説明

人体局部洗浄装置

【課題】洗浄水を加熱するために複数の発熱部を採用しつつも、高調波の低減、セラミックスヒータ等の加熱部における熱歪の抑制に有利な人体局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】人体局部洗浄装置は、人体の局部に洗浄水を噴出させる洗浄部と、洗浄部から噴出される洗浄水を加熱させる加熱部と、加熱部の発熱を制御する制御部とを有する。加熱部は、同一の発熱電流が給電されるとき互いに共通性をもつ発熱量を示す複数個の発熱部を有する。横軸が時間を示し且つ縦軸が発熱部に給電する電流を示すとき、制御部は、電源から正弦波状の交流電流Asinが給電されると共に、交流電流Asinの1波長未満の時間ΔT1を互いにずらせつつ発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体局部を洗浄する洗浄水を加熱する人体局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の局部に洗浄水を噴出させるノズルをもつ洗浄部と、洗浄部のノズルから噴出される洗浄水を加熱させる加熱部と、発熱部の発熱を制御する制御部とを具備する人体局部洗浄装置として文献1〜3が提供されている。
【0003】
文献1によれば、お湯の温度ムラを低減するためのヒータ周辺の水路に特徴を有する。このものは、入水流路と、出水流路と、熱交換器と、複数の棒状ヒータと、各棒状ヒータと外殻との間に形成した螺旋状の流路と、複数の螺旋状の流路を連結する連結流路とを備えている。
【0004】
文献2によれば、家庭用電源のため1200W程度以下に設定する必要があるが、寒冷地では水が冷たく、適切な湯温に加熱するには昇温能力が不十分で、洗浄水量を減少させる必要がある。また、洗浄水量の減少させることにより流速が遅くなり、温度応答が遅れることにより温度制御性が悪くなる課題を解決する為に、流量検知手段と入水検知手段と出湯温検知手段の信号情報により流量制御弁と加熱手段への通電量の少なくとも一方を制御する特徴を有する。瞬間式の加熱手段は複数の並列な発熱体を有し、制御部は流量設定器の設定値に対して複数の発熱体の使用/不使用を選択する。流量設定器は、流量設定と連動して発熱体駆動回路の開閉も可能な機械的スイッチで構成され最大通電量を設定可能となっている。
【0005】
文献3によれば、洗浄中の瞬時的な設定温度可変による温度変動と、トイレ室内の照明ちらつきを解決する為に、2回路またはそれ以上の並列な電気ヒータを有し、加熱手段の通電量の分解能を上げる特徴を有する。加熱手段は2回路またはそれ以上の並列な発熱体を有して一体構成されている。制御部は、給水部から連続的に供給された水が水路から出湯口に流れる間に温度検知手段により検知した出湯温度に基づいて、発熱体の並列な駆動回路のそれぞれへの通電率を可変し、流量検知部の流量信号に基づき加熱手段の通電量を可変して適温に加熱する装置を備えている。加熱手段を、電力によりジュール熱を発生する発熱体をアルミナ等の一対のセラミック板により挟んで形成したセラミックヒータにより構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−232616号公報
【特許文献2】特許第3331964号公報
【特許文献3】特許第4194906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した文献1〜3によれば、高調波に対する対策、ヒータにおける亀裂発生を抑制させるためには、必ずしも充分ではない。文献1の欠点を解決する方法として、文献3によれば、「加熱手段が2回路またはそれ以上の並列な電気ヒータを一対のセラミック製の被覆層により挟んで一体構成」する構造が開示されている。しかし文献3にて開示されている制御によれば、各々の発熱体の発熱量に偏りが発生しやすい。この場合、セラミック製の被覆層において温度ムラが発生し、熱歪みが発生し、熱歪みに起因してセラミックヒータにおいて亀裂が発生しやすくなるおそれがある。この場合、セラミックスヒータの耐久性及び長寿命化には限界がある。
【0008】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、洗浄水を加熱するために複数の発熱部を採用しつつも、高調波の低減、加熱部における熱歪の抑制に有利であり、加熱部の耐久性の向上、長寿命化に貢献できる人体局部洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る人体局部洗浄装置は、人体の局部に洗浄水を噴出させる洗浄部と、洗浄部から噴出される洗浄水を加熱させる加熱部と、発熱部の発熱を制御する制御部とを具備しており、
加熱部は、同一の発熱電流が給電されるとき互いに共通性をもつ発熱量を示す複数個の発熱部を有しており、横軸が時間を示し且つ縦軸が発熱部に給電する電流を示すとき、制御部は、電源から正弦波状の交流電流が給電されると共に、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させることを特徴とする。
【0010】
電源から正弦波状の交流電流が給電部に給電される。制御部は、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ、発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させる。このため、交流電流の1周期(例えば商用電源の場合には、16ミリ秒、20ミリ秒)に対してマクロ的な所定時間(例えば500ミリ秒、1秒間、10秒間)以内において、複数の発熱部のうち、ある発熱部だけが集中的に加熱されること、他のある発熱部だけが加熱されないといったことが抑制される。このため、複数の発熱部における発熱量の過剰なばらつきが低減される。よって、複数の発熱部における温度ムラが低減される。この場合、温度ムラに起因する加熱部の亀裂生成が抑制される。
【0011】
更に本発明によれば、加熱部として複数の発熱部を採用しつつも、制御部は、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ、発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させる。このため、発熱電流の合計値が瞬間的に急激に立ち上がることが抑制される。この場合、高調波の不具合を低減させるのに有利である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、制御部は、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ、発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させる。このため交流電流の1周期(例えば商用電源の場合には、16ミリ秒、20ミリ秒)に対してマクロ的な所定時間以内において、複数の発熱部のうちある発熱部だけが集中的に加熱されること、他のある発熱部だけが集中的に加熱されないといったことが抑制される。このため、複数の発熱部における発熱量の過剰なばらつきが低減される。よって、複数の発熱部における温度ムラが低減される。この場合、温度ムラに起因する加熱部における亀裂の生成が抑制される。更に本発明によれば、制御部は、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ、発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させるため、発熱電流の合計値が瞬間的に急激に立ち上がることが抑制される。この場合、高調波の不具合を低減させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係り、人体局部洗浄装置の内部構造を示す斜視図である。
【図2】実施形態1に係り、(A)は加熱部の発熱層を模式的に示す図であり、(B)は加熱部の発熱層を展開して示す図であり、(C)は加熱部の要部を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係り、セラミックスヒータを搭載する熱交換ハウジングの断面図である。
【図4】実施形態1に係り、発熱部で温水を生成させる機構を示すブロック図である。
【図5】実施形態1に係り、第1発熱部および第2発熱部を位相制御している状態を示す電流の波形図である。
【図6】実施形態1に係り、負荷率を高めたときにおける第1発熱部および第2発熱部を位相制御している状態を示す電流の波形図である。
【図7】実施形態1に係り、負荷率を更に高めたときにおける第1発熱部および第2発熱部を位相制御している状態を示す電流の波形図である。
【図8】実施形態1に係り、第1発熱部および第2発熱部における負荷率の変動を示すグラフである。
【図9】実施形態2に係り、発熱部で温水を生成させる機構を示す基本回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましくは、加熱部は、同一の発熱電流が給電されるとき互いに共通性をもつ発熱量を示す複数個の発熱部を有する。横軸が時間を示し且つ縦軸が発熱部に給電する電流を示すとき、制御部は、電源から正弦波状の交流電流が給電されると共に、交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ発熱電流を複数の発熱部にそれぞれ給電させる。1波長未満の時間としては、2/3波長(270°)未満の時間、1/2波長(180°)未満の時間、1/3波長(120°)未満の時間、1/4(90°)波長未満の時間が例示される。従って、1波長の周期をTとすると、1波長未満の時間としては、2/3T未満の時間、1/2T未満の時間、1/3T未満の時間、1/4T未満の時間が例示される。
【0015】
好ましくは、加熱部は、第1発熱部および第2発熱部と、第1発熱部および第2発熱部を覆う被覆部とを有する。好ましくは、加熱部は、単数または複数の第1発熱部と、同一の発熱電流が給電されるとき互いに共通性をもつ発熱量を示すと共に第1発熱部と同数の第2発熱部とを備えている。この場合、制御部は、電源から正弦波状の交流電流が給電される給電部と、給電部に給電された正弦波状の交流電流を位相制御した第1電流波形を示す第1電流を第1発熱部に給電する第1位相制御スイッチング素子と、交流電流の1波長未満の時間で第1電流波形に対して互いにずらせるように、正弦波状の交流電流を位相制御した第2電流波形を示す第2電流を第2発熱部に給電する第2位相制御スイッチング素子とを有することが好ましい。第1位相制御スイッチング素子および第2位相制御スイッチング素子としては、トライアック、サイリスタ等が例示される。
【0016】
好ましくは、制御部は、加熱部を構成する各発熱部について、同じ時刻において互いに共通する負荷率で発熱させるように各発熱部の発熱を制御する。共通する負荷率とは、複数の発熱部のうち最大の負荷率をβmaxとし、最小の負荷率をβminとするとき、βmax/βminが1.3〜1.0の範囲内、1.2〜1.0の範囲内または1.1〜1.0の範囲内、1.05〜1.0の範囲内に納まることを意味する。好ましく、加熱部は、洗浄水が通過する通水路または温水タンクに設けられている。
【0017】
(実施形態1)
図1は実施形態1の概念を示す。人体局部洗浄装置は、洋式の便器に据え付けられる瞬間式の給湯機能をもつものであり、図略のケースが被着されるベース1と、ベース1に設けられた給水部2と、給水部2から供給された洗浄水を人体の局部に噴出させるようにベース1に設けられた洗浄部3と、給水部2から供給された洗浄水を人体の局部に噴出させる前に加熱させるようにベース1に設けられた熱交換器4と、加熱部として機能するセラミックスヒータ6の発熱を制御する制御部5(図1では省略)と、洗浄荷重向上機構9とを有する。洗浄部3は、便局部洗浄用のお尻用ノズル31と、ビデ用ノズル32とを有する。熱交換器4は、給水部2から供給された洗浄水を加熱させるセラミックスヒータ6と、セラミックスヒータ6で加熱させた洗浄水を洗浄部3から噴出させる前に溜めるタンク7とを有する。
【0018】
図2(A)はセラミックスヒータ6の主要要素である発熱層60の斜視図を示す。図2(B)は発熱層60の展開図を示す。セラミックスヒータ6の発熱層60は、単数の第1発熱部61と、第1発熱部61と同数の第2発熱部62(単数)とを備えており、第1発熱部61に繋がる第1端子101と、第2発熱部62に繋がる第2端子102と、コモンとなる第3端子103とを有する。図2(C)に示すように、発熱層66は2個1組の被覆層67a,67c(67)により内周側および外周側で被覆されている。被覆層67はセラミックスで形成されている。なお、第1発熱部61と第2発熱部62との和は偶数(具体的に2個)とされている。
【0019】
ここで、第1発熱部61および第2発熱部62に同一の発熱電流がそれぞれ同一時間給電されるとき、第1発熱部61および第2発熱部62は、互いに同種のものであり、共通性(同一性)をもつ発熱量を示す。『共通性をもつ発熱量』とは、同一の発熱電流を第1発熱部61および第2発熱部62に同一時間それぞれ給電するとき、第1発熱部61の発熱量をQ1とし、第2発熱部62の発熱量をQ2とするとき、不可避的な製品公差の幅等を考慮し、Q1/Q2=0.80〜1.20の範囲内に存在することを意味する。Q1/Q2=0.85〜1.15の範囲内、0.90〜1.10の範囲内、0.95〜1.15の範囲内でも良い。このように第1発熱部61および第2発熱部62の最大出力は共通性の範囲内に設定されている。なお、第1発熱部61の発熱量と第2発熱部62の発熱量との差が大きくなると、セラミックスヒータ6において熱歪みが発生し、被覆層67(67a,67c)に亀裂が発生することがある。
【0020】
図3はセラミックスヒータ6が洗浄水を加熱させる過程を示す。図3に示すように、セラミックスヒータ6は、通水路63を形成するように筒形状をなしており、取付鍔部64を有する。セラミックスヒータ6の取付鍔部64を熱交換器ハウジング40の壁部41に取付具42により取り付けることにより、セラミックスヒータ6は熱交換器ハウジング40に装備されている。なお、熱交換器ハウジング40には、過熱を検知する温度センサ44と、排水用キャップ49とが設けられている。熱交換器ハウジング40における通水経路46は、矢印W1,W2,W3,W4,W5に示すように水を流し、更に、図略の切替通路を介して洗浄部3のノズル31,32に供給される。
【0021】
図4に示すように、制御部5は、商用電源等の電源80から正弦波状の交流電流Sin(Imを最大電流値とするとき、 Im・sinωt)が給電される給電部50と、第1電流iを第1発熱部61に給電するように交流電流Sinを位相制御させる第1位相制御スイッチング素子51と、第2電流iを第2発熱部62に給電するように交流電流Sinを位相制御させる第2位相制御スイッチング素子52と、スイッチング素子51,52にスイッチング指令を出力するCPUを含む指令部53とを有する。すなわち、指令部53は、第1発熱部61に対して通電開始するタイミングと通電終了するタイミングとを可変とさせる信号Sをスイッチング素子51に出力する。同様に、指令部53は、第2発熱部62に通電開始するタイミングと通電終了するタイミングとを可変とさせる信号Sをスイッチング素子52に出力する。
【0022】
ここで、第1発熱部61がフル発熱するとき総負荷率100%とする。同様に、第2発熱部62がフル発熱するとき総負荷率100%とする。図5は、第1発熱部61および第2発熱部62のそれぞれの総負荷率が25%のときにおいて、第1発熱部61の電流波形A1と第2発熱部62の電流波形A2とを示す。図5に示すように、商用電源等の電源80から正弦波状の交流電流Sinが給電部50に給電される。図5(A)に示すように、第1位相制御スイッチング素子51は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第1電流波形A1を示す第1電流iを第1発熱部61に給電する。図5(A)に示すように、第1電流波形A1は負の極性(直流相当)をもち、時刻tで瞬間的に負の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなる。更に時刻tで瞬間的に負の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなる。
【0023】
図5(B)に示すように、第2位相制御スイッチング素子52は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第2電流波形A2を示す第2電流iを第2発熱部62に給電する。第2電流波形A2は正の極性(直流相当)をもち、時刻tで瞬間的に正の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなる。更に時刻tで瞬間的に正の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなる。このように図5(A)(B)に示すように、給電部50に給電された交流電流Sinの1波長L未満の時間内(具体的に180°つまり1/2波長)で、制御部5は、第1電流波形A1および第2電流波形A2の通電開始タイミングおよび通電終了タイミングとを時間軸においてΔT1(Tを1波長に要する周期とすると、ΔT1=1/2・T)互いにずらせつつ、第1発熱部61および第2発熱部62に給電する。
【0024】
上記したように、第1位相制御スイッチング素子51は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第1電流波形A1を示す第1電流iを第1発熱部61に給電する。同様に、第2位相制御スイッチング素子52は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第2電流波形A2を示す第2電流iを第2発熱部62に給電する。このため交流電流Sinの周期に対してマクロ的な所定時間(例えば500ミリ秒、1000ミリ秒)の単位で考えると、第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とは、互いに共通性の範囲内に設定される。このためセラミックスヒータ6において第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とにおける発熱ムラが低減され、発熱ムラに起因する亀裂がセラミックスヒータ6の被覆層67(67a,67c)に発生することが抑えられる。図5(C)は、第1電流波形A1および第2電流波形A2を重ねた合成波形A3を示す。第1電流波形A1および第2電流波形A2は時間的にΔT2ずれているため、合成波形A3が示す電流量の急激な増加は抑制される。すなわち、図5(C)に示すように、合成波形A3が急激に立ち上がることが抑制され、高調波の不具合の発生が抑制される。
【0025】
次に、図6は、第1発熱部61および第2発熱部62のそれぞれの総負荷率が50%のときにおいて、第1発熱部61の電流波形と第2発熱部62の電流波形とを示す。図6に示すように、商用電源等の電源80から正弦波状の交流電流Sinが給電部50に給電される。図6(A)に示すように、第1位相制御スイッチング素子51は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第1電流波形A1を示す第1電流iを第1発熱部61に給電する。図6(A)に示すように、第1電流波形A1は負の極性をもち、時刻tで負の方向に立ち上がり、時刻tでピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。更に時刻tで負の方向に立ち上がり、時刻tでピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。
【0026】
図6(B)に示すように、第2位相制御スイッチング素子52は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第2電流波形A2を示す第2電流iを第2発熱部62に給電する。第2電流波形A2は正の極性をもち、時刻tで正の方向に立ち上がり、時刻tでピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。更に時刻tで正の方向に立ち上がり、時刻tでピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。
【0027】
図6(A)(B)に示すように、給電部50に給電された交流電流Sinの1波長L未満の時間内(具体的に180°)で、制御部5は、第1電流波形A1および第2電流波形A2とを時間軸においてΔT2(ΔT2=1/2・T)互いにずらせる。このためマクロ的な所定時間(例えば500ミリ秒、1000ミリ秒)の単位で考えると、第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とは互いに共通性の範囲内に設定される。よって第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とにおける発熱ムラが低減され、発熱ムラに起因する亀裂がセラミックスヒータ6の被覆層67に発生することが抑えられる。図6(C)は、第1電流波形A1および第2電流波形A2を重ねた合成波形A3を示す。図6(C)に示すように、合成波形A3は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinと同位相となり、合成波形A3が急激に立ち上がることが抑制され、高調波の不具合の発生が抑制される。
【0028】
次に、図7は、第1発熱部61および第2発熱部62のそれぞれの総負荷率が75%のときにおいて、第1発熱部61の電流波形と第2発熱部62の電流波形とを示す。図7(A)に示すように、第1位相制御スイッチング素子51は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第1電流波形A1を示す第1電流iを第1発熱部61に給電する。図7(A)に示すように、第1電流波形A1は正および負の極性をもち、時刻tで瞬間的に正の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなり、時刻tで負の方向のピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。更に、時刻tで瞬間的に正の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなり、時刻tで負の方向のピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。
【0029】
図7(B)に示すように、第2位相制御スイッチング素子52は、給電部50に給電された正弦波状の交流電流Sinを位相制御することにより、第2電流波形A2を示す第2電流iを第2発熱部62に給電する。図7(B)に示すように、第2電流波形A2は正および負の極性をもち、時刻tで瞬間的に負の方向のピークに立ち上がり、時刻tでゼロクロスとなり、時刻tで正の方向のピークに達し、時刻tでゼロクロスとなる。図7(A)(B)に示すように、給電部50に給電された交流電流Sinの1波長L未満の時間内(具体的に180°,1/2波長)で、制御部5は、第1電流波形A1および第2電流波形A2とを時間軸においてΔT3(ΔT3=1/2・T)互いにずらせる。このため交流電流Sinの周期に対してマクロ的な所定時間(例えば500ミリ秒、1000ミリ秒)の単位で考えると、当該所定時間内おける第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とは互いに共通性(同一性)の範囲内に設定される。よってセラミックスヒータ6における第1発熱部61の発熱量と第2発熱量とにおける発熱ムラが低減される。故に、発熱ムラに起因する亀裂がセラミックスヒータ6の被覆層67(67a,67c)に発生することが抑えられる。
【0030】
図7(C)は、第1電流波形A1および第2電流波形A2の合成波形A3を示す。図7(C)に示すように、時刻t〜t間において、電流波形A2の立ち上りが見られ、時刻tにおいて電流波形A1の立ち上がりが重合されて正のピーク+imaxが得られるが、その電流増加量はiとなり、過剰な電流増加量ではない。更に、時刻t〜t間においては、電流波形A1の立ち下がりと電流波形A2の立ち下がりとが重合され、時刻tでゼロクロスとなる。時刻t〜t間において、電流波形A1の立ち下りが把握され、時刻tにおいて電流波形A1,A2の立ち下がりが重合されて負のピーク−imaxが得られるが、負方向への電流増加量はiとなり、過剰な電流増加量ではない。このため急激な電流量の増加が抑えられ、高調波の不具合の発生が抑制される。
【0031】
図8は、本実施形態における位相制御が実行されるときにおいて、第1発熱部61の総負荷率と第2発熱部62の総負荷率と電力との関係を示す。図8に示すように、第1発熱部61の総負荷率の変動率α1と、第2発熱部62の総負荷率の変動率α2とは、互いに対応する。このように制御部5は、加熱部6を構成する各発熱部61,62について、同じ時刻において、共通する負荷率(同一性を示す負荷率)で発熱させるように各発熱部61,62の発熱を制御する。従ってセラミックスヒータ6において第1発熱部61の付近と第2発熱部62の付近とにおける温度ムラが抑制される。ひいては、セラミックスヒータ6における熱歪みの発生が抑制される。このためセラミックスヒータ6の被覆層67(67a,67c)に亀裂が発生することが抑制され、セラミックスヒータ6の耐久性の向上および長寿命化が図れる。
【0032】
(実施形態2)
図9は実施形態2の概念を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成であり、同様の作用効果を有するため、図5〜図8を準用する。給電部50には、商用電源80等の電源からの交流電流(周波数:50Hzまたは60Hz)が給電される。セラミックスヒータ6は、単数の第1発熱部61と、第1発熱部61と同数の第2発熱部62とを備えている。ここで、同一の発熱電流が第1発熱部61および第2発熱部62にそれぞれに同じ時間給電されるとき、第1発熱部61および第2発熱部62は互いに共通性をもつ発熱量を示す。共通性をもつ発熱量とは、同一の発熱電流が第1発熱部61給電されるとき、第1発熱部61の発熱量をQ1とし、第2発熱部62の発熱量をQ2とするとき、Q1/Q2は実施形態1と同様にされている。
【0033】
制御部5は、商用電源等の電源80から正弦波状の交流電流が給電される給電部50と、第1電流iを第1発熱部61に給電する第1トライアック56のゲートGにゲートトリガー信号Pが入力されると、第1トライアック56はオンとなる。第2トライアック57のゲートGにゲートトリガー信号Pが入力されると、第2トライアック57はオンとなる。トライアック56,57は、位相制御スイッチング素子として機能する。本実施形態においても、商用電源80から正弦波状の交流電流を示す交流電流Sinが給電部50に供給される。第1トライアック56は交流電流Sinを位相制御し、その第1電流波形A1を示す第1電流Iを第1発熱部61に給電する。第2トライアック57は交流電流Sinを位相制御し、その第2電流波形A2を示す第2電流Iを第2発熱部62に給電する。
【符号の説明】
【0034】
図中、2は給水部、3は洗浄部、31はノズル、32はノズル、5は制御部、6は加熱部、56は第1トライアック(位相制御スイッチング素子)、57は第2トライアック(位相制御スイッチング素子)、6はセラミックスヒータ(加熱部)、61は第1発熱部、62は第2発熱部、67は被覆層、80は電源を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の局部に洗浄水を噴出させる洗浄部と、前記洗浄部から噴出される洗浄水を加熱させる加熱部と、前記加熱部の発熱を制御する制御部とを具備しており、
前記加熱部は、同一の発熱電流が給電されるとき互いに共通性をもつ発熱量を示す複数個の発熱部を有しており、
横軸が時間を示し且つ縦軸が前記発熱部に給電する電流を示すとき、
前記制御部は、電源から正弦波状の交流電流が給電されると共に、前記交流電流の1波長未満の時間を互いにずらせつつ発熱電流を複数の前記発熱部にそれぞれ給電させることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記加熱部は、単数または複数の第1発熱部と、同一の発熱電流が給電されるとき共通性をもつ発熱量を示すと共に前記第1発熱部と同数の第2発熱部とを備えており、
前記制御部は、電源から正弦波状の交流電流が給電される給電部と、前記給電部に給電された正弦波状の交流電流を位相制御した第1電流波形を示す第1電流を前記第1発熱部に給電する第1位相制御スイッチング素子と、前記交流電流の1波長未満の時間で前記第1電流波形に対して互いにずらせるように、正弦波状の前記交流電流を位相制御した第2電流波形を示す第2電流を前記第2発熱部に給電する第2位相制御スイッチング素子とを有することを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記制御部は、前記加熱部を構成する各前記発熱部について、同じ時刻において互いに共通する負荷率で発熱させるように各前記発熱部の発熱を制御することを特徴とする人体局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−202455(P2011−202455A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72539(P2010−72539)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】