説明

二重管冷陰極蛍光ランプ

【課題】冷陰極蛍光ランプ1を別のガラス管2で覆い、隙間を真空断熱層3として、両端を封止した構造の二重管冷陰極蛍光ランプの課題は、第1に、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁とが接触して、真空断熱層3の断熱効果が消失するのを防止することと、第2に、ガラス管の第一封止部21の加熱封止が、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担となり、クラック等の封止破壊が発生するのを防止することである。
【解決手段】第1の課題の解決手段は、真空断熱層3のスペーサ手段として、冷陰極蛍光ランプ1の外周にコイルばね32を巻き付けることである。第2の課題の解決手段は、ガラス管の第一封止部21に、予めフリットガラス24を塗布し仮焼成した上で、大気圧中での加熱封止を行うことで、加熱を通常よりも短時間として、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担を軽減することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルのバックライト等に利用される冷陰極蛍光ランプに関するものであり、詳細には、冷陰極蛍光ランプの低温時における点灯性能を改善するために開発された二重管冷陰極蛍光ランプに係るものである。
【背景技術】
【0002】
冷陰極蛍光ランプは、液晶パネルのバックライト用等に大量に利用されているが、低温時における点灯性能が悪いため、例えば、自動車の計器盤のバックライト用では、冷陰極蛍光ランプの外周に、ヒータ線を巻いているのが現状である。二重管冷陰極蛍光ランプは、冷陰極蛍光ランプの低温時における輝度の向上と、輝度の立上がり時間の短縮のために開発されたものであり、寒冷地向けの液晶パネルのバックライト用、自動車の計器盤のバックライト用として、新たな利用が期待される技術である。
【0003】
特許文献1に開示された公知の二重管冷陰極蛍光ランプの概要は、図5に示す様に、冷陰極蛍光ランプ1の外周を、別のガラス管2で覆い、隙間を真空断熱層3として、ガラス管の第一封止部21及び第二封止部22を加熱封止した構造となっている。その特徴は、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁とが接触して、真空断熱層3の断熱効果が消失することを防止するために、真空断熱層3の隙間に、スペーサ手段として、キャップコントロール材31を配置していることである。
【0004】
尚、特許文献1には記載されていないが、キャップコントロール材31の材質としては、耐熱性と機械的強度に優れ、真空中で有害ガスを放出しないことから、ガラスビーズが最適であり、現在、それ以外の材質は考えにくい。しかしながら、ガラスビーズは非常に高価であり、量産には適さないので、別の材質を開発することが必要である。
【0005】
又、特許文献1には記載されていないが、真空断熱層3を真空にする前に、ガラス管の第一封止部21を大気圧中で加熱封止する際、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11に再加熱負担が生じることとなり、クラック等の封止破壊が発生し、リークやスローリークの原因となり、生産の歩留りを著しく低下させるので、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担を軽減するための手段を講じることが必要である。
【0006】
ここで、通常の冷陰極蛍光ランプ1の構造について簡単に説明する。図5に示す様に、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11及び第二封止部12に、一対の電極付リード線13が封着されていて、図示していないが、内壁には蛍光体塗膜が形成され、内部にアルゴンガスとネオンガスの混合ガスが封入された構造となっている。
【特許文献1】特開平11−7917
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の冷陰極蛍光ランプの外周を、別のガラス管で覆い、隙間を真空断熱層として、両端を封止した構造の二重管冷陰極蛍光ランプにおいて、本発明が解決しようとする第1の課題は、冷陰極蛍光ランプの外壁とガラス管の内壁とが接触して、真空断熱層の断熱効果が消失することを防止するための手段を講じることである。
【0008】
本発明が解決しようとする第2の課題は、真空断熱層を真空にする前に、ガラス管の片側の封止部を大気圧中で加熱封止する際、封止完了までに時間が掛かるため、冷陰極蛍光ランプの封止部に再加熱負担が生じることとなり、クラック等の封止破壊が発生し、リークやスローリークの原因となり、生産の歩留りを著しく低下させることとなるので、冷陰極蛍光ランプの片側の封止部の再加熱負担を軽減するための手段を講じることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した第1の課題を解決するための手段(第1の発明)は、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差が、0.3mmから0.5mmとなる様に、それぞれの管径を選定した上で、図1に示す様に、真空断熱層3のスペーサ手段として、冷陰極蛍光ランプ1の外周に、線径が0.1mmから0.2mmのコイルばね32を巻き付けた上で、二重管冷陰極蛍光ランプを組み立てることであり、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁との隙間が、少なくとも0.1mm以上に保たれることとなり、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁との接触による真空断熱層3の断熱効果の消失を防止できるものである。
【0010】
第2の課題を解決するための手段(第2の発明)は、図2に示す様に、大気圧中で封止するガラス管の第一封止部21に、予めフリットガラス24(低融点ガラス)を塗布し、仮焼成した上で、図3に示す様に、ガラス管2内へ冷陰極蛍光ランプ1を挿入して、ガラス管の第一封止部21を大気圧中で加熱封止することであり、フリットガラス24の塗布効果により、ガラス管の第一封止部21の加熱が、通常よりも短時間となり、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担が軽減されることから、リークやスローリークの原因となるクラック等の封止破壊の発生を防止できるものである。
【0011】
尚、ガラス管の第二封止部22については、図4に示す様に、真空断熱層3を真空ポンプで排気しながら、内部を真空にした状態で加熱封止するので、外気圧に押されて短時間で封止されることとなり、冷陰極蛍光ランプの第二封止部12の再加熱負担は非常に少ないものとなり、リークやスローリークの原因となるクラック等の封止破壊は発生しない。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明の効果は、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差が0.3mmから0.5mmとなる様に、それぞれの管径を選定した上で、図1に示す様に、冷陰極蛍光ランプ1の外周に、真空断熱層3のスペーサ手段として、線径が0.1mmから0.2mmのコイルばね32を巻き付けてから、二重管冷陰極蛍光ランプを組み立てることで、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁との隙間が、少なくとも0.1mm以上に保たれることとなり、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁との接触による真空断熱層3の断熱効果の消失を、高価なギャップコントロール材を使わずに、低コストで防止できるという効果を奏するものである。又、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差を0.3mmから0.5mmとすることで、市場の要求に応え、ガラス管2の外径をできるだけ小さくするという効果を奏するものである。
【0013】
第2の発明の効果は、図2に示す様に、ガラス管の第一封止部21に、予めフリットガラス24を塗布し,仮焼成した上で、図3に示す様に、ガラス管2内へ冷陰極蛍光ランプ1を挿入し、ガラス管の第一封止部21を大気圧中で加熱封止することで、フリットガラス24の塗布効果により、ガラス管の第一封止部21の加熱が、通常よりも短時間となり、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担が軽減され、リークやスローリークの原因となるクラック等の封止破壊の発生を防止でき、生産の歩留りを向上させるという効果を奏するものである。
【0014】
即ち、公知の二重管冷陰極蛍光ランプの生産コストが、ギャップコントロール材の高コストと、歩留りの問題で、通常の冷陰極蛍光ランプのコストの略2倍となってしまうのに対し、本発明による二重管冷陰極蛍光ランプは、第1の発明と第2の発明により、低コストで歩留り良く生産できるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態は、通常の冷陰極蛍光ランプ1の外周を、別のガラス管2で覆い、隙間を真空断熱層3として、両端を封止した構造の二重管冷陰極蛍光ランプにおいて、図1に示すとおりの二重管冷陰極蛍光ランプの構造とすることである。即ち、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差が0.3mmから0.5mmとなる様に、それぞれの管径を選定した上で、図1に示す様に、真空断熱層3のスペーサ手段として、冷陰極蛍光ランプ1の外周に線径が0.1mmから0.2mmのコイルばね32を巻き付けるものとし、又、図2に示す様に、ガラス管の第一封止部21に予めフリットガラス24を塗布し、仮焼成した上で、図3に示す様に、ガラス管2内へ冷陰極蛍光ランプ1を挿入して、ガラス管の第一封止部21を大気圧中で加熱封止するものとし、あとは、公知のとおり、図4に示す様に、真空断熱層3を真空ポンプで排気しながら、ガラス管の第二封止部22を加熱封止した上で、ガラス管の排気管部23を切除するものとして、図1に示すとおりの二重管冷陰極蛍光ランプの最良の形態を構築するものである。
【0016】
では、本発明を実施するための最良の形態について、更に詳細に説明する。
はじめに、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差が0.3mmから0.5mmとなる様に、それぞれの管径を選定する目的は、真空断熱層3の必要な隙間を確保しつつ、市場の要求に応えて、ガラス管2の外径をできるだけ小さくするためである。
【0017】
又、図1に示す様に、真空断熱層3のスペーサ手段として、冷陰極蛍光ランプ1の外周に線径が0.1mmから0.2mmのコイルばね32を1個、又は、冷陰極蛍光ランプ1の全長が長い場合は間隔を開けて複数個(図示省略)巻き付けた上で、図3に示す様に、ガラス管2内へ冷陰極蛍光ランプ1を挿入することにより、冷陰極蛍光ランプ1の外径とガラス管2の内径との差を0.3mmから0.5mmとすることとの相乗効果により、ガラス管2内への冷陰極蛍光ランプ1の挿入が容易であって、しかも、真空断熱層3の隙間が少なくとも0.1mm以上に保たれることとなり、冷陰極蛍光ランプ1の外壁とガラス管2の内壁との接触による真空断熱層3の断熱効果の消失を防止できるものである。
【0018】
ここで、コイルばね32について、更に詳細に説明する。コイルばね32の主な仕様は、線材としては、ステンレス等の比較的熱伝導率の低い材質を選定し、ばねが伸びたときを安定状態として、コイルの内径を冷陰極蛍光ランプ1の外径よりやや小さいものとする。コイルばね32を圧縮し、内径が大きくなった状態で、冷陰極蛍光ランプ1を挿入して、圧縮を解放することで、コイルばね32は冷陰極蛍光ランプ1を軽く締め付けた状態で安定状態となる。即ち、熱伝導率の低いコイルばね32は、冷陰極蛍光ランプ1とは概略密着状態となるが、接触面積の非常に少ない線接触となり、又、ガラス管2の内壁とは密着せずに部分的線接触となることから、コイルばね32の熱伝導によって、真空断熱層3の断熱効果が妨害されることはほとんどないこととなる。
【0019】
次に、図3に示す様に、真空断熱層3を真空にする前に、ガラス管の第一封止部21を、大気圧中でガスバーナー等により加熱封止する際、封止完了までに時間が掛かるため、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11に再加熱負担が生じることとなり、クラック等の封止破壊が発生し、リークやスローリークの原因となり、生産の歩留りを著しく低下させることとなるので、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担を軽減することが必要であり、その解決手段について説明する。
【0020】
ガラス管の第一封止部21の大気圧中での加熱封止に関しては、封止完了までに時間が掛かるために、その間の冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担は非常に大きいものとなる。そこで、図2に示す様に、ガラス管の第一封止部21に、予めフリットガラス24を塗布し、仮焼成した上で、図3に示す様に、ガラス管2内へ冷陰極蛍光ランプ1を挿入して、ガラス管の第一封止部21を大気圧中でガスバーナー等により加熱封止することで、フリットガラス24の塗布効果により、ガラス管の第一封止部21の加熱が、通常よりも短時間となり、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担は軽減されることとなる。
【0021】
ここで、大気圧中で加熱封止を行う封止部に、予めフリットガラスを塗布することの必要性について、更に詳細に説明する。例えば、平面蛍光ランプの様な封止面積の大きい平面状の封止部については、予めフリットガラスを塗布した上で、加熱封止するという生産技術が一般常識であるが、丸管の冷陰極蛍光ランプの様な封止面積の小さい管状の封止部については、予めフリットガラスを塗布することは、不必要であるというのが一般常識である。即ち、管状の封止部については、本発明による二重管冷陰極蛍光ランプにおいて、冷陰極蛍光ランプの第一封止部11の再加熱負担を軽減するために、ガラス管の第一封止部21に予めフリットガラス24を塗布することを、必要不可欠な生産技術として、初めて採用したものであり、前例のない生産技術である。
【0022】
おわりに、ガラス管の第二封止部22の加熱封止について説明する。公知のとおり、図4に示す様に、ガラス管の第二封止部22は、真空断熱層3を真空ポンプで排気しながら、内部を真空にした状態で、ガスバーナー等により加熱封止するので、外気圧に押されて短時間で封止され、冷陰極蛍光ランプの第二封止部12の再加熱負担は非常に少ないものとなり、クラック等の封止破壊は発生しない。尚、ガラス管の排気管部23は、ガラス管の第二封止部22の加熱封止完了後、カッター等を使って切除するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0023】
低温時における点灯性能を改善した二重管冷陰極蛍光ランプは、寒冷地向けの液晶パネルのバックライト用として、又、自動車のナビゲーターや計器盤のバックライト用として、産業上大いに利用されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による二重管冷陰極蛍光ランプの説明図である。
【図2】ガラス管にフリットガラスを塗布した状態を示す本発明の説明図である。
【図3】大気圧中でガラス管を加熱封止する状態を示す本発明の説明図である。
【図4】排気しながらガラス管を加熱封止する状態を示す本発明の説明図である。
【図5】公知の二重管冷陰極蛍光ランプの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 冷陰極蛍光ランプ
11 冷陰極蛍光ランプの第一封止部
12 冷陰極蛍光ランプの第二封止部
13 一対の電極付リード線
2 ガラス管
21 ガラス管の第一封止部
22 ガラス管の第二封止部
23 ガラス管の排気管部
24 フリットガラス
3 真空断熱層
31 ギャップコントロール材
32 コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の冷陰極蛍光ランプ(1)の外周を、別のガラス管(2)で覆い、隙間を真空断熱層(3)として、両端を封止した構造の二重管冷陰極蛍光ランプにおいて、冷陰極蛍光ランプ(1)の外径とガラス管(2)の内径との差が0.3mmから0.5mmとなる様に、それぞれの管径を選定した上で、真空断熱層(3)のスペーサ手段として、冷陰極蛍光ランプ(1)の外周に、線径が0.1mmから0.2mmのコイルばね(32)を1個、又は、間隔を開けて複数個巻き付けたことを特徴とする二重管冷陰極蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−180042(P2007−180042A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−24812(P2007−24812)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(503445814)
【Fターム(参考)】