説明

井戸装置とそれに用いる玉石状充填材

【課題】井戸において、集水管の周囲に充填する充填材により集水管(井筒、埋渠管)の集水孔が目詰りを生じないようにすることを課題とする。
【解決手段】周面に多数の集水孔4が形成された井筒または埋渠管からなる集水管5を帯水地層1に掘削した掘削穴2内に設置し、この集水管の集水孔4を通じて地下水を集水管5内に流入させて揚水する井戸装置において、前記集水管5の外周面に接触するようこの外周面と前記掘削穴2の内周面2aとの間に玉石状充填材10を装填し、その玉石状充填材はその基体10Aに水を通す通水路11を形成したことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は井戸装置に係り、特に地下水や伏流水を取水する集水井構造の井戸装置およびそれに用いる玉石状充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、地下水や伏流水を集水して取水する井戸として玉石砂利を用いる井戸装置は、浅井戸(筒井戸)、深井戸(さく井戸)、集水埋渠等がある。
【0003】
上記浅井戸(筒井戸)は、図3に断面図として示すように、帯水地層1を掘削した掘削穴2内の底部に玉石砂利3を敷き、その上に周面に多数の集水孔4、4…が開設された集水管5(以下、堅型井戸の場合は井筒5と称する)を建て込み、その集水孔4、4…の存在する位置の周囲にも玉石砂利3を詰納し、その上に盛土6を埋め込んで構成されている。図中符号Lは地下水位を示す。
【0004】
深井戸(さく井戸)は、図4に断面図として示すように、帯水地層1に井筒5の口径より大径の掘削穴2を削孔し、この掘削穴に建て込んだ井筒5と掘削穴2との間に玉石砂利3を詰納し、帯水地層1から浸出する地下水(伏流水)を井筒5に穿設された集水孔4、4…から井筒5内に取り込み、これを地上に揚水するように構成されている。
【0005】
集水埋渠は、図5(A)、(B)に示すように、集水管としての埋渠管5Aを敷設する延長線方向を開削し、その開削した掘削溝7の内底部に玉石砂利3を敷設した上に埋渠管5Aを置き、さらにその上から玉石砂利3を詰納し、盛土6をかぶせて構成されてる。符号8は埋渠管5Aを受ける受台を示す。
【0006】
なお、図4、図5において図3と共通する部分にはこれと同一符号を付してある。
【0007】
上記各井戸に用いられる玉石砂利3の大きさ(外径)は、浅井戸の場合50〜100mm程度、深井戸の場合は15〜30mm程度、集水埋渠の場合は50〜100mm程度のものが使用される。
【0008】
ちなみに浅井戸(筒井戸)の井筒5の集水孔径は50mmφ程度が一般的であり、深井戸(さく井)の井筒5の集水孔(スリットの場合)の幅は3〜5mm、長さ100〜200mmであり、さらに埋渠管5Aの集水孔4は20〜35mmφ程度のものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−120738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかして上記いずれの井戸においても、地下水(伏流水)を集水するための井筒5や埋渠管5の集水孔4の部分に玉石砂利3が位置しておかれるとこれら玉石砂利が集水孔4を塞いでしまい、これによって設置前の集水開口率が減少し、集水効率が著しく低下するものとなる。
【0011】
すなわち、図6(A)〜(C)にそれぞれの井戸における目詰り状態を示すように、玉石砂利3が井筒5や埋渠管5Aの集水孔4に位置してこれらを塞いでしまうと同時に玉石砂利3の相互間に土砂類9が詰って地下水の流れを阻害し、一層地下水の流入が妨げられることになる。
【0012】
なかには特許文献1にみられるように、井筒に玉石砂利が直接接触しない構造の井戸とすることにより井筒の集水孔に玉石砂利が位置してこれを塞ぐことがないようになされたものがある。
【0013】
すなわち井筒の外径より大きい内径を有するように形成された円筒状の篭体を井筒に外嵌し、この篭体内に玉石砂利状の裏込め材を詰納し、この裏込め材と井筒の集水孔とを無縁として目詰りが生じないようになされたものである。なお上記裏込め材自体に貫孔を穿設して通水を可能とし、裏込め材間での水の流れを確保するようになされている。
【0014】
しかるにこの方式を浅井戸や深井戸、集水埋渠に適用するには篭体を設置することが難しいばかりでなく篭体を用いることが必須となるのでコスト高を招き、かつ篭体の耐用寿命により井戸自体の寿命が左右されてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する手段として本発明は、周面に多数の集水孔が形成された集水管(井筒、埋渠管)を帯水地層に掘削した掘削穴内に設置し、この集水管の集水孔を通じて地下水を集水管内に流入させて揚水する井戸装置において、前記集水管の外周面に接触するようこの外周面と前記掘削穴の内周面との間に玉石状をなす充填材を装填し、その玉石状充填材はその基体に水を通す通水路を形成したことを特徴とする井戸装置と、この井戸装置に用いる玉石状充填材を提供するにある。
【0016】
上記玉石充填材の通水路は、その充填材を構成する基体の外周面周方向に形成された凹溝で構成する手段、基体の一端から他端にかけて貫通する貫通孔で構成する手段、さらには前記凹溝と前記貫通孔との組み合わせで構成する手段が採られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帯水地層内に設置される集水管の周面に玉石状充填材を密に埋め込んでその充填材が集水管(井筒、埋渠管)の集水孔に直接当接した状態におかれてもその充填材に通水路が形成されているので集水管の集水孔への地下水の流入を妨げることがなく、充填材としての機能はそのままに集水効率を低下させることが防がれ、その結果充填材が集水管に接しないようにする手段、例えば前述したように充填材を篭体に詰めて集水管と充填材が直接接触しないようにするなどの特別な手段をとる必要がなく、これにより余分な資材を用意するための経費がかからず、また集水管の周囲に充填材を直接詰め込めばよいので施工上の手間がかからず、施工コストの低減をも図ることができる。
【0018】
また詰納された充填材が密に詰っても、充填材の通水路を通って水が流れるので集水量を常に確保することができ、集水効率を長期にわたって維持することができる。
【0019】
特に充填材に設ける通水路を充填材の外周面に形成した凹溝で構成すれば、充填材同士が迫っても凹溝のどこかが開通している状態となり、充填材間での目詰りを生じることがなく、通水効果を高いものとすることができる。
【0020】
さらに通水路を充填材の外周面に形成する凹溝と充填材を貫通する貫通孔との組み合わせで構成すれば、凹溝が仮に詰っても貫通孔を通って水が流れるので、目詰りの防止効果を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による井戸装置の一実施形態を示す一部の半部断面図。
【図2】(A)〜(C)は本発明における玉石状充填材の実施形態を例示する斜視図。
【図3】従来の浅井戸(筒井戸)の断面図。
【図4】従来の深井戸(さく井)の断面図。
【図5】(A)は従来の集水埋渠の断面図、(B)は(A)のB−B断面図。
【図6】(A)〜(C)は従来の各井戸における目詰り状況を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による井戸装置およびそれに用いる玉石状充填材の一実施形態を図1、図2により図3〜図6と共通する部分には同一符号を用いて説明する。
【0023】
図1は本発明を適用した井戸装置の半部を断面として示すもので、ここに示す集水管としての井筒5の「a」の領域は丸孔状の集水孔4aが、「b」の領域は縦長スリット状の集水孔4bが、そして「c」の領域は横長スリット状の集水孔4cが形成されている場合を例示している。
【0024】
上記井筒5は帯水地層1に掘削された掘削穴2に建て込まれ、この井筒5と掘削穴2の内壁2aとの間に玉石状充填材10が投入され、これら玉石状充填材10は前記井筒5の集水孔4a〜4cの位置にも密に存在して詰納される。
【0025】
上記玉石状充填材10は図2(A)〜(C)にその一つを拡大して示しているように水を通す通水路11が形成されている。
【0026】
図2(A)に示す玉石状充填材10の通水路11は、充填材10を構成する基体10Aの外周面に形成された凹溝11Aにより構成されており、図2(B)に示す玉石状充填材10の通水路11は、基体10Aの一端から他端にかけて穿設された貫通孔11Bにより構成されており、さらに図2(C)に示す玉石状充填材10の通水路11は、前記の凹溝11Aと貫通孔1Bとの組み合わせで構成されている。
【0027】
上記玉石状充填材10を構成する基体10Aとしては、玉石状の天然石、人工石、硬質合成樹脂材など、充填材としての機能を果し得るものであれば適宜な材料を選択することができる。
【0028】
次に作用を説明する。
【0029】
井戸を構築するに際して掘削穴2の上部開口部から井筒5を建て込み、次いで掘削穴2の内壁2aと井筒5の外周面との間に玉石状充填材10、10…を密に詰納する。
【0030】
これにより玉石状充填材10、10…が井筒5の集水孔4a〜4cを塞ぐように当接しておかれるが、帯水地層1から掘削穴2内に流入する地下水(伏流水)は玉石状充填材10の周面に形成された凹溝11Aや、一端から他端にかけて貫設された貫通孔11Bからなる通水路11を通って井筒5の集水孔4a〜4cへ流れ込み、集水能力が維持される。
【0031】
また帯水地層1から玉石状充填材10の相互間に細砂類が流れ込んでも、前記凹溝11Aや貫通孔11Bまたはその組み合わせからなる通水路11を通じて水が流れるので、目詰りを起こすことなく常に集水を図ることができる。
【0032】
また通水路11を凹溝11Aにより構成した場合は、詰納された玉石状充填材10がひしめき合った状態におかれても凹溝11Aの開放面の一部が隣位の充填材10により塞がれるだけであるから通水路11の目詰りが生じにくく、常に通水能力を維持させることができる。
【0033】
さらに凹溝11Aは、充填材10、10…間に流入した細砂類が凹溝11A内にとどまりにくく、これによっても目詰りを生じることが防がれ、通水能力を減退させることが防がれるなどの利点がある。
【0034】
集水埋渠においても前記井戸の場合と同様の機能を発揮して集水能力を確保することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 帯水地層
2 掘削穴
3 玉石砂利
4(4a、4b、4c) 集水孔
5 集水管としての井筒
5A 集水管としての埋渠管
7 集水埋渠の掘削溝
9 土砂類
10 玉石状充填材
10A 玉石状充填材の基体
11A 通水路を構成する凹溝
11B 通水路を構成する貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に多数の集水孔が形成された集水管を帯水地層に掘削された掘削穴内に設置し、この集水管の集水孔を通じて地下水を集水管内に流入させて揚水する井戸装置において、前記集水管の外周面に接触するようこの外周面と前記掘削穴の内周面との間に玉石状をなす充填材を装填し、この玉石状充填材はその基体に水を通水路が形成されていることを特徴とする井戸装置。
【請求項2】
前記充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の外周面周方向に形成された少くとも1条の凹溝で構成されている請求項1記載の井戸装置。
【請求項3】
前記充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の一端から他端にかけて貫通する少くとも1本の貫通孔で構成されている請求項1記載の井戸装置。
【請求項4】
前記充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の外周面周方向に形成された凹溝と、前記基体の一端から他端にかけて貫通する貫通孔との組み合わせで構成されている請求項1記載の井戸装置。
【請求項5】
周面に多数の集水孔が形成された集水管を帯水地層に掘削された掘削穴内に設置し、この集水管の集水孔を通じて地下水を集水管内に流入させて揚水する井戸装置の前記集水管の外周面に当接するようこの外周面と前記掘削穴の内周面との間に装填する玉石状の充填材であって、この充填材の基体に通水路が形成されていることを特徴とする井戸装置における玉石状充填材。
【請求項6】
前記玉石状充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の外周面周方向に形成された少くとも1条の凹溝で構成されている請求項5記載の井戸装置における玉石状充填材。
【請求項7】
前記玉石状充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の一端から他端にかけて貫通する少くとも1本の貫通孔で構成されている請求項5記載の井戸装置における玉石状充填材。
【請求項8】
前記玉石状充填材の通水路は、該充填材を構成する基体の外周面周方向に形成された凹溝と、前記基体の一端から他端にかけて貫通する貫通孔との組み合わせで構成されている請求項5記載の井戸装置における玉石状充填材。
【請求項9】
前記玉石状充填材を構成する基体は、天然石、人工石のいずれかからなる請求項5〜8のいずれか1項記載の井戸装置における玉石状充填材。
【請求項10】
前記玉石状充填材を構成する基体は、合成樹脂の成形品で構成されている請求項5〜8のいずれか1項記載の井戸装置における玉石状充填材。
【請求項11】
前記井戸装置が集水埋渠である請求項5〜10のいずれか1項記載の井戸装置における玉石状充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177252(P2012−177252A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40534(P2011−40534)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(593113732)株式会社アジア (4)