説明

二重管放電ランプの製造方法

少なくとも二つのチューブ又はバルブを有する放電ランプが開示される。このランプは、特に、例えば自動車のヘッドランプに使用されるような高強度の放電ランプであり、アーク放電チャンバを囲む内側チューブ又はバルブと内側チューブ又はバルブを密閉して囲む外側チューブ又はバルブ(30)を有し、少なくとも一つの端部において二つのチューブを固定又は取り付けるための少なくとも一つの2−ステップピンチング及び/又はロールオンプロセスを使用する簡単で信頼性のある方法で、前記外側チューブは又はバルブ(30)の内側ボリュームは排気又はガスが充填され、第1のステップにおいては、前記固定は、前記外側チューブ(30)の内側ボリュームと前記内側チューブ又はバルブの軸方向端部(8)の外側とのの間で、少なくとも実質的にランプの軸方向に前記内側ボリュームを排気又はガスを充填するための通路(20)が残るようにして前記固定が行われ、第2のステップにおいて、第2のピンチング又はロールオンプロセスを実行することにより前記通路が密封して閉鎖される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ、特に自動車のヘッドランプに使用される高強度の放電ランプの製造方法に関し、放電ランプは、放電チャンバ(放電ベッセル)を囲む少なくとも一つの第1内側チューブ(又はバルブ)と、内側ボリュームと第1内側チューブを封止して囲む第2外側チューブを有し、前記第2外側チューブの内側ボリュームが排気又はガスが充填されている。
【背景技術】
【0002】
二重管放電ランプとすることは、いくつかの利点又は理由がある。ランプの効率を改善するところの放電ガスを囲む内側バルブの熱絶縁を別にして、外側バルブは機械的に内側バルブを保護し、周囲からの汚染が内側バルブ(バーナー)の高温領域に達することを防止することができる。外側チューブの他の目的は、例えば、もし、合成の又は他のUVに反応し易い材料が存在する場合、ランプの周囲をUV線に対して保護するために放射する輻射線をフィルタリングすることを可能とすることである。
【0003】
特に、自動車用のランプに使用するとき、第2チューブ内のボリュームはガス(又は空気)で満たされる。しかしながら、ランプを製造する間、外側チューブを加熱し、閉鎖するプロセスのため、ガスはかなりの水蒸気を含むことがあり得る。更に、加熱プロセスの設定に依存するため、ガスの圧力が確定しない。これらの両方の事実は、有害であり、例えば、保守、光束等のランプ特性に付加的に拡散する。従って、外側チューブ内のガス充填圧と同様に成分についても制御することが要請される。
【0004】
米国特許出願 US 2004/0253897 A1(特許文献)は、二重管放電ランプの製造方法を開示しており、この方法では、横断するポンピングホールが、内側チューブの軸方向封止部分に続くスリーブ状の延長部内に、レーザにより形成される。ランプの外側チューブは、ポンピングホールを有する延長部において適宜の形状のロールによって固定され、このホールは外側チューブと内側チューブの間の空間に開口した状態を保つようにしている。スリーブ状延長部の軸方向開口端部に固定されるポンピングと充填システムにより、外側チューブと内側チューブの間の雰囲気はポンピングホールと延長部の内側ボリュームを介して排出される。この後、ポンピングホールは、例えば、更なる加熱及びロールにより、或いは、減圧下で局部的に加熱した後にホール内に材料を滴下することにより閉じられる。
【0005】
しかしながら、スリーブ状の延長部を設け、内側チューブの封止部に隣接した近傍に横断するポンピングホールを形成することは、例えば、ホールを形成するときに過度の局部的温度差により破損する等、延長部及び/又は封止部に損傷を与えるというリスクを引き起こすために不利となると考えられている。
【特許文献1】米国特許出願 US 2004/0253897 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より簡単な方法及び/又はランプの部品に損傷を与えるリスクを顕著に軽減することのできる、二重管放電ランプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、請求項1に記載の少なくとも第1の内側チューブと内側ボリュームと内側チューブを囲む第2外側チューブを備える放電ランプの製造方法によって解決され、この方法は、少なくとも一方の軸方向端部において両方のチューブを固定するための、少なくとも一つの2ステップのピンチング及び/又はロールオンプロセスを有し、第1のステップにおいて、前記固定が、前記第2外側チューブの内側ボリュームとランプの外側との間で、少なくともランプの実質的に軸方向に延び、前記内側ボリューム部が排気され、及び/又はガスが充填されるための通路が残るようにして行われ、第2のステップにおいて、前記通路が第2のピンチング又はロールオンプロセスを行うことにより密封状態に閉じられる。
【0008】
この方法は、ランプのいかなる部分にも余分なホールを形成する必要がないという利点を有し、これによって、そのようなホールの形成によるランプの損傷のリスクがなくなる。更に、外側チューブに必要な混合ガスを充填する方法を簡単にすることができる。
【0009】
従属請求項は本発明の有利な実施例を記載するものである。
【0010】
請求項2から5は、どのようにして第1及び第2のステップが有利に行われるかを記載している。
【0011】
請求項6は、外側チューブの内側ボリュームに充填する有利なステップを記載している。
【0012】
請求項7及び8は前記通路を閉鎖するための有利なステップを開示している。
【0013】
本発明は、更に、少なくとも第1内側チューブと内側ボリュームと内側チューブを囲む第2外側チューブとを有する本発明の方法によって製造される放電ランプに関するものである。
【0014】
更なる実施例においては、本発明は、また、ピンチング又はロールオンプロセスを実行するためのピンチング又はロールオンブロックに関するものであり、このピンチング又はロールオンブロックは、ピンチング又はロールオンの半割体のそれぞれの開口領域に非対称的に延びる開口を有し、ピンチング又はロールオンブロックは、特に、本発明の方法に使用されるものである。
【0015】
更なる本発明の詳細な説明と利点は図面を参照して記載される下記の好ましい実施例から明らかになるであろう。
【0016】
図1は、二重管放電ランプの主部分の模式的軸方向断面図であり、
図2は、先行技術のピンチングブロックの模式的断面図であり、
図3は、二重管放電ランプの第1の軸方向端部の断面図であり、
図4は、二重管放電ランプの第2の軸方向端部の断面図であり、
図5は、本発明による第1のピンチングブロックの模式的断面図であり、
図6は、本発明による第2のピンチングブロックの模式的断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は第1内側チューブ1と、第1内側チューブ1を囲む第2外側チューブ30を有する二重管放電ランプの主要部の長手方向の模式的断面を示す。
【0018】
第1内側チューブ1は放電ガスを有する放電チャンバ2を囲んでいる。放電チャンバ内に延びている第1及び第2の電極3,4の対向する端部間においてガス放電アークが励起される。
【0019】
第2外側チューブ30は内側ボリューム31を密封状態に囲み、そのボリュームはガス又は乾燥空気により充満され、或いは、内側ボリュームは排気される。更に、第2外側チューブ30は、第1内側チューブ1を囲み、また同時に第1内側チューブ1の第1及び第2軸方向封止部5,6、前記第1及び第2封止部5,6の夫々から連続し、第2外側チューブ30内の内側ボリューム31を通りランプの外側に至る第1及び第2軸方向延長部7,8を囲んでいる。
【0020】
第1及び第2の電極3,4は第1及び第2の封止部5,6を夫々通過して延び、第1及び第2のフォイル9,10を経てそれぞれ第1及び第2の導電体11,12に接続されており、これらの導電体は第1及び第2の延長部7,8を通して通常の外部電源(図示せず)と接続するためにランプの外部に引き出される。
【0021】
このようなランプを製造するとき、第1内側チューブ1は、第1内側チューブ1を両方の端部で密封状態で閉じ、封止部分5,6内をフォイル9,10を介してそれぞれ導電体11,12に接続するため、加熱又はピンチングプロセス及び/又は加熱及びロールオンプロセスを使用して製造される。
【0022】
長手方向の開口52を囲む関連するピンチングブロック50,51が図2にその断面が概略的に示されており、これにより、封止部5,6において、第1及び第2のピンチング(又はロールオン)領域P1,P2が、それぞれ、対応する平坦な断面と共に得られる。
【0023】
次に、第1内側チューブ1は適宜の形状と大きさを持ち(例えば、円筒)、第1及び第2の軸方向端部を持つ第2外側チューブ30の中に導入される。ランプの第1の軸方向端部において、第2外側チューブ30の第1の端部は内側チューブ1の第1延長部7において他の加熱とピンチングプロセス及び/又は加熱とロールオンプロセスによって既知の方法で第3のピンチング又はロールオン領域P3を得るために封止状態に固定される。図3は図1の線A−Aからの断面を模式的に示し、これは第2外側チューブ30の第1端部が封止状態で第1導電体11が内部を通過する第1延長部7を囲んでいる状態を示している。
【0024】
ランプの他端においては、第2外側チューブ30の第2端部が、第4のピンチング又はロールオン領域P4において2つの連続するステップとして実行される加熱及びピンチングプロセス及び/又は加熱及びロールオンプロセスによって第2延長部8に封止状態で固定される。
【0025】
このような第1のステップにおいては、上記の固定又は取り付けは、第2外側チューブ30と第2延長部8との間の通路又は穴20が開口した状態で、また、ランプの外側から内側ボリューム部31内へ少なくとも軸方向に延びるようにして行われる。
【0026】
その穴20は図1(穴20は図示されていない)の線B−Bからの断面図として図4に模式的に示されており、例えば、平坦な断面形状をしている。穴20は、好ましくは、ロールオンプロセスにより形成され、このプロセスは、図5に断面が示されているように、第1のピンチングブロックの半割体に関して非対称的に延びる開口53,54を囲む、第1の改変された又は延長されたピンチングブロック53,54によって行われ、これによって、ロールオンにより、第1のピンチングブロック53,54は第2外側チューブ30の第2端部を第2延長部8の周りで完全に閉じることなく、それらの間に穴20が残った状態となる。
【0027】
これを達成するため、第1のピンチングブロックは、開口20aがその領域に関して非対称的に第1ピンチングブロックの第1及び第2の半割体53,54内へ導入されるようにして形成される。図5に示されるように、第1半割第53は第2半割体54より、より小さい開口20aを有している。
【0028】
第1のピンチングブロック53,54は、全体として少なくとも実質的に円形の第4のピンチング領域P4の断面が図4に従って得られるような開口を持つものが使用されることが好ましい。
【0029】
開口20aの断面形状は、好ましくは、所望の穴20の断面の形状と大きさを得るように、第2延長部8の断面に応じて選択される。特に、第2延長部8が第2封止部6に隣接する加熱とピンチングプロセス及び/又は加熱とロールオンプロセスによって形成又は予備形成されるときは、穴20の断面の所望の形状及びサイズが高い信頼性で得ることができる。
【0030】
引き続いて、内側ボリューム部31は排気され、例えば、所望の混合ガス又は乾燥空気が穴20を通して充填される。
【0031】
これを実現するため、ランプは好ましくはスルース内に導入される。スルースを排気することにより、外側チューブ30の内側ボリューム31は排気される。次に、ランプはスルースから特定の圧力を持つ所望の混合ガスを含むチャンバに移される、これにより、ガスが外側チューブ30の内側ボリューム31内に入る。外側チューブ30の内側ボリューム31内の混合ガスと圧力を保つために、ランプは、穴20が閉じられるまで、チャンバ内にとどめておくことが好ましい。このチャンバ内においては、外側チューブ30は、加熱とピンチングプロセス及び/又は加熱とロールオンプロセスによる第2ステップによって完全に閉鎖される。
【0032】
この第2のステップにより、穴20は、図6に断面が模式的に示されるような開口57を持つ第2ピンチングブロック55,56(特に、第3のピンチング又はロールオン領域P3におけるピンチングプロセス及び/又はロールオンプロセスに使用されてきた通常のロールオン装置)を使用して行われるロールオンプロセスによって完全に封止状態で封鎖され、これによって、局部的加熱及びロールオン(又は加熱とピンチング)により、第2外側チューブ30の第2端部が、穴20が封止され、それにより第4のピンチング又はロールオン領域P4が完了するようにして、第2延長部8の周りで完全に閉じられる。
【0033】
この第2ステップの設定は、穴20を閉じるのに必要なエネルギー量だけがロールオン領域に供給され、ランプの温度を最小値を超えて増加させることがないようにして適合されることが好ましい。これを達成するため、好ましくは、レーザ又はプラズマが第2のステップの熱源として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】二重管放電ランプの主部分の模式的軸方向断面図である。
【図2】先行技術のピンチングブロックの模式的断面図である。
【図3】二重管放電ランプの第1の軸方向端部の断面図である。
【図4】二重管放電ランプの第2の軸方向端部の断面図である。
【図5】本発明による第1のピンチングブロックの模式的断面図である。
【図6】本発明による第2のピンチングブロックの模式的断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の内側チューブと、内側ボリュームと前記内側チューブを囲む第2外側チューブを備える放電ランプの製造方法であって、少なくとも一方の軸方向端部において両方のチューブを固定するための、少なくとも一つの2−ステップのピンチング及び/又はロールオンプロセスを有し、第1のステップにおいて、前記固定が、前記第2外側チューブの内側ボリュームとランプの外側との間で、少なくともランプの実質的に軸方向に延び、前記内側ボリューム部が排気され、及び/又はガスが充填されるための通路が残るようにして行われ、第2のステップにおいて、前記通路が第2のピンチング又はロールオンプロセスを行うことにより密封状態に閉じられるようにした放電ランプの製造方法。
【請求項2】
前記第1のステップは、ブロックの半割体の開口領域へ非対称に延びる開口を囲む第1ピンチングブロック又はロールオンブロックによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のステップは、ブロックの半割体の開口領域へ対称的に延びる開口を囲む第2ピンチングブロック又はロールオンブロックによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のステップはピンチングプロセスである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のステップはロールオンプロセスである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のステップの後に、前記通路を閉じるための第2のステップを実行するため、ランプが、前記内側ボリュームを排気及び/又は前記内側ボリュームにガスを充填するためのチャンバ内に導入される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2ステップにおいて、前記通路の閉鎖の信頼性を高めるために必要とされる範囲のみでロールオン領域が加熱される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
加熱はレーザ又はプラズマバーナーにより行われる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも第1の内側チューブと、内側ボリュームと前記内側チューブを囲む第2の外側チューブとを有する放電ランプであって、前記放電ランプは、請求項1乃至8のいずれかの方法により製造される放電ランプ。
【請求項10】
ピンチング又はロールオンプロセスを行うためのピンチング又はロールオンブロックであって、前記ピンチング又はロールオンブロックは、前記ピンチング又はロールオンブロックの半割体の開口領域に非対称に延びる開口を有し、前記ピンチング又はロールオンブロックは、請求項1乃至8のいずれかの方法に特に使用されるピンチング又はロールオンブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−521088(P2009−521088A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546732(P2008−546732)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/054793
【国際公開番号】WO2007/072312
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】