編組織を構成するようにする。その場合、2cm以上の一定間隔Gをおいて隣り合うパイル糸間の間隔が1〜5cm程度に緻密になるようにパイル糸の配列密度を変え、又は、2cm以上の一定間隔Sをおいて隣り合うパイル糸間が1〜5cm程度になるようにパイル糸を上布と下布の間で移動させて緻密に接結し、パイル糸間の経緯双方の間隔S・Gを部分的に変えることも出来る。
【0008】上布11や下布12の織・編地組織の経糸と緯糸の密度や編み目の密度は、詰め込む粒体17の粒径に応じ、布目や編目から粒体が抜け出さない程度に適宜設定される。上布11と下布12の間隔Hは、粒体17を詰め込んだ二重布15の用途に応じて適宜設定され、例えば、土砂を詰め込んで土嚢をつくる場合や穀物を詰め混んで貯蔵する場合や、スポンジの塊を詰め込んでクッション材をつくる場合には間隔Hを5〜20cmにすればよいし、粒体相互間を接着して厚み1〜5cmの成型品22をつくる場合にはその厚さに応じて1〜5cmに設定するとよい。
【0009】スポンジの塊を詰め込んでクッション材をつくる場合や粒体相互間を接着して成型品22をつくる場合には、それらの製品(18・22)の表裏の意匠や物性を変えるために、上布11と下布12の地経糸23や地緯糸24の色彩や太さ、繊維素材、織・編密度、織・編地組織を変えることも出来る。
【0010】
【発明の効果】本発明の二重布15は、その全面において上布11と下布12がパイル糸13によって接結されているので、上布11と下布12の間にいっぱい粒体17を詰め込んでも丸く膨らむことがなく、その接結するパイル糸13に上布11と下布12が連結されて平行状態に保たれ、その粒体17を詰め込んだ二重布15の荷姿が平板な厚板状になるので、それを高く積み上げても荷崩れが起き難く、従って、ピラミッド形にではなく立方体形に高く積み上げて粒体17を貯蔵することが出来、そうすることによってトラック等への積載量を増し、又、その保管倉庫ではスペースを有効に活用することが出来る。
【0011】そして、そのように粒体17をいっぱい詰め込んだ場合に生じる二重布15の内部圧力は、二重布15の全面に分布する無数のパイル糸13に分散され、又、それらのパイル糸13が上布11と下布12に織り込まれて上布11と下布12の織・編地組織の一部を構成しているので、その各パイル糸に作用する内部圧力は、上布11や下布12を構成する地経糸23や地緯糸24に分散されて上布11や下布12に吸収されることになる。このため、パイル糸13が切断されたり上布11や下布12が破れたりせず、粒体17を詰め込んだ二重布15の荷姿は平板な厚板状に維持されることになる。
【0012】又、本発明によると、詰め込んだ粒体17を接着固定して表裏が布地11・12で被覆された成型品22を得ることも出来、そのようにして得られる成型品22は表裏がパイル糸13で連結されているので、仮令単に粒体17を接着固定して成形しただけでは脆弱で層内剥離が起き易い成形品しか得られないような場合でも、強度的に優れた成型品22を得ることが出来る。
【0013】このように本発明に係る二重布15は、粒体17を詰め込む袋18の資材として、又、粒体17によって形成される成型品22の表面材や裏面材として頗る好都合である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重布の断面透視図である。
【図2】本発明に係る二重布の斜視図である。
【図3】本発明に係る二重布によって構成された袋物の斜視図である。
【図4】本発明に係る二重布によって構成された成形品の斜視図である。
【符号の説明】
11 上布
12 下布
13 パイル糸
14 根元
15 二重布
16 周縁
17 粒体
18 袋物
19 隙間
20 空間
21 当て布
22 成型品
23 地経糸
24 地緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一定の間隔Hをおいて重なり合う上布11と下布12の間をパイル糸13で接結してダブルパイル布帛原反構造とし、その経方向(S)または緯方向(G)において隣り合うパイル糸の根元14Aと根元14Bまたは14Cの間隔SまたはGを2cm以上とした二重布。
【請求項2】 前掲請求項1に記載の二重布15の周縁16における上布11と下布12の間の隙間を塞いで構成される袋物。
【請求項3】 一定の間隔Hをおいて重なり合う上布11と下布12の間をパイル糸13で接結したダブルパイル布帛原反構造の二重布15の上布11と下布12の間の空間20に粒体17を詰め込んで構成されるクッション材。
【請求項4】 一定の間隔Hをおいて重なり合う上布11と下布12の間をパイル糸13で接結したダブルパイル布帛原反構造の二重布15の上布11と下布12の間の空間20に粒体17が詰め込まれており、その粒体相互間が接着している成形品。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate