説明

二重複合容器による加熱溶融減容処理方法およびそれを使った加熱溶融減容処理装置

【課題】キャニスタと外容器で構成する二重複合容器を用いて、高周波加熱溶融した固化体(放射性廃棄物)を高周波加熱溶融炉から取り出し、収納容器に収納することに対して、キャニスタ(減容対象の溶融物の漏洩なし)と二重複合容器(減容対象の溶融物の漏洩有り)とを、同じ方法、同じ手順で簡単、容易に取り扱うことができるようにすることであり、減容対象の溶融物の漏洩なしの場合には、キャニスタを繰り返し利用可能な方式を提供する。
【解決手段】キャニスタを外容器に所定のギャップを持って重ね合わせて嵌めこんだ二重複合容器であって、内部に減容対象物を収容した該二重複合容器を、高周波加熱溶融炉内で加熱溶融することで減容処理を行ない、該減容処理後の二重複合容器を仮蓋、仮容器を介して所定の減容処理物保管容器に収容することによって加熱溶融減容処理方法を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所などから排出される放射性廃棄物(金属、無機物等)を減容するための減容処理方法および設備に関するものであり、具体的には、キャニスタと外容器で構成する二重複合容器を用いて、高周波加熱溶融した固化体(放射性)を高周波加熱溶融炉から取り出し、収納容器に収納することについて、キャニスタと上記二重複合容器とを、同じ方法、同じ手順で簡単、容易に取り扱うことができるものである。
【背景技術】
【0002】
高周波加熱溶融炉はキャニスタと呼ばれるセラミックス製のるつぼの中に減容処理対象である放射性廃棄物(導電性金属)wを装荷し、当該廃棄物wを高周波加熱し溶融させて減容させるものである。放射性廃棄物は加熱溶融して固化させること(固体にすること)により減容し、これによって当該廃棄物の保管設備、保管管理コストを大幅に抑制するものである。
高周波加熱溶融によってキャニスタ内の導電性金属を加熱溶融させ、キャニスタ内に一緒に投入した非導電性物質(無機物)をも溶融させる。
【0003】
この高周波加熱溶融炉で用いるキャニスタは、加熱溶融工程で損傷することがないように設計されているが、状況によって損傷する可能性がある。キャニスタの損傷とは温度上昇時の内外温度差あるいは熱衝撃によるクラック、物理的衝撃による損傷、溶融物の対流による内壁面の侵食などである。
加熱溶融作業中にキャニスタが損傷すると、溶融物(放射性物質)がキャニスタから漏洩して周りを放射性物質で汚染する。漏洩すると直ちに高周波加熱装置を停止させ、炉内が冷却された後、キャニスタ周辺の放射性物質による汚染の有無を確認し、汚染物の除去、必要な除染等の作業環境回復のための作業を行う必要がある。そして、この後処理作業はセル(密閉された作業空間)において遠隔操作で行われるため、作業性が悪くまた作業能率が低い。
したがって、その対応に多大な時間を要し、その間、減容処理装置を休止せざるを得ない状況となる。
その対応のために考えられたものとして、特許文献1(特開2004−77218号公報)があり、キャニスタが破損した場合の汚染した溶融物の流出を最小限にとどめ、後処理作業を速やかに、かつ、容易にするための工夫をしたものである。その内容は、図11、12に示すように、キャニスタの外側を砂状物質で支えて、汚染した溶融物を砂状物質で受け止め、これにより作業環境に漏洩して汚損することを防止するものである。
砂状物質は、耐熱性と流動性を有するものであり、キャニスタに対する断熱性を有し、これによってキャニスタの内面と外面との温度差を大幅に低減し、キャニスタを熱的に保護する機能を有する。また、上記砂状物質の層はキャニスタを外側から支えるので、キャニスタを補強する機能をも備えている。
【0004】
また、特許文献2(特開平01−181088号公報)には、キャニスタをセラミック材あるいは耐熱金属材等で製作した容器の中に密形状に内装することによって、万一キャニスタが破損してもその漏洩物を容器で受け止め、溶融物が外に流出して作業環境を汚染することがないようにしたものが記載されている。このものは、漏洩の有無を電気的な回路で検出する方式であるため、高周波を利用した加熱溶融炉等には適さないものと思われる。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、砂状物質を使用すること、砂状物質を収容するために大形の受け皿を使用すること等から、作業性が悪く、また作業能率が低い。また、それらの要因で、遠隔操作が難しい状況であった。
さらに、特許文献2のものでは、漏洩物の流出を防止することは可能であるが、加熱溶融炉と一体となった構成であり、遠隔操作が要求される環境には適さず、また、キャニスタとセラミック材あるいは耐熱金属材等で製作した容器とが一体構造であるために、非常に高価なものとなる。
【特許文献1】特開2004−77218号公報
【特許文献2】特開平01−181088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術で述べた問題点を解決するために、高周波加熱溶融を利用する環境で、かつ、遠隔操作を要求される環境において、本願発明者らの発明による特願2007-218796号「放射性廃棄物高周波加熱溶融炉用の減容容器」を使用した、所謂、キャニスタと外容器で構成する二重複合容器を用いて、高周波加熱溶融した固化体(放射性)を高周波加熱溶融炉から取り出し、収納容器に収納することに対して、キャニスタと二重複合容器とを、同じ方法、同じ手順で簡単、容易に取り扱うことができるようにすることであり、減容対象の溶融物の漏洩なしの場合には、外容器を繰り返し利用することができる方式を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための1番目の発明は、キャニスタを外容器に所定のギャップを持って重ね合わせて嵌めこんだ二重複合容器であって、内部に減容対象物を収容した二重複合容器を、高周波加熱溶融炉内で加熱溶融することで減容処理を行ない、該減容処理後の二重複合容器を、仮蓋を介して所定の減容処理物保管容器に収容することによって加熱溶融減容処理方法を実現するものである。
【0008】
2番目の発明は、一番目の発明において、前記減容処理後の二重複合容器が、キャニスタ破損等による前記減容対象物の漏れがない場合には、二重複合容器のうち内部のキャニスタを、仮蓋を介して所定の減容処理物保管容器に収容することによって加熱溶融減容処理方法を実現するものである。
【0009】
3番目の発明は、1番目乃至2番目の発明において、前記所定の減容処理物保管容器への収容は、二重複合容器を搬送する搬送コンベアと、該搬送コンベアには、スリーブ把持装置、横転装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置ならびに収納容器把持装置とを配置し、
上記スリーブ把持装置、横転装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置および収納容器把持装置については遠隔操作装置を使用して二重複合容器を所定の減容処理物保管容器へ収容することによって加熱溶融減容処理方法を実現するものである。
【0010】
4番目の発明は、1番目乃至3番目の発明を利用して減容対象物の加熱溶融減容処理を行なう加熱溶融減容処理装置を実現するものである。
【発明の効果】
【0011】
高周波加熱溶融処理による減容処理後の外容器とキャニスタとで構成する二重複合容器を、横転装置で横転させ、また、正立させるようにし、円筒状の仮蓋を二重複合容器の隙間(キャニスタと外容器間の隙間)に挿入してキャニスタを保持させるようにし、仮蓋操作装置で仮蓋を出し入れ操作することで、キャニスタを外容器に対して出し入れさせることができ、また、汚染した溶融物の固化で外容器にキャニスタが固着されたときは、外容器とキャニスタが一体構成の二重複合容器をそのまま、同様の作業手順で収納容器に収納することができる。
したがって、キャニスタからの漏洩物があった場合、漏洩物がなかった場合のいずれの場合も、同じ装置で同じ手順によって加熱溶融減容処理の後処理を実現でき、容易かつ効率のよい後処理とすることができる。
また、漏洩があった場合は、放射性汚染物を拡散させることもなく、また、加熱溶融減容処理の後処理を極力汚染させることなしに、そのまま、二重複合容器と共に漏洩物を収納容器に収納できるので、処理を極めて簡単、迅速にすることができる。
さらに、二重容器からの溶融漏洩物がなかった場合には、外容器は繰り返し利用することができ、後処理工程内で使用するスリーブ、台座、仮蓋についても、後処理工程内で繰り返し利用することができ、安価な減容処理を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明の基本となるに二重複合容器を使用した高周波加熱溶融減容処理の内容を、図2、図3により説明する。
図2(a)は、本発明者らが発明した特願2007−218796号の高周波加熱溶融炉40(後述)に設置する二重複合容器の構成を示したものである。
減容処理対象物wを収容するキャニスタ32と、キャニスタ32に所定の隙間37で一体に組合わせた外容器31で構成する二重複合容器30を高周波加熱溶融炉40(後述)用の台座33上に配置し、高周波加熱溶融炉40に設置する。
本図は、同時に、高周波加熱溶融炉40内で加熱溶融、減容処理をしたときに、キャニスタ32から減容処理対象物wが漏洩せず円滑に処理が終了した状態を示したものである。
【0013】
図2(b)は、二重複合容器30を使用して高周波加熱溶融炉40内で加熱溶融、減容処理をしたときに、キャニスタ32から減容処理対象物wが漏洩した状態を示したものである。
ここで、キャニスタ32からの漏洩物をcで示す。
【0014】
図3は、二重複合容器30を高周波加熱溶融炉40に設置した状態を示すものである。
高周波加熱溶融炉40の筒体の内側にスリーブ41を配置し、その下端が台座33の上部に着脱自在に嵌め合わせている。なお、上記スリーブ41は、キャニスタ32内の溶融飛散物から高周波加熱溶融炉40内面を防護するためのものである。
そして、外容器31はシリカ系のセラミック製であり、このものの圧縮強度は約60MPa(常温)である。キャニスタ32はアルミナ系のセラミック製で、その圧縮強度は約20MPa(常温)である。これらは、機械的強度、耐熱強度が高いので容易に損傷して漏洩を生じるようなものではないが、万一の損傷に備えて、台座と一体に動く受け皿36を設けた構造としている。
【0015】
台座33はリフター51によって昇降し、また、セルの床設置のコンベアf面を走行するものであり、台座33が高周波加熱溶融炉40の下部へ移動し、昇降して高周波加熱溶融炉40に対する二重複合容器30の出し入れ操作を行なう。
【0016】
高周波加熱溶融炉40の筒体Fに赤外線温度センサー50a,50bを取り付けており、これらの赤外線温度センサーは二重複合容器30の下部と上部に、円周上に等間隔にそれぞれ3箇程度設けている。これによってキャニスタのほぼ全外周面の温度を監視することができる。
【0017】
赤外線温度センサー50a,50bによって外容器31の外周面の温度を随時計測し、その前後測定温度差を3分間隔で基準値(例えば100℃)と比較し、その温度差が基準値以上であるとき、漏洩検知信号を発信するようにしている。
正常な加熱溶融時の外容器の温度上昇は、ほぼ0〜20℃/分の範囲であるから、上記基準値との比較を行なうことによって異常温度上昇を判別し、正確に溶融物の漏洩の有無を検知することができる。
【0018】
次に、図1により本発明の全体構成を説明する。
まず、図3にて説明した高周波加熱溶融炉を使用し、次のようなステップで処理を行なうものである。
【0019】
S1ステップでは、図3の高周波加熱溶融炉の台座に、スリーブならびに二重複合容器(外容器およびキャニスタを一体化したもの)を取り付ける。
【0020】
S2ステップでは、S1ステップで準備した台座(二重複合容器を取り付けた状態で)を、リフターによって高周波加熱溶融炉に設置し、高周波加熱溶融の準備を整える。
【0021】
S3ステップでは、減容処理対象物を二重複合容器に、搬送装置あるいはホッパー等を利用して投入する。1回の投入操作が重量等により投入標準量を定めて行われる。
【0022】
S4ステップでは、高周波加熱溶融炉の電源を投入し、減容処理対象物の高周波加熱溶融いわゆる減容処理を行なう。
【0023】
S5ステップでは、S4ステップの減容処理中の二重複合容器外面の温度状態を、高周波加熱に影響されない赤外線温度センサー等で計測する。さらに、二重複合容器外面の単位時間当たりの温度勾配を計算し、温度上昇の異常の有無を監視し、キャニスタからの漏洩物cの有無を判断するデータを提供する。このS5ステップの処理は、S4ステップの処理と並行して行ない、常時監視状態とすることが理想的である。
【0024】
S6ステップでは、S5ステップでの温度勾配が基準値以下となっているかを判断し、キャニスタからの漏洩物cの有無を判定する。
温度勾配が基準値を上回っている場合には、キャニスタからの漏洩が発生していると判断し、以降の減容処理を中断し、漏洩があった段階までの高周波加熱溶融物を冷却し、S8ステップの処理を行なう。
温度勾配が、基準値を下回っており、正常な減容処理が遂行されていると判断される場合は、引き続き、高周波加熱溶融を続行する。
【0025】
S7ステップでは、高周波加熱溶融が正常に行われている段階で、所定投入量の減容処理が終了したか否かの判断を行い、所定投入量の減容処理が終了した場合には、高周波加熱溶融による減容処理を終了し、次の段階へ進める。
所定投入量の減容処理が未完の場合には、S3ステップへ戻り、さらに減容対象物を投入し、減容処理を行なう。
ここで、所定投入量の減容処理が完了したか否かの判断は、実総投入重量を計測するか、あるいは、一回当り規定量を投入する投入回数によってなされる。
【0026】
S8ステップでは、S7ステップが完了した二重複合容器を台座に搭載のまま、スリーブともども、高周波加熱溶融炉からリフターによって、取り外して搬送コンベア上に載置する。
【0027】
S9ステップでは、繰返し利用するスリーブを、台座からスリーブ把持装置により取り外して、S1ステップへ戻す。
【0028】
S10ステップでは、二重複合容器を外容器把持装置により台座から取り外し、搬送コンベアに載置し、台座はS1ステップへ戻す。
【0029】
S11ステップでは、搬送コンベア上の二重複合容器に、その後の収納処理取扱い用の仮蓋を、仮蓋操作装置により取付ける。
【0030】
S12ステップでは、S11ステップで正立していた二重複合容器を横転装置により横向きにさせる。これはそれ以降の処理を横向きに行なうように設定されているための横転操作であり、場合によっては正立のまま行うことも出来る。
【0031】
S13ステップでは、S12ステップ段階の二重複合容器が漏洩物c有りの場合と漏洩物c無しの場合の2とおりがあり得るので、S6ステップでの温度勾配が基準値以上のものか、あるいは、S7ステップで正常に減容処理が終了したものであるかの情報を得て、漏洩物cの有無の判定を行なうようにする。「漏洩物c有り」の二重複合容器は、二重複合容器を外容器とキャニスタとの分離を行なわず、S15ステップの処理が行われ、「漏洩物c無し」の二重複合容器は、S14ステップの処理が行われる。
【0032】
S14ステップでは、二重複合容器の構成要素である外容器とキャニスタの分離を、外容器把持装置により行なう。分離した外容器は、繰返し利用するために、S1ステップへ戻す。
【0033】
S15ステップでは、具体的な処理を行なわないが、S14ステップを終了した段階の二重複合容器の状態を確認するためのステップであり、「漏洩物c有り」の場合は、外容器とキャニスタが漏洩物cが固化したときそのことによって完全に一体化された二重複合容器である。漏洩物c無しの場合は、外容器が取り外されたキャニスタのみの状態である。
二重複合容器の外容器とキャニスタとの隙間を所要の大きさ(本発明では、10mm以上)にしているため、二重複合容器の当該隙間と、キャニスタの隙間部分を利用し、キャニスタ部分を把持する各種搬送装置を用いることで、それ以降の工程を同じ搬送装置により実行することができる。
【0034】
S16ステップでは、減容処理物を最終的な保管を行なうための収納容器に保管するため、収納容器を搬送コンベアに載置し、二重複合容器あるいはキャニスタを仮蓋操作装置によって収納容器へ挿入する。
【0035】
S17ステップでは、S16ステップの収納容器を収納容器正立装置によって正立させる。ここで、本説明は横向きでの作業を基準に説明しているが、正立状態での工程を設定することで本ステップは割愛することもできる。
【0036】
S18ステップでは、S11ステップで取り付けた収納処理取扱い用の仮蓋を、仮蓋操作装置により、収納容器から取り外す。
【0037】
S19ステップでは、収納容器を最終的な保管用形態とするために、収納容器に蓋体を装着して密封する。
【0038】
S20ステップで、収容容器をローラコンベア60によって減容処理物保管場へ払い出す。
【0039】
尚、各ステップで使用する各種搬送装置等は、すべて遠隔操作を可能とした構造とするものである。高周波加熱溶融以降の各種搬送装置、コンベア等の機器の構造及びそれらの遠隔操作については、一般に利用されている産業用ロボット、搬送コンベヤ等の技術ならびに無線制御、光通信制御、遠隔カメラ制御等の各種制御方法等を適宜利用することで実現できる。
【実施例】
【0040】
本発明の上述のS1〜S7ステップまでは本発明者らの先願の発明に係る技術を利用するものであるからその詳細についての説明を省略し、S8ステップ以降について順に詳細に説明する。
【0041】
図4の(a)は、S8ステップの台座、二重複合容器30を高周波加熱溶融炉40外へ取り出す工程を示したものである。高周波加熱溶融による所定量の減容処理が完了した二重複合容器30、スリーブ41を搭載した台座33を、リフター51により高周波加熱溶融炉40の下部より取り外し、これを高周波加熱溶融炉40外に搬出し、移送台車(図示せず)でローラコンベア60に積載する。以降の図で、各工程は図の矢印の方向(図の左方から右方へ)に進むものとする。
【0042】
図4(b)は、S9ステップのスリーブを取り外す工程を示したものである。スリーブ把持装置65でスリーブ41を把持し、これを引き上げて台座33から取り外す。ここで、スリーブ41は繰返し使用するためにS1ステップに戻し、次の高周波加熱溶融による減容処理に備えるものである。また、スリーブ把持装置65は遠隔操作される装置であり、円筒状のスリーブを引き上げて台座33から外し、あるいは降下させて台座33に装着するための装置である。
【0043】
図5の(c)は、S10ステップの二重複合容器30の取り外し工程を示したものである。台座33上の二重複合容器30の外容器31を外容器把持装置66で把持し、外容器31とともにキャニスタ32をローラコンベア60上に下ろす。ここで、外容器把持装置66は、二重複合容器30の外側から掴んで昇降させ、姿勢を変え、場所を移動させるものであり、図示しない遠隔操作装置によって操作する。
なお、外容器31ならびにキャニスタ32はセラミック製であるために、外容器の把持装置による外容器の把持の際、把持機構部分(図示しない)による外容器31の破損を起こさないように、把持部分には緩衝材等の工夫を施すことが必要がある。
【0044】
図5(d)は、S11ステップの仮蓋取り付け工程を示したものである。仮蓋70は、以降の工程で治具として利用するものである。円筒状の仮蓋70を仮蓋操作装置67で把持して二重複合容器30に下ろし、二重複合容器30の外容器31とキャニスタ32の間の空隙37に挿入して、仮蓋70を装着する。ここで、外容器31とキャニスタ32の間の空隙37は、仮蓋挿入用の隙間として少なくとも10mmを確保した設定とする。ここで、仮蓋操作装置67は、本発明で治具として使用される円筒状の仮蓋70を把持して昇降させ、姿勢を変え、場所を移動させるものであり、図示しない遠隔操作装置によって操作される。
【0045】
図5(e)は、S12ステップの横転工程を示したものである。仮蓋70を装着した状態で、二重複合容器30をローラコンベア60で移動させ、横転装置80のローラ81上に移動させる。その後、横転装置80により90度回転させて、二重複合容器30を横転させる。図6は、同横転工程を拡大して示したものである。横転装置80はローラコンベア60の中間にあり、ローラコンベア60と同様のローラ81と支持壁82とが直角に組み合わされ、その角の横軸83によって90度左右に回動する構造になっている。ここで、横転装置80は、図示しない遠隔操作装置によって操作される。
【0046】
図7(f)は、S13ステップでキャニスタ32からの漏洩物cがないと判断した場合のS14ステップの固化体w(キャニスタ32)引き抜き工程を示したものである。
横転装置80上に横転されている二重複合容器30に装着されている仮蓋70に仮蓋操作装置67をセットし、仮蓋操作装置67で仮蓋70を外容器31から外へ引き抜く。これによって、固化体wが詰められたキャニスタ32が仮蓋70とともに外容器31の外に引出される。その後、横転装置80を元に戻して外容器31を正立させ、これを外容器把持装置66で把持して引き上げることで、外容器31を横転装置80から取り外す。その後、S15ステップの状態となる。
尚、S13ステップでキャニスタ32からの漏洩物cがある場合は、漏洩物cの影響で外容器31とキャニスタ32が完全に一体に固化された状態であるために、以降の工程では二重複合容器30をそのまま、キャニスタ32と同等として取り扱うものとし、S15ステップの状態となる。
ここで、S16ステップからS20ステップまでの工程では、漏洩物ありの場合の固化体wを収納した二重複合容器30と、漏洩物cなしの場合の固化体wを収納したキャニスタ32を総称して、二重複合容器30として一括して表現する。(図上は、漏洩物c無しの状態を表わしている。)
【0047】
図7(g)は、S16ステップとして、S15ステップの二重複合容器30を最終的な保管を行なうための収納容器90へ挿入する工程を示したものである。
収納容器把持装置68に、収納容器90を把持させ、横転状態の横転装置80に装着し、次いで、仮蓋操作装置67で仮蓋70とともにキャニスタ32を収納容器90に挿入させる。ここで、収納容器把持装置68は、収納容器90を把持して昇降させ、これを横転状態の横転装置80に装着するものであり、図示しない遠隔操作装置によって操作される。
また、収納容器90は放射性の固化物が詰められたキャニスタ32あるいは二重複合容器30を収納して保管するための金属容器である。
【0048】
図7(h)は、S17ステップの二重複合容器30を収納した収納容器90を正立させる工程を示したものである。
横転装置80を回転させて、収納容器90とともに二重複合容器30を正立させる。
【0049】
図8(i)は、以前の工程で、二重複合容器30を横転、正立させるための治具として使用した仮蓋70を取り外すS18ステップの工程を示したものである。
横転装置80上で正立させた二重複合容器30に装着している仮蓋70を、仮蓋操作装置67で把持し、これを引き上げて二重複合容器30から取り外す。取り外した仮蓋70は、S11ステップに戻し、再使用するものである。
【0050】
図8(j)は、二重複合容器30を収納した大径の収納容器90aに蓋体100を取り付けるS19ステップの工程、貯蔵のための払い出しを行なうS20ステップの工程を示したものである。
二重複合容器30が収納された大径の収納容器90を横転装置80から外し、これを所定の位置まで移送し、所定の蓋体100を装着して密封する。
なお、この実施例では、二重複合容器30を収納容器90に挿入してから正立させ、仮蓋を仮蓋操作装置67で把持して引き上げて外すようにしているが、二重複合容器30を横転させたままで仮蓋70を水平方向に引き抜くような操作方法を採用することにより工程数を少なくすることもできる。
【0051】
以上のうち、図7、図8は、二重複合容器30内での漏洩物c無しの図を元に説明したが、漏洩物cがある場合の図を、図9、図10にて参考までに示す。漏洩物cがある場合は、図7(f)に該当する工程が省略されることになる。
図9(g)は、二重複合容器30を最終的な保管を行なうための外容器31が挿入できる程度に大径の収納容器90aへ挿入するS16ステップを、図9(h)は、大径の収納容器90aを正立させるS17ステップを、図10(i)は、仮蓋70を取り外すS18ステップを、図10(j)は、二重複合容器30を収納した大径の収納容器90aに蓋体100を取り付けるS19ステップ、貯蔵のための払い出しを行なうS20ステップを、各々示したものである。
【0052】
なお、漏洩物cが多量で、外容器31とキャニスタ32間の隙間がなく、このために仮蓋70を挿入することができないときは、仮蓋操作装置に円板状の押し込み治具75を装着して、これによりキャニスタ32の端面を押して外容器31とともに大径の収納容器90aの中に押し込むようにすることにより対応することができる(図10−1)。
【0053】
以上のように、外容器とキャニスタとで構成した二重複合容器を使用し、高周波加熱溶融による減容処理を行い、その後処理工程として、二重複合容器の外容器とキャニスタとの隙間を利用して二重複合容器の高周波加熱溶融炉外への搬出から固化体入り収納容器の搬出までを、搬送装置(コンベア、リフター等)、スリーブ把持装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置、横転装置、収納容器把持装置等を使用し、遠隔操作により高周波加熱溶融による減容処理システムとしての効率化を実現できる。また、従来の砂状物質等を利用しない減容処理であるため、処理のスピードアップを図ることができると同時に、スリーブ、外容器等の繰返し利用可能な構成であるために、安価な減容処理が実現できるものである。さらには、漏洩物がある場合、漏洩物がない場合のいずれも同一工程による作業が推進でき、減容処理工程の標準化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】は、本発明の処理フローチャートの一実施例を示す図。
【図2】(a),(b)は、本発明の基本となる二重複合容器を概念的に示す説明図。
【図3】は、本発明の基本となる二重複合容器を利用した高周波加熱溶融炉の断面図。
【図4】は、本発明の炉外搬出工程からスリーブ取付工程までの説明図。
【図5】は、本発明の二重複合容器の取り外し工程から横転工程までの説明図。
【図6】は、本発明の横転工程を示す拡大図。
【図7】は、本発明の固化体引き抜き工程から横転工程までの説明図。
【図8】は、本発明の仮蓋取り外し工程から収納容器払い出し工程までの説明図。
【図9】は、本発明の「漏洩物あり」の場合の、固化体挿入工程から収納容器正立工程までの説明図。
【図10】は、本発明の「漏洩物あり」の場合の、仮蓋取り付け工程から収納容器払い出し工程までの説明図。
【図10−1】は、本発明の漏洩物cが多量の場合の、固化体挿入工程から収納容器正立工程までの説明図。
【図11】(a),(b),(c)は、従来技術を概略的に示す加熱溶融炉の断面図。
【図12】は、従来技術における砂状物質を利用する二重容器の断面図。
【符号の説明】
【0055】
30:二重複合容器
31:外容器
32:キャニスタ
33:台座
36:受け皿
37:隙間
40:高周波加熱溶融炉
41:スリーブ
50a,50b:赤外線温度センサー
51:リフター
f:セルの床設置のコンベア
w:固化体(放射性廃棄物)
c:漏洩物
60:ローラコンベア
65:スリーブ把持装置
66:外容器把持装置
67:仮蓋操作装置
68:収納容器把持装置
70:仮蓋
75:円板状の押し込み冶具
80:横転装置
81:ローラ
82:支持壁
83:横軸
90:収納容器
90a:大径の収納容器
100:蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャニスタを外容器に所定のギャップを持って重ね合わせて嵌めこんだ二重複合容器であって、内部に減容対象物を収容した二重複合容器を、高周波加熱溶融炉内で加熱溶融することで減容処理を行ない、該減容処理後の二重複合容器を、仮蓋を介して所定の減容処理物保管容器に収容することを特徴とする加熱溶融減容処理方法。
【請求項2】
前記減容処理後の二重複合容器が、キャニスタ破損等による前記減容対象物の漏れがない場合には、二重複合容器のうち内部のキャニスタを、仮蓋を介して所定の減容処理物保管容器に収容することを特徴とする請求項1に記載の加熱溶融減容処理方法。
【請求項3】
前記所定の減容処理物保管容器への収容は、二重複合容器を搬送する搬送コンベアと、該搬送コンベアには、スリーブ把持装置、横転装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置ならびに収納容器把持装置とを配置し、
上記スリーブ把持装置、横転装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置および収納容器把持装置については遠隔操作装置を使用して二重複合容器を所定の減容処理物保管容器へ収容することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の加熱溶融減容処理方法。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3に記載の加熱溶融減容処理方法を使用して、減容対象物の加熱溶融減容処理を行なうことを特徴とする加熱溶融減容処理装置。
【請求項5】
減容処理対象である放射性廃棄物を装填し、当該廃棄物を高周波加熱装置で加熱溶融させるための放射性廃棄物用の減容容器であり、
キャニスタを外容器に嵌めて二重複合容器が構成されており、上記外容器が耐熱性セラミック容器であり、キャニスタとの間に隙間があり、キャニスタと外容器との間の隙間が円筒状の仮蓋を挿入してキャニスタを保持することができる大きさである二重複合容器用のキャニスタの機械処理装置であって、
台座とともに二重複合容器を受け取って搬送する搬送コンベアがあり、
上記搬送コンベアに横転装置があり、
スリーブ把持装置があり、
外容器把持装置があり、
仮蓋操作装置があり、
収納容器把持装置があり、
上記横転装置、外容器把持装置、仮蓋操作装置、収納容器把持装置の遠隔操作装置がある、二重複合容器のキャニスタの機械処理装置。
【請求項6】
減容処理対象である放射性廃棄物を装填し、当該廃棄物を高周波加熱装置で加熱溶融させるための放射性廃棄物用の減容容器であり、キャニスタを外容器に嵌めて二重複合容器が構成されており、上記外容器が耐熱性セラミック容器であり、キャニスタとの間に隙間があり、キャニスタと外容器との間の隙間が円筒状の仮蓋を挿入してキャニスタを保持することができる大きさである二重複合容器用のキャニスタの機械処理方法であって、
昇降機を下降させ、台座と一緒に二重複合容器を高周波加熱溶融炉の外に取り出してこれを搬送コンベア上に移動させ、高周波加熱溶融炉の内壁面を保護するためのスリーブをスリーブ把持装置で把持してこれを台座から取り外し、次いで外容器把持装置で外容器を把持して二重複合容器を搬送コンベア上に載置し、
仮蓋操作装置で円筒状の仮蓋を把持してこれをキャニスタと外容器との間の隙間に挿入して仮蓋をし、これを搬送コンベア上を移動させて横転装置に保持させ、キャニスタを保持したままで横転装置を横転させ、仮蓋操作装置で再び仮蓋を把持させて、仮蓋とともにキャニスタを外容器から引き抜き、
横転装置に残された外容器を外容器把持装置で把持して横転装置から取り外し、
そして、収納容器把持装置で収納容器を把持させ、これを横転した横転装置に装着し、横転装置に装着された収納容器に、減容物が詰められキャニスタを仮蓋とともに仮蓋操作装置によって挿入し、横転装置を90度回転させて収納容器を正立させ、その後、仮蓋操作装置で仮蓋を上方に引き抜いて取り外し、
そして、収納容器に内装された状態で、収納容器と共にキャニスタを外へ移動させ、
キャニスタから前記溶融対象物の漏れがあった場合、外容器とキャニスタによる二重複合容器を、キャニスタ操作装置で横転装置から搬送コンベア上に降ろし、また、横転装置に横倒しに装着された収納容器に上記二重複合容器を挿入し、
横転装置を90度回転させて収納容器を起立させ、その後、仮蓋操作装置で仮蓋を上方に引き抜いて取り外し、
そして、収納容器に内装された状態で、収納容器、外容器と共にキャニスタを外へ移動させる、二重複合容器用のキャニスタの機械処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−156708(P2009−156708A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335167(P2007−335167)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)