説明

人体局部洗浄装置

【課題】モータが1つで複数のノズルを駆動でき、簡素な構造によって小型で安価な洗浄ノズルユニットを有する人体局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】人体局部洗浄装置は、給水源から供給された洗浄水を人体局部に噴射する洗浄ノズルユニット10を備え、洗浄ノズルユニット10は、おしり洗浄ノズル20と、ビデ洗浄ノズル30と、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30を進退する為の1つの駆動源40と、駆動源40の動力を各ノズル20、30に伝達する駆動ギヤユニットと従動ギヤユニットとから成る動力伝達手段を有し、駆動源40と動力伝達手段は、各ノズル20、30が向かい合う空間12の外側に設置され、各ノズル20、30の側面に形成されたおしり用ラックとビデ用ラックとおしり用欠け目とビデ用欠け目との組み合わせによって各ノズル20、30を個別に進退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部に洗浄水を噴射する人体局部洗浄装置で、特に洗浄ノズルの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、一対の洗浄ノズル(洗浄ノズルユニット)と、駆動源と、おしり洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズルを進退させる駆動伝達機構(動力伝達手段)と、を備えた局部洗浄装置(人体局部洗浄装置)において、動力伝達手段として振分け軸を有する一対の扇形歯車部からなる振分け伝達部と、増速用の一対の回転伝達部(ピニオンギヤ)と、一対の進退伝達部(ラック)とを備えた局部洗浄装置(人体局部洗浄装置)がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、ノズル本体が、洗浄水路に沿って進退自在に設けられたビデ洗浄ノズルとおしり洗浄ノズルを備え、駆動源に接続され引掛け手段を備えた動力伝達手段がそれら洗浄ノズルの間に配設され、引掛け手段と係合可能とした係合手段がノズル本体に設けられた洗浄ノズル装置(洗浄ノズルユニット)であって、駆動源からの動力がノズルのいずれか一方の係合手段と係合し、ノズルを局部洗浄可能な位置に設置させる洗浄ノズルユニットがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、ノズルマウントに形成された通路に進退自在に挿入され、互いが並列に設けられた第1と第2のノズル(おしり洗浄ノズルと、ビデ洗浄ノズル)と、各ノズルを駆動する第1と第2のDCモータ(駆動源)と、ノズルの位置を検知する検知手段と、DCモータの駆動力を各ノズルに伝えるアクチュエータ(動力伝達手段)とを有し、各ノズルを各々独立して駆動するノズル装置(洗浄ノズルユニット)がある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−257093号公報
【特許文献2】特開平9−119161号公報
【特許文献3】特開2005−213733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1の洗浄ノズルユニットでは、洗浄ノズルを進退させる駆動源と動力伝達手段とが、おしり洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルの間に設置されていることから、両洗浄ノズルの間に駆動源と動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間が形成されて洗浄ノズルユニットが大型化する問題がある。更に、両洗浄ノズルの間に振分け伝達部が別構成で必要であり、複雑な構造になる問題がある。
【0007】
特許文献2の洗浄ノズルユニットでは、洗浄ノズルを進退させる駆動源と動力伝達手段とが、おしり洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルの間に設置されていることから、両洗浄ノズルの間に駆動源と動力伝達手段を設置する為の空間に伴って未使用空間が形成されて洗浄ノズルユニットが大型化する問題がある。更に、引掛け手段や係合手段と云った部品が必要で、複雑な構造になる問題がある。
【0008】
特許文献3の洗浄ノズルユニットでは、各ノズルが並列に設けられているため、両ノズル間の未使用空間の形成を抑制するが、モータが2つ必要であり、両洗浄ノズルの両側に未使用空間が形成されて洗浄ノズルユニットが大型化する。更に、モータが2つ必要なことから高価になる問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑みて成されたものであり、モータが1つで複数のノズルを駆動でき、簡素な構造によって従来よりも小型化で安価な洗浄ノズルユニットを有する人体局部洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の課題解決手段は、給水源から洗浄水が供給され人体局部に洗浄水を噴射する洗浄ノズルユニットを備えた人体局部洗浄装置であって、前記洗浄ノズルユニットは、洗浄水を噴射する第1ノズル及び第2ノズルと、正転または逆転することで両ノズルを進退する駆動源と、前記駆動源からの動力を前記第1ノズルと前記第2ノズルとに伝達する駆動ギヤユニットと従動ギヤユニットを有する動力伝達手段と、を備え、前記駆動源と前記動力伝達手段とは、前記第1ノズルと前記第2ノズルとが向かい合う空間の外側に設置され、前記第1ノズルは、前記第1ノズルと前記駆動ギヤユニットまたは前記従動ギヤユニットと係合する第1ラックと、前記第1ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合を外し、前記第1ラックに連設する第1非係合部と、を有し、前記第2ノズルは、前記第2ノズルと前記駆動ギヤユニットまたは前記従動ギヤユニットと係合する第2ラックと、前記第2ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合を外し、前記第2ラックに連設する第2非係合部と、を有する構成である。
【0011】
また、本発明の第2の課題解決手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、前記第1ノズルまたは前記第2ノズルのいずれか一方が前進する際に他方が後退し、後退した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルは、前記第1非係合部または前記第1非係合部で前記第1ラックまたは前記第2ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合が外れ、前進した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルの前記第1ラック後端または前記第2ラック後端は前記従動ギヤユニットとの係合が外れ、停止する構成である。
【0012】
また、本発明の第3の課題解決手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、一方が後退して停止した後にも他方は前進し、前進した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルは、前記駆動源の制御によって所定の位置で停止する構成である。
【0013】
また、本発明の第4の課題解決手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、上下に重なる位置に設置される構成である。
【0014】
また、本発明の第5の課題解決手段は、前記動力伝達手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルの水平方向のいずれか1方に設置される構成である。
【0015】
また、本発明の第6の課題解決手段は、前記駆動源は、前記第1ノズルと前記第2ノズルの水平方向の前記動力伝達手段が設置される方に設置される構成である。
【0016】
また、本発明の第7の課題解決手段は、前記動力伝達手段は、クラウンギヤとピニオンギヤと、から構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の人体局部洗浄装置では、第1ノズルと第2ノズルとを進退させる駆動源と動力伝達手段とが、第1ノズルと第2ノズルとが向かい合う空間の外側に設置されている。これにより、第1ノズルと第2ノズルとの間に駆動源と動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来、従来より小型化出来る。更に、駆動ギヤユニットと第1ラックまたは第2ラックと第1非係合部または第2非係合部によって第1ノズルまたは第2ノズルのいずれか一方と駆動源とを係合させたり係合を外したりする。これにより、従来の振分け手段や引掛け手段や係合手段を別構成で必要としない簡素な構造で第1ノズルまたは第2ノズルの進退を振分け可能にする。更に、1つのモータを正回転または逆回転させることによって、第1ノズルまたは第2ノズルの進退を振分け可能に出来る。
【0018】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、第1ノズルと第2ノズルとは、第1ノズルまたは第2ノズルのいずれか一方が前進する際に他方が後退する。更に、後退した第1ノズルまたは第2ノズルは、第1非係合部によって駆動ギヤユニットとの係合が外れ、前進した第2ノズルまたは第1ノズルの第1ラック後端が従動ギヤユニットを通過することで従動ギヤユニットとの係合が外れる。これにより、後退した第1ノズルまたは第2ノズルは、停止する。これにより、停止位置よりも後ろには第1ノズルまたは第2ノズルが後退せず、停止位置での第1ノズル後端または第2ノズル後端より後ろには第1ノズルまたは第2ノズルが後退する為の空間を必要とせず、更に小型化が出来る。
【0019】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、第1ノズルと第2ノズルとは、一方の第1ノズルまたは第2ノズルが後退して停止した後にも他方は前進し、駆動源の制御によって前進した第1ノズルまたは第2ノズルが所定の位置で停止する。第1ノズルまたは第2ノズルの前進を停止する為の別の構成が不要な為、従来よりも構造が簡素な洗浄ノズルユニットを提供することが出来る。
【0020】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、第1ノズルと第2ノズルとは、上下に重なる位置に設置される。これにより、人体局部に向けた洗浄ノズルユニットの上面の面積が第2ノズルと第1ノズルを水平方向に配置した場合よりも狭くなり、小型化出来る。
【0021】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、動力伝達手段は、第1ノズルと第2ノズルの水平方向のいずれか1方に設置される。これにより、第1ノズルと第2ノズルの進退動作を1方向から制御出来、構造が簡素な洗浄ノズルユニットを提供することが出来る。更に、第1ノズルと第2ノズルから動力伝達手段が突き出る部分を1方向に抑えると共に、第1ノズルと第2ノズルの間に動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来る。
【0022】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、駆動源は、第1ノズルと第2ノズルの水平方向の動力伝達手段が設置される方に設置される。これにより、駆動源と動力伝達手段と第1ノズルと第2ノズルとを、振分け軸や引掛け手段や係合手段を介さずに最短距離で係合することが可能になり、動力伝達手段を小型且つ簡素にすることが出来る。これにより、動力伝達手段の洗浄ノズルユニットへの組み付けが従来よりも容易になり、部品点数を減らして安価に製造することが出来る。更に、第1ノズルと第2ノズルから動力伝達手段が突き出る部分を1方向に抑えると共に、第1ノズルと第2ノズルの間に動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来る。
【0023】
また、本発明の人体局部洗浄装置では、動力伝達手段は、クラウンギヤとピニオンギヤで構成される。ピニオンギヤはおしり洗浄ノズルまたはビデ洗浄ノズルに動力を伝達する部品で、おしり洗浄ノズルまたはビデ洗浄ノズルよりも薄く構成出来る。クラウンギヤは歯の付いた面を2等分した一方の領域でピニオンギヤを介しておしり洗浄ノズルを、他方の領域でピニオンギヤを介してビデ洗浄ノズルを、同時に前進と後退させたり同時に後退と前進させたりすることが出来る。これにより、おしり洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルを接近させることが出来る。これにより、洗浄ノズルユニットを更に小型化することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の人体局部洗浄装置の内部の斜視図である。
【図2】本発明の洗浄ノズルユニットの初期位置の斜視図である。
【図3】本発明の洗浄ノズルユニットの初期位置の説明図である。
【図4】本発明の洗浄ノズルユニットの、ビデ洗浄ノズル前進中とおしり洗浄ノズル後退中の説明図である。
【図5】本発明の洗浄ノズルユニットのビデ洗浄ノズル前進後停止時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明による実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、便器2の上に設置され、給水源3に接続され、給水バルブ5と、温水タンク7と、制御ユニット9と、洗浄ノズルユニット10と、おしり用シリコンホース26と、ビデ用シリコンホース36を、有する人体局部洗浄装置1の内部の斜視図である。人体局部洗浄装置1の内部の図面中央部に、便器2中心に沿って且つ水平面に対して約38°前傾させて洗浄ノズルユニット10が設置されている。なお、要望に応じ、洗浄ノズルユニット10の位置や向きを変えることが可能である。また、温暖な地域向けの人体局部洗浄装置1では温水タンク7を不要にすることが可能である。
【0027】
図2は、本発明の洗浄ノズルユニット10の初期位置の斜視図である。洗浄ノズルユニット10は、おしり洗浄ノズル20(第1ノズル)と、ビデ洗浄ノズル30(第2ノズル)と、を有する。更に、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30を進退する為の位置検出と位置制御を行ない易いステッピングモータ40(駆動源)と、ステッピングモータ40からの動力をおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30とに伝達する駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70と、を有する動力伝達手段(図示せず)と、を備えている。ここで、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30との水平方向の図中左側の側壁には、夫々におしり用ラック21(第1ラック)とビデ用ラック31(第2ラック)とが形成されている。
【0028】
おしり用ラック21とビデ用ラック31の先端部とには、連設する凹部として夫々におしり用欠け目22(第1非係合部)とビデ用欠け目32(第2非係合部)とが形成されている。ここで、おしり用欠け目22とビデ用欠け目32には、おしり用駆動ピニオンギヤ62またはビデ用駆動ピニオンギヤ63が空転してもおしり用欠け目22またはビデ用欠け目32の側壁が磨耗したり摩擦音が発生しない様に、おしり用駆動ピニオンギヤ62とビデ用駆動ピニオンギヤ63との間に隙間が形成されている。更に、ステッピングモータ40は、洗浄ノズルユニット10の水平方向の左側の側壁にビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20との上下中央に位置する様に固定されている。
【0029】
駆動ギヤユニット60は、ステッピングモータ40の出力軸41に挿入された駆動クラウンギヤ61と、このギヤに係合された(歯車であるため噛合された状態)おしり用駆動ピニオンギヤ62とビデ用駆動ピニオンギヤ63とから構成されている。おしり用駆動ピニオンギヤ62は、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21に係合されている。ビデ用駆動ピニオンギヤ63は、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31に係合されている。
【0030】
従動ギヤユニット70は、洗浄ノズルユニット10のユニット先端11の後方で、洗浄ノズルユニット10の水平方向のステッピングモータ40が設置されている左側の側壁にビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20との上下中央に位置する様に軸支されている。従動ギヤユニット70は、従動クラウンギヤ71と、おしり用従動ピニオンギヤ72と、ビデ用従動ピニオンギヤ73と、から構成されている。従動クラウンギヤ71は、洗浄ノズルユニット10の水平方向の左側の側壁にビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20との上下中央に設置される様に軸支されている。ここで、おしり用従動ピニオンギヤ72は、従動クラウンギヤ71とおしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21とに係合されている。ビデ用従動ピニオンギヤ73は、従動クラウンギヤ71とビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31とに係合されている。
【0031】
なお、ステッピングモータ40は要望により、小型で高出力なDCモータや音が静かでブラシ磨耗が無く耐久性の高いACモータと制御ユニットの組み合わせで代用することも可能である。駆動クラウンギヤ61と従動クラウンギヤ71と、はウォームギヤやはすば歯車と云った別の歯車で代用することが可能である。おしり用ラック21とビデ用ラック31とを、ウォームギヤやはすば歯車と云った代用歯車の挿入位置に合わせたおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30側面に形成することで代用歯車とおしり用ラック21とビデ用ラック31とを直結することも出来る。
【0032】
図3は、洗浄ノズルユニット10の初期位置の説明図である。ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20とは、洗浄ノズルユニット10の中で、上下に重なる位置に設置される。ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20とは、ステッピングモータ40と係合された駆動ギヤユニット60(図2参照)と夫々係合され、更に従動ギヤユニット70(図2参照)と夫々係合されている。ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20とは、給水源3から洗浄水が供給され人体局部に洗浄水を噴射するビデ噴射口35とおしり噴射口25とを夫々有し、ビデ洗浄ノズル30後端とおしり洗浄ノズル20後端にビデシリコンホース36とおしりシリコンホース26とを夫々有し、その間に洗浄水路37と洗浄水路27とを夫々有している。ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20との間には、ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20とが向かい合う空間12が形成されている。
【0033】
図4は、ビデ洗浄ノズル30が前進中でおしり洗浄ノズル20が後退中の洗浄ノズルユニット10の説明図である。ここで、前進したビデ洗浄ノズル30のビデ用ラック31は駆動ギヤユニット60(図2参照)と係合されている為、更に前進可能な状態である。他方、後退したおしり洗浄ノズル20のおしり用ラック21は駆動ギヤユニット60(図2参照)との係合が外れてはいるが、従動ギヤユニット70(図2参照)を介してビデ洗浄ノズル30との係合が外れる直前の状態であり、更に後退可能な状態である。
【0034】
図5は、洗浄ノズルユニット10のビデ洗浄ノズル30が更に前進した後に停止した状態の説明図である。ここで、前進したビデ洗浄ノズル30は、ステッピングモータ40のパルス制御によって所定の位置で停止する。更に、ビデ洗浄ノズル30は、従動ギヤユニット70(図2参照)との係合も外れ、おしり洗浄ノズル20は図3の状態よりも後退した所定の位置で停止している。更に、おしり洗浄ノズル20のおしり用ラック21は駆動ギヤユニット60(図2参照)との係合をおしり用欠け目22によって外されており、おしり用ラック21はステッピングモータ40とは一切係合していない状態である。
【0035】
以下に、本発明の人体局部洗浄装置1の、洗浄ノズルユニット10のビデ洗浄使用時の動作について、説明する。
【0036】
図3の状態で、ビデ洗浄使用時には、ステッピングモータ40が正回転し、駆動クラウンギヤ61を介してビデ用駆動ピニオンギヤ63が正回転し、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31が前進し、ビデ用ラック31と一体化しているビデ洗浄ノズル30が前進する。この際、駆動クラウンギヤ61を介しておしり用駆動ピニオンギヤ62が正回転し、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21が後退し、おしり用ラック21と一体化しているおしり洗浄ノズル20が同時に後退する。
【0037】
その後、図4の状態で、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21のおしり用欠け目22が駆動ギヤユニット60のおしり用駆動ピニオンギヤ62の位置に来た時に、おしり用駆動ピニオンギヤ62が空転する。しかし、おしり用ラック21後端はおしり用従動ピニオンギヤ72と従動クラウンギヤ71とビデ用従動ピニオンギヤ73とビデ用ラック31とビデ用駆動ピニオンギヤ63と駆動クラウンギヤ61と、を介してステッピングモータ40に係合されている。
【0038】
その後、図4の状態から、おしり洗浄ノズル20は後退を続け、ビデ用ラック31後端がおしり用従動ピニオンギヤ72を通過し、ビデ用ラック31とおしり用従動ピニオンギヤ72との係合が外れる。これにより、おしり洗浄ノズル20は後退を停止する。
【0039】
他方、ビデ洗浄ノズル30はステッピングモータ40と駆動クラウンギヤ61とビデ用ピニオンギヤ63との係合によって前進を続けるが、ステッピングモータ40のパルス制御によって図5の様に、所定の位置で停止する。この際、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31のビデ用欠け目32はビデ用駆動ピニオンギヤ63の位置には至らず、ビデ用ラック31とビデ用駆動ピニオンギヤ63との係合は外れない。
【0040】
ビデ洗浄使用後には、図5の状態で、ステッピングモータ40が逆回転し、駆動クラウンギヤ61を介してビデ用駆動ピニオンギヤ63が逆回転し、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31が後退し、ビデ用ラック31と一体化しているビデ洗浄ノズル30が後退する。
【0041】
その後、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31は後退を続け、ビデ用従動ピニオンギヤ73と係合する。これにより、ビデ用従動ピニオンギヤ73と従動クラウンギヤ71とを介しておしり用従動ピニオンギヤ72が逆回転し、おしり用ラック21が前進し、おしり用ラック21と一体化しているおしり洗浄ノズル20が前進する。その後、ビデ洗浄ノズル30とおしり洗浄ノズル20は、ステッピングモータ40のパルス制御によって図3の様に、所定の位置で停止する。
【0042】
続いて、おしり洗浄使用時の動作について説明する。
【0043】
おしり洗浄使用時には、ステッピングモータ40が逆回転し、駆動クラウンギヤ61を介しておしり用駆動ピニオンギヤ62が逆回転し、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21が前進し、おしり用ラック21と一体化しているおしり洗浄ノズル20が前進する。この際、駆動クラウンギヤ61を介してビデ用駆動ピニオンギヤ63が逆回転し、ビデ洗浄ノズル30に形成されたビデ用ラック31が後退し、ビデ用ラック31と一体化しているビデ洗浄ノズル30が同時に後退する。
【0044】
その後、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21のおしり用欠け目22が駆動ギヤユニット60のビデ用駆動ピニオンギヤ63の位置に来た時に、ビデ用駆動ピニオンギヤ63が空転する。しかし、ビデ用ラック31後端は従動ギヤユニット70のビデ用従動ピニオンギヤ73とまだ係合しており、従動クラウンギヤ71とおしり用従動ピニオンギヤ72とおしり用ラック21とおしり用駆動ピニオンギヤ62と駆動クラウンギヤ61とを介してステッピングモータ40に係合されている。
【0045】
その後、ビデ洗浄ノズル30は後退を続け、おしり用ラック21後端が従動ギヤユニットユニット70のビデ用従動ピニオンギヤ73を通過し、おしり用ラック21とビデ用従動ピニオンギヤ73との係合が外れる。これにより、ビデ洗浄ノズル30は後退を停止する。
【0046】
他方、おしり洗浄ノズル20は駆動源40と駆動クラウンギヤ61とおしり用ピニオンギヤ62との係合によって前進を続けるが、ステッピングモータ40のパルス制御によって所定の位置で停止する。この際、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21のおしり用欠け目22は駆動ギヤユニット60のおしり用駆動ピニオンギヤ62の位置には至らず、おしり用ラック21とおしり用駆動ピニオンギヤ62との係合は外れない。
【0047】
おしり洗浄使用後には、ステッピングモータ40が正回転し、駆動クラウンギヤ61を介しておしり用駆動ピニオンギヤ62が正回転し、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21が後退し、おしり用ラック21と一体化しているおしり洗浄ノズル20が後退する。
【0048】
その後、おしり洗浄ノズル20に形成されたおしり用ラック21は後退を続け、おしり用従動ピニオンギヤ72と係合する。これにより、おしり用従動ピニオンギヤ72と従動クラウンギヤ71とを介してビデ用従動ピニオンギヤ73が正回転し、ビデ用ラック31が前進し、ビデ用ラック31と一体化しているビデ洗浄ノズル30が前進する。その後、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30は、ステッピングモータ40のパルス制御によって所定の位置で停止する。
【0049】
なお、洗浄位置にはおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30を夫々の所定の位置で停止させる為のおしり用ストッパとビデ用ストッパとを洗浄ノズルユニット10に設置することで、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30が脱調等によって位置ずれを発生させた場合に、制御手段9の位置データを書き換えて初期位置をリセットすることも可能である。
【0050】
以下に、本発明の人体局部洗浄装置1の、洗浄ノズルユニット10の効果について、説明する。
【0051】
本発明の人体局部洗浄装置1では、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30とを進退させるステッピングモータ40と駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70から成る動力伝達手段とを、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の水平方向の図中左側に設置している。これにより、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の間の向かい合う空間12にステッピングモータ40と動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来る。これにより、従来よりも小型化し、構造が簡素で、モータが1つで複数のノズルを駆動できる安価な洗浄ノズルユニット10を提供することが出来る。更に、小型化と簡素化することによって、各部品に従来よりも応力が掛かり難くなり、各部品を壊れ難くすることが出来る。
【0052】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30とは、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30のいずれか一方が前進する際に他方が後退する。この際、後退したおしり用欠け目22またはビデ用欠け目32でおしり用ラック21またはビデ用ラック31と駆動ギヤユニット60との係合が外れる。更に、前進したビデ用ラック31またはおしり用ラック21後端と従動ギヤユニット70との係合が外れる。これにより、後退したおしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30は、停止する。これにより、停止位置よりも後ろにはおしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30が後退せず、停止位置に於けるおしり洗浄ノズル20後端またはビデ洗浄ノズル30後端より後ろにはおしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30が後退する為の空間を必要とせず、従来よりも小型な洗浄ノズルユニット10を提供することが出来る。更に、これらの効果を、従来よりも簡単な構成で得ることが出来る。すなわち、従来よりも小型化し、構造が簡素で、モータが1つで安価な洗浄ノズルユニット10を提供することが出来る。
【0053】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、ビデ洗浄使用時には、おしり洗浄ノズル20が後退して停止した後にもビデ洗浄ノズル30が前進し、ステッピングモータ40の正転とパルス制御によって前進したビデ洗浄ノズル30が所定の位置で停止する。おしり洗浄使用時には、ビデ洗浄ノズル30が後退して停止した後にもおしり洗浄ノズル20が前進し、ステッピングモータ40の逆転とパルス制御によって前進したおしり洗浄ノズル20が所定の位置で停止する。すなわち、モータが1つで従来よりも安価な洗浄ノズルユニット10を提供することが出来る。
【0054】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30と、は洗浄ノズルユニット10の中で、上下に重なった位置に設置される。これにより、人体局部に向けた洗浄ノズルユニット10の上面の面積がおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30とを水平方向に配置した場合より狭くなり、小型化出来る。更に、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30との両方が人体局部と洗浄ノズルユニット10の間の軸線と同じ軸線上を前進または後退する様に洗浄ノズルユニット10を人体局部洗浄装置1の本体中央に設置することが出来る。これにより、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30から人体局部へ噴射する洗浄水の狙いを定める際に、人体に対して左右に狙いを調整する必要が無くなり、おしり洗浄ノズル20またはビデ洗浄ノズル30の位置設定を行ない易くすることが出来る。
【0055】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70は、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の水平方向のいずれか1方に設置される。これにより、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の進退動作を1方向から制御出来、構造が簡素な洗浄ノズルユニット10を提供することが出来る。これにより、駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70の洗浄ノズルユニット10への組み付けが従来よりも容易になり、部品点数を減らして安価に製造することが出来る。更に、小型化と簡素化することによって、各部品に従来よりも応力が掛かり難くなり、各部品を壊れ難くすることが出来る。更に、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30から駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70が突き出る部分を1方向に抑えると共に、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の間に動力伝達手段(図示せず)を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来る。
【0056】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、ステッピングモータ40は、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の水平方向のうち駆動ギヤユニット60と従動ギヤユニット70から成る動力伝達手段が設置される方に設置される。これにより、ステッピングモータ40と動力伝達手段とおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30とを、振分け軸や引掛け手段や係合手段を介さずに最短距離で係合することが可能になり、動力伝達手段を小型且つ簡素にすることが出来る。これにより、動力伝達手段の洗浄ノズルユニット10への組み付けが従来よりも容易になり、部品点数を減らして安価に製造することが出来る。更に、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30から動力伝達手段が突き出る部分を1方向に抑えると共に、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の間に動力伝達手段を設置する為の空間に伴って形成される未使用空間の形成を防止出来る。
【0057】
また、本発明の人体局部洗浄装置1では、動力伝達手段のおしり用駆動ピニオンギヤ62とビデ用駆動ピニオンギヤ63とおしり用従動ピニオンギヤ72とビデ用従動ピニオンギヤ73は単純な構造の平歯車なので夫々の厚みをおしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の各厚み以下にすることが出来る。更に、駆動クラウンギヤ61と従動クラウンギヤ71は夫々の歯の付いた面を2等分した一方の領域でおしり用駆動ピニオンギヤまたはおしり用従動ピニオンギヤを、他方の領域でビデ用駆動ピニオンギヤまたはビデ用従動ピニオンギヤを、前後または後ろ前に駆動出来る。従って、駆動クラウンギヤ61と従動クラウンギヤ71の投影面は、おしり洗浄ノズル20とビデ洗浄ノズル30の、おしり用駆動ピニオンギヤ72とビデ用駆動ピニオンギヤ73取り付け面やおしり用従動ピニオンギヤ72とビデ用従動ピニオンギヤ73取り付け面の投影面の厚み以下に収めることが出来る。これにより、洗浄ノズルユニット10の厚みを薄くすることが出来る。
【符号の説明】
【0058】
1 人体局部洗浄装置
3 給水源
10 洗浄ノズルユニット
11 ユニット先端
12 おしり洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルとが向かい合う空間
20 おしり洗浄ノズル(第1ノズル)
21 おしり用ラック(第1ラック)
22 おしり用欠け目(第1非係合部)
30 ビデ洗浄ノズル(第2ノズル)
31 ビデ用ラック(第2ラック)
32 ビデ用欠け目(第2非係合部)
40 ステッピングモータ(駆動源)
60 駆動ギヤユニット
61 駆動クラウンギヤ
62 おしり用駆動ピニオンギヤ
63 ビデ用駆動ピニオンギヤ
70 従動ギヤユニット
71 従動クラウンギヤ
72 おしり用従動ピニオンギヤ
73 ビデ用従動ピニオンギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から洗浄水が供給され人体局部に洗浄水を噴射する洗浄ノズルユニットを備えた人体局部洗浄装置であって、
前記洗浄ノズルユニットは、洗浄水を噴射する第1ノズル及び第2ノズルと、正転または逆転することで両ノズルを進退する駆動源と、前記駆動源からの動力を前記第1ノズルと前記第2ノズルとに伝達する駆動ギヤユニットと従動ギヤユニットを有する動力伝達手段と、を備え、
前記駆動源と前記動力伝達手段とは、前記第1ノズルと前記第2ノズルとが向かい合う空間の外側に設置され、
前記第1ノズルは、前記第1ノズルと前記駆動ギヤユニットまたは前記従動ギヤユニットと係合する第1ラックと、前記第1ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合を外し、前記第1ラックに連設する第1非係合部と、を有し、
前記第2ノズルは、前記第2ノズルと前記駆動ギヤユニットまたは前記従動ギヤユニットと係合する第2ラックと、前記第2ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合を外し、前記第2ラックに連設する第2非係合部と、を有する
人体局部洗浄装置。
【請求項2】
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、前記第1ノズルまたは前記第2ノズルのいずれか一方が前進する際に他方が後退し、
後退した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルは、前記第1非係合部または前記第1非係合部で前記第1ラックまたは前記第2ラックと前記駆動ギヤユニットとの係合が外れ、前進した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルの前記第1ラック後端または前記第2ラック後端は前記従動ギヤユニットとの係合が外れ、停止する
請求項1に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項3】
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、一方が後退して停止した後にも他方は前進し、
前進した前記第1ノズルまたは前記第2ノズルは、前記駆動源の制御によって所定の位置で停止する
請求項1または請求項2に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項4】
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、上下に重なる位置に設置される
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項5】
前記動力伝達手段は、前記第1ノズルと前記第2ノズルの水平方向のいずれか1方に設置される
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項6】
前記駆動源は、前記第1ノズルと前記第2ノズルの水平方向の前記動力伝達手段が設置される方に設置される
請求項5に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項7】
前記動力伝達手段は、クラウンギヤとピニオンギヤとから構成される
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の人体局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−211486(P2012−211486A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78220(P2011−78220)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】